法定相続情報一覧図の作成

 法定相続情報一覧図には、被相続人に関しては、その氏名、生年月日、最後の住所および死亡の年月日を、相続人に関しては、相続開始の時における同順位の相続人の氏名、生年月日および被相続人との続柄を記載する必要があります(不動産登記法施行規則247条1項1号及び2号)。被相続人の最後の本籍については記載することが推奨されていますが、相続人の本籍は記載事項ではありません。

 また、法定相続情報一覧図には作成の年月日を記載し、申出人が記名するとともに、法定相続情報一覧図を作成した申出人またはその代理人が署名しまたは記名押印する必要があります(不動産登記法施行規則247条3項1号)。なお、司法書士が代理人として法定相続情報一覧図を作成した場合には、職印の押印を要すると解されています(司法書士法施行規則28条1項)。

 法定相続情報一覧図の作成にあたっては、次の事項を踏まえる必要があります。

① 被相続人と相続人とを線で結ぶなどし、被相続人を起点として相続人との関係性が一見して明瞭な図による記載とする。

 ただし、被相続人および相続人を単に列挙する記載としても差し支えありません(機微な身分関係の関係性が明示されない方法も認めるべきとの意見に配慮したため)。

② 被相続人の氏名には「被相続人」と併記する。

③ 被相続人との続柄の表記については、戸籍に記載される続柄を記載することとする。

 したがって、被相続人の配偶者であれば「夫」や「妻」、子であれば「長男」、「長女」、「養子」などとします。ただし、続柄の記載は、あくまで被相続人との続柄である必要がありますので、戸籍に記載される続柄では表記することができない場合があります。たとえば、被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合は「妹」や「弟」とし、代襲相続がある場合であって被相続人の孫が代襲相続人となる場合は「孫」と記載することになります。

 なお、申出人の任意により、被相続人の配偶者が相続人である場合にその続柄を「配偶者」としたり、同じく子である場合に「子」としたりすることも差し支えありません。

④ 申出人が相続人として記載される場合、法定相続情報一覧図への申出人の記名は、当該相続人の氏名に 「申出人」と併記することに代えることができます。

⑤ 法定相続情報一覧図の作成をした申出人または代理人の署名等には、住所を併記します。なお、作成者が戸籍法10条の2第3項に掲げる者(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士(各士業法の規定を根拠に設立される法人を含む))である場合は、住所については事務所所在地とし、併せてその資格の名称をも記載します。

⑥ 相続人の住所を記載する場合は、当該相続人の氏名に当該住所を併記します。

⑦ 推定相続人の廃除がある場合、その廃除された推定相続人の氏名、生年月日および被相続人との続柄の記載は要しません。

⑧ 代襲相続がある場合、代襲した相続人の氏名に「代襲者」と併記します。

 この場合、被相続人と代襲者の間に被代襲者がいることを表すこととなりますが、その表記は、たとえば「被代襲者(何年何月何日死亡)」とすることで足ります。

⑨ 法定相続情報一覧図は、日本工業規格A列4番の丈夫な用紙をもって作成し、記載に関しては明瞭に判読することができるこが必要です。

⑩ 相続手続きでの利便性を高める観点から、被相続人の「最後の住所」に並べて「最後の本籍」も記載することが推奨されます。

 なお、被相続人の最後の住所を証する書面が市町村において廃棄されているため発行されないときは、被相続人の最後の住所の記載に代えて被相続人の最後の本籍を記載する必要があることに注意が必要です。

⑪ 相続開始の時における同順位の相続人の氏名等を記載します。

 したがって、被相続人の死亡日以前に子が死亡したために直系尊属または兄弟姉妹が相続人となった場合は、子の記載は不要です。

 また、数次相続が生じている場合には、被相続人死亡後に死亡した相続人についての法定相続情報一覧図を別に作成する必要がありますので、この点にもご注意ください。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立