引き続きまして,部会資料51の17ページから後ろ,「第4 相続等」についてお諮りをいたします。念のため申し添えますと,第2の「共有等」をお願いしたのに続いて,第4の相続等の審議のお願いになります。番号として第3が飛んでおりますけれども,第3の内容は次回の部会でお諮りするということを予定しております。
そうしましたらならば,第4の「相続等」の場所,すなわち1の「相続財産等の管理」,2の「相続財産の清算」,それから「3 遺産分割に関する見直し」,これらの事項について,御随意に御意見をお出しくださるようにお願いいたします。
○今川委員 1の(2)の「相続の放棄をした者による管理」について,まず確認ですけれども,放棄者の保存義務は,部会資料45の補足説明にあったように,最小限の義務であり,財産を滅失させ,又は損傷する行為をしてはならないことのみを意味するという理解でよろしいのですねという確認です。
それを前提としますと,前の資料45では保存すれば足りるという規律の仕方だったのですけれども,今回は保存しなければならないというふうに表現も変わっていますので,この規律の仕方では,この財産を滅失させ,又は損傷する行為をしてはならないことのみを意味するというのはなかなか読み取りにくいのではないかという意見があって,もう少しここは工夫ができないのですかという要望がありました。
○山野目部会長 大谷幹事から何か御説明なさることはありますか。
○大谷幹事 ここは書いておりますとおり,前回にお出ししたものと趣旨として変えるものではございません。法制的な観点から表現を改めたということにとどまるものでございまして,趣旨としては同じでございます。
○山野目部会長 民法940条の改正は,何か後の世代に対して相続を放棄したとしても,なお重い責任は残りますよという誤解を招きかねない,そういう誤ったメッセージを含み得る現行の法文を改めて,親の世代の財産を引き継ぐ次の世代に安心してもらおうという,そのような解決を目指して部会で審議をしてまいりました。その気持ちを心の上で反映しようとして,自己の財産における同一の注意をもって,その財産を保存することで足りるという優しい気持ちの表れた表現にしていたものでありまして,その趣旨が今後も維持されるか読み取りにくいというお話です。読み取っていただきたいと望みます。心は変わりません。ただ,大谷幹事が説明したように,この種のことを扱っている従前法制のほかの場所は「しなければならない」となっておりますから,法制上のテクニカルな制約からそのように平仄を揃えますけれども,ただいま正に今川委員と大谷幹事との間で従前の皆様の御論議の趣旨を変えるものではないということを確認し,このような経過が議事録にとどめられること自体が何よりの成果であって,今後この法制の意味するところを日本の将来の世代に受け止めていただきたいと望むものであります。
中村委員,お待たせをいたしました。
○中村委員 ありがとうございます。
日弁連でのワーキンググループでの意見を御報告いたしますと,まず1項の「相続財産の管理」に関しては賛成多数でした。今,今川委員から御指摘があり,部会長からも御説明のありました「保存しなければならない」という文言につき,「保存すれば足りる」の方がよいのではないかという点についても,やはり同じような意見が出ておりました。
それから,2項の「相続財産の清算」に関しましては賛成多数でした。
3項の「遺産分割に関する見直し」ですけれども,(1)の期間経過後の遺産分割に関する相続分に関して,相続開始から10年経過後に903条以下が適用されなくなることについて,引き続き反対意見はあるものの,おおむね賛成が多かったということです。
それから,(2)につきましては賛成多数でした。なお,10年経過しないときでも取下げには相手方の同意を要することにしてはどうかという意見もありました。
(3)の分割の禁止についても賛成多数でした。
○山野目部会長 弁護士会の御意見をお取りまとめいただきまして,ありがとうございました。
引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。
○佐久間幹事 言葉遣いだけなんですけれども,1点は屁理屈みたいだなって自分で分かっていて言うのですけれども,17ページの1の「相続財産の管理」について,①はただし書がございますよね。ただし書の「又は」の前までの二つは,これって単独相続人によって単純承認がされたり,共同相続でも遺産分割が終わったりしたら,もう相続財産ではないのではないのか,というふうな気がするのですけれども。ほかのところの相続財産と意味が違うような気がし,何かちょっとこの相続財産の使い方は一緒なのかな,と疑問に思いました。これが1点です。でも,最初に申し上げたように屁理屈みたいなものだというのは自分でも承知しておりますので,無視していただいても結構です。
2点目は,18ページの(2)の「相続の放棄をした者による管理」なのですけれども,いつまで保存の義務を負うかについて,相続人か,952条1項の相続財産の清算人に引き渡すまで,となっているんですよね,前回,相続財産の管理人について,いろんなものが混じっていてややこしいので,ネーミングを考えてくださいとお願いしまして,今回,相続財産の清算人と改めてくださってありがとうございました。お礼を申し上げた上で,相続財産の清算人と区別される相続財産の管理人が選ばれたときに,その人に渡すことですとか,限定承認のときの清算人に渡すことは,保存義務の終期から意図的に除かれているのでしょうか。除かれているとすると,どうしてかを教えていただきたく存じます。よろしくお願いします。
○山野目部会長 佐久間幹事が前の方で御指摘いただいたことは,お話を確認すると,第4,1(1)①のただし書に三つ挙がっているもののうち,最初の二つですよね,三つ目はいいですよね。
○佐久間幹事 三つ目は,はい。
○山野目部会長 そうですね。三つ目は,いまだ相続財産であると見ることができるのに対して,三つ並んでいるうちの前の二つは,その状態になったものをもはや相続財産とは言わないものではないか。そうであるとすると,本文の論理的内容の一部を否定する役割を担わせるただし書に掲げることは,論理としておかしいものではないかという点は,お話を伺って,なるほど,考えなければいけないなというふうに受け止めますから,ここの文言をどうすればよいかということは引き続き事務当局において法制的に検討することにいたします。
それから,18ページの(2)のところの限定承認があったときや,相続財産の管理の制度が発動されたときの清算人ではなくて管理人に引き渡すということによって義務を免れるということがあるかというお尋ねについて,これは事務当局の方で何か考えがないかということをお尋ねしてみましょう。
○脇村関係官 ありがとうございます。
ここにつきましては,恐らく相続人,先生がおっしゃる財産管理人とか清算人,相続人がいることを前提に,それに別に付けられているケースなので,代理権といいますか,権限はございますので,相続人に引き渡したと同視できるだろうということであえて書かなかったと。代理人を全部書いていたら切りがないということで書いておりません。
一方で,952のケースについてはいかんせんいませんので,そういった意味ではいない,法人成りしていますので,相続人と存置する前提で相続財産法人で書くことも考えたのですけれども,さすがに相続財産法人は現実に存在するわけではないので,代表者である清算人にしています。もちろん相続人不明のケースであって相続財産管理人がいるではないかということなのですけれども,そういう意味で,相続財産法人で書くよりはこっちの方が分かりやすいということを優先して書いておりますので,先生の御指摘いただいたケースはもちろん免除されることで考えているところでございます。
○山野目部会長 この「又は」の前の「相続人」というところで読み取るということは,一つ読み方としてあるのでしょうね。相続人が本来管理すべきものを,それに代わって選任された管理人に引き渡すとか,あるいは限定承認をしたときには,相続人が相続放棄をしていない限定承認が全員でしますから,それらの者に代わって事務を行う者に渡したということは相続人に渡したことと同じであると理解して,余りそれ以上くどくどと言葉を並べないという発想であるかもしれません。
佐久間幹事におかれては,いかがでしょうか。
○佐久間幹事 そういう整理をされるのであれば別に構いません。
○山野目部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
○道垣内委員 どうもすみません。先ほどちょっと音声が途切れてしまいましたので,議論を十分に拝聴できていないのかもしれないのですけれども,18ページの(2)のところの「保存しなければならない」という文言につきまして,弁護士会等の方から,何かきついのではないかという話が出て,それに対して山野目さんが一定のお返事をされたのですが,山野目さんのお返事の内容が本当にそうなのかなという気が若干しています。自己の財産と同一の注意をもって保存すれば足りるという言い方は,その前の問題として,特定物の引渡しなので,善良な管理者の注意をもって保存しなければならないというデフォルトのルールがあって,それを緩和するからなのであり,緩和するというときには「保存すれば足りる」になるはずですよね。それに対して,ここで「保存しなければならない」というのは,相続を放棄した人はそのような引渡し義務のようなものも負うとは限らないというか,放っておいて逃げたっていいのではないかという感じがしまして,そうだとすると,そもそも特定物の引渡義務に関する善良な管理者の注意義務というのがデフォルトとして生じないので,ここは「保存しなければならない」というふうに書かなければならないということなのではないかなという気がしております。「すれば足りる」というのと,「しなければならない」というのは,放棄の後の相続人の地位とか義務というのをどのように捉えるのかということと関係している事柄ではないかということを思います。その後いろいろな人の見解があったにもかかわらず,音声が途切れて聞こえなかったものですから,ひょっとしてとんでもないことを言っているのかもしれませんが,一言申し上げておきたいと思います。
○山野目部会長 音声が途切れたかもしれないということから何か道垣内委員が議論を追い掛けていないというような御心配は今のお話を伺っているとなかったものではないかと感じます。
また,道垣内委員が内容としてお話しいただいたことはごもっともでありまして,仰せのようなことを考えてまいりたいというふうに私も同感でございます。趣旨は,従前どおり「足りる」ということでしていくことができればよろしいというふうに感ずるものでありますから,これはいかんせん,先ほども申し上げましたように,他の箇所における法制上の扱いをにらんだ上で,当面このような提案をさせていただいているものでありますから,今川委員や中村委員,そして今,道垣内委員におっしゃっていただいたような方向で,何か文言について再調整がかなうようであるならば挑みたいというふうにも感ずるものでございますから,おっしゃっていただいて有り難く感じます。
道垣内委員,お続けください。
○道垣内委員 すみませんが,結論だけは違いまして,私は保存「しなければならない」でいいのではないかと思っています。そんな積極的な特定物の引渡義務を負っているという当事者とは異なるのではないかと思っているということを,念のために付け加えておきます。
○山野目部会長 おっしゃることの意味が分かりました。
○道垣内委員 冷たそうなんです。味方のような顔をして,本当は冷たい人間だったんですね。
○山野目部会長 冷たいというよりも冷静に議論をしていただきました。ありがとうございます。
引き続きいかがでしょうか。
○中田委員 とても細かいことなんですけれども,先ほど中村委員の御発言されたことと関係するのですが,遺産分割の調停又は審判の申立ての取下げを10年経過前にした場合についてです。10年経過の直前に申立てを取り下げることは可能だと思うのですが,その場合には,場合によっては3(1)②のやむを得ない事由に該当することもあると理解してよろしいでしょうか。
○脇村関係官 脇村でございます。
先生に御指摘いただきましたとおり,そういったケースについては(1)②でカバーする前提で,逆に言いますと,それ以外のものは置かなかったということでございます。
○山野目部会長 中田委員,いかがでしょうか。
○中田委員 ありがとうございます。
やむを得ない事由の理解にも資することでございますので,確認させていただきました。今の御発言でよく分かりました。ありがとうございました。
○山野目部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
○木村(匡)幹事 ありがとうございます。
3の「遺産分割に関する見直し」の(1)のやむを得ない事由について,今お話のあったところであり,以前の部会でも質問させていただいているのですけれども,2点ほど質問させていただきたいと思います。やむを得ない事由として,病気療養中であるとか,海外勤務を命じられて日本にいなかった等の属人的な事情が主張されることも予想されるわけなんですけれども,このような事情がやむを得ない事由に該当するかについてはどのように考えるのでしょうか。
もう1点ですけれども,遺産分割期間の経過後に相続人となった場合に,やむを得ない事由の有無についてどのように考えるのかということが2点目でございます。よろしくお願いいたします。
○脇村関係官 脇村です。ありがとうございます。
前回も御指摘いただいたところですのであれですけれども,まず,病気療養に関して言いますと,従前から,前回も少し言ったことかもしれませんけれども,消滅時効の起算点の解釈が一つ参考になるのではないかなと思っておりまして,あそこの権利を行使できるときの解釈について,通常はそういった病気などは入ってこないだろうという,法律上の障害がないケースじゃないと基本的に駄目ではないかという議論があるものと承知しています。もちろん最高裁の判例によりますと,法律上の障害がない場合,絶対救済されないかといいますと,過払金などの議論もありますとおり,客観的な状況から行使が期待できないようなケースについては起算点をずらしているという解釈がされているものと承知していますので,ここについても,そういったものを参考に,単なる海外居住とかだけだと難しいかもしれませんけれども,その他の事情を踏まえて真にやむを得ないと,最終的にはケース・バイ・ケースかもしれませんけれども,そういったことで判断していくのかな,債権の消滅時効などが一つ,起算点などが参考になるのかなというふうには思っていたところです。
一方,10年経過後に相続人になった人も,前回確か御指摘いただいていたのでちょっと考えたのですけれども,新たに相続人になった人も2パターンいるのかなと思っていまして,一つは本当に新しくなった人というのですか,相続放棄がされて新しくなった人,新しく相続人になった人などは,その10年前にすることは不可能でしたので,やむを得ない事由はあるのだろうなというふうに考えています。あと,前回死後認知の話もあって,私も死後認知の話をさせていただいたのですが,死後認知は死亡して3年以内にしないといけませんので,余り実際にはこの問題は起きないのかなというふうに今は考えています。
あと,相続人から引き継いだ人というのですか,再転相続人といいますか,10年たってから相続人が亡くなって相続人になった人もあると思うのですけれども,この人については基本的に包括的承継,前者の地位を引き継いでいますので,一体として考えるのかなと今は思っておりまして,その前者についてやむを得ない事由があれば,それが消滅しない限りは使えますし,逆に前者になければ,自分が当時できなかったからといって,そういうのは難しいのではないかなというふうには理解していたところです。
○山野目部会長 木村幹事,よろしいですか。
○木村(匡)幹事 ありがとうございます。
○山野目部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
○中田委員 ただいまの脇村関係官の御説明については,確か前回も同趣旨の御説明があったかと思います。消滅時効の起算点における権利を行使し得るときについて,法律上の障害がないことということを前提としながら,最高裁は供託金取戻請求権であるとか,今おっしゃった過払金の問題ですとか,あと二,三の問題について,それを緩和していることがあることは承知しております。
ただ,ここの問題状況はやはりちょっと違っておりまして,何か似ているなということは分かるのですけれども,必ずしも法律上の障害があることが原則で,それを例外的に緩和するというのでは,ここはないのではないかなというふうに考えております。脇村関係官の御説明も似ているという程度のことで,必ずしも同じに解釈すべきことにはならないのではないかというふうに私は思っております。
○山野目部会長 脇村関係官におかれましては再度の御説明をお願いして,似ているくらいの話です,どうぞおっしゃってください。
○脇村関係官 ありがとうございます。
先生おっしゃったとおり,全く一緒だというつもりは当然ございません。更に言えば,時効の停止などのような,そういった状況なども加味してここは考えないといけないケースだと思いますので,そういう意味で参考という言い方を先ほどさせていただいたかもしれませんけれども,似ている,参考,そういったことかなと。結局は,最終的に事案ごとに,この事案は救済しないといけないと,客観的な状況からして,それはそうだよねと言えるかどうかに関わってくるのだろうとは思っています。
○山野目部会長 木村幹事のお言葉の中にあった属人的かどうかという概念整理の指標,それから脇村関係官が従来,この場で説明してきたときに用いている時効の起算点において論議される法律上の障害がなくなったかどうかという,この指標など,いずれも参考になりますが,それらが相互にぴったり重なるものではないということは既に御指摘があったところであります。脇村関係官が最後に述べたことですけれども,どうしても最後には出てきたその事案の様々な事情を見て決めざるを得ないということでありましょう。しかし,そうはいっても,それは結局一切の事情が勘案されるのですというふうに述べただけでは茫漠とした話になりますから,時効の起算点のお話を参考にするという側面はあるかもしれないし,しかし,中田委員から御注意があったように,全く同じになる議論ではないということは注意してくださいということもごもっともなお話であって,要するところ,そういうお話ではないかという今の委員,幹事の意見交換であるというふうに受け止めます。御発言いただいた皆さん,ありがとうございます。
○沖野委員 これも非常に細かくて申し訳ないのですけれども,二つ,中身を教えていただきたいことがあります。
一つ目が,17ページの「相続財産等の管理」のところで,(1)の①のただし書のところなのですけれども,この後で,相続財産の清算人という表現に改められる場合は,相続財産法人のときと限定承認のときが挙がっているのですけれども,こちらの1の(1)の①のただし書では,限定承認の方は挙がっておりません。これは趣旨としては,936条で相続財産の清算人が選ばれているときも,そちらの方は相続人から選ばれ,かつ必ず複数であれば選ぶということになっているので,それが選ばれていたとしても,保存のために並行して,この管理人を立てることはできると,そういう理解でよろしいでしょうか。
それから,もう一つは話が違いまして,21ページの(2)の調停・審判の申立ての取下げで,10年経過後は相手方の同意が必要というのは,10年経過してしまうと改めて申立てをして,具体的相続分による規律が働かないということが趣旨だと理解していたのですけれども,そうしたときに,そもそもの申立てが10年を経過した後にされていたというような場合であれば,それは,これは妥当しないと,そういう理解でよろしいでしょうか。以上は,中身についてです。
そのほか形式の点で,条文を引いてあるところが,項まで引いてあるところとそうではないところがあるのですけれども,幾つか,例えば19ページの(1)ですと,936条1項,952条になっていますが,936条1項を立てるなら952条も1項かなとか,(2)について「952条2項及び957条」となっていますが,957条は1項だけかなとか,思うところもありますので,大変細かくて恐縮なのですが,今後確認していただければと思います。
○山野目部会長 沖野委員から文言の御注意を含めると3点ありました。
最後のところは承って推敲することにいたしまして,前の2点について事務当局から説明を差し上げます。
○脇村関係官 まず,限定承認の件なのですけれども,ここは実は作るときに悩みまして,この926条と限定承認のこの関係などをどこまで明確にできるのかやや自信がなかったこともあり,明示的には書かなかったというのが正直なところです。ちょっと先生の御指摘を踏まえてどこまで書き得るのか,なかなか限定承認の記述なども,正直言いまして,この解釈論がはっきりしていないところとはっきりしているところが若干自信がないところがございますので,少し精査をさせていただきたいと思います。
取下げの件なんですが,おっしゃるとおり,もう10年たっているやつなので,元々の趣旨からしたら要らないのではないかという御趣旨だと思うのですが,形式的なところで,ここは10年過ぎたものについては一律同意を付けさせていただいています。その趣旨は,結局,やむを得ない事由があったケースの判断が,やむを得ない事由があって10年を超してしたケースについて,それについてはさすがに同意が要るのではないかという気がしましたので,そこだけ,やむを得ない事由があったケースだけ同意というようなことが規律として書きづらかったというのが正直なところです。逆に言うと,取り下げるなら同意をとってくださいということで,若干やりすぎ感はあるかもしれませんけれども,必要なところをカバーするためにやむを得ないかなというふうに考えているところでございます。
○山野目部会長 限定承認のところは,脇村関係官が述べたように従来の解釈理解がはっきりしていないという側面もありましょうけれども,従前,部会で議論があったところを思い起こしますと,限定承認の場合において,清算の任に与る人間を相続人の中から選ぶという規律自体を根こそぎ見直すならばともかく,あのルール自体はそれなりに意味があるから今は手を付けないという前提でいくと,相続人の中から選ばれたその方が,必ずしも法律的な素養や財産管理についての知識,経験を有する者ではないですから,それとは別に清算人を選任し,弁護士であるとか司法書士を選任するというような運用の仕方を可能にするということには,それとしての意義があるという議論がされてきたものであるかもしれません。そのようなことも引き続きの検討の中で思い起こし,事務当局において検討していただければ有り難いと感じます。
○大谷幹事 今の点,補足をいたしますけれども,元々今でも936条の3項で926条が準用されていて,これが保存のためだけの管理人なのか,清算のための管理人でもあるのかというところには,従来から争いがあったというふうに理解をしておりますけれども,この新しい規律の下でも,限定承認がされて,共同相続人がいて,その中の1人が清算人に選ばれたという場合であっても,現行法と同じように,少なくとも保存のための管理人の選任は可能であるということをここで書こうとしていたと。それは前回の部会資料にも確かそのようなことを書いていたと思いますけれども,そういう理解でございます。
○山野目部会長 沖野委員において,お続けになることがあればお話しください。
○沖野委員 ありがとうございます。
第1点目については,きちんとこれまでの議論や資料をフォローをしていなくて申し訳ありませんでした。
あとの取下げの方は,例えばといいますか,(1)柱書き本文の場合というような形で場面を限定するということもあり得るのかなと思ってはおりましたけれども,そういうことも思ったということだけ付言させていただきます。
○山野目部会長 どうもありがとうございます。
なお,沖野委員からは,19ページのところで,条の引用で止めているところと項まで挙げているところとが,必ずしも整理されていないのではないかという御指摘を頂きましたから,そこも注意をして整理をしてみることにいたします。
なお,19ページの2の(2)の,見出しで言うと「民法952条以下の清算手続の合理化」のところは,最後のところが958条を削るものとするとなっている個所は,958条を削除するのでしょうか。これは番号が動いてしまうような気もいたします。ただしそれと同時に,従来の法制審議会の答申において,法制上は削除にするか削るにするか区別を要する個所において,必ずしもそれに即応して記してこなかった経験もあったような記憶もありますから,答申の書き方と法制上の表現の従前の例を確かめた上で,適切に処置していただければ有り難いと考えます。
引き続きお話を承ります。いかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
それでは,部会資料51について,大きく三つの柱でお諮りした事項,「相隣関係」,「共有等」,それから「相続等」についてということでお諮りした諸問題について,委員,幹事から本日は熱心な御議論を頂いて,たくさんの有益なお話を頂戴いたしましたから,これらを更に整理をするということにいたします。
部会資料51について,本日予定している審議をここまでといたします。
次回の会議等について,事務当局から案内を差し上げます。
○大谷幹事 次回の議事日程でございますが,来月,12月1日火曜日が次回になります。また同じように午後1時から,この法務省大会議室で開催させていただきたいと思います。
テーマといたしましては,要綱案のたたき台ということで,民法関係の残りの部分を次回にお示しをして,御審議を頂きたいと思っております。今回同様に終了の時刻について定めませんけれども,その御審議が終わった時点で閉会とさせていただく見込みでございます。
○山野目部会長 次回の日時,会場,予定されている審議事項について御案内を差し上げました。
この際,部会の運営について,お尋ねや御意見がありますれば承ります。いかがでしょうか。
よろしゅうございましょうか。
それでは,本日も熱心な御審議を頂きまして誠にありがとうございました。これをもちまして,民法・不動産登記法部会の第21回会議をお開きといたします。