そうしましたらならば,部会資料46をお取り上げくださるようにお願いいたします。
相隣関係規定等の見直しについて,御相談を差し上げます。
部会資料46の1ページは,第1といたしまして,隣地使用権の見直しについてお諮りをしています。そこに御提示しているもの全般について見ていただきたいと考えます。
基本的な趣旨は,第14回会議でお諮りした部会資料32と同じであります。ただし,本日やや念入りに御議論いただきたいと考えます事項は,隣地に立ち入るに際して,コミュニケーションを取らなければならない相手が,隣地の所有者であるか占有者であるか,あるいは,はたまたその両方であるかということについては,第15回会議における問題提起を踏まえて議論の材料を用意しておりますから,ここについて御意見を承りたいと考えます。
おめくりいただきまして,5ページにまいりますと,越境した枝の切除等について,これも,部会資料32と基本趣旨を同じくする提案を差し上げております。ただし,竹木の枝の切除,根の切取りの費用とか越境した枝から落下した果実の扱いなどにつきましては,6ページで御案内しているとおり,規律を置かないという方向での提案を差し上げているところであります。
それから,おめくりいただきまして,8ページのところは,導管等設置権及び導管等使用権につきまして,部会資料32でお示ししているものと同様のものを御提示申し上げております。
部会資料46の全体について御意見を承ります。いかがでしょうか。
○橋本幹事 まず,第1関係ですが,請求の相手方をどうするかという点については,日弁連のワーキングの意見では,占有者でよろしいのではないかと,占有者説が多数でありました。その場合,占有者の権限については問わないということについても,賛成するという方向です。
①のただし書なんですけれども,この点について,補足説明で,現行法の規律と実質的に変えるつもりはないんだという説明をされているんですが,承諾を求めることができないという,仮にこのままの条文になっちゃうと,現行法よりも狭くなっちゃうふうに読めちゃうので,ここは,補足説明の趣旨が通るような表現でお願いしたいということです。
第2関係ですが,第2関係全体として,方向性としては大きな異論はありません。賛成方向です。その上で,竹木が共有の場合について,共有者の1人の承諾で可とするという提案になっているんですが,これは,部会資料32のときには,これは変更行為か管理行為かという議論はされていたんですが,今回はそういうことはもう問題にせずに,1人でいいんだという決め打ちをするという趣旨の提案という理解でよろしいんでしょうかという,確認のための質問です。
それから,②のcですね。著しい損害又は急迫の危険を避けるため,急迫の危険という話が入ってきましたけれども,要件をもうちょっと具体化できないだろうかという要望がありました。
それから,落下した果実の扱いについて,大きな反対ではないんですが,従前の部会資料32の当時の,処分権限を認めるというものを付けた方がいいんではないかという意見がありましたということを,紹介させていただきます。
それから,第3関係ですが,②の点についていろいろ意見が出されまして,これについては,やはり竹木の枝の切除と同じように,共有の場合ですね,導管設置についての承諾について,変更行為なのか管理行為なのかという問題があろうかと思うんですが,やはりそこは度外視して,過半数でいいんだという割り切りの御提案という趣旨なんでしょうかと。というのは,導管,埋めちゃえば表面からは見えないけれども,やはり性質としては変更行為なのではないかと。なので,過半数というのは筋としておかしいのではないかという意見がありましたので,その部分についての確認をさせていただきたいということです。
それから,提案には書かれていないんですけれども,導管が設置されているということについて,何らかの公示方法が必要なのではないかという意見がありました。これは,公示方法なくても,対抗力は何人にでも対抗できるという意味での提案なんでしょうかという質問を含むと思うんですが,例えば,導管を設置した方の土地が,将来売却などされて,買受人がそこに埋まっているのを知らないという場合が想定されるんですけれども,そういった場合の調整についてはどうするのかと,公示方法がなくても,隣地の導管を使用している側の権利が,常に優先するという考え方に立っておられるのかということを聞きたいという点です。
おおむね以上です。
○山野目部会長 ありがとうございます。
橋本幹事におかれて,弁護士会の御意見を取りまとめいただき,御意見をおっしゃっていただいた点も多々ありました。それから,確認のためのお尋ねというおっしゃり方でしたけれども,大体3点だったでしょうか,共有されている竹木の扱いについての疑義,それから,関係する土地が共有である場合の導管設置権の規律の在り方についての疑問,それから,同じく導管設置権,導管等使用権についての,第三者対抗可能性と呼んでもいいようなお話の関連の確認のお尋ねでした。
これら3点を中心にして,事務当局からお話しください。
○小田関係官 関係官の小田でございます。
まず,1点目の竹木の枝の議論でございますけれども,こちらは,従前,変更行為だったり管理行為の議論させていただいておりましたが,今回は,その議論とは関係なく,共有者の1人の者に対して枝を切り取らせるという規律を設けるということを提案しております。ですので,変更行為か管理行為かという話は,ここでは直接的には関係ないということになろうかと思います。
導管の方の共有についてでございますけれども,こちらは,承諾をする側が,本来変更行為に当たる行為であっても,この特殊性といいますか,導管設置の必要性であったり,他の土地等を使わせる義務を負っているという特殊性から,一律に過半数で足りるというような整理ができないかというところで,提案させていただいております。
今までの従来の議論であれば,変更行為に当たり得る行為であっても,一律に過半数で足りるというところを提案させていただいております。従来の議論からは変更行為の枠に入ってくるものも,ここでは過半数でできるというところを提案させていただいておりますので,そのような理解で御議論していただければと思っております。
最後に,導管の公示について御意見を賜りました。どのように公示するのかというところが難しいところかと思うんですけれども,我々の考えとしては,相隣関係の権利として,発生したものに関しては,次の所有者についても引き継がれるというところで考えております。ここについては,そういう権利があるものとして,その土地を買う方が調べていただく,あるいはその周りの土地を買う方が調べていただくということになるのではないかと思っております。
○山野目部会長 橋本幹事におかれて,ただいま小田関係官から案内を差し上げた内容を,弁護士会の先生方にお伝えいただければよろしいと考えます。
最後に話題になった点につきましては,改めて考えてみますと,小田関係官も今述べたように,従来の他の相隣関係上の権利,典型的なものは,公道に至るための通行権でありますけれども,あれは登記の対象になっておらず,小田関係官が述べたように,登記されていなくても,特定承継人に対して追及するといいますか,拘束が及ぶという前提で,あとは,例えば,売買当事者間では権利の不適合があったものとして,民法565条が定める,売主の契約不適合責任の問題として処理してもらうという発想で運用してきたものでありましょう。
今,導管について何かそこについて特別の規律を講じますと,通行権の方についても何かしなければならないという話になってきそうでもあります。いろいろ波及する問題も含めて考えていかなければいけないというような状況を,お伝えいただければ有り難いと感じます。
何か補足しておっしゃられることはおありでしょうか。
○橋本幹事 今の説明,そういう説明だろうと予想しておりました。それを含めて,方向性としては,大きな反対論はありませんでしたということです。
○山野目部会長 どうもありがとうございました。
○潮見委員 先ほど弁護士会の発言がございましたから,1ページ目の点について,やはりどうしても言っておきたいと思いまして,発言をさせていただこうと思った次第です。
弁護士会の御意見,1ページ目の点で,占有者がよいということで御発言になりました。当面する問題の処理として,それが最適であるということであるならば,私はそれに,あえて反対するつもりはありません。
ただ,理屈っぽい話ですけれども,相隣関係というルールという制度は,基本的に所有権同士が衝突する中で,一方の所有権が他方の所有権のために制約を受けると。他方の所有権を一方の所有権のために拡張するという枠組みで制度が作り上げられてきたというように理解をしておりますし,その基本は,今でも私は変わっていないと思っております。
そういう意味では,ここの1ページ目で提案されている内容での隣地使用権についても,相隣関係という制度の枠の中で考えるということからすれば,隣地の使用によって所有権が制約を受けるという観点から,所有権の制約が必要か否かとか,その要件はどうなるのか,また他方,その隣地を使用する側の所有権の拡張という必要があるのか,あるいは,その要件は何かという観点から比較考慮をするべきであって,この問題を占有レベルでの調整という形で考えるべきではないし,理論からいったら,そうならざるを得ないというように思います。
先ほど申し上げましたように,当面する問題の処理として,占有者ということを相手にして承諾を求めればよいということであるのならば,こだわりません。新しい制度をここで作るんだと割り切るしかないとは思いますけれども,従前の伝統的な相隣関係という枠から考えますと,基本はやはり,相手方は所有権者であり,さらに,少し進めて所有者から土地の占有権限を与えられた者というように捉えていくというのが,理論としては筋ではないかと思います。さらに,それを崩して占有者まで広げるのが適切かという観点から,考えていくべきではないのかと思いました。
そういうこともありまして,弁護士会がおっしゃった考え方には賛成できないということを,最後にお話ししたいと思います。
○今川委員 まず,第1の①のただし書については,橋本幹事がおっしゃった弁護士さんの考えと同じ意見で,逆の効果が発生するので,単に削除するだけでいいのではないかという意見があります。
それから,これも,橋本幹事が質問されて,当局の方で回答いただいた件ですが,越境した枝の切除について,その共有者,数人の共有に属する場合ですけれども,14回会議では,部会資料32では,変更行為に該当するから全員の同意を要するという意見もあったという記載があって,また,部会の席上で,保存行為と位置付けてもいいのではないかという意見もありました。今回,そこは全く考えずというか,関係なく,1人に対して請求できるという規律ですという回答を頂いたのですが,共有物について,単独でできるのか,過半数でやらなければいけないのか,全員の同意が要るのかということは,できる限り明確にしていこうという要請があるので,今回もこのような規律を設けるのであれば,枝の切除は保存行為として捉えているということを,やはり積極的にというか,あえてはっきりとさせておいた方がいいのではないかという意見が,我々の中にありました。
○山野目部会長 司法書士会の御意見を承りました。ありがとうございます。
松尾幹事,どうぞ。
○松尾幹事 ありがとうございます。
まず,部会資料46の1ページ,第1,隣地使用のための①承諾請求および②催告の相手方につきましては,先ほどの潮見委員の意見に賛成です。この隣地使用のために承諾請求や催告をするということが,一つの権原の取得という意味を持つのであれば,その相手方はやはり既存の権原を持っている者であることが,土地所有権の効力を調整する相隣関係法理の趣旨に相応しいと思います。確かに,占有者に対する承諾請求や催告で足りると法律で定めればよいといえないことはないですが,承諾請求や催告の意味は,部会資料46の2ページ,下から2段落目で言及されている,占有訴権を発動させないための要件とは異なるもので,占有訴権レベルの問題ではなく,権原付与の問題であるということは,明確にしておく必要があるのではないかと考えます。
それから,もう1点,部会資料46の1ページ,第1の③では,承諾請求や催告をしなくても,①の目的の範囲内で隣地の利用ができる要件として,著しい損害又は急迫の危険を避けるためという新たな要件が設けられました。前回14回会議の部会資料32では,所有者の特定不能又は所在不明というのが要件として挙がっていて,隣地使用権の場合には公告をして,枝の切除の場合には公告を要することなく,隣地の使用や越境した枝の切除を認めるという構成になっていました。その要件に代えて,著しい損害又は急迫の危険,急迫の危険は既にありましたけれども,これらの要件が,所有者不明の要件の代わりに入っているという特徴があるように思います。
この変更の経緯について,御説明を伺いたいと思います。
○山野目部会長 二つおしゃっていただいたうちの後ろは,お尋ねでした。隣地所有者が不明であるようなケースについて,前回部会資料用32までと,その点に関して見ると,異なる規律の提案がされている経緯を教えてほしいというお話でした。
経緯のお尋ねですから,事務当局の方から差し上げます。
○小田関係官 御質問ありがとうございます。
所在不明又は所有者不明の場合の特則といいますか,規律を今回提案から落とす形になっておりますけれども,当初,その規律を置いていた趣旨といいますか,困っている場面というのをよく考えてみると,平時の場面と緊急時とに分けて考えることができるのではないかなと考えておりまして,平時の方は,②の規律で公示による意思表示を使うことで,裁判所の手続も介すということで,適切にやっていくということができるのではないかと,緊急時の方は,従前急迫の特則を提案しておりましたけれども,そちらの規律で対応できるのではないかというところで,所有者不明の特則を落としたという経緯でございます。
この③の著しい損害というところなんですけれども,必ずしも所有者不明の特則を落とすことのバーターとして入れたという趣旨ではございませんで,民事保全法の要件と同程度の要件がなければ,隣地使用をしてはいけないのではないかという価値判断で入れたものでございます。結果として,著しい損害というところが,所有者不明と絡むところとして補足説明で書かせていただいておりますけれども,経緯はそのようなものでございます。
○山野目部会長 松尾幹事におかれては,いかがでしょうか。
○松尾幹事 はい,分かりました。
ということであると,従来の所有者不明の場合に対応するというのは,むしろ②の方で,催告して確答がない場合というところで,むしろ対応するということになるでしょうか。
○小田関係官 そのような理解でおります。
○山野目部会長 よろしゅうございますか。
○松尾幹事 はい,分かりました。
○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。
○藤野委員 ありがとうございます。
まず第1なんですが,理論上の観点からのお話をいろいろ頂いている中では,非常に発言しづらいところではあるんですが,やはりここは,実務的な観点で申し上げますと,承諾を求める対象は隣地の占有者のみにしていただかないと,なかなかちょっと厳しいかなというところはございます。この隣地使用権で認められる使用類型の所有権に対する制約というのが限られたものに過ぎない,であるとか,ちょっとそういった理屈付けで何とか実務上のニーズに即したものにしていただけないものかというところで,引き続き占有者のみを対象とするという案を支持したいというところでございます。
あと,先ほど御指摘のあった第1の③につきましても,この要件を満たした場合に承諾なく隣地使用ができる場合というのを一定の範囲で用意しておいていただくということが,やはりいざというときには必要なのではないかというところがございますので,こちらについても賛成の意見を述べさせていただければと思います。
越境した枝の切除に関しては,先ほどから御指摘が出ておりますとおり,共有者の1人に枝を切除させることができるという点に関しては賛成でございまして,他の点についても,特段異論ございません。あと,導管等設置権に関しましても,今,本文に書いていただいている内容に関しては,基本的に賛成できるということを申し上げたいと思います。
○山野目部会長 少しここのところで議事の整理を差し上げます。
隣地使用権の行使に当たって,コミュニケーションの相手方として選ぶ者が,所有者であるか,占有者であるかという議論につきましては,潮見委員及び松尾幹事から,相隣関係の規律の本質に照らすと,所有権相互の調整であるから,所有者であるべきだろうという御意見を頂きました。藤野委員からは,実務上の観点から,占有者であってほしいという御意見を頂きました。
恐らく,その占有者であるという選択にする際は,相隣関係に関する規律の209条の趣旨としては,客観的要件を満たせば,所有者は隣地に立ち入ってよいものでありますということになるでしょう。ただし,その手順として,そこに現に使用している者がある場合において,その人とのコミュニケーションは,言わば政策的に求められることになりますという説明になるものであろうと考えられます。理論的にはそういうお話になりますが,そのような施策の採用がよいかどうかは,ただいま御発言いただいたようなもろもろの観点を踏まえて,議論が続けられなければなりません。
なお,関連して申し上げますと,所有者か占有者かといいますが,これ,所有者が自ら賃貸借契約の賃貸人になって,賃借人に使わせているときには,所有者は間接占有を有していますから,占有者の承諾を得ればよいと言ってみても,間接占有者が含まれるならば,結局は所有者である人の承諾も得なければならないことになってしまうものであり,何かこの部会資料が所有者ですか,占有者ですか,どちらですかと,畳みかけるように尋ねますが,その問い自体をひょっとしたら問い直さなければならないものであるかもしれません。
引き続き,國吉委員からの御発言を承ります。
○國吉委員 第1の隣地使用権のところで,ちょっと意見を述べさせていただきます。
まず,先ほども幾つかの幹事,委員からありましたけれども,第1①のただし書の部分です。住家への立入りについては,私どもの経験値から,境界標の探索のために,どうしても隣家ですね,住宅に入らせていただくという場面があるということを,御紹介して協議を頂いたところですけれども,ただ,このプライバシーですとか強要的なものが含まれてしまうのでということで,現行法上でも,当然ながら通常の隣人同士の間柄であれば,おのずと承諾を得られるということですので,現行法を基本に維持するということであるんであれば,このただし書の部分については,できれば削除を頂きたいというのが意見でございます。
それから,隣地使用権の相手方ですけれども,ここに書いてありますa,b,cの目的を達成するためには,どうしても最終的には隣地の所有者の承諾なり確認なりが必要ということになります。そのときに,占有者だけにその目的を説明するかというと,通常であれば,当たり前のように所有者自身に隣地を使用する目的を説明するというのが,現実的というか,実務上もそうだと思います。そのときに,実際にこういった境界標の近くに構築物を造ったり,測量のために入るというには,やはり占有者,実際にそこに,その土地なり建物を利用している方に,やはり承諾を得るというのが通常の業務だと思います。となると,やはり,ここであります隣地の占有者という方に,隣地使用を求めるというのが一番というか,合理的なのではないかなと思います。
ただ,その使用する目的については,あらかじめ所有者には説明をしておくというのが,実務の取扱いになると思いますので,その辺の所有者なのか占有者なのかってありましたけれども,先ほど部会長の方からもありましたけれども,実質的には占有者という表現でいいのではないかと思っております。
○山野目部会長 ありがとうございます。
國吉委員が前段でおっしゃった①のただし書のことでございますけれども,國吉委員のみではなくて,先ほどから伺っていると,このただし書の部会資料が提示している文言は,非常に評判が悪うございます。
確認ですが,私の理解するところでは,委員,幹事の間で,この住家への立入りの関係でのルールの実質的内容についての意見の対立は恐らくないものであろうと感じます。これを規律として表現していくときに,その波及効果であるとか,誤解を出来するおそれであるとかの御心配の観点から,いろいろ御指摘を頂いたと理解しております。もし誤っていれば,御指摘を頂きたいと望みますが,もしルールの実質についての御意見のコンセンサスが見られるのであれば,あとは,法制上,誤解のないような,無理のないような法文に整えていくという作業を,今日頂いた御意見を踏まえて,また整理をして,次の機会に御相談を差し上げるということにいたします。ありがとうございました。
道垣内委員,大変お待たせをいたしました。どうぞ,御発言ください。
○道垣内委員 申し上げたいことは二つあって,その前者として申し上げたいことは,実は,山野目さんがおっしゃってしまったので,あんまり申し上げなくていいのですけれども,どういうことかと申しますと,第1の①の所有者プラス占有者か,占有者かという問題について,所有権の調整の問題であるから所有者も入るよねという話に関して,それでも占有者だけにするという論理はあり得ないのかというと,僕はどちらがいいというのではなくて,あり得ないのかというと,あり得るのだと思います。山野目さんがおっしゃるように,実態的な要件が満たされれば,片方の所有権はへこむというか,制約されるのだが,しかしながら,それを自力救済で勝手にやるというのはいけなくて,平穏が乱される人に対して承諾を得るという手続が必要なのであって,所有権の調整の問題自体は,既に実態的な要件の具備によって,ある種結論が出ていると説明するのかなと思います。実質論として,所有者のオーケーを取った方がいいのではないかという気は,私はするのですが,理屈上立たないかというと,立つのかなという気がします。
もっとも,同じく山野目さんがちょっとおっしゃったことが,本当かという気がしたものですから,ちょっと一言申し上げます。
非常に今日の話の中心でないところで恐縮なのですけれども,山野目さんは,公道に至る通行権の話をされまして,それが発生していると,次の人にも受け継がれるとおっしゃったんですが,それって,やはり要件が満たされていれば,公道に至る通行権というのは当然に発生するから,本来的には,継承といいますか,そういう問題ではないのではないかと思うのです。つまり,新所有者が出てきたときに新たに判断しても,同じ結論が出て,同じような通行権が認められるはずだということなのではないかなという気がするわけであって,そうしますと,山野目さんがおっしゃったことで何が気になったかというと,担保責任を売主は負い得ると,そういう通行権があるというようなことであったならば,その土地の通行権が存在している,存在というのは,通行権の負担のある土地の売主の場合に,そういう担保責任を負うことがあるとおっしゃったのですが,そうなのかなと。通行権が仮にその時点でないというか,通行されていなくたって,客観的にはそれ,発生し得る,発生というか,存在しているものなのだから,別に担保責任の問題は生じないのではないかなという気がしたというのが,非常に細かい点なのですが,1点目です。
2点目は,竹木の共有の話ですが,これも,共有物であろうが,その所有者である限りにおいて,その人に対して,どかせと多分言えるんだろうと思うんですね。それは,共有の石が上から落ちてきたとしても,共有の自転車が放置されているとしても,共有者の1人に対してそういう請求はできるのだろうと思います。そして,請求をして,その上で,相手方にはそういう義務があるわけですが,それを一定の要件が満たされれば,自力救済で切ってもよいという,それだけの話であって,保存行為とか処分行為だとかという問題とは,直接には結びつかない問題なのではないかなという気が,私はいたします。これも,私が是非共有者の1人でいいとすべきであると主張しているというわけではなくて,保存か処分かという話ではないよねという感じがするという,そういう話でございます。
○山野目部会長 ありがとうございます。
道垣内委員から,細かく見ると,三つの話題をおっしゃっていただきました。
1点目,隣地立入権のコミュニケーションの相手方として,所有者とするか,占有者とするかという問題につきまして,相隣関係の本質との関係の議論を整理していただきました。一つ前に,私が何かぼそぼそと申し上げたことと同じ内容のことを極めて明快に整理を頂くことができました。
2点目でありますけれども,公道に至るための通行権の目的になっている土地について,特定承継が起きた場合の扱いについても,明快な整理をしていただきました。先ほど私が565条の規定による売主の契約不適合責任の問題でしょうというお話を申し上げたことについても,御注意を頂きました。なるほど,本当か,というお叱りを受けると,そのとおりですね。不調法をいたしました。御注意を踏まえて,改めて申し上げれば,通行権なんてないよということが,当該個別の契約において,565条が参照する562条にいう契約の内容になっていれば,契約不適合責任が発生することがあるかもしれないという程度の話でありまして,先ほどの申し上げようは不正確でございました。
それから,3点目は,共有竹木について,1人の人とコミュニケーションを取れば足りるという規律の提案そのものについて,本日の部会の中で意見の険しいそごがあるとは見えませんけれども,今川委員から保存行為であるという性格付けを明らかにしてほしいというお話を頂いたのに対して,道垣内委員から,いやいや,必ずしもそういう議論にならないのではないかというお話を頂きました。
いずれの発想もごもっともなものでありまして,今川委員も恐らく,これを保存行為とすると法文に書けという趣旨ではないだろうと考えますから,道垣内委員に御注意を頂いたように,保存行為そのものであるというよりは,1人とコミュニケーションをすれば,話を進めることができるという趣旨の解決を採っていこうという方向を確認した上で,どのくらいの丁寧さで事に当たらなければいけないかは,レベルは保存行為と同じだよねということであり,ただし,それを保存行為と言ってしまうということについては理論上問題がありますという,道垣内委員のお話は,そのとおりではないかと感じます。
都合3点,ありがとうございました。
引き続き御意見を承ります。
畑幹事,どうぞ。
○畑幹事 ありがとうございます。
今の竹木の共有なのですが,結論的には,ここに書いてあるようなことでいいのかもしれないとは思うのですが,理論的な説明というのは,やはりなかなか考える必要があるのかなと思います。②の自力救済的なところは,実体法的な規律としてこういうこともありうるのかなと思いますし,①の方もこういう規律はありうるのかなとは思うのですが,6ページの説明のところですと,共有者の1人に対して,竹木のために訴訟は実際にはしないかもしれませんが,債務名義を取得して,それによって強制執行もできる,ほかの共有者は邪魔できないということになっているのですが,一般的にはそういうことはあまりないのではないか,共有物について,共有者の1人を被告として訴えて,それで,ほかの人が何を言おうが強制執行できるという事態は,一般的には余りないのではないかと思われますので,ある種政策論としてこういう規律が望ましいということであれば,何か理論的な説明というのは,大分考える必要があるのではないか。
皆さん御存じのように,共有が絡む場合の訴訟というのは難問の一つで,私も確たることを申し上げられないのですが,理論的にはちょっと難しい問題を残すのではないかと思われます。実際には,自力救済の方で処理されるのではないかとは思いますが,理論的にはちょっと問題が残るかなという感じはいたしました。
○山野目部会長 畑幹事の共有関係訴訟の処理の難しさに関わる御指摘は理解いたしました。事務当局において,更に検討いたします。ありがとうございます。
○中田委員 3点ございます。順番は,今の畑幹事の御指摘のところから始めます。
ここでの問題は,所有者が,竹木の共有者に対して何が請求できるかということと,それから,竹木の共有者の1人が何ができるかという問題とが混在していて,その整理が必要ではないかと思います。所有者が竹木共有者の1人に請求できるというのは,多分,最終的には代替執行になるだろうから,問題ないのではないかというようなイメージがあるのではないかと思うのですけれども,そのことと,所有者が請求すれば,共有者のうちの1人が切除できるという権能を取得するということは,別の問題だろうと。そこが交じっているので,分かりにくくなっているのではないかと思いました。
それから,2点目は,①のただし書,住家の立入りについての承諾を求めることはできないという書き方について,様々な御指摘があったわけですが,その御指摘は理解できるんですけれども,恐らくこれは,現在の209条1項本文,使用請求というのを承諾請求にした上で,第1の②,③という例外を設けていくという立て付けにして,その上で,現在の209条1項ただし書をどのように表現するかということと絡んでいるのだろうと思います。ですから,全体として,209条の規律をどのように設けるかということを併せて考えると,表現の問題なのかなと感じました。それは恐らく,最初の頃に藤野委員がおっしゃったこととも関係しているのだと思います。
それから3点目は,導管の点なんですけれども,前回の御提案のときから,他の土地に囲まれているということは要件としないということになりました。そこで,甲という土地が,継続的給付を受けるために導管を設置する必要があるというときに,それが乙という土地を使っても,丙という土地を使っても,どちらでも可能であるというときに,かつ,乙と丙の所有者が違う場合に,どちらになるのかという問題があると思います。
民法211条と同じような規律が,7ページにあります第3の1の④にあるわけですけれども,民法211条の場合には,囲んでいる土地の通行権があるということを前提にして,その中での通行の場所や方法の制限になると思うんですけれども,導管等については,囲んでいるという要件がないものですから,どの土地になるのかという,その前の問題がより多く出てくると思うんですね。その点が,7ページの第3の1の④で十分に表されているのかどうかということは,なお検討する必要があるのではないかと思います。
前回も211条との関係の発言をして,今申し上げた趣旨のつもりだったんですけれども,少し言葉が足りませんでしたので,改めて申し上げたいと思います。
○山野目部会長 中田委員から,御自身で整理いただいたとおり,3点についての御案内を頂きまして,いずれも誠にありがとうございます。
1点目の共有竹木の関係は,御指摘のとおりでありまして,1人の人とコミュニケーションを取れば,隣地所有者が何かをすることができるというルールといいますか,理解でいくからといって,たまたまコミュニケーションの相手方となったその1人が,それについて何でもできるという権能を生ずるというふうなことを始めとして,論理が飛躍していくことは困るから,よく論理を整理してくださいという御要望でありました。
2点目は,隣地立入権の際の話題となっているただし書を含む文言の整理について,部会の中における意見の実質を見ながら,さらに,表現の問題と中田委員はおっしゃっいましたけれども,整えてくださいという御要望も承りました。
3点目といたしまして,導管の設置,使用との関係で,211条並びの文言の提案を,現在は差し上げております。しかし,公道に至るための通行権と事情が異なる点は,取り分け第12回会議で全国宅地建物取引業協会連合会から出された意見などで代表されるように,実際の現場を考えますと,他の土地に囲まれている土地ということを要件とすると,いろいろ実情に適しない問題が出てくるという指摘があったところを踏まえて,導管に関しては,そのような要件を課していません。そのことから,中田委員が御指摘のとおり,単に211条並びの考慮要素を挙げることでは足りず,一言で言えば,土地の選択に関わる問題があるということを分かる規律表現にしていかなければならないということでありまして,それは,前回審議をした際の中田委員の御指摘を,私及び事務当局において正当に漏れなく承っていなかった憾みがあるかもしれません。
ただいまの御指摘を踏まえて,更に検討してまいりたいと考えます。どうもありがとうございました。
垣内幹事,お願いいたします。
○垣内幹事 ありがとうございます。
直前に,畑幹事,中田委員が発言された点と重なる部分がありますけれども,5ページから6ページにかけての枝の切除に関する点ですけれども,先ほど来御発言がありますように,共有者の1人に対して枝の切除を求めることができる,させることができるという,ですから,1人を,例えば,被告として訴えを提起したときに,請求が認容されるということと,強制執行について,他の共有者の同意なくすることができるかどうかということとは,一応別の問題なのかなという感じがいたしますので,それぞれについて求めることができるということが第1段階としてあり,さらに,6ページのところの説明のように,同意が不要であるという規律まで引けるというためには,もう一段階何か説明をしていく必要と申しますか,その根拠を考える必要があるのかなという感想を持ちました。
○山野目部会長 どうもありがとうございました。
先ほどの畑幹事の御指摘と併せて,取り分け垣内幹事が強調されたように,強制執行段階の手順のことも描いてみて,検討を更に皆さんにお願いしてまいりたいと考えます。
佐保委員,どうぞ。
○佐保委員 ありがとうございます。
隣地使用権の見直しの考え方については,特に異論ありませんけれども,その一方で,隣地所有者の権利保護については,一定程度の配慮が必要ではないかと考えます。隣地の所有者に対する説明といった一定の配慮があるべきと考えております。
○山野目部会長 どうもありがとうございます。
所有者とか占有者とか言いますけれども,國吉委員もお話になったように,現場をまろやかに進めるためには,思い付く人みんなのコンセンサスを得た方がよいというアドバイスは,もとよりごもっともであると承ります。
中村委員,どうぞ。
○中村委員 ありがとうございます。
1ページ目の第1の③,それから第2の②のcの要件を,従前の急迫の事情から,著しい損害又は急迫の危険に変えての御提案の趣旨は理解できました。
また,従来ですと,民事保全法に基づく仮処分命令を取ってしなければならなかったことを,1ページ目の①のa,b,cの目的が限定された場面において,著しい損害又は急迫の危険がある場合には,承諾なくできるということにするということについての必要性なども理解できました。その上で①のa,b,cを見てみますと,cですと,資格のある測量士さんが必要最小限のことをされるのでしょうから,それほど大きな侵襲があるとは思わないのですけれども,bですと,規模によっては,枝を運び出すためのトラックが入ったりとか,aですと,もしかしたら重機が入ったりとかというようなことも想定されるかと思います。
そこで,この隣地使用権で承諾を得ることなく入るような場合に,7ページの導管等設置権の④の3行目にあるような,隣地のために「損害が最も少ないものを選ばなければならない。」というような定めを入れてもいいかもしれないという気がいたしました。
○山野目部会長 中村委員にお尋ねですが,目的のために必要な範囲内で,では,心もとないというお話ですかね。
○中村委員 目的のために必要な範囲内というのは,行為者の側から見た要件ですが,踏み込まれる側のといいますか,隣地の人からするとということですね。
○山野目部会長 踏み込まれる側の要素になっていない,なるほど。御意見の趣旨はよく分かりました。検討いたします。
ほかにいかがでしょうか。
大体部会資料46の相隣関係規定について,御意見を承ったと受け止めてよろしゅうございましょうか。
それでは,引き続き部会資料47についての審議をお願いいたします。
部会資料47をお取り上げください。
共有関係の見直し,その中でも,通常の共有関係の解消方法について,御相談を差し上げます。
「第1 裁判による共有物分割」,これのみをお諮りするものであります。
部会資料37を第16回会議にお示ししておりましたが,その方向を基本的に維持して御案内を差し上げているものであります。見かけが異なっている点は,部会資料47,1ページ目の第1②のイの,いわゆる全面的価格賠償に関わる事柄についての表現についての調整,見直しをした上でお諮りをしておりますけれども,部会資料37で御案内した内容,基本趣旨の本質を変更するものではございません。
それでは,この部会資料47について,御意見を承ります。中村委員,どうぞ。
○中村委員 ありがとうございます。
今回の御提案については,日弁連のワーキンググループは賛成が多数でございました。
その上で,よりよくするためにというようなことで意見が出ておりましたので,御紹介したいと思います。
まず,前回,第16回の議論の際に,平成8年の最高裁判例の判断要素を明文化できないかという意見があるということをお伝えしたのですけれども,今回の資料では,それを御検討いただいた上で明文化は難しいという記載になっております。
これに対して,日弁連の方では,最高裁が示している判断要素は,実務上重要な意味があって,当事者の主張の指針になるものなので,全て盛り込むのは難しくても,例示でもよいから示すことはできないか,また,部会資料の2ページの2行目後半から示されている懸念というのは,記載の仕方の工夫によっては払拭できるのではないかという意見が上がっておりましたので,まず1点目として御紹介いたします。
それから2点目ですけれども,本文の②のアとイの記載ですが,これは,最高裁の昭和62年4月22日判決の分類に基づくものと承知しておりますけれども,法律知識のない人にとっては,部分的な価格賠償がアに含まれると読み取ることは難しいかもしれないと思います。法文上,選択肢が明記されるように工夫ができないかという指摘がありましたので,御紹介いたします。
○山野目部会長 弁護士会の意見をお取りまとめになり,御紹介いただきまして,ありがとうございます。
藤野委員,どうぞ。
○藤野委員 ありがとうございます。
今回出していただいている提案なんですが,やはり先ほど御指摘あったとおり,②のア,イのところの表現ですね,こちらの方は,非常にフラットな形で表現されていまして,本来の趣旨がより伝わるのではないかと思っております。
内容的には,もうこれでいいかなと思わないこともないのですが,やはりいろいろ,事業者の実務的な見地からの意見を聞いてまいりますと,要件の明確化といいますか,予測可能性,要は,共有物分割請求をかけたときに,確実に賠償分割という結論を得たい場合にそれが得られるような要件化ができないのか,こういうときに賠償分割を請求すれば認められるというような要件,あるいは指針のようなものを何か書き込むことはできないのかという意見は出ております。
もちろん難しいのは重々承知しておりますが,最高裁判例の要件の中でも,共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当である,と認められる場合というのがどういうときなのかというところが,実務者としてはすごく気になっているところではございますので,先ほど中村委員がおっしゃったような,例示で要件を明記していただくという案もございますし,あるいは,もっと何か違う形で,できることはあるのではないかと思っています。今までは純粋に,まず現物分割ありき,特段の事情があれば賠償分割ということで進められていたことが多かったと思うのですが,今後,土地の細分化により管理が困難になることを防ぐという観点からも,賠償分割をより積極的に活用していくという考え方もあるのかなと思いますので,ちょっとその辺を,より当事者予測可能性が立つような形で何か作っていただけると,これ,条文に入れてくださいというお願いなのか,それ以外のところの話になるのかというところはあると思うんですけれども,一応要望としては,そのようなところでございます。
○山野目部会長 藤野委員におかれては,経済界の様々な御意見をお届けいただきましてありがとうございました。
中村委員と藤野委員から共通に,やはりこの②のイを中心とする部分につきまして,平成8年10月31日の最高裁判所判例が示す要件に関わって,簡単に言うと,簡単過ぎる書き方になっているから,もう少し規律文言の詳細性を高めることができないかという方向からお話を頂いたものであって,それぞれごもっともであると感ずるとともに,お話を承っているところの直感で言うと,もっとここ,文言を豊かにして明確化してほしいとおっしゃっているお二人の,しかし,考えていることの中身は異なるというか,ひょっとすると正反対だったりするかもしれません。弁護士実務の観点から明確にしてほしいと述べられる姿と,経済界が明確にしてほしいお考えになっている姿は,一致しないかもしれませんね。また,それが,ここの文言を豊かにしていこうとすることの努力にとっては,かなり困難な事情の一つなのかもしれません。
しかし,今のお二人の御意見を承って,更に検討してまいります。沖野委員,どうぞ。
○沖野委員 ありがとうございます。
2点申し上げたいと思います。
まず,基本的にこの形でお願いできればと思います。特に②の書き方については,前の資料からこのような形に変更していただいたのは,よいことではないかと思っております。その上でですけれども,一点目として,今も言及のありました考慮要素について,2ページの冒頭のところに二つの問題点が書かれています。一つは,明文化するにしても,適切に,それなりに網羅的に判断要素を挙げることができるのかということ,2つ目として,賠償分割についてのみ判断要素を挙げることによって,これがあたかも劣後的な方法であるというようなインプリケーションを意に反して与えないかという,二つの問題が挙げられております。
ただ,判断要素を明文化するということについては,ある程度具体的なものを挙げた上で,一切の事情というような形で受けるということは,あり得るのではないかと思っております。
それから,二つの方法の間の優先劣後のインプリケーションにならないかという点については,一つのアイデアですけれども,両者を包含するような形で,適切な方法を選び取るための判断要素を挙げることができないかと考えております。このことは,実は1つ目の点目にも関わります。
2点目は,③についてです。②をこのような形で,かつ,判断要素を全く挙げないで③を書いたときに,現在の258条2項というのは,現物分割を想定して,それができない場合,又は価格を著しく減少させるおそれがある場合という限界を付けて,競売を命ずるという形になっておりますけれども,価格賠償の方法による分割というのを入れた場合に,現在,258条2項に挙げられているこの二つの場合というのが,うまく当てはまるのかということです。②に掲げる方法ということですから,②のイも含んでいると思われますけれども,支払資力面で問題があり相当でない場合などが②のイによるのではできないといえるのか,恐らく不相当であるという場合もできないに含むということなのかと思いますけれども,単独の所有にする,あるいは一部の人の所有にしてしまって,あとは金銭的な解決によるというやり方の場合の限界付けが,果たして③の二つの場合で受けられるんだろうかということが気になりました。
そこで,二つお話なのですけれども,一つは,もし判断要素などを挙げるということが可能であるとしますと,現物分割の③に挙げられているようなものも含めて,裁判所による選択の一つの考慮の在り方なりガイドラインを示すというのが,一つは考えられるように思います。例えばですけれども,②で方法を二つ示し,「その場合において,裁判所は共有物の現物の分割の可否,共有物の現物の分割による共有物の価額の棄損のおそれ,共有物の利用の経緯及び状況,各共有者が共有物を必要とする事情,価格償還債務を負担することとなる共有者の支払資力,その他共有物,あるいは及び共有者に関する一切の事情を考慮して,共有者間の公平の確保の観点から,相当な方法を選択することができる」と,例えば,そういった形で判断要素なり,その特に重要なものを挙げることができないかというのが,一つ目です。
二つ目としましては,それがやはり難しいという場合,③の限界の場合というか,そこに,取り分けイの方法によるときの限界なりを入れなくていいだろうか,したがって,現物,現物とは書いていないのですが,分割ができない場合,それから価格を著しく減少させる恐れがある場合と並んで,例えば,共有者間の公平を害する場合とか害するおそれが高い場合とか,そういったようなものを挙げるということも考えられるように思いました。
ちょっと長くなって恐縮ですが,以上です。
○山野目部会長 沖野委員から,種々の観点にわたる御意見を頂きました。
前の方でおっしゃっていただいた②のイの規律の表現を,もう少し豊かな言葉を盛り込んで考えることができないかというお話につきまして,中村委員,藤野委員から御指摘,御提案があったことと併せて検討してまいらなければなりません。
それから,沖野委員から新しく御指摘を頂いた新しい問題提起といたしまして,③の問題があります。これは,問題提起を頂いて大変有り難く感じます。なるほど,この258条の現行の文言を,そのままコピー・アンド・ペーストしてここに持ってくると,このたびは②のアのみならず,イも受けた上で,③のところにお話がいきますから,現在お示ししている③の文言のままでは具合が悪いと感じられます。
沖野委員もおっしゃいましたけれども,例えば,②のイでいったときに,償金の支払の債務を負う者の資力に不安があって,イの方法が採れないといったような事例を③で受け止めることができる文言にはなっておりません。そういったことを踏まえて,解決の在り方を正確に伝達ができるような文言の改良を施さなければならないと感じました。
いずれにしても,今,沖野委員におっしゃっていただいたようなことをヒントにして,検討を続けるということにいたします。どうもありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
部会資料47につきましては,やはり②のア,イともですが,取り分けイについて,それから,関連して③の規律の表現について,やはりそれぞれ引き続き考えなければいけない問題があることがよく分かりましたから,事務当局において,よく議事を整理いたします。
ほかに,特段部会資料47について御発言がおありではないでしょうか。
よろしゅうございますか。
それでは,共有物分割方法についての本日段階での審議はここまでにいたします。
本日は,部会資料の数として,合わせて5点をお示しして審議をお願いし,委員,幹事の皆様には大変盛りだくさんの難しい審議をお願いさせていただきました。熱心な御審議の御協力のおかげをもちまして,五つの部会資料の全てについて,内容にわたる審議を了しました。
次回会議につきまして,事務当局から案内を差し上げます。
○大谷幹事 本日もありがとうございました。
次回の議事日程でございますけれども,3週間後,10月6日の火曜日になります。
午後1時からスタートということを考えておりまして,場所はこちらの大会議室です。テーマは今のところ,いわゆる所有権の放棄を取り上げることを考えておりますが,そのほかの点について,どこまでできるかというところがございます。また少しこちらの方で検討いたしまして,終了時間については,改めて御連絡をするという形にしたいと思います。いつものように6時までということには限らず,もう少し早く終わるということもあり得ると思っております。
次回の部会についても,ウェブで部会に出席していただくことも可能という形で開催をさせていただきます。
○山野目部会長 次回の第19回会議は,もしかしたらそれなりに早く終われるかもしれませんという御案内を差し上げようかとも一瞬考えたものでありますけれども,しかし,現実には,扱う議題の量とか質は重くなってくる可能性がありますから,早とちりなことは申し上げない方がいいとも感じ,ただいま大谷幹事から御案内を差し上げたようなことで,第19回会議を考えております。
この際,委員,幹事から,第19回以降の部会の運営につきまして,お尋ねや御意見がありますれば承ります。いかがでしょうか。
よろしゅうございましょうか。
それでは,本日もお疲れさまでした。
これをもちまして,民法・不動産登記法部会第18回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。
-了-