法制審議会民法・不動産登記法部会第18回会議 議事録

○山野目部会長 御案内を差し上げた部会資料がお手元にまいっておりますでしょうか。
  そうしましたならば,審議の内容に進むことにいたします。
  部会資料の43をお取り上げくださるようにお願いいたします。
  財産管理制度の見直し,その中でも,所有者不明土地管理制度についてお諮りをいたします。
  部会資料43の1ページ(1)のところで,前回,第15回会議において御審議をお願いした,部会資料33の基本的な方針を踏まえたものを再び提示しております。
  引き続きまして,同じ部会資料の5ページにまいりますけれども,イといたしまして,細目に関わる事項として,管理,処分の権利が,管理人に専属すること,範囲を超える行為をするには裁判所の許可が要ること,これに違反する場合には無効とし,ただし,善意の第三者に対抗することができない旨の第三者保護の規定を設けること,登記を嘱託することなどについて,これも部会資料33でお示ししたところを踏まえ,再びお出ししているものでございます。
  部会資料の6ページから7ページにまいりますと,ウからエと,この制度について更に細目についての御提案をお示ししておりますけれども,いずれも部会資料33でお諮りしたものを整えた上で,大きく内容を変更することなく,本日お出ししているものでございます。
  部会資料43でお諮りする所有者不明土地管理制度の全般について,御意見を承ります。どうぞ御随意に御発言をくださいますようお願いいたします。
○蓑毛幹事 部会資料43について,日弁連ワーキンググループでの議論を紹介します。
  部会資料43の本文は,いずれも基本的に賛成します。その上で,少し細かいですが,それぞれの箇所について,議論になったところを申し上げます。
  まず,部会資料1ページ本文の申立権者についてです。申立権者である利害関係人について,例示して分かりやすくしてほしいという意見もありましたが,今の提案のままでよいという意見の方が多数でした。
  それとは別の問題として,実務上,この申立てをすることが想定される者として,地方公共団体の長が考えられるので,民法ではなく,所有者不明土地特措法に定めを置くことになるかもしれませんが,地方公共団体の長に申立権があることを明確にすべきとの意見がありました。
  次に,部会資料4ページの管轄裁判所についは,所有者不明土地管理人の選任,監督,あるいは土地の売却の可否や代金の当否などの法的判断が必要となることからすると,民事における財産管理事件を基本的に取り扱うこととされている地裁がふさわしいという意見が多数でした。
  それから,部会資料4ページの裁判を受ける者についての箇所で,所有者不明土地の所有者に対する決定の告知について,失踪宣告と同様の特則的規律を設けるという説明に対して,疑問が示されました。所有者不明土地管理人の選任については,失踪宣告で死亡とみなされる場合とは異なるではないかと。不在者財産管理人が選任されても,家事事件手続法146条には,失踪宣告の場合の家事事件手続法148条4項のような規定はないが,それとの関係をどう考えるかという疑問が出されました。
  部会資料5ページの所有者不明土地管理人の権限等,イの部分について,基本的に賛成しますが,一部のメンバーから,今回,動産に関する権限の規律が本文の①に取り込まれたことによって,このように,土地と動産を同列に並べた定め方にすると,管理人の権限又は義務が,土地と動産について同じものになると解されてしまうのではないかという疑問が出されました。管理人は土地の管理に必要な範囲で動産の管理を行えばよいのだと理解していますが,このように土地と同列に並べるということで,誤解を招くのではないかと思います。
  部会資料6ページのウは,特段意見はありませんでした。
  部会資料7ページのエ,所有者不明土地等に関する訴えの取扱いに関する中断と受継の規定を設けるという提案について,基本的に賛成です。ただし,この規定は,破産法44条の規律を参考にして作られたと思うのですが,破産法44条6項に相当する規定がありません。部会資料7ページのエ③で,所有者不明土地管理人は受継することができる,相手方も受継の申立てができるという規定になっていて,受継が必要的ではありませんので,いずれも受継せず中断したままになる可能性があります。その状態で,所有者不明土地管理命令が取り消された場合は,所有者不明土地管理人は訴訟の当事者になっておらず,④及び⑤の適用外ですので,④⑤とは別に,所有者に訴訟を受継させる仕組み,つまり破産法44条6項に相当する規定が必要だと思います。
  その後の部分は,本文についていずれも賛成します。
○山野目部会長 弁護士会の御意見のお取りまとめを頂きまして,ありがとうございました。
  部会資料43を起案した関係官から,現時点で何かありますでしょうか。
○宮﨑関係官 関係官の宮﨑でございます。
  ありがとうございました。5点ほど御意見など頂いたかと思います。
  最初の申立権者のところにつきましては,自治体の長にも申立てができるようにという御趣旨の御意見かと思いますけれども,こちらについては,所有者不明土地特措法の所管の省庁ともよく相談してまいりたいと思っております。
  それから,裁判を受ける者についてでございますけれども,不在者財産管理人については,御指摘のとおり,このような規律は設けられていませんが,今回の所有者不明土地管理制度の場合は,不在者財産管理人とはやや異なり,本人の管理処分権も制限するという効果が生じるというところがありまして,そういう意味では,やはりこの規律をもし置かないとすると,告知の対象になってしまう可能性もあるのかなと考えてはおりました。もしかしたら,異なる考え方もあるのかもしれませんので,御議論いただければと思っております。
  それから,イの動産と同列になるのではないのかということ,土地と動産を並べて書いているということにつきましては,これまでの部会資料と同様,私どもの考え方としましては,土地の管理に必要な限度で,その動産についても管理処分を行うということになるのかなとは思っております。そこの考え方を変えているものではないんですけれども,適切な表現ぶりについては,引き続き検討してまいりたいと思っております。
  最後に,中断,受継のところで,破産法44条6項に相当するような規定が必要になるのではないかという御指摘を頂きました。44条6項というのは,当然に受継するということになっておるんですが,これは,破産の同時廃止などを念頭に置いた規律なのかと理解しております。今回の所有者不明土地管理制度ですと,管理命令がされてから取消しが直ちにされるということは,想定しにくいのかなと思っておりましたので,間に中断は必要になるのではないのかなと思っておりました。そういう意味で,44条6項に相当するような規定は今回は置かないということで,今回の提案の中ではさせていただいているところですが,これについても,様々な御意見を賜りたいと思っております。
○山野目部会長 蓑毛幹事におかれては,何か補足なさることはおありでしょうか。
○蓑毛幹事 最後のところだけ。土地管理命令が発令されて,土地管理人も受継しない,相手方も受継しない,こうなった場合は,訴訟は中断したままになる。その後に,土地管理命令が取り消された場合,中断の効力を失わせて当初の当事者に訴訟が係属するような仕組みを設けないと,うまくいかないと思ったのですが,そういうことではないですか。
○宮﨑関係官 おっしゃるように,そういうケースは,理論上は出てくる可能性もあるのかもしれませんが,一般的には,所有者不明土地管理人は受継をすることになるだろうと思っておりますので,受継もされないままに取消しがされて,また元の状態に戻るということは,レアケースになるのかなとは思っておりました。
  それでも,そのような場合に備えて,何かしらの手立てを置くという考え方もあるのかもしれませんが,管理命令が取り消された後は,中断状態を解消して,所有者が訴訟を追行していくということは,別に規律を設けなくとも可能という解釈もできるのではないのかなと考えておりました。
○蓑毛幹事 はい,分かりました。
○山野目部会長 ただいま議論をしていただきました受継と中断のところ,もう少し事務当局においても検討して,皆さん方に御紹介をしたいと考えます。
  ただいまの意見交換があった事項でも結構ですし,それ以外の事柄でもよろしゅうございます。
○今川委員 我々も,この財産管理制度,所有者不明土地管理制度については,基本的には賛成です。
  幾つか意見がありますが,(1)のアについて,補足説明の4の管轄裁判所ですけれども,簡易裁判所も管轄裁判所としてほしいという要望が司法書士の中で多いのですが,理由は,前々回の部会で申し上げましたとおり,制度を利用しやすくするために,選択肢が増えることはいいのではないかというようなことからの意見要望であります。
  補足説明の2のところですが,所有者不明土地管理人と不在者財産管理人とが競合した場合に,土地管理人には権限が専属するので,不在者財産管理人の処分行為は効力を有しないということについては異論はないのですが,所有者不明土地管理人については登記情報を確認するという方法はあるのですが,不在者財産管理人にはそういう方法がありませんので,理屈上は,不在者財産管理人が土地の処分について家裁の許可を得るということと,所有者不明土地管理人が選任されて嘱託登記がされるというのが,同時に起こるということもあり得ると思います。ほかにもいろいろ競合する申立てがされる可能性があるので,前から何回も言っておりますが,競合する申立てがあるかどうかが確認できるような仕組み,裁判所の情報連携があれば,よりいいのではないかと思います。
  それから,補足説明3の申立権者についてですが,利害関係人として民間の買受希望者も一律に排除されるわけではないとされております。公共の利益と,個人情報というか個人の権利のバランスの問題なので,我々も全面的に排除すべきだと考えるわけではありませんが,買受希望者を認めるにしても,飽くまでも利害関係人として認めるわけなので,申立ての濫用がないように,一定の絞りをかけることは当然必要だろうし,その基準は,民法に規律を置くことができるかどうかは別として,何らかの形で一定の基準は示すべきだと思います。
  それから,買受希望者が申立てをする前提として,所有者の探索が当然必要となりますし,そのためには,住民票や戸籍事項証明書等の交付請求をしなければならないですが,単なる買受希望者に交付請求を無限定に認めるということは,まずないのだと思います。そして,その戸籍等の交付請求は,裁判所に申し立てる前に行うものであるので,結局は,戸籍法10条の2第1項に該当するかどうかは,役所の窓口において判断されることになってきますので,戸籍事項証明書の交付のための要件も,何らかの形であらかじめ一定基準のようなものを示しておく必要があると思います。
  それから,イの補足説明3ですね,ページ数からいくと,6ページの債務の弁済ですね。管理人が不動産を売却するときに,抵当権等の抹消をどうするかということで,債務の弁済という切り口で説明をされておられますが,このような理論的構成はまず置いておき,我々実務の感覚からすると,売却するためには抵当権を抹消することが当たり前で,抹消ができなかったら売れな,買受人も,担保権が付いたままで買い受ける人はまずいないのだろうと思います。
  普通は,管理人が売却するためには抹消の請求を銀行にして,銀行は,ただでは抹消できませんと,では,幾ら弁済すればいいですかという話になってくるのではないかと。常に,完済をして,付従性で当然抵当権が消滅するという場合だけではなくて,根抵当権もあり得るわけですから。結論から言うと,管理人が抵当権の抹消ができないと売却できない。そのためには,弁済もできるようにしなければならないと思います。
  前回,不明共有者の第三者への持分譲渡のところで,裁判所が許可をするときに,どこまで射程として見ているのかという話がありましたが,あのときは,相当な価格の供託という,相当な価格のところだけを判断していくのではないかということがありましたが,ここでの売却については,この弁済,抵当権の抹消等も含めた形で,視野に入れた形で,裁判所が許可をするのではないかと思われます。実務上,そういうふうになるのかなと思われますので,この権限がないと,売却は進まないと思っております。
  それから,これ,質問ですけれども,クの管理命令の取消しのところですけれども,すみません,これはちょっと,我々の読み方が悪いのかもしれませんが,所有者の死亡が判明して,相続人の存在や所在が判明した場合には,管理命令が取り消されるというのは理解できます。複数の相続人がいて,そのうちの一部が所在不明の場合は,これは,やはり自動的に持分の管理人になるわけではなくて,1人でも所在が判明している相続人がいる場合は,一旦取り消されると理解してよろしいでしょうか。最初の管理人は,不動産全体の管理人として選任されているので,一旦は取り消されるという理解でよろしいでしょうか。その点が質問です。
○山野目部会長 御意見とお尋ねを頂きました。
  お尋ねについて,事務当局から回答を差し上げます。
○宮﨑関係官 そのときは,管理命令の対象となる持分が,全体から一部の判明した人を除く部分だけということになると思いますので,その場合は,管理命令を一旦取り消してもう一回やり直すというよりは,管理命令の変更などにより対応するというやり方もあるのかなとも考えております。
○山野目部会長 全体を対象としていた管理命令を,所在不明相続人の有する持分を対象とする管理命令に変更するということを,今,おっしゃったんでしょうか。
○宮﨑関係官 はい。
○山野目部会長 今川委員,お続けになることがあったらどうぞ。
○今川委員 変更というのが可能だとすると,それもありなのかなとは思います。
  最初は,やはり一旦取り消されるのかなと思っておりました。選任されている管理人は,土地全体についての管理人であると捉えておりましたので。
○山野目部会長 今日,意見交換がありましたから,そこを検討します。同じ事件番号で起こしているものを,そのまま続けて変更で済む話になるか,一旦取り消して,共有持分に係る別な管理命令の事件を起こすことになるかといったようなところを,精密に検討する必要がありますから,御指摘に御礼を申し上げた上で,改めて検討することにいたします。
  ほかにいかがでしょうか。
○松尾幹事 細かな点の確認ですけれども,部会資料43の9ページ,本文キの所有者不明土地管理人の報酬等について,①では,不明土地所有者の負担になる対象について,管理に必要な費用が挙がっていて,報酬は挙がっていないわけですが,ここに報酬を挙げる必要はないかどうかということでの確認です。
  補足説明の2の本文キについての説明を見ますと,管理費用及び報酬は,土地の所有者が負担すべきと解されると説明されていますので,報酬がここに挙がってもいいのかなと思いましたので,確認させていただければと思います。
○山野目部会長 キについて,お出しいただいたお尋ねについて,お願いします。
○宮﨑関係官 ここについては,御指摘のとおり,①の方の費用の中にも報酬は含まれるという前提で考えております。ほかの法令などを参考にして,このように記載しているものではございますが,表現ぶりについては,引き続き検討してまいりたいと思っております。
○松尾幹事 はい,分かりました。ありがとうございます。
○山野目部会長 ありがとうございます。佐久間幹事,どうぞ。
○佐久間幹事 ありがとうございます。
  2点ございまして,一つは,所有者等を知ることができないの意義なんですが,次の資料になるんですけれども,資料44で,所有者不明建物管理制度について取り上げられていて,その3ページの第1段落に,例えばという行が,行というか,つぎのような記述がございます。つまり,所有者が分かっていたんだけれども,その人が死亡した,その共同相続人全員が相続放棄をした,この場合の例が挙げられているんですね。ということは,今さら何を言っているんだと言われるかもしれませんが,この所有者不明土地管理制度というのは,今のような,言わば所有者がいたんだけれども,いなくなりましたというようなときも,所有者を知ることができないという場合に含めて使える制度なのですかということを,繰り返しになりますが,今さらになるかもしれませんけれども,確認させてください。それが一つです。
  もう一つは,これも何度も申し上げていて,非常に恐縮で,もうそうだということであれば,今日で申し上げることはやめようと思うのですが,5ページのイの③です。これは,要するに,管理人が権限の制限に違反した行為は無効とすると。ただし,括弧書きになっておりますが,所有者不明土地管理人は,これをもって善意の第三者に対抗することができない。ここでいう第三者につきまして,5ページの補足説明の下から2行目には,行為の相手方を含むとあるのですね。しかし,行為,例えば,売買をすることができない,特段の許可を得ていないので売買をすることができないときに,土地管理人が売買をした。相手方である買主は,売買の当事者であって,無効に関して第三者では私はないと思うんです。にもかかわらず,第三者に売買の当事者,つまり行為の相手方も含むということになりますと,ここはそういう言葉で使うんですということなら,もうそれでいいんですけれども,これまで一般的に言われてきた第三者の概念と,それは異なるのではないかと思います。
  私のそのような考え方からいたしますと,例えば,ここは次のようにできないのかと思っております。②に違反して行った所有者不明土地管理人の行為は,無効とする。ただし,行為の相手方がその違反を知らなかったときは,この限りでない。そのようにした上で,言わば,もし条文だったら,こう改めた上で,前項の規定による所有者不明土地管理人の行為の無効は,善意の第三者に対抗することができない。例えばですけれども,このようにすることが,今まで使われてきた一般的な用語法に合うのではないかと思っています。規律の実質については,全く異論を申し上げようということではありませんけれども,何度もで恐縮ですけれども,言葉の使い方として,無効である行為の相手方を第三者に含むというのは,やはり私はおかしいのではないかと思っております。
○山野目部会長 佐久間幹事から2点頂きまして,前者は確認のお尋ねでした。
  後者は,御提案を頂いたとも感じますけれども,何か事務当局として理解しているところがあれば,案内してほしいと思いますから,両方の点について,事務当局から所見を差し上げます。
○宮﨑関係官 まず,前者の方の,「知ることができない」の意味ですけれども,これについては,御指摘のように,この建物管理人の方でも例示を挙げておりますような,相続放棄を相続人全員がした場合というのも,ここに含まれるものと考えてございます。
  また,②のイのところですね。「善意の第三者」という表現で,行為の相手方を含むということで考えられるのかどうかという御指摘かと思いましたけれども,ここについては,従前の部会でもそのような御指摘を頂いていましたので,いろいろ調べはしたんですけれども,これと同じような文言の規律は破産法などにも設けられていまして,もっと遡ると,昔の会社更生法55条の中で,同じように善意の第三者に対抗することはできないという規律が設けられております。その当時の解説書などにも,「善意の第三者」の中には相手方を包含するものと書かれておりまして,恐らくこれは,一般的にとられている解釈なのかなと思いましたので,このような書き方でも許容されるのではないかなとは考えてございました。
  今,また別途の表現ぶりの御提案というのも頂けましたので,引き続き検討してまいりたいと思っております。
○山野目部会長 佐久間幹事,お続けください。
○佐久間幹事 いえ。意見を申し上げましたので,今のようにお考えいただくのであれば,もうそれで結構でございます。
○山野目部会長 それでは,御意見を踏まえて検討することにいたします。
  引き続き承ります。いかがでしょうか。
○市川委員 今回の部会資料で変更された箇所ではありませんが,部会資料の5ページのイの②の権限外行為に関しまして,この権限外行為の裁判所の許可の運用の在り方について,現行の不在者財産管理人の場合とは異なる考慮要素などもあるかと思われますので,改めて確認させていただきたいと思います。
  まず,所有者不明土地の権限外行為の対象となる行為として,念頭に置かれている行為がどのようなものなのかということを確認させていただきたいと思います。また,そのような行為を許可するかしないかの考慮要素として,どのようなものが想定されているのかということを,改めてお聞かせいただけますでしょうか。よろしくお願いします。
○山野目部会長 イの②の運用について,部会資料の作成に当たってイメージしている運用がありましたら,御案内ください。
○宮﨑関係官 まず,一つ目が,許可の対象となるような行為はどういうものを念頭に置いているのかという御質問でしたけれども,これについては,典型的には売買かなと思っております。
  その判断の際の考慮要素ということにつきましては,売買契約の内容としましては,価格の適切性などについては一つの考慮要素になりますし,また,今回の制度というのは,土地の適切な管理を実現するためのものでございますので,その限りにおいて管理が適切にされることが見込まれるということも考慮されるのかなと思いますが,一般的には,買い受ける人というのは適切に管理を行っていくということが見込まれますので,この要素をもって否定されるケースは少ないのではないのかなと思っております。
  また,土地の所有者の出現可能性ないしは帰来可能性ですか,そういうことについては,不在者財産管理人と同様に考慮要素の一つになっていくものかなとは考えてございます。
○山野目部会長 市川委員,お続けください。
○市川委員 ありがとうございます。
  今回不在者財産管理人と特に異なる部分としましては,土地の適切な利用可能性というところかと思いますが,その点について,裁判所が深く資料を提出させて検討するということは,余り想定されていないという理解でよろしいでしょうか。
○宮﨑関係官 今申し上げましたように,普通は土地を買う人であれば,そこを適切に管理しながら使用することが見込まれるのだろうと思いますので,具体的にそれが否定されるような事案というのは,今の時点では想定しにくいのかなとは考えております。
○市川委員 ありがとうございます。
○山野目部会長 ありがとうございました。
  佐保委員,どうぞ。
○佐保委員 ありがとうございます。
  私の方から1点,1ページの注意書きと4ページの補足説明4にある管轄裁判所について,発言させていただきます。
  所有者不明土地管理人の選任申立件数が多くなると,地方裁判所の業務が増大する可能性がありますので,簡易裁判所も管轄裁判所とすべきではないかと考えております。また,地域によっては,近くに支部を含む地方裁判所がなく,簡易裁判所のみの場合があるため,利便性を考えれば,簡易裁判所に管轄を与えてもよいのではないかと考えております。
○山野目部会長 御意見承りました。
  中田委員,どうぞ。
○中田委員 ありがとうございます。
  10ページの補足説明のところです。土地の所有者が死亡した場合の取扱いについて,前回意見を申し上げましたところ,御検討いただきました。どうもありがとうございました。
  その上で,もう少しお伺いしたいんですけれども,所有者が管理命令のあった時点で既に死亡していた場合,相続人の存在あるいは所在が判明したとすると取消事由になるけれども,そうではないと取消事由にはならないと,こういう整理だと思います。ただ,その場合に,既に死亡していた場合には,被相続人甲の存在,所在不明をもって,相続人乙の所在不明と同視するというか,それをスライドさせて理解するということのように読んだんですけれども,何か本来両者は違うことであって,別途検討すべきことなのではないかなという気がしました。それは恐らく,先ほど今川委員の御質問ともつながることではないかと思います。
  それからもう一つ,一般的に,管理人が既にした行為については,既往に遡らないということが,最後の方に書かれています。管理命令が取り消されたとしても,既往に遡らないということなんですけれども,他方で,所有者あるいは相続人の権利を害するということを,どうやって防ぐかということも必要になってくると思います。
  類似した問題で,失踪宣告の取消しについては一定の配慮があるわけです。不在者財産管理人が家裁の許可を得て処分行為をしたときについては,特段の規定はないということで,どっちに寄せるかということなんですけれども,所有者不明土地管理人については,先ほど来議論の出ております管理人の権限外行為の無効に関する,5ページ,イの③の手当てがあります。それと同じような相手方保護の必要があるのではないかなと思います。もう少し広く言うと,その土地が名義人,行方不明になっている名義人の所有地ではなかった,つまり不実登記であったという場合にも,行為の相手方が悪意である場合には,真の所有者を保護するという考え方があるのではないかと思います。つまり,全体として,管理命令に広い意味での瑕疵があった場合の管理人の行為の効力について,行為の相手方が悪意であるという場合には,それを保護する必要はないのではないかと,そのような規律を置くことを検討していいのではないかと思いました。
○山野目部会長 中田委員から2点にわたる御意見を頂きまして,前段でおっしゃったことは,中田委員自身からも御案内があったとおり,今川委員からお出しいただいた質問と関連する部分がございます。後段で御意見を頂いたことは,佐久間幹事が問題提起をなさったことと関連する側面がございます。
○宮﨑関係官 最初の前段の方については,被相続人の所在不明というのを,相続人の所在不明にスライドさせて考えているのかという御質問かと思いましたけれども,この部会資料の補足説明で書いていることは,必ずしもそういう趣旨ではございませんで,そのときは所有者だと思われていた被相続人が死亡していて,その相続人の存在・所在が判明した場合には取消事由にはなるということの趣旨としましては,被相続人の所在不明と,相続人の所在不明は,それぞれ個別に考えるということを,念頭に置いた記述ではございました。
  次の,既往に遡るかという問題については,御指摘の中に含まれておりましたように,不在者財産管理制度の解釈などを参考にして,ここの補足説明は記載したものでございますが,御指摘も踏まえて,引き続き検討してまいりたいと思っております。
○山野目部会長 中田委員が前段で問題提起をなさったことは,少し前に今川委員からお尋ねがあった局面と全く同じではありません。同じではないというのは,相続人の判明,不明が,相続人の一部にとどまっているか,必ずしもそこに議論を限定しないかといったところが異なりますけれども,いずれにしても,不明であるとされていた当初段階の所有者について,相続が開始したことが判明し,相続人の全部又は一部についての所在が明らかであるかの状況が明らかになってきたときに,当初に起こされた事件,管理命令の事件を,どのようにその後に継続,発展させていくかということに関わりますから,本日頂いたお二人の御意見を踏まえて,事務当局において更に検討をいたします。
  後段については,中田委員から32条1項後段の規定のようなものを参考にして,管理命令について,その実質的基礎を欠くことについて,悪意であった関係者の法律上の地位の在り方についての問題提起がありましたから,これについても検討いたします。
  中田委員,よろしゅうございましょうか。
○中田委員 ただいまの部会長の取りまとめで結構でございます。よろしくお願いいたします。
○山野目部会長 ありがとうございます。
○道垣内委員 5ページのイの③の,佐久間さんがおっしゃったことに関連するのですが,十分に聞き取れなかったところもあり,これから申し上げることは同じことを申し上げてしまうことになるのかもしれません。この点をあらかじめお詫び申し上げますけれども,ここの多分ポイントというのは,「第三者」の使い方というのがおかしいというよりは,無効というのが,売買契約なら売買契約が行われたという,その売買契約の無効ということを意味していないというところにあるのではないかと思うんですね。
  つまり,売買契約というのが行われても,それが所有者にその効果が帰属しない,そうすると土地に帰属しないのですけれども,帰属しないということを,ここで無効と表現しているのであって,そうすると,いわゆる代理において,無権代理であるから効力が発生しないというのと同じになって,それで,取引の相手方のことを第三者と呼ぶというのが,代理と同じ構造として第三者と呼ばれているという,こういう構造になっているんだと思います。ただ,結構難しい話でありまして,私の理解が正しいかどうか分かりませんが,あり得ない書き方ではないのかなという気がいたしました。
  少し関連して一言だけ申しますと,不在者の財産管理のときには,こういうふうな裁判所の許可がないにもかかわらず,不在者財産管理人が行為をしてしまった場合と,それを超える行為をしてしまった場合というのは,無権代理であって,表見代理の規定が適用されると,一般に解釈されているのだろうと思います。そうしますと,正当な理由とかいろいろな言い方がありますが,ごくごく簡単な言い方をすると,相手方は無過失が要求されていますよね。しかるに,ここが本当に善意でいいのかというのは気になるところではあります。例として,信託法66条第5項というのが書かれているんですが,これは,信託財産に関して,受益者がいて,受益者が一番利害関係を持っているにもかかわらず,受託者がいないという場合を指していて,多分,取引を円滑に進める必要性というのは極めて高いと考えられているから,善意になっているのかなという気がいたします。
  表題部所有者不明土地法については,これも善意になっているんですが,その理由はよく分からないのですけれども,今までの,取り分け表題部所有者不明土地法との関係で考えると,善意でも仕方がないのかなという気がいたします。ただ,なお慎重に,本来は考えてみるべきところではないかという気がいたします。
  もう1点は,続けて申しまして恐縮でございますけれども,今川さんの方から話が出ました債務の弁済の話であります。
  実務上,抵当権を抹消しなければ売却ができないというのは,これはおっしゃるとおりだろうと思います。ただ,それが,債務を弁済できるというふうなことだといたしますと,例えば,所有者がどこへ行ったか分からないでもいいのですが,どこか行っちゃって,当該抵当権の債務者が,当該登記名義人と同じだという場合は,まだ比較的簡単なのですけれども,物上保証人であるだとか,あるいは,債務者が複数であるとか,共有であるということになりますと,これ,結構難しい問題が生じます。
  取り分け物上保証人との関係でいいますと,抵当権を当該物上保証人が設定しているという状態が,抵当権者との間の債権的な契約とか,あるいは債務者との間の債権的契約,つまり,担保を拠出しますという契約に基づいて行われていることもあって,そうすると,抵当権というのを,今現在の根抵当の何かの,額でも何でもいいのですが,弁済して,本当にそれは,物上保証をしてくれという委任契約に反しないのかというのは,微妙な問題であるような気がいたしますし,さらには,根抵当のときに,交渉するとおっしゃいましたが,銀行と幾らで抹消できますかという交渉について,善良な管理者の注意に基づいて交渉しろという話になってまいりまして,結構難しい問題が出てくるような気がいたします。
  もし仮に交渉で済むのならば,第三者弁済を事実上するという形で処理をするというのがせいぜいであって,直接に債務の弁済ができる旨を書くというのは,私は結構難しいし,弊害もあるのではないかと思います。
  この点は,実際それでは動かないと言われてしまえば,そうかもしれませんので,余りよく分からないままに発言をしておりますが,以上でございます。
○山野目部会長 道垣内委員から,前段と後段のそれぞれについて,異なる事項の問題提起を頂きました。
  前段が,先ほど来から話題になっておりますとおり,イの③に関わります。それで,ここにつきましては,元々この「所有者不明土地管理人は」という,鍵括弧で包んでいる主語がどうかということ自体を検討していかなければいけないということに加えて,本日の御議論の中で第三者という言葉の当否や,善意が単に善意でよくて,善意無過失であることまで求めなくてよいかといったような観点についても,注意喚起を頂いたところであります。
  改めて,従前の類似の局面を見てまいりますと,三つほど今申し上げますけれども,一つ目は,民法の表見代理の規定は,相手方に当たる者を指すときに,第三者という文言を用いております。その第三者に求められる主観的要件は,無過失まで要求するというふうな規律になっております。それから,失踪宣告の取消しの場面の32条1項後段の場合には,これは,第三者という言葉ではなくて,要するに者という言葉が用いられていて,善意でした行為という表現になっていて,第三者という言葉が避けられているかどうか分かりませんけれども,用いられていない。その32条1項後段の場合には,単に善意ということが求められているという,主観的要件の区切り方になっております。それから,三つ目,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に基づいて,理事が法人の内部統制を超えて,代表行為たる法律行為をするときの関係者の保護に関しては,ここは,善意の第三者に対抗することができないとなっていて,第三者という言葉が用いられており,主観的要件は,無過失を要求しない単なる善意ということになっております。
  恐らく,本日の部会資料のここを作成するに当たりましても,従来の法制上の様々な例を参照して,事務当局において悩んだところを踏まえて,今日お出ししており,これについて委員,幹事からは御意見も頂いたものであると受け止めます。
  佐久間幹事,又は事務当局から何か,今日の段階で今後の検討に向けて補足の御発言があれば,承っておきます。
  佐久間幹事,何かおありでしょうか。
○佐久間幹事 ありがとうございます。
  まず,表見代理との関係なんですけれども,表見代理のところで第三者が相手方のこと,代理の相手方を指して用いられているのは,もちろんそのとおりでございます。
  代理のところで,相手方を指して第三者と呼んでいるのは,代理関係の第三者だからだと思うのですね。だからこそといいますか,表見代理の規定でいう第三者というのは,直接の相手方に限られていて,それ以降の者,転得者等はこの第三者には当たらないというのが,一般的解釈だと思います。そうであるとすると,今御提案の5ページのイの③の第三者において,直接の相手方と転得者,併せて第三者と呼ぶというのは,代理における規定との平仄も必ずしも取れていないのではないかと思います。
  それから,一般法人法の善意の第三者というときは,それは善意の第三者なんですが,そこで対抗できないのは,権限の制限のはずでありまして,無効の対抗ではないと思います。前回まで私が,ここで善意の第三者というのだったら,対抗できないことの対象は権限の制限であるべきだと申し上げてきたのは,そのためでございます。
  会社更生法以来,そこから端を発しての,例えば,信託法,あるいは表題部所有者不明の,その文言の使い方はどうなのかというのは,ちょっと私,そこはよく分かりません。ただ,そこの考え方を本当に民法に持ってきていいのかなというのは,やや疑問に思うところがございます。
  それと,もう1点。善意無過失であるか,善意であるかですが,善意無過失とするという考え方,もちろん十分あり得るわけでして,それは言い方が適当か分かりませんが,決めの問題だと思います。そのうえで,もし善意無過失を相手方に要求するのであれば,特段の規定は要らないのではないか,表見代理の規定に委ねるということでいいのではないかと,私は思っております。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  引き続き検討しなければなりませんけれども,事務当局から現在時点で,この論点についてありますか。
○宮﨑関係官 今の善意無過失とするかどうかについてでございますが,確かに不在者財産管理人のときとはややずれてしまうのかもしれませんけれども,不在者財産管理人の場合,不在者の財産の保護というのが制度趣旨になっているのかと理解していますけれども,今回の土地の管理人の場合は,その土地の適切な管理の実現ということが制度趣旨になっていて,そこの制度趣旨の違いなどから,この要件の違いというのも説明ができないかということは考えておりました。もう少し検討してみたいとは思っております。
○山野目部会長 そうしましたら,道垣内委員が前段でおっしゃったことについては,ただいま事務当局の方から申し上げたような方針で,更なる検討をいたします。
  道垣内委員の問題提起の後段でおっしゃったことは,債務の弁済に関わることであります。今川委員の問題提起を受けて,道垣内委員からお話をしてくださいました。
  今川委員に今コメントがあったら,今川委員,それから事務当局の御発言をお願いしますが,恐らく今川委員がおっしゃったことは,債務の弁済が比較的簡易な事務として可能なときには,それをするということであって,道垣内委員が問題にされたような,物上保証,それから,道垣内委員はおっしゃいませんでしたが,オーバー・ローンになっていたりして,一種,倒産の法律事務で処理しなくければいけない感覚を催させるような,複数の担保権者がいて,複雑な法律関係になっているようなときには,これは,所有者不明土地管理人の事務として仮に債務の弁済が事務に含まれることが考えられ,売却の過程での債務の弁済が事務に含まれることがあり得るとしたとしても,極めて不適切な事例であって,少し前の市川委員のお尋ねで示された観点と問題意識が全く同じではないですけれども,裁判所が許可を与えることがが不適切な場面の典型的な一つの例になるものではないかとも感じられます。今日お出しいただいた御議論を踏まえて,更に検討を続けなければいけないと感じました。
  今川委員から何か補足の御発言はおありでしょうか。
○今川委員 いえ,特にありません。
○山野目部会長 事務当局からどうぞ。
○宮﨑関係官 1点だけ補足ですが,道垣内先生の後段でおっしゃった債務の弁済については,債務の弁済に関する規定を何か設けようということを意図しているものではございませんで,本文イのゴシックで書いているところから考えると,債務の弁済についてはこのような考えになるのではないでしょうかということを,この補足説明の中では記載させていただいているところです。
○山野目部会長 道垣内委員の後段につきましても,更に検討を続けてまいりますから,委員,幹事におかれては,お気づきのことをさらに,折に触れ御指摘いただきたいと望みます。
  道垣内委員,よろしゅうございますか。
○道垣内委員 はい,問題ありません。
○山野目部会長 ありがとうございます。
○潮見委員 言いたいことは簡単です。一つは,先ほど佐久間さんがずっと言っておられたことについて,私も気になるところがありますし,ちょうど同じような議論が相続法改正のときに,遺言執行者のところで,相続人の債権者と書くときに,そこに相続債権者が入るのか,入らないのかというので,括弧書きをして,確か相続債権者を含むという,そういうふうなことで紛れがないようにしたということがあったかと思います。何か同じような仕組みを採れないものかというように感じました。
  もう一つは,それと関係するんですが,先ほどの,5ページ目の「所有者不明土地管理人は」という主語を置くことについては,私は反対です。結論は同じかもしれませんけれども,先ほどから,佐久間さんは,ここでの問題は権限の制限の問題であると言われ,また,先ほど道垣内さんは,この問題というのは,要するに,土地管理人がしたことの効果が所有者に帰属するのかどうかという話でした。いずれにしても,そうした権限の制限とか,あるいは効果が所有者に帰属しないということを,相手方,あるいは第三者に対抗することができるかどうかという問題ですから,ここを,人を主語にして,所有者不明土地管理人はというような形で立ててしまうと,あたかも対人的な,相対的な無効というような形でも読めるような文脈で取られる可能性があります。ですから,この部分は,少し検討をしていただければと思います。
○山野目部会長 潮見委員の前段,後段にわたる御意見を承りました。ありがとうございます。
 どうぞ,畑幹事,御発言ください。
○畑幹事 何点か,既に議論になったところと,そうでないところについて申し上げます。
  まず,4ページの管轄裁判所,事物管轄でございますが,確たることは申し上げにくくて,確かに政策論としては,簡易裁判所に管轄を認めて,広く利用できるようにするということも十分理由があるように思いますが,他方で,制度としては初めてのものということになりますから,出だしの際には,この資料にあるように,原則的な裁判所である地方裁判所の管轄ということで出発し,ある程度運用が安定し,かつ,非常にニーズも多そうだということであれば,簡易裁判所に後から広げるということも考えられるかなというような感想を持っております。
  それから,4ページ,その下の裁判を受ける者ですが,私,以前にお尋ねしたところではなかったかとは思いますが,結論的には,ここに書いてあるように,告知しようにもできませんから,告知しないということでいくしかないのかなと思っております。蓑毛幹事から最初の方でお話がありましたように,不在者財産管理についてはそういう規定はないということで,私もなぜかということをよく思い出せないのですが,恐らく不在者というのは,全然誰か分からないとか,どこにいるか,およそ分からないということでは必ずしもないということなのかなという気もしております。不在者財産管理の方はともあれ,こちらについては告知しようがないということであろうと思っております。
  それから,7ページの下の方の訴訟行為についての裁判所の許可の要否のところです。ここも,前にお尋ねしたところではないかと思います。今日の資料の御説明は,なおあまりクリアでないところがあるという感じはいたしますが,どうも不在者財産管理であるとか,相続財産管理,8ページにちょっと出てきておりますが,これらについても,ある程度解釈に委ねられてきたところかなと思いますので,ちょっとクリアでない面はありますけれども,ここでも解釈に委ねるということであっても,やむを得ないかなという感じがいたします。
  それから,最後に,細かい点というか,あるいは法制的な問題なのかもしれませんが,1ページの制度の立て付けというか,アの①で管理命令を出すと。②で管理命令を出す場合には,当該命令において管理人を選任するということになっております。これがどういう意味なのかということなのですが,例えば,後見開始決定というのと,後見人の選任というのは,恐らく別の裁判と観念されているのではないかと思いますし,それから,破産開始決定と破産管財人の選任というのも,同時処分と呼ばれてはおりますが,一応別の裁判と観念されているのではないかと思います。
  新しく所有者不明土地管理制度を作る際に,そこをどう整理するのかということは,実質には恐らくほとんど関わりなくて,法制的な問題かなとは思いますけれども,一応検討は必要かなということを,思いました。
○山野目部会長 手続の側面から,畑幹事にもろもろの点を御注意いただきまして,ありがとうございます。いずれも御意見として受け止めます。
  1点のみ申し添えますと,後ろから2番目におっしゃった訴訟行為に係る裁判所の許可の問題につきましては,第15回会議で畑幹事から御発言いただき,問題提起を頂いたことに対して,本日の部会資料の説明では,それに十二分に答え切るものになっていないということは,共感いたします。畑幹事がお望みになったような仕方での整理にはなっていないだろうと感じます。
  それとともに,畑幹事御自身もおっしゃったように,8ページの上の方に整理いたしましたように,どうも従前の経過を見ると,ここは何か宿命的な曖昧さというものでしょうか,元々少しはっきりしないところがあって,確かにここ,もう少し研究されなければいけないとは感じますけれども,今般ここのところについて,こういうふうなものだということを決め切ることに困難があるという気持ちで,部会資料でこの御説明を差し上げました。それについて,今,畑幹事からある程度の御理解も頂いたと伺いましたから,更に検討することにいたします。ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。
○市川委員 すみません,補足でもう1点。
  部会資料の5ページの補足説明の6項のところの管理方法等の限定に関連して1点,お伺いさせていただきたい点がありまして,管理方法等を限定せずに管理命令が出されて,管理が開始された後に,例えば,処理に多額の費用を要する産業廃棄物が存在することが判明したようなケースなど,当該土地を適切に管理する費用が捻出できないものの,そのまま放置するということもためらわれるような事案もあり得ると思いますが,そのような場合の対応については,どのように考えられるのかということについて,教えていただければと思います。
○山野目部会長 事務当局において,市川委員からお尋ねがあった事項について,運用のイメージを持っているならばお話しください。
○宮﨑関係官 御指摘いただいたケースにつきましては,所有者不明土地管理人による管理を継続するのが相当でない場合に当たり得るのではないのかなとも思われますので,裁判所が管理命令を取り消すという判断もあり得るのかなとは考えてございます。そのような場合において,産業廃棄物などによって近隣へ被害が生ずるおそれがあるときは,具体的な事案にもよるとは思いますが,そういった被害を防止するために,選任されていた管理人が,行政官庁などに対して情報提供をして,処理についての協力を求める事案もあるのではないのかなとは考えてございます。
○山野目部会長 市川委員,お続けください。
○市川委員 分かりました,ありがとうございます。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。
○蓑毛幹事 さきほど市川委員がおっしゃったような事例,選任後に,産業廃棄物があって費用が生じることが分かった場合には,そのような費用を捻出するために土地を売却するということは認めらるのか,事務当局にお考えがあればお示しいただければと思います。
○大谷幹事 今の点,恐らく,既に土地の管理がなかなかいい状態ではないということなんだと思います。それを,土地を適切に管理するという観点で,売るということがあるのだろうと。それは,費用を捻出するという観点なのかというと,また違うのかもしれませんけれども,売却をして,その上できちんと使ってもらった方がいいというような判断ができるのであれば,そういう形で売るということもあるのではないかと理解されます。
○蓑毛幹事 ありがとうございます。
○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ。
○佐久間幹事 ありがとうございます。
  最初に発言させていただいたときにお答えいただいて,ああ,そうですか,そこは結構ですって申し上げたことで,蒸し返しみたいになって申し訳ないんですが,所有者がいて,その人が亡くなって,相続を開始したことが分かり,しかし,相続人の全部が放棄をしたという場合も,この制度を使えるんだということでした。
  ああ,それはそうなんだなと思ったんですが,何かひっかかる,何だろうと思っていて,先ほど気が付いたんですが,所有者を知ることができずの要件に,本当に当てはまるんだろうかということが,気になります。つまり,相続人全部が放棄をいたしますと,相続財産法人が,法律上当然に立ち上がっていることになるのではないか。そうすると,その相続財産法人が所有者に当たる,ただし,管理人はいないので,何か現実に行われることにはなっていないという状態なのではないかなと思いました。
  間違っているのかもしれませんが,もし間違っていないのだとすると,所有者を知ることができずという要件で読めるのかな。所在は,実態のある所有者がいないので知ることはできないんですけれども,そこが気になりましたということです。御教示いただければと思います。
○山野目部会長 私も,あの場面で,佐久間幹事が結構ですとおっしゃっていただいたところが,議事進行の私としては,そうおっしゃるのならば,処分権主義に従ってそうなんだろうと思って進めましたけれども,本当にそうであろうかということは,いささか心配でありました。
  思い起こしますと,御発言の順番とは異なりますが,中田委員が問題提起をされたことは,所有者甲が行方不明であるということで始まった管理命令事件について,所有者甲の死亡が明らかになり,相続人乙がいることは明らかであるが,その所在が不明であるというときに,甲の所在不明と乙の所在不明は同じ事象ではないですから,同一の事件で続行するという単純な発想でよろしいですかという問題提起であり,続いて,続いてというのは,論理の順番で整理しますと,今川委員はその応用バージョンで,相続人の一部の所在は明らかであるが,一部が不明であるときはどうなりますかとおっしゃり,そして,佐久間幹事に今改めて整理していただいて,相続人は全て分かっていて,そして,その全てが放棄をした結果,相続財産法人に帰属することが明らかであるという,その事態は,所在不明とは言えないではないか,当初起こされた事件を単純に続行するということでよいでしょうかというお話を頂き,中田委員,それから今川委員の問題提起について,さらに,今日,そのような問題点があることが発見されましたから,検討しますという御案内を差し上げていたところでありまして,佐久間幹事の今の問題提起も,その際に,この局面も忘れないでくれということを御注意いただいたと受け止めますけれども,佐久間幹事におかれて,よろしゅうございましょうか,そのようなことで。
○佐久間幹事 はい,よろしくお願いします。
○山野目部会長 ありがとうございます。問題提起を頂きました。垣内幹事,どうぞ。
○垣内幹事 どうもありがとうございます。
  大変細かい点で恐縮なんですけれども,資料の7ページのエのところの訴訟の受継に関する規律の関係について,若干確認をさせていただければと思っております。
  具体的には,エの③のところで,所有者不明土地管理人側では受け継ぐことができるとなっていて,⑤の方で,所有者が再度という場合には,受け継がなければならないとなっており,これは,破産法の44条がこういう形になっておりますし,表題部所有者不明土地に関しても同様の規定が置かれているということで,それとパラレルになっているのかなと思うんですけれども,この3項のところで受け継ぐことができるとされていることの趣旨としましては,これは,この管理人がどういった地位にあるのかという点について,例えば,今日の資料ですと,8ページの辺りで管理人の義務との関係の御説明で,土地の適切な管理を実現するために選任されると,必ずしも土地の所有者のために選任されるわけではないというような,所有者との関係で若干独自性が認められているというところが,この受け継ぐことができるという規定ぶりに反映されているというような理解をしてよろしいのでしょうかというのが,1点目でして,付随しまして,2点目なんですけれども,破産法に関して申しますと,相手方が受継の申立てをした際に,破産管財人が受継を拒絶できるのかという議論が従前存在いたしまして,破産法の規定が受け継ぐことができるとなっていることを根拠として,破産管財人は受継を拒絶できるのだという議論もないわけではないように考えて理解しておりますけれども,ここでのエの③では,所有者不明土地管理人が受継を拒絶するというようなことを想定されておられるのかどうかということについて,何か特定のお考えをお持ちだということであれば,御教示いただければと考えております。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  事務当局から,受継の関係で,2点について説明を差し上げます。
○宮﨑関係官 御指摘いただきましたように,ここの規律については,ほかの規律の表現なども参考にして,このようにしております。破産の方について,何でその民訴法124条のような形で,受継の義務という書きぶりになっていないのかというところについては,訴訟の進行に利益を有する者が受継申立てをすればよいとの考え方に基づくものであると。双方が受継申立てをしないな場合というのも考えられないわけではないんですけれども,破産管財人としては,善管注意義務の観点から,自ら受継すべきことが相当な場合もあるということかと理解しております。今回の土地管理人につきましても,善管注意義務の観点から受継すべき場合が一般的には考えられるのではないのかなと。後ろの方で御質問いただいたような,受継を拒絶するという場合も,想定しにくいのではないのかなとは考えておりました。
○山野目部会長 垣内幹事,どうぞお続けてください。
○垣内幹事 分かりました。どうもありがとうございました。
○山野目部会長 ありがとうございました。
  ほかに,部会資料43についておありでしょうか。
  大体御意見を承ったと考えてよろしゅうございましょうか。
  そうしましたならば,この際,私の方から1点御案内を差し上げます。
  所有者不明土地管理命令に係る事物管轄のことでございます。本日,委員,幹事から頂いた御意見は,いずれも参考になるものでありますから,今後事務当局が法律案の作成に向けて参考にさせていただきます。それとともに,少し考え込まなければいけない点は,それを法制審議会の答申で,一つの姿を示すことが要請される事項であるかということも,いささか一度じっくり考えてみるということにいたします。
  思い起こしますと,現在裁判所の管轄というものは,法律事項であるということが何か当たり前の前提ですが,日本国憲法が施行された当初は,最高裁判所規則と法律の所管事項や,その効力の上下関係について,様々な考え方がありました。現在は,裁判所の管轄は法律で定めるという憲政上の運用が安定して定着しておりますけれども,同時に,管轄の内容を定めるときには,裁判所の取扱いに支障が生じないように,その運用の様子についての十分な尊重を踏まえて,法律の中身を決めていくという,これも憲政上の慣行が定着しております。そういたしますと,この所有者不明土地管理制度という民事の基本に当たる制度を設けなければいけないという政策は,正にここで委員,幹事が御相談いただいて,そうであればそうであると決めて,答申で示す事項ですが,そのときの裁判所の管轄をこうするというところを,法制審議会の答申に必ず書くことにするか,それとも,そのような実体の規律整備の方向が示されるということを受けて,法律案提出までに関係法律整備の中で適切な措置をするために,政府内の関係する府省及び裁判所と協議した上で決めていく事項であるかということは,なお慎重に検討をいたしてまいりたいと感ずるものでございます。
  部会資料43についての本日段階での審議をここまでといたします。
  それでは,かなり時間が経過いたしましたから,休憩にいたします。

          (休     憩)

○山野目部会長 再開いたします。
  部会資料44をお取り上げくださるようにお願いいたします。
  部会資料44は,引き続き財産管理制度の見直しでございますが,このたびは,所有者不明建物,この建物の方の所有者不明建物管理制度についてお諮りをするものであります。
  まず,部会資料44の1ページにおきましては,従前より話題にしております,所有者不明建物管理制度という制度を仮に創設するという方向でまいりましたときに,甲案,乙案,丙案という三つのようなモデルを想定して,検討していくことになるものではないかという観点からの御提案を差し上げております。
  御覧いただいておりますように,甲案は,建物もまた独立の管理命令の対象にしようという発想でありまして,ニックネームを与えますと,建物独立型とでもいうべきものであります。それに対しまして,乙案は,所有者不明土地管理命令の対象とされた土地の上に,所有者又はその所在が不明な建物が存在する場合でありまして,これもニックネームを与えますと,所有者不明土地前提型とでもいうべきものであります。丙案は,所有者不明土地管理命令の対象とされる土地の上に,土地の所有者と同じ者が所有しているとおぼしき建物が存在する場合の,管理命令の可能性を考えようとするものでありまして,土地建物一体型とでもいうべきものでございます。これらが考えられますところ,どのような方向で進むことがよいかということについて,委員,幹事から御意見を承りたいと望みます。
  続きまして,同じ部会資料の2といたしまして,4ページになりますけれども,建物の管理をするということになった場合に,その建物の敷地利用権の管理の在り方について,やはり甲案,乙案,丙案というものをお示ししておりまして,甲案は,当然に敷地利用権たる賃借権などが管理の対象になるというものであるのに対して,乙案は,必要があると認めるときは,申立てにより管理の対象にするというものであり,丙案は,権利者を知ることができず,又はその所在を知ることができない土地を問題として,それについて,丙案でお示ししているような要件,手続の下で,土地の賃借権等についての管理を考えようとするものであります。これも,案を分けてお示ししておりますから,委員,幹事からの御意見をくださるようにお願いいたします。
  この部会資料は,6ページのところで,3といたしまして,無権原で建てられている建物の敷地への立入り等に関しては,規律を置かないという提案を差し上げております。
  続きまして,最後になりますが,4として,区分所有に係る専有部分,共用部分については,このたびは,仮に所有者不明建物管理制度を設けるとしても,その適用の対象から除外するという方向を提案しているところでございます。
  御案内した,取り分け1の点と2の点を中心に,御意見を仰せくださるようにお願いいたします。
  それでは,御随意に御発言ください。いかがでしょうか。
○蓑毛幹事 部会資料44,所有者不明建物管理制度について,日弁連ワーキンググループでの議論を紹介します。
  元々日弁連は,中間試案に対する意見書では,この論点について,所有者不明土地管理命令の対象となった土地上に所有者不明建物がある場合に限って,管理命令を発令できるという丙案に賛成でした。現在は,所有者不明土地問題に対応する限りでよいとして,丙案に賛成という意見もありますが,甲案に賛成するのが多数意見となっています。
  その理由としては,土地と建物の所有者が異なっていて,かつ,建物の管理を要する場合がある,具体的には,土地所有者が建物に余り関心を持っておらず,物権的請求権を行使,あるいは賃貸借契約を解除して明渡しというようなことをしないために,建物が適切に管理されずに放置されているという状況がある,あるいは,そのような状況に陥る危険性が高い建物がある。このようなケースに対応できる制度を創設することが有益であり,甲案に賛成するという意見が,多数となっています。
  ただし,甲案を創設する場合,部会資料にも書かれていますが,所有者不明建物管理制度は,所有者不明土地管理制度よりも,管理人の行為の裁量の幅といいますか,業務の幅が広いということになろうかと思います。建物の修繕等の保存行為を行うこともあれば,敷地権と一緒に建物を売却することもあれば,あるいは,ケースによっては,建物を取り壊すという判断をしなければならない場合もあります。したがって,部会資料の補足説明にも問題意識が書かれていますが,どのような要件の下で,あるいは,どのような事情があれば建物を売却するという判断をすべきなのか,あるいは,建物を取り壊すという判断をすべきなのか,この辺りをもう少し細かく議論した方がよいと思います。
  それから,甲案で対象となる事案にはいろいろなパターンがあるのですが,中でも管理人にとって難しいと思われるのが,土地と建物の所有者が異なっていて,いずれも所有者不明状態である場合です。このような場合でも,甲案では,所有者不明土地管理人と所有者不明建物管理人を選任することができるわけですが,土地所有者と建物所有者とで利害相反が生じ得ると思われます。ケースによって,たとえば,管理人は土地・建物いずれについても保存行為をすればよいという事案では,必ずしも利害相反にならず,同一人物が土地・建物の管理を行えるケースがあるのかもしれません。ただし,建物を取り壊して土地を更地にするであるとか,あるいは敷地権があることを前提に,建物を敷地権とともに売却するといった場合には,土地所有者と建物所有者とで利害が相反すると思われますので,このような場合には,同一人物を管理人に選任することができないということになるのかとか,そういったことを,もう少し議論した方がよいと思います。
  それから,部会資料4ページの2については,1で甲案を採るのであれば,甲案に賛成というのが多数意見でした。乙案と丙案は,迂遠だというのがその理由です。
  3と4については,本文に賛成します。
○山野目部会長 弁護士会の御意見をお取りまとめいただき,ありがとうございます。
  引き続き御意見を承ります。
  藤野委員,どうぞ。
○藤野委員 ありがとうございます。
  この建物の管理命令に関する甲,乙,丙案のうちどれがいいか,ということにつきましては,今回新たに出していただいた乙案なども,従来の案に比べればかなりフレキシブルになっているように感じられるのですが,事業者の中からは,甲案を支持する要望,独立して建物だけ管理できるようにしてほしいという要望が依然として強く出ているという状況です。
  理由につきましては,先ほど正に蓑毛幹事がおっしゃられたとおりで,土地の所有者に関心がないために土地上の所有者不明建物が放置されている場合が現にある,ということによるニーズはかなり強いのかなと思っております。ただ,その場合,やはりどうしても,建物の敷地の利用権が設定されていない場合にどうするのか,今回の提案では,例えば,3で,建物が無権限に建てられている場合に,管理人がその建物の敷地に立ち入って使用することができるようにするための特別の規律は設けないというふうな方針になっておりまして,この理屈自体はやむを得ないかなと思えるところがある一方で,では,そうなってしまうと,建物管理人を独立して選任したところでどうなるのかという懸念は出てくるところでございます。
  前回の部会で,部会資料39で出ておりました,いわゆる管理不全土地に関する制度との関係で申し上げますと,例えば,実際にこの建物管理が問題になる場面の多くは,本当に土地上の建物が非常に危険な状態であると。だけど,土地の所有者は,分かってはいるんだけれども何もしてくれないというときであるわけでして,その場合,管理不全土地管理人による管理を命じることもできるはずです。したがって,これを所有者不明建物管理という制度でやるのか,あるいは,管理不全土地の管理の制度を使い,そこでさらに,その中で,危険な建物が建っている土地なので,ということで管理人の権限でその建物を管理したり,場合によっては除去したりすることによって防ぐというアプローチを採るのか,これは何かいずれのやり方もあるような気はしておりますので,恐らく部会資料39にも書いていただいていたとは思いますが,ちょっとその辺の制度の整理の中で,何がベストかというのを検討していただくのがいいのかなとは思っておるところです。
  以上を踏まえ,今回の提案に関して申し上げるとすれば,建物管理制度を独立して設けていただきたいというニーズがある一方で,例えば,甲案と乙案というのが全く両立しないものなのかというとそうではなく,例えば,所有者不明土地管理制度の中で,土地の管理人が建物も処分できるようにするというのを設けつつ,場合によっては,土地の所有者が不明ではないときも所有者不明建物の管理や処分ができるようにする,そういった何かフレキシブルなやり方の方が,むしろ実態には沿うのではないかというところもあったりするようには思います。
  ですので,一応甲案を望むニーズがあるということは申し上げつつ,建物だけ独立して何かやる,ということになると,土地との関係でどこまでできるのかという問題がありますので,ちょっとそこをうまく,管理不全土地の管理制度でやるのか,あるいは所有者不明土地,あるいは所有者不明建物の管理制度でやるのかというところを,トータルとして御検討いただければなというところを申し上げたいと思います。
○今川委員 我々も,1の1のところですが,結論からいうと,甲案に賛成です。
  元々建物について,利害関係人が申立てをするという場合は,建物の取壊しをしなければならない場合が相当数あるだろうと。そうすると,建物の管理人が選任されて,その管理人が建物を取り壊すというのはどうなのか,疑義が生じるということで,管理人を置くことに消極だったのですが,管理人による建物の取壊しも可能であるという考え方も示されましたので,であるならば,建物管理人制度があってもよいだろうと考えています。
  そして,乙案,丙案は,建物の管理人は置かずに,必要な場合は土地管理人が建物を管理するという仕組みであって,土地管理人の選任が前提となっていますので,甲案は,場合によっては建物のみの管理人を選任したり,土地と建物双方に管理人を置いたりという,選択の幅が広くなると思われるので,甲案がよいのではないかという意見が,我々の中では多いです。
  補足説明の3の建物の取壊しというところの3ページの第2段落の中頃に,建物の取壊しが予定される場合には,それに要する費用などを事前に申立人に予納させる必要があると考えられるし,この予納金が納付されない場合には取壊しをすることができないので,管理命令は取り消される,又は却下されることが想定される,と説明されているので,この説明からしても,元々取壊しを予定して管理人を選任する,そういう選任方法もあり得るということなのだろうと理解しています。
  質問ですが,管理人が選任された後,事後的に取壊しが必要となる場合もあると思うのですが,そういう場合の一番の問題は費用だと思うんですが,そういう場合は,予納金の追納というか,追加というか,それを求めるというようなことになるのでしょうか,というのが質問です。
  それから,2の賃借権等の権利についてですが,これも,1で甲案を採ることを前提としての三つの案ですけれども,これも甲案でいいのではないかという意見が多いです。この乙案,丙案が,逆にどのような場合にこのような制度が必要なのかが,ちょっと見えてこないという意見が多いです。特に丙案なんかは,土地の管理人,それから賃借権等の管理人,建物の管理人と,理屈上,3人の管理人が選任されることもあり得る。そういう場合というのはどのような事例なのか,どんな場合に必要なのかなというのが,ちょっと分からないという意見が多かったです。
  あとは,特に意見はありません。
○山野目部会長 今川委員から,数々の御意見に加えて,お尋ねが一つありました。所有者不明建物管理命令に基づいて,裁判所の許可を得て建物の取壊しをする際に,管理命令が発令された後,しばらく時間を置いてからその取壊しが話題になってきたときに,予納金の追加を求めることがあるかというお話であります。
  恐らく,理論的には,管理命令がまず出されて,その上で取壊しが相当かどうかを裁判所に判断してもらって,そこ,一瞬というか,ワンタイミングというか,離れていて,それで取壊しが問題になってきて,許可が与えられたら取り壊すということになるでしょうから,そのときにもう一回,予納金が既に収められているもので十分かということを考えなければいけないという御議論は,ごもっともなことであろうと感じます。
  事務当局において運用のイメージがあれば,お話しください。
○宮﨑関係官 御指摘のように,事後的に取壊しが必要となるような場合で,費用が足りないような場合もあると思います。そういった場合は,追納してもらうということもあり得るものかなと考えております。
○山野目部会長 ありていに言うと,権限の面では裁判所の許可,お金の面では予納金の追加,それらがなければ取壊しができないということは,ある意味では当たり前の常識的な帰結ですけれども,そのようなことだろうと考えます。
  引き続きいかがでしょうか。
  甲,乙,丙という三つの案をお示ししているところについて,御発言を頂いた3人の委員からそれぞれお話を頂いております。山田委員,どうぞ。
○山田委員 ありがとうございます。
  甲,乙,丙,どれがいいかについては,余りはっきりした意見を持っていないのですが,前提について少し分からないところがありますので,質問をさせていただきます。
  直前まで検討していた所有者不明土地管理制度と所有者不明建物管理制度との関係です。
  土地上に建物があって,どちらも所有者が不明の場合,所有者不明土地管理制度の方は,保存行為などをまずすることができ,しかし,それを超える場合には,更に裁判所の許可を得て,例えば,売却ということも可能であると,そのように理解しました。それに対して,建物管理制度の方は,資料43の土地の5ページのイに対応する提案がありません。そして,補足説明を見ても,取壊しの話が中心になっているようであります。そうすると,所有者不明の土地と,その上に所有者不明の建物があり,この制度を使おうとしたときに,土地と建物を一体として第三者に売却するということについては,どう考えられるのだろうかというところが,疑問の中心です。
  一応理解したところに基づくと,そのときには,建物を取り壊してから土地を売却すればいいのかもしれないなと思うのですが,しかし,それが適切な場合も多かろうと思いますけれども,土地,建物を一体として,この所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度を使って売却するということも,できてもよいのではないかなと考えております。両者の関係というんでしょうか,今申し上げたような例について,どういうふうに使えるのか,あるいは使えないのか,御説明を頂ければ幸いです。
○山野目部会長 山田委員,ありがとうございました。
  ただいま,事務当局から,弁解というか説明を差し上げますが,どのような弁解があるかというと,おおむね次のようなことです。つまり,所有者不明建物管理制度については,本日甲案,乙案,丙案をお示しして,これを委員,幹事の御意見を承って,大きな方向が定まった段階で,所有者不明土地管理制度における部会資料43,5ページ以下のイ以下の細目に当たる規律の提案を,次の機会に差し上げようと考えておった次第でありますから,当然山田委員が既に御発言の中で見抜いておられるような,細目の整備がされていくであろうと感じられるところでありまして,そのようなお話を事務当局の方からお願いいたします。
○宮﨑関係官 今,山野目部会長からお話しいただいたように,ここで大きな方向性を決めた上でとは思っておりましたけれども,これは中間試案の中でも記載していたところではあるんですが,基本的には,所有者不明土地管理制度におけるゴシックのイ以下の権限などの規定と同じようなものを今回の建物管理制度の管理人についても置くということを考えてございました。
○山野目部会長 そうしますと,山田委員のお尋ねを受け止めて,ただいま事務当局がお話ししたことの趣旨を繰り返しますと,土地も建物も所有者又はその所在が不明であるときに,土地とその上の建物を,どちらもそのままの状態で一体として裁判所の許可を得て売却をすることもできますし,同じ局面について,裁判所の許可を得て建物を壊して,いわゆる更地として土地について裁判所の権限外許可の裁判を得て売却するということも可能であるという趣旨の御案内を差し上げました。
  山田委員におかれて,お続けになることがあれば,お話をください。
○山田委員 ありません。大変よく分かりました,ありがとうございます。
  配られた資料を見ると,今の御説明は書かれていたのかもしれません。言及があったのかもしれません。大変失礼いたしました。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  山田委員の御心配はごもっとものことですから,作業を続けてまいることにいたします。
  引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。
○國吉委員 所有者不明のこの建物については,やはり甲案がいいのではないかと思っております。
  そもそも所有者が不明であるということ,土地上に建物があって,土地の所有者が不明であると同時に,建物の所有者が不明であるというときに,土地,建物が同一の所有者であるということを,そもそもそれを認定できるのかどうかというのが第一だと思います。建物についても,やはり建物管理人,それから土地の管理人と,別個でやはり選任されるということを,その土地の処分,それから建物の処分についても,やはりそれがいいのではないかと思っております。
  あと,この建物について,補足説明の4番,未登記建物についてという記載がございます。これについては,そもそもその所有者が不明である建物についての,いわゆる表示に関する登記等は,これから公示方法について引き続き検討いただくということですけれども,やはり建物の認定の部分については非常に難しい。そもそも所有者が不明であるので,例えば,建築のときの経緯であるとか諸々のところが,当然ながら不明ということになろうかと思いますけれども,そういったところも含めて,この未登記建物についての公示方法については,引き続き検討をお願いしたいと思っています。
○山野目部会長 國吉委員から頂いた,前段の甲案の支持の御意見の御表明を承りました。また,後段で,未登記建物について,引き続き検討せよという御注意も承りました。未登記建物については,引き続き土地家屋調査士会の御意見なども伺いながら,検討を深めてまいるということにいたします。
  御相談は,常に表題登記をしないといけないかという問題が,やや気になっておりまして,所有者不明建物管理命令が発令されると,一般的な扱いとしては,裁判所書記官が管理命令の登記を嘱託することになりますが,そのときに,表題登記がないと,現在,処分の制限の登記についてされているような,前提となる表題登記から起こさなくてはいけなくて,土地家屋調査士の先生方に建物図面を作ってくださいとかいうお話になりますが,しかし,これは事案によりますけれども,取り壊すことがほぼ,その解決しかないであろうと思われるような事案で,わざわざそれをして,直ちに取壊しになって,建物の滅失の登記をするというなりゆきは,何だか社会的な資源の使い方としていかがなものであろうということも感じます。そのような問題を見抜いて,今,問題提起をしていただいたと思いますし,引き続き御相談をしながら悩んでまいりたいと考えます。ありがとうございます。
  吉原委員,どうぞ。
○吉原委員 ありがとうございます。
  私も甲案に賛成をいたします。
  ほかの先生方がおっしゃったように,適用範囲が広いということ,それから,利用の仕方が分かりやすいであろうという単純な理由ですが,その意味で甲案がいいのではないかと思います。
  また,甲案を採るか,乙,丙を採るかというのは,そうした仕組み上の問題であるとともに,建物の問題を土地の問題の延長線上として位置付けるのか,あるいは建物は建物,土地は土地と考えるのか,といった問題にもつながるかと思います。日本の場合,登記制度は土地と建物と別々で,所有者も別の可能性があるわけですので,どちらかといえば,これは土地と建物と整理して仕組みを作ることが分かりやすいのではないかと思います。
  そして,資料44の2ページの2に,制度の活用が想定される場面についてという部分がございますが,この所有者不明建物管理制度が利用される範囲というのは,実はかなり広いのではないかと期待しております。今回のこの建物管理制度と,それから資料43の所有者不明土地管理制度の特徴は,土地や建物にスポット的に運用ができるということに加えて,個人と法人の両方に適用できることだと思います。地域では,個人が持っている土地や建物が不明化するという問題とともに,法人が倒産を契機に,その所有していた事務所や工場の所有権が曖昧になって手が付けられないという事象もあります。そうした法人の倒産を契機とする所有者不明化に対応する意味でも,こうした管理制度は,スポット的に土地や建物,そして,所有者が個人であれ法人であれ使える可能性があるということで,非常に重要なものではないかと思います。
○山野目部会長 吉原委員におかれましては,法人の方面への注意喚起をしてくださいまして,ありがとうございました。
  法人といえば,もちろん会社など,営利法人もございますけれども,あわせて,現在,地域においてちらほら目立ってきている点は,無住のお寺,住職がいないお寺とか,誰もいなくなっている神社とか,祠(ほこら)みたいなものがあって,神様,仏様が関わっていることから,うっかり手が出せないような側面がありますけれども,まちづくりとの関係で困ると思わせるような局面も増えてきています。
  あわせて,吉原委員から問題提起を頂いた機会に,吉原委員にもお願いしておくとすると,本日,現段階で多くの皆様方から支持を頂いている甲案で制度整備を進める場合には,ほかの案でもそうですけれども,取り分け甲案の場合において,空き家等対策の推進に関する特別措置法の見直しとの関係をよく考えなければいけない度合いが大きくなってまいります。国土交通省の施策との関係でも,甲案で進んだときのここでの民事法制上の制度整備とあちらとの連携などについても,またいろいろ御意見をお寄せくだされば有り難いと望みます。
  佐久間幹事,どうぞ。
○佐久間幹事 ありがとうございます。
  費用の負担のことについて,反対とかっていうことでは全くないんですけれども,こういう場合どうなんだろうかということを思ったことがありまして,それを申し上げたいと思います。
  土地の上に建物がある。その建物は除却せざるを得ない。その場合,除却費用は誰が持つんですかと。それは,当然分かっているならば,最終的には建物所有者であると。しかし,それが分からないということも,よくあると思うのですね。そうすると,予納金から出すということになり,結局は,請求者が実質的には負担するということになると思うんですね。
  それはそれで当然だと思うんですけれども,その建物が除却された結果,土地の方は価値が上がる場合がありますよね。この土地についても,仮にの例ですけれども,その後,権利関係も整理されたしということで,比較的よい値段で売ることもできて,売れましたということになったといたしますと,恐らく今,構想されている1の甲案では,土地については土地で土地の管理人を選び,予納金を誰かが納めて土地の管理をやり,建物の方は建物の方で誰かが予納金を納めて管理人を選んでもらう。そして,土地の管理人と建物の管理人が,場合によっては同じ人ということもあるかも知れませんが,それぞれが自分の仕事をして,第三者の手に結局更地が渡りましたというときに,土地の方については,恐らく予納金は実質的負担としては残らないのに対し,建物の方は,何も理屈を用意しないと,予納金を取られ損というか,取られて,はい,終わりですということになりそうだと思うんですね。
  どうすれば解決できるのかはよく分かりませんけれども,何かうまい調整の仕組みが,法的なのかどうかも分かりませんけれども,できた方が,全体の処理がうまくいくこともあり得るのではないかなと思いました。
○山野目部会長 佐久間幹事から問題提起を頂きまして,ありがとうございました。
  今後の検討を進める上で,事務当局において参考にするために,佐久間幹事にお尋ねを併せて差し上げたいと考えます。
  佐久間幹事から,あまり気づかれていない重要な問題提起を頂きました。委員,幹事の皆さんも,今御覧いただいたとおり,一言で申せば,土地を更地にするということについてフリーライドをする土地所有者がいると,それを許してよいかという,その問題提起をしていただいたものでありまして,それは,何らかの解決があてがわれなければいけないと考えますが,想定される方向としては,これからここで私たちが考えている規律整備の中に,何かルールを明文で置くということが一方にありますし,もう一方では,そこについては,既存の不当利得であるとか事務管理であるとか,そういう規定ないし法理の一般適用に委ねて解決を見定めていくということになるということも考えられるでしょうし,現時点で,それを決め切るような御所見をお願いするわけにはいきませんけれども,目下のところで何か,佐久間幹事においてアイデアをお持ちでいらっしゃれば,お教えいただきたいと望みます。いかがでしょうか。
○佐久間幹事 申し訳ありません,アイデアはありません。ありませんが,不当利得も事務管理も難しいのではないかと思うんですね。ですから,もし何か調整が必要だということであれば,新たに工夫をして,そのための制度を,繰り返しになりますが,法律なのかどうか分かりません,でも,法律で決めないと駄目なのかな,設ける必要があるのではないかなと思います。
  そういうふうな仕組みを用意した方が,土地を流動化させやすくなるのかなと,素人的には思いますけれども,実際そこまでしたって,そのような土地については,まあ,そうでもないよということでしたら,理屈はかなり難しいと思いますので,何も手立てをしないということもあるのかなと思っております。
○山野目部会長 よく分かりました。
  今の佐久間幹事の問題提起を伺いながら,今後更に検討しなければいけないことでありますけれども,三つほど方向が考えられるところでありまして,一つは,私も佐久間幹事がおっしゃるとおり簡単ではないと考えますが,何か民法の一般法理を適用することによって処するという行き方が一つ目。二つ目は,ここで考えられている民事法制の中に,何かルールを起こすということであります。ただし,起こすといっても,上手にルールが書けるかどうかは,かなり難しい作業になるような気がいたします。3番目は,そういうことをかちっと,動きようのないルールを書き切るということではなくて,その局面の費用の分担等の手当てにつきましては,まちづくり,都市計画事業の観点から,必要なときには何かその手当てがされるという可能性をにらみながら,特に民事法制としては手立てを講じないという行き方もあるのではないかと感じます。
  いずれにしても,大事な問題提起を頂きましたから,更に検討することにいたします。ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。
○蓑毛幹事 先ほどの佐久間先生の御発言に関して,まだよく考えがまとまっていないのですが,発言させてください。先ほど佐久間先生がおっしゃった,土地の所有者も建物の所有者も不明で,土地の上に建物があってその建物を除却せざるを得ないというケースには2種類あって,その土地と建物の所有者が同一人物だということが認定できる場合と,そうではなく別人の場合があります。この二つを分けて考える必要があると思います。
  まず,土地と建物の所有者が同じ場合ですが,厳密に考えると,甲案では,土地の管理人と建物の管理人は別ですので,別事件ということになるのかもしれませんが,土地所有者と建物所有者との利害相反はありませんので,土地と建物の管理人を同一人物にして事件を併合するような形にし,土地の売却代金の中から建物の除却費用を捻出するという処理も許容されるように思います。あるいは,実務的な感覚からすると,管理人が費用をかけて建物を除却することはせず,後に買受人が建物を取り壊すことを前提に,建物0円で土地建物を売却する方が現実的かもしれません。
  難しいのは,土地所有者と建物所有者が別人の場合ですが,実務的な感覚からすると,土地の管理人と建物の管理人を別々に選んで,それぞれの立場で善管注意義務を負う管理人同士で話し合って,和解的解決を図ることになると思います。建物の管理人としては,建物を取り壊すべきだけれども,その費用が捻出できない。土地の管理人としては,建物管理人を相手に建物収去土地明渡請求訴訟を提起して強制執行するのでは,時間と費用が多額にかかるところ,建物管理人に建物を取り壊してもらって土地の明渡しを受ければ,土地の価値が上がって高く売れるという状況がある。そうであれば,土地の管理人と建物の管理人の双方が,それぞれ裁判所の許可を得て,和解的解決をすることによって,建物除却費用を土地の売買代金から捻出して,建物管理人が建物を取り壊した上で売却する,あるいは,土地管理人と建物管理人が売主となって,建物を取り壊さずに,建物0円で土地建物を売却する,そういったことは可能ではないかなと,漠然と思いました。
 所有者不明建物管理制度を創設するに当たっては,今申し上げたようなことに対応できるような制度設計が必要なのではないでしょうか。
○山野目部会長 蓑毛幹事におかれては,ありがとうございます。
  土地計画事業とかいうことのほかに,事案に接した裁判所の調整の御努力などを踏まえて,和解的な解決をするというアイデアの可能性もおっしゃっていただきました。御礼申し上げます。
  ほかにいかがでしょうか。
  大体,部会資料44について御意見承ったと受け止めてよろしゅうございましょうか。
  それでは,この際,申し上げます。
  部会資料44について審議をお願いしましたところ,本日段階で決め切るものではございませんけれども,所有者不明建物管理制度の在り方につきましては,1ページに用意している三つの案の中で,甲案を支持する複数の御意見を頂戴いたしました。次回に,この制度の検討をお願いする際には,少なくともこの甲案などを踏まえた,更なる提案を差し上げることになろうと存じます。
  その際,本日の審議を顧みますと,大きく分けて三つの点,1点目は,山田委員から御指摘がありましたとおり,甲案なら甲案を踏まえての,創設しようとする規律の細密度の向上,詳細化を図った上でお諮りをするということが,当然に求められます。
  2点目といたしまして,蓑毛幹事の冒頭の御発言,それから,今の御発言もそうでありますが,仮に甲案でいった場合において,土地の管理命令と建物の管理命令が別事件として起こされ,それぞれについて別の管理人が創設されるということになりますが,しかし,実質の運用として,同一人であっていけないか,いけないという理屈は当然にはないと思われるが,利益相反の問題等について注意をする必要があるという観点から,少し問題になりそうなところを洗ってみるということが必要でございます。
  3点目といたしまして,佐久間幹事から問題提起を頂いたことでありまして,建物の管理に要する費用,売却も含む意味での広い意味での管理に要する費用と,土地に関し管理に要する費用との調整の側面については,少し丁寧に考えなければいけない契機があるということが分かりましたから,これについても可能な限りの議論をしていただくための整理を用意するということにいたします。
  部会資料44についての審議をここまでといたします。ありがとうございました。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立