法制審議会民法・不動産登記法部会第16回会議 議事録

 部会資料38は残された部分がございます。第2の部分でございます。部会資料の37ページから後ろになります。
  ここで扱われている第2は,「登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み」についての御提案であります。
  中身が三つに分かれておりまして,1として「氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請の義務付け」ということをするかどうかということに関して,ここも1年,3年,5年といったような期間の候補を御提示申し上げ,また過料による制裁を伴わせるかどうかについて御意見を伺うということにしておりますので,ここは是非,委員・幹事から御意見をお寄せいただきたいと望みます。
  2として,登記所が他の公的機関から氏名又は名称及び住所の変更情報を入手し,それを踏まえて住所の変更について措置をする可能性のきっかけにするということが考えられてございます。これ,実は本日の部会資料の第1の1(1)で御提案申し上げていることと内容は同じです。最終的に法制上の措置を講ずる際には条文がその二つにまたがることがどうかといったような観点からきちんと整理を致しますけれども,本日はここでの審議のしやすさの観点から,中身は同じことですけれども,第1の方では死亡情報を更新する観点からの住民基本台帳ネットワークとの連携,こちらの第2の方は住所変更情報に関する情報連携を図るための住民基本台帳ネットワークとの連携についてお諮りするものであります。
  3といたしまして,「被害者保護のための住所情報の公開の見直し」についてお諮りをしております。生命・身体に危害が及ぶおそれ,それからそれに準ずる心身に有害な影響を及ぼすおそれがあると認められる所有権の登記名義人に関して,登記事項証明書に住所を記載せず,それに代えて法務省令で定める事項を記載するという取扱いを導入するという登記情報の公開に係る部分的な見直しの提案を差し上げているところでございます。
  部会資料は,最後に第3としまして相続以外の登記原因による所有権の移転の登記の申請の義務付けについて話題としており,これについては義務付けを定める不動産登記に関する法制上の措置は講じないという方向をお示ししているところであります。
  講じなくても登記はどうでもいいということになるものではなくて,講じなければ民事法制上は措置されないことになりますが,土地基本法6条2項が定める登記手続を土地所有者等はきちんとしてくださいという土地政策に関する理念の要請の下には置かれるものでございますから,そのことに留意しながら,こちらでは先ほど申し上げたような提案をしている次第でございます。
  この第2の部分及び第3の部分について,委員・幹事からの御意見を承ります。いかがでしょうか。
○今川委員 第2の1の住所・氏名の変更の登記の申請の義務付けですけれども,これについてはこの次の氏名・住所の変更の情報を法務局が入手するためには,その根拠付けとして必要だということが部会資料において記載されていますが,その前提であれば,その限りにおいては認めてよいと思いますが,義務化については基本的には消極です。訓示的な義務付けだけで何とかならないのかというところが我々の意見であります。
  というのは,住所移転というのは相続以上に頻繁に起こりますし,住居表示実施といった当事者の意思に基づかない,当事者の行為に基づかない住所変更もありますので,相続登記以上に義務的な拘束になじむものではないと思います。
  したがって,②の過料についても消極であります。それよりも,登録免許税の非課税等のインセンティブを設けるべきではないかと思います。
  (注2)について,表題部所有者についても同様に扱うべきだということについて賛成です。義務化をすることについて手放しで賛成という意味ではなくて,権利と表題部の所有者欄についても同じような扱いをするということについて賛成です。
  それから,登記所が住所・氏名の変更情報を入手するということについては,個人情報に配慮するということを前提として賛成であります。
  (1)が登記名義人が自然人である場合ですけれども,これについては個人情報に配慮することを前提として賛成ということです。
  (注1)ですけれども,これは死亡情報を入手する仕組みの構築のところで述べたのと同じ意見です。基本は賛成であります。
  (2)の法人が登記名義人である場合も,この規律を設けることに賛成であります。ただ,我々の中には,法人であっても変更の登記をするときにはなりすましの防止の観点から確認をすべきでないかという意見はあります。
  (注2)ですが,(注2)のうちの新しい制度が施行されたときに既に所有権の登記名義人となっている法人についてですが,法人の場合は義務化をしてもいいのではないかという意見があります。そもそも法人は財産の管理を正確に行うという,そういう主体であるということが前提となっていますので,義務化をしてもいいのではないかという意見が多いです。
  それと,法人の場合の会社法人等番号に関する変更の登記の申請は,非課税とすべきと考えます。
  (注3)の表題部所有者についても同様の仕組みを設けるべきかどうかについては同様の仕組みを設けるべきであるという意見です。
  3の被害者の保護のための住所情報の公開の見直しですけれども,これは賛成であります。
  ただ,この申出については,登記官がその申出が正当なものであるかどうかの判断をしなければならないので,補足説明にも書いてありますが,公的な資料又はこれに準ずる資料というのを具体的に規定しておく必要があるのではないかと思います。
  第3については,この提案どおり相続以外の原因による所有権の移転の登記について義務付ける規定を設けないということで,その方向に賛成であります。
○山野目部会長 第3も賛成だというふうに受け止めてよろしいですね。
○今川委員 第3,はい。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  橋本幹事,お待たせしました。
○橋本幹事 弁護士会の意見を申し上げます。
  第2の1ですが,これについては先ほどの相続登記の義務化と同じように,抽象的義務の限度にとどめるべきであって,過料の制裁を科すということについては反対であります。
  2については,連携システムで登記所がこういった情報を入手して反映させる仕組みを作ることについては賛成であります。ただ,ちょっとここよく分からないのが,1との関係なんですが,1の方は義務化をしますと。2では職権で登記をしますと。そうすると,職権で登記される局面と,義務化して過料制裁しますという,何というんですか,どの場合に,職権で登記されても過料の制裁がされるということも想定している制度設計なんでしょうかね。というのがちょっとよく分からなくて,そこの整理をちょっとお願いしたいということです。
  それから,3に関しては賛成であります。
  それから第3について,これも提案どおり賛成です。
○山野目部会長 橋本幹事からお尋ねが1点あったところについて,事務当局からお願いします。
○村松幹事 この点,もしかすると先ほど中田委員から御指摘があった部分と同じかもしれませんけれども,自分でという,自分でやったら義務がなくなるというニュアンスに,全体的に読めるような記載になっておるかもしれませんけれども,結果的にというと語弊があるかもしれませんが,登記上しっかりと住所変更等が表われていれば,それで義務は果たされた,あるいは違法状態といいますか,違法というのはちょっと言葉が強いですけれども,法違反状態は是正されているので,義務違反もないし過料も科されないという想定で資料を作成してございます。
  住民基本台帳制度と連携して職権でできるケースについては,基本的にはこちらで賄おうという趣旨になりますけれども,海外に居住されているような方につきましては,一応なかなかそういった手法は現状においてはとりづらいところがあり,そういった部分については直接にこの義務違反だということになっているので,なるべくやっていただきたいということを申し上げる必要があるという認識です。
○山野目部会長 橋本幹事,よろしいですか。
○橋本幹事 分かりました。
○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ。
○佐久間幹事 ありがとうございます。
  今の第2の1と2の関係なんですけれども,橋本幹事がおっしゃったのは,職権で結果が表われたというか,変更がされても過料が科されるのかということだったわけですが,私はちょっと別のことで気になりました。それは,義務化をし,かつ,例えば過料に処するということになった場合に,その期間内に職権で対応してもらったら過料を免れるのに,職権で義務期間内にしてもらえなかったら,場合によると過料を科されるんですよという,これは何かすごく運・不運に左右されることになってしまわないのかなと。そのようなことを考えると,1と2が本当にこれでというか,2があるのに1の義務化というのは成り立つんだろうかということを,少し疑問に思いました。これが1点目です。
  2点目は,実はこういうことが考えられているんですよ,ということをある裁判官の方と雑談していたら,その方は,私なんかと違って転勤が多いと。3年から5年に1回転勤がある。転勤があったときに,この義務化そのものは分かるんだけれども,そうでなくてもいろいろなところに手続に行かなければいけないし,内示があってから次,本格的に働き出すまでにほとんど時間がないのに,こんなことをやられたら対応できない,というふうなことをおっしゃって,例えば,市役所に転入届を出したときとかに,そこから申請を出せるようにできないのか,というようなことをおっしゃったんですね。
  それは,なるほどそうなのかなと思いまして,窓口を多様化するというんでしょうか,そういうことは可能ではないのでしょうか。これは全然分からないので伺う次第です。
○山野目部会長 佐久間幹事から,ここまで御発言があったものを踏まえての整理のようなことも併せてしていただきました。第2の1で申請を義務付けていることと2で登記官がアクティブに活動するような仕組みを情報連携を充実させて進めるということとの関係について,理論的にこれらは両立するものであるかというお尋ね,問題提起がありました。
  少し前に取り上げた論点ですが,死亡情報を登記官が入手することと登記名義人が死亡したことの符号を登記官が職権でつけることにしますということや,それらをにらみながら相続人申告登記などを義務付けますという話との間には,そのような緊張関係がありません。なぜかというと,あちらは情報連携は死亡したかどうかという生死のことのみであって,誰が相続人であるかということは改めて義務付けをして出してもらわなくてはいけないということであり,その二つは論理的に両立,整合しますけれども,こちらはどちらも住所の変更という同じ事項に関して一方では義務付けて,一方では登記官がアクティブに情報を入手するというふうになっていますから,この二つは論理的に一種の重複が生じて整理が困難ではないかという御指摘があったし,それから実態との関係において,それとは別なことですけれども,住所というものは頻繁に変わることがあります。人間の生死というものが頻繁に変わるということはありませんが,住所は現実に勤労者などの生活実態を考えますと変わることがあり得るものでありまして,それについてどう考えるものでしょうか,果たしてほかの情報と同じように考えることができるかといったような実態に即した心配,それから関連してワンストップサービスのようなことを大胆に導入することができないかという提言もいただいたところであります。
  佐久間幹事の御発言は,全体が意見でしたけれども,お尋ねしてみたいとかいうふうにもおっしゃっていましたから,村松幹事から何かあったらおっしゃってください。
○村松幹事 1点目ですけれども,ちょっとこちらの運用イメージを申し上げますと,住所変更のこの期間,比較的1年,2年,3年ということで長めにとっております。転居届なんかはもっとずっと短い期間ですけれども,長めにとっていますが,これはやはりある程度法務局側で作業を任意のところでするという前提をとっておりますけれども,それが例えば1か月に1回,法務局の方で住所変更をチェックするということまでは恐らく難しいと思っておりますので,ある程度の期間をおかないとなかなか住所変更を法務局側でチェックして,変更があるのではないでしょうか,住所を変えておいていいですねという手続をとれないだろうと思っておりますので,それで1年,2年,3年という形にしています。
  逆に言いますと,基本的には,期間内に法務局側の方でアクションをとって,名義人の方に住所を変更しますよということをする前提,行われるだろうという前提での期間ぐらいにしておいた方がよいのではないかというふうには思っております。
  なので,基本的には国内で住所変更をしっかりされるということになれば,法務局側がワンストップ的にということになるのかどうかという部分がありますけれども,手続を進めるという形になるのが想定です。外国の方になるとそういったことが難しいというのが先ほど申し上げたところです。
  窓口の多様化の部分は,ある意味窓口の多様化に近い状況をこの局面ではもうやるほかないのではないかというのが第2の2のところの判断だと思っておりまして,転居届を出していただければ住民票が変わる。それの情報を定期的に住基ネットの方から法務局が取得し,変わっていますねということを確認させてはいただきますけれども,それで登記を入れておきます,よろしいでしょうかということをこちらの方からやるということなので,ある意味窓口の多様化にもなっているようなところはあるような気がしております。
  実際のところ,登記所の事務自体を自治体の方にお願いすることが容易かというと,もちろんとても難しい面が自治体に事務をお願いするということだとありますけれども,その部分を登記所側の方で住基ネットの方から住所が変更しているのだということを察知して職権的に変更につなげていくということなので,窓口は実質的には多様化しているようなイメージで捉えています。
○山野目部会長 佐久間幹事,お続けください。
○佐久間幹事 いえ,よく分かりました。ありがとうございます。そういうシステムができればいいなと思います。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  引き続き承ります。
  中村委員,お願いします。
○中村委員 ありがとうございます。
  今,佐久間先生がおっしゃった第1点については私も疑問に思っておりましたところでしたので,御説明いただけてよかったです。その前提としまして確認の質問をさせていただきたいのですが,42ページの(1)の②と③に関しまして,このネットワークシステムで定期的な照会を行うなどしてという記載がございますよね。そうしますと,ある一定範囲の物件に関して,例えば年に一度とか数年に一度とかいうタームで一斉に検索をかけて修正をするというようなことを御検討なさっていらっしゃるということですか。
○村松幹事 そういう想定です。
○中村委員 そうすると,それが網羅的に全体に行き渡る期間と,それから過料を科す期間というのはリンクするというような形になるのでしょうか。
○村松幹事 実際上はそういうところも踏まえて義務違反の期間を設定しないとうまく回らないだろうと思っています。
○中村委員 私がちょっと疑問に思っておりますのは,39ページの中ほどに,またというパラグラフがありまして,「第2の2(1)本文において提案しているように,登記名義人の負担軽減策を併せて講ずることも考えれば」という記載があるんですね。これは第1にも似たような記載があったと思うんですけれども,これは,登記名義人の住所などを実態に合わせて反映させるために検索情報を申し出させるということを義務付けしていくという新たな制度だというふうに理解していたんですけれども,ここで負担軽減策という言葉が出てきたことについて,私,若干の違和感を持っております。これは本当に負担軽減になるのでしょうか。
○村松幹事 これというのは,法務局の方で住基ネットから情報を入手して,登記名義人の方に問合せをして問題ないということであれば法務局側で職権で入れてしまおうかという,その部分が負担軽減になっているので,義務を課しているからしっかりやってくださいと言いながら大部分は,言い方はあれですけれども,8割方法務局側で頑張りますというのが今回の制度なので,多くのものについてはそれほど大きな負担にはならないのではないかなという,そういうことを,すみません,言ったつもりなんですけれども。
○中村委員 もし全件について,このシステムに乗って,全てが検索されて,修正がされるということであれば,実際は過料の制裁を受けるようなことがない方向に持って行くことができるかもしれなくて,その場合にはある意味の負担軽減策になる可能性もありますけれども,まだ当面はそれほど全体を網羅的に把握できるようになっていくのかどうかわからないということもあり,この負担軽減という文言を使っていいのかというところをもう一回御検討を頂ければと思いますのが1点です。あともう一つこれに関連しまして確認ですけれども,42ページの(注1)ですが「検索用情報の申出を必ず行うものとする」とあり,第1の方でも同じ(注1)で同じ記載がありますけれども,この必ず申し出るということが義務付けられるとすると,この申出がないと登記申請自体が受け付けられないという理解でよろしいでしょうか。
○村松幹事 そのように考えておりましたが,直ちに却下事由にするかどうかはちょっと,もしかするとよく検討した方がいいのかもしれませんが,必ずやっていただくということに基本的には尽きておりますが,必要なことだということなので。
○山野目部会長 理屈上は却下事由ではないでしょうか。ただし,現実にはすぐ出そうとすれば補えることですから,登記官の現実の事務として一刀両断に却下しますということではなくて,いや,これは検索用情報も付けていただかなければいけませんから,お待ちしますという補正を促すという扱いで現場が進んでいくであろうと想像しますけれども,ぎりぎり詰められて必要的添付情報ですかと尋ねられれば,そうだということになりそうですけれども,いかがでしょうか。
○中村委員 登記申請に必要な事項であって申し出が義務であるということになる場合には,負担軽減策があり国民には大きな負担とはならない見込みというようなことではなくて,所有者不明土地という問題に対応するために,新たに義務を創設してこのようにやっていきましょうという正面からの突破の方が良いのではないかと思います。まだ言葉がまとまっていませんで,こんな言い方で恐縮ですけれども,発言させていただきました。
○山野目部会長 中村委員のおっしゃることは大変よく理解することができまして,そこに記されている登記名義人の負担軽減策を併せて講ずることも考えればという文言との関係でいいますと,最後の方に話題があった検索用情報を必ず出さなくてはいけないことが過酷ではないかといったような観点は,多分あまり本質的な論点ではなくて,それは前の方の生死確認の方で手掛かりにするためにも検索用情報をやはり出してもらわなくてはいけないものであって,あれが付いていなければ登記官は最終的には却下するし,その前駆段階として補正を促して補ってもらうという扱いでいいと思われます。
  そこはそうですけれども,問題は,この住所との関係で検索用情報をうるさく言い,さらには,ひいてこの住所の変更の登記を義務付けるということをどこまで,抽象的な義務を設けることの適否や,加えて過料を設けることの適否ということを,その軽減策と仮に言われているものとの関係で正当化することができるかというお話であろうと感じます。
  幾ら過料をめったに科しませんと言っても,法が住所の変更の登記はしなければいけません,一応は過料の制裁の規定が法律にありますということになっていると,佐久間幹事が話題にしていただいた裁判官であるとか検察官であるとか,あるいは弁護士の先生方もそうであるかもしれませんけれども,頻繁に転勤が定期的に予定されているような職業で,かつ遵法精神が旺盛で,しなくてはいけないと思っている方々は,恐らく,いやほったらかしておいてもめったに過料ってないから,まあいいではないか,そのうち法務局が検索用情報でしてくれるからというふうにはなかなか行動パターンとしてはとれないかもしれません。その期間,何か少しほったらかしておいてもいいよねと言っている間にこの検索をかけて登記官の職権でしてくれるのが追い付いてくれるというリズムが,かなりリズミカルにいくものであったらば,ほっといてもいいよということになりますけれども,そうでないなら,やはりこの忙しい中で転勤の前後だけれども行かなくてはいけないねといふうなお話になってしまうかもしれなくて,そこがものすごくリズムにずれが生ずる以上は救済策とは言えないから心配ですということをおっしゃっているところは,現実にその場に自分が置かれたという想定でいろいろ考えると,すごく生活感覚としてよく理解することができるものがあります。仰せはごもっともですから,果たして第1の方で様々な情報を提供させ,またその義務付けも併せて考えたということと,こちらとをほとんどコピー・ペーストするみたいに同じに考えることが素朴にできるかどうかという点は,改めて今日の御議論を見直して考えてみなければいけない事柄であろうと感じます。
  何か補足されることがあったらお話しください。
○中村委員 まとまっていない話で失礼いたしました。ありがとうございます。私も少し考えてみたいと思います。
○山野目部会長 ありがとうございます。藤野委員,どうぞ。
○藤野委員 ありがとうございます。
  これは,まず登記名義人が法人である場合の住所変更について申し上げたいと思いますが,これは前回の部会でも申し上げたとおり,事柄自体は非常にすごく有益なことだなと思っております。ただ,先ほどから議論されている義務化と職権登記の関係で申しますと,正にいわゆる会社の商業登記のシステムとこちらの不動産登記のシステムがリンクして,法人の名称や住所の変更が商業・法人登記のシステムから直ちに反映されるというようなことになってまいりますと,そもそももう,何というか,検索用情報というか,会社法人等番号の届出をするかどうかというところだけが鍵になってきて,法人に関しては住所変更の申請をする義務というのを何か観念すること自体できなくなってくるのではないかなというところは,今回の部会資料を見ながら感じていたところでございまして,もちろん形として義務を残すということであれば,きちんと登記名義人が会社法人等番号を届出さえすれば対応できるので,あまり弊害はないのかもしれませんが,ちょっとそこら辺はもやもやしながら拝見していたところでございますというのが一つです。
  あとは質問として2点ほど確認させていただきたいのですが,今の案はシステム間で通知に基づいて職権で変更登記をするという前提になっておりまして,この場合,先ほどから職権の場合は基本的には手数料負担はかからないような前提でということでお話いただいているかと思うんですが,この法人の名称,住所変更の場合に関しても,基本的には同じ考え方でいいのかというところは一つ確認させていただければと思います。
  あともう一つ,施行後に所有権移転登記手続をやるものに関しては,会社法人等番号を当然申請情報として出すということになるんですが,恐らくこの(注2)に書いてある,既に所有権の登記名義人となっている法人が会社法人等番号に関する変更の登記の申請をするかどうかというところが,不動産登記に正確な名称や住所を反映するための一つの鍵になってくるのかなというところはございまして,これを実際やるという場合に,どういう形でやることを今想定されているのか。例えば,これ土地を管轄する全ての法務局ごとに自分の会社の法人等番号と対象となる土地の1個1個を特定して出していくということになるのか,あるいはどこかで一括して何らかの手続をとれば,変更の届出をしたことになるのかというところによっても,大分使い勝手が変わってくるのかなというところはございまして,そこは実務側でも関心の強いところでございますので,今のお考えを教えていただければと思っております。
○山野目部会長 前段で意見としておっしゃっていただいたところは,要するに会社法人等番号を出せばそれで済む話ということになるかもしれませんねというお話はごもっともであるとも感じますから,引き続き検討します。
  例外的に会社法人等番号を持っていない法人がありますから,その場合については逆に自然人と区別する扱いは,理由はありませんから,むしろ住所の変更の登記を自然人に義務付けるなら,こちらも義務付けなければいけないということになるかもしれません。
  残余の点は,御質問を頂きましたから,事務当局からお話を差し上げます。
○村松幹事 会社法人等番号がない法人は外国の法人等がありますので,義務は全体にというふうに一応は想定していました。それを切り分けるかどうかという問題が引き続きあるという御指摘いただきましたけれども,そういうことです。
  それから,紐付けの申出みたいなものについて,これもいわゆる登記申請とちょっと異なりますので,ある程度管轄に縛られないようにすべきではないかという御指摘を以前から頂いておりまして,一応その方向で検討するということで,検討を進めているというところです。
○山野目部会長 大規模な企業が合併したりするときの名称と住所の変更の登記を個別にわーっとやらなくてはいけないか,それともどこかでワンストップでするとそれで済むかといったような局面を考えると,藤野委員が御心配のように,それはやり方によっては大変な負担になりますから,そういうことについて,広い意味での国民に含まれる法人事業者に可能な限り負担が無用に重くならないようにする配慮ということの御注意はごもっともであると感じました。ありがとうございます。
  引き続き意見を伺います。いかがでしょうか。
  よろしゅうございますか。

 

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立