法制審議会民法・不動産登記法部会第1回会議 議事録

 まず事務当局から,この度の諮問の内容,その発出の経緯,今回の検討の対象範囲等について説明を差し上げます。
○大谷幹事 御説明いたします。
 先ほどの小野瀬民事局長からの御挨拶にもありましたけれども,所有者不明土地問題の解決は喫緊の課題でございます。

第1 基本的な視点

第1 基本的な視点
 近年,土地の所有者が死亡しても相続登記がされないこと等を原因として,不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず,又は判明しても連絡がつかない土地(以下「所有者不明土地」という。)が生じ,その土地の利用等が阻害されるなどの問題が生じている。そのため,政府においては,経済財政運営と改革の基本方針2018等で,相続登記の義務化等を含めて相続等を登記に反映させるための仕組み登記簿と戸籍等の連携等による所有者情報を円滑に把握する仕組み土地を手放すための仕組み等について検討し,2020年までに必要な制度改正の実現を目指すとしている。

 部会資料1の第1の「基本的な視点」にありますとおり,所有者不明土地の発生原因は,土地の所有者が死亡しても相続登記がされないことにあるといわれておりまして,国土交通省の地籍調査における調査では,不動産登記簿では所有者等の所在が確認できない土地の割合は,約20%であったとされております。

1 所有者不明土地の発生原因
(1) 相続登記の未登記
 所有者不明土地が発生する主な原因は,土地の所有者が死亡しても相続登記がされないことにあるとの指摘がある。
平成28年度に地籍調査を実施した1130地区(563市区町村)の62万2608筆の土地について調査したところ,不動産登記簿では所有者等の所在が確認できない土地の割合は20.1%であり,そのうち相続による所有権の移転の登記がされていないものの割合は,66.7%であった(平成30年版土地白書114頁)。
また,全国10か所の地区で実施した法務省の平成29年の調査(調査対象とした自然人名義に係る所有権の個数は,11万8346個)によれば,最後の登記から相当の年数が経過しているものの割合は,次のとおりであった。

(2) 住所変更の未登記
 所有者不明土地が発生する他の原因として,土地の所有者が住所を変更しても,その旨の登記がされないことが指摘されている。
前記の平成28年度地籍調査における調査では,不動産登記簿では土地所有者等の所在が確認できない土地のうち住所変更の登記がされていないものの割合は,32.4%であった(平成30年版土地白書114頁)。

(3) その他
 売買等により所有権の移転が生じたが,その旨の登記がされないこともあるが,前記の平成28年度地籍調査における調査によれば,不動産登記簿では土地所有者等の所在が確認できない土地のうち売買・交換等による所有権の移転の登記がされていないものの割合は,1.0%であった(平成30年版土地白書114頁)。

 そして,このようにして発生した所有者不明土地を利用しようとすれば,土地の所有者を探索しなければなりませんが,その負担は小さくないと指摘されております。また,所有者不明土地においては,所有者の探索の負担とあいまって,土地の利用や管理にも支障が生じることがあるといわれ,社会問題となっております。

2 所有者探索の負担
 所有者不明土地を利用し,若しくは取得し,又は所有者に対し権利を主張するためには,土地の所有者を探索しなければならない。探索の結果,土地の所有者が判明することがあるが,その判明に至るまでの負担は小さくないと指摘されている。
 例えば,土地の所有者が死亡し,相続登記がされていない場合には,まず,当該所有者の相続人を確定しなければならないが,そのためには,当該所有者の出生から死亡までの経過の記載が分かる戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)等を取得する必要がある。さらに,この場合に,相続人が既に死亡している場合には,被相続人に加えて,相続人の出生から死亡までの経過の記載が分かる戸籍全部事項証明書等を取得する必要がある。

 

3 所有者不明土地の利用・管理の支障
所有者不明土地においては,所有者の探索の負担と相まって,土地の利用や管理に支障が生ずる。例えば,共有者の一部が不明である所有者不明土地では,他の共有者が当該土地を利用しようとしても,不明共有者の同意を得ることができないために,その利用が制限されることがある。また,ライフラインの敷設等のために隣地を利用する必要が生じても,当該隣地が所有者不明土地である場合には,当該所有者の同意を得ることができないために,支障が生ずることがある。
 さらに,所有者不明土地を管理するために,不在者の財産の管理制度等の財産管理制度を利用し,財産管理人を選任することが考えられるが,既存の財産管理制度については管理コストが高く,利用が困難であるとの指摘もある。

 諮問事項を御覧いただければと思います。この「記」以下に,今回の諮問で特に御意見を承りたい事項を書き出しております。

諮問第百七号
 土地の所有者が死亡しても相続登記がされないこと等を原因として、不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず、又は判明しても連絡がつかない所有者不明土地が生じ、その土地の利用等が阻害されるなどの問題が生じている近年の社会経済情勢に鑑み、相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組みや、所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みを早急に整備する観点から民法、不動産登記法等を改正する必要があると思われるので、左記の方策を始め、その仕組みを整備するために導入が必要となる方策について、御意見を承りたい。
         記
第一 相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み
 一 相続登記の申請を土地所有者に義務付けることや登記所が他の公的機関から死亡情報等を入手すること等により、不動産登記情報の更新を図る方策
 二 土地所有権の放棄を可能とすることや遺産分割に期間制限を設けて遺産分割を促進すること等により、所有者不明土地の発生を抑制する方策
第二 所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み
 一 民法の共有制度を見直すなど、共有関係にある所有者不明土地の円滑かつ適正な利用を可能とする方策
 二 民法の不在者財産管理制度及び相続財産管理制度を見直すなど、所有者不明土地の管理を合理化するための方策
 三 民法の相隣関係に関する規定を見直すなど、隣地所有者による所有者不明土地の円滑かつ適正な利用を可能とする方策

 第1として,相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組みの観点から,一つ目,相続登記の申請を土地所有者に義務付けることなどの不動産登記情報の更新を図る方策と,それから,二つ目として,土地所有権の放棄を可能とすることなどの所有者不明土地の発生を抑制する方策が挙げられております。
 また,所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みの観点から,一つ目として,民法の共有制度の見直しなど,共有関係にある所有者不明土地の円滑かつ適正な利用を可能とする方策,二つ目として,民法の不在者財産管理制度等を見直すなど,所有者不明土地の管理を合理化するための方策,それから,民法の相隣関係に関する規定を見直すなど,隣地所有者による所有者不明土地の円滑かつ適正な利用を可能とする方策が挙げられております。
 このように比較的詳細な諮問を行っておりますのは,所有者不明土地問題の解決が喫緊の課題となっていることから,その対策として有効と考えられる方策を幅広く御議論いただきたいと考えているためでございます。
 この部会で取り扱う審議事項といたしましては,基本的には諮問にあるとおり,大きくは二つの観点から,全部で五つの方策の導入を検討課題とすることを念頭に置いておりまして,これだけでもかなり広範囲の分野に及んでいると考えられるところですけれども,この機会に,民法及び不動産登記法に関して,更に検討が必要なテーマがあるとすれば,審議の中でそれを取り上げることを一切排除する趣旨ではございません。主要な検討課題と同じ程度のスピード感を持って,成案を得ることができるテーマであれば,同様に取り上げていくことも可能と考えております。
 なお,諮問をお示しするに当たりまして,参考としましたのが,この部会の設置に先立ちまして,登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会において行われた研究でございます。
 参考資料1は,この研究会が本年2月28日に取りまとめて公表した報告書でございます。この研究会には,私も参加しておりましたし,本日御参加の皆様のうちの何人かの方も参加されておりましたけれども,参考資料1の報告書は,今回の諮問に係る事項について,民法・不動産登記法の見直しが必要ではないかという問題意識を基に論点を整理し,考えられる方向性や課題を取りまとめたものでございます。この部会の今後の審議を進めていく上でも,大いに参考になるものと思いますので,お配りさせていただいた次第です。
 もちろん,その内容は,基本的には論点の整理にとどまるものですので,一定の方向が決まっているというものではございません。飽くまでも参考資料ということで,御参照いただければと思います。  
○山野目部会長 ただいま,部会資料1の第1の部分について説明を差し上げました。この部分は,諮問107号が発出された背景を説明するものでございますから,委員,幹事の皆様方の御意見を承るというよりは,お尋ねがありますれば承っておきたいと考えます。
 いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。

第2 考えられる検討項目

 続きまして,部会資料1の第2の部分,ここから,本日を皮切りとして,委員,幹事の皆様方の御意見を賜りたいと考えている事項でございます。
 本日は総括的に,部会資料1の第2として,やや要約をし,整理をしてお示ししているところでございます。
 この部分について,事務当局の脇村関係官から説明を差し上げます。
○脇村関係官 それでは,御説明いたします。

1 相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み

 部会資料1の第2では,諮問事項にもございます「相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み」と「所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み」につきまして,諮問事項に列挙している項目につき,敷衍して説明をしております。

(1) 不動産登記情報の更新を図る方策

(1) 不動産登記情報の更新を図る方策
ア 相続登記の申請の義務化
 相続が開始して相続による所有権の移転がされても,申請がない限り相続登記はされないが,相続登記の申請をするかどうかは申請人(相続人等)の判断に委ねられているため,土地の所有者が死亡しても相続登記がされない事態が生ずる。
 そこで,相続の発生を適時に登記に反映させるための方策として,相続登記の申請を土地所有者(相続人)に義務付けることが考えられる。もっとも,この検討に際しては,義務化の実効性を確保するための手段として,義務の履行にインセンティブを付与する方法(相続開始後一定期間に限っての相続登記手続における申請人の負担軽減)や,義務違反者に与える制裁の在り方等について検討する必要があるほか,土地の相続以外の不動産所有権の移転の登記等の申請の場面の取扱い等についても検討する必要がある。
イ 登記所による不動産登記情報の更新を図る方策
 また,相続登記の申請がなくても,登記所が他の公的機関から死亡情報等を取得して,不動産登記情報の更新を図る方策について検討することが考えられる。もっとも,この検討に際しては,現行法上,登記所は,登記名義人が死亡しても,直ちにその死亡情報を把握することができないため,どのような方法で最新の情報を把握するのかについて検討する必要がある。

 まず,1の「相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み」としましては,記載しておりますとおり,不動産登記情報の更新を図る方策を検討することが考えられます。
 具体的には,先ほども説明ありましたが,相続を開始して,相続による所有権移転がされても,申請がない限り相続登記はされず,相続登記の申請をするかどうかが申請人の判断に委ねられ,相続登記がされない事態が生じていることから,相続登記の申請を義務化することについて検討することが考えられます。
 また,相続登記の申請がなくても,登記所が他の公的機関から死亡情報等を取得して,不動産登記情報の更新を図る方策について,検討することが考えられるところでございます。

(2) 所有者不明土地の発生を抑制する方策

(2) 所有者不明土地の発生を抑制する方策
ア 土地所有権の放棄
 土地の所有者が,相続の開始前に,所有権を放棄することを認め,当該土地の所有権を公的な機関等に帰属させることができれば,所有者不明土地の発生を抑制することができる。
現行民法においては,所有権の放棄に関する規定がなく,土地所有権の放棄の可否について確立した判例もないが,上記の観点から,一定の要件のもとに,土地所有権の放棄を可能とする制度を整備することが考えられる。その整備に当たっては,所有権放棄の要件・効果や放棄された土地の帰属先機関とその財政的負担,土地所有者が将来放棄するつもりで土地の管理をしなくなるモラルハザードの防止方法,建物や動産の所有権放棄との関係等について,検討する必要がある。
イ 遺産分割の促進
 土地の所有者が死亡し,相続人が複数いる場合には,当該土地は共有(遺産共有)の状態となる。この場合に,遺産分割が行われ,その旨の登記がされれば,所有者不明土地の発生は抑制されるが,現行民法には遺産分割を実施することができる期間について特に定めはないこともあり,遺産分割がされないまま,遺産共有の状態で放置されている土地は少なくないとの指摘がある。
 そこで,遺産分割に期間制限を設けるなどして,遺産分割を促進することが考えられるが,その期間をどの程度に設定するのか,期間を経過した際にどのような効果を付与するのかなどについて検討する必要がある。

 次に,(2)にございます「所有者不明土地の発生を抑制する方策」でございますが,土地の所有者が相続の開始前に所有権を放棄することを認め,当該土地の所有権を公的な機関等に帰属させることができれば,所有者不明土地の発生を抑制することができることから,現行民法には規定がない所有権放棄につきまして,一定の要件の下に,これを可能とする制度を整備することが考えられます。
 また,土地の所有者が死亡し,相続人が複数いる場合には,当該土地は共有地状態になりますが,この場合に,遺産分割が行われ,その旨が登記されれば,所有者不明土地の発生は抑制されるため,遺産分割に期間制限を設けるなどして,遺産分割を促進するといったことが考えられるところでございます。

2 所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み

(1) 共有制度の見直し
 所有者不明土地が共有地であることは少なくないが,以下のとおり,共有制度に起因して問題が生じているため,共有制度を見直す必要があると考えられる。なお,共有制度の見直しに当たっては,通常の共有と遺産共有との異同を踏まえて検討する必要がある。
ア 共有物の管理や共有物の変更・処分の規律の明確化
現行民法は,共有物の変更・処分は共有者全員の同意を得なければすることができないが(民法第251条参照),変更・処分に至らない共有物の管理は原則として共有者の持分の価格の過半数の同意を得ればすることができる(民法第252条)とする。もっとも,どのような行為が共有者の持分の価格の過半数の同意を得ていればすることができるかが判然としないため,本来であれば持分の価格の過半数の同意を得れば足りる行為であっても,慎重を期して共有者全員の同意を得てすることとなり,共有地の適切な利用が阻害されているとの指摘がある
 そこで,共有物の管理に関して,共有者全員の同意が必要な行為とそうでない行為とを区別することができるようにするため,共有物の管理や共有物の変更・処分の規律の明確化を図ることが考えられる
イ 共有者の同意取得方法に関する規律の整備
 共有者の中に氏名・所在が判明していない者を始めとして態度を明確にしない者がいると,共有物の管理や変更・処分に当たる行為をすることが困難になる。
そこで,例えば,一定の要件のもとで氏名等が不明である共有者に公告等をした上で,なおその共有者が態度を明確にしないときは,その余の共有者の同意を得ることによって共有物の利用を可能とするなど,共有者の同意取得方法に関する規律の整備を図ることが考えられる。
ウ 共有物の管理をする者に関する規律の整備
 現行民法では,共有物を利用したり,取得したりしようとする第三者は,共有者の全員を調査して特定し,全員との間で交渉をしなければならず,負担が大きい。
 そこで,共有物の管理に関する対外的窓口となる共有物の管理をする者の制度を整備することが考えられる。
エ 共有状態の解消を促進する制度
 共有は,その性質上,単独所有に比べて迅速な意思決定が困難であり,共有者が増えれば増えるほどその困難が増大することになる。
 そこで,共有者の一部の者が,供託を活用して,所在不明の共有者から持分を取得することを含めて,共有の解消を促進する制度を整備することが考えられる

 次に,2にございます「所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み」でございますが,所有者不明土地が,いわゆる共有地であることは,少なくないところでございますが,共有制度に起因して問題が生じているため,共有制度を見直すことが考えられるところでございます。
 具体的には,ア以降で書かせていただいておりますが,例えば,共有者全員の同意が必要な行為とそうでない行為とを区別することができるようにするため,共有物の管理や共有物の変更・処分の規律の明確化を図ることや,共有者の中に氏名・所在が判明していない者を始めとして,態度を明確にしない者がいる場合に対応するため,一定の要件の下で,氏名等が不明である共有者に公告等をした上で,なおその共有者が態度を明確にしないときは,その余の共有者の同意を得ることによって共有物を利用可能とするなど,同意取得に関する規律の整備を図ることが考えられます。
 さらに,現行民法では,共有物を利用したり取得したりしようとする第三者は,共有者全員の調査をして特定し,全員との間で交渉しなければならないことがございますが,その負担が大きいため,共有物の管理に関する対外的窓口となる共有物の管理をする,そういった者の制度を整備することが考えられます。
 そのほか,共有はその性質上,単独所有に比べまして,迅速な意思決定が困難であるため,共有者の一部の者が供託を活用して,所在不明の共有者から持分を取得することを含め,そういった共有の解消を促進する制度を整備することも考えられるところでございます。

(2) 財産管理制度の見直し
 土地の所有者が所在不明となり,当該土地の管理等をしない場合には,土地の所有者に代わって当該土地の管理等をする者を選任するなどの措置が必要となる。現行民法においては,不在者の財産の管理制度(民法第25条以下)や,相続財産の管理制度(民法第951条以下)を置き,土地の所有者が不在者になっている場合や,死亡して相続人のあることが明らかでない状態になっている場合に対応することができるようにしている。
もっとも,既存の財産管理制度については,管理コストが高く,利用が困難であるとの指摘があり,財産管理制度を見直す必要があると考えられる。
ア 特定の財産を管理する制度
不在者の財産の管理制度及び相続財産の管理制度は,不在者等の財産全般を管理するものであるために事務処理に要する費用が高くなることから,管理コストを低減させる観点から,不在者等の特定の財産のみを管理する制度を整備することが考えられる。
イ 共通の財産管理人の選任
不在者の財産の管理制度及び相続財産の管理制度では,土地の共有者のうち複数の者が不在者等である場合には,複数の不在者等について,それぞれ財産管理人が選任されており,事務処理に要する費用が高くなっているとの指摘がある。
そこで,管理コストを低減させる観点から,複数の不在者等について共通(一人)の財産管理人を選任することができる制度を整備することが考えられるが,利益相反の問題との関係に留意する必要がある。
ウ その他
現行民法の相続財産の管理制度においては,相続財産管理人の選任の公告,相続債権者等に対する請求申出を求める公告,相続人捜索の公告の3回の公告を,最低でも10か月間かけて行わなければならないが,この期間を短縮するなどして,財産管理の手続を早期に終了させることを可能とするなど,財産管理制度を合理化することが考えられる。

 次に,(2)でございますが,現行民法には,いわゆる不在者財産管理制度や相続財産管理制度がございまして,土地の所有者が不在者になっている場合などに対応することができるようにはなっておりますが,既存のこういったものについては,管理コストが高く,利用が困難であるとの指摘もあることから,財産管理制度の見直しが考えられるところでございます。
 具体的には,管理コストを低減させる観点から,不在者等の特定の財産のみを管理する制度を整備することや,複数の不在者等について共通する1人の財産管理人を選任することができる制度を整備することが考えられます。
 そのほか,財産管理の手続を早期に終了させることを可能とするなどして,財産管理制度を合理化するといったことも考えられます。

(3) 相隣関係規定の見直し
現行民法の相隣関係に関する規定は,明治29年に民法が制定されて以来,実質的な見直しがされておらず,所有者不明土地問題が生じている近年の社会経済情勢に合わせて,規律を見直す必要があると考えられる。
ア 管理不全状態の除去
所有者不明土地が荒廃して隣地の所有者等に損害が生じている場合について,現行民法には,明文の規定はない。そこで,このような場合にも対応することができるようにするため,隣地の所有者等が,管理不全の土地の所有者に対して,管理不全状態の除去を請求することができることを明確にするなどの整備をすることが考えられる。
もっとも,その整備に当たっては,関連する他の請求権(土地所有権に基づく妨害排除請求権や妨害予防請求権生活妨害による不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条),人格権に基づく差止請求権など)との関係等について,検討する必要がある。
イ 越境した枝の切除
現行民法では,土地の所有者等は,隣地の竹木の根が越境した場合には,自らその根を切り取ることができるが,竹木の枝が越境した場合には,その竹木の所有者にその枝を切除させることができるに過ぎないとされている(民法第233条)。
 しかし,隣地が所有者不明土地である場合に,竹木の所有者に枝を切除させるのは容易ではないため,越境した枝の切除に関する権利行使方法を見直すことが考えられる
ウ 隣地使用請求権
現行民法では,土地の境界標等の調査や土地の測量のための隣地使用に関する規定がなく,また,工事のための隣地使用に関しても,隣地所有者の承諾を得るか,承諾に代わる判決を得る必要があるため,隣地が所有者不明土地である場合に対応が困難となる。
 そこで,隣地使用請求権の範囲の明確化と行使方法の見直しを図ることが考えられる。
エ ライフラインと導管等設置権
各種ライフラインは現代社会において必要不可欠であるが,その導管等を設置するために他人の土地を使用することについては,現行民法に規定がなく,隣地が所有者不明土地である場合に対応が困難になる。
 そこで,ライフラインの導管等を設置するために他人の土地を使用することができる制度を整備することが考えられる。

 また,第3でございますが,隣地が所有者不明土地である場合に対応することを見据えまして,いわゆる相隣関係規定の見直しをすることも考えられるところでございます。
 具体的には,そこにも書かせていただいておりますが,隣地の所有者等が管理不全の土地の所有者に対して,管理不全状態の除去を請求することができることを明確にするなどの整備をすることや,隣地が所有者不明土地である場合に,例えば竹木の所有者に枝を切除させるようにするため,越境した枝の切除に関する権利行使方法を見直すことが考えられます。
 また,現行民法には,土地の境界標等の調査や土地の測量のための隣地使用に関する規定がございませんが,隣地使用請求権の範囲の明確化と交渉方法の見直しも考えられるところでございます。
 そのほか,現行民法に規定がない各種ライフラインと導管設置権に関し,ライフラインと導管等を設置するために他人の土地を使用することができるようにするため,その制度を整備することなども考えられます。
○山野目部会長 ここまで,部会資料1についての説明を差し上げました。
 委員,幹事の皆様方からの御意見を頂きます前に,もう一つ説明を差し上げておきたい事項がございます。と申しますのは,この部会に託された審議事項につきましては,内容的に,時期的に並行して開催され,調査・審議が進められております,国土交通大臣の諮問機関である国土審議会における土地基本法の見直しを始めとする土地政策の今後の方向性の検討,これが密接な関連を有しています。
 委員,幹事の皆様方に,そのあらましを御承知おきいただくことが望ましいと考えられますことから,国土交通省より,現在の進捗の状況について説明を聴取しておくことが有益であります。
 横山関係官において資料の御用意を頂いておりますから,説明をお願いいたします。

○横山関係官 横山でございます。
 少しお時間を頂きまして,お配りいただいております資料,事前にも送付いただいたと聞いておりますけれども,資料について御説明させていただきたいと思います。
 確認していただきますと,1枚の紙が一つありまして,その下に,ページを打ってある3枚の紙があろうかと思います。それから,その下に,少し厚さのある,とりまとめという表紙が付いている,この三つの資料をお配りいただいているかなと思います。
  少し,中身の説明に入る前に,背景の辺りからちょっと,ノンペーパーでございますけれども,まず御説明をおさらい的にさせていただきますと,御案内のとおり,所有者不明土地問題に関しては,直接的には,今回の議論が始まっているのは,国土交通省としては,東日本大震災の被災地で,復興事業をやるに当たって,所有者不明土地が公共事業の推進に,非常に隘路になったということが一つのきっかけとなって,真剣な議論を始めたと。それが政府全体の課題になってきたという流れにあるのかなと思っています。
 そして,直近は,2017年の骨太の方針に,当面できることをやっていけということで,国土交通省と法務省さん,協力させていただきまして,まず,公共的な目的で所有者不明土地をいかに活用するかと,円滑に活用するかという観点から,新法を立案いたしまして,昨年6月に,所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法というものが制定されているということは,皆さん御案内のことかなと思います。
 中身的には,国土交通省で所管しております収用手続に関しての合理化ですとか,収用適格事業という意味からは少しはみ出した公共的な事業という概念を作りまして,地域福利増進事業と申しておりますけれども,地域に必要なポケットパークとか不可欠な購買施設などを念頭に置いておりますけれども,このために,暫定的な利用権ですね,10年間ということで,もちろん延長はできるんですけれども,そういうことが設定できるような制度,それから,それに先立っての,そもそもの所有者不明であるかどうかということの探索が,非常に手間が掛かっていますので,所有者探索の合理化などをするというようなことの措置を中心にした法律を制定していただいているところでございます。
 所有者探索等の部分に関しては,昨年11月に既に施行されていますが,収用手続とか新たな地域福利増進事業といった新たな枠組みについては,今年の6月に全面施行の予定になってございまして,そこに向けて鋭意準備を関係省庁でやらせていただいていると。これがある意味,第1ステージの流れになっています。
 今事務局からお話のあった点と,私が今から御説明するのは,次の段階として,第2ステージとして進められているものだというふうに認識しています。
 どちらかというと,所有者不明土地になってしまったものを,いかに利用を円滑化するかということも大事ですが,そもそも発生を抑制するとか,問題を解消していくとか,利用に関しても,もう少し,まだ十分でないところが,利用の円滑化に関してもあるということが,問題意識の中心になっているかと思います。その中で,国土交通省に課されました命題としては,法務省さんが中心になって御議論いただいている部分と並行して,土地に関する基本制度の見直しと,土地の境界を明確にしていく地籍調査という仕組みがございますけれども,こちらの円滑化・迅速化のための措置について,根本的な議論をしていけということになっています。
 結論としては,それらについては,前者については土地基本法改正に結び付けると,後者は国土調査法,あるいは国土調査促進特別措置法という地籍調査事業の十箇年計画の根拠になっている法律がございますけれども,こちらを改正ないしは延長していくことを念頭に,制度改正に取り組むことになってございまして,この具体的な方向性について,実は国土審議会でとりまとめをして,2月に公表しているところでございます。
 若干前置きが長くなりましたけれども,この2月に公表した土地基本法の改正の方向性についての資料を今日お持ちしているという,こういう背景と中身でございます。
 この土地基本法の改正というのは,今日から本格的に御議論いただく民事基本法制等の見直しと呼吸を合わせて,2020年に政府として,たどり着けというふうな政府の方針になっているということでございます。
 そして,資料の方に目を移していただきたいと思いますけれども,1枚紙を配っている中身でございますけれども,まず土地基本法でございますが,六法全書の公法の部分でも一番に出てくる法律でございますが,名前は立派でございますけれども,実は平成元年に制定して以来,中身の改正というのをきちんとやったことのない法律でございます。
 平成元年というのはバブルの真っ最中でございまして,私,土地政策担当参事官と名乗ってございますけれども,当時の土地政策というのは地価対策と同義でございました。投機的取引の抑制等を背景に,できた法律でございます。
 中身的にも,条文を必要であれば御覧いただければと思いますけれども,土地取引を規制するとか,旺盛な需要とか土地利用の意欲があるということを前提に,それをコントロールする,規制するということが前面に出て,いかに地価を安定させて,土地を有効利用するかというような命題に対して,方向性を示している基本法でございます。
 基本法でございますので,構造としては,実は基本理念とか,極めて抽象度の高い,各主体の責務とか,基本的な政策の骨格みたいなことを示しているだけの法律で,実際には,この基本的政策の方向に沿って,各個別法が制度を打ったり,予算的な措置を別途打ったり,税制を改正したりすることによって,政策が実現されるという仕組みになっている法律でございます。
  そういう法律に関して,今日的な課題の目で見ますと,特段の利用を積極的にしないということが,実は余り想定されていないということが,一つ大きな課題であるかなという議論がされています。その規律が,土地を積極的に利用しない場合の規律が不明確であるということが,この紙の一番最初の行に書いていますが,そこから出発して,議論をしていただいているということでございます。
 そして,土地を積極的に利用しない場合の規律ということでございますけれども,それはむしろ,利用のめどが立たないような土地について,いかに適切に管理していくかとかいうことの方向性から,何が大切かということを考えていかなければいけないという議論をしていただいたということでございます。そこに書いてございますように,基本的理念としては,適切な利用・管理の確保の必要性というのを念頭に置いた法律にしていかなければいけないのではないかと。
 そして,管理に関しては,実際,非常に,土地の管理不全等が課題になってきていますので,それについての責務とか役割分担を明確にする必要があるのではないかと。その責務,役割分担に基づいて,土地政策の基本的な方向性も再構築していくのではないかという方向性のとりまとめをしていただいているということでございます。
 1枚紙の下の固まりを見ていただきまして,右側,責務と役割分担のイメージでごすが,関係主体間で適切な役割分担が必要でございますけれども,まずは大事なのは,左の上でございますけれども,所有者が第一次的な責務を負うことということを明確にしていただいています。そこには,登記とか境界の明確化をしておくということも含んで論じられるべきであるという方向性になっています。
 その上で,下の箱ですが,しかし,それが困難な場合が現実にございますし,想定されますので,困難な場合には,近隣住民や地域コミュニティーがそれを補完するという役割も考えていかなければいけないのではないかという議論をしていただいているということです。
 それから,右側の二つの箱ですが,国,地方公共団体は,これらの責務とか役割の遂行を支援して,必要な場合には自ら対応するということが求められるのではないかと。そして,特に国には,土地に関する情報インフラを整備するとともに,最終的な管理の受け皿機能を確保するというような役割も期待されるのではないかというとりまとめをしていただいています。
 こういう役割分担に沿って,土地の適切な管理という基本理念を実現していくに当たっての基本的施策でございますけれども,かなり粗っぽく整理してございますが,右の箱でございます。
 大きく三つ柱を立てていますが,まずは,冒頭申し上げたように,従来の土地政策,土地基本法が想定していた規制とかコントロールということではなくて,むしろ適切な土地の利用・管理を促す,誘導する措置というのが,施策の中心になってくるのではないかという考え方を打ち出していただいています。
 一つは,所有者自身が管理されようということをいかに促していくか。あるいは,新しい所有者に,管理しよう,利用しようという所有者にうまく移っていくことによって,結果的に新しい所有者にうまく利用・管理していただくという,そういう取引の円滑化促進という観点も含めて,そういうことを促進していかなければいけないのではないかと。
 あるいは,所有者以外の方が,いかに周辺で支援するかと。近隣住民等やまちづくりの団体等も念頭に置いていますが,そういう関係性を作っていくということに関しても,うまくコーディネートしていく施策等が必要なのではないかというような打ち出しをしていただいています。
 それから,そういうような仕組みを一つ一つ,現実に動かしていくに当たって,これが正に,今日から法制審で御議論いただく御議論と裏表になるわけでございますけれども,土地政策の観点から,共有者や隣人,あるいは公共主体も含めてでございますけれども,別の方が所有されている土地に関して,所有権があるわけですけれども,それを絶対視しないで,いかに乗り越えて,地域のため,公共のために,あるいは自らの利益・受益のためという部分も含まれますけれども,合理的な手続あるいは円滑な手続で,土地の利用・管理に関与していけるかということ,そういうことを現行制度よりもかなり円滑にできるようにしていかなければ,うまくいろいろな施策が作動しないのではないかというような方向性を打ち出していただいています。
 さらに,そういうような全体を下支えする仕組みとして,基本的な土地に関する情報基盤を整えていくということが必要なのではないかということで,所有者情報というものを非常に強く意識して,登記の必要性,登記の仕組みの促進ということでありますとか,境界,対象物がはっきりしていないということ自体も問題もございますので,地籍調査をしっかり進めていくというような方向性,こういうようなことを,しっかり基本的な施策として,意識して打ち出していくべきではないかというような御議論を頂いているということでございます。
 ざっくり申し上げますと,こういうことでございます。
 少し補足的に,意識しているところを申し上げますと,所有者の第一次的な責務ということをかなり意識して論じていただいたのは,ある意味,当たり前のことといえば当たり前のことなのでございますけれども,土地基本法でそういうことをうたっておくことによって,所有者自らが責務を果たされることに対して,社会として,いかに下支えするかということに関しての正当化といいますか,正当性を与えていくということが,当然念頭に置いていることでございます。
 もう一つは,逆に,第一次的な責務があるゆえに,その責務を十分に果たせない,あるいは果たされていない,所有者不明みたいな場合も含めてでございますけれども,そういう場合には,所有権が絶対であるということではなくて,周辺が必要と感じるのであれば,所有者の絶対性を乗り越えて,ある程度できることを考えていかなければいけないのではないかということを考えていただく理論的根拠として,所有者の第一次的責務を強調していただいているということでございます。
 あるいは,その中身として,従来は物理的な利用とか管理を念頭に置いている節が強かったわけですけれども,明確に,登記をしておくとか境界を明確にしておくというようなことも,その責務には含まれるというような議論をしていただいておくことによって,本日から御議論いただきます,登記の義務化をどのようにやっていくかというようなことも含めて,そことの整合性というか,理論的根拠を土地基本法の側から与えておくということが必要であるということで,意識的に御議論いただいたということでいます。
 それと,先ほど申し上げたように,共有者や隣人,あるいは公共による利用・管理を円滑化する措置ということが,土地政策の観点から是非必要であるということをかなり強調して,議論を頂いているということでございます。
 この辺りがポイントでございまして,政府の方針でも,民事基本法制の見直しと併せて土地基本法等の見直しをするという明確な記述になってございます。
 これは,土地基本法の側から見れば,民事基本法制をしっかり御議論いただいて,土地の利用・管理が円滑に,あるいは適切になる方向に変えていただくことが,土地基本法は理念しか示せない法律でございますので,ある意味,具体的な担保措置になっていくということを意識して,政府としても,民事基本法制の議論と土地基本法の議論を車の両輪というふうに考えているということでございますので,是非,土地基本法,国土審議会の今まで積み上げてきた議論も念頭に置いていただいて,今後の議論をお願いできればということで御紹介させていただきました。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 ここから後は,委員,幹事の皆様方の御意見,御質問も含めた意味での御意見を承ることにいたします。
 部会資料1の方に戻っていただきたいと望みます。
 部会資料1の第2のところを御覧いただきますと,その中が1と2に分かれてございます。この1と2に分かれているところは,先ほど大谷幹事から御説明を差し上げました諮問107号で,この部会に対して調査・審議が求められている大きな二つの柱の一つずつに対応してございます。
 本日これから,委員,幹事の皆様に御議論を頂くに際して,この1と2を分けて,それぞれについて御議論を頂きたいという御案内を差し上げて,御意見を頂くことといたしますけれども,しかしながら,内容の上では関連し合っている事柄もあるのではないかと想像いたします。
 本日は,具体の論点を取り上げるのではなくて,初回の部会の会議において,皆様方の総括的・包括的な御意見を承っておきたいというふうに考えるものでありますから,自由闊達な御議論をお願いできれば有り難いと考えます。
 そのようなことですので,まずは部会資料1の第2の1「相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み」の部分について御意見を承ります。どうぞ御随意に御発言ください。
○松尾幹事 今日は第1回目ですので,細かな論点に入る前に,全般的な視野からコメントをさせていただきたいと思います。
 今,横山関係官からも御説明いただきました土地基本法制の見直しの動向と,ここで検討すべき民事基本法制からの対応とをブリッジするという観点から意見を申し述べたいと思います。
 所有者不明土地問題を一つの契機といたしまして,背景にあるより本質的な問題として,土地の所有や管理が私人の手では負担し切れなくなってきているという状況が明らかになってきているように思います。この事態に対して,土地基本法制と民事基本法制の各観点からなし得る制度改革が何かということが,共通課題であると認識しております。
 ある人が土地を所有して,利用して,途中で処分したり,自然人の場合には最終的には死亡して,ほかの人に移っていくわけですけれども,このプロセスの各所で,いわゆるスタックが生じていて,土地の所有者による利用や,担い手の変更や,適切な補助者の関与ということが阻害されている状況が一定のパターンとして生じているようにおもわれます。そういう制度的な障害を取り除いて,土地の所有と利用のシステムを全体として改善していくという大きな目標があるように思います。その一つに,今回の民事基本法制の見直しがあるというふうに理解しております。
 こういう観点から見ました場合に,本日御説明いただきました部会資料1の第2にございます相続登記の義務化から相隣関係規定の見直しまで,諮問事項でいうと五つ,具体的には八つほどの具体的な論点が挙げられているように思いますけれども,これらはいずれも適切な論点ではないかというふうに思います。
 もっとも,議論すべき論点がこれに限られるわけではないということにつきましては,先ほど大谷幹事からも御説明がございましたので,やはり広い視野から,他に議論の対象とすべき論点についても最初に確認しておく余地はあるのではないかというふうに考える次第です。
 今,横山関係官から提供された資料のうちの,最後にとりまとめの資料がございますけれども,その資料の10ページの末尾辺りにも出てまいりますし,先ほど横山関係官からの説明も賜りましたが,土地利用の多様な担い手の一つとして,例えば地域コミュニティーの役割というものが重視されております。
 民事基本法制の観点からは,安定的に存続してきた地域コミュニティーに対して,登記能力の承認等について,可能な支援があるようにも思われます。この点につきましては,既に変則的登記の解消に関して,現在検討されております方策の中でも取り上げられておりますし,本日の参考資料1の末尾にも,この変則的登記の解消に関する章がございます。そこでの扱いは,まだ流動的ではありますが,地方自治法上の地縁団体法人の認可手続との関連性も考慮しつつ,より実体に適合した対応策が何か,検討対象の一つになり得るようにも感じております。
 飽くまで一例ということで,決してそれにこだわるわけではございませんけれども,全般的な観点から,土地所有のシステムを包括的かつ持続可能なものとしていくという目標の中で,重要な意味をもつ論点であると考えます。まずは,この目標に通じる様々な論点を挙げていただいたことにつきましては感謝申し上げたいと思います。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 引き続き,委員,幹事の皆様方の御意見を承ります。
○潮見委員 松尾幹事がおっしゃったのは,私はそのとおりであろうと思いますが,今回が最初の会ですので,むしろそれより前の基本的なところについて,少し御意見なり感触というものを,特に横山関係官にお尋ねしたいというふうに思うところです。
 端的に申し上げますと,今回の諮問等も含めて,所有権というものの捉え方自体が従前の,よく言われる近代民法の下での所有権の理解とは違ったパラダイムの下で展開されているのではないかと思うところがございます。
 つまり,国が現在,あるいは将来の社会を見据えて,人為的に作り出そうとする制度の中に,土地の所有権をいかに位置付けるかという観点から,民事法制も含めて,土地の所有権とか,あるいは不動産の登記法制というものを考えていきましょうという方向性,そして,その延長線上で,共同体社会の中での公共的な財としての土地所有権という,公共性あるいは公益性の視点というもののも前面に出して考えていきましょうという方向性が,基本のところで示されているのではないかと思います。
 私,これ自体はいけないというつもりは全くないですし,必要ではないかというところも感じているところですが,その一方で,危惧もあります。先ほどの横山関係官の御発言の中でもおっしゃっておられましたが,所有権あるいは所有の持つ絶対性について,先ほどの部会等々で,一体どういうふうな理解をされてきたのでしょうか。
 もうちょっと砕いて言いますと,従来から言われていた所有権絶対の原則だとか所有権の絶対性というものが残る部分があるのか,ないのか。残すとすれば,それはなぜなのか。残らないとすれば,それはなぜなのか。その辺りについて,部会とか,あるいは関係するところでの協議とか,その辺で何か話が出ていたのかどうか。
 所有権絶対の原則と,先ほど申し上げた文脈で捉えた場合の土地所有権の持つ公共性の優先ということは,基本的な視点として対立するところが出てくると思いますので,もし何か,検討等がされておりましたなら,御教示いただければ有り難いなと思うところです。
○山野目部会長 横山関係官へのお尋ねを含んでいる御意見であったと受け止めますから,横山関係官から何かおありでしたら,お願いいたします。
○横山関係官 議論に御参加いただいていた委員もいらっしゃいますので,場合によっては訂正していただいても結構かと思いますが,御説明いたします。
 事務局として議論に参加させていただいていた立場として,実は説明上,所有権の絶対性についてという表現を採りましたけれども,私の記憶では,明確に所有権の絶対性そのものの概念について議論がされたという感じにはなっていませんし,我々も,そういう言葉として提示したわけではございませんでした。
 どちらかというと,土地基本法そのものに,従来から土地に関しては,「公共の福祉の優先」という文言が入ってございまして,この言葉を,平成元年の当時はこういうふうに考えていたと。それは,私の個人的理解としては,所有権の絶対性といっても元々,何というか,100%ではないという考え方だと思いますので,絶対性に対しての具体的仕組みとして,公共の福祉優先ということで,何ができるのかということの線みたいなものが,平成元年のとき意識されていたことと,今日的な課題に基づいて,こういうことであれば,絶対性に対して,他者が手続を踏んで,例えば関与できるとか,あるいは簡便な形で関与できるみたいなことですね。ということが,平成元年のときと違うものがあるのではないかというような議論をしていただいたというのが,私の認識でございます。
 ただ,部会での議論では,それは何というか,極めて観念的な議論で,まだとどまってございますので,あるいは土地基本法を改正するという目的からすると,ある意味,観念的な議論でとどまらざるを得ないわけですが,それゆえに,では,具体的にどういう手続で,どういうことができるのかみたいなことに関しては,各個別の法律に基づいて,どういうことができるのかという議論をしなければいけないという出発点を,土地政策分科会の結論として,そういう議論をしなければいけないという出発点を提示していただいたというような議論であったと思っています。
○潮見委員 ありがとうございました。よく分かりました。
 土地の所有権,公共の福祉の制約に服するというところから出発をされたというところで,しかも観念的な議論という形で,それを前提にいろいろ検討をされたという理解で私は受け取りました。
 もちろん,最後におっしゃられたように,だからこそ,具体的な,特に民事法制を考える場合には,従来からの所有権の絶対性ということが持っていた意味,所有権を持っている人に所有権に結び付けられた価値をどういうふうに割り当てていくのかとか,所有者がどこまでの権限を持つのか,あるいは負担を負うのかとか,伝統的にいわれていたものと今おっしゃられたものとの調整のありかたを考えながら,個別の制度をここから先,ここで議論していけばいいというようなことでしょうか。
○山野目部会長 横山関係官のお話の中に,国土審議会の部会に参画なさっていた方もここにいます,というお話がありました。該当なさる皆さんから,横山関係官のお話に補足がおありの方がいらしたら伺っておきますけれども,特段なければ,よろしゅうございますか。
○松尾幹事 潮見委員から御質問いただきました従来の近代的所有権概念の見直し,とりわけ所有権絶対の原則についての見直しがあったのかという点に関しましては,私の個人的な理解では,必ずしもそういうことではなかったものと考えております。
 元々所有権の絶対性といっても,無制約性を意味するものではなくて,一定の公益確保の観点から制約があることは当然含意されているものの,とりわけ土地所有権においては所有者の自由と公共の福祉との境界線といいますか,どこまでどういう理由で制限できるんだというのが必ずしも明確ではないし,その境界線は,地価高騰や人口減少といった社会経済状況の変化によっても変わってくるだろう,それを現在の状況に合わせて,より明確にしようというのが,中心的な問題意識であったように思われます。
 したがって,所有権概念自体が変わってきているというふうには理解しておりませんで,むしろ,その具体的内容を現代に合わせて明確化していくというのが主題ではなかったかというふうに認識しております。
○潮見委員 すみません,先ほどの横山関係官がおっしゃられたことで確認はできたのですが,むしろ私が言いたかったのは,国が人為的に作り出す,あるいは,これがいいと思われる制度の中に所有権を位置付けるという捉え方で,この間の議論が進んでいたのかなということです。
 先ほど松尾幹事は,近代的所有権という話もされましたが,所有権の絶対ということがとかれる文脈では,所有権の制度が人為的に国が作り出した制度だから公共性を優先すべきだという観点からのアプローチではないはずなんですよね。
 そういう意味では,見方を変えることによって,それが適切かどうかは別として,民事法制についても新しい視点が出てくるという見方もあるかなということもあって,ちょっと発言をさせてもらった次第です。松尾幹事がおっしゃることもよく分かります。
 ありがとうございます。
○中田委員 二つ,関連することを申したいと思います。
 第1は,ただいまの3人の委員,幹事の御議論との関係ですけれども,所有権の絶対性ということを振りかざして,その先一歩も動かないということがあってはならないということは,多分共通していると思います。他方で,所有権の絶対性を乗り越えるという,先ほど表現がございましたけれども,それを所与のスローガンとしてしまうというのは,やや行き過ぎになるおそれがある。むしろ問題ごとに,個別に慎重に考えていくということが必要ではないかと存じます。
 その意味で,お三方の御発言は,それぞれニュアンスや見方に若干の違いがありますけれども,具体的には同じようなところを考えておられるのではないかと理解いたしました。
 第2点ですけれども,頂いた検討項目には2種類のものがあると思います。一つは,所有者不明土地であることを要件として,既存の制度の特例を設けるべきもの,もう一つは,所有者不明土地の発生抑止のための制度の創設や改正というものがあると思います。
 後者は一般原則の改正となって,ただいまの議論とも関係するところでございますけれども,所有者不明土地の問題以外の問題にも広く波及することが考えられますので,調査・審議には相当の時間を要することが予想されます。他方で,与えられた時間が短いことからしますと,二つの種類の問題について,検討の優先順位をよく考えてお進めいただくのがよいのではないかと考えます。
○山野目部会長 部会の議事の議題の立て方について,後半で御注意いただいたことについては,事務当局とともに心して進めたいと考えます。ありがとうございます。
○道垣内委員 ここまでの議論の関連で申しますと,権利から出発して,その権利の制限を考えるのか,それとも権利概念をいじらないで,目的物の性質というところから議論をするのかというものの二つのアプローチって,あり得るだろうなという気がしておりました。それは感想にすぎませんが。
 もう一つ,急に細かくなるように思われるかもしれませんが,今後の議論のために,知識として確認しておきたいことがあります。つまり,例えば,私が現在,土地を所有しているとしまして,それを山野目さんに譲渡していないのだけれども,譲渡したと述べて,山野目さんへの移転登記を申請し,登記がなされたとします。これには何らかの形で,罰則などがあるのでしょうか。
 例えば,売買契約をしたのだけれども,登記をするのが遅れているという状況は,遅れであるにすぎず,現行法上,特に制約はないことはわかるのですが,そうではなくて,誤った状況を作成していることに対しては,現行法上,何らかの形の制約が掛かっているのだろうかというのが,ちょっとよく分からないのです。細かく言いますと,不動産登記の申請のときの添付書類,登記申請情報における私文書の偽造があるとして,そこが犯罪になるという話なのかもしれませんけれども,全体として,登記を正確にしなければいけないという義務が存在していると仮定して議論が始まるのか,それとも,相続のときだけの話ですよと,死亡のときだけの話ですよというふうな話でいくのかというのが,気になりましたので,教えていただければと思います。
○山野目部会長 最初に感想としておっしゃっていただいたことは,お話として承りました。その後でおっしゃった事項のうち,登記についての様々な考えられる強制や促しをする局面が相続に限られるかどうかという主題は,まさにこの部会で,その論点を取り上げるときに議論されるべきことであると存じます。
 その前提として,今,道垣内委員からは,今後どのような法制を作っていくかという問題とは別に,あるいはその検討の前提として,現行の不動産登記制度の下における公法上の制裁,その他関連する事項の規律について,どのようになっているかというお尋ねを頂きました。
 事務当局に答えの用意はありますか。
○村松幹事   元々,不動産登記,特に権利の登記に関しては,虚偽だからということでの直接の制裁というのは,基本的にはないのだと理解しています。先ほど道垣内委員がおっしゃいましたように,個々の司法書士の方が関与した際に虚偽の資料を提供するといったこと,あるいは,先ほどおっしゃいましたように,わざと虚偽の文書を作成して虚偽の登記を作出するといったことについての刑罰といったことをちょっと除きまして,より広い視点で,単に虚偽の登記,現実とずれている登記の作出ということになると,それを捉まえるということは,現行法下では難しいというのが,基本的な発想なのかなと思っております。
 その上で,今御指摘いただきましたように,相続の局面だけが問題なのかどうかというのは,先ほど部会長からも御指摘ありましたけれども,大きな課題だと思っております。
 そういう意味では,国土審議会でも,そういう御議論が恐らくあるところだと思いますが,相続が一つの中心的な課題ですけれども,ではそれ以外,一般的に,不動産登記簿から,例えば所有者が分からないということが,社会的に見てどうなのかということそのものが,一つの検討命題になってくるのではないのかという指摘もされているところでございます。正にそういった部分に踏み込んでいくのか,あるいは,ある意味,従来的な発想かもしれませんけれども,相続を除けば,基本的には本人たちに任せておけば,真実の登記がされるインセンティブが,一般的にはあると言えるので,そういったものに委ねておくのも一つではないか。こういった見方との調整といいますか,どうしていくのかというのは,議論いただきたい事項になってくると考えております。
○山野目部会長 村松幹事から,ただいま,権利に関する登記に限って,現行法制の状況,概要について御説明を差し上げました。ひきつづき,いかがでしょうか。
○増田委員 ありがとうございます。
 今日,第1回目ということなので,法律的な議論より少し前の話をあらかじめ申し上げておきたいと思うんですが,実は私は,一番最初,役所へ入って,国土交通省となる前ですが,建設省で土地行政,当時は土地基本法がまだできる以前でありましたので,国土利用計画法などの運用に携わっていまして,その後,岩手県で知事をやったので,直接的というわけではないんですが,土地を自治体の立場でいじった立場でもあるんですが,申し上げたいのは,土地についての,特に地価の動向に結局は行き着くんですけれども,この間,非常に大きな変化があったのではないか。
 言わずもがなでありますが,国土交通省の方で3,4年前に,国土のグランドデザイン,2050年を出したんですが,あれは国土を1キロメッシュで分析している,非常に精緻な分析なんですが,今現在,人が住んでいるのが大体国土の半分で,その半分のうちの6割以上の地点で,2050年には人口が半分以下になると。それから,全体の2割近くが無居住地域になるということでありまして,恐らくそのとおりの状況が,2050年には出現するであろうと思うんです。要は土地の利用可能性とかいうことが,著しくこれから,国土全体で見ると低くなって,そして,この諮問文の中でも,利用・管理という言葉が随分出てきていますが,もちろん利用というのは,積極的な利用と,そうでない利用と,いろいろあるんでしょうが,利用というよりは,むしろ管理,本当に国土の管理ができるかどうかという,そちらが非常に問われるようになってきて,国土審の議論に私も参加していましたが,中で粗放的管理という話もありましたんですが,とにかくエコロジーのような形で,土地は全部委ねようということまで,大きく変わってくるのではないかと思います。
 国民の意識調査も,これも国土交通省がやった無作為抽出による意識調査を見ても,土地を所有することについて,負担を感じている人が,確か42.3%という数字になっていて,もちろんそれは,固定資産税などの柔軟な見直しが行われていない等々や,その他のいろいろな負担が重過ぎるということもあるんだと思いますが,それだけ土地,不動産についての全体的な価値が低下し,あるいは一方で,負担感の増大だとかいうことが急激に高まってきている。
 やはりこういう大きな変化,少なくとも,そういったことが出来上がってきたのは,バブル崩壊の後ということですから,この20年ぐらいでの急激な変化だと思いますが,そういう背景についての理解があって初めて,この諮問文の中に出ています土地所有権の放棄の議論をなぜしなければいけないのかという必要性が,理解できるのではないかと思います。一方で,相続は間もなく大量相続時代で,今までよりも一段と,各地域で相続があるので,その場合の登記をどうするかという問題もあると思います。
 全体とすると,ほかの資産は別にしても,こと不動産で,土地の資産的な価値が大きく変わってしまって,今のままですと,国全体としての国土の管理自体が非常に危ぶまれるという中で,適切な方法をどうしていったらいいのかということ,それに対して,ここに書いているような事柄に分けて,答えを出していかなければいけないのではないかと,こういうふうに私は理解しております。
 本当に限られた時間の中で,必要なことを議論していくということで,それぞれが非常に重たい課題ですから,全然時間が足りないくらいのことでやっていかなければいけないと思うんですが,更にいいますと,恐らく所有権の放棄などの議論をしていくと,当然この中にも触れていますが,では,その後その土地は一体どこに帰属させるのか。ランドバンクだとか,そういう考え方もあると思いますし,それから最終的には,自治体を超えて,国が出てくるべきではないか。
 そうすると,その前に,自治体にもいろいろ問い合わせするにしても,今の自治体は,普通財産と,それから公共財産と,財産を二つだけに分けているんですが,一体そういう形で,二つだけで,きちんとこういった問題に対応できるかなども,やはり実は気になることは気になるんですが,余り論点を広げてもいけないと思いますので,私は諮問だけでも,大変幅広く諮問されているので,これにきちんとお答えをするということだと思いますが,繰り返しになりますが,法的な制度の,少しバックグラウンドについての理解をきちんとした上で,こうした問題をこれから議論していくべきと,こんなふうに思っております。
 初回ということで,あえてそんなことを申し上げました。
○今川委員 司法書士会の今川でございます。
 私は,基本的な姿勢としまして,登記実務をさせていただいておりますので,相続をめぐる様々な課題があるということは,肌感覚で理解しておりますので,この所有者不明土地問題,それから相続未登記問題の解決は,これは急がなければならないと思っています。
 また,一方といいますか,登記実務を担ってきておりますので,登記制度の根底にある価値観とか役割も,一定程度理解をしておるつもりですけれども,その上で,既存の概念にとらわれ過ぎないような議論をさせていただきたいなと思っています。
 それと,所有権放棄の問題ですが,今増田委員が言われたことと,ほぼ同じことになるんですけれども,我々も実務をやっていて,肌感覚として感じるところもあるんですが,相続未登記問題の根底には,やはり土地建物を手放したいという方が一定数おられるというふうに思います。処分できればいいんですけれども,処分できない不動産を管理していくのに物理的・経済的な負担が大きいということが,その要因だと思いますけれども,我々数年前に,空き家について,全国的な電話相談会を開いたんですけれども,その電話相談でも相当数,そのような御相談がありました。
 放棄については,モラルハザードの問題とか,それから,土地所有者が元々持っている責任あるいは義務も前提としながらも,そのような所有者が持っている心情というか状況は把握した上で,検討しなければならないと思います。
 それと,前の在り方研等で,放棄の要件とか受け皿,帰属機関について,かなり細かく検討されていますけれども,民法でどこまでその規定を規律できるのかということは,併せて検討はすべきだというふうに考えております。
 これ今,1までのことですね。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 在り方研とおっしゃったものは,「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会」のことであると受け止めました。
○水津幹事 民法・不動産登記法の改正にあたっての検討課題のなかには,もともと民法や不動産登記法に改められるべき点があって,所有者不明土地問題をきっかけとして,そのことが明らかになったというものもありそうです。
 そのような検討課題については,所有者不明土地問題への対処だけでなく,物権法等の現代化という観点から,検討をしたほうがよいと思います。
○山野目部会長 中村委員,どうぞ。
○中村委員 ありがとうございます。
 ちょっと議論が戻ってしまって,申し訳ございませんけれども,先ほど国土交通省,横山さんから御説明がありました土地基本法の関係で,質問させていただきたいと思います。
 国土審議会土地政策分科会での御議論の内容なんですけれども,土地基本法の公共の福祉の概念について,この審議会で,どの程度の議論があったかということを教えていただければというのが今回の質問です。
 と申しますのは,今回の107号の諮問というのは,所有者不明土地を解消するという公共の福祉という観点からの諮問だというふうに考えますけれども,これまでの憲法上の議論などで,せっかく公共の福祉をそれなりに合理的に制限するというようなことも議論されてきた中で,ただ公共の福祉というものの重要さから,不必要に広がるということがあってはいけないと思いますので,そのような観点から,どのような議論がなされたか。
 この審議会の名簿を拝見しますと,行政法や憲法の先生も入っていらっしゃるようですので,どのような御指摘があったか教えていただけますでしょうか。
○横山関係官 すみません,網羅的にお答えできるかわかりませんが,基本的には,その局面,局面で,様々な御発言があったんだとは思うんですけれども,公共の福祉の優先という言葉自体は,これ自体を,例えば,もっと強い表現にするとかということではなくて,今御質問でもあったように,公共の福祉の優先という言葉が土地基本法に平成元年当時規定される前提として,従来の条文ですと,土地は適切かつ計画的に利用されなければならないという考え方に立っているんですけれども,その理念と結び付いて,公共的,公共の福祉優先ということ,その当時,平成元年の当時考えられていた計画的で適切な利用を実現する目的に対して,公共の福祉優先で,所有権が制限され得るというような関係になっていたのではないかと思うんですけれども,今回御議論いただいたのは,その前提になっている,土地の利用の需要が非常に旺盛なことを前提に,利用を計画的かつ適切にやるということだけではなくて,需要がない中で,土地を適切に管理しなければいけないという社会問題が出てきている前提で,土地をいかに適切に管理するかという局面において,公共の福祉優先ということで,どこまで所有権が制限され得るのかというような議論をしなければいけないという問題設定をしていただいたということだと思っています。
 それに基づいて,今よりも地域の役割とか公共団体の役割が期待される部分が,今というか,かつてよりあって,土地の適切な管理に結び付けるに当たって,地域コミュニティや市町村,あるいは国が期待される役割を果たせるようにするような形で,所有者ではない方が関与できるようにしていかなければいけないという,ある意味,観念的な結論までは至っていただいているということだと思っています。
 どういう具体的な手続だったらできるかというのは,正にこの場でも御議論いただかなければいけないし,土地政策分科会でも,例えば,行政がどういう手続だったら,今と違う手続で,例えば,関与できるような仕組みを新たにできるのか,できないのかみたいな議論は,引き続きやらなければいけないと思っていますけれども,まだそこに関しては,具体的な御提言を頂いている段階ではないというようなことでございます。
○山野目部会長 中村委員にお尋ねいただいた土地基本法をめぐる観点は重要な事項であって,同時に,御指摘のように,国土審議会土地政策分科会の特別部会において,行政法や憲法の専門家も交えた議論がされたという経緯がございます。
 行政法,憲法などの公法系の研究者から問題提起を頂いた事項が多々ある中に,憲法の文言は,所有権を含む財産権が公共の福祉に適合するとなっているではないか,ということがございました。土地基本法は,公共の福祉が優先するとなっていて,ここのところの思想的整理が必要であると感ずるという問題提起を頂き,それを受け止めての議論がされました。
 それは,必ずしも観点は同じではないにせよ,本日の御議論で,潮見委員,中田委員,そして今,中村委員からお出しいただいた,それぞれの問題提起の背景の一部をなすものではないかというふうに感じます。
 その上で,国土審議会においては,現行の土地基本法が土地という財貨の特性に着目して,適合する,ではなくて優先するという発想を採り,それを法文にしていること自体が根拠のあることであると考えられるとともに,しかし,そのことのゆえに,公共の福祉が十分な内容の充填を伴わずに,みだりに肥大するようなことがあってはいけないという問題意識も,同部会において共有されました。
 その上で,公共の福祉の中身をどのように考えるかということが,引き続き現在,国土審議会において審議されているところでありますけれども,どうも現行の土地基本法が少し,何と申せば宜しいでしょうか,俳句のようなというか,十分な数の規定を置いて土地政策やその理念の中身を語っていない嫌いがあります。公共の福祉を優先といったときに,その中身をもう少し法文の中に,基本施策も含めて表していった方がよいということについても,大筋の了解が得られたのではないかと感じております。
 したがいまして,今,公共の福祉の優先という考え方を注意して使わなければいけないとともに,その内容を可能な限り法文に表すようなことも考えながら,豊かに充填していこうという方向での審議の準備が,横山関係官を中心に,国土交通省においても進められているところであるというふうに承知しております。
 引き続き御発言があれば承ります。
○中村委員 ありがとうございました。今御説明いただきましたことでよく分かりました。
 本件では今後,相続登記の義務化ですとか,また,遺産分割協議を推進するために分割協議の期間という制約を設けるなどという,国民の権利とか,今まで自由であったことに制約が掛かるという場面ですので,公共の福祉との整合性というのは,きちんと考えていかなければならないというふうに思いましたので,御質問させていただきました。
 ありがとうございます。
○山野目部会長 御注意はよく理解することができ,承りました。ありがとうございます。
 吉原委員,どうぞ。
○吉原委員 ありがとうございます。
 ここまでの議論を拝聴しているだけでも,何て難しい議論なんだろうと圧倒されているところです。
 どう難しいかといいますと,明治から戦後,高度成長期,バブル,この右肩上がりの時代において,土地制度,それから所有権の在り方,その根本的なところについて,深く十分に検討してこなかった論点というものがあり,今,喫緊の課題として,所有者不明土地問題に対応するために,法的な立て付けを見直していくという課題に直面したときに,今まで十二分に議論を正面からしてこなかった論点も併せて,原則論から考えなければいけない局面なのかなというふうに感じたところです。
 これからこの部会の議論において,非常に高度な法技術的な議論がある一方で,そもそも所有権は日本ではどう考えるんだ,土地は誰のものなのだというところと,もしかしたら,大きく振れるような幅の広い,難しい場面があるのかなというふうに思った次第です。
 今回御提示いただいている資料の1の論点を拝見いたしまして,短期,中期,長期の三つの点から感想を持ちました。今日は初回ということで,述べたいと思うのですけれども,まず短期的に見ますと,相続登記の申請の義務化,あるいは土地所有権の放棄という論点が,法務省のこうした部会において,正面から議題になるということは,数年前には思いもしないことでした。本当に驚いております。
 特に,ここ最近,震災あるいは地域における空き家対策など,国土や地域の管理といった公共の観点から,不動産登記制度に求められる公的な役割というものに注目が集まっているのだろうと思います。
 したがって,民法の手続法である不動産登記法というものを,公的な土地管理における一つの手段として,どのように考えるのかということが,一つの論点として急浮上しているのではないかと思っているところです。
 そして,短期的には,非常に驚くべき論点が並んでいるという感想を持っていると申し上げましたが,しかしながら,20年,30年という中期的なスパンで見ますと,実は,こうした論点をきちんと議論するということは,地域の関係者の間では,強く求められていたことであり,待ち望まれていたことであろうと思います。
 例えば,農地の集約化,林業の施業,それから固定資産税の課税徴収,あるいは道路用地の取得,地籍調査における境界確定,そうした地域の日常の様々な場面において,多数共有の問題とか所有者不明土地問題というのは,散発的に日常的に発生をしてきたわけです。それが今,ようやく政策課題として,こうした議論の俎上に載っているということで,これは中期的には,待ち望まれていた議論なんだろうと思います。
 そしてさらに,長期の観点で見てみますと,戦後74年,それから,明治維新から約150年というところで,大きく社会は変わってきたわけです。人口動態,それから,地方から都市部への人の移動,家族の在り方,産業構造の変化,それに伴う土地利用の変化,それから,Iターンや外国人材の受入れ拡大など,地域に暮らす人々も多様化をしています。さらには,情報技術も発展をしています。
 そうした中で,やはり,これまでの制度が前提としていたことが大きく変わっているのであれば,社会の実態に合わせて制度を見直すということは自然なことであり,そのように考えますと,今回のこの見直しの議論は,所有者不明土地問題がきっかけの一つになったかもしれませんが,より大きな長期的な時代の流れの中においても求められてきたことなんだろうと思います。
 うちの土地をどうするのか,田舎の土地をどう管理するのか,相続登記をきちんとするのかどうかというのは,ごくごく個人的な話でありますが,その個人の行動の一つ一つの積み重ねがみんなの問題になっていくわけです。そして,どこまでが個人の問題で,どこからがみんなの問題なのかという線引きというのは,非常に難しいところで,そこがこれからの議論においても,しばしば原則論として立ち返らなければいけないところなんだろうなと思います。
 この部会における議論は,恐らく非常に高度で専門的な,難しいものになるのだろうと思われますが,しかし,相続やお隣との境界の確定などは,一人一人の日常に関わる非常に身近な問題です。
 したがいまして,ここでの議論が今後,多くの人々の共感を得て,そして議論の結果が,実際に人々の間に根付く制度になるということが大事であろうと考えております。
○山野目部会長 ありがとうございます。短期,中期,長期に分けて整理をしていただきました。蓑毛幹事,どうぞ。
○蓑毛幹事 今回示していただいた『考えられる検討項目』ですが,委員,幹事の先生方からも意見がありましたが,必要十分なものを出していただいたと思います。ここに至るまでの間,在り方研究会等において熱心な議論がされ,これだけ多くの論点について,議論をするための枠組みを適切に設定していただいたことに,感謝しておりますし,敬意を表する次第です。
 ただ1点だけ,大局的な見地というよりも,少し細かな話になりますが,『登記所による不動産登記情報の更新を図る方策』という箇所が気になりました。この箇所は,民法や不動産登記法をどうするというよりも,登記所が,いかなる情報を取得して,それをいかなるシステムで運用・活用していくかということが問題になりますので,この部会では,登記所が,具体的に国民のいかなう情報を取得していいのか,取得すべきでないのか,あるいは適切な情報管理の在り方はいかなるものかを議論すべきだと思います。
 また,在り方研究会の最終報告書も拝見しましたが,登記所による不動産登記情報の更新の仕組みについて,どこにどういう問題があって,何が技術的に難しいのか,何ができて何ができないのかという具体的なところが,少し分かりづらい。部会で審議するに先立って,ここはもう少し詰める必要があろうかというふうに思っております。
 具体的に申し上げますと,在り方研究会の報告書の40ページに,戸籍と不動産登記の連携を図るについて,戸籍には本籍地と氏名の情報しかない。不動産登記には氏名と住所の情報しかない。そこで,不動産登記と戸籍のマッチングは難しいというようなことが書かれています。
 しかし,私どもの実務的な感覚からいくと,戸籍の附票というものがあって,この戸籍の附票はマッチングに使えるのではないかと思っています。
 念のため,簡単に申し上げますと,戸籍の附票というのは,住民基本台帳に基づいて,本籍地の各市区町村において,戸籍の原本とセットで作成・保管している書類で,その戸籍が作成されてから現在に至るまでの戸籍に載っている人の住所が記載されているものです。記載事項は4項目で,戸籍の表示,氏名,住所,住所を定めた年月日と,これが情報として存在します。
 そして,平成6年に戸籍法の一部が改正され,各市区町村では順次,戸籍の電算化が進められていて,現在では大多数の市区町村で,戸籍と戸籍の附票は電子記録化されていると聞いています。だとすると,戸籍の附票の情報を用いれば,戸籍に載っている人の現在の住民票上の住所と,一定の範囲で過去の住所の履歴が検索できるということですので,そしてまた,それが電子記録化されているということですので,不動産登記と戸籍のひも付けに活用できるのではないかと思います。
  た,戸籍の情報については,戸籍副本データ管理システムで電子記録として管理されていますが,現在,戸籍法の改正の作業が進んでいて,今年の2月1日の要綱案では,戸籍の副本情報から戸籍関係情報,これは戸籍と除籍に記録されている者同士の親子関係や婚姻関係等の存否を識別するための情報ですが,これを生成する新たなシステムを構築するとされています。ただし,この新たなシステムは,戸籍の副本情報は基にするけれども,戸籍の附票の情報は取り込む予定はないと聞いております。
 戸籍の附票は,法務省の管理でなく,総務省の管理だと聞いていますが,この部会の審議においては,電子記録化されている戸籍の附票の情報をうまく活用することや,現在進行中の戸籍法の改正における新システムとの連動も含めて,議論すべきだと思います。
 今回の諮問事項にもありますし,登記所によって,戸籍情報と連動した不動産登記情報の更新を図ることができれば,相続登記の義務化や遺産分割の促進等の土台となるインフラになると思いますので,是非そのようなことを検討するべきではないかと思う次第です。
○山野目部会長 ただいま,蓑毛幹事から,部会資料1,第2の1(1)のイに関連して,具体的な問題提起を頂戴いたしました。
 事務当局の発言を求めますけれども,それに先立ちまして,二つ御案内申し上げます。
 この部会で調査審議が予定されている事項の中には,しばらく前の中田委員の御発言で明瞭に御指摘を頂いたとおり,所有者不明土地問題への対処ということがかなり直接的に意識される事項と,もう一つ,それには限られず,一般的に不動産登記制度を中心とする制度改革をにらんだ観点から取り上げられることが望ましい事項とがございます。
 ただいま蓑毛幹事から御指摘いただいた事項は,必ずしも間近の所有者不明土地問題のみに向き合っているという性格が,彩りが強いというわけではなくて,もう少し一般性を持つ論点でありまして,そういう意味での重要性があるということは御指摘のとおりであって,部会資料1でもその観点から取り上げました。
 もう1点添えますと,この事項をこれから後の部会の所要の回で具体的に審議する際に,その時点での戸籍法の改正を始めとする戸籍制度の改革に係る内容も資料として御提供申し上げ,委員,幹事の皆様方に共有していただくことがかなう状況で,その際の具体的な審議をお願いしたいと考えております。
 そのようなことではありますが,現時点で事務当局においてお話しできる範囲でお話ししていただくということでしょうか。
○村松幹事 民事第一課が戸籍担当でございまして,私ども民事第二課の方で不動産登記の担当をしております。
 今,蓑毛幹事から,非常に具体的に御指摘いただいておりますけれども,不動産登記情報の更新という論点になります。少し論点のご紹介も兼ねて前提から御説明をさせていただきたいと思います。
 まず,所有者不明土地問題は,大きく捉えると,不動産登記簿を見ても今の所有者が分からない,あるいは,所有者がどちらにいらっしゃるのかが分からないと,こういった問題に広く位置付けられますので,そういう目線で見ますと,相続に必ずしも限らない,もうちょっと広い問題が,ここには含まれ得るというところがございます。例えば住所変更も含めまして,そういった場合に,なるべく登記の方に反映させる仕組みというのを考える必要があるのではないか。
 もちろん,一つの解消手法が,相続登記の義務化を含めまして,登記の義務化という対応策であるのは間違いないわけですけれども,他方で電子政府を政府全体で推進しておりますので,そういった中で,バックヤード連携といったような言い方をしますけれども,電子的に情報を共有することによって,ある程度自動的に登記の内容を変えていければ,そういう意味では,国民の負担を余り高めないで,所有者にうまくたどり着ける,不動産登記の高度化という言い方もされるかもしれませんけれども,そういうところにもつながるのではないのかというので,この更新の議論がされているというところです。
 その上で,今御指摘いただいたイの部分ですけれども,登記所の方で不動産登記情報の更新を図るための方策というものについて検討しておりまして,これは,例えば,自然人でいいますと戸籍,あるいは,先ほど出ましたけれども住民票といったものが,考えられる連携先ということになろうかと思います。
 法人になりますと,例えば商業登記とか,そういったもので,本店が移転したらその情報を頂くとか,会社の名前が変わればそれを頂く,こういったようなことが,一般的には,もしかしたらあり得るのではないのかというところで,ここの連携がうまく図られていくといいねというのが,一つのものの考え方になります。
 ただ,研究会の方でも議論しておりましたけれども,そのときに,やはり一番問題になりますのが,新しく申請が出てくる不動産登記については,そのときに,新しい制度の下で対応をお願いすればいいということになるんですけれども,そうしますと,全ての土地に関して不動産登記情報を新しくしていくという仕組みに乗っけるためには,かなりの時間が掛かってしまいます。そうすると,そうではない土地,すぐには権利が動かないから登記の申請も来ないという状況のものに,どういうふうにアプローチするのがいいのでしょうかというのが検討課題になっております。そういった動かない土地についても,ひも付けという言い方が先ほどもちょっと出ておりましたけれども,ひも付けをする。それは,過去の一時点の住所と氏名,あるいは住所とその法人の名前とか,そういったものが分かる,それだけが不動産登記の情報ですけれども,それと,また全然別に整備されていますところの戸籍ですとか住民票,あるいは法人登記,そういったものとの間のひも付け,連携をしていく。連携すれば,その後は,情報をもらえば自動的に改変できる,情報が更新できるということになるわけですけれども,そのひも付けを一体どういうふうにやったらいいのかというのが,なかなか実は大きな問題だというのが議論としてはございます。
 その一つの解消策として,附票情報というのは,そういう意味では,履歴的に残っておりますので,そういった情報を見ることによってひも付けることが,確かにこれは可能かもしれないというふうには,実はこちらでも考えておるんですが,問題は,それを結局人の目で,電子的に持っているけれども,全て目でやらなくてはいけないのか,ある程度機械的にできるのかによって,対応のコスト等々ももちろん変わってまいりますので,そういったところも含めて,ちょっと検討が必要なのかなと,当方としても考えているところです。
 そういった流れに関していいますと,戸籍について今御指摘ございましたけれども,戸籍法についても今般,改正法案を提出しておりますので,新しい改正法案の下でのシステムの中で,どういう取組ができるのかということは,個別具体によく検討していかなくてはならないわけですけれども,今正に方向性が固まったというところですので,そういったところを含めて,どういうふうに連携をするのがいいのか。
 問題は,果たしてできるのかどうかというところに係ってくる部分がございますので,ひも付けの作業が,コスト的に見合うような形でできるのかというところが,一つの大きな課題なのかなと思っておりまして,そういったところに関しましては,もちろん技術的なところの細部までということになるかどうかはございますけれども,審議会の中で,こういうやり方ができそうです,あるいはできなさそうですといった議論,あるいはその先に,ではそれを職権で,登記所の方で本当にやってしまうのか,それともやはり,職権はちょっとどうなのかといった議論があり得るのか。そういったような議論が研究会の方でもされてもおりますけれども,そういったところについても審議をお願いしてまいりたいとは思っております。
○山野目部会長 蓑毛幹事におかれましては,本日のところはこのくらいでよろしゅうございましょうか。また当該の回に問題提起を頂ければと思います。
○道垣内委員 本日は,一つ一つの論点について意見を言っていると切りがないので,言うべきではないのかもしれませんが,先ほど村松さんの方から,技術的あるいはコスト的な面というのがポイントであるという御説明がありましたので,それは本当なのかという点から,一言申し上げておきたいと思います。
 考えてみますと,今から40年ぐらい前というのは,電話帳に住所が書いてあったんですよね。ということは,例えば,私が採点をして,不可を付けましたとき,怒った学生が,道垣内の家をちょっと襲いに行こうと思ったら,電話帳調べますと私の住所が分かったのですね。しかし,今では,電話帳に電話番号を載せている人も少ないし,住所も多分載っていないと思うのですけれども,例えば,不動産登記における権利者の住所が,オートマチックに現住所に変わっていくということになったときに,不動産の登記は,誰だって見ることができるのだということになりますと,それはある意味,現住所の開示手続になってしまいます。それを技術的やコスト的な問題だけの問題のように説明されるのは,非常に私は危惧致します
  それよりも,もっと理念的に,そんなのを公開していいのですかということをきちんと考えるという視点を,いろいろなところで忘れないようにしていくべきではないかというふうに思いますので,細かな具体的な論点ですが,あえて一言申し上げておきたいと思います。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 登記情報の公開の範囲及び方法については,そのことを議題とする回において,ただいま道垣内委員から御注意いただいた点も含めて,審議を深めなければならないと感じます。
  事務当局においては引き続き,道垣内委員から,本当かという指摘がありましたから,御検討を深めていただければ有り難いと感じます。平川委員,どうぞ。
○平川委員 ありがとうございます。
 村松幹事の方から,実務的な話について,かなり踏み込んで御意見いただき,考え方を示されました。やはり登記制度が実務として,しっかりと動いていくという観点が重要なのではないかと思っています。一方で,では今の登記法が,どれぐらい正しいのか。素人の感覚からすると,疑問がありますし,その辺,国民にとって知りたいところではないかと思っています。
 会社の登記簿があるかと思いますが,私は社会保障審議会に出ているものですから,社会保障審議会の年金の関係で出ていますと,社会保険の適用拡大とともに,年金事務所が適用の促進をする場合,当初,法務局の会社の登記簿を見て進められていましたが,登記されている会社名は幽霊企業が多く,あまり役に立たなかったというのが実態であります。
 役に立ったのは,国税庁の税務情報,事業税情報です。それにもとづいて会社が動いているかどうかというのが分かり,それにもとづいて,事業者が年金を払っていない未適用事業所に対し,適用を促進したというのがあります。登記簿という制度そのものが本当に動いているのかどうなのかを,ひとつ国民の皆さんの中で考えてもらわないと駄目ではないかと思います。
 そのうえで,では,その情報をどうやって正確にしていくか,ということでありますけれども,いま言われたように,住民票情報などと,どう連携をとっていくのかというのが重要かと思っています。もちろん,データの内容を公表するかしないかというのは,慎重にしないと駄目ですが,それが重要だと思います。
 ある意味,いま,厚生労働省の方では,健康保険証もマイナンバーカードを使いましょう,マイナンバーカードを健康保険証に代わるものにするんだという動きになっているかと思います。それだけ情報基盤が整備されていく中で,せっかくマイナンバーという情報基盤が大きなものとしてありますので,先ほど言った戸籍との連携というのもありますが,住民票情報,住民票データとの連携も重要かと思います。ただ,住民票データにもとづいてマイナンバーの通知書を送ったら,相当数が戻ってきたという実績もあります。
 とはいうものの多分,住民票データがそれなりに正しい面があるのではないかなと思います。連携の仕方,中身はいろいろありますけれども,どうしていくのかというのを少し考えていかないと,どうも登記制度が本当に正確になっていくかどうかということも含めて,実務として考えていく必要があるのではないかなと思います。
 コストの面から言いますと,私,北海道庁の労働組合出身なんですけれども,例えば公共事業をやるときに,用地買収にコストが掛かります。それは,住民を説得するというだけではなくて,調査に時間が掛かります。公共事業をやるにしても,やはり用地買収に掛かるコストを,どう効率化していくかということもあります。
 そういうことからすると,データの連携に関する費用というのは,しっかりと確保し,ひいては,それが行政全体の効率化につながっていくというふうに思いますので,ある意味,今後の検討に関しては,予算が確保できないからということだけではなくて,しっかりと広い観点で議論していくということが重要かと思っています。
 以上,感想であります。
○山野目部会長 平川委員が前の方でおっしゃった,実態のない法人の問題のことは,この部会におきましても,抵当権の登記名義人になっていて困っているという局面が議題に取り上げられる回がございます。また,その折に問題提起を頂きたいと望みます。
 また,個人番号の活用方策についても,引き続き事務当局の方で,視野に置いて検討を進めてくれるものと思います。どうもありがとうございました。
 今,部会資料第2の1のところについて,御意見を承っていますけれども,ちょっとお疲れでしょうか。第1の1のところで,まだ御議論があるところを休憩後に続けてもよろしいというふうに考えますから,ここで少し休憩を入れましょうか。
 休憩前の御議論の中で,最初の松尾幹事の御発言の中において,現在国会に提出している法律という御言及がありました。これは,そのとおり,現在,法務省が責任を担って,所有者不明土地問題への対処の一環をなしている法律案を現在の会期に提出しております。表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案でございます(2019年2月22日閣議決定,同日,第198回国会において衆議院に提出)その関連の事項を議題とする回に,もう少し委員,幹事の皆様方に知っていただくような資料の用意も差し上げた方がよいかもしれません。補足させていただきます。

          (休     憩)

○山野目部会長 審議を再開いたします。
 部会資料1の第2の1の部分について,御議論を頂いていたところでございました。もう一度,1の範囲で御意見がないかを伺った上で,それを経て,2の方についての委員,幹事の御意見を伺うということにいたします。
 それでは,1の範囲で,まだ意見として述べることがあったということを仰せください。
○藤野委員 ちょっと先ほど,制度のバックグラウンドのお話も出ておりましたので,若干ミクロな話にはなってしまいますが,私が今,鉄道会社におります関係で,所有者不明土地の問題について,これまで20年ほど鉄道会社で働いてきた経験の中で感じていることについて,お話をさせていただければと思っております。
 皆さまの中には,当社,JR東日本を首都圏で御利用になられているお客様が多いと思うのですが,当社の場合,会社全体では7,500キロくらい線路を持っています。そのうち,東京圏って,実は2.6%くらいしかなくて,ほとんどのエリアは,東北であったり上信越であったりというところの,いわゆるローカルなエリアになっております。
 先ほど増田委員からもお話ありましたけれども,やはり所有者不明土地の問題は,地方に行けば行くほど,いろいろと問題に直面することが多いというのが実感としてございます。日常的な話で申し上げますと,例えば冬の時期などには,沿線の土地の樹木に雪が積もって,線路の方に倒れてくるおそれがあるということで,伐採を求めようと思っても,その土地の所有者が分からないので,なかなか手が出せないというようなこともございます。
 あと,直近の話で申し上げますと,東日本大震災というのがございまして,あの後に,津波で被災した線区を復旧させるときに,どうしても今まで走っていたところをそのまま走らせるわけにはいかないということで,線路を内陸側に移設するというようなことをやったわけですが,やはりそのときの用地取得,かなり苦労したということがございます。
 本当に分かりやすい例で申し上げますと,1筆の土地を取得するために,調べてみたら,相続人が70人くらいいらっしゃって,全員の同意をとる必要が生じ,しかも最後の1人の方とのやり取りがなかなか進まないので,800キロくらい離れたところまで,判子をもらうために何度も足を運んだ,というようなケースもございます。
 したがいまして,やはり所有者探索に関する負担とか,そういったところを踏まえて,所有者不明土地に関して何らかの対策というのは必要だというところには異論はないところでございます。
 ただ,一方で,弊社の線路に隣接するいろいろな土地,特に大都市圏の土地で同じようなことが起きているかというと,そこは全く話が異なるという点もございます。
 今回,正に,民法・不動産登記法の改正の議論ということで,ひとたび改正されれば,都会であろうが地方であろうが,同じように適用されるというところがある中で,立法事実のところで一つのところだけ見て,例えば地方の所有者不明土地の対策というところだけ見てしまうと,それが都会の極めて価値の高い土地の対策としてきちんと当てはまるかという問題は出てくるかと思いますし,その逆もまたしかりなのかなと思っておりますので,やはり立法事実として,正に全国各地で今何が起きているかというところをしっかり拾い集めた上で議論していくのが大事なのではないかなというふうに感じておるところです。
 よろしくお願いします。
○岡田委員 岡田です。
 私は,土地家屋調査士という資格者でございますけれども,今,全国で約1万6,700人の会員が活動しております。主な業務としては,不動産の物理的な状況を登記情報に反映するという部分で,不動産登記法あるいは民法の部分に関わらせていただいているところでございますけれども,特に感じているところは,やはりお隣の方,隣接地の方が分からない,所在が分からないも含めてですけれども,そういう場面には,たくさんの実態と実例を抱えて持っている資格者団体でございますので,そこら辺りの実務家の視点として,これからこの審議会に参加させていただけたらなということで,本日はお邪魔をさせていただきました。
 具体的には,それぞれの考えられる検討項目に関して,法令遵守の部分,それからインセンティブの部分,そして,あとは良心に訴える部分とか,いろいろあるとは思いますけれども,先ほど吉原委員からもございましたけれども,個人の問題から,やはりこれは社会的な問題にというのは,全く実務をしている者からしても,感じている次第でございますので,是非この辺りは,現場の声をお伝えできたらなということでございます。
 よろしくお願いします。
○山野目部会長 部会資料1,第2の1の部分についての御意見を大体承ったというふうに受け止めてよろしゅうございましょうか。
 それでは,同じく第2の2の方についての委員,幹事の御意見を承ります。
 2のところは,御覧いただいているとおり,所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みという問題提起でございます。具体的には,共有制度,不在者の財産の管理,相続財産の管理,それから相隣関係規定の見直し,これらに係る問題提起を差し上げているところでございます。
○岡田委員 すみません,続いて申し訳ないです。
 例えば,この共有制度の見直しという項目がございますけれども,正に今現在,売買をしようであるとか,具体的にですね。そういう場面においては,共有者のお一人でも見付からなかったら,これは経済活動としても止まるわけでございます。
 そこら辺りのことをも踏まえた上での議論というふうに理解しておりますが,それでよろしいわけですよね。
○大谷幹事 所有者不明土地問題の解決に向けて,大きく二つの観点をお示ししておりますけれども,一つは,所有者が登記を見ても分からないという,そのこと自体の問題,それから,そこから発生すると申しましょうか,それを契機として明らかになってきている問題の一つとして,共有者の一部が所在不明であるときに共有物の処分ができないということが実際にあるという御指摘を踏まえて,共有制度の見直しを項目として挙げております。
 経済的な活動としても,共有物を,あるいは共有の土地を利用するのが,特に共有者の一部が所在不明にあるときに困難になるということは,実際にありますので,そのような観点も含めて,御審議を頂きたいと思っております。
○山野目部会長 岡田委員,よろしゅうございますか。
○岡田委員 はい,ありがとうございます。
○今川委員 私も,今日は第1回ということで,一般的,基本的な考え方ですけれども,共有についてですけれども,遺産共有も含めて,共有状態というのは,管理・処分が,今岡田委員も言われましたけれども,単独所有と比べると動きが重くなる。その中に所在不明の方がいると止まってしまうという状態がありますし,もう一方,放置しておくと,権利が細分化されてしまって,ますます重くなるということがありますので,不在の共有者がいた場合にどうするかということと,なるべく早く共有状態は解消された方がいいのではないのかという観点も必要かなと思います。
 それで,先ほども言いました,在り方研で検討されていました管理権者制度というのが,これ非常に重要になるなと,今のところ感じております。加えて,遺産共有というのは,単に共有ということに加えて,不確定な状態が続いているということですので,これが放置されていくと,権利が細分化して,ますます不確定な状態が長く続くということもありますので,遺産分割協議に期間制限を加えるというのは,ある程度,不確定な状態から一定の確定した状態に持って行くという意味で,意味はあると思います。
 ただ,内部でも,なるべく慎重にやるべきではないかという意見もありますけれども,今のところ,前向きに検討すべきだなというふうには考えております。
○山野目部会長 引き続き,2の範囲についての御意見を承ります。いかがでしょうか。
○蓑毛幹事 共有についてですが,実務的な問題として,単なる共有と,非常に多数の共有者がいる状況になっているものがあります。法律論としては,どちらも同じ共有なんですけれども,実務的な感覚からしますと,3人の共有者がいる状態と300人の共有者がいる状態では,全く違うということがあります。
 今回の部会の議論の中で,そういう,メガ共有といいますか,非常に多数の共有者がいる状態を,普通の共有とは違うと考えるのか,やはり理屈としては同じと考えるのか。この辺りのところに少し関心があるところです。
 これは後の議論の中で,考え方の視点として申し上げたいと思っておりますが,今日のところは,そういう問題意識を持っているということを申し上げたいと思います。
○山野目部会長 共有制度を議論する際に,ただいまの問題意識を温めておいていただいて,さらに,蓑毛幹事始め皆様方から御意見をおっしゃっていただくことが望まれるところでありますけれども,メガ共有という言葉はよいですね。何か多分,今宵は皆さん,その言葉を思い出しながら眠りにつかれるものではないかと想像します。引き続き,この部会の調査審議において,重大な関心を払ってまいりたいと受け止めます。
○吉原委員 これは質問なんですけれども,土地所有権の放棄の論点において,相続放棄については含めないという理解でよろしいでしょうか。
 法的には,相続放棄というのは全く別物であるということは理解しているつもりなんですけれども,土地の側から見れば,相続人,つまり権利を主張したり,管理責任を負う人がいなくなる可能性があるということでは同じでありまして,相続放棄は全財産であるので,土地だけとは限らないし,土地が入っていない場合もあるかもしれませんが,今後,少子高齢化で甥っ子,姪っ子もいない,本当に相続人が不存在になるケースも出てくるかもしれない。レアケースかもしれませんが,そうなった場合の土地の権利についてもここで扱うのか,あるいはここからは除外するのか,それはなぜなのかというところを教えていただけたらなと。
 これは間接情報なんですけれども,家庭裁判所で相続放棄の手続をして,その後,第三者が相続財産管理人の選任を申し立てることもなく,そのままになっているケースというのもあって,書類の保存期間が経過してそれが破棄されてしまうと,相続放棄の事実も正確には分かりづらくなるということも仄聞したことがあります。そこで,ここでの議論において,相続放棄によって所有者がいなくなった場合についてはどう考えるのかということを教えていただければと思いました。
○大谷幹事 所有権の放棄と,それから相続放棄との関係ということですが,土地所有権の放棄の論点におきましては,やはり相続放棄の場面とは異なりまして,今現に土地所有権を有している人が土地を手放すことができるかという論点だと考えておりますけれども,一方で,相続放棄について,今少しお話がございましたけれども,相続人全員が相続放棄をした場合には,相続人があることが明らかでない相続財産という形で,相続財産管理制度の仕組みの方に回ってまいります。
 その意味で,財産管理制度の見直しということも,一つの論点として挙げておりまして,相続人が相続放棄をしたときに,どのように土地等の財産が管理されるべきであるかについては,論点として,今後お出しするつもりでございますし,その際に御審議をお願いしたいと思っております。
○潮見委員 一言で済ませます。
 相続放棄は一緒に扱うのは,それは大いに結構だと思います。ただ,相続放棄で,土地の部分に特化した形の議論ということをやった場合に,ほかの財産とかに関する相続放棄というものがどうなるのかをきちんと理解してやらないと,危険なところは一杯あると思います。
 私も,調停委員とかもやったことがあり,相続放棄も経験したこともございます。ですから,その意味では,相続法制との体系的な整合性とか考え方を踏まえて,ここで審議していただきたいなと思います。
○山野目部会長 吉原委員,潮見委員から問題提起を頂いたことは,今日は包括的な論議であるとはいえ,ここで進める調査審議の全体像に関わる重要な観点の御指摘を頂いたというふうに受け止めます。
 放棄という概念がそこここに出てまいりますけれども,もちろん所有権,土地所有権の放棄を中心に,次回以降の部会で,日を定めて御議論をお願いしなければいけませんが,土地の所有権の放棄のみが議論されればよいということではなくて,それを議論していったときには,建物の所有権の放棄,動産の所有権の放棄を併せてどう考えるか。それから,共有持分の放棄をどう考えるか。さらには,局面によっては,似たような作用を持つのではないかという観点から,正に吉原委員に見抜いていただいた相続放棄との関係をどう考えるか,全て問題になります。
 その上で,相続放棄に関しては,恐らく,ここでの調査審議の進め方としては,どちらかというと,相続放棄そのものというよりは,相続財産の管理と関連させて検討するということになるであろうという見通しがあり,大谷幹事からも少し,その方向でのお話を今してもらいましたけれども,しかし,いずれにしても議論しなければいけないことでありますので,御指摘を踏まえて議論を進めてまいりたいと考えます。
 それから,相続放棄に関して,潮見委員から御指摘をいただきました。幾つか今回,調査審議をお願いすることを予定している事項の中には,何といったらよいでしょうか,言い方に困りますが,相続ないし相続法が関わってこさせるをえないところがありまして,そういうところに関しては,相続放棄もそうですし,それから,一つ前に今川委員が問題提起をなさった遺産分割の期限の制限もそうですけれども,どうしても諮問107号を背景に議論を進めていきますと,土地のことだけに頭がいってしまうものの,相続法制のことを考えるときには,相続財産を構成する財産は土地のみではありませんから,それが相続法制全体にどういう影響を与えるか。場合によっては弊害があるかもしれないというような観点に十分留意をして,審議を進めなければならないということも感じております。その観点から大事な指摘を頂きました。
 引き続き,2の部分についての御意見を伺いますが,ただいまの吉原委員の御指摘のように,1で議論していただいたことと関連する事項もございます。うるさく,2の範囲でというふうにはお願いいたしませんから,どうぞ委員,幹事,関係官の皆様,御随意に御発言を頂ければと思います。いかがでしょうか。
 大体,本日の段階で,委員,幹事,関係官の皆様にお気付きいただいたことは受け止めたというふうに考えてよろしゅうございますでしょうか。
 それでは,本日は部会資料1に基づく大変に熱心な御議論を頂きました。次回,第2回の会議から後は,あらかじめ部会資料で個別に御案内申し上げる各論的な検討をお願いしていくことになります。
 その最初の回になる第2回の日程等について,事務当局から案内を差し上げます。
○大谷幹事 御案内いたします。
 次回4月23日の火曜日,午後1時から午後6時までという形で進めさせていただきます。場所は,東京高検の第2会議室になります。また御案内申し上げますけれども,テーマについては,現時点におきましては,共有,それから所有権の放棄を取り上げたいと思っております。先に実体法関係を取り上げたいと考えております。
 次回は,各論点について,今部会長からお話がありましたとおり,先に資料をお送りして,各論点について,掘り下げて御議論いただきたいと考えております。
○山野目部会長 次回の予定を御案内を申し上げました。よろしくお願い申し上げます。
 本日は,この会議は,午後4時30分までを予定しておりましたけれども,委員の皆様方から熱心な御討議を頂き,審議に御協力を頂きましたことにより,無理に4時半まで進める必要はありませんので,これで本日は了することができます。
 恐らく,次回以降は,午後1時から午後6時までを予定しておりまして,私も進行に努力を傾けることにいたしますが,毎回早目に終わるという予測は成り立ちにくいものであると認識を頂ければ有り難く,次回以降も委員,幹事,関係官の皆様方の御協力をお願いする次第でございます。
 これをもちまして,法制審議会民法・不動産登記法部会の第1回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立