民法改正による消費貸借に関する改正点としては、主に5点あげられます。
まず、諾成的消費貸借に関する条文が整備されました。これまで、消費貸借は、目的物の交付を必要とする「要物契約」であるとされていました。したがって、当事者の合意のみでは消費貸借契約は成立しないと考えるのが原則でした。しかし、判例では、目的物の交付がなくても当事者間の合意に基づいて貸主に目的物を貸すことを義務付ける契約をすることができるとされていました(最判昭和48年3月16日)。
そこで、改正法は、書面による諾成的消費貸借に関する規定を新設しました。
次に、消費貸借による物の返還債務を消費貸借の目的とする準消費貸借について規定が整備されました。旧法では、消費貸借によらない物の返還債務を消費貸借の目的とする契約として「準消費貸借」が規定されていましたが、判例では、消費貸借による物の返還債務を消費貸借の目的とする準消費貸借も認めていましたので(大判大正2年1月24日)、改正民法はこのような準消費貸借契約について規定を設けました。
3つ目として、貸主は、特約がなければ借主に対して利息を請求することができないこと、利息の特約があるときであっても借主に請求することができるのは借主が金銭等を受け取った日以後の利息であることを明文化しました。
4つ目は、無利息の消費貸借は、その目的である物又は権利を、消費貸借の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定すること。一方、貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができることが規定されました。
そして、5つ目として、借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができるものとし、かつ、当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、貸主は、借主に対し、その賠償を請求することができることが規定されました。