第1部 民法等の見直し
第1 相隣関係
他の土地等の瑕疵に対する工事に関する新たな規律は、設けないこととする。
(補足説明)
現行法の解釈論においても、土地の所有者は、その所有権が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合には、自力救済は当然には認められないものの、物権的請求権を行使し、相手方に侵害を除去させることができ、あるいは自ら侵害を除去することができるのであり、そのこと自体には、この部会においても異論はなかったところである。
要綱案(案)において、他の土地等の瑕疵に対する工事に関する規律の創設を見送ることとした理由は、部会資料59でも記載したとおり、これまで解釈論上認められてきた物権的請求権の範囲が不当に狭まることがないようにするなど物権的請求権の解釈や運用に悪影響を与えないようにしながら、その要件を適切に設定することが困難であったことなどにあるのであり、上記の現行法の物権的請求権の解釈論を否定する趣旨ではない。
この部会で検討をしてきたような問題が生じているケースについては、引き続き、事案に応じた内容の物権的請求権を行使して対応することが可能であることを前提に、管理不全土地管理制度等が新設されることによって更に対応の選択肢が増えることとなるものと解される。