改正法では、主たる債務者の履行状況について保証人から請求があったときは、債権者はその履行状況について情報を提供しなければならないとされました(458条の2)。一方、金融機関のような債権者は、主たる債務者に対して守秘義務を負っている場合も考えられますが、そのような場合はどのように考えたらいいのでしょうか。

保証人は、通常、主債務者による債務不履行があるかどうか、主債務をどれくらい弁済し、残額がどれほどかを当然に知り得る立場にはありません。そのため、主債務者が主債務について債務不履行に陥っても保証人が長期間にわたってそのことを知らず、保証人が請求を受ける時点では遅延損害金が積み重なって多額の履行を求められるという酷な結果になる場合があることが指摘されていました。そのため、主債務の履行状況について保証人が知る手段として、458条の2が設けられました(部会資料76A 11頁)。

例えば債権者が金融機関の場合や契約上の守秘義務がある場合には、主債務者の履行状況を、保証人からの照会に対して回答することが許されるかどうか判断に迷うところですが、本条が設けられた背景を考慮すると、保証人の照会は法的な権利であり、債権者は回答すべきであると考えます。

なお、保証契約書において、保証人の上記の請求を制限する条項を設けることも考えられますが、本条が設けられた趣旨に鑑みると当該条項を設けたとしても無効とされる可能性が高いと考えられます。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立