改正民法416条は、1項で「債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする」、2項で「特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる」と規定しています。1項は「通常損害」、2項は「特別損害」と言われています。
1項の通常損害については改正はされませんでした。2項の特別損害は、改正前は「予見し、又は予見することができたときは」となっていましたが、「予見すべきであったとき」に改正されています。
この点について、部会資料79-3 12頁では次のような説明がされています。
「現行の民法第416条には、同条第2項の債務者の「予見」に関する要件が、債務者が現実に予見していたかどうかという事実の有無を問題とするものではなく、債務者が予見すべきであったかどうかという規範的な評価を問題とするものであることが条文上明確でないとの問題があり、少なくともその点については、何らかの改正をする必要があるとの指摘もあった。
そこで、民法第416条第1項の規定は維持した上で、同条第2項の「予見し、又は予見することができたとき」との要件を「予見すべきであったとき」との要件に改めることとした。これにより、例えば、契約の締結後に債権者が債務者に対してある特別の事情が存在することを告げさえすればその特別の事情によって生じた損害が全て賠償の範囲に含まれるというのではなく、債務者が予見すべきであったと規範的に評価される特別の事情によって通常生ずべき損害のみが賠償の範囲に含まれるとの解釈をすることが可能となる。」