改正民法では、債務不履行による損害賠償について立証責任の分配が明確にされたと聞きましたが、どのようになったのですか。また、それが契約実務にどのように影響しますか。

 改正民法415条1項は、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」と規定しています。この条文の規定ぶりから、債務者が損害賠償を免れるためには、債務者が帰責事由がないことを立証しなければならないと解釈されます。そのような意味で、「立証責任の分配が明確にされた」と言われています。

 そこで、契約書を作る際には、その点について修正をしておくことが考えられます。債権者の側から考えると、債務者自身に帰責事由がなくても、たとえば、債務者の下請業者の事情により実際に損害が発生した場合のことを想定して損害賠償義務を明示しておくことが考えられます。この例示の場合、債務者自身に帰責事由がないとは言い切れない場合もあると思いますが、そのような点で争いになることを考えれば、なおさら、そのような修正をしておくことが必要となります。

 逆に、債務者の側から考えると、債務者の帰責事由がないことの立証責任を軽減する方向で契約条項を作成することが考えられます。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立