必要書類の収集

 一覧図の保管等の申出書には、申出人またはその代理人が記名押印するとともに、法定相続情報一覧図をはじめ、以下の各書面を添付しなければなりません(不動産登記法施行規則247条3項)。

① 被相続人(代襲相続がある場合には、被代襲者を含む)の出生時から死亡時までの戸除籍謄本(不動産登記法施行規則247条3項2号)

 法定相続情報一覧図は、戸除籍謄本の記載から被相続人の死亡時点の相続関係を表すものですので、被相続人の生殖可能年齢からの戸除籍謄本だけでは足りず、被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本を添付する必要があります。

 ② 相続開始の時における同順位の相続人の戸籍の謄本、抄本または記載事項証明書(不動産登記法施行規則247条3項4号)

 相続人の戸籍の謄本、抄本又は記載事項証明書に有効期限はありませんが、被相続人の死亡日よりも後に発行されたものでなければなりません。これは、法定相続情報一覧図が被相続人の死亡時点の相続人を表すものであるからです。

 なお、数次相続により複数の被相続人に係る一覧図の保管等の申出が同時にされた場合において、添付書面たる戸除籍謄本の一部がそれぞれの申出において兼ねられるときは、 当該戸除籍謄本については複数の申出を通じて1通を添付すれば足ります。

 ところで、除籍または改製原戸籍の一部が滅失等していることによりその謄本が添付できない場合は、当該謄本に代えて「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書を添付することで差し支えありません。また、市町村の取扱いにより当該証明書が発行されない場合は、市町村の担当者が「交付不能」の文言を記載した除籍等の謄本の交付請求書をもって代替することで差し支えありません。

 このような取扱いは、除籍等が滅失等している場合の相続登記に関する通達(平成28・3・11民二第219号)が発出され、他に相続人はいない旨の相続人全員の証明書の提供は不要とされたことから、本制度においてもこれと同様の取扱いをすることとされたものです。これに対し、たとえば被相続人が日本国籍を有しないなど戸除籍謄本の全部または一部を添付することができない場合は、登記官は、法定相続情報一覧図の保管および一覧図の写しの交付をすることはできませんので、ご注意ください。

③ 被相続人の最後の住所を証する書面(不動産登記法施行規則247条3項3号)

 被相続人の最後の住所を証する書面とは、被相続人に係る住民票の除票や戸籍の附票が当たります。

 これらの書面が市町村において廃棄されているため発行されないときは、申出書への添付を要しません。しかしこの場合は、 申出書および法定相続情報一覧図には、被相続人の最後の住所の記載に代えて被相続人の最後の本籍を記載する必要があります。このような取扱いは、住民票の除票や戸籍の附票の除票の保存期間が「消除された日から5年間」とされており、保存期間経過後は自治体の判断によっては廃棄されてしまうこともあるからです。

 なお、被相続人を登記名義人とする不動産登記記録上の住所と被相続人の最後の住所とが異なっている場合でも、被相続人と登記名義人との同一性を証する書面の添付は不要です。

④ 申出人が相続人の地位を相続により承継した者であるときは、これを証する書面(不動産登記法施行規則247条3項5号)

 この書面には、当該申出人の戸籍の謄抄本又は記載事項証明書が該当しますが、不動産登記法施行規則247条3項2号および4号の書面により申出人が相続人の地位を相続により承継したことを確認することができるときは、別途の添付は必要ありません。

⑤ 申出書に記載されている申出人の氏名および住所と同一の氏名および住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該申出人が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。不動産登記法施行規則247条3項6号)

 この書面には、住民票記載事項証明書や運転免許証の写し(申出人が原本と相違がない旨を記載したもの。なお、この場合には、申出人の署名または記名押印を要す)などが該当します。登記官はこれらの書面によって申出人の本人確認を行うこととなるのです。

⑥ 代理人によって申出をするときは、代理人の権限を証する書面(不動産登記法施行規則247条3項7号)

 代理人の権限を証する書面は、代理人の類型に応じてそれぞれ下記のとおりとなります。また、原本の添付に加えて、代理人が「原本と相違がない」旨を記載して署名または記名押印をした謄本が添付された場合は、登記官は、それらの内容が同一であることを確認した上で原本を返却することとなります。

 なお、代理人の権限を証する書面のうち、市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成したもの(成年後見人が代理する場合における後見登記等ファイルの登記事項証明書など)は、作成から3カ月以内のものである必要はありません。

(A)法定代理人の場合

 法定代理人の権限を証する書面は、法定代理人それぞれの類型に応じて次に掲げるものが該当します。

(a)親権者または未成年後見人

 申出人たる未成年者に係る戸籍の謄抄本または記載事項証明書

(b)成年後見人または代理権付与の審判のある保佐人、補助人

 申出人たる成年被後見人または被保佐人、被補助人に係る後見登記等ファイルの登記事項証明書(被保佐人、被補助人については、代理権目録付きのもの)

 なお、保佐人・補助人の代理権目録の記載は、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出に関する件」という具体的な記載までは必要なく、「相続に伴う不動産登記の申請」など、相続手続きに関する代理権が認められていれば足ります。

 また、成年後見人等に係る後見登記等ファイルの登記事項証明書に代えて選任に係る審判書および確定証明書を添付することも可能です。

(c)不在者財産管理人、相続財産管理人

 申出人たる各管理人の選任に係る審判書

(B)委任による代理人の場合

 代理人の権限を証する書面は、委任状のほか、委任による代理人それぞれの類型に応じて次に掲げるものが該当します。

(a)親族(6親等内の血族、3親等内の姻族および配偶者)

 申出人との親族関係がわかる戸籍の謄抄本又は記載事項証明書

 なお、親族による代理について、代理人の権限を証する書面が不動産登記法施行規則2 4 7条3項4号の規定により提出される戸除籍謄本ほかと同一である場合には、当該代理人の権限を証する書面の添付を省略することができます。ただし、代理人の権限を証する書面は、その謄本(原本と相違がない旨の記載があるもの)がなければ代理人に返却されませんので、代理人が戸籍謄抄本の返却を求めるときにはその謄本も添付する必要がある点にご注意ください。

(b)戸籍法1 0条の2第3項に掲げられる者

 資格者代理人団体所定の身分証明書の写し等

 具体的には、カード形式の身分証、書面形式の身分証明書、職印に係る印鑑証明書などが想定されます。

 なお、代理人が各士業法の規定を根拠に設立される法人の場合は、当該法人の登記事項証明書が必要とります。司法書士法人等が代理する場合に、当該法人の会社法人等番号が申出書に記載されていたとしても、当該法人の登記事項証明書の添付を省略することはできません。

(ウ)法定相続情報一覧図への相続人の住所の記載

 法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載したときは、申出書にその住所を証する書面を添付しなければなりません(不動産登記法施行規則247条4項)。相続人の住所は、法定相続情報一覧図の任意的記載事項ですので、相続人の住所の記載をしない場合は、相続人の住所を証する書面の添付は不要です。

 なお、相続人の住所を確認する書面と申出人の住所を証する書面(不動産登記法施行規則247条3項6号)を1通の住民票記載事項証明書で兼ねることも可能です。もっとも、申出人の住所を証する書面は申出人に返却されませんので、申出人が当該書面の返却を求めるときは、当該住民票記載事項証明書の謄本(原本と相違がない旨の記載があるもの) も添付する必要があります。

 相続人が複数存在する場合で、住所の記載を希望する相続人と希望しない相続人とがいるときは、このような混在も差し支えありません。もっとも、一覧図の写しが様々な相続手続きに利用されることを考慮すると、すべての相続人に住所の記載がある方が有用であると思われます。

(イ)添付書面の不足

 添付書面が不足している場合、登記官は、申出人または代理人に不足している添付書面を伝え、一定の補完期間を設けてその添付を求めることとなります。

(ウ)補完されない場合

 (ア)または(イ)に係る不備の補完がされない場合、申出人または代理人に対し、申出書および添付書面を返戻する旨を通知するとともに、窓口において返戻を受ける場合はそのための出頭を、送付によって返戻を受ける場合は必要な費用の納付を求めます。これらの求めにも応じない場合は、申出があった日から起算して3カ月を経過した後、登記官は当該申出書および添付書面を廃棄することができます。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立