取締役の任期を短縮する場合、どのように議案を上程し、また、どのように登記を申請するか、考えてみましょう。
例えば、任期を「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時」から「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時」に変更するとします。
まず、総会の議案の順序としては、定款変更議案を審議し、現任取締役が選任後2年以上経過しているのであれば、その次に取締役選任議案を審議することになるでしょう。なお、現任取締役が選任後1年しか経過していない場合は、定款変更決議が承認されたとしても総会時点では取締役の任期は到来していませんから、取締役選任議案を上程する必要はありません。
一方、現任取締役が選任後2年以上経過している場合は、定款変更によって現任取締役の任期が到来することになりますから、取締役選任議案を上程する必要があります。
さて、現任取締役選任後2年が経過している場合は、その前の議案で変更された任期が現任取締役に適用されることになりますから、現任取締役の任期は、本総会終結の時をもって満了します。
一方、現任取締役選任後2年超、例えば5年が経過している場合は、その前の議案で変更された任期が現任取締役に適用されてしまうと、定款変更議案が可決された瞬間に任期満了になってしまいます。
そのため、厳密に考えると、前者の場合は「重任」、後者の場合は「退任+就任」で登記する必要があるとも言えます。
もっとも、そこまで厳格に考える必要があるかは疑問です。それは、後者の場合であっても、株主総会の意思としては「重任」として選任するのが通常であると考えられるからです。
このような解釈の相違を避けるためには、変更定款に付則をもうけて現任取締役の任期については本総会終結の時までとするというような定めを設ける方法が考えられます。