登記名義人等の相続人が登記の申請をする場合において、法定相続情報一覧図の写し(以下、「一覧図の写し」という)が提供されたときは、その一覧図の写しの提供をもって、相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができます(不動産登記法施行規則37条の3)。
この取扱いにより、登記の申請やその他の不動産登記の手続きにおいて、一覧図の写しの提供をもって、相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができることとなりますが、具体的な申請・手続きとしては主に次のものが該当します。
① 一般承継人による表示に関する登記の申請(不動産登記法3 0条)
② 区分建物の表題登記の申請(不動産登記法4 7条2項)
③ 一般承継人による権利に関する登記の申請(不動産登記法6 2条)
④ 相続による権利の移転の登記(不動産登記法6 3条2項)
⑤ 権利の変更等の登記(債務者の相続)(不動産登記法66条)
⑥ 所有権の保存の登記(不動産登記法74条第1項1号)
⑦ 筆界特定の申請(不動産登記法1 3 1条1項)
⑧ 地図等の訂正(不動産登記法施行規則16条1項)
⑨ 登記識別情報の失効の申出(不動産登記法施行規則65条1項)
⑩ 登記識別情報に関する証明(不動産登記法施行規則6 8条1項)
⑪ 土地所在図の訂正等(不動産登記法施行規則88条1項)
⑫ 不正登記防止申出(不動産登記事務取扱手続準則35条)
⑬ 事前通知に係る相続人からの申出(不動産登記事務取扱手続準則46条)
また、登記名義人等の相続人が登記の申請をする場合において、一覧図の写しが提供された場合であって、その一覧図の写しに相続人の住所が記載されているときは、登記官は、当該写しをもって、当該相続人の住所を証する情報として取り扱って差し支えないとされています。
なお、 登記の申請人が添付した一覧図の写しは原本を還付することができ、原本の還付を請求する申請人は、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければなりません(不動産登記法施行規則5 5条1項2項)。この場合に、いわゆる相続関係説明図が提出されたときは、当該相続関係説明図は一覧図の写しの謄本として取り扱われ、一覧図の写しについては原本還付することができます。
すなわち、相続登記の申請において提出される相続関係説明図は、一般的に、戸除籍から判明する一覧図の写しよりも多くの情報を含んでおり、相続登記の審査において有益なものであるため、一覧図の写しに加えて相続関係説明図も提出された場合には、基本通達(平成17・2・25民二第457号)における相続関係説明図の取扱いと同様に、一覧図の写しはそのまま還付することができるわけです。
もっとも、一覧図の写しはあくまでも相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報を代替するものであり、遺産分割協議書、相続放棄申述受理証明書等までをも代替するものではない点には、注意を要します。