銀行などの預貯金は口座名義人の相続の発生により凍結され、一定の手続きを行わないと預金の解約ができません。
ところで、最判平成16年4月20日は、預貯金などの金銭債権は、相続開始と同時に当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属すると判示していました。そのため、遺産分割を待つまでもなく法定相続分に応じた払戻し請求をすることが法的には可能でした。
ところが、平成28年12月19日、最高裁は、「預貯金は遺産分割の対象とならない」としてきた判例を見直し、「対象になる」とする初判断を示しました。これにより、預貯金を解約するためには誰が相続するのかが、遺産分割協議書や同意書などにより明確になっていなければ、原則として応じていないのが実情です。
銀行が相続紛争に巻き込まれたくないと考えるのは仕方ないかもしれないが、最高裁判例が出ているのであるから判例にしたがった取扱いをする方が紛争に巻き込まれる可能性は低いと考えられますが、銀行の取扱いは変わっていません。
なお、預貯金ではなく、現金については、最判平成4年4月10日は、「現金は、被相続人の死亡により他の動産、不動産とともに相続人らの共有財産となるから、遺産分割をせずに法定相続分に応じた金員の引き渡しを求めることはできない」という趣旨の判断をしています。