遺産分割をする前提として、個々の分割額を算出するにあたって遺産を評価する必要がありますが、いつの時点で評価するか、という問題があります。
通説は、二段階に分けて評価するという考え方です。
まず、第一段階は、相続開始時における評価です。
たとえば、相続人が配偶者と子供二人という前提で、相続財産の評価が1000万円、配偶者の特別受益200万円と評価されると、配偶者の相続分は 1000分の400、子の相続分はそれぞれ1000分の300ということになります。
なぜなら、配偶者の相続分は、相続財産+みなし相続財産の1200万円の2分の1であるから600万円ですが、特別受益は既に受領していますから、相続財産1000万円に対しては400万円の相続分を有するにすぎません。
このように、第一段階の評価の目的は、相続人の相続分を算出するために行う評価です。
第二段階は、遺産分割時における評価です。
たとえば、相続開始後10年後に、ようやく遺産分割の話し合いが行われたとします。相続財産のうち、不動産については相続開始の時より価値が大幅に下落していたような場合には、遺産分割時点において再度評価をしたうえで、第一段階で算出した相続分にしたがって分割を行った方が公平であるということになります。
しかし、第一段階での評価を基準にして遺産分割を行ったとしても不公平にならない場合(相続の開始から遺産分割までの期間が短期間であるような場合)は、第一段階の評価=第二段階の評価となりますから、実質的には第一段階の評価にしたがって具体的な相続分を算出することになるでしょう。