賃借人は、賃借物を善良な管理者としての注意を払って使用する義務を負っています(民法400条)。建物の賃借の場合には、建物の賃借人として社会通念上要求される程度の注意を払って賃借物を使用しなければならず、日頃の通常の清掃や退去時の清掃を行うことに気をつける必要があります。
賃借人が不注意等によって賃借物に対して通常の使用をした場合よりも大きな損耗・損傷等を生じさせた場合は、賃借人は善管注意義務に違反して損害を発生させたことになります。例えば、通常の掃除を怠ったことによって、特別の清掃をしなければ除去できないカビ等の汚損を生じさせた場合も、賃借人は善管注意義務に違反して損害を発生させたことになると考えられます。
また、飲み物をこぼしたままにする、あるいは結露を放置するなどにより物件にシミ等を発生させた場合も、賃借人は善管注意義務に違反して損害を発生させたことになると考えられます。
なお、物件や設備が壊れたりして修繕が必要となった場合は、賃貸人に修繕する義務がありますが、賃借人はそのような場合には、賃貸人に通知する必要があるとされており、通知を怠って物件等に被害が生じた場合(例えば水道からの水漏れを賃貸人に知らせなかったため、階下の部屋にまで水漏れが拡大したような場合)には、賃貸人は、賃借人に対し、損害賠償を求めることも可能である場合があると思われます。
※この回答は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(国土交通省住宅局 平成23年8月)を引用しています。