被相続人が自己を被保険者として生命保険に加入していた場合、その生命保険金が相続財産となるのか否かは、保険金受取人としてどのような指定をしていたかによります。そして、生命保険金が相続財産となる場合には遺産分割の対象となりますが、生命保険金が相続財産にならない場合には遺産分割の対象とする必要はありません。●受取人が被相続人自身の場合
この場合は、生命保険金が一旦被相続人に帰属すると考えられますので、相続財産として遺産分割の対象になるとも考えられるます。しかし、ほとんどの場合、生命保険約款の解釈により受取人が定められることになりますから、実際には相続財産とはならずに相続人固有の財産となります。
●受取人が「相続人」と指定されていた場合
被相続人が死亡したときの相続人となるべき者を受取人にしたと考えられますから、生命保険金は相続財産ではなく、相続人固有の財産となります。そして、相続人が法定相続分の割合にしたがって保険金請求権を有することとなります。
●受取人が相続人の中の特定の者と指定されていた場合
この場合も生命保険金は相続財産にはならず、指定された受取人の固有の財産になります。
以上のとおり、ほとんどの場合において生命保険金は相続財産にはなりません。
一方で、生命保険金は遺留分減殺の対象になるかという問題があります。つまり、生命保険金の掛金である保険料を、実質的には被相続人が支払ってきたのであれば、被相続人が受取人に対し財産を無償で贈与したのと同一視できるため、遺留分減殺の対象にすることができるという見解があるのです。
しかし、そのように考えると、一方で生命保険金が相続財産を構成しない場合であっても、遺留分減殺の場面では相続財産的な扱いをするということになってしまいます。
この点について、最高裁は、平成14年、生命保険金が相続財産にならない場合には遺留分減殺の対象にもならないと判断し、この議論に決着がつきました。