これ、実はなかなか難しい問題なんです。調べてみたら、考え方として3つあるようです。
一つ目は、遺言書で遺産分割方法の指定や相続分の指定がなされている場合には、相続人は遺言者の意思に拘束され、自分の意思で変更できないという考え方です。この場合、どうしてもいらないということでしたら裁判所に相続放棄の申述をするしかありません。
二つ目は、単純に、「いらない」ということでよろしいという考え方です。そうすると、A土地は宙ぶらりんになります。したがって、その帰属を決めるためには相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。
三つ目は、全ての相続人の合意があれば遺言と異なる内容で相続関係を決めてもよいとする考え方です。
では、裁判例はどのようになっているのでしょうか。
平成21年11月18日の東京高裁の決定では、遺言が効力を生じた時点(つまり、被相続人が死亡した時点)で相続人の意思にかかわらず、不動産は遺言にしたがって相続人に承継されているという前提で事件を判断しています。つまり、「いらない」といっても相続されてしまっていますよ、ということです。
そうすると、実務的には、特定の相続人の意思だけで「いらない」とすることはできないが、先ほどの三つ目の考え方により、相続人全員が合意すれば遺言書の内容にとらわれずに遺産分割をすることができるという方法を選択することになりそうです。
なかなか奥が深いですね。