法制審議会民法・不動産登記法部会第21回会議議事録

 引き続き部会資料51の共有の部分についての審議をお願いいたします。
  休憩のタイミングを考えまして,第2の共有の部分の「7 裁判による共有物分割」,10ページのところですね,補足説明まで入れますと11ページまでの部分ですけれども,この範囲について審議をお願いするということにいたします。
  どうぞ,委員,幹事から御自由に御発言ください。
  蓑毛幹事,お願いいたします。
○蓑毛幹事 ありがとうございます。日弁連のワーキンググループでの議論を御紹介します。
  第2の「共有等」については,少数の反対意見はありましたが,賛成意見が多数でした。ただし,表現ぶりや,趣旨をもう少し明確にした方がよいという事項がありましたので,意見を申し上げます。
  まず,1の「共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等」についてですが,ここには要件として①と②が記載してあって,補足説明では部会資料40の4と基本的内容は同じであると書かれています。しかし,部会資料40の4では,「その使用によって使用が妨げられた他の共有者に対し,共有持分の価格の割合に応じて,その使用の対価を償還する義務を負う」となっていたのが,今回の提案では,「他の共有者に対し,その使用の対価を償還する義務を負う」となっていて,内容的に同じなのか疑問です。使用が妨げられていないにもかかわらず,自らの意思で,共有物を使用しない共有者に対して,使用した共有者が対価を償還する義務を負う必要はありませんので,元の文案の方がよいと思います。
  2の「共有物の変更行為」については特段意見がありません。
  3の「共有物の管理」についても特に意見はないのですが,1点質問があります。この規律では過半数で決することができる賃貸借の期間が③の範囲内となっていて,補足説明の7ページの下から四,五行辺りで,③の期間を超える賃貸借契約を締結した場合には基本的に無効だが,「持分の過半数によって決することが不相当とはいえない特別の事情がある場合には,変更行為に当たらない」とあります。この特段の事情がある場合というのは具体的にどのようなケース,事案を想定しているのか,お考えがあれば御説明いただければと思います。
  4と5について意見はありません。前回まで弁護士会では,4の催告についても裁判所の関与を必要とすべきではないかという意見を申し上げていましたが,今回のような整理,つまり5の所在不明等の認定については慎重な判断が必要なので,裁判所が関与・判断するけれども,4の催告手続には裁判所が関与する必要はないというのが多数意見となっています。
  6の「共有物の管理者」についても特段意見はありません。
  7の「裁判による共有物分割」についてですが,基本的にはこのような規律でよいというのが多数意見ですが,判例の特段の事情の明文化,これは前回も議論になっていて,確か沖野先生が発言されたと記憶していますが,そのような内容の規律を置いた方がよいという意見もありました。一方で,そのような規定を置くと,優先関係を示すようなイメージを持たれてしまうので,今の案でよいという意見もありました。以上です。
○山野目部会長 意見の取りまとめを頂きましてありがとうございました。
  今川委員,ちょっとお待ちください。
  お尋ねが含まれておりました。事務当局からお話を差し上げます。
○大谷幹事 第2の1のところの表現ぶりですけれども,結局,共有物を使用する共有者がいるというときには,他の共有者は使用を妨げられてしまうということになりますので,その使用の対価を償還する義務は負うことになるだろう。ただ,別段の合意がある場合は除くということで,そういう別段の合意をしているのであれば,償還する義務は負わないという形になるのではないかということで,実質としては変えたつもりはございません。
  それから,共有物の管理の短期賃貸借の補足説明の部分のお話がございました。これは特別の事情があるような場合というのは,イメージしておりますのは平成14年の東京地裁の裁判例でございまして,これは建物の賃貸借に関するものですが,元々賃貸用の物件として造られた共有建物について賃借人が替わる,ほかの人を入れるということについて,それが管理行為なのかどうかということが問題になった事案です。これについては借地借家法の適用があるので短期賃借権とは言えない部分がございますけれども,そのようなものでも,その事案の内容に応じて管理行為だと認定されて過半数で賃貸できるとされていますので,そういう処理を妨げるものではない,この期間を超えるものであっても,場合によっては管理行為と認定されるものもあり得るということかと思っておりました。
○山野目部会長 蓑毛幹事におかれては,どうぞお続けください。
○蓑毛幹事 ありがとうございます。
  1の点だけ。居宅などの不動産を共有者の1人が占有している場合は,他の共有者は使用を妨げられますが,例えば,自動車を共有していて,使用する必要がある人が使用するという場合は,共有物を使用する共有者がいても,他の共有者の使用を妨げるという状況にはないと思って申し上げました。
○大谷幹事 そのような場合で,別段の合意があるというふうに見るのかもしれませんけれども,みんなが使える状態にあって順番に使っているというか,その時々で違う人が使うようなことをイメージされているんですかね。そのような場合に,1人が使ってたので別の人がその機会に使えなかったというのを,どちらかというと,それは何というかお互いさまという感じがしますので,そこのところまで,完全にほかの人が使用を妨げられている状態ではないときに,このルールが対価の償還をする義務を負うという形になるかというと,今お聞きしている限りだとちょっと違うのかなという感じもいたしましたけれども。
○蓑毛幹事 ごめんなさい。私の言い方が下手で,うまく伝わっていないようです。今申し上げたケースのように,共有者の1人が共有物を使用するときでも,対価を償還する義務を負うべきでないケースが多々あると思われるところ,今回の提案は,別段の合意がない限り,常に使用の対価を償還しなければならないように読め,うまく機能しないのではないかと思ったのですけれども。
○山野目部会長 今の①の文言で仮にいったとした場合において,恐らく現実に導き出そうとする解決は,蓑毛幹事と大谷幹事との間で異なっていなくて常識的に当たり前の結果になるということであろうと考えますが,そこに導く論理構成は,一つは別段の合意がある場合を除き,に着目するものですが,別段の合意というものは,別に別段合意していなくても別段の合意があるということはあり得るであろうと考えられますから,明示の合意がされていなくても共有者間の暗黙の了解で,お互い自動車を使っていいのではないか,特段お金は要らないよというふうな扱いになっているときには,そういうロジックで対価を支払わないでしょうというお話もありましょうし,もう一つは対価の概念の観点もあるでしょうか,対価を払わなければならない使用に対して対価が生ずるということを考えると,みんなが毎日必ず時間の隙間なく使いたいと思っている自動車であれば格別,誰も使っていない自動車をちょっと使わせてもらいますよというのは,対価を支払うに値するような使用,ここの規律が想定している使用とか対価の概念からは離れますというお話になっていくということもあるかもしれません。
  この規律の文言でいくときに,そうした理解を添えて進めていくということにするか,おっしゃったように,しばらく前に議論したような細密度の高い規律に戻して考えていくかということをなお検討していくということになりましょうけれども,言葉数の多いものにしたときに,あちらの方はあちらの方で,またそれぞれの文言についての疑問であるとか,その解釈の上での概念の外延を決めなければいけないとかという問題が生じてまいりますから,どちらでいくことがよいかということをまた考え込んでいくというお話になるものだろうというふうに感じます。ここのところは,ひとまずはそのようなことで更に検討するということでよろしいでしょうか。
○蓑毛幹事 よく分かりました。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  今川委員,お待たせしました。
○今川委員 私は5の「所在等不明共有者がいる場合の特則」について,意見が一つと質問が二つあります。
  まず意見の方ですが,(1)の要件の①で,共有物に変更を加えることができる旨の裁判の,ここで言う変更には,補足説明にあるように,譲渡や抵当権設定などの持分を喪失させる行為を除くということは理解しています。ただ,その前の2の「共有物の変更行為」でも,同じように「共有物に変更」という文言が出てくるんですが,ここは多分譲渡等の処分行為も含むという理解かと思っているのですが,そこは違っているのでしょうか。そのように理解をしていたのですけれども,そうであるとすると,その違いを明確にするために条文の文言について工夫が要るのではないかというのが意見です。
  質問の方ですが,(1)の要件等の②なんですが,これはちょっと読み方がまずいのかもしれないのですが,アの決定をもらっておいて,イの決定も必要になるのか。アの決定だけをもらえば,4の規定に従い自らが催告をして行うということが可能なのではないかと思ったのですけれども,これは読み方がおかしいのでしょうか,そこを教えてください。
  それと,(2)の手続の②の共有者等で,ここに「等」が入っているのですが,ここで想定される異議は,所在不明である当該他の共有者のみであると思われるのですが,ここに等が入ると,何か他の共有者も異議が述べられるというふうに読み違えをしそうなので,この「等」の意味が不明なので教えてください。
○山野目部会長 第1点もお尋ねの趣旨があったかもしれませんから,3点について事務当局からお願いいたします。
○脇村関係官 今の最初のお話にあったのは変更と処分の関係でございますが,教科書などでは,部会でも議論がありましたとおり,そこの変更に含んで処分行為を読むという方と,いや,処分というのは変更とは違うんだと,別の概念だという両説があったと思います。今回はそういう意味ではなかなかそこの解釈自体に踏み込むのは難しいと思っておりますので,表現上はですね。そういう意味では,そこはフラットにせざるを得ないのかな,つまり何もいじらないということで考えておりました。
  そういう意味では,解釈論としては251条の変更で読むという方もいれば,いや,変更とは別の概念,処分というのは他人ができないものなのだということで読む概念,両説があるということを前提にしつつも,ここの持分取得についてはほかの条文と見合いで,当然含まれないという趣旨で書かせていただいたというところです。委員がおっしゃったとおり,本当はきれいに書くというのは一つなんですけれども,学説上の概念,あるいは更に言いますと,今の民法の文言ですと,変更行為は一応管理行為の一環,251条は前条の場合を除き管理に関する事項と書いていますので,恐らく変更は管理の中に入っているんだろうと思いますけれども,そういう意味で,文字面だけでいくと,多分処分行為は入らないというのが普通の読み方かなという気もしたりとかして,なかなかいじりづらいというのが正直ありましたので,こういった説明にしています。裁判所が絡むことですので,恐らく変なことは起きないだろうと思っていますが,我々としても,成案を得た際にはそういった説明についてきちんとして,ここには入らないということをきちんと周知していきたいと思っているところでございます。
  また,5の(2)の②のイのことなんですが,おっしゃるとおり,従前私の方も,もう①で読めないかなと思っていたところなんですけれども,いざ字にしてみますと,なかなか①があるから,その催告のケースはいいんですというふうに,逆に読みづらいのかなと思いまして,念のために書かせていただきました。運用としては,あらかじめどっちにするか分からないケースについては両方の裁判をとっておくというのも一つでしょうし,もう残りの人で合意ができていて,もうイなんか絶対しないんだということであれば,アだけとるというのもあるのかなというところで,そこは状況次第,催告することを目指しているのだったらイをとった上で,アも分からないのでとっておくというのも一つ方法としてはあるかなと思っています。
  最後の「等」は,ちょっと右往左往していて残ってしまったので改めて出す際には削ります。すいませんでした。
○山野目部会長 今川委員,お続けになることはおありでしょうか。
○今川委員 いえ,結構です。
○山野目部会長 よろしいですか。
  引き続き承ります。藤野委員,どうぞ。
○藤野委員 ありがとうございます。
  第2のところで,2点ほど質問させていただければと思っております。
  まず,第2の2の「共有物の変更行為」につきまして,ここで「変更」から除く行為の書き方については,これまでの部会の中でかなり議論されて,このような書き方に今回落ち着いたということだと理解しておりまして,従来のように改良を目的とし,と書くと,改良ではないものが入らないとか,そういったところは非常によく理解できるのですが,今回,形状又は効用の著しい変更を伴わない,という書き方に集約されたことによって,例えば元々全く効用を発揮していなかったような土地を暫定的に通路にするだとか,物置場にするとか,そういった改良のようなことを行って,それが見かけ上は著しい変更に当たっているように見えるかもしれないのですが,実態としては費用もそれほど掛かっていないし,元々使われていなかった土地なので,実際にはその効用を害しているものではないというときに,それも変更に当たらないと読めるという前提で書かれているのかどうかというところを差し支えなければ教えていただければと思っております。
  あともう一つは,第2の7の「裁判による共有物分割」のところでございまして,こちらについても要件を具体的に書き込むのが難しいということは,これまでの議論で重々承知しておりまして,それでこのような形で②のア,イを併記していただいたものというふうに理解しておるんですが,法律で書けることというよりは,今後実務がどうなるのかなという関心の下で質問させていただきたいのが,従来は分割方法が条文にそれほど明確に書かれていなかったために,それを裁判所が自由裁量で決められるという解釈がなされていたと思うのですが,今回,アの現物分割と,イということで,いわゆる賠償分割が明記されることで,これによって,何かその辺の考え方が変わる可能性というのがあるのかどうかというところですね。特に当事者が,例えば現物ではなくて賠償分割でいきたいというような主張をしたときに,今回,新しく条文を創設することによって,そのような主張がどう機能するのかなというところを現時点で考えておられるところがあれば教えていただければと思っております。
  以上,2点でございます。
○脇村関係官 
  1点目につきましては,恐らく効用を発揮していないというケースについてもいろいろなパターンがあるのだろうなと,あえてそういうふうにしているケースもあれば,本当にほったらかしているケースもあると思いますので,ケース・バイ・ケースによって,特にそれで問題ないというケースについてまで,それが著しい変更に当たらないことは言わないのかなというふうには思っています。恐らくその状況次第で変わってくるのだろうなというふうには思います。
  最後の共有物分割につきましては,この部会の趣旨として,恐らく従前の判例議論を何か変えようということで明文化したというよりは,当事者に分かりやすくしようという観点から方法を示したということに尽きるのだろうなというふうに理解はしております。ただ,もちろん今回明文化されたことによって,より当事者がそういった言い分といいますか,主張を実際にはするケースが増えることもありますので,そういった主張を踏まえながら裁判所の従前の判例で示したような枠組みの中で考えていただきたいということなのかなというふうに認識していたところでございます。
○山野目部会長 藤野委員,いかがでしょうか。
○藤野委員 ありがとうございます。
  1点目に関しては,例としてお示ししたような場合が変更に当たらない,と解釈されうるのであれば,実務上懸念が出ていたところもクリアできる可能性が出てくるのかなというふうに思っておりまして,後ろの方の第2の4とか5のところで,管理に関する事項については催告でいけるけれども,そうではない場合は基本的には裁判をかませるということになっていることとの関係でも,やはりここのところはすごく重要かなと思っておりましたので,ケース・バイ・ケースとはいえ,変更に当たらないという考え方でいける場合があるということであれば,よい方向なのかなというふうには思っております。
  2点目に関しては,ありがとうございました。実務サイドとしては,共有物分割を請求した場合の結論の予測可能性が少しでも高まれば,という思いは依然としてございますが,今の時点でそこまで明確にするというのは難しいというのは重々承知しておりますので,いただいたご説明を参考にさせていただければと思います。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  引き続き共有の部分の1から7までの御意見を伺います。いかがでしょうか。
○佐久間幹事 細かいことを申し上げるのですけれども,ちょっと文言で何点か気になるところがあります。
 まず3の「共有物の管理」のところなんですが,「251条の場合を除き」というのは,今の条文だと251条でいいと思うのですけれども,その前の2の「著しい変更を伴わない場合を除く」というふうになっていると,この括弧書きはここに入らないということをきちんと示しておく必要があるのではないかと思います。
  同じようなことなんですけれども,4と5に「共有物の管理に関する事項」という言葉が出てくるんですが,先ほど脇村さんが,変更だって,今は共有物の管理の一つと位置付けられているのではないかというふうにおっしゃって,そのとおりだと思うのですが,そうだとすると,この共有物の管理に関する事項のところの4と5においては,その変更を含まないということを明確に,文章を読めば分かるのはそのとおりなんですけれども,明確にしておいた方がいいのではないか。要するに,3,①,③に限るというふうなことを添えておくことが,読む人にとって親切ではないかなと思いました。
  それと,5の(2)の②が「異議を述べなかったときは」とあるんですけれども,後の方で出てくるのに合わせると,これは①のイの異議の届出をしなかったときは,しないときはとかというふうになる方が,ほかとの平仄が合うのではないかと思いました。全部ここは文言だけです。
  それで,1点気になるのが,7の「裁判による共有分割」で,これも合意ができていたのかもしれないし,別に強く主張するつもりはないのですけれども,②のイで,共有者に債務を負担させて取得させるということについてです。補足説明では,前回のような金銭を支払わせてとなると,金銭の支払が持分取得の条件というか,金銭の支払があって初めて持分を取得することができるということになってしまいますよね,ということなのですけれども,それはそうなのですけれども,仮に債務が履行されなかった場合,裁判分割をして,相手に債務の履行は命じられたけれども,履行してもらえませんでした,持分は失っていますって,それはいいのかなというふうに素朴に思いました。条件というか,対価の支払によって初めて持分が取得されるというところまではしないのであれば,しなくてもいいと思うのですけれども,何か優先的な救済を考えておく必要はないのだろうかと。そういった事態は極めてまれなのだろうとは思いますが,これまではそもそも全面的価格賠償自体がそれほどとられていなかったのだろうと思うのですね。だから問題は顕在化しなかったのではないかなと感じる面もあります。これからこういうフラットに②,ア,イ,特にイで,持分全部を債務の負担という形で取得させますよということがどんどん行われるということになると,債務不履行事例も出てくるのではないかと。その場合に,「まあ,そんなものです」というようなことでいいのかどうか,ちょっと疑問に思いました。
○山野目部会長 最後におっしゃった点を除き,佐久間幹事が前の方でおっしゃった諸点は,今後法文の立案を準備するに際して参考にするということにいたします。
  最後に御指摘があった点について,事務当局の説明を求めます。
○脇村関係官 ありがとうございます。
  正に先生がおっしゃったとおり,その点や,その履行をどうするのかという,従前この部会でも議論させていただいたところでございます。今回の部会資料につきましては,その点につきましては引換給付,あるいは停止条件とすることについて,裁判所に適切な判断をしていただけるのだろうという前提で組んでおりました。なかなか裁判所の判断事由について全て書き込むのは難しいということから,給付条項だけは書きましたけれども,そういったことを絡めて裁判所の方で従前どおり,あるいは従前よりも更にかもしれませんけれども,そういった問題に対応するために,お金を払うときに移すのか,あるいは引換給付にして登記移転するのか,そういったあたりを判断していただけるのだろうと期待して作らせていただいたというところでございます。
○山野目部会長 ④のところで引換給付判決などをする可能性があり得るということ,及び,しかし,それをしてくれということを裁判所が個別の裁判を言い渡すに当たってする,その内容を法文で事細かく示唆することが適当でないというふうに考えられるという2点に分けて,事務当局から説明がありました。
  佐久間幹事におかれて,いかがでしょうか。
○佐久間幹事 引換給付があり得るとして,あり得るというか,それはあるのでしょうけれども,正直,そのようにしないことが一体どういう場合にあるのかなというのが,よくのみ込めないところです。引換給付があり得るのだったら,ほぼ全て引換給付になるのではないかなというふうに素朴に思っただけです。
○山野目部会長 今までの家事事件手続法でも,恐らく②のイと④の規律が置かれていますから,そこについての運用と大きく変わるということはないであろうというふうに想像されます。そこでの運用を踏まえて,また適切な解決がされていくということでありましょう。
  7のところについて,今,佐久間幹事から御指摘いただいたことに留意をするということにいたします。ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。
  よろしゅうございますか。
  それでは,7まで審議をお願いしたという扱いにいたします。
  休憩といたします。

          (休     憩)

○山野目部会長 再開いたします。
  部会資料51の第2の「共有等」の部分について御審議を頂いているところであります。
  休憩前に,第2の共有の7の「裁判による共有物分割」のところまでが済んでございます。第2の「共有等」の残りの部分,8の「相続財産に属する共有物の分割の特則」から始め,第2が終わるところまで,部会資料51で申し上げますと,17ページの上半分のところで補足説明が終わっているところまで,この範囲で御意見を承ります。どうぞ御自由に御意見を仰せください。
○蓑毛幹事 部会資料11ページの「8 相続財産に属する共有物の分割の特則」ですが,これは従来,「通常の共有と遺産共有が併存している場合の特則」というタイトルで書かれていたものだと理解しています。このような制度を設けることには異論がないのですが,8の①,②の書き方で,これまで議論されてきた趣旨だと読めるのか,疑問が残りました。
  また,③の3行目括弧書きにある「当該相続人が同項の規定による請求をした場合にあっては,当該請求をした日」との規定を置く趣旨がよく分からないという意見がありました。当該相続人というのは,②ただし書の申出をした相続人と読むと思うのですが,共有物分割請求をした者自身が,それに対して異議の申出をするというのは考え難いので,そうでない読み方をするのでしょうか。ちょっとここは分かりにくいと思います。
  それから,9(1)④の持分の時価相当額というところについて,前回の部会資料では,これをどのように計算するのか更に検討が必要だと書かれていましたが,今回,特に説明がありません。条文としてはこのような「持分の時価相当額」という表現に落ち着くものと思いますが,その算定方法について更なる検討と,説明が必要だと思います。このままぽんと出されると,実務が混乱するとの意見がありました。
  それから10の「所在等不明共有者の持分の譲渡」についても,賛成意見が多数です。ただし,少し議論になった点として,15ページの(1)の③で所在等不明共有者が取得する権利について,不動産の時価相当額を持分の割合に応じて按分した金額の支払請求権を取得するのはよいのですが,この金額を裁判所が算定し,それに応じた金額が供託されたとして,その後の実際の売買で,時価と判断された金額を上回る金額で売れた場合に,その上回った金額を不明共有者に渡さずに,それ以外の共有者が取得してよいのか,それは不公平ではないかという意見が出されました。この点を解決するために,実際の売買代金に見合った金額を追加して供託させることが考えられますが,条文の定め方が今よりも複雑になるでしょうし,今の仕組みでは,売却に先立って,裁判所の決定と供託がされるものですから,その後に金額が上がったことをどう確認し,追加分をどのように追加して供託させるのかなど,手続きがかなり複雑になりそうです。
  あるいは,裁判所が時価相当額を計算するに当たり,通常はその時点で売買契約の交渉等がある程度進んでいるでしょうから,裁判所が時価を判断する資料として,当事者に売買契約書などの情報を出させるような仕組みにすることも考えられると思います。
  「11 相続財産についての共有に関する規定の適用関係」については特に意見はありません。
○山野目部会長 お尋ねも頂きましたし,御所感という仕方でお伝えいただいたこともありますけれども,それらを通じて,事務当局で考えていることがあったらお話しください。
○脇村関係官 ありがとうございます。
  まず,この11ページの特則の書き方については,できるだけ私たちも頑張りたいというふうには思っておりますが,現時点で,今の時点としてはこれが限度だというところでございます。
  その上で,この括弧書きについては確かに分かりにくいと思いますので書き直そうと思っています。趣旨としましては,恐らく通常共有,遺産共有が併存しているケースに共有物分割訴訟を起こされるパターンとしては2パターンあると思っていまして,一つは正に通常共有を第三者が申立てをするバターンと,相続人の1人が申し立てるパターンの2パターンがあるのかなと思っています。正に前者についてはもう残りの相続人の異議がなければいいのではないかということで,元々想定していた議論をさせていただいています。
  一方で,相続人がやるケースについては,相続人の中には遺産共有の分割後の遺産共有でやりたい,だからここでやってほしくないというパターンと,いや,全部やりましょうよ,10年たっているしというパターンの2パターンあるのかなと思っておりまして,書きたかったのは,訴える際にどっちかはっきりさせてくださいよと,その訴える人はですね。ということを何とか書けないかなと思ったのですが,それを異議の書き方にしたので多分分かりにくくなったというところだと思います。次回までに何とか工夫をしたいと思っているところでございます。
  また費用につきましては,もう少し私も考えてきたいと思っていますが,従前から議論ありますとおり,不特定のパターンには非常に難しい問題があり,所在不明のケースについては専門家を使うべきかどうかという議論,いろいろあったと思います。不特定のケースについては,少なくとも人数が分かっているのだったら平等基準でやるべきではないかとか,あるいはもう最低分からないときについては高めで納めさせるべきではないかという議論がありまして,裁判所の判断に委ねるということとしたこととの関係で,どこまでこの部会資料に書くべきなのかという議論はあるとは考えていますが,少しその辺,どういう審議を経てこういった条文になったかが分かるような形で,次回,何らかの形で部会資料で少し説明できるように考えていきたいと思っているところでございます。
  最後の結局金額どうこうの議論なんですが,確か前回ここの議論をした際に今川委員からも同じような御趣旨の御指摘あったと思いまして,当時私はずれていても仕方ないのではないですかみたいなことを口走ってお叱りを受けたところだと思っているところです。その後,改めて考えたのですが,例えば不当利得の返還請求などの最高裁の判例では,利得・損害額を判断する際に,実際売れた金額をベースに利得を考えるべきではないかという最高裁の判例はあったと思います。そういった考えは,多分ここでも一つ参考になるのかなと思っておりまして,その時価を考えるに当たっては,どういった金額で売却されることが見込まれるかということも資料の一つとして考えることはできるのではないかなと思われるところです。もちろん裁判所の判断事項にしたこととの関係で,必ず確認しろといっていいのかどうかというのは,証拠の採否に関するところでなかなか難しみはあるかもしれませんが,恐らく適切な金額を判断する上では,どういった金額で売ろうということを聞くとか,あるいは確認するという作業が一つ考えられるのではないかというところで,恐らく安いときには多分自分たちで言ってくると思いますけれども,高いときについても裁判所の方で適時適切に対応していただくというのが一つあるのかなというふうには考えているところでございます。
○山野目部会長 蓑毛幹事におかれては,お続けになることがおありでしたら,どうぞ。
○蓑毛幹事 今の説明でよく分かりました。
  10についてもう一つ意見が出ていたのを言い忘れていましたので申し上げます。
  時価相当額の概念で処理できるのかもしれませんが,供託する金額について,仲介手数料,固定資産税の精算,印紙代など,売買によって生ずる費用を時価から差し引いて計算する方がよいという意見がありました。
○山野目部会長 蓑毛幹事の今追加しておっしゃっていただいたことは理解いたしましたから,次回以降に向けて引き続き検討いたしますが,多分,法文には仲介手数料とかは書かないものでしょうね。それこそ正に仲介手数料,それから固定資産税の課税の基準になる日がありますね。あの日の前後で細かく計算分けてしていただくとかという事項は,もうこれは弁護士や司法書士の先生方はそのためにいるものであって,それは民法の法文が何かしてあげるという世界ではありませんから,従前も民事法制の規律において時価をもって売渡しや買取りを請求するといった場面で,常に大なり小なりその種類のことはありますけれども,法文がそのことを細密に手取り足取り表現してルールを明らかにしてきたわけではございませんから,今,蓑毛幹事におっしゃっていただいたことを今後いろいろ説明していくに当たって忘れないように念頭にとどめますけれども,恐らく法文の扱いとしてそれをどうするかという話にしにくい部分があるものではないかとも感じます。ありがとうございます。
  引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。
○松尾幹事 3点ございまして,第1点は,誠に申し訳ないのですけれども,休み時間に入る前の部会資料51の第2の7「裁判による共有物分割」について,ちょっと躊躇して言いそびれた点がございまして,発言をお許しいただければと思います。
  部会資料51の10ページの第2の7の②のイ「共有者に債務を負担させて,他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」で,先ほど佐久間幹事がご指摘された点ですけれども,賠償分割の場合の共有者の対価支払と他の共有者の持分取得の引換給付を実現できないかどうかということで,私も同じ問題意識を持っておりました。それで,第2の7の②のイの共有者に債務を負担させてという場合の債務は持分の対価の支払債務と理解してよいかと思うのですけれども,その対価の支払と引き換えに,他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法というような表現を用いることに差し障りがあるかどうかということについてご教示いただきたいと思いました。もしかすると,この対価支払について期限を許与すべき場合があるかもしれませんし,そういう考慮があってこういう表現になっているかもしれませんけれども,従来から問題点として指摘されてきた点でもございますので,問題提起をさせていただく次第です。考慮が足りない点があるかもしれませんがお許しください。
  それから第2点は,部会資料51の13頁,第2の9「所在等不明共有者の持分の取得」(1)の④で所在等不明共有者の持分の取得をするときに,この所在等不明共有者には持分の時価相当額の支払請求権があることを定めています。これはすっきり理解できるところであります。他方,次の(2)の④では,裁判所は持分取得の裁判をするときに,この所在等不明共有者のために裁判所が定める額の金銭を供託することを命じなければならないとしています。(1)の④では時価相当額という表現で,(2)の④では裁判所が定める額の金銭という表現になっているわけですけれども,その理解として,例えば持分取得を希望する共有者が既に共有物の管理について負担した費用の償還を求める場合には,そのことも考慮して裁判所は,その費用を差し引いた残額について供託すればよいということを認める趣旨でしょうか。私は,そういうことができるならばその旨を規定すべきではないかと思います。といいますのも,所在等不明共有者の持分の取得は,所有者不明状態を解消する手段としては,今回の改正提案の中では切り札と言ってもよいものかと思いますので,できるだけこれを使いやすいものにし,共有者間の公平を実現できるようなものにすべきではないかと考えるからです。この点の確認と意見が第2点です。
  それから,第3点として,部会資料51の15ページ,第2の10「所在等不明共有者の持分の譲渡」で,これは所在等不明共有者の持分を他の共有者の持分と併せて第三者に譲渡するということを前提にして,その要件と手続を定めるルールですけれども,この持分の譲渡のほかに,所在等不明共有者を含む共有者全ての持分について抵当権を設定するというようなことも可能であると想定しているでしょうか。所在等不明共有者の持分も含めて,この共有物について抵当権を設定するということも,この持分の譲渡と類比して可能なのかどうかという点の確認です。
  もし抵当権の設定ができるということになった場合には,部会資料51の15ページの(1)③で所在等不明共有者の持分の譲渡に対する時価相当額の支払請求権ことを考えたときに,譲渡ではないから,持分の対価に対する支払請求権のような対価の支払請求権はないということでよいのか,あるいはそもそもそこに問題があるから抵当権設定のようなことはできないというふうに考えるのか,この点について,ルールを明確にしておいた方がよいと考え,確認させていただきたいと思った次第です。
○山野目部会長 3点にわたって,お尋ねないし問題提起を頂きました。
  事務当局からお願いします。
○脇村関係官 ありがとうございます。
  まず,引換給付につきましては,先ほど山野目部会長からもお話があった点に絡むのですけれども,似たような制度として家事事件手続法というもので債務負担という表現を使っていることとの関係もあって,こちらの引換給付を必ずしないといけない,絶対だということまではなかなか難しいのではないか,さすがに裁判所の裁量を完全に封じてしまうことまでは難しいのではないかということで,技術的な面から書けないと思っています。ただ,もちろん先生,あるいは佐久間先生がおっしゃっていたとおり,普通はやるのでしょうと言われると,そうでしょうねとは思っているのですが,そこは技術的な限界があるのかなと思っています。
  次に,控除をした金額でいいのではないかというお話があったのですが,やはりなかなか現実的には難しいのかなと思っていまして,結局,控除すべき金額を考慮して供託金を定めると,時価から控除した,これは引いていいですよということをこの裁判の中でやるのは多分不可能なのだろうと思います。結局,客観的な時価であれば,それは裁判所が専門家の知見を借りて判断をできますが,そうではない,実際どういった費用を払ったかなどの認定をするには,恐らく管理人などを使った上で,その管理人の調査を経た上でやらないといけないということだろうと思います。ですから,先生おっしゃったようなケース,実際には控除した金額で買い取るということが認められてしかるべき事案もあろうかと思いますが,そういったケースにつきましては,この簡易なものではなくて,次回以降取り上げます所在等不明土地管理制度ですか,管理人を付けて裁判所の監督の下で管理人が適宜土地,共有持分も含めた管理をするという制度を考えておりますので,その管理人を選んだ上で,その管理人との協議の上で共有持分を集約するという制度を使うしかないのかなというふうには,今のところは思っています。ここの中で,この裁判所の手続を非常に重くするということは避けるべきではないかと思っています。
  最後の抵当権の件なんですが,正に先生おっしゃったように非常に難しくて,恐らくこの抵当権の設定をそういった形でやるというのは多分不可能なのだろうと思います。そういう意味では,この資料としては想定していません。では,抵当権を付けたいときにどうするのだという話が当然あろうかと思いますが,一つは,そういったもろもろのことをしたいのであれば,将来的にいろいろ担保保存義務を負わないといけませんので,持分を集約していただいて,このレジュメでいきますと12にあります共有持分の取得をまずしていただいて自分のものにした上で,抵当権を設定していただくのがいいのかなと思っています。そういう意味では,元々この持分取得だけでいいではないかという御議論もあったぐらいで,そういう意味で譲渡に特化した作りにしていますが,抵当権,あるいは更に言うと長期の,例えば賃貸借部分も好きにやりたいとかいろいろなことがあるのだったら,持分取得をしてきちんとやるというのが一つの方向性かなと思っているところです。
○山野目部会長 松尾幹事,よろしゅうございますか。
○松尾幹事 ありがとうございました。1点目と3点目については了解しました。
  2点目につきましては,所有者不明状態を解消する手段として,共有者の一部の者による時効取得についてのルールは設けられないことになったわけですが,時効取得の場合には特に対価の支払ということはなくても,他の共有者の共有持分権を取得できることとの関係で,所有者不明状態の解消手段として期待される所在等不明共有者の持分取得については,できる限り実用的なものにする必要があるのではないかという観点から,問題提起させていただいた次第です。確かに,所在等不明共有者のために所有者不明土地管理人を選任して手続をとることは一番真っ当な方法かと思うわけですが,ちょっとその手続的負担は重たいかなというふうに感じたものですから,確認とコメントをさせていただきました。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  休憩前に引き続き,従来は全面的価格賠償と呼ばれてきたものを今般は明文の規律を置いて,それが可能であることを明らかにしようとする提案につきましては,多くの委員,幹事から,本日の部会会議に至るまでの御議論で賛成を頂いてきたところでありますとともに,本日は引換給付の問題を中心に若干の御議論があったところでありますから,この際,一言申し上げます。
  恐らく,いわゆる全面的価格賠償というものが現時点においては法文上,明らかになっていないにもかかわらず,あり得るということを裁判所がはっきり体系的に述べた最初の判例である平成8年の最高裁判所の判決は,それは可能であるけれども,大きく分けて2種類のハードル,2種類の要件を満たしてもらわなければ困るということを述べていました。
  一つは,その現物を特定の1人又は数人の共有者に取得させるということが,客観的に見てもっともであるという土地の利用その他の関係における事情が存在するということがなければいけないということであり,もう一つは持分を失うことになる者に対して債務を負う者がしかるべき資力を持っているという見通しが成り立ち,必ず対価となるお金を得させるようにしてあげなければならないという観点でありました。これらの要件の要請は,いずれももっともなものでありまして,新しい規律ができた後に,平成8年の判例の意義をどう考えるかは,もちろん今後において研究者がその点についての検討を重ねていくなどするところを待たなければなりませんけれども,恐らくはこの部会においてまとめようとしている案の趣旨としては,平成8年の判決の意義を全くなからしめるようなことは考えていないという理解でよろしいであろうと感じます。
  そうであるといたしますと,判例が要求する二つの要件を関連させて述べますと,その物を1人の者に取得させて使用させることがもっともだという事情がある場合に限られますから,状況によってはそれが切迫しているということもあります。地域のまちづくりであるとか,被災地の復興のような観点から,いち早く占有と登記は得たいというような要請がある事例もあるであろうと想像します。そのようなときに,常に引換給付であるというふうにしておきますと,登記や占有の取得が遅れることもあり得ると,そのような心配が出てくるであろうと案じられます。差し当たって,担保を提供しますから,お金は直ちにお支払いするということになりませんけれども,引換給付にしないで占有や登記を得させてほしいというふうな要請があったときに,それをもっともであるというふうに考えて,諸事情を勘案して引換給付等はせずに担保を立てさせ,又は極めて僅少な額であるために担保を立てさせないで,無条件で占有や登記の移転を命ずることとするかという事項は,申し上げたような一切の事情を斟酌して処理運用をしなければならない事項になりますから,そこのところについては類似局面の規律を設けている従前の家事事件手続法の運用等を踏まえながら,個別の事案に向き合った裁判所に任せようという在り方がそこのところの規律の提案における④のお話であったものでありまして,そういうふうなことを思い起こしますと,確かに佐久間幹事がおっしゃられたように,大抵の場合は引換給付になるでしょうということはもっともなお話ですが,裏返して言いますと,限られた場面かもしれないですけれども,そうでない取扱いが妥当とされる場面もあるものでありますから,余りそこを規律の文言として書き切ってしまうということは慎んだ方がよいのではないかということで,本日このような提案を差し上げているところであります。それをめぐって,委員,幹事の間で有益な御議論も交わしていただいたところでありますから,それを踏まえて今後の検討を更に深めてまいるということにいたします。
  お諮りしている共有の部分について,引き続き御意見を承ります。
○佐久間幹事 3点ございまして,1点はまた文言というか表現の話で恐縮なんですけれども,12ページから13ページまでにあります(2)の③のところで,「裁判所は,①ウの異議の届出が①ウの期間を経過した後にされたときは,当該届出を却下しなければならない。」とあるのですけれども,①のイについては同じような定めは要らないのでしょうか。私が見落としているだけだったらおわびいたしますけれども,何かないように思えて,ないとしたら,必要なのではないかなと思いますので,ちょっとお教えいただければと思います。それから⑥にある②オというのは,①オの多分誤植だと思います。これは多分間違いないと思います。これが1点目です。
  2点目は,8についてなんですけれども,8の②におきまして,共有物の持分が遺産に属するときに,共有物の分割は,その遺産の分割の手続でするのだという異議があったら,できませんということが定められているわけですけれども,その前提として,例えば相続人でない共有者が1人いまして,あと遺産共有の部分が持分であるというときに,7のルールの例えばイで,当該相続人でない共有者に全部所有権を取得させて,今で言う価格賠償にして,その金銭が遺産に属して共有だという扱いは排除されていないのか,この②のルールがあることによってそれも排除されるのか,私は排除されないということの方がいいのではないかと思っているのですけれども,そこを確認させていただきたく存じます。この②は飽くまで遺産共有の部分についての扱いであり,従来からそうだと思いますが,遺産共有に属しない持分を有している人は,共有物分割を請求できるはずだと思うのですね。それができるということは,今後も変わらないということでいいですかということと,そのときの共有物分割の内容としては7のとおりであり,この8の②のルールによってそこに制約がかかることはないということでよろしいですか。よろしくないのだったら,それはどういうことですかということを伺いたく存じます。
  3点目は,これはちょっとここの提案の直接話ではないのですけれども,9の不明共有者の持分の取得と,10の持分の譲渡の許可の場合に,その取得とか持分の譲渡が実現したら登記することになりますよね。その登記の申請は,結論としては当該持分を取得した人が1人でできる,共有物全体を譲渡した場合は,その持分の譲渡の許可を得た人が代わりにと言っていいのかどうか分からないですけれども,不明者についての手続も多分やれるということになると思うのですが,そのことについては民法ではないと思うのですけれども,不動産登記法かもしれませんが,何か定めが要らないのでしょうか。要るか要らないか,あるいはもし要るとしたらどういうふうなことをお考えでしょうかということを3点目にお伺いします。ひょっとしたら実務上の扱いで処理しますということなのかもしれませんが。以上です。よろしくお願いします。
○脇村関係官 ちょっと前後して8から先に順番でさせていただきますと,ちょっとすみません,先生の問題意識を私が的確に理解していない可能性があるのですけれども,おっしゃった点は,恐らくイエスなのだろう,変わらないということでいいのだろうと思っています。ただ,すみません,私は先生の問題意識がはっきり分からずに答えている可能性もなきにしもあらずなのですが,やりたかったことは,遺産共有持分のものについてはこうなりますということだけですので,それ以外のことについては特段触れていないですので,そういった意味で変わらないということだろうと思います。
  あと9の上の方で,異議がなかった場合,却下しなければならないと書かなかった点なんですけれども,従前からあちらの方は,正に催告がなかった場合にどうするのだということをメインに議論をしていましたので,明確的に書かせていただいたというところです。一方で,持分取得なり譲渡についてはいろいろな手続が複雑に入り混じっておりまして,公告した後,供託してということで,いちいち全てについてちょっと書くのが難しかったというのが正直なところです。ただ,内容については,もちろん異議が出た場合には当然その要件として所有者不明ではないということになりますので,当然できないということになりますので,そこは書かなくてもいいのかなと。逆に言うと,元々のあちらの方を書かない方がいいという結論なのかもしれませんが,あちらは一応明確にした方がいいかなということで書いてあるだけですが,そういう意味ではちょっと若干技術的な話かなと思っています。
  あと,6の2のオの話ですか,ちょっと確認した上で,また次回適切に答えさせてください。先生,9の(2)の⑥でよろしかったですか,御指摘いただいたのは。
○佐久間幹事 そうです。②オってあるんですかね。
○脇村関係官 そういう意味では,すみません,①なんですけれども,①オでして,すみません,ここは次回までにきちんときれいにさせていただきたいと思います。
  最後,登記ですね,すみません。結論としては,もう先生がおっしゃったとおりでして,もう単独,あるいは共同申請するにしても,所在等不明共有者抜きでできるということを考えておりました。不動産登記法の手当てについて,この決定書き,裁判書きで明確に権限があることは証明されているので,特段手当てしなくていいのではないか,もちろん改正された場合に手当てしなかったとしても,その点についてはもろもろの方法によって周知しないといけないと思っていますけれども,手当てしないという方法もあるのではないかと。一方で,本当に手当てしなくていいのかということも考えないといけませんので,もう方向としてはそちらの方向ですが,手当てしないことも含めて現在検討中です。いずれにしても,そこは遺漏なく適切に対処していきたいと思っています。
○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ,お続けください。
○佐久間幹事 ありがとうございます。
  8の②の共有物分割の話は,こうすべきだという意見があるわけではなくて--。いや,あるか。通常の共有者の共有物分割の請求が妨げられることは,それはあってはならないと思っていて,今お答えをそう頂いたのですけれども,かつ裁判所がどう分割するかというのは,遺産共有の方の側で,いや,これは共有持分として残してほしいという希望が例えばあり,それが理由があるというふうになると,7の②のイなんていう判決が出る裁判がされるということは,普通ないのだろうと思うのですけれども,そういう希望が仮になかったとしたら,どうなるのでしょうか。実際上は何を考えているかといいますと,遺産共有の状態で訳の分からないことになっているものについては,誰か1人にぽんと所有権を取得させることが,当該土地がそれ以降,きちんと利用されることになる道を開くことになると思っています。そうすると,7②イの方法も,差し支えのないときは排除されていないのですよねということを確認していただけるならば,今日じゃなくてもいいのですけれども,ちょっと整理されて,そうしていただくのがいいかなと思ったので発言をさせていただきました。そのときは金銭が共有,遺産共有のままですという,それでいいのかどうかもよく分かりませんけれども,なるのかなということで発言させていただきました。
○山野目部会長 ありがとうございました。
  脇村関係官からお答えを差し上げたように,ひとまず今日考えているところをお話ししましたけれども,佐久間幹事の御意見を踏まえて,なお整理をすることにいたします。
  ほかにいかがでしょうか。
○沖野委員 ありがとうございます。
  今の佐久間先生と脇村さんの間でやり取りされたことに関して確認させていただきたいのですけれども,12ページから13ページの9の項目の(2)の③で,ウの場合に,期間徒過の場合の手当てが書かれていて,イについては書かれていないという点について御説明は,その場合には所在等不明共有者ということにならず,①の要件を欠くので,いずれにせよ(1)の①の裁判がされないというものと伺いました。
  ただ,そうしますと,(2)の①のイで,一定の期間までにその旨の届出を,その所在等不明共有者がすることということですから,実は私だとか,実は私はここにいますというような場合には,しかし,一定の期間までという限定が掛かっておりますので,期間を超えた場合どうなるかという問題はあり,かつ(1)の④で,持分を取得したときは所在等不明共有者が請求することができるということですから,後に判明して請求するという事態もあり得るということで,一定の期間内に出てこなくても,後に登場したときは,この金銭調整でいくという考え方がとられているように思うのですけれども,そういう理解ではないのでしょうか。それで,(2)の③のウの方は,(1)の②で届出をしたときはできないということになっていて,届出はされたけれども,期間の要件を満たしていないので,そのときは届出がない形にするために書かれているのだと思いますので,したがって,①のイとは少し扱いが違うというのは分かるのですけれども,扱いが違うという内容が果たしてそういうことなのかということを改めて確認させてください。さらにはその関係で,(2)の②については登記簿上,氏名,名称が判明している共有者に対しては,登記簿上の住所又は事務所に宛てて通知を発するということになっているのですけれども,対象事項として,①のイは除くとなっています。ただ,所在等不明共有者の中には,およそ誰か分からないという場合のほか,誰かというのは名前は分かっているけれども,所在が分からないという場合があって,その場合には登記簿上から氏名や名称は分かります。そこに住所が,その登記簿上は明らかになっているときには,その通知をするとなっているときに,この所在だけが分からないという人に対しては通知しないということでいいのかどうか,一定期間経過後は駄目だということになるときには,①のイを除かないのではないかという気がしまして,一方でまた更に細かいことを言うと,②で①(イを除く。)ならば,対象者も限定しなければいけないのではないかということで,少し平仄を合わせる必要があるのかなと思っております。
  それで,もうついでに申し上げてしまいますと,改めて平仄を合わせるように表現をお考えになるということですので,15ページの10の(2)の①について,ここでア,イ,エということで,ウとオが除かれているのですが,これはウを除く趣旨だというのは分かるのですけれども,オを除くと,次の④から⑥までの,⑥はオについての記述ではないかと思われるので,⑥も除くのかなと思います。全く誤解しているかもしれません。平仄は合っているのか,いや,このままでいいのか,考え直した方がいいのかということは改めて検討していただければと思うのですけれども,一定期間経過後にイの異議が出たときの扱いだけは,内実が違ってくるかと思いますので確認させていただければと思います。
○脇村関係官 大変すみません,誤記の点はあると思いますので,もう一回そこは確認させていただきたいと思います。その上で,最後の点は恐らく中身のお話だと思うのですが,私としましては部会資料を作った趣旨としては,裁判で入れてきたケースについては,もうそれは実体法上の要件がないと言わざるを得ないのかなと思っていますし,一定期間,届出がなかったからといって,後で判明したのに,もうやはり持分移転するのだというのはさすがに難しいのかなと思っておりまして,そういったことを考えておりました。
  もちろん,では,期間を区切るのは何でなのだという御指摘なのだろうと思いますが,やはりそこは早く届け出てくださいよというメッセージを出した方がいいのではないかと思っていまして,例えば失踪宣告なども,一定期間までに生存届出すべきことということで公告することになっています。ただ,失踪宣告も,恐らく届出期間を過ぎても,私,実はここにいますということが出てくれば,それは失踪宣告しないのだろうと思いますので,その期間を定めることと,実体要件との絡みは,そういった整理もあるのかなというふうに考えていたところです。
  あと,登記簿上のものについて,そういった意味で,通知しなくていいかという点につきましては,いずれにしても,実体法上の要件の関係で,登記簿上の住所に住んでいないということは確実に調査をしないといけないと思っていますので,それは通知とか,そういった対象で記述しなくても,実体法上の要件として当然調査することになるだろうと思っていました。ただ,そうだとすると,この通知の共有者から所在等不明共有者を抜いた方がいいのではないかという御趣旨だと思いますので,ちょっと書き方は少し考えさせていただきたいと思います。
  部会資料の趣旨としては,以上でございます。
○山野目部会長 沖野委員,お続けになることがあればお話しください。
○沖野委員 結構です。今のご説明で趣旨は分かりました。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。
○佐久間幹事 今のことに反対ではないんですけれども,ちょっと戻って恐縮ですが,9ページの5の(2)の②も,私は先ほど,「イの異議の届出をしないときに」と書いた方がいいのではないかというふうに申し上げました。しかし,今の脇村さんの話ですと,イの一定の期間までにというのは,ここも実は意味がなくてというか,がちっとは定まった要件ではなくて,とにかく裁判が行われている間に異議というか,ここにいますとかといったことが出てきたら,もうこの裁判はしないということになるということでしょうか。平仄を合わせるとそうなると思う。それだったら,それでいいのですけれども,確認だけお願いします。
○脇村関係官 先生おっしゃったのは,今,5ですかね。
○佐久間幹事 5です。
○脇村関係官 5の(2)のイだと思うのですけれども,ここについて,確かにどうしようかという問題はありまして,先ほど言いました,持分取得のケースとは若干意味合いが違ってくるのではないかという意識もありまして,持分の管理行為の特則については,期間までで,それはセットされるべきではないかという意見が,多分今までの議論からするとあるのかもと思っていましたので,私としてはそういう,すみません,明確に意識したのは今なのですけれども,ここについてまで,後で期間過ぎてまで言ってきていいんですというのはどうなのかということは思いました。ただ,それが表現できているのかという問題はあるんですけれども,ちょっと工夫できるかどうかは考えてみたいと思います。ただ,なかなか字で書けなさそうな気もするので,頭の整理としてやるのか,その意味でちょっと改めて整理はしていきたいと思います。
○佐久間幹事 分かりました。ありがとうございます。
○山野目部会長 木村幹事,どうぞ。
○木村(匡)幹事 ありがとうございます。
  8の「相続財産に属する共有物の分割の特則」の規律の関係で,実務的な観点から3点ほどお伺いしたいと思います。
  まず1点目ですが,共有物の帰すうについて,地裁の共有物分割と家裁の遺産分割の各判断に齟齬が生じてしまった場合の処理に関してどのように考えるかについて,教えていただければと思います。2点目として,相続開始から10年が経過したものの遺産分割手続において具体的相続分の主張が可能な場合で,共有物分割手続と遺産分割手続が併存している場合というのはどのような処理になっていくのかについて,教えていただけますでしょうか。
  3点目として,そのようなケースで遺産共有部分を共有物分割訴訟の中で分割したが,当事者の一部が民法906条の2の同意をしなかった場合,共有物分割訴訟の結果が残余の遺産分割にどのような影響を与えるのかについてどのように考えるかにつきまして,教えていただければと思います。
○脇村関係官 脇村でございます。ありがとうございます。
  確か,この論点を取り上げた際にも御質問いただいていたところだと思いますので,ちょっとかいつまんで,今考えているところを説明させていただきますと,共有物分割の帰すうが,結論について齟齬が生じたケースがあると思います。
  そういったケースについて,パターンとしては共有物分割が先にされて,例えば共有物分割で共有物の全部を相続人1人が全部取ってしまいますよみたいな判決をした後に,遺産分割で相続人の1人が,別の相続人が遺産持分を取ってしまいましたというような,そういった帰属先がずれてしまうケースはあると思います。恐らく実体法的な整理だと思うのですが,共有物分割で完全に持分が処理されて,それはもう遺産でなくなってしまったということですと,後者の審判はその限度で空振り,遺産分割はされない,遺産分割がないものについて遺産分割されたというのと同じ処理をされるのかなと思います。恐らく現行法でも,第三者が全部取ってしまって,遺産分割はそれを無視してやってしまったケースは同じようなことが起きるんだと思いますが,それと同じ処理かなと思います。
  逆に遺産分割が先行したパターンですと,遺産分割で特定の人が全部取得したケースについて,かつ登記もされますと,本当はその人だけを相手を共有物分割すればよかったのを無視してやってしまったということで,そういった適格を間違ったケースはどうするんだとか,あるいはそもそも持分割合をずれてやってしまったので,恐らく審判自体がどうこうというよりは,その後の判決の適否が問題になってくるのかなと思います。すみません,先ほどのケースでいっても共有物先行でも判決の効果は影響ないと思います。その上で,登記がされていないケース,先に遺産分割されて登記されなかったケースは,恐らく共有物分割は一応登記基準でやるという判例がございますので,無視してやったのが有効に成立をして,ただ,あとは持分の帰すう自体は登記の先後で普通に決まるのかなと。ただ,事後処理は,遺産分割内部は,事後処理をきちんと不当利得等で処理してくださいということになるのかなと思います。
  そういった意味で,前回も少し議論ありましたが,そういった齟齬を生じないようにしていくのは重要なことかなと思いますので,我々としても今後改正する際には,今までも同じような問題はあったので,情報共有は大事だったのですけれども,当事者にはきちんと適宜適切に裁判所に伝えてフィードバックできるようにしてほしいなと,当事者には思うということを周知していくのかなと思っています。
  また10年経過して,具体的相続分の主張が可能なケースがございます。結局,きちんと異議を出してくれるのが一番大事なのですけれども,そういう意味で,異議を適切に出してやってくださいと。ただ,異議を無視してやってしまったケースは先ほどと同じ処理になりますので,いずれにしても異議を,具体的に主張したいのであれば,それは遺産分割しているので,これでやめてくださいということを当事者にきちんと言って,変なことが起きないように相応にやってくださいということかなと思います。
  ただ,いずれにしても結果的にやってしまって,共有物分割をやって,その後,具体的相続分の算定するときどうするのだという問題は理論的にはあるのかなと思いますが,共有物分割は持分の交換の場合は一種の持分譲渡に近い発想ですので,そうしますと,結局何が起こっているかといいますと,相続人の1人が自己の持分を処分した場合と同様の状況が起きている。それについて,先般の相続法改正ですと906条の2で,いろいろな解釈がありますけれども,いずれにしても,全員の同意があれば組み込めるけれども,全員の同意がなければ駄目ですよという話が出てきます。そうすると,結果的に具体的相続分で取りはぐれるケースがあるということが言えますので,そういう意味で,今回そういったことも込み込みで,この異議の申出を入れておりますので,本当に具体的相続分がある,したいというときについては,できるだけ異議申出をしてくださいと。していないと,後で問題が起きますよということは伝えていきたいなと思っています。
  そういう意味で,今回のスキーム全体について言いますと,やはりそもそも共有物分割をやるというときに遺産分割が併存しているケースがどれだけあるのかというのは若干ありますけれども,併存しているケースについて,別々にやるべきケースについてはきちんと異議を申出すべきですし,逆に申出しないケースについては,当該共有物についてはそちらで処理するという前提で組んでもらえばいいのではないかなと思います。そういった従前から起きていた問題とほぼ同じですけれども,この改正がされた際には,いずれにしてもそういった問題があるということは注意喚起していかないといけないなとは,改正の趣旨を説明する際には注意喚起していかないといけないなというふうには思っているところです。
○山野目部会長 木村幹事,お続けください。
○木村(匡)幹事 ありがとうございました。確認できましたので結構です。
○山野目部会長 ありがとうございます。
○今川委員 今の木村幹事の三つ目の御質問についての関連なんですが,8の共有物分割の特則だけではなくて,9の不明共有者の持分取得,それから10の不明共有者の持分譲渡の制度について,後で出てくる第4相続の3の遺産分割に関する見直しで,10年経過しても具体的相続分を主張することができる場合というのがあって,前の部会では,その場合には,共有物分割の特則とか持分取得,持分譲渡の制度を何とかストップさせなければならないということも議論されたと思いますが,ただ,今回,8・9・10のそれぞれの規定の中には単に10年の経過としか書かれていないので,遺産分割の見直しとの関係がちょっと読み取りにくいので,もう少し読み取りやすいような規定ができないのかということであります。
  それと,今,脇村関係官が異議について述べられましたが,今回,共有物の分割の特則と,持分取得について,他の共有者が異議を申し出ることができるという制度が明確に入りました。持分譲渡については,異議の制度がなくても,相続人全員が持分譲渡することが停止条件となっていますので,10年経過しても具体的相続分による遺産分割協議を行うことができる事由を有する共有者は,自分が持分譲渡しなければ,持分譲渡の裁判の効果がなくなるので,それはそれでいいと思います。しかし,共有物分割の特則と持分取得について異議を申し立てるためには,遺産分割の請求をした上で異議を申し立てるというのが前提になっていると思います。そうすると,遺産分割の請求することができない事由のある相続人に対して,遺産分割を請求してから異議を申し立てろということになりますが,それをどのように理解していいのかというのが分かりにくかったので,御説明いただければと思います。
○脇村関係官 ありがとうございます。
  そもそもやむを得ない事由で一番想定していましたのは,死んだことも知らないとか,そういった客観的状況を介してできないケースを考えています。そういった意味で,通知まで来た上でできないケースが本当にあるのかと言われると,多分ないのだろうと思います。そういった意味で,やむを得ない事情があるケースについて,確かに結局気づいてしまって,やらなければということはあると思いますので,この共有物分割の特則なり,この9ページの持分の取得,今回の今川委員との議論を踏まえて,遺産分割請求をして異議で止められるという制度を同じように入れさせていただきましたので,9の②でですね。そういう意味で,共有物分割の特則,あるいは持分の取得については異議によって止められる制度を入れていますので,具体的相続分をやりたいというケースについては,これである程度カバーできるのだろうと思います。もちろん残部がありますので,そっちでやればいいやということでしないというのも,ほかの遺産が残っているので,いいやということもあるとは思いますけれども,手続としては,確かに10年にしていますけれども,そういった事情があるケースについて,通知をした上で異議申出することによってカバーできるのではないかなというふうには理解しています。
○山野目部会長 今川委員,よろしいですか。
○今川委員 はい。
○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。
  そうしましたならば,部会資料51の「第2 共有等」でお諮りしている諸事項については,本日,委員,幹事からお出しいただいた指摘を踏まえて議事の整理をすることにいたします。
  本日は多くの委員,幹事から考え方の整理や字句の推敲について有益な御指摘を頂きました。字句の推敲の関係でもう一つ付け加えておきますと,持分に応じて按分となっているところと,持分の割合で按分してとなっているところがあったりいたしますから,そういった点も含めてもう一度見直しをするということにいたします。どうもありがとうございました。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立