法制審議会民法・不動産登記法部会第2回会議 議事録

 土地所有権の放棄については,ここまでといたしまして,続きまして,部会資料3で審議事項を用意しております共有制度の見直し(1)に進むということにいたします。
 部会資料3のは,分量がすごく盛りだくさんでございます。部会資料3の中の,ひとまず第1の1から第1の4までの範囲について,事務当局から説明を差し上げます。
○脇村関係官 事前にお送りさせていただいておりますので,項目について簡単に御説明させていただきたいと思います。

第1 通常の共有における共有物の管理

要綱案

 民法第252条の規律を次のように改めるものとする。

① 共有物の管理に関する事項(共有物に2①に規律する変更を加えるものを除く。②において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
② 裁判所は、次に掲げるときは、ア又はイに規律する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
 ア 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
 イ 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
③ ①及び②の規律による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
④ 共有者は、①から③までの規律により、共有物に、次のアからエまでに掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(次のアからエまでにおいて「賃借権等」という。)であって、次のアからエまでに定める期間を超えないものを設定することができる。
 ア 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年
 イ 前号の賃借権等以外の土地の賃借権等 5年
 ウ 建物の賃借権等 3年
 エ 動産の賃借権等 6箇月
⑤ 各共有者は、①から④までの規律にかかわらず、保存行為をすることができる。

 4 共有物の管理者
 共有物の管理者について、次のような規律を設けるものとする。

① 共有者は、3の規律により、共有物を管理する者(②から⑤までにおいて「共有物の管理者」という。)を選任し、又は解任することができる。
② 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。③において同じ。)を加えることができない。
③ 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
④ 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
⑤ ④の規律に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

 5 変更・管理の決定の裁判の手続
 変更・管理の決定の裁判の手続について、次のような規律を設けるものとする。

① 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イの期間が経過しなければ、2②、3②ア及び4③の規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。
 ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。
 イ 裁判所がこの裁判をすることについて異議があるときは、当該他の共有者等(2②の当該他の共有者、3②アの他の共有者又は4③の当該共有者をいう。)は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。
 ウ イの届出がないときは、裁判所がこの裁判をすること。
② 裁判所は、次に掲げる事項を3②イの他の共有者に通知し、かつ、イの期間が経過しなければ、3②イの規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。
 ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。
 イ 3②イの他の共有者は裁判所に対し一定の期間までに共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべきこと。
 ウ イの期間内に3②イの他の共有者が共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにしないときは、裁判所がこの裁判をすること。
③ ②イの期間内に裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにした他の共有者があるときは、裁判所は、その者に係る3②イの規律による裁判をすることができない。
(注)これらの裁判に係る事件は当該裁判に係る財産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

 6 裁判による共有物分割
 民法第258条の規律を次のように改めるものとする。

① 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
② 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
 ア 共有物の現物を分割する方法
 イ 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
③ ②に規律する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
④ 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

1 共有者の同意と共有物の管理に関する行為

 まず,第1では,通常の共有における共有物の管理を取り上げており,1では,共有者の同意と共有物の管理に関する行為について御検討をお願いしているところです。
 補足説明にもございますとおり,民法では,共有物を変更・処分するには全員の同意が必要である,あるいは保存行為については単独ですることができる,変更及び保存行為を除く管理に関する事項は過半数で決することができるといったことが規律としてありますが,ここの資料では,この大きな枠組みについては基本的に維持しつつも,不必要に共有者全員の同意を要求することで,問題となっている行為をすることができないといったことを回避するなどの観点から,問題となり得る個々の行為について,解釈の明確化等を含め,検討することを提案しております。

例えば,下記の①から③までの行為については,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決することができるようにすることについて,どのように考えるか。
① 各共有者の持分の価格に従ってその過半数で決することができる事項についてその規律に従って一定の定めがされた場合に,この定めを変更すること。
② 特段の定めなく共有物を利用(占有)する者がある場合に,共有物を利用(占有)する者を変更すること。
③ 共有物につき第三者に対して賃借権その他の使用を目的とする権利を設定すること。ただし,存続期間が民法第602条各号の定める期間を超えることはできないものとする。

 例えばということで,本文では①から③ということで,各共有者の持分の価格に従って,過半数で決する事項について,一定の定めがされた場合に,それを変更することですとか,特段の定めなく共有物を利用する者がある場合に,共有物を利用する者を変更すること,あるいは共有物について,第三者に対して賃借権その他の使用を目的とする権利を設定すること,こういったことを取り上げておりますが,御検討いただければ幸いです。

2 共有物の利用方法の定めの手続

 8ページにいきまして,2では,共有物の利用方法の定めの手続を取り上げております。
 先ほど御説明させていただきましたが,民法では,管理に関する事項については,基本的には持分の過半数で決することができるというふうに定められているところですが,この過半数で決するということの意味につきまして,学説等の中には,共有者全員での協議,話合いを経なければならないという意見もあるところでございますが,この意見によりますと,例えば共有者の中に所在等不明の者がいる場合には,協議をすることはできませんので,なかなか利用方法を定めることができないということになり,そうしますと,やはり問題があるのではないかということで,ここでは,過半数を有する者の意思に合致すれば足りるとすることについて,そのことを明確化することについて,御検討いただきたいということを御提案させていただいております。

3 共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法

 次に,同じページの3でございますが,ここでは,共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法を取り上げております。
 共有物の管理に無関心な人,無関心な共有者が賛否を明らかにしない場合や所在が不明である,そういったことから共有者に賛否を問うことができない場合には,そういった不明共有者の同意を得ることができませんので,なかなか共有物の管理に関する事項,変更・処分を含めた管理に関する事項を定めることができないということになってしまいます。
 そこで,この資料では,催告をしても共有者が賛否を明らかにしない場合や,所在が不明であるため共有者に賛否を問うことができない場合に,共有物の利用が阻害されることを防止する観点から,共有者の手続保障を図りながらも,変更・処分や管理行為,こういったことをできる仕組みについて設けることができないかを検討することを御提案させていただいているところでございます。
 また,この補足説明にも書かせていただいていますが,この問題を検討する際には,先ほど言いました所在不明というのはどういったものですとか,そういった探索,所在者,共有者の探索の在り方についても御検討いただく必要があると思いますので,併せて御検討いただければと思います。
 また,(注)にも書かせていただいておりますが,公的機関による事前審査,こういったことについても御検討いただければ幸いでございます。

4 共有物の管理に関する行為と損害の発生

 次に,12ページにいきまして,4では,共有物の管理に関する行為と損害の発生を取り上げております。共有物の管理に関する行為がされることによって,同意をしていない共有者に損害が生ずることがございますが,それに対応するため,本文のような案について御検討いただければ幸いでございます。
 簡単ですが,説明としては以上です。
○山野目部会長 部会資料3の第1の1から4の説明を差し上げました。
 御意見を頂くに当たりましては,これ全部というのは分量が多過ぎますから,初めに第1の1,通常の共有における共有物の管理の部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。

1 基本的な枠組みと個別の行為
⑴ 民法は,共有者間の利害等を調整しながら,共有物の有効な利用・管理を実現するために,次の規律を設けている。
① 共有物の「変更」をするには,共有者全員の同意を要する(民法第251条)。
② 「保存行為」は,各共有者が単独ですることができる(民法第252条ただし書)。
③ 「変更」及び「保存行為」を除く「管理に関する事項」は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する(民法第252条本文)。
 なお,ここでいう「変更」は,田畑を宅地とするものとし,又は建物を改築するなど目的物を物理的に変更することを意味するが,裁判実務・学説では,共有物全体について売却その他の法律上の処分をする場合についても,同様に共有者全員の同意を要するものと解されている。その説明としては,法律上の処分も民法第251条の「変更」に含まれるとするものと,「変更」には含まれないが,共有物全体を処分することは共有者全員の持分権を処分することであり,当然に共有者全員の同意が必要になるとするものがある(以下では,法律上の処分も含む際には,便宜上,「変更・処分」と記載している。)。

⑵ 上記のような民法上のルールは,基本的には,妥当なものであると解される。もっとも,そのルールを適用する場面をみると,問題となる行為が変更・処分に該当するのかについて実務上議論が分かれているため,実際の事案を処理するにあたっては,慎重を期して共有者全員の同意をとらざるを得ず,共有者の一部に反対する者がおり,又は共有者の一部に所在等が不明な者がいて全員の同意を得ることができない場合には,当該行為を実施することを断念せざるを得ないといった事態が生じている。また,現在の解釈では,一般的に変更・処分に該当すると解されているものであっても,その中には,本当に共有者全員の同意を得なければすることができないのか,持分の過半数で定めることとすべきではないのかについて再点検すべきものもあると考えられる。
 そこで,上記の民法上のルールを基本的に維持しながらも,不必要に共有者全員の同意を要求することで,問題となっている行為をすることができないことを回避するなどの観点から,共有者全員の同意が必要であるのかについて解釈が分かれている行為について,その解釈を明確にすることや,共有者全員の同意が必要と解されている行為について,その解釈を見直すことについて,検討する必要がある。特に,本文①から③までの行為については,検討する必要性が高い(詳細は,後記(補足説明)2参照)。

「1 共有者の同意と共有物の管理に関する行為」に対する意見

蓑毛幹事 今回のこの第1の1を議論する意義というか,どの範囲で議論するかということのお考えを,もう少し説明していただければと思います。
 勝手に推測するに,この後議論する新たな制度,共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法であるとか,あるいは,共有物の管理者の制度を設けるに当たって,それがうまくワークするために,何か管理行為なのか,何が変更・処分行為なのかということを明らかにしておくことに意義があるのかなと思いました。一方で,では,それをどこまで,どんな範囲で,議論するのか。特に,部会資料3の5ページに書かれていることは昭和41年最判の解釈を変えるという意味なのか,共有不動産に共有者の1人が住んでいて,その人に明渡しを求めることが出来るのか出来ないのかということは,実務的にも非常に大きな問題になるものですから,どこまで掘り下げて議論されるつもりなのかということが気になりましたので,その点を御質問したいと思います。
○山野目部会長 事務当局から,資料作成の意図の御説明を補足ください。
○脇村関係官 資料の作成の意図としましては,まず,この後に出てくる同意,明確に同意がないケースについても一定の行為をできるようにするということを議論することにしておりますが,そもそも,どの行為が過半数でできるのかについては,ある程度明確にすべき問題であるんだろうなと思っています。
 特に,今先生がおっしゃった,どういったときに利用できるのか,明け渡しも含めてですね。こういったものについて,当局としましては,やはり,後で変更できるかどうかによって,いろいろとその定め方の仕方も変わってくると思いますので,そういった意味では,きちんと議論をしていきたいと思っております。
 今先生のおっしゃっていた中で,先ほど最判の話があったと思うんですが,この①,②というのは,そういう意味で,似たような話であるわけでございますが,既存の,現在のところ住んでいらっしゃる方についての変更をどうするのかについても,ここの資料自体は,ある意味,結果的にはというか,変更できるということをについて検討することも指摘しているところです。
 ②についての,部会資料3の5ページの最判との関係についてですが,これは異論があるかもしれませんが,最判の読み方は,人によって多少温度差があるような気がしていまして,私自身,この部会資料を作る際には,あの最判は,共有の利用方法の定めがないケースの判例ではないかと思っており,そうすると,利用方法の定めをどういった場合にできるかとは,本当はリンクしないのではないかという気もしているんですけれども,他方で,あの最判は,過半数を持っている人でも追い出すことはできないという結論でございますので,ここで検討をお願いしている提案は,過半数で誰が利用するか決められる,その意味で,利用者を変更できるということまで含めて議論させていただいているところですので,結論が変わってくるのかなという気は若干していますが,そこも含めて,本当にそれでいいのかということは,是非御検討いただきたいというふうに思います。
○山野目部会長 蓑毛幹事,どうぞお続けください。
○蓑毛幹事 今脇村さんがおっしゃったことがよく理解できていないのですが,共有者の過半数でもって利用方法を改めて定めれば,昭和41年最判の結論とは違って,明け渡しを求めることができるということですか。
○脇村関係官 まず前提として,あの最判の読み方だと思うんですけれども,ここで議論をしようとしている事後に定めをする場合のな議論ではなくて,まず事前に,例えば,この人が利用できますよと定めた後に,それを無視して違う人が住んでいたケースについて,その定めに基づいて明渡しを求めることができるかというのが問題になると思うんですけれども,恐らくあの最判自体は,そこについて,特定の考えを示したというよりは,そのケースは想定していない,定めていないケースだと思いますし,そうすると事後に定めをする場合も同じではないかと。
 ただ,その読み方として,本当にそうなのかというのは,多分議論のあるところですので,部会資料としては,先ほども言いましたとおり,あの最判は約束をしていないケースですので,今回の議論は,約束し直すことをできますかねということを提案しているので,矛盾しないのではないかと記載をしているのですが,是非民法の先生方の御議論を伺わせていただきたいというふうに思っております。
○山野目部会長 民法の先生方や,あるいは……では,蓑毛幹事,どうぞ。
○蓑毛幹事 いやいや,民法の先生方でなく,私が発言するのも何ですが。昭和41年最判は,「少数持分権者は,自己の持分によって,共有物を使用収益する権原を有し,これに基づいて共有物を占有するものと認められる」と判示しています。だから,共有者の過半数で利用方法を定めても,明渡しを求めることはできないのではないでしょうか。ただし,その人は他の共有持分者の利用権限を害しているので,損害賠償等には応じなければならない。もしこれを抜本的に解決したいのであれば,共有物の分割請求を行うしかない。恐らく実務も,共有者の過半数で決めさえすれば明け渡しを求めることができるという前提で動いていないように思うものですから,申し上げた次第です。
○佐久間幹事 実務的にはそういうふうに動いているんだろうなと思いながら,私はこの原案に賛成の立場から,ちょっと申し上げたいと思います。
 ただ,その前に,この同意あるいは共有物の管理に関する行為について,例えば①から③までの三つが挙がっているのですが,これだけを解決することでいいのか,あるいは,少なくともこの三つだけは規定を置くのがいいのかはよく分からないということを申し上げた上で,私はこの方向がいいのではないかと思うということを,申し上げたいと思います。
 今,御意見にございましたとおり,例えばですけれども,現在少数持分権者が占有をしている場合に,多数持分権者は過半数決定によって立退きを求めることができるかというと,恐らく一般的には,できない,あるいは少なくとも容易にはできない,正当な理由がないとできない,と考えられているのではないかと思うんです。
 ただ,私が常々疑問に思っておりますのは,自分の持分に関しましては,確かに共有物全部の使用収益をすることはできるわけですけれども,他の共有者の持分に関しましては,これは適法な決定がなく行われているとすると,一種の不法占有なのではないかと思います。また,これは①,②に関わるんですけれども,一旦決定を得て適法に占有をしている場合も,例えば無償で使用しているときには,確かに適法に無償で使用しているわけですが,単独所有者が所有する物件について,無償で使用している人よりも厚い保護に値するという理由が,私には実は分かりません。
 また,適正な対価を支払って使用しているという場合も,単独所有の物件でありますと,言わば賃貸借に当たる場合なのではないかと思うんですが,その場合に,賃借人に与えられる保護よりも更に一段厚い保護が与えられるということも,少数持分権者には自分の持分があるということによってどうして正当化されるのかというのが,私にはよく分からないんです。
 そこで,その分からないということを前提とした私なりの整理によりますと,誰が占有使用するかに関する定めの変更自体は,全くパラレルに考えられるのかどうか分かりませんが,例えば単独所有者が占有者に明渡しを求める場合に,言わば,明渡しを求めようと決めることに当たるのではないかと思うんですね。
 ただ,明渡しを求めることを決めて,権利を行使したとしても,相手方にその権利行使を妨げる正当な理由というか権原があれば,それは通らない。例えば,賃借人の保護の規定があるのであれば,それは通らないというのと同じことが,ここで問題になるのではないかと思うんです。
 不法占有者であれば,占有を続けることのできる権原はないので,明け渡さなければならない。使用貸借の場合も,例えば使用貸借の目的が達せられているというようなことであると,解除の意思表示をされた場合には,明け渡さざるを得ないわけですから,それと同じ状態になるのではないか。これに対して,例えば建物賃貸借では,賃貸人は,正当な理由がないと,そもそも解除はできませんし,期間満了の場合も,正当な理由がないと更新を拒絶することができず,結局明渡しの請求はできないというようなことが借地借家法に定められています。共有の場合の少数持分権者の占有についても,こういった場合と同様の保護を与えればいいのではないかと,私は考えております。
 その意味で,この①,②,③は,そもそも共有者が合理的に共有物を管理していくということだとすると,各共有者はどういう権利を持っているのか,どういう行動をその権利に基づいてとることができるのかということを整理する,その材料になるのではないかと思っております。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 今の関連の御意見,御発言は,この時点で頂いておいた方がよいと感じますから,この関連で御意見がおありの方は,どうぞおっしゃってください。
○中田委員 今の関連といいますか,全体の大きな話という趣旨で申し上げたいことがございます。現在の共有に関する規定は,分割して終了する共有を想定しているのだけれども,現実には存続するタイプの共有が多く存在している,それに関する規律を考えることが必要である,これは1980年代から,山田委員を始めとして指摘されてきたことです。今回の提案も,そういった方向のものかなというふうに考えております。それは存続型であり,その中では団体的な規律というものが重視されるようになってくる。佐久間幹事のイメージしておられるのも,そちらの方向なのかなと感じました。その方向で,今回のように検討していくことには異論がございませんですけれども,検討課題もやはり意識しておく必要があるだろうと思います。
 3点申したいと思います。
 一つは,従来の分割終了タイプの共有に関する規律をどうするのか。取り分け,共有物分割請求制度の改善を検討する必要はなかろうかということです。
 それから,2番目に,存続タイプの共有,あるいは団体的規律が強く及ぶ共有を考えるときに,その対象をどうするのか。不動産だけなのか,動産にも及ぶのか,それとも準共有の規定を通じて,他の財産権にも及ぶのかということです。
 それから,三つ目は,共有以外の制度との関係,あるいは他の制度に及ぼす影響をどう考えるのか。組合あるいは権利能力なき社団,入会財産などとの関係があります。
 つまり,ここで問題となっているのは,所有者不明土地の問題への対応を超えて,共有制度全体をどのように理解するのかということが根本にあるんだと思います。ただいま,蓑毛幹事と佐久間幹事との間で若干の考え方の違いが浮かび上がってきたのは,多分このような根底的な問題を反映しているのかなと感じました。
○山野目部会長 どうもありがとうございます。全休的な検討の取組に当たっての心構えを整理していただきました。
 藤野委員,どうぞ。
○藤野委員 ありがとうございます。
 第1の1のところに関しまして,実務の中で,実際にどうしているかというと,何が管理に関する事項に該当するか分からないので,とりあえず安全策で共有者全員の同意をもらっておこう,という場合も結構多くて,そういう観点からいいますと,全員の同意が必要でない場合について,特に検討していただける,というところは,非常に有り難いと思っております。
 ただ,ここで挙げられている①から③の中の,特に③に関しまして,「共有物につき第三者に対して賃借権その他の使用を目的とする権利を設定すること」を過半数で決することができる,と明記していただけるのは,非常によいのかなと思う一方で,ただし書のところが気になります。これは,飽くまで短期賃貸借の期間の中でということで,下級審判例等も参照されて,こう書かれていると思うのですが,ここについては,共有物の機能に変更を生じさせないような使用であれば,期間にかかわらず,管理に関する事項と考えることもできるのではないかという意見が,既に幾つかの会社から出ております。
 特に,昨年出された「所有者不明私道への対応ガイドライン」の中などでも,例えば電柱の設置であるとか,ガス管の敷設ですとかといった場合で,管理に関する事項として整理されているケースはございます。ここは書き方の問題でもあるとは思うのですが,民法第602条各号の定める期間の範囲内でやるべきというものもある一方で,そうでないものもあると思いますので,飽くまで共有物の機能に与える影響というところに着目して整理していただき,もし具体的に書かれるのであれば,そういった方向で検討していただくのがよろしいのかなと思っております。
○山田委員 ちょっと複数のことを申し上げたいと思いますが,性格が異なるように思います。申し訳ありません。
 まず,この第1の1に書かれていることの性格なんですが,第1パラグラフの最後の3行を見ますと,解釈を明確にすることや解釈を見直すことでどうかというふうに終わっているんですね。これは,法文には手を付けないで,解釈で対応しようということをここで,共同作業しようとおっしゃっているのか,それとも,解釈を明確にするために法文を新たに書きおろすと,解釈を見直す,見直した後のことを法文で新たに書き起こそうということも含んでいるのか。
 見直すべきでない,明確にする必要がないならば,する必要ないんですが,明確にしたり見直したりしようとしたときには,法文で書くということも含まれているのかというのが,これはすみません,質問です。
 付随して意見を言うと,やはりそれがないと,ここで議論しても仕方がないかなと思います。各界の主要な方々が集まっているところで,解釈をこれでいきましょうというふうにすれば,それなりに意味があるのかもしれませんが,余り多くの時間を掛けるものでもないし,本当にそうなるかどうかも分からないわけですので,そういうふうに思います。
 質問がありまして,後半意見です。
 それから,二つ目は,第1の1,あるいは,ここに限らないのかもしれませんが,民法の第2編物権,第3章所有権,第3節共有に置かれるものなのかどうか。これは別に,特別法で外出ししても構わないんですが,要するに,適用対象が共有全部なのか,それとも不動産なのか,土地なのかということで,どうもここは,共有全部で作られているなと思いました。
 そうすると,混和とか,動産が混和して共有になったときにも使われる規定になるので,少し丁寧に考えないといけないなというふうに考えました。ですから,これは,事務当局が今これを作っているところでは,どういうふうにお考えなのかということです。
 それから,最後は,ちょっと今までの質問とは違うのですが,例えば,第1の1の①,②,③のようなのを書き込んでいきますと,かなり詳細な規定を置いて規律しようという姿勢になってくると思うんです。そのときは,共有者全員があらかじめ合意をして定めを置くことで,これと異なる規律を,我々共有者ではこれでいこうというふうにしたときに,認められるのかどうかということについては,最後それは,書くかどうかというのは,またちょっと出口のところの問題があると思うのですが,しかし,どちらで考えるのかということです。
 物権法ですから,強行法なので,当事者の合意は認めないという考え方は,現実にはないのかもしれませんが,非常に単純に考えると,その道が出てきてしまうんだと思うんですね。しかし,そうではなくて,当事者全員が合意をすれば,当事者間でルールを変えられるという考え方はあるように思います。そうすると,どの範囲で変えられるかということも問題になってくるかなと思います。
 そのときに参考になるのが,建物区分所有法には規約で定められることというのがあって,建物区分所有法で書かれているルールを,一方向だったり双方向だったりするんだと思うんですが,あるいは項目によってですが,当事者ですよね,区分所有者が規約で定めることによって,変えることができるというのがありますので,現在の民法には,その点については何ら語られていないんですけれども,詳細な規定を今の時点で置くならば,置くほど,そこについてのさばきをどうするのかということは,やはり考えないといけないのではないかなというふうに思います。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 事務当局に補足説明をお願いしようと考えますが,山田委員から種々御心配を頂きました。
 法制審議会は法律の解釈を確定する場所ではないということは,もとより御注意いただいたとおりでございまして,解釈を見直すことでどうかという記述は,解釈を統一しようということではなく,もしかしたら規定を設ける必要があるかもしれないという御議論をお願いするつもりでおりました。また後で事務当局からもおっしゃっていただきます。
 それから,全般について,共有物という言葉を用いて今のところ,問題提起を差し上げていますけれども,議論の進み具合によっては,共有地の議論になるかもしれない,あるいは共有不動産の議論になるかもしれないという含みは常に持っております。補足説明で常にそのことをお断りしていなかった,若干不手際があるかもしれませんけれども,最終的に,ここでの御意見を集約して,規律上どう表現していくかということを究めていくということになるであろうと考えます。
 それからあと,民法に規定を置くかどうか,249条以下に規定を置くかどうかという問題に関連して,置かれた規定の強行規定性という問題は,補足説明で欠けておりまして,御注意いただき,ありがとうございました。今後考えていかなければいけないであろうと考えますし,それは,ヒントを頂いた建物区分所有の状況との比較とか,中田委員の御発言にあった組合法理や組合の規定の適用関係などと交錯するところをどう考え込むかといったような御指摘とも関係してくるものと思います。
 事務当局から補足説明をお願いいたします。
○脇村関係官 繰り返しかもしれませんが,解釈自体,それは条文化も含めて,検討していただきたいという趣旨でございます。
 また,対象につきましても,中には,不動産に限定しますかどうですかということを明確に書いているものもございますが,当局としては,現時点では,まずは不動産に限定しないことも含めて広目に提案をしておるところですが,当然今後の議論においては,内容によって絞り込んでいくということも想定しているところでございます。
 最後の,先生おっしゃった強行規定どうするかという議論は,共有者間の特約の取扱いをどうするかという問題の一つではないかという気もしておりまして,また先生から,いろいろ教えていただきたいというふうに思っていますが,ここで部会資料,この資料を作る際に,一つだけ考えていましたのは,過半数で決めたことについて,過半数で変えるということは,規律としてあるとして,例えば,過半数で決められることも含めて,全員で決めたときに,正に全員で決めたときに,それを変更するのをどうするのか,あるいは,それをどう引き継ぐのかというのは,別途問題になるのかなとは思っていましたが,ちょっと特約の扱いをどうするかも含めて,また私どもで勉強したいと思います。
○山野目部会長 山田委員,よろしゅうございましょうか。
○山田委員 はい,結構です。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
○松尾幹事 今,部会資料3の第1の1「共有者の同意と共有物の管理に関する行為」の議論をしているわけですが,この後に出てくる第1の3「共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法」の方では,共有者の一部が不明であるとか,意思決定をしないというときに,不明共有者とか意思決定しない共有者がいても,管理に関する意思決定できるように,要件を緩和していく案が準備されていて,私は今問題になっている所有者不明とか,共有者の一部不明の問題に対する対応策としては,非常に重要な部分であると思っています。
 他方,そちらの方で要件を緩和するということとのバランス上,第1の1の通常の共有のところで,さらに要件を緩和する必要がどこにあるかということは,しっかり見極めて,要件緩和の主たる対象を明確にしておく必要があるのではないかと思いました。
 今議論に出ておりました,本来ならば多数決でできることについて,全員で合意したんだけれども,再び多数決でやろうというのは,これはやはり共有者間の合意の問題ですから,最初は全員合意の解釈として考えていくということで対応できると思います。
 それから,ちょっと気になりますのは,部会資料3の2ページ(3)の「なお」から始まる段落の4行目で,現行法上全共有者の同意が必要とされている行為類型についても,持分の4分の3あるいは3分の2でできる類型も設ける余地がある旨の部分です。ここはちょっと問題なのではないかと思っておりまして,これが必要な場面はどういうことかということについて,ちょっと具体的な問題類型を念頭に置いて,検討してみた方がいいかなと思います。
 この後論じることになる共有者の不明,あるいは意思決定しない共有者の問題について,どのように要件を緩和して所有者不明土地問題に対応するかについては,かなり突っ込んだ提案を頂いていると思いますので,そちらの方との関係について,確認しておく必要があるかなと思いました。
 その際,通常の共有ルールについての見直しに関しては,部会資料3では管理,変更,保存を挙げていただいておりますけれども,そもそも共有の最初にある249条の使用について,重要な問題が残されたままになっているように思います。つまり共有者間でまだ何の合意もできていないときに共有者の1人が使い始め,私は持分権に基づいて,共有物全部について使用できるでしょうといったときに,その共有者に対し,他の共有者が,いったん元に戻して,どう使うかを決めてから使用しましょうねということを,いえるのかいえないのかということについて,曖昧な状態であります。しかし,この問題は,共有物の利用をめぐる共有者間の合意の意味に関する根本問題として,変更・管理・保存行為の場合とも関わってきます。それは引き続き,解釈に任せるということでいいのか,それとも通常の共有のルールにについても踏み込んで再検討するとすると,一番曖昧になっている部分についても何か提案すべきではないかということについて,ちょっと気になりましたので,発言させていただきました。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 一番最後におっしゃった問題は,例えば,昭和31年最高裁判所判決の理解ないし,その機能範囲の問題についての検討を深めた上で,規律として表現するものを設けるか設けないかという議論に発展していくものであろうと考えます。その前に御指摘を頂いたことを含め,引き続き事務当局の方で受け止めさせていただきます。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

「2 共有物の利用方法の定めの手続」に対する意見

 そうしましたら,第1の1に続きまして,第2(1?)の2でございますけれども,8ページで問題提起を差し上げている問題でありまして,現在の249条以下の法文には,協議という場面が出てまいりません。取り分け251条で,全ての共有者の同意を取り付ける,あるいは252条で,過半数で意思形成をするという場面への言及がございますけれども,それは何か,集会とか会議とかいうようなものを契機として用意するのか,そういうものを要求しなくてよいのかということについて,必ずしも明確でないという現状理解を踏まえ,問題提起を差し上げているところでございます。
 この2の部分についての御意見を承ります。いかがでしょうか。
○佐久間幹事 協議を経ることを要しないことを明確にするということは賛成なんですが,協議を経ることを要しないということに対応するのが,過半数を有する者の意思に合致しているということなのかどうかが,ちょっとよく分かりません。つまり,意思の合致をそれ自体として,この案は提示しているのか,意思が合致しているということが表されているということを要求しているのか,私は何らかの形で表されていないといけないんだろうと思います。それが一つと,もう一つは,共有者全員について,自己の法律関係を全く自ら知ることのできない状況で決定されているということが,望ましいのかどうかということはあると思うんですね。
 そうだとすると,協議あるいは話合いを経ることを求めるだけの利益ないし権利はない。だけれども,どのような決定がされるのか,あるいはされたのかでもいいかもしれませんが,それを知る利益ないし地位は保障すべきなのではないかと思います。
○山野目部会長 全員が当事者になっている協議を法律行為としてするという契機を絶対的に要求するものではないという方向性を示しているところまでは,文意は明らかであると思いますが,過半数の人たちの複数の意思表示が,ただ同時に並んで存在していればいいのか,過半数の人たちの間の意思を結合させる何らかの容態,法律要件が存在するかという問題についての御疑問の提示,それから,それとは別な問題として,いずれにしても,過半数の人たちが決めたことを共有者全体に情報として行き渡らせる必要があるのではないかという問題提起も頂きました。
 引き続き検討していく事項ですけれども,何か事務当局から補足説明がありますか。
○脇村関係官 前半の方については,ちょっと法的な構成はあれなんですけれども,イメージしていたのは,過半数の人で集まって話をして書類を作るとか,何かの表示行為をイメージはしておりましたが,それをどう表現していいのかというのは難しい問題なんですが,そこはそういう意味で考えていました。
 また,先生がおっしゃった最後の,次の問題として,教えてあげた方がいいのではないかという問題だと思うんですけれども,そこは議論としてあるんだろうと思っておりまして,ただここで書きたかったのは,まず,必ず協議が要るということまで言ってしまうと,正に,本当に動かなくなってきますので,そこは外した上で,なお,知る機会をどうするのかについては,効力とは直接関係ない方向で手当てするということも一つあるのかなとは思っていましたが,是非皆さんの御意見を頂ければというふうに思っております。
○山野目部会長 佐久間幹事は,今のところ,よろしゅうございますか。
○佐久間幹事 はい。
○沖野委員 この点は,今のご提案のイメージとしては,過半数を1人で独占はしていないという想定で,何人か寄らないと意思決定ができないというようなイメージだと思うんですけれども,この規律だと,過半数を有する人が1人いれば,あとは100人いようが何人いようが,その人たちのことは何も気にする必要はないという形になるように思われます。それがいいのかという問題があるように思われます。協議や話合いというのは,同意を取ることまでは要らないけれども,意見表明をする機会であるとか,情報提供を受ける機会だとか,そういう意義があるわけで,そういうものが全くなくして決めるということでいいのかと。
 確かに,所在不明の場合には同意は取れないではないかということであれば,それは所在不明の場合の特則を考えればいいのではないかと思われます。ただそこでも,協議というのが何を指しているのかということによるんですけれども,過半数さえ握っていれば,もうその人が考えることだけで全てを決めていける,この対象となる範囲,つまり過半数でいける分については,ですが。そういう規律を明確化すべきだということだとすると,他の人,過半数を握るに至らない人は分割請求でいくということで,分割でどんどん解消していくのが望ましいやり方なんだということになります。本当にそういうものを想定しているということであれば,それでいいようにも思われます。けれども,果たしてそう言っていいのかと,共有の一般の規律として,それでいいのかというのは,やはりためらわれると思っております。
○山野目部会長 今,沖野委員から明快な問題提起,問題整理を頂いたと感じます。
 これを受けて,御意見がおありの方は,今このタイミングでおっしゃってください。それ以外の点でも結構です。いかがでしょうか。
 お話をかなり明快にしていただいたと感じますけれども,御意見がないのは,しかし難しい問いであるということでしょうか。
○中田委員 思い付きなんですけれども,民法では,組合について,過半数決定と過半数同意とが区別された規律になっております。業務執行については670条で過半数決定で,組合代理については670条の2で過半数同意です。ただ,ここで過半数というのは,組合員の頭数の過半数であって,本日御提案いただいているのは,持分の価格に従った過半数ということですので,そこに組合とのずれが出ていると思います。
 果たして,共有について,頭数ということではなくて,価格の過半数ということで,決定ではなくて同意でいい,協議なしでいいのかどうか。このようなことが,今の沖野委員の御提示された問題であるのかな,頭数ではなくて価格の過半数という点にも,検討すべき点があるのではないかと思いました。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 組合の規律と共有の規律は,頭数でいくか,割合的な一種の投票を考えるかという差異があって,そのことに留意する必要があるけれども,人々が討議し合うという契機,議事が行われるという契機も,それとして重要であるというふうに考えて,共有者間で議事と議決が行われるべきだという発想でいくか,持分の大きさによっては議事は要らなくて,議決が行われればそれで足りると考えるかという問題が,なるほど難しい問題でありまして,1回の会議で皆さんが同じ意見になるということではないかもしれませんけれども,今後の事務当局の整理に反映してまいりますから,この段階でお考えがあったら承っておきたいと思いますが,いかがでしょうか。
○山田委員 これに限らず,一般的な話になってしまうのですが,集団的に利益が帰属する,あるいは法的な効果,負担も帰属するという場合に,多数決で決められることは,いろいろなところに幾つもあります。しかし,そのときには,少数の反対者が意に沿わない結果になってしまうということは仕方がないとして,多数決でやってよいというルールが各所にあるんだと思います。
 しかし,そのときには,全部探せばいろいろなのがあるかもしれませんが,最近そういう議論をするときには,やはり少数の反対者に対しては,ちょっといい言葉があるかどうか分かりませんが,コミュニケーションを取りましょうということが話題になります。それは多分,事前事後だと思うんですね。あるいは一方でもいいのかもしれませんが。それが別の文脈で語られると,手続保障という話になるのかなと思います。
 したがって,どうもこの8ページの2の3行,共有者全員での協議(話合い)を経ることを要しないことを明確にすることについて,どう考えるか。いいか悪いかと,何か二者択一を迫られているような感じがするんですが,どうもやはり,イエス・オア・ノーでは答えられないのではないんでしょうか。やはり方向としては,この補足説明の中にある,他の共有者の中に所在不明等が不明である者がいれば決められない。この隘路(あいろ)は,やはり今回,時間を掛けて検討するわけですから,そこは乗り越えるべきなんだと思うんですね。
 だけれども,乗り越える方策として,協議,話合いを経ることを要しないとし,それを明確にするというのではないんだろうなと思います。何かもう少し,ちょっと事務当局には,頭で汗をかいてもらわないといけないのではないかなと思います。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 よい言葉かどうか分かりませんが,とおっしゃっていただきましたが,やはりコミュニケーションという言葉が良い言葉であろうと感じます。手続保障は,ちょっと堅いですよね。
 事前及び事後のコミュニケーションか,あるいは事前又は事後のコミュニケーションか,しかし,いずれにしてもそれらについて軽々しく扱うという感覚で議論をすることはできないという観点の御提示を山田委員から頂きましたし,それから沖野委員の御発言で,仮にそこのところを引き続き重く考えていくということであったとしても,所有者不明土地問題などとの関係における政策的な課題の克服は,次の3の問題のところについて,しっかりした規律を仕込めば,それとして克服していくという余地もあるものであるから,そこにも留意する必要があるという御指摘を頂いたところであります。
 2のところについては,今日はこの辺りまでの御議論を頂いておいて,整理をさせていただくことでよろしゅうございましょうか。ありがとうございます。
 それでは,ここで,少しお疲れかもしれませんから,休憩といたします。

          (休     憩)

「3 共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法」に対する意見

○山野目部会長 再開します。
 部会資料3「共有制度の見直し(1)」の第1の3のところについての御意見を承ります。
○蓑毛幹事 第1の3のような同意取得の方法の制度を設けることについて,強く賛成します。
 前回,メガ共有などというような言葉を申し上げましたが,所有者不明土地問題の本質は,所有者が分からないというだけではなくて,その後,調べた結果,非常に多数の共有者が存在することが判明する点にあります。このことは,実務的にも非常に問題になっております。
 共有者が多数になっているために,共有物について関心がなく,管理方法について同意を求めようとしても,なかなか反応してくれない人が多いというケースもありますし,共有者の一部が所在不明,所有者不明の状況になっているものもあります。そういうことを踏まえますと,このような規律を設けることが適切だと思います。
 ただし,1点,更に検討すべきだと思うことがあります。8ページの(注)に,「催告や公告についての公的機関の事前関与の要否につき」ということが書かれています。ここでいう公的機関の事前関与というのは,補足説明等を読む限り,催告や公告が適切になされているのか,また,そのことについて確答がされたのか,されていないかということを,公的機関で確認するという趣旨だと理解しました。
 それを超えて,催告や公告の内容,どのような管理をするかという内容について,ある程度,裁判所等で審査をした方がいいのではないかという意見が日弁連内で出ています。
 つまり,催告や公告をして,確答しない人については,権利保護というか手続保障はしているのだから,それでいいではないかという考え方がある一方で,特に変更又は処分について,潜在的には反対とか,変更又は処分によって不利益を被る人もいるということを考えると,催告や公告の内容に関し,必要性や相当性について裁判所で審査する,非訟手続になると思いますが,そのような手続を経た方がいいのではないかということについて,私自身はまだ今,確定的に見解を持っておりませんが,検討した方がいいのではないかと思っております。
 管理行為については,そのような手続は要らないのではないかという考え方もありますが,管理行為についても,例えば,その管理の方法によっては,共有者に対して,一定額の管理費用を負担せよということになる,それが場合によると,金額が大きくなるということもありますので,管理行為についても,その必要性や相当性について,裁判所の許可を得るということを,今の時点でそうすべきだと申し上げるものではありませんが,検討した方がいいのではないかと思っています。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 3で提案していることについて,全般的な賛成を頂いたのと併せて,注記のところについて,更に考えてほしいという御意見,加えて,更にそれを発展させる形で,管理のことをおっしゃいました。
 管理とおっしゃったのは,一般の言葉使いでいう共有物の管理のことだというふうに受け止めていいですよね。
○蓑毛幹事 この3の提案ですが,③は共有物の変更又は処分についての定めであり,④が,共有物の管理についての定めと理解しました。特に③については,必要性や相当性について,裁判所の許可を得ることを検討してはいかがと思っております。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 おっしゃっていただいたことは,今のようなことですから,ここの3にも関係があります。取り分け注記との関係で,関連があるというふうに感じます。
 それとともに,ただいま12ページの4まで説明を差し上げたところですが,実は13ページから後で,管理権者を裁判所が選解任し,あるいは共有物について,その管理に係る必要な処分を命ずることができるという規律の提案も差し上げているところでありまして,これらの審議とも関連させながら御議論いただくべき事項について,今,問題提起を頂いたと感じます。
○今川委員 私も,先ほど蓑毛幹事がおっしゃったのと同意見です。同意取得の方法については賛成ですし,公的機関の関与は,やはり必要になってくると思います。
 今,新しく規律を設けるわけですから,事後的に裁判所が最終的に判断する,紛争解決するというのではなくて,あらかじめ紛争を防止する仕組みが必要だと思いますし,管理の中にも一定の処分も入ってきますので,そういう場合には,やはり取引の安全の観点も必要だと思いますし,今,山野目先生がおっしゃったように,管理者の選任ということも絡んできますので,公的機関の関与は必要だと思っております。
 それから,所在不明であるということの問題ですけれども,どういう作業をして所在不明とするのかというルールは,一定程度,はっきりさせておく必要があると思います。
 我々実務家からしますと,特殊な場合は別として,所在を捜すというのは,そんなに苦痛ではないわけでして,例外はもちろんあるんですけれども,要はルールがきちんとしているかというところだろうと思います。
 それから,催告,公告の方法ですけれども,登記簿上の名義人に対して,あるいは登記簿上の住所地に通知をするという選択肢も提示されておりますが,登記の重要性,それから登記情報を最新の情報に更新することの重要性を認識するという意味では,一つの方法だろうというふうには思います。
 それから,将来において,戸籍情報や住民情報,住所情報と登記情報との連携が図られて,もしも職権で変更登記が入るというようになれば,それは当然にそうなるんであろうと思います。
 ただ,一方で,今回,デジタル手続法案において,住民基本台帳法の一部改正の一環として,政令改正になると思うんですけれども,住民票の除票の保存期間を現行の5年から150年に延ばすということで,所有者の所在の探索に,かなり利便性が向上すると,こういう環境も整うわけですので,登記簿上の名義人でよしとするか,一定のルールを定めて,所在を探索するかどうかというところは,これから検討はしていくべきだと思っております。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 ただいま衆議院の内閣委員会で審議されている途上の住民票の除票の扱いに関わる制度改革をにらんだ御指摘も頂きました。
 蓑毛幹事から問題提起を頂いた8ページの3の注記のところでございますけれども,ここに注記を添えて問題提起を差し上げている趣旨は,ひとまず最小限は,この催告や公告などの手順が,何といったらいいでしょうか,最小限形式的な手順で,きちんと行われたかという事実の確認が必要だけれども,それですらあっても,単に私人が動いてやりましたというだけではなく,公的機関が関与した方がよいのではないかという意味合いを,少なくとも込めて差し上げています。
 蓑毛幹事からは,更に発展させ,その催告や公告をその状況,あるいは時宜においてすることの適切性というような実質的判断も,場合によっては,してもらった方がよいという仕組み方もあるではないかというお話も頂いたところで,そちらの後ろの方のお話は,御案内差し上げたように,この後に,まだ説明を差し上げていない部分と関連させて議論していただく必要があります。
 単なる事実の形式的確認であるならば,必ず裁判所にしてもらわなければいけないということでもないであろうと感じます。一種の公証事務であるということになりますから。その辺のところについては,この部会資料として,何か特段の方向を前提としてお願いしているものではなくて,皆様方に御議論いただきたいと望みます。議論をオープンにしておきたいという気持ちから,3のところの注記は差し当たり,裁判所ではなく,公的機関というふうに記しております。
 13ページから後の話も関係ありますよ,というふうに,私,先ほど申し上げてしまいましたけれども,もう少し精密に言うと,その辺のところを見極めながら,御議論なさっていただく必要もあるであろうと感じます。
○道垣内委員 後ろに関係するので,今発言すべきかどうか分からないんですが,公的機関の関与について,一言だけ申し上げます。
 結論的に,どういうふうな法制度がいいというふうな,何か強い意見があるわけではないのですけれども,信託法を比較して少しお話ししたいと思います。大正時代にできました信託法におきましては,受託者が悩む場面においては,裁判所にいろいろ相談できる,指示を仰ぐことができる,というシステムになっていたわけです。それは,英米の信託法がそうなっているから,そうなっていたわけですが,それでも英米信託法と比較しますと,ごくわずかであり,平成19年に新信託法を作るというときに,裁判所にどんどん相談をしていく,これは権限ないかどうかというのをあらかじめ聞けるようにしようとか,いろいろ意見は出ました。しかし,裁判所から大反対が起きまして,どういったことを受託者がやれば,より適切に受益者が保護できるかなんていうことが,裁判所に,その都度その都度判断できるわけないではないかと主張されたのですね。私は,もっともな反論だと思っておりますが,そういった反対もあり,現行の信託法は,裁判所があらかじめ,事前の段階でいろいろなチェックを入れて,こうやったらいいのではないのというふうなことに対して,お墨付きを与えるという制度は原則的には存在しないこととなりました。
 これについて,もちろん,それは不適切な立法だったという評価も十分あろうと思います。しかし,日本の法制度において,一つのコンシステンシーが必要であると考えたときに,信託法においては,個々具体的に何をすべきであるというふうな判断というのが,裁判所に委ねることはおよそ不可能であるという判断がなされ,他方で,共有のときには,裁判所にやってもらうといいのではないというふうに言って,みんな,そうだそうだというふうに言うのは,私は若干,どこかにおかしいところがあるのではないかという気がいたします。それでもそれを乗り越えてやろうというならば,もちろんそれで結構なのでして,したがって,私は結論として,何かを主張するわけではないというふうに申しましたが,日本法の中での,そういう一貫性,統一性というものも考慮に入れて,御議論いただければと,いただいた方がいいのではないかというふうに思います。
○山野目部会長 よく分かりました。松尾幹事,どうぞ。
○松尾幹事 ありがとうございます。
 この部会資料3の第1の3「共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法」につきましては,既に蓑毛幹事,それから岡田委員の方から御発言ございましたが,私も全面的に賛成したいと思います。
 その上で,細かな点を3点ほど確認したいんですが,一つは,今回,意思表明をしない共有者とか,所在が不明な共有者の意見を考慮に入れなくてよい理由です。それを正当化する理由として,部会資料3の9ページの(2),(3)に書いていただいていることは,きちんと整理していただきたいというふうに思っております。つまりそういうふうに,共有持分権の効力を制限してよい理由が,(2)の方には,意思表明をしなかったり,不明な共有者の合理的意思に反するとは言えないのではないかということが書かれていて,(3)の方では,さらに,これらの者の権利を制約しないと共有物の利用が阻害されることから,それを防止する観点であることが記されています。
 特に(3)は,やはり非常に重要な点なので,こういう形で共有持分権の効力を制約する根拠は何かということについては,きちんとその理由を整理して確認しておくことが肝要であろうと思いました。
 その上で,細かな要件に関しての確認なんですが,部会資料3の8ページの3の②の中で,「他の共有者の所在が不明であること」という部分があるんですけれども,この中には,所在不明のほかに,そもそも共有者が誰か分からないという場面,例えば,共有者の1人について相続等が生じていて,共有者が分からないという場面も含まれるのかどうかということについて,要件を確認させていただきたいと思います。
 後ほど,共有物自体が相続の対象財産だと,遺産共有ということは出てきますけれども,共有者の1人について,相続等が生じていて現在誰が共有者であるのか不明な場合は,ここに含めていいのかどうかということであります。
 それから,もう1点は,先ほど岡田委員から発言がございましたけれども,確認の手続で,登記簿上の住所に催告等の書面を送付すればよいということですけれども,共有者の全部又は一部が不明の場合に,所有権あるいは共有持分権の効力を制約する類似の例として,土地収用法の場合の不明採決の場合がございます。この場合には,過失なくして知ることができないという要件があります。また,昨年成立しました所有者不明土地利用円滑化法の中では,特定所有者不明土地ということを判断するときに,相当な努力をしても分からないという規定を法律に置き,その意味については,非常に詳細な政省令,ガイドラインが出ておりますので,そういう場合とのバランスをも考慮した上で,この手続上の緩和ということが問題ないかということを確認したいと思いました。
 不明所有者の探索のために過大な負担を課すと,やはり本末転倒になってしまいますので,そこはバランスを確認した上で,客観的に明確な,ここまで確認しておけばいいですよというルールにすべきではないかと思いました。
○山野目部会長 ありがとうございました。
 松尾幹事から多岐にわたる御意見を頂きましたから,それらを踏まえ今後の整理を進めたいと考えます。
 最後の方でおっしゃった,このゴシックで示してある文章の共有者の所在が不明であるということの意味は,御指摘等も踏まえて,これから更に深めていこうと考えます。恐らく,もちろん御指摘があった土地収用法の不明採決の局面であるとか,昨年成立した所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法などの,この局面を扱う規律の先輩に当たるところがありますけれども,どちらかというと,あの系統の法制を参考にしたというよりは,これは民事法上設けようとしている規律でございますから,不動産登記法の70条が,現在既に,登記義務者の所在が明らかでないという概念を用いており,あれと同じ発想で,ここに規律表現のサンプルをお出ししているものであろうと理解します。
 そうであるとすると,所在が分からない場合のみではなく,一種のもちろん解釈から,所有者そのものが分からない場合も含まれると考えられますし,70条の運用の中で積み上げられてきたところを参考にしながら,過失なくして,というふうに正面から書くということにするかどうかを考え込みつつ立案をすることになりますが,仮に書き込まなかったとしても,もちろんその辺のところは運用の中で考慮されていくということになると想像されます。
 今,松尾幹事から御指摘いただいたようなことに注意をしながら,今後,この種類の制度を採用するときの規律表現を考え込んでまいりたいと考えます。ありがとうございます。
○佐久間幹事 今話題になっていることとちょっとずれるんですけれども,3の特に①に関しまして,先ほどの2と組み合わせるようなことは考えられないのかということを,ちょっと伺いたいところがございます。
 それは,今3で話題になっているというか,焦点が当たっているのは,過半数を得たい,あるいは全員同意を得たいときに,不明の方がいる,あるいは答えない人がいるということで,その人たちを除いて過半数に,あるいは全員同意にするための手続ですよね。
 ただ,例えば,2の場合,先ほど沖野委員が言われたことが気になっておりまして,共有者の1人が持分の上では過半数を握っていると。ただ,その場合も,1人では決定できないのではないかというふうなお話がありましたよね。私はできていいのではないかと思っておるんですけれども,ただ,そのときに,私自身が先に申し上げましたことでいうと,他の共有者について,自分の権利が知らないうちに動いてしまっているということはいいんだろうかと,先ほど申し上げたつもりなんですね。
 これを前提といたしますと,例えば過半数を持っている人,あるいは,何人か合わせて過半数を超えている人たちが,過半数でもって決することができる事柄について決定したいというときに,何をもって決定することができ,その決定はどの時点から効力を生ずるのかということを考えた場合,まず,過半数で内部的には決めました,あるいは一人でどうするか決心したとします。そこで決められたことについては,他の人たちが幾ら反対したって,少数なのですから,どうしようもない。ただ,そのようなときであっても,過半数で決めることについては,①の相当な期間を定めて,他の共有者に,管理に関する行為について承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることは必要である。催告をして,承諾を得られたならいいんですが,承諾しないというのであっても,結局それでもって,過半数の決定というのはプロセスとして終わりました,その返事をもって効力を生じました。返事が来なければ,相当の期間を経過することによって,同じく決定,法的に効力を生ずる決定となりました。3の提案は,こういうふうにも使えるのではないかと思いました。
 3そのものについては,全体としては賛成ですが,それと違う用い方をすることは,排除されているのかどうかということをちょっと伺いたいということです。同意を調達するために,要件を満たすためにしかこれは使えないのか,ほかの使い方もあるのかということです。
○山野目部会長 お尋ねの仕方で,今御発言を頂きましたけれども,2と3の関係に関し,御指摘を頂いた2の問題を解決するために3の発想を,言わば移入して問題解決をしていくということは考えられているかということについて,法務省事務当局において,特段の前提とか,何か御案内したいという強いものを持っているものではなく,むしろ今,佐久間幹事に御提案いただいた発想をヒントとして受け止め,今後の議事の整理をしていくということになるものであろうと考えます。
 あわせて,佐久間幹事に御礼を申し上げるとすれば,つまり,先ほどの2のところは,確かに山田委員に明快に整理していただいたように,コミュニケーションは要るか要らないかというふうに,大上段に短兵急に聞かれれば,なかなか要らないと,そんなものは蹴飛ばしてしまえとは,なかなか言いにくいですが,反面,実務なり事業の現場で,様々な悩みを抱えている方々から見れば,コミュニケーションは必ず要る,なおかつ,そのコミュニケーションは必ず重いものですというふうにされたのでは,この2のところの論点が重くなり過ぎて,お話が非常に進みにくいという問題にぶつかります。
 理論的にこう考えられるという側面と,政策的な実効性の確保という面の両方を見て,非常に悩ましい状況になりますけれども,その隘路を打開していく際の一つの,唯一の方途ではないかもしれませんけれども,ありうるアイデアとして,2で考えられているコミュニケーションというものは,それとして重要であるが,しかし,そのコミュニケーションを確保するための様々な工夫として,3で御提示申し上げているようなものも今後組み込んでいくというようなことは考えられてよいという,佐久間幹事から今頂いたヒントは貴重なものでありますから,それも踏まえ,今後,事務当局において議事を整理することにさせていただきます。
 佐久間幹事,ひとまずそのようなことでよろしゅうございましょうか。ありがとうございます。
 引き続き,いかがでしょうか。
○岡田委員 実務の観点からということで申し上げさせていただきますと,本日の前段の前半の議論にありました土地の所有権の放棄の要件のところで,隣接地との境界が特定されという要件が一つ,案として挙がっておりますけれども,このような場面におきましても,実際,隣接地の方と境界がはっきり決まらなくて,処分を諦めるというような場面もたくさんございます。実際にございます。そのような意味からも,このような方策が準備されることは,とても必要な措置だろうというふうには感じております。
 境界の安定は,私どもにとってみれば,安心の根本というふうに考えて,日々業務をしておりますし,そのような観点からも,隣接地の,隣接の方の境界を確認するという行為が,このような形で,今現在は全員の同意をもらってきなさいというような場面もあったりもするので,是非こういう措置は必要ではないかなというふうにも感じております。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 ここでの議論に,もちろん関係することでありますが,改めて相隣関係を議論するときに,今の岡田委員がおっしゃっていただいた観点を再度強調して,御指摘いただければ有り難いです。
 引き続き,3のところについて,いかがでしょうか。
 ひとまずよろしいですか。
○山田委員 質問です。どこかに書いてあるかもしれませんが,申し訳ありません,見付かりませんでした。
 この3のところで,公告が出てきます。公告の方法としては,どんなことを具体的に考えていらっしゃるのか。今の段階で結構ですので,事務局のお持ちのものを御説明いただけませんでしょうか。
○脇村関係官 今のところは,幅広く考えてはいまして,新聞なりインターネット,いろいろ考えているところなんですけれども,恐らく,公的機関が入るかどうかによっても変わってくるのかなという気がしておりますので,もし公的機関は入らずに,民間でやるんでしたら,新聞とかそういう普通の,会社とかでされているケースになると思いますが,ちょっとそこは併せて検討したいと思っていますが,どうしたらいい,先生,何か御意見いただければ。
○山田委員 いわゆる官報,日刊新聞,電子公告という,それですか。
○脇村関係官 そうですね,はい。ただ,公的機関を関与させるかかどうかで大分変わってくると思いますので,それも含めて検討させていただきたいというふうに思っております。
○山田委員 分かりました。
○山野目部会長 よろしいですか。
 したがいまして,公的機関を関与させることにするかどうかという注記のところが,小さな文字で書いてありますけれども,この制度のイメージを作っていく上では重要な論点であって,引き続き検討しなければならないと感じます。
 この3のところ,大変難しい議論ですが,今日の段階で御意見を承っておくことを頂いた上で,検討を続けようと考えますから,更なる御発言を頂きます。いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。今まで御指摘いただいたところを踏まえて,では検討させていただきます。
 続きまして,12ページの4のところ,共有物の管理に関する行為と損害の発生のところについて,御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。
○脇村関係官 少し,資料作成の意図を少しだけ説明させていただきたいと思っていますが,先ほど蓑毛先生から,3の催告,公告の内容について,審査した方がいいのではないかという御意見を頂いたのとも関連するんですけれども,この4について,あえてこういった損害の填補に関する提案させていただいたかといいますと,公告を使ったケースについて,内容それ自体に,事前事後,特に事前に介入するのは難しいかもしれないけれども,他方で,それによってむちゃくちゃなことをされたケースについては,きちんと損害を填補するということが重要ではないかというふうに思っておりまして,この4につきましては,今でもある問題ですが,特にこの3についてのような,催告なり公告の手続を入れる場合には,重要な規律になってくるのではないかというふうに考えているところでございます。
○蓑毛幹事 今,脇村さんからありましたので,私自身の意見を申し上げると,強く裁判所の許可の制度を作ってくれと申し上げているつもりはありませんので,ちょっとその点だけ補足しておきます。
 そういうことも含めて,その先にある共有物の管理者のところもそうですし,例えば,その後の最後のところの売渡し請求のところの金額の妥当性のところであるとか,様々なところでいろいろな問題が出てきますので,そういったところについて,これは要るのではないか,要らないのではないかということをもう少し問題提起をした上で,皆で議論した上でということですので,現時点で私が,先ほどの3のところについて,全てのケースについて,裁判所の許可を求めるべきだと申し上げているつもりは全くありませんので,ちょっとその点を少し補足で申し上げておきます。
○山野目部会長 蓑毛幹事の御意見は,大変よく理解することができました。ありがとうございます。

「4 共有物の管理に関する行為と損害の発生」に対する意見

 ほかにいかがでしょうか。4のところでございます。
○道垣内委員 よく分からないのですが,これ,誰が損害を填補するのですか。決定者ですか。決定に問題があったという場合にでしょうか。また,決定と因果関係がある場合なのでしょうか。私はシチュエーションがよく分からないままなのですが。
○脇村関係官 すみません,そこがなかなかあれなんですけれども,先生がおっしゃっているとおり,当該行為をした共有者と同意をしている共有者が,ずれるケースがあろうかと思います。そういった意味で,どちらにもなのか,あるいは行為をした人だけなのかというのがあれなんですが,一応合意をしている以上は,責任を負うのかなという気もするんですが,すみません,是非御意見いただければというふうに思っています。
○道垣内委員 いや,何というか,それは,例えば共有物の管理のときの善管注意義務違反なのでしょうか。つまり,例えば,1人だけ行方不明の人がいるから,その人については催告で同意を調達したとして,だけれども,そのときのその判断においては,善良な管理者の注意に反することはないとしても,責任を負うのでしょうか。行方不明のその人を抜きにしてやったということが根拠になってでしょうか。
 何に基づいて責任を負っているのか,私にはよく分からないままなんですが。
○山野目部会長 恐らくこの部会資料作成の意図は,先ほどの別な議題のときに出ましたように,法制審議会は別に法律の解釈について意見を述べる場所ではありませんから,放っておいても民法709条の要件が全て主張立証がかなうときに,立証した被害者が当該要件を充足した加害者に対して損害賠償請求をすることができることは当然でありまして,そのことをわざわざ規律表現として設けるとか,ここで御審議をお願いするとかいう必要はありません。
 709条ではカバーできないような局面があり,それが,この前の1から3までの規律を設けたことによって生ずるとすれば,そのことについての付随的な法制上の措置として,必ずしも民法709条の要件を充足していなくても,金銭による補償といったらいいか賠償といっていいか悩む部分があるものですから,補填という言葉を用いていますけれども,そのようなことができるということを,もちろん解釈の提案ではなく,法制上の規律として,こういうものがあり得るのではないかということで,問題提起を差し上げています。
 御案内はそこまでであって,そこから先のものを,何か事務当局として深く考え込んでお出ししているものではありませんから,委員,幹事におかれまして,そのようなきっかけでの議論ならば,こういう面でのこういうことは考える必要があるというような御示唆を多く頂くことがかなえば,これをまた事務当局で受け止め,整理してまいるということになりますから,何とぞお知恵を頂きたいというふうにお願いする次第でございます。
○道垣内委員 それでは,質問しないで意見を述べますが,帰責根拠が不明であり,置くことに反対します。
○大谷幹事 すみません,こちら,ここの部分が,やや分かりにくいところがあったかと思いますけれども,この部会に先立つ研究会の議論では,こういう形で催告をしたけれども答えなかったという人は,例えば不法行為的なことをされることについてまで同意をしたということになりませんかねという議論が元々あって,不法行為責任を問うことができないわけではありませんよということを確認した方がいいのではないかという議論が確かあったように思います。
 道垣内委員の御意見を頂ければと思うんですが,不法行為責任を,これは問わないという意味ではありませんということ,それは当然だということでは,規律を置く必要はないということになるんでしょうし,そこのところがはっきりしないのであれば,明確にするということもあり得るということなのか,いかがでしょうかね。
○道垣内委員 すみません,よろしいですか。
 そうすると,書き方として,いろいろあり得るわけでありまして,つまり,1又は3の検討中の規律に従って,同意をするということは,当該行為の責任の免責の意思を含まないという書き方をするというのが一つであるのかなあ,いやおかしいな,やはり,提案者は,提案による責任なのですかね。いや,行為による責任なのですかね。
 いずれにせよ,大谷さんがおっしゃったことは分かるんですが,4のような書き方にはならないのではないかなという気がいたします。申し訳ございません。
○中田委員 今の大谷幹事の御説明で分からなくなってしまったんですけれども,3の③の規律は,催告又は公告をした共有者は,確答していない共有者以外の共有者全員の同意を得てとなっていますよね。確答しなかった人は,同意したとみなされるのか,それとも全体の中から排除されるのかというのは,私は,むしろ全体から排除されるのかなというふうに理解していたんですが,そういう理解ではないんですか。
○大谷幹事 その御理解自体は,そのとおりでございます。排除されるということでございます。
○中田委員 それはそれでいいんですね。
○大谷幹事 はい。
○中田委員 そうすると,明示的な同意をした人と,全体から排除された人と2段階あるわけですね。そのうち,明示的に同意をした人が責任を負うことになるとすると,その根拠は何かということが余りはっきりしないというのが道垣内委員の御指摘で,会社法において,決議に賛成した役員の責任というのもあるわけですが,それと同じようなものなのか違うのかとか,やはり誰が誰に対して,なぜ請求できるのかということを整理していただくとよろしいのではないかと思います。
○脇村関係官 元々の議論というか,想定していましたのは,この共有者はそれぞれ,持分に応じて利用する権利を有しておりますので,その定め方によって,ある1人が,全く使えないですとか,そういったときに,何らかのそういう権利侵害的なものが発生したときについては,何らかのそういう責任を追及できてもいいのではないかということを考えておりました。
 それはある意味,共有者間での権利侵害してはいけないという義務的な発想,共有者の持分をきちんと尊重しないといけないというか,そういったことの裏返しなのかもしれないなと思っていますが,それとの関係で,権利侵害について,何からの手当てをしないといけないかというのが,最初思っていたところです。
 先ほど,その続きの話として,では権利侵害をしたとき,あるいは権利を尊重しないといけないということを尊重しなかったことについて,誰が責任を負うのかというのは,2通りあるのではないかと思っていまして,積極的に同意をして,そういった,ある意味権利侵害するような定めをして利用させたこと自体に求めるのか,やはり利用したこと,実際に利用していたとか,そういったことに求めるのか。その辺りはまだ,どうしていいのかがよく分からないところもあり,それは恐らく,そもそもそういう権利を侵害されたケースについて,どういった理由で責任を負うのかが,検討が不十分だったせいなんだろうと思いますので,また改めて検討していきたいと思っているところでございます。
○道垣内委員 もう1点だけ言わせてください。
 その大前提として,現存してというか,何といいますか,アクチュアルにというか,現実に同意をした人というのは,その結果として,自分が不利益を被っても,損害賠償請求権を有しないのではないかということがあるような気がするのですが,そこも本当にそうなのかという疑問も生じるのですね。
 よく企業などで契約に基づいて一定の行為義務を負うというときについて,こんなことやっては駄目なのではないかと指摘しますと,いや,顧客の同意を取っていますから大丈夫なのです,と答えてくださいます。しかし,消費者,顧客が,そのような変更ないしは行為によって,どのような不利益を被るのかということが十分に理解できていないときに,いくら同意があるからといって,そのような不利益が生じることにつき悪意または有過失の大企業の方が,そういった変更ないし行為を提案して,それで同意を取りましたから責任ありませんと言われますと,そうはならないでしょうと,私はよく思うのです。
 そうすると,共有の場面においても,提案をして,同意があったら,同意をした人は必ず責任は問えなくなるのかというと,それはそうではないわけであって,そこのところも考えないと,このようなみなし同意か,中田さんの話では,排除であるという話だったんですが,そういう人について,その人は責任を追及できますよというふうな規律を置くことの意味が変わってまいります。その点も気になるということを申し上げておきたいと思います。
○蓑毛幹事 何か具体的な事例を想定しておっしゃっていただいた方が,分かりやすいのかなと思いました。
 例えば,非常に価値のある土地があって,それが5人の共有になっています。そして,それを貸せば,年間1,000万円の賃料が得られる土地でした。ところが,共有者の1人が自分の近しい人に,ただ同然の金額で,この制度を使って貸してしまった。後になってから,所在不明だった人が現れて,本来は年間1,000万円取れるのだから,その5分の1の200万円分,自分が損害を被ったと主張した。例えばこういったようなケースですかね。
 このケースで,そもそも所在不明だった人に200万円の損害があったと言えるのか,それを誰に請求できるのか,そのような管理をやろうと言った人が悪いのか,貸してもいいよと言って,明示で同意した人も責任を負うのか,そういった議論でしょうか。
 例えば会社の取締役であれば,取締役の善管注意義務があるので,株主に対して責任を負うことはありますが,共有者にはどのような義務があるのでしょうか。共有者が管理方法について明示の同意をしたら,損害賠償請求を負うのか。なかなか難しい問題があると思います。あるいは,主体的に自分の近しい人に貸すということを言い出した人には責任があるのか,しかし言い出したということの法的な意味は何なのか。
 この辺り,一体,何が損害なのか,何に基づいて共有者が責任を負うのかということは,もう少し具体的な事例を,ちょっと今思い付きで事例を申し上げましたけれども,そういったことを整理して議論した方がいいと思いました。感想だけですけれども。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 いえ,感想に尽きる話ではなく,正に民法の先生方から御指摘を頂きましたし,蓑毛幹事からは,具体的な局面として検討すべきものの一つの例を挙げていただきました。
 御指摘よく分かりましたから,4のところは事務当局において,直ちに没にするという話にはならないかもしれませんけれども,皆様方に具体的に議論いただける局面を,次の議論の機会に部会資料において提示をさしあげ,それで御議論を引き続きお願いしたいと考えます。
 4のところ,このようなことでよろしゅうございましょうか,今日のところは。
○山田委員 もう一度検討してくるとおっしゃったので,それで結構です。楽しみにしています。
○山野目部会長 分かりました。
 今おっしゃっていただいた感触も,事務当局の方で受け止めてもらうことにいたします。ありがとうございました。

 それでは次に,部会資料の13ページから後ろに即して,第1の残余の部分についての資料説明を差し上げます。
○脇村関係官 では,御説明させていただきます。
 5から7までは,共有者の,共有物の管理者について取り上げております。

5 共有物の管理者の選任等

5 共有物の管理者の選任等

(1) 管理者の選任義務等
 共有物を管理する者(以下「管理者」という。)の選任義務等に関する次の各案について,どのように考えるか。
【甲案】
① 共有者は,共有物の管理者を選任しなければならない。
② 共有物に管理者がないときは,裁判所は,申立てにより,共有物の管理者を選任することができる。
【乙案】
① 不動産の共有者は,不動産の管理者を選任しなければならない。
② 不動産が共有物である場合において,不動産に管理者がないときは,裁判所は,申立てにより,不動産の管理者を選任することができる。
③ 共有者(不動産の共有者は除く。)は,共有物の管理者を選任することができる。
【丙案】
① 共有者は,共有物の管理者を選任することができる。

(2) 共有者による管理者の選任の要件
 共有者による管理者の選任の要件に関し,次の規律を設けることで,どうか。
① 共有者による管理者の選任は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する。
② ①の選任については,共有物の管理に関する行為(変更又は処分以外の管理に関する事項)についての同意取得の方法(第1の3参照)と同様の制度を置くものとする。

(3) 裁判所による選任の要件等
ア 第三者の申立てによる選任
 前記(1)の論点(管理者の選任義務等)につき【甲案】又は【乙案】を採用する場合に,第三者の申立てによる選任に関する次の各案について,どのように考えるか。
【甲案】管理者が選任されていなければ,裁判所は,利害関係を有する第三者の申立てにより,管理者を選任することができるものとする。
【乙案】管理者が選任されていないことのほかに,例えば,次の各事情があれば,裁判所は,利害関係を有する第三者の申立てにより,管理者を選任することができるものとする。
① 共有者の数が多数にのぼること
② 共有者の中に所在等が不明な者があること
③ 共有物が管理されておらず,害悪等が発生していること
(注1)利害関係については,共有者に対し共有物に関する権利を有するなど法律上の利害関係を有する場合に限らず,当該共有物の購入を希望しているなどの事実上の利害関係を有する場合にも認めるのかについても,併せて検討する。
(注2)管理者の選任をする際には,共有者に管理者選任の催告をするなどして,管理者を選任する機会を付与するかどうかについても,併せて検討する。
イ 共有者の申立てによる選任
 前記(1)の論点(管理者の選任義務等)につき【甲案】又は【乙案】を採用する場合に,裁判所による管理者の選任の申立権を共有者に認めることについて,どのように考えるか。
(注)共有者の申立てによる選任の要件についても検討する。

 5では,選任について取り上げており,(1)では,共有物を適切に管理したり,第三者に対する便宜を図る観点から,管理者の選任を義務とすることや裁判所による選任について取り上げております。
 (2)では,共有者による管理者の選任の要件を取り上げております。
 (3)では,裁判所による選任の要件等を取り上げており,特に,この裁判所の介入をどのような場合に認めるか,御検討いただければ幸いです。
 (4)では,共有者による申立てによる選任を取り上げておりますが,その要件と併せて御検討いただければと思います。

6 共有物の管理者の権限等

6 共有物の管理者の権限等

(1) 管理者の権限
 管理者の権限に関し,次の規律を設けることで,どうか。
① 管理者は,総共有者のために,共有物に関する行為をすることができるものとする。ただし,共有物の変更又は処分をするには,共有者全員の同意を得なければならないものとする。
② 前記①ただし書の同意(共有者が共有持分を喪失する行為についての同意を除く。)については,共有物に関する行為についての同意取得の方法(第1の3参照)と同様の制度を置くものとする。
③ 共有者の持分の価格の過半数の決定で,管理者の権限を制限することができるものとする。
(注1)裁判所が,共有者全員の同意に代わる許可の裁判をした場合には,管理者は,共有物の変更又は処分をすることができるものとすることについては,引き続き検討する。
(注2)共有持分を喪失する行為についての同意取得の方法に関しては,後記第3の1(通常の共有における不明共有者の持分の売渡請求権等)において別途検討している。
(注3)裁判所が選任した管理者に関し,裁判所が管理者の権限を制限することができるものとすることについては,裁判所による選任を認めることと併せて引き続き検討する。

(2) 管理者の義務
管理者は,善良な管理者の注意をもって,事務を処理する義務を負うものとする。

(3) 報酬
① 共有者に選任された共有物の管理者は,特約がなければ,共有者に対して報酬を請求することができないものとする。
② 裁判所に選任された共有物の管理者については,裁判所は,共有者に対し,管理者に対する相当な報酬の支払を命ずることができるものとする。

 6では,管理者の権限や義務,報酬について取り上げており,権限については,(注)にもありますが,裁判所が共有者全員の同意に代わる許可の裁判をすることや,共有持分喪失行為についての同意取得の方法など,併せて御検討いただければというふうに存じます。

7 管理者につき他に検討すべき事項

7 管理者につき他に検討すべき事項
 共有物の管理者につき,他に検討すべき事項について,どのように考えるか。

 7では,他に検討すべきということで,いろいろ書かせていただいておりますが,共有者以外の第三者を選任することができるのかといった管理者の資格や管理者の任期,管理者を置くことができる共有物を不動産に限定することや,辞任・解任,不動産に関して管理者を選任したことを不動産登記における登記事項とするのかや,管理者の法的性格などについて検討することが考えられるところでございます。

8 裁判所による必要な処分

8 裁判所による必要な処分
 裁判所が,共有物の管理に関し,必要な処分を命ずることができるものとすることについて,どのように考えるか。

 8につきましては,裁判所に必要な処分について取り上げております。今後検討がされる予定である不在者財産管理又は相続財産管理人が問題となる場面では,財産管理人の選任のほかに,裁判所が他の必要な処分を命ずることができるのかについて検討することを予定しており,共有物の管理においても同様に検討すると考えられますので,御意見いただければというふうに思います。

「5 共有物の管理者の選任等」に関する意見

○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた中で,第1の5,共有物の管理者の選任等の部分について,まず御意見を承ります。
○蓑毛幹事 共有物につきまして,以前から申し上げているとおり,極めて多数の共有者がいたり,所在不明の者がいたりする場合があります。このようなことを踏まえますと,共有物の管理者を選任して,適切に管理する仕組みを作ることは有益だと思いますので,この制度の創設に賛成します。
 ただし,その先の議論,部会資料でもこの後にいろいろと書かれていますが,共有物の管理者がどのような権限を有し,どのような義務を負うかということについては,非常に難しい問題がありますので,共有物の管理者の制度を設けることを前提として,更に議論を深めるべきだと思います。
 この5の提案について意見を述べますと,まず,共有者の管理者をどのようなときに選任することができるか,あるいは選任しなければならないかということについて,甲案は,全ての共有物について共有者は管理者を選任する義務を負う,乙案は,共有不動産について共有者は管理者を選任する義務を負うとなっている。丙案は,共有者は共有物の管理者を選任することができるとなっていて,義務ではないと,こういう立て付けになっていると理解しました。
 この点に関しては,不動産に限るとしても,共有者は常に管理者を選任しなければならないとするのは無理があると思います。そこで,丙案に賛成します。
 (3)の第三者の申立てによる選任ですが,これは,私ども弁護士が持っている問題意識を酌んでいただいたと思うのですが,例えば乙案のように,一定の要件を満たしたとき,すなわち共有者の数が多数に上る,共有者の中に所在等が不明な者がある,共有物が管理されておらず,害悪等が発生しているというときに,このような状況で,所在不明の者も含めて全ての共有者を相手にするのは非常に大変です。今回の配布資料にはありませんが,訴訟も含めて,そのような者を相手にするときには,実務的な観点からは,共有物に管理者を置いた上で,その管理者を相手に交渉したり訴訟を起こしたりできるようにすることは,非常に有益だと思います。そういう意味で,少なくとも一定の要件を満たしたときには,第三者の申立てにより,管理者を選任するということがよろしいのではないかと思います。
 一方,今回の事務局の提案は,今私が申し上げたことと整合しないものになっていまして,甲案か乙案を前提とした場合に,第三者は裁判所に選任の申立てができるとなっています。ここを何とか解決できないかと思っております。
 恐らく事務局で作成された意図としては,共有者が管理者を選任する義務があるからこそ,第三者は,管理者選任の申立てができるのであって,共有者に義務がない場合にまで,第三者が管理者の選任を申し立てることはできないという前提に立たれているのではないかと理解しました。そこを,何とかなりませんかねというところです。
 具体的には,5の(1)で,丙案,つまり共有者は共有物の管理者の選任をすることができるということをベースとしつつ,(3)のアの乙案のように,一定の要件を満たす場合には,共有者は管理者を選任する義務があるという立て付けにした上で,そのような場合には,第三者も裁判所に選任の申立てができるというふうにしてはいかがというふうに思っております。
○山野目部会長 純粋な丙案は,多分今でも解釈上できますね。しかし今,蓑毛幹事から,純粋な丙案に加え,更に内容を豊かなものにして,それと第三者申立てとの関係についても,発展的に議論してほしいという御提案がありました。ありがとうございます。
○道垣内委員 また,日本法全休の話とのバランスの話なのですが,(1)の甲案,乙案というのは,突出しているのではないかと思います。また,(3)の裁判所への選任を求め得るというのも,日本法上,突出しているのではないかという気がします。
 私は覚えていることが少ないので,覚えている範囲で信託法の話をしますと,信託において複数の受益者がいるという場合には,受益者の同意を得たりするのが面倒なんですね。また,複数の受益者みんなが信託の管理に関心を持っているわけではありません。そこで,信託法は,信託を設定する際に,受益者の保護のために受益者代理人を定めることができるという話になっています。しかし,定めなければならないということにはなっていません。
 そして,定めなければならないという発想というのは,実は,相手にする人に有利に,あるいは,便利になるようにしようという発想なのですが,少なくとも,信託法では,建前上,そういう発想は採られていない。しかしながら,それに対して,信託行為,つまり信託契約を作るのは,みんな信託銀行であり,受託者としては,1人を相手にすると簡単だから,受益者代理人を信託行為で,自らが受託者になる信託行為で定めてしまおうとする。だから結局,信託法の建前としては,複数受益者の利益のための代理人だと書いてあるけれども,これは実は受託者の便宜のための制度になってしまっていて,建前の説明とずれているという批判もあります。強く批判されているのは佐久間さんですので,後で御意見を伺えればと思いますけれども,そして,その佐久間さんのおっしゃっていることの方が,実は本音だというふうにいうと,本件は非常に日本法上,一貫性を持った提案になっているんですね。でもそれは,言ってはいけない本音のはずです。受益者の便宜のためにこそ,受益者代理人がいるわけであって,だからこそ受益者代理人を置かなければならないのではなく,置けるという話になっているのではないかと思います。
 関連しないかもしれませんが,若干続けて言いますと,複数の人がいるときに,全員一致が建前のときには代表を定めなければならないということには日本法上の原則としてはなっていません。例えば複数後見人,複数成年後見人の場合であっても,2人ともオーケーといった場合にだけ行為をするのが慎重でいいという考え方で後見人が複数にされている場合もあるわけです。それが合手的行動義務と呼ばれるものであり,慎重に,かつ,相互監視をしながら事務をすすめていくということですね。権利者がたくさんいるときに便利なように,意思決定を単純にすればいいのだという仕組みにも,日本法全体としてはなっていないと思うのです。
 3番目といたしまして,実は管理者の権限というところに関連して,18ページの上から3行目ぐらいの③ですかね,4行目ですね。そこに,共有者の持分の価格の過半数の決定で管理者の権限を制限することができるものとすると書いてあるのですが,これがまたよく分かりません。つまり,(1)の方の甲案,乙案というのは,代理人を定めてスムーズに動くようにしなければいけない,管理者を定めて,スムーズに動くようにしなければいけないというふうに言っておきながら,他方では,権限としてすごい狭めてしまうと,それは達成できないわけですよね。
 そうなると,そこにも,ポリシー上の矛盾ないし対立みたいなのがあるのではないかなという気がして,私としては,このままでは,そうたやすく賛成できないというふうに思っております。
○佐久間幹事 私も甲案,乙案は反対でございまして,共有は飽くまで私人の権利関係であり,共有者が,共有物について,どのようにするかということを決めればいいことであり,その点で,所有者の自由と変わらないと思います。第三者に,たとえ決定方法とはいえ,どのようにして意思決定をしなさいとか,あるいは何か法律行為をせよと求めることができるとか,そういう権利があるとは,およそ思えないと考えております。
 それに対し,例えば丙案については,先ほど山野目部会長が,現行法でもできるはずなんですよねとおっしゃり,私もそう思います。ただ,例えば管理人の権限について,6以下でしたっけ,デフォルトルールとして,こういう権限を認めるんですというようなことを定めることは,いろいろな場面で役立つのではないかと思います。そこで,例えば,共有物の管理人を選任することができるというようなこと,あるいは,この丙案を置いて,その管理人の権限をデフォルトルールとして法定するということは,あってもいいのかなと思っております。
 あともう1点,第三者の申立てによる選任については,この①,②,③が,アンドなのかオアなのかちょっと分からないですが,アンドで結ばれているとしましても,例えば共有者が多数に上る場合であって,その中に所在不明の者があったとしても,先ほどの3でしたっけ,同意取得の方法をかませれば,現に所在を把握している共有者に接触して,その人に所在不明の人との関係をちゃんと調整してくださいということを働き掛け,働き掛けに応じてくれるならば決定を調達することができるし,動いてくれなかったら諦めるしかないということではないか,と思っております。
 ③の共有物が管理されておらず,害悪等が発生しているというのは,要するに第三者が迷惑を被っているということなんだろうと思いますが,その場合に,妨害予防請求とか妨害排除請求をするときは,共有者の1人を捕まえて請求することはできないんですかね。私は可能なのではないかと思うんですが。
 できないのであれば,それが容易になる方法を考える必要はあるのかなとは思わないわけではないですが,できるのであれば,この③の場合に,共有者間で意思決定をしてもらう必要はないので,管理者をそれに代わるものとして置くということは,必要性が乏しくなるのではないかと思います。
○山野目部会長 ありがとうございます。
 少し前の蓑毛幹事と私とのやり取りで,丙案は現行法でもできるでしょう,というふうに申した趣旨は,できるから丙案は要らないのではないかと申し上げる意味ではなく,今,佐久間幹事におっしゃっていただいたように,丙案の規律のみを置くということで話が終わるのではなく,これを置くと,その管理者の標準的な権限のありようについての規律を置く前提が整ったり,あるいは第三者申立ての規律を関連させて置く可能性が開かれたり,さらには,不動産登記法を改正して,土地建物については管理者を登記するということが自然に法制上成り立つといったようなことがあり得ますから,蓑毛幹事からも御指摘がありましたが,引き続き議論する価値があるだろうということで申し上げました。趣旨を明瞭にしていただいて,ありがとうございました。
 その他,佐久間幹事からは,第三者申立てを認める場合について,(3)アの乙案のところにある①,②,③の論理的関係や,それぞれの性格についての評価についても,注意すべき点がそれぞれあるという御指摘を頂きました。
 引き続き御意見を頂きます。藤野委員,どうぞ。
○藤野委員 ありがとうございます。
 今の共有物の管理者のところですけれども,企業の実務サイドからは,やはり,かなり評判がいいというか,特に,共有者が多くてなかなか話が進まないときに,第三者が申立て等で管理人を選任できるという制度のメリットは大きいのではないか,という意見はかなり出ております。
 (1)の原則に関しても,これはちょっと意見が分かれているのですが,甲案,乙案でもいいではないかという考え方も当然ございます。ただ,一方で,法律的な話を離れると,共有者に共有物の管理者の選任を義務付けた場合に,本当に熱心にやる人が管理者になってくれれば良いのですが,そうでなかった場合には,管理者にならなかった他の共有者は当然共有物への関心がなくなりますし,管理者自身も余り関心ないということになって,ますます管理が行き届かなくなるのではないかという懸念も若干出ているところです。したがって,ここは,甲案,乙案のように常に管理者の選任を義務付ける,というよりは,本当に必要なときに,選任ができるような制度の方がいいのではないか,というのは,今,感覚的には思っているところでございますが,現時点では,両方の意見があるということを申し上げておきたいと思います。
 あと,今の話の関連で,管理者を選任する際の話は,ここに出ておるんですが,例えば解任するときはどうするのかとか,そういったところの話も,セットで議論する必要があるのではないか,と思うところです。
○今川委員 私も,共有物の処分や管理を促進するという観点からすると,この管理権者を選任するというのは非常に有益と思います。特に,第三者が共有物に対して何らかの行為をしたいというときに,数が非常に多いと,一人一人と交渉しなければなりませんけれども,やはり管理者がいると,それはスムーズに進む。実際の取引を促進するという意味からは,管理者を置くということは非常に有益と思います。
 それで,裁判所に選任の申立てをするということも,やはりあった方がいいように思われます。そうしないと,結局,管理者を置くことができるといっても,置かれない場合が多くなってしまいますので,申立てができた方がいいと思います。
 ただ,その場合には,申立ての前に,(注2)ですかね,14ページの(注2)ですけれども,選任の機会を与えるためにも,催告をするということが必要と思います。
 それから,先ほど放棄のところで出ていました,放棄の前段として,マッチングですね,利用,あるいは,それを所有したいという人たちがいる場合に,その共有物に対してアプローチをするというときに,利害関係人の範囲,管理人,管理者を選任する利害関係人の範囲は,なるたけ広い方がいいとは思われます。
 そうすると,13ページの(注1)ですけれども,購入を希望している人,普通は利害関係人を考えるときに,購入を希望している人となると,結局全て,誰でも認めていいということになってしまうので,余りこれは,抑制的に考えるのが普通なんですけれども,先ほど申し上げましたように,選任を催告すると,そうした上で申立てをしていくというふうに作り込みをすれば,逆に申立てをする人を広く認めていくということは,今回,特に共有物の管理・処分をスピーディーに,スムーズにやれるようにという観点からは,非常に有益と思います。
○山野目部会長 道垣内委員,次,佐久間幹事の順でお願いします。
○道垣内委員 私には全く理解できません。というのは,例えば,非常にたくさんの人が共有していてもいいし,10人でもいいのですけれども,そのとき現存している人との間の交渉がうまくいかないといって,管理者の選任を申し立てる。しかし,大体みんな合意していて,しかし,所在不明の人もいるというときには,以前検討しました催告の手続によって合意を取るために共有者側が行動すればすむのですね。
 それを,処分を受けようとする,させようとする側が処分をスムーズに進めるためには管理者がいた方がいいという話は,所在がはっきりしており,同意をしている人たちですら,催告手続といった強制手段を採ろうとしていないときに,「いや,絶対処分した方がいいよ」と言って,勝手に管理者を選任して,それで,その管理者1人と交渉して,よし,処分しようというわけでして,そんなむちゃくちゃな制度はありませんよ,日本法上。
○山野目部会長 今川委員に何か御発言があったら,また伺いますけれども,まず順番として,佐久間幹事,お願いします。
○佐久間幹事 もうちょっと上品に言おうと思うんですけれども,同じようなことを。
 今道垣内委員がおっしゃったようなシチュエーションで,管理人を選んだとしますよね。この管理人は,一体どういう決定をできるんだろうかというのが分かりません。管理人は善管注意義務を負うわけですよね。その善管注意義務の内容として恐らく欠くことができないものとして,所有者の意思を尊重する,共有者の意思を尊重するというのがあると思うんですね。
 その場合に,道垣内委員がおっしゃったようなシチュエーションで管理人が選ばれました。その人と交渉して,管理人が,「いいです。売却しましょう。」といえば問題なく売却できるのかというと,それは単なる義務違反だから,法的には有効だということになるのかもしれませんけれども,当事者の合意をきちんと調達できない状況で管理人を選んだって,管理人は実際上動きようがないのではないかというふうにも思います。
 それで,結局,先ほど私の名前を出していただいたのに,コメントしないでおこうと思ったんですけれども,受益者代理人の話と,やはり全く一緒だと思うんですね。都合のいい人をとにかく立てさせて,取引をしようというんだとすると,当該物件について全くまだ権利を持っていない人が,自分が取得したいから,あるいは都合のよいような取引の内容にしたいからということで,そのように動いてくれるかもしれない可能性のある人を相手方のほうに立てさせようというわけですから。余り上品に言えていないかもしれませんけれども,やはり反対です。
○山野目部会長 十分に上品であったと感じます。
 今川委員,何かおありですか。
○今川委員 後で出てくると思いますが,私は処分行為をする場合には,裁判所の許可が要るというような立て付けになるんだろうなと思っていましたので,そういうのを前提として意見を申し上げておりますし,どうしても意見が分かれている場合には,最終的には共有物分割請求をされるんだろうとは思いますし,それと,単に数が多いというだけではなくて,不在者がいるというような場合には,有益なのかなとは思っております。
○山野目部会長 ただいま,(3)裁判所による選任の要件等の中のア,第三者の申立てによる選任をめぐって,委員,幹事の間で,かなり熱い議論が交わされております。どの御指摘も傾聴に値することではないかと感じます。
 次のページのイにある,共有者が裁判所に対して選任を申し立てるというお話のところについても,委員,幹事にもし御意見があったら,伺っておきたいとも考えます。
 それから,そのほか,(1),(2)などについても,まだ仰せでない意見があったらおっしゃってください。いかがでしょうか。
○山田委員 促された点ではなくて,5全体について申し上げたいと思います。  
 共有物の管理者という制度は,共有に関する管理の行き届かない状況がある場合に,そのレベルを上げていくための法制度として,たくさんのことが検討されているんですが,私は,唯一ではないにしても,重要な役割を果たすべきものだと思いますので,これについては時間を掛けて,知恵を集めて,いい制度を作っていくべきだと思います。そして,この制度は作るべきだと思います。
 そして,共有者でなくてもいいが一つ目ですね。
 それから,二つ目は,(1)については丙案が適当だと思います。なぜならば,共有であるだけを理由に管理者を選任しなければならない,あるいは,不動産に限ったとしても,管理者を選任しなければならないというのは,過大な負担だろうと思います。
 確かに,(3)のアの乙案に書いてあるような事例を見ると,不動産については,選任しなければならない事情があるかもしれないというのは,そう思います。しかし,家族が2人で,これ夫婦でもいいですし,親子でもいいですし,兄弟でもいいです。不動産を購入したら,共有になることが多いと思います。そのときに,管理者を選ばなければならないと民法に定められているから,管理者を選びましょうと。選ぶコストは低いかもしれませんが,ちょっと制度として過大だと思います。そうしますと,丙案で管理者を選任することができると,これだろうと思います。
 そして,先の方に関連するんですが,そのときに重要だと思われますのは,共有者全員を管理者が代理すると,代理権があると,その範囲は全部ではなくてもいいと思います。ちょっと,処分・変更に係ることはできないというのはあり得ると思いますが,できるとするのが,一つポイントだと思います。
 そして,代理とともにですかね,あるいは含まれるのかもしれませんが,裁判上の訴訟遂行が共有者全員のために,原告としても被告としてもできるということを明確なルールとして置くことというのが,この(1)の丙案を採ることにおいて,重要な意味を持つと思います。
 そして,(2)ですが,管理者の選任の要件を過半数で決することを積極的に検討すると良いと思います。ここ,全員の同意で決することができるならば,作るまでもないのかもしれませんが,過半数で管理者を選任できるとすると。随分状況は変わるのではないかなと思います。
 第三者による申し立てによる裁判所の選任は,あった方がいいんだろうと思うんですが,ちょっと理屈をどう付けるかというところは,御発言が出ているように難しいなと思います。しかし,信託がちょっと例になっているので,信託を例にすることの意味がよく分からないところもあるんですが,私も信託を例にすると,受託者がいなくなって,新しい受託者を選任するときに,必要がある場合はですが,裁判所が選任するという規定があります。申立ては利害関係人がすることができるというものです。そのようなものも参考になると思います。
 ですから,そういう考え方はあり得るかなという感じがしますが,信託は,一旦出来上がった信託で,受託者がいなくなって,みんな困っているという状況があるんですが,共有は,管理者がいなくて困っているという状況は,信託の受託者がいなくて困っているというのに比べると,大分小さいかなと,法的な意味で,小さいかなと思われますので,ちょっと,第三者の申立てによる選任のところは意見を持ちません。
○山野目部会長 イのところは,いかがでしょうか。
○山田委員 イのところもですね……しかし,(2)の②があれば,いけるのではないかなという気もします。
○山野目部会長 共有者による裁判所への選任の申立ては,第三者申立てとは状況が異なり,共有者が裁判所に申し立てることはありうるというお話ですね。
○山田委員 ええ,共有者による選任は,丙案でもあり得ると思うのですが,そして,アのところの弊害が随分小さくなると思います。しかしそれは,(2)の②ですかね,②でいけることもあり。そこまで,裁判所の選任を作ること,そのことに私は反対ではないんですが,抵抗が大きいのであれば,代替策はこの中には用意されているなと思います。
○山野目部会長 どうもありがとうございました。
 山田委員から幾つか有益な御注意を頂きました。管理者を仮に制度として設けるときに,管理者は共有者である必要はないということは,それをきちんと補足説明に書いてありませんでしたが,資料作成の意図は当然にそうです。御注意いただきまして,ありがとうございました。
 それから,第三者申立ての適否については,今日種々の御指摘がありましたから,引き続き検討していかなければなりません。参考までに御案内しますと,現在国会においては,表題部所有者の記録が変則的な状態になっている状態を是正するための個別法の審議が予定されていますが,その法律の案の後ろの方に,管理者を選任することができるという制度があって,あれは信託法の受託者が不在であったというケースの規律を参考として,こちらの方に可能な範囲で参考にしようというものが,法制的な説明です。今,くしくも山田委員から,いろいろ議論を続けていくに当たっては参考にしてくださいという御指摘を頂きました。
 この5の点について,引き続き御意見を頂きます。いかがでしょうか。中村委員,どうぞ。
○中村委員 ありがとうございます。
 私自身は,丙案プラスアルファといった辺りが妥当かなと思っているのですけれども,問題は,その場合に,管理者を選ばなければならなくなるような事態というのは,共有者間で利害が反しているような場合,又は共有者がたくさんいてなかなかコミュニケーションができないような場合とか,そもそも共有者がどこにいるか分からないといった難しい事案になろうかと思います。
 ここの13ページの(2)の管理者の選任の要件との関係が問題になってくると思うのですが,その場合に,過半数で管理者を選べるということにしますと,過半数で押し切られて,自分が信頼していない,又は管理を委ねるつもりがない人が管理者になるという事態になり得るわけですね。
 部会資料の後の方を拝見しますと,管理者の権限と義務という辺りでは,委任に関する規定を参考に,権利義務を考えるような想定になっているかと思うのですけれども,委任というのは信頼関係のある人に対して,ある法律行為を委ねる,又は準委任であれば,ある法律行為以外のことを委ねるということになりますが,信頼関係を基にする委任に準じて,例えば善管注意義務の中身を同じように考えることができるのかとか,管理者の権限を同じように考えても大丈夫なのかというところを,もう少し踏み込む必要があるかと思います。
 つまり,まず過半数で管理人,管理者を決定することができるとしていいのか,要件が軽過ぎはしないかというのが一つと,その場合に,権利義務の範囲をどのように考えるのかということです。
 後に検討するとされていますけれども,管理者の訴訟上の権限をどうするのかという問題もあって,共有をめぐる訴訟に関しては,ものすごく難しい問題がある中で,管理者が訴訟追行できるということになってしまうのか。その場合,従来,固有必要的共同訴訟であることが要求されてきたものが,たまたま過半数で選ばれた管理者にできてしまうというようなことになりはしないかとか,大変難しい問題があると思いますので,ここは,丁寧に区分けをして御提案いただければ有り難いと思います。
○山野目部会長 どうもありがとうございます。
 ほかに,5のところはいかがでしょうか。よろしいですか。
 5について,有意義な御議論を頂きました。5の(1)は,甲案,乙案,丙案の中,比較的丙案に言及していただいた委員,幹事が多かったように思います。
 甲案というものは,これはもう,ほぼ考えにくいですね。どう考えても,共有物一般で管理者を選任しなくてはいけないという,これが規律として成り立つチャンスというものは,ほとんど埒外であるだと感じますけれども,事務当局で引き続きお考えください。
 それから,(2)について,幾つか御指摘いただいた点を更に深めていきます。
 (3)は,アのところについて,たくさんの御指摘がありました。あわせて,イについても御意見を頂いたところであります。これらの全般について,検討を深めてまいりたいと考えます。委員,幹事の皆様方には,御意見を頂きまして,ありがとうございました。

「6 共有物の管理者の権限等」に関する意見

 続きまして,6,共有物の管理者の権限等にまいりますが,今,中村委員のお話に少し,それについての問題提起が含まれていたところであります。
 改めて,6のところについて,委員,幹事の皆さんの御意見を頂きます。
 6のところで,権限,それから義務,報酬などについての話題を提供しておりますけれども,いかがでしょうか。
 (2)と(3)は,多分このようなことであろうと考えられますが,そこについても御意見を頂きたいですし,取り分け(1)の権限のところについては,この機会に御意見があれば承っておきたいと考えます。いかがでしょうか。
○蓑毛幹事 共有物の管理者の権限に関しては,先ほど中村先生がおっしゃったように,全員一致でなく選ばれる,つまり反対者がいる訳です。こういう状況で,管理者は何ができるのかということを考えなければいけません。特に今,私どもの方で関心があるのは,仮に,訴訟の遂行権限を共有物の管理者が持つとすると,影響が大きいので,よく考えなければいけないと思っていまして,そこと併せて全体的に考えないといけない。共有物の管理者の権限を,今回の部会資料の範囲だけで考えるのは難しいと思っています。
 その上でですが,共有物の管理者が,反対者もいる中で選任されていることからすれば,基本的には,17ページの(1)①にあるように,共有物の変更又は処分をするには,共有者全員の同意を得なければならない,ということにすべきと思います。次に,その際の同意取得の方法は,18ページの②にあるように,第1の3の方法も使えるよと。これもいいと思います。共有物の管理者の選任に反対した人であっても,変更・処分について聞かれたときに確答しなかったのだったら,その人は定足数から除くということでもいいと思います。
 では,共有物の管理方法を変えるときはどうなるのか。今回の提案は,一旦過半数で選ばれてしまえば,共有物の管理者は,管理行為に関する限りは,③の制限がない限り,オールマイティーということのようです。共有物の管理者は,善管注意義務を負うので,変な管理はしないだろうということが前提なのでしょうが,しかし,それでいいのかという問題意識を持っています。とはいうものの,管理方法を一々変える度に,また全て同意を取り直しということになると,それも無理でしょうから,このような提案に落ち着くのかなと思っているのですが,管理者の権限については,訴訟も含めて,全体を見た上で,バランスをとって,何度も申し上げているように,管理者の選任に反対者がいることも考慮して,考えなければいけないと思っています。
○中田委員 ちょっと御質問なんですけれども,先ほどの今川委員の御発言とも関係するんですが,管理者が置かれた場合であっても,共有物分割請求というのは依然として可能だという理解でよろしいでしょうか。
 それから,もう一つ,共有物分割請求について,合理化するような方策は,今後御検討の御予定はおありでしょうか。
○脇村関係官 まず前半につきましては,作成したときの意図としては,共有物分割,当然できる,共有物分割できる前提で考えていました。その上で,緊急性あるときにどうするか,管理者が変に動いているときに止めるかというのは,保全的な手法も含めて検討していくんだろうなとは思っておりました。
 もう1つの方は。
○中田委員 分割請求手続が,現在なかなか機能しにくいところを是正することを検討するかどうか。
○脇村関係官 ありがとうございます。次回の,次の部会資料には,共有物分割を取り上げようと思っていまして,そこでいい知恵が出せるといいんですけれども,どこまでの案が出せるのか,今検討中ですが,項目としては取り上げる予定にしています。そこで皆様に,是非御意見を頂きたいとは思っているところです。
○山野目部会長 中田委員に1番目の御質問いただいたとおり,管理者が選任されていても,共有物分割請求の手順に何らさわりになるものではないということが資料作成の意図であるということの紹介をしてもらいました。
 明言がありませんでしたけれども,共有物分割請求訴訟が固有必要的共同訴訟であるということにも特段影響はなくて,管理者がいるから,別に管理者だけ相手にすると分割ができるということにはならないという前提で資料を作っているものであろうと思いますが,引き続き御意見を頂いていきたいと考えます。
 それから,後半のところでありますけれども,実は,今日は「共有制度(1)」という部会資料をお示ししていますが,「共有制度(2)」というものを次回以降にお諮りしていこうと考えておりまして,中田委員の少し前の御発言で問題提起を頂き,今も問題提起いただいた共有物分割の在り方についての改善点はないかという課題,それから,共有と訴訟の関係の問題,さらに,共有物に係る時効取得の要件の見直しという難問ばかりあります。
 今日の段階で,これだけの議論があって,次回,これよりも難度が上がりますから,ご負担をお願いしますけれども,そのように調査審議を続けてお願いしようというふうに考えているところでございます。
 引き続き,いかがでしょうか。
 それでは,権限のところは,蓑毛幹事から,ひとまずはこれを見ておいたけれども,まだまだ全体で見なければいけないという御指摘があったとおりだというふうに感じますから,御議論いただいたところを踏まえ検討を続けてまいるということにいたします。

「7 管理者につき他に検討すべき事項」に関する意見

 続けて,20ページの7,管理者につき検討すべき事項,そのほかにないかという問題提起がありますが,これだけ尋ねられても,やや御議論がしにくいかもしれません。あわせて,第1の8まで,最後の8まで御検討をお願いし,21ページの8の裁判所による必要な処分,これらについて,本日段階で御指摘いただけることを承っておきます。
 ここもやはり最初に御議論いただいた管理者の制度の基本像のところについて,更に議論を深めていかないと,そこから派生し,発展した論点である7や8のところは,議論がしにくいという感触をお持ちの方が多くいらっしゃると想像しますし,それはごもっともなことであるであろうと感じます。本日段階で頂く御意見で結構ですから,承っておきたいと考えます。いかがでしょうか。
○岡田委員 管理者を選任された場合に,20ページのところにありますけれども,不動産に関して,管理者を選任したことを不動産登記における登記事項にするのかについても,検討が必要ということでございますけれども,私どもの立場から発言させていただけるとすれば,交渉等と書いてございますけれども,お隣の方に会うために,めくらめっぽう,山の共有者20人に当たるよりは,とても有り難いと思います。管理者がいていただけると。
 それを登記簿によって公示することを前提というか,必要,検討しましょうということでございますけれども,登記簿のこれ,甲区欄なのか表題部なのかというところまで,今のところの感触でいいんですけれども,教えていただけるかなと思いますが,いかがでしょうか。
○脇村関係官 すみません,まだそこまで考えていないですが,恐らく,管理者の権限ですとか,そこに書いています,登記の効力をどうするかによって,どちらか変わってくると思いますので,それを踏まえて検討していきたいと思っております。
○山野目部会長 こちらの事務当局の席では何か,多分,表題部ではないかとかという声というか呟きが聞こえますけれども,実は準共有の民法の規定の適用関係について,特段の規律を設けなければ,権利部乙区に記録されている権利についても,準共有の場合に管理者の規定が働くものですから,例えば休眠抵当権の処理などで困る場面の抵当権の登記名義人について,準共有をする者が多数に上るような事例において,管理者を選任して問題処理を進めるというような用いられ方をすることもあり得るものです。そうすると,必ずしも表題部に記録するという話にはならないかもしれません。これは技術的な問題ですから,こちらで引き続き検討するということにいたします。
 引き続き,いかがでしょうか。
 道垣内委員,次,今川委員,お願いします。
○道垣内委員 登記事項とするということの意味なのですが,登記をしなかったらどうなるんですか。その人は管理者としては行動できない。あるいは,そうではない人が名前を書いてあったら,表見代理が当然に成立するのでしょうか。いや,おかしいですよ,これ。それは登記事項にはならないと思いますよ。
○山野目部会長 道垣内委員の御意見をおっしゃってください。
○道垣内委員 登記事項にすべきではありません。
○山野目部会長 現行法の規律で,登記上記録をしていて,それについて,しなかったときどうなるかというような議論が起こる場所というものは,既存法制にいくつかあるわけでございますから,それらとのにらみで,また,今の御指摘も踏まえた上で関係法律整備において検討していくということになるでしょうか。
○今川委員 先ほどの議論に絡むのかもしれません。第三者が管理者の選任申立てができるかどうかというのは,皆さんいろいろな意見があるというのは分かったんですが,管理者を置いたとして,共有者全員の同意によって処分権限を与えることができるということについては,多分御異論はないんだろうと思うんですけれども,そのとき,取引の安全の観点からですと,第三者にそれを,どのようにして証明していくのかと。同意があったということを何らかの形で示せばいいということにはなるんでしょうけれども,取引に入る第三者からすると,やはり,例えば公正証書により証明しないといけないとか,そういうものがないと,安心して取引ができないということもあるとは思います。
○山野目部会長 ありがとうございます。御指摘に引き続き留意します。
 ほかにいかがでしょうか。

「8 裁判所による必要な処分」に関する意見

○佐久間幹事 8でもよろしいでしょうか。
○山野目部会長 お願いします。
○佐久間幹事 裁判所が,ここに書かれている,共有物の管理に関し,必要な処分を命ずることなんですが,想定されているのは,結局,共有者間で必要な合意を調達することができないとき,というか一定の合意に達しないというときに,その達しない合意に代わる,言わば処分許可みたいなものを,裁判所に期待するということでいいか,ということを伺いたく存じます。もし仮にそれでいいとしたら,それは先ほどの,裁判所による管理人の選任と同じようなことになるんですけれども,共有者が,これは資料にも書かれているところですけれども,共有者自身が決定することができない,要件にのっとってできないところを,他者が決定するというのはいかがなものか。適当ではないのではないかと思います。
○山野目部会長 現在の民法の規律の中で見出される局面としては,不在者の財産の管理において,裁判所が与える,現場でニックネームで呼んでいる権限外許可の審判があります。あの民法の法文も必ずしも明晰ではないかもしれませんが,少なくとも実務の運用としては,売却処分までの権限を審判によって与えることができるという解釈・運用がされてきたと理解しています。
 今の佐久間幹事の御意見は,そこまで裁判所が,ここの8でするということは相当でないという御意見を承ったというふうに理解してよろしいのですね。
○佐久間幹事 不在者財産管理の問題についてですか。
○山野目部会長 不在者財産管理の似た局面と比べてみて……
○佐久間幹事 いや,似ていないのではないかと。不在者財産管理の場合は,不在者自身が自ら管理をすることができない状況にあるので,管理人を選び,その管理人に権限を与えているのに対し,ここで想定されているのは,共有者が1人もいないという場合ですか。
○山野目部会長 ええ,似ているようにみえ,しかし,似ていないから,さてどう考えるかということでしょうか。
○佐久間幹事 そうそう,似ていないから,同じようにはできないのではないかと。
○山野目部会長 現行の不在者財産管理の法文の言葉の使いぶりを踏まえて申しますと,それは不在者財産管理の局面であるからかもしれませんが,かなり大きなことができるという,裁判所ができるという運用になっていますし,8の太字の規律表現が不在者財産管理と同じになっていますけれども,あれと同性質の問題ではないですよ,という御注意を今頂いたと受け止めました。
○佐久間幹事 はい,そうです。すみません。

○山野目部会長 ありがとうございます。
 引き続き,いかがでしょうか。
 おおむね,共有物ないし共有不動産の管理権者の問題の全般について,御意見を承ったというふうに受け止めてよろしいでしょうか。
 今日の審議の過程で明らかになりましたように,いろいろ宿題はたくさんございます。次の審議をお願いする機会に向けて,事務当局において整理してもらうということになります。
 部会資料の,ただいま第2の遺産共有における共有物の管理の手前のところまで,一巡して御意見をおっしゃっていただくところまでまいりました。言い換えますと,第2の部分がまだ残っております。
 残された時間との関係からいうと,あと若干締めくくりの御案内がございますから,これ以上,第2のところに入っていって,御議論をお願いすることは困難ではないかと感じられます。
 次回の部会におきましては,この部会資料3の第2の遺産共有における共有物の管理の問題について審議をお願いし,その後,次の部会資料として用意を差し上げるものの審査をお願いすることになります。先ほど少し申し上げましたけれども,共有物の時効取得,共有と訴訟,それから,共有物分割の在り方などの諸点について審議をお願いします。
 引き続き,共有の御論議をお願いするに際しても,また部会資料を作成するに際しても,中田委員から御指摘があったように,分割終了のタイプと存続するイメージの共有との区別に留意しましょうという御話があり,これはごもっともなことでありまして,留意を致しますし,あわせて,その際に,中田委員から御指摘があった共有物分割の在り方について考えてほしいという論点は,正に次回の審議資料で扱われます。
 本日,共有の第1の部分についての審議をお願いしていただいたところを顧みて,御案内を差し上げます。
 本日,共有制度の見直しについて検討をお願いしなければならない事項の前半につきまして,多様な方面からの御意見を頂きました。思い起こしますと,明治に近代の法律制度が始まりました際,御案内している船舶共有の場合に限った話ではなく,今以上に共有という事態の特性を捉えた法律思考がされていたものではないかと思われます。
 明治13年の太政官布告第36号(明治13年7月17日太政官布告第36号)には,「共有財産ヲ管理スルノ権」を有するという者が登場いたします。実は均分相続制を導入した戦後改革の機会にこそ,あらためて共有というものの在り方を考え込んでおく必要があったと感じますけれども,それが必ずしもなされないまま,今日に至りました。本日,この議題について,改めて法律家や各方面の皆様に,ここで論議を始めていただきました。緒についたばかりでございますが,始めていただいたことは,今後議論がどういうふうに進んでいくかを考え込まなければなりませんけれども,いずれにしても意義が大きいと感ずるものでございます。
 事務当局から,次回に向けての事務的な御案内を差し上げます。
○大谷幹事 今,正に繰り返すまでもなく,次回はクールビズでということですけれども,資料もお持ちいただけると思いますが,次回の日程は,平成31年5月21日火曜日の午後1時から午後6時まで,場所は同じく,この東京高等検察庁の第2会議室になります。
 テーマは,現時点では,共有の後半部分と,それから遺産分割の促進,財産管理というものを予定をしておりますけれども,こちらの方でできる限りの準備をして,早目に資料送付させていただきたいと考えております。
○山野目部会長 事務局から御案内を差し上げました。
 これをもちまして,法制審議会民法・不動産登記法部会第2回会議を散会といたします。
 どうもありがとうございました。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立