法制審議会民法・不動産登記法部会第17回会議 議事録

○山野目部会長 再開いたします。
  部会資料40をお取り上げくださるようにお願いします。
  部会資料40は,「共有制度の見直し(通常の共有における共有物の管理)」についてお諮りするものであります。
  1ページの「1 共有物の変更行為」のところについては,部会資料27をお示しして,前回この話題をお諮りしたときと同じものの提案を差し上げております。前回の第13回会議で御指摘いただいた点については,補足説明でこのように考えたらどうかという御案内を差し上げているところであります。
  2ページから3ページにまたがっての共有物の管理行為についての(1)民法252条についての改正方向をお示ししているところは,①,②,③とも前回部会資料27でお示ししたのと同じものをお示ししています。④も何となく同じものをお示ししているように映りますが,実は,a,b,c,dで並べて示している期間を超えて約束がされた場合についてはどうするかということについて,それを明記する規律を添えておりましたところが,それを削ってございます。削った方が,借地借家法の適用関係についてより明快な解決を示すことができるものではないかという考えに基づくものでありまして,そのことを補足説明で御案内しているところであります。
  5ページのところの,まず(2)は,共有者全員の合意とその承継についてという論点につきまして,規律を設けることに困難があるものではないかという複数の御指摘を第13回会議で受け,それらがもっともであると考えられるところから,規律を設けないとする方向の提案を差し上げております。
  5ページの一番下,「共有物の管理に関する手続」について,持分の価格に従って過半数で決する際の共有者相互のコミュニケーションの在り方については,これも規律の創設を見送るという提案を差し上げているところでございます。
  6ページの4にまいりまして,「共有物を使用する共有者と他の共有者の関係等」につきましては,①,②とも,基本は部会資料27でお示ししたのと同じものをお示ししております。損害賠償の規律等について,誤解を招かないように整理をしている部分がございますけれども,基本は第13回会議にお諮りしたものと同じでございます。
  部会資料40の全体について御意見を承るということにいたします。
  委員,幹事の皆様方から,どうぞ御随意に御発言をください。
○橋本幹事 弁護士会で議論した内容を御紹介したいと思います。
  まず,1の共有物の変更行為についてですが,方向性については大きな異論はありません。
  ただ,この著しく多額の費用の点ですが,補足説明にいろいろ説明書かれているんですが,ちょっとやはり不明確だよねという意見が多くて,費用という切り口でやると,どうしても補助金とか,あるいは求償しないということについて疑義が出てしまうのかなと思って,意見としては,もうちょっと何とか目安的なものを示せないのかというような意見もあったんですが,むしろこの補足説明で書いてあるように,結局のところ,物理的に大幅な変更を伴うかどうかというところがキーポイントになっているように思うので,金額が多い,少ないよりも,物理的に大きな変更を伴うかどうかという方にした方が,すっきりするのではないのかなと思いました。意見です。
  それから,2についてですが,(1)の②なんですが,これについては,中間試案のパブリック・コメントのときも,日弁連としては反対の意見を述べていたんですが,これについても,現時点でもまだ賛成できないという意見が強かったです。
  後ほど検討される部会資料42の第3によると,遺産共有の場合も全て適用されるという前提だという立てつけのようですので,遺産共有の場合だとすると,ちょっと弊害が予想されるのではなかろうかということで,やはりこの部分について,反対という方向は今のところ維持するという方向です。
  それから,④の点ですが,cに関して,借地借家法の適用がある建物賃貸借の場合には,全部無効だという説明が補足説明に書いてあるんですが,ちょっと硬直的ではなかろうかと,部会資料27の当時のもののがよかったんではないかという意見がありました。
  それから,(2)の共有者全員の合意とその承継について,設けないということなんですが,何とか設ける方向でもうちょっと粘れないでしょうかという意見がありました。
  3と4については大きな異論はありませんでした。
○山野目部会長 弁護士会の意見をおまとめいただきまして,ありがとうございます。
  引き続き承ります。
○沖野委員 2点お伺いしたいことがございまして,1点目は,3ページ目の④について,今御指摘のありました点ですけれども,むしろ意見としては逆になりますが,4ページの補足説明のところでは,部会資料27の後段で書かれていたものを削除しているのは,混乱が生ずることになるからだと書かれておりますけれども,この混乱自体は,借地借家法で30年のものを5年の一般の建物所有目的の土地賃貸借契約を締結することはできない,その強行規定があるにも関わらず,こちらの方が優先して5年になってしまうと読めてしまうことによる混乱ではないのかと理解したのですが,そうだとしますと,特に借地借家法などの他の強行規定がある場合に,こちらが優先するということではないという話であり,その限りでのことになります。
  しかし,他方で,④の話というのは,結局共有物の管理として,どこまでできるのかということであって,そうだとすると,契約締結が処分に実質的に該当するような長期の契約というのは,そもそもこの過半数決定ではできないとする。したとしても,共有との関係では効力を持たない,過半数決定ではできないことだと整理してしまうというのも,一つの案ではないかと思いまして,それに対して,現在の④は,それはできるんだけれども,超えて存続することができないんだと書かれておりまして,部会資料27の後段の規律は,ただ,強行規定との関係で混乱が生じるから削除したということですから,この内容は維持されていると見られるんですけれども,本当にそれでいいんだろうかというのが,むしろ気になったところです。この期に及んでという感じはするんですけれども,どうだろうかということです。むしろ,これは管理行為には当たらないので,こういうものはできないと整理するという方が,あるいは,この期間内の契約しかできないと,もちろん,更に強行規定を排除するのはできないという整理の方が,むしろ適切ではないかと,この記述を見て思ったところですので,どうだろうというのが一つ目です。むしろ意見だと思いますけれども,あるいは,部会資料27からの変更の趣旨は何かということかもしれません。
  もう一つは,4ページの補足説明の(2),4ページの下から3行目のところですが,一部の共有者の同意なく借地権を設定した場合の法律関係についてということで,土地賃貸借の例を考え,その説明をしていただいています。この法律関係を明確にすべきだという指摘がこの趣旨だったのかどうかというのは,ちょっと私には分からないのですけれども,この例の場合について,そもそも建物所有で借地借家法の適用があって,しかも,土地であれば30年となるような契約について,Cが異議を述べた場合には,借地権の設定自体ができないと。他方で,賃貸借は有効に成立しているということで,一種他人の権利の部分を処分してしまうという,そういう関係かと思うのですが,これは,本来そもそも過半数決定でできない場合であるのに,それをしたらどうなるかという話ではないかと思われるのですが,ここの説明は。そうではないのでしょうか。
  問題になりますのは,過半数決定でできるけれども,しかし,異議を述べた者との関係ではどうなるのかとか,そのときに,契約は誰と誰との間ですることになるのかとか,そういうことの整理が,やがて出てくる管理者の選任等々との関係でも必要になってくるのではないかと考えられまして,そのような問題として整理し直すべきではなかろうかと思われるのですけれども,そうした場合に,ここで過半数決定をするということが,仮に共有者が集まって,こういう形でこのような契約の賃貸借をするかどうかということについて,過半数でしようということになった場合に,契約はどうなり,賃貸人たる地位はどうなるのかについて,以前の御指摘では,それでも異議を,自分は反対であると述べた人は,およそ賃貸人になるということもないし,契約は飽くまで賛成した人,場合によっては賛成した人ではなくて,そのうちの1人でもいいのかもしれません。1人だけが契約をするということで,あとは内部関係として処理していく,反対者は,妨害はしないという話になるのかもしれないんですが,そういう権利関係なのかどうかということの整理が必要でないかと思われましたので,問題の設定と,それから,もしそういう問題だと考えるならば,どういうふうに理解したらいいのかということを,御説明いただければと思います。
  長くなってすみません。
○山野目部会長 沖野委員がおっしゃった2点について,今,事務当局との間で意見交換をしてもらおうと考えます。
  前段でおっしゃった3ページの④のところは,これからの御議論にもよりますが,沖野委員のお話をヒントとして,削った部分を復活させるということになれば,理由,経過は全く異なりますけれども,橋本幹事の復活させてくれという弁護士会の意見と,奇しくも結果だけは一致することになり,幸せな結果に至りますが,本当にそう進むことがいいかどうかは,引き続き考えなければなりません。
  沖野委員の後段の4ページから5ページのところ,これ,例の挙げ方が悪いですね。2年とかの建物の賃貸借をしたときに,しかし,反対した人の置かれる法律的な状況がどうなるかという例を挙げれば,今のような御疑念の指摘を受けなくて済むであろうと考えますから,何かこれ,筆が滑ったとも感じますけれども,事務当局からどうぞ。
○大谷幹事 1点目に御指摘いただいた短期の賃貸借でないもの,長期間の賃貸借を過半数ですることはできないとするのではないかというような御指摘,確かにここのように変えてみて,例えば,建物の使用権3年を超えるもの,土地の使用権5年を超えるものを,契約としてやったときに,それ自体もう無効だと考えることもあるのかなと思い直し始めていたところです。ですので,ちょっとここは,今の御指摘も踏まえまして,④の書き方,後段の部分を削ったということだけではなくて,もう少し,共有関係で,過半数だけで賃貸借をするというときにはどうなるのかというのを,改めて整理をしてお示しをしたいと思います。
  また,過半数の者との間で賃貸借契約をした場合の法律関係ですけれども,これも,ほかのところで出てまいりましたけれども,A,B,Cの3名のうちのA,Bのみで賃貸借をしたときに,賃貸人は誰かといえば,契約関係はどうなるかといえば,AとBだけが契約当事者になるということで,反対をしているCについてはならないと。ただ,CはAとBが結んだ賃貸借契約を否定することができないという関係になるのではないかと考えているところでございます。
○山野目部会長 大谷幹事のお話の後段はそのとおりで,そのこと自体は,沖野委員もそのように理解しておられるけれども,挙げている例が,借地権の設定は元々できないことから,もっと適切な例を挙げてくださいという御要望であると受け止めますから,次回は丁寧にここを書き改めてお出しすることにいたしましょう。
  沖野委員,よろしゅうございますか。
○沖野委員 ありがとうございました。
  私自身は,実は別の考え方もあると思っておりまして,大谷幹事は私自身の考えを受け止めてくださったのですが,整理としては,最終的に部会長がおっしゃったような整理でいくということで,まとまっていくということには,全く異存ありません。
○山野目部会長 どうもありがとうございます。佐久間幹事,どうぞ。
○佐久間幹事 ありがとうございます。
  今の4ページの(2)のところなんですが,多分,前回私が申し上げたことについて対応していただいたんだと思うんです。どういうことだったかといいますと,無効だとするのか,期間を超えることができないのだとするのかはともかくといたしまして,借地借家法の適用のある賃貸借を過半数決定でしてしまった。ところが,借主の方は,そうとは思わず,無過失まで含めるのかもしれませんが,善意無過失で借地借家法の適用があると考える状況であった,その場合に借主を保護はしなくていいのかと,私が申し上げたのに対して,これはお答えいただいたんだと思います。ですから,これが,前回からの議論の続きで,不適切な記述というわけではなくてというか,事務局のために私が言う必要があるのかどうか分かりませんが,これはこれとして,前回の私が申し上げたことに対してお答えを頂いていて,それに加えて,今日,沖野先生から御発言があったという整理が適当かと思います。これが1点です。
  もう1点は,これ,ずっと出ているところで,今更なんですけれども,1ページの1のところで,括弧書きで,共有物の改良を目的とし,かつ,著しく多額の費用を要しないものを除くとあります。これがこのままでいいのか,先ほど橋本幹事から,軽微変更みたいなのに変えた方がいいのではないかということがございましたが,それは御検討いただくとして,もしこのままでいくというときに,軽微変更でも一緒かな,改良という言葉でいいのかなというのが,少し分からないなと思ったところがございました。改良というのは,多分価値を増すということが含まれていると思うのですけれども,これからの時代,ダウンサイジングとか,価値の面でいうと,例えば,今まで居住に適していたもので,それ自体としては価値が高かったものを,もう利用者がいないので,納屋に変えるとか,簡易化するという方向で目的物に変更を加えるということもあり得るのではないかと。これは,主観的には使用価値を高めるということになりうるとは思うのですけれども,客観的に言うと,価値が高まるとは言えないのかなと思います。そういったことから,この改良を目的とするということでは駄目だというわけではないのですけれども,これからの時代,これで尽きるということでいいのかどうか,考える必要があるのではないかと思いました。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  前段のお話を伺っていて,佐久間幹事は優しい方だなということを実感いたしました。
  確かに4ページから5ページは,前回の佐久間幹事のお話を引き継いだものでありますから,本日沖野委員から頂いた御注意を踏まえ,将来に向けては適切な例を選択して,補足説明の文章を草していくことにいたします。
  後段で御指摘いただいたことは,今後の日本の社会を考えたときに,なるほどと,うなずかざるを得ない御指摘を頂いたとともに,悩ましくて,従来の法制の用語例からいくと,ここはやはり改良になると思うのですね。今後の日本社会を考えたときに,改良でない哲学を表現する言葉を探し,よりふさわしいものにしてくださいという課題は,誠にしごく当然のお話であると同時に,良い言葉を見つけて,法制的にもそれを採用可能なものに育てられるかどうかは,少しまた事務当局において検討してもらおうと考えます。
  ここの括弧書のところは,橋本幹事からも多額の費用のところについての文言の再検討を求める御意見を頂いております。括弧書は,事務当局においても,何とか考え直して,いろいろなことを考えましたが,やはりここに落ち着くのではないかと考えざるを得なくて,同じ文言のものをお出ししていますけれども,本日両幹事から頂いた御意見を踏まえて,更に検討していかなければならないことであると考えます。
  引き続きいかがでしょうか。
  委員,幹事から御意見はおありでしょうか。
  それでは,どなたからか御意見をおっしゃっていただくまでに,いささか橋本幹事にお尋ねですが,5ページの太文字の(2)のところを,提案を見送らないで設けてほしいという御意見が弁護士会にあるというお話であると,先ほど聞こえましたけれども,その理解で間違いないですか。
○橋本幹事 はい,(2)ですね,合意の承継について。
○山野目部会長 ここについて,規律創設の需要があるということが理解できますとともに,第13回会議において,いろいろ異質なものがここの規律の適用対象として想定されるところを,誤解がないような仕方で,過不足なく規律の表現にまとめるのは難しいという御意見も頂いていたところでありまして,なかなか難しいと感ずるところでありまして,弁護士会の御意見は御意見として承って,もう少し考えみようと思いますから,すこし弁護士会の先生方も引き続きお付合いいただいて,お知恵を頂きたく思います。
  ほかにいかがでしょうか。
  そうしましたらならば,第13回会議でお出しした部会資料27の確認をお願いするような内容も多うございますから,強いて御発言がないと受け止めてよいのかもしれません。
  御発言がないようでしたならば,部会資料40についての審議をここまでとして,更にこれを整理していくということにいたしますけれども,よろしゅうございますか。
  それでは,引き続きまして,部会資料41をお取り上げくださるようにお願いいたします。
  引き続き共有制度の見直しでありますが,部会資料41のタイトルに括弧書でありますように,共有物の管理に関する行為を定める際の特則等について,お諮りをしているところでございます。
  第1の1は,これは,共有者の中に共有物の管理等について,無関心や積極的な関心,意欲的な関心を抱いてくれない者がいる場合に,問合せをして異議を述べない,意見がないということを確認した上で,更に共有物の管理を進めるということを認めてよいかということについて,前回と同様の提案を差し上げております。
  (注1)から(注3)までのところで,本文の案とは別に,こういうことも考えられるということをお示ししていますけれども,(注1)から(注3)までに御提示申し上げている事項は,そこに本案とは別な案を示して,これも大いに考えていこうという趣旨で御提示申し上げているものではなくて,ここで強く(注1)ないし(注3)の可能性も,引き続き考えてほしいという御意見があるかどうかを確かめるために,お出ししているものでございます。
  引き続きまして,3ページにまいりまして,太文字の2のところ,「所在等不明共有者がいる場合の特則」は,今度は共有者の所在が分かっているのではなくて,そもそも所在が分からない場合について,こちらは裁判所の関与を得て,それに代わるコミュニケーションを取って,先に話を進めていくということが許されるかというお話の問題提起をしています。(注1)から(注3)まで,本文の案とは別な案が考えられるかという可能性もお尋ねしていますから,併せて御意見をおっしゃっていただきたいと望みます。
  (注1)から(注3)まではそういうことですけれども,(注4)は性格が異なっていて,これは別にお尋ねするものではなくて,太文字の案の本文の前提を補足しているものであります。
  小さな誤植がありまして,(注4)のところ,本当は改行しなくてはいけないはずですが,そのまま続けてしまっているところは,改行があるものと訂正を差し上げて,その前提でお考えくださるようにお願いいたします。
  6ページのところにまいりまして,第2のところで,「不動産の所在等不明等共有者の持分の取得」について,裁判所が持分を取得させる旨の裁判をするということを基本とした上で,裁判所が定める時価相当額の支払請求の制度などについての関連する提案を差し上げております。
  9ページにまいりますと,第3のところで,所在等不明共有者がいる場合において,知れている共有者の全員の同意があるときには,これを譲渡するという可能性を認める制度の提案をしております。
  11ページにまいりまして,第4のところは,共有者が選任する管理者の法律的な地位,それをめぐる法律関係につきまして,第13回会議でお諮りしたものの骨格を維持し,それを整理したものをお示ししているところでございます。
  部会資料41は,このような論点を盛り込んでお示ししているものでありまして,これらの全体について,委員,幹事の御意見を承るということにいたします。いかがでしょうか。
○蓑毛幹事 第1「共用物の管理に関する行為を定める際の特則」について,日弁連のワーキンググループでの意見の分布について申し上げます。
  第1の1については,本文のとおりでよいという意見もありますが,(注2)に賛成,すなわち,裁判所の決定があって初めて効力が生ずることとすべきいう意見の方が多数でした。2については,本文のとおりでよいという意見が多数でしたが,(注2)に賛成,すなわち,対象となる行為を持分の価格の過半数で決する行為に限定すべきだという意見も有力でした。
  6ページの「第2 不動産の所在等不明共有者の持分の取得」については賛成します。9ページ,第3の「所在等不明共有者がいる場合の不動産の譲渡」についても賛成します。いずれも,前回申し上げた,日弁連の意見を取り入れていただいたものと理解しています。ありがとうございました。
  第4の「共有者が選任する管理者」について,本文で書かれている「1 選任・解任」,「2 管理者の権限等」について,本文で書かれていること自体については賛成ですが,補足説明で,部会資料12ページに書かれている「委任契約(委任関係)とは別の法律関係(管理者選任関係)」の概念がよく分からないという意見が多く寄せられました。では,本文に書かれている選任・解任の要件を満たしつつ,それを,どのように理論的に説明するのかについて,日弁連のワーキンググループの中で何かよい案を提示できるのかと言うと,できません。大変申し訳ないのですが,そのような意見があったということだけ申し上げます。
○山野目部会長 弁護士会の意見をお取りまとめいただきまして,ありがとうございます。
  ただいま弁護士会からお出しいただいた問題提起をめぐる御意見でも結構ですから,お出しください。
○今川委員 まず,第1の1についてですけれども,14回の会議を受けて,催告をしたが異議を述べない共有者がいる場合と,所在不明共有者がいる場合とに区別して,提案されています。そして,前者の場合は,当事者の行為のみで効果が発生するとされて,後者の場合は,裁判所の決定があって,初めて効果が発生すると整理されています。
  我々が出していた意見については,第1の1の補足説明2の(2)で取り上げていただき,それに対する考え方も説明されています。
 催告をしたが異議を述べない共有者がいる場合において,共有者全員の同意を要する変更行為を除く場合であっても,場合によっては第三者が絡む場合があるし,登記をしなければならない場合もある。また,逆に,所在不明共有者がいる場合であっても、共有者間で単に使用方法を定めるようなものもあり,言い方は適切かどうか分かりませんが,重いものから軽いものまで幅広くありますので,我々の意見としては,一律に裁判所やその他の公的機関を関与させないと効果が発生しないというのではなくて,共有者が望めば,任意に要件を満たしていることを証明できるような制度を置いてはどうかという意見でありました。
  それについて回答も頂いており,一定の理解はしておりますが,ただ,短期賃借権の登記をするという事例は,かなりレアケースだとは思いますけれども,そういう場合に,この要件を充足している,そして登記原因が発生しているといことを,司法書士あるいは登記官等がどのような形で確認していくのかという課題があると考えます。したがって、手続上の手当ては,引き続き検討していただきたいという意見があります。
  それから,第3の所在等不明共有者がいる場合の不動産の譲渡について,(注3)の裁判の効力について,その終期を定めるということですが,現行制度で不在者財産管理人が裁判所の許可を得て管理している不動産を売却するような場合等でも,許可の効力に終期が設けられるということは普通はないので,新しい考え方だろうと思います。
  裁判の効力について終期を定めること自体は,反対するものではありません。ただ,実際は,所在不明共有者以外の判明している他の共有者の同意があるかどうか,それから買受人が実際いるのかどうか,その金額も決まっているのかどうか,売買契約書の中身はどのようなものかというのも,事前に提示した上で許可の申立てをする。実務の運用を考えると,実際にはそうなるのかとは思います。
  裁判の効力について終期を定めることについて,一定の理解はしますけれども,登記の期限も定めることについても触れられておりますが,実体上の終期を定めておけば,あとは対抗要件ということですので,登記の終期までも定める必要はないという意見です。
  あとは,特に意見はありません。
○山野目部会長 司法書士会の意見を取りまとめていただきまして,ありがとうございます。
  今川委員が後段でおっしゃった第3のところの権限付与の時期的なタイムリミット,終期を定める件について御注意いただいたことは受け止めましたから,検討することにいたします。
  前段の方でおっしゃった第1の1の,催告をしたが異議,意見が出ない場合に,過半数の同意を得たのと同視される状況を確保して話を進めるときに,登記の手続を進めようとすると暗礁に乗り上げる場面が生ずるのではないかというお話は,司法書士会からそのことの問題指摘を頂いたのは,今回が初めてではなくて前にも,司法書士会って短期賃借権がどういうわけか好きなんだなと思わざるを得ませんが,前にも頂いていて,再々お話を頂いているところでございます。
  少し私が理解に苦しむ点は,第1の1でお出ししていただく,そういうサイズの話でお出しいただくよりは,第1の2のところの,部会資料の3ページですね,所在等不明共有者がいる場合の特則のところの方が話が深刻で,こちらは,登記名義人として共有者の氏名が載っているけれども所在がつかめなくて,したがって共同申請に関与させることが絶望的であるという状態で,この2のところの規律にのっとって,その同意関与に代わるような裁判所とのコミュニケーションを経た上での,こちらは本当に管理にとどまるのではなくて,処分までするということを射程に置いていて,(注2)に関わる弁護士会の御意見はありますが,仮に処分ができるとすると,かなり長い期間の借地権の設定のような処分が,この規律にのっとって行われる場合があるものでありまして,こちらの方が実体的にそういう権利変動があったのに,登記が円滑にいかなくて,所在不明共有者の共同申請の関与が絶望的だと登記手続が暗礁に乗り上げてしまうという困難が深刻であると感じます。
  今川委員御自身がおっしゃったように,短期賃借権はめったに登記されませんが,とおっしゃるような1番の話ではなくて,サイズが大きな2番の話で,え,どうなんだと言っていただいた上で,関連して,類似の問題は1についてもありますとおっしゃっていただければ,これは本気で考えなければならない話になるであろうと感じますけれども,何か話の順番が,何で1の方の小さい話からいくのかという点は,いささか解せないという気分で前にも伺ったし,今も伺いましたけれども,何かお話があったらどうぞ。
○今川委員 第2は,裁判所の許可が要件になりますので,そこで手続上,要件充足とか登記原因の発生等は確認できるのではないかと思っておりまして,必ず全て裁判所の決定というのはちょっと重いなとは思いつつも,強く反対するものではないです。ただ,1の場合は,当事者だけの行為で効力が発生することになりますので,そこをどう確認していくのか,ということです。
○山野目部会長 6ページの第2もそうですし,3ページの第1の2のところも,同じような構図の問題があって,こちらが多分問題としての深刻さが大きくて,そこについては,確かに今川委員がおっしゃるように,裁判所が関与しているから登記原因は確かめられますというお話があるかもしれませんが,登記原因が確かめられたとしても,直ちにそれが共同申請の例外になるとは限りませんから,裁判所の給付文言がついていれば,63条1項でいけるかもしれませんけれども,そこのところも,規律創設を明示に要求していただくというようなお話とともに,第1の1のところも問題であると話が進んでいくものであろうと感じます。
  いずれにしても,しかし,司法書士会が御意見としておっしゃろうとしていることの骨子は理解することができるものでありますから,第1の1,第1の2,それから第2の三つの局面について,ここで提示されているような実体的規律の変更や創設が,仮にこの方向で実現した場合の登記手続との関係で,裁判所の裁判に給付文言を入れてもらうような規律にするかとか,共同申請についての例外を考えることの適否であるとか,登記原因証明情報の在り方等について,総合的に検討する必要があるということを,大枠しておっしゃろうとするものであると理解しますから,事務当局の方でそれを検討していただくようにお願いします。
  今までここのところ,規律の創設方向がここまで育ってきておりませんでしたから,登記のことまで余り意識が向かなかったですけれども,ただいまの司法書士会の御注意で,そろそろそういうことを考えなければいけないという段階に来ているということが分かりましたから,事務当局の方で努め,また司法書士会とも御相談をさせていただくということにいたします。どうもありがとうございます。
○今川委員 整理していただきまして,ありがとうございます。
○山野目部会長 いえ,ありがとうございます。道垣内委員,どうぞ。
○道垣内委員 申し上げたいのは第3についてなのですが,それとの比較をするために,第1の1の話からしたいと思います。
  弁護士会で,第1の1の(注2)に関連して,裁判所が関与するということにするという話だったんですが,それは(注2)のところにも,催告は裁判所が行うとなっており,裁判所の役割をここでは催告と書いてありますし,さらには,補足説明のところでは,2ページですね,裁判所が何をやるのかということについて,いろいろな考え方があり得るという話が書いてあります。いろいろな考え方について検討するということ自体には何の異存もありませんが,ただ,その大前提として,これはこういうふうに管理すべきである,こういった管理をするということはいいことだと,裁判所が判断するのはやめるべきであり,裁判所には,手続が満たされているなら満たされているということを明らかにさせましょうというのが,せいぜいだろうと思うんですね。
  それとの関係で申し上げたいのは,第3の,さきほど今川さんからお話があったところなんですけれども,第3の①のところで,処分をする権限,譲渡をする権限を付与する旨の裁判をするに当たっては,恐らく契約の内容とかそういうものをきちんと示して,裁判所の許可を得るのだろうと,そういう実務的な対応になるだろうとおっしゃったんですが,それって,本当なんだろうかという気がするんですね。そうなりますと,裁判所としては,その譲渡価格が妥当か否かとか,相手方が妥当か否かとか,そういう実体的な判断をするということが,そこでは予定されそうなんですが,原案といいますか,この資料で出てきているというのは,第三者に譲渡するという必要があるかもしれないよねということが抽象的に認められたら,権限付与というのがあり得るという,そういう前提であって,個別具体的な譲渡契約のよしあしについて判断するという構造ではないと思うんですね。したがって,実務はこうなると思います,運用はこうなると思いますと,さらっとおっしゃったんですが,それって全然違う制度として構想することになるんだと思います。
  個人的な意見としては,第3の①のままでよくて,それは抽象的な譲渡権限を与えるべきか,このシチュエーションにおいて,その範囲内だけで裁判所は判断するということでいいのではないかと思います。いちいちここで売るべきかどうかというふうなことを,裁判所に判断させるというのは,私はどうもおかしいのではないかと考えます。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  道垣内委員がおっしゃった2点について,脇村関係官が話したいという表情をしていますから,本当は蓑毛幹事に指名しようと考えましたけれども,脇村関係官,先にどうぞ。
○脇村関係官 すみません。
  事務局の御説明させていただきますと,道垣内先生おっしゃっていたとおり考えておりまして,抽象的にも,一番考えないといけないのは所在不明ですとか,供託する金額幾らとか,その辺を考えていまして,誰に売るかとかは,基本的には,後の共有者の方で考えてくださいと理解していました。
  一方で,今川委員がおっしゃっていたのは,申立人にといいますか,登記申請する立場でおっしゃっていたのかなと,思っていまして,実際には裁判所に申請というか,そういう手続をとるときには,事前にきちんと確認をして,そろってからやるんだということかと理解しておりまして,裁判所の方で事務局の案を考えていたのは,ある意味,無味乾燥,金額はそういう意味で,譲渡する金額は考えないということを考えていました。すみません。
○山野目部会長 道垣内委員が問題提起をなさった事柄のうち,後段の部会資料の9ページ,第3との関係で言いますと,ここで裁判所が譲渡をする権限を付与する裁判をするということの意味は,道垣内委員が御理解なさったとおり,また,今,脇村関係官が説明したとおり,これは抽象的な,譲渡をしたら処分の効果が生じますという法律関係を作り出すための形成裁判を裁判所が行うことができるということを定めているにとどまるものでありまして,それを超えるものではないであろうと感じられます。
  裁判所は,不動産屋ではありません。幾らの金額で,いついつこういうふうに履行しろというようなことを,裁判所が指図するというか,命令をするというような法律関係ではなくて,譲渡をすればその法的効果が認められますという,法律関係の形成を是認しますという裁判をするという意味を述べている場所が①の本文のところでありまして,それとは別に,確かに(注2)のところで,供託をする金額は裁判所が指定することになっていますから,そこでは,別な文脈で金額が出てきますけれども,太字本文の①のところ自体は,そういうことであろうと考えられます。
  部会資料が御提示申し上げていることはそのような内容であり,蓑毛幹事がおっしゃったような,それとは若干異なるイメージで弁護士会の先生方に受け止めた方がおられるとすれば,また弁護士会の方で御議論いただいたりして,コミュニケーションを重ねるということであろうと考えます。
○蓑毛幹事 部会資料について,弁護士会のメンバーの理解が違っている訳ではないと思います。第1の部分について,これは,裁判所が内容の審査をするか否かではなく,手続に関与するか否かの問題であるという理解を弁護士会もしています。
  そのうえで、第1の1の規律,本文の提案は,そういった手続的な関与も裁判所は一切しないという提案だと理解し,そうではなくて,裁判所は手続には関与すべきだということで,(注2)に賛成するという意見が多数であったということを申し上げました。
  第3の部分についても,部会資料本文と補足説明に書いてあるとおりだと理解しており,これに賛成しています。
○山野目部会長 蓑毛幹事,ありがとうございます。
  そのうえで,今も話題にしていただいたですが,今度は道垣内委員が御発言なさったことの前段の方でありまして,1ページの第1の1のところで,催告をして,異議,意見を問い合わせるという手順に,裁判所を関わらせるという,この(注2)の可能性について,弁護士会では,積極の御意見が有力であったという意見分布を蓑毛幹事から御紹介いただき,道垣内委員からは,しかし,それに対しては,疑問を感ずるという趣旨の御発言を頂いたところでありまして,いずれのお話も根拠があるものと感じられますけれども,少し法制的に考えていったときに,ここに裁判所を関与させるということは,いろいろ難しい部分があるということは,実感として思うところがあるものでありまして,第1の1の扱っている局面というものは,問合せの相手方が行方不明ではなく,現にいるものですね。
  現にいる人との間のコミュニケーションについて,裁判所,1回関わってくださいと言われても,裁判所の関わり方というものは,道垣内委員がいろいろ可能性を考えて悩んでおられたところから明らかなように,別に内容的に良い悪いをかなり裁判所が入ってきて述べるという局面ではありませんから,裁判所の目の前を通っていって,見ました,どうぞしてくださいということを,公正な機関である裁判所が見ているから安心ですよということを超えて,何かが得られるかというと,あまりそのようなことは感じられないということがあるとともに,従来の法制の,これと似たような場面ですね,例えば,建物の区分所有等に関する法律で,建替えの決議をするときに,建替えに賛成しますか,反対しますか,お答えがないから困りますねという問合せをするときだって,別に裁判所を通していなくて,当事者同士で,念のため内容証明,配達証明でするでしょうけれども,当事者同士でするものであって,ああいう従来のところで裁判所が関わっていないのに,ここは裁判所に関わらせるということになると,いろいろ説明が難しいことになってくるであろうとも危惧されます。
  悩ましいですけれども,弁護士会の先生方の中にそういう御意見をおっしゃる方がいるという経過は,御紹介として受け止め,また意見交換を重ねていただけると有り難いものですが,蓑毛幹事,お願いしてよろしいですか。
○蓑毛幹事 部会長がおっしゃられたことについて,今,私の方から反論等があるものではありません。部会長がおっしゃることは,個人的には最もだと思いますので,持ち帰った上で,ワーキンググループ内でコミュニケートを取りたいと思います。
○山野目部会長 ありがとうございます,御面倒をお願いいたします。
  引き続き御意見を承ります。
○佐久間幹事 細かいことで恐縮でなんですが,2点ございます。
  いずれも同意に関することなんですけれども,一つは,3ページの2の直前にある(2)のところでして,この仕組みを用いる場合に,誰に対して催告するかということに関しまして,絶対的過半数を得ている場合は別だけれども,相対的過半数しかない場合は,基本的に全員に催告せよとなっておりますよね。
  例えば,ですけれども,共有者が4人いて,2人は賛成していると。残り2人から意見を徴そうというときに,まず1人に対して意見を聞こうとしたところ,意見が出てこなかった。この場合,もう一人に催告しなければいけないということなんでしょうか。仮にそうだとしたら,どうしてなのかなというのが,私は疑問に思いました。分母が3に下がって,2の多数があるということが確定しているのに,どうしてもう一人にも意見を聞かなければいけないのかというのが,私が多分気づいていないのだろうと思うんですけれども,実質的に何かそれによって保障されるべき利益があるのであれば,お教えいただければと存じます。それが1点です。
  もう一つは,11ページでございまして,これ,前からの提案のようで,今更ということになるかもしれませんが,第4の2の①で,共有物の管理者は管理行為をすることができると。ただし,他の共有者の同意を得なければすることができない行為については,共有者全員の同意を得なければならないとされております。これに関しまして,たとえば,共有物の管理行為にかかる意思決定について,本日の部会資料40の2ページから,実際には3ページの③に,要するに,過半数決定で管理に関する行為をしてきた場合,その管理に関する事項をひっくり返す決定は過半数ですることができるのだけれども,特別に影響が及ぶ共有者があるときには,その人の承諾を必要とする,という規律の提案があります。この規律に関して,元に戻りまして,共有者が管理者を選びまして,その管理者が,前の管理に関する事項を変更するという場合に,特別に影響を受ける人がいるときに,全員の同意がいるという現状の案では,その影響を受ける共有者以外の同意も得なければいけないということになると思います。これもちょっと,なぜそうなるのか,私には理解ができませんでしたので,申し訳ありませんけれども,御説明いただければと存じます。
○脇村関係官 最初の1点目の承知の件ですけれども,一般的に252条の議論として,それは要らないのではないかと,あるいは部会の議論として,やはり意見陳述の機会を与えるべきではないかということで,両論あったと思うんですけれども,意見を陳述する機会があれば,それを聞いて他の方が意見変わるかもしれませんし,何といいますか,絶対的に完全に過半数超えて賛成している場合よりは,そういう陳述機会をより保障すべきという議論があるのかなと思っていましたのと,実際の運用としても,最初の1人だけまず連絡して,その後に次やろうというのが,集団的意思決定をしようとする局面で,本当にいいのかなというのが,書かせていただいた趣旨でございます。
  管理者の方につきましては,確かにその関係,すみません,もう一回整理したいと思いますけれども,もう一回,すみません,確認したいと思います。
○山野目部会長 佐久間幹事,お続けください。
○佐久間幹事 いえ。ありがとうございます,特にございません。
○山野目部会長 今後とも検討いたします。ありがとうございます。
  藤野委員,どうぞ。
○藤野委員 ありがとうございます。
  第1のところで,前回の部会のときに,所在等不明共有者の場合はちょっと区別して考えていただけませんかということでお願いをして,今回このような形で分けていただいていると。特に,対象となる行為のところと,裁判所が関与するかどうかというところで,場合分けをしていただいているというのは,非常によい方向性なのではないかと思っています。催告をしたが異議を述べない共有者がいる,という場合では裁判所が関与しない手続になるという点と,所在等不明共有者がいる場合に,対象となる行為を限定しないという点については,強く賛成をしたいと思っています。
  1点申し上げるとすると,第1の1の(注1)のところで,本文では,対象行為として「共有者全員の同意を要する変更行為を除く」と書かれているんですが,前回申し上げたとおり,やはり催告して,返答する機会を与えているというにもかかわらず,同意も反対もないと,異議が述べられていないということなので,このような共有者にどこまで保障を与えないといけないのかというところは,もう少し検討していただければ,というところでございます。というのも,所在等不明共有者だと認定された場合は,ここでいうと2の方のラインに乗っかっていって,裁判所が関与するということになるわけですが,所在等不明という要件を充たすかどうかは,今回の部会資料では,土地の現況等を踏まえて判断することになるという書き方をしていただいておりますが,やはり最終的にどうなるか分からないというところもあります。そのような中で,催告したけれども何も返ってこないと,所在等不明と言いたいんだけれども,そこが微妙なところですねというような共有者の方が仮にいらっしゃったとして,それでも,催告して何も異議がないというだけでは次に全く進められない,ということになってしまうと,困ることが多々あるのではないかと思いますので,ここのところは,例えば,催告の手続のところを,かすめ取るようなというか,詐術を用いて返事なんてしなくてもいいですよといって返事させなかった,それで,残りの人だけで決めてしまったと,そういうような場合は,基本的には駄目だという話でいいと思うのですが,逆に正当な手続を経てやっているときに,これが,共有者全員の同意を要する変更行為なので,催告で何も返ってこなかったというだけでは駄目ですというのだとちょっと厳しい場合があるのかなというところで,第1の1に関しては,(注1)の案が採用される余地がないのかというところは,再度,意見として申し上げたいと思います。
○山野目部会長 藤野委員の御意見を承りました。受け止めた上で,引き続き検討することにいたしますとともに,今の段階で御案内しておくとすると,少なくとも民法が定めている共有というか,今まで理解されてきた共有というものは,共有者一人一人に不機嫌を許す制度なのですね。ある共有者が,今,自分はいささか不機嫌で誰とも口をききたくないと述べ,あなたがたと一緒にこんなものを共有しているかもしれないけれども,一緒に共有していたからって,別に仲よくしなければいけないとかコミュニケーションを取らなければいけないという立場にはありません,言っておきますけれども。私は不機嫌ですから,誰から手紙が来ても,誰からメールが来ても,何も答えたくありませんっていう態度をとる人がいたときに,それを絶対いけないとは,必ずしも言わないという前提で作っている制度であり,変更に係る事項について,問合せに知らんぷりして何も答えないときに,答えないなら,こちらでしてしまいますよという制度まで突き進むと,従来の共有観を少し変えていく部分がありますから,おっしゃることはごもっともであるとともに,いささかそのような大きな話が背景にあるということには注意をしなければいけないということが1点と,もう1点は,(注1)のところを動かすと,場合によっては,論理必然性はないかもしれませんけれども,(注3)が連動して動く可能性があって,コミュニケーションを省略していいなら,最低限(注3)の最低数というか,定足数は確保してくださいという議論に,一見弾みがつく可能性もあります。いろいろなところが関係しますから,御意見を受け止めた上で,また考えてまいりましょう。
○道垣内委員 すみません。私,先ほど今川さんの御意見について,反論を述べたんですが,自分で反論を述べておいて,それからもう少し考えていると,わけ分からなくなってきたので,ちょっと教えていただければと思います。ひょっとすると,今川さんの言うとおりだと,最終的に意見を変えるかもしれません。
  と申しますのは,第3の①をまずどう読むのかなのですが,その3行目のところで,「裁判所は,共有者の請求により,請求をした共有者に対し所在等不明など全員の同意を得て不動産の所有権を第三者に譲渡ができる権限」とありますが,この文において,「同意を得て」というのは「譲渡できる」にかかるんですよね。同意を得たら,申立てをすることができるようになるわけではなく,同意を得て譲渡することができるということですよね。
  そうしたときに,②のところですが,これはすでに議論されているかもしれませんので,大変恐縮なのですが,私は,すぐ全部忘れてしまうものですから申しますと,②の,「①の裁判が効力を生じたとき」というのは,同意を得れば,第三者に譲渡していいよという権限が与えられたという段階ですよね。にもかかわらず,同意を得たら譲渡できるということになったら,もし所在等不明共有者というのが出てきたら,時価相当額を払わなければいけないのでしょうか。自分は,同意を得て譲渡しようと思っていて,しかし,時価よりも高く売れないかもしれないけれども,それは請求する自分のリスクだろうなと思ってやったら,ほかの人が同意してくれなかったから売れなかった。にもかかわらず,請求したのだから時価相当額を,持分に応じた額を払えと言われたら,それはびっくりです。自分は頑張ったんだけれども,ほかの人が同意してくれないから売れないのに,なぜ払わなければいけないのか。ちょっとよく分からなくて,何か大きな勘違いを僕はしているんだろうかと思ってしまうんですね。
  第2のところでの②は分かるのです。これ,実際に申立共有者というのが取得をすることになりますので,その部分の時価相当額を払いなさいというのは分かるのですけれども,第3のところで,どうして②のようになるのかというのがちょっと分からなくなってきて,そこで,今川さんの話に戻るんですが,今川さんがおっしゃったように,契約書も額も全部,相手方も決まった段階で①の申立てをして裁判があるというのが,全体として前提になっているのだろうかという気がしてまいりまして,結論として今川さんがおっしゃったことは正しいのであり,私の反論が妥当でなかったのだろうかというのが,気になっている次第でありまして,お教えいただければと思います。
○今川委員 私は,道垣内先生ほど深くは考えていたわけではないのですが,同意取得の場合は,裁判所は、共有者のうち,ある共有者の持分を除外するという決定をすれば,あとは他の共有者に変更行為の中身は任せるというのでいいと思うんですが,この第3の不動産の譲渡については,相当な価格の供託をさせるというのがありますので,裁判所が相当な供託金額は幾らだと定めなければならない。そして理屈上は、裁判所が相当であると判断した金額と全然違う金額で共有者が売却するということもあり得るとは思いますが,第3の②のように,所在不明共有者がもし出てきた場合に,時価相当額を請求するということになっていますので,裁判所とすると,信用力ということも考えると,実務上は裁判所が相当な額として認めたものと,実際の価格が全然違いましたということは,できる限りないようにするのではないかということもあって,この時価というのを判断するのって非常に難しいので,実際幾らで売却するということが,もし予定として決まっているのなら,その額は,非常に大きなファクターになると思ったので,申し上げました。
  誰に売るのか,買受人は誰かということの相当性についてまで,裁判所が判断するということを,申し上げたわけではありません。
○脇村関係官 まず,道垣内先生から御指摘いただいた点,ありがとうございます。
  ちょっとここは,私も書いていて,ぐるぐる回っていたところで,すみません,実質論においては,譲渡した後に当然請求できると,あるいは譲渡した場合に請求できるということでいいんだろうなということを考えていましたし,従前の部会もそういう議論をしていたんだろうと思います。
  あと,それを譲渡した場合と書くのか,ここでこういうふうに書きましたのは,終期を入れるんであれば,実質的には終期を越せば当然無効になりますんで請求できないということを加味すれば,こういった表現でもいいのかなというのは少し考えていたところだったのですが,実質は道垣内先生の考えていらっしゃる譲渡して,全くしていないケースについてまで請求といいますか,お金を取れるということは考えていませんでしたので,ちょっと表現ぶり,法制的なことも含めて考えていきたいと思っています。
  また,今川委員おっしゃっていたとおり,元々この部会で,中間試案の方ですかね,議論していたときに,時価と実際に譲渡する金額がずれてもいいんですよねって議論は,理論的にはさせていただいていたと思います。その上で,今川委員おっしゃったとおり,ただ,実際認定する際に,実際の売買価格を見ずに,鑑定といいますか判断できるのかというのは,おっしゃるとおりかも,ちょっとそこら辺,私も若干,不動産鑑定に疎いところがありますので,そういった御指摘はそうなんだなと思って伺っていました。それも含めて理論的には変わらないんですが,実質論を含めて,考え方についてはまた考えていきたいと思います。
○山野目部会長 道垣内委員,今のようなことで少し,考え方そのものを整理した上で,さらにそれをルールの表現としてどういうふうに言葉を整理するかということの課題が残っているということが分かりましたが,それを前提にお話をお続けいただくことがあれば,お願いいたします。
○道垣内委員 1点だけ申し上げますと,仮に時価が1億であっても,うまい具合に2億で売れたら,その所在等不明共有者は,2億を基準とした額がもらえると思うのですね。決して時価相当額で1億を基準とした額になるわけではないと思います。そうすると,時価相当額が,処分時の時価相当額といえば,それはそれでもいいのかもしれませんが,裁判が効力を生じたときというふうなのを基準値にすると,どうなのかなという気がしますので,引き続き御検討いただければと思います。
○山野目部会長 よく分かりました。
  この第3のところについては,実際に時間の順番を追って,何の次にこれをするということを,1回時系列的に整理をし,その上で整理された事柄のどこまでを,どのような言葉で規律文言として表現していくかを検討するという仕事があるということが,今日の御議論で分かりましたから,事務当局にその作業を続けてもらうことにいたします。
  これは,不動産取引の現場で行われている決済の手順のいろいろ複雑な様相を帯びている事柄,事象に更に輪をかけて,局面が,所在不明者がいたり,裁判所が関与したりして複雑になってくる事態をうまくさばかなければいけないという話になりますから,事務当局において検討し,司法書士会のお知恵も頂いた上で,検討が深められるとよろしいと感じます。
  従前の不動産に抵当権の負担があったりすると,更にその抵当権の処理のために厄介な問題処理をしなければいけなくて,何かこれは,いささか試験問題を思わせる複雑な話になりますから,皆さんで知恵を集めて進めていくということにいたしましょう。ありがとうございました。
  松尾幹事,どうぞ。
○松尾幹事 ありがとうございます。
  この部会資料41の第2の所在等不明共有者の不動産の共有持分の取得について,この制度をどうやって活用していくかということは,所有者不明土地の解消に向けた方策の切り札の一つとして,重要なポイントになるのではないかと思っています。
  この後,部会資料42でも出てまいりますように,この仕組みを,共同相続人の一部が所在不明の場合,あるいは特定できない場合にも使っていくということですので,しかも,これも部会資料42の最後で,共同相続人による時効取得については規律を設けないという提案ですので,そのことにも鑑みますと,この第2の所在等不明共有者の持分の取得の制度がどういうふうに運用されるか,実際にうまく使えるかということが非常に重要になってくるのではないかと思われます。
  そのことを前提にしまして,例えば,共有者のほとんどが特定できない,所在も分からないまま,共有者の1人が管理を継続しているという状況の中で,例えば,その1人の持分が10分の1であるというときに,ほかの10分の9の持分を,この不明共有者の持分取得の制度を使って取得するということを考えたときに,裁判所に申し立てて公告し,時価相当額を供託するということで,例えば,時価4,000万円の土地だったとすると,3,600万円を供託しなければいけないことになります。しかし,その際に,例えば,この共有者が10年も20年も1人でこの土地の公租公課を負担し,その管理費用も支払ってきた場合に,その費用償還部分を,253条の管理費用として,共有持分を取得するために供託すべき時価から差し引いて供託すればよいということが認められるでしょうか。私は認めてよいのではないかと考えますが,確認させていただきたいと思います。
  それがどういうふうに扱われるかによって,この制度の実際の使われ方や機能が違ってくるのではないかと思います。もしかすると,そういうことは想定していないかもしれませんが,ちょっと筋違いの質問だったら申し訳ないんですけれども,疑問になったものですから,お伺いできればと思いました。
○山野目部会長 今のお話は,事務当局はどう考えていますかと誰か関係官に発言希望があれば伺いますけれども,考えているかというよりも,松尾幹事から,今のお話でいうと,差し引き計算が可能になるような解決を想定し,所要の規律整備をしてほしいという,御意見を承ったと受け止めてよろしいものではないかと思いましたけれども。
○松尾幹事 はい,そのとおりです。もし費用の控除が可能であれば,この共有持分取得の制度は所有者不明土地の解消手段として,実際に使われるものになるのではないかと思います。ちなみに,今回規律しないことが提案されていますが,共有者の1人による時効取得が認められるときは,持分取得の対価の供託ということなしに他の共有者の持分が取得されることになります。ただ,強制取得を可能にするものですので,そこはちょっと慎重に考えなければいけない部分もあって,本当にそれでいいのかなということを,確認させていただきたいと思った次第です。
○山野目部会長 それでは,松尾幹事がおっしゃったことについて,事務当局も含めて,何か御意見があったら,今承っておいて,次の検討の機会に,更に深めた資料をお出ししようと考えますけれども,何かただいまの論点について御発言がおありでしょうか。
○脇村関係官 ありがとうございます。
  確か松尾先生から,以前も同じような話を頂いたような気がしているんですけれども,今回の制度につきましては,時価相当額について簡易にやろうという発想でおりますので,もろもろの費用,それまでの費用などをきちんと清算したいという制度として組むんであれば,相当制度の根幹が変わるんだろうなと思います。
  ですので,従前払ってきた費用ですとか,そういったものを含めて清算したいということであれば,私としては,この制度ではなくて,所有者不明土地管理制度などを活用し,管理人との間できちんと協議をして,幾らの費用がこれまで掛かったということを確定した上で,売却をし,そこから差し引くということしかないのかなと思っております。
  この制度にしようとすると,当事者がいないのに,裁判所が管理費用を認定しないといけないとか,従前払った費用の確認ということになりますので,ちょっと,手続が大分変わってくるのではないかなというのが,正直思っているところでございます。
○山野目部会長 松尾幹事が提起した問題は,別の制度で受け止めてはどうかという意見を今,もらいました。
  ほかに,この点についておありでしょうか。
  よろしいですか。
  では,これは引き続き検討するということにいたします。中田委員,どうぞ。
○中田委員  先ほどの第3の方に戻るのですけれども,第3について更に御検討いただくということでお願いしたいと思います。
  その際に,一つお願いなんですが,譲渡をする際,相手方である買主,買い受ける人に,法律関係を明確にしてあげることによって,譲渡がスムーズにいくようにするのが望ましいのではないかと思っています。
  今回の法律構成は,非常に明快になっており,法定の処分授権みたいなものをスタートにしたものだと理解しています。つまり,所在等不明共有者以外の共有者たちが不動産全体の売主になる,したがって,担保責任もその売主である共有者たちが負うし,代金債権もその人たちが持っていて,所在等不明共有者は関係ないんだということだろうと思います。ただこれは,その不動産を買おうとしている人から見ると,とても難しい制度だと思いますので,それを条文の上で,もし可能であれば,できるだけ疑義のないようにしていただくというのがよろしいですし,少なくとも解説などでは明らかにする必要があると思います。ただ,今はまだ条文化の作業の前,条文に至るための検討の作業の段階ですから,買主が安心して取得できるような制度にするということも,御検討の際に考えていただければと思います。
○山野目部会長 御注意をよく理解し,承りました。踏まえさせていただきます。どうもありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。
  よろしいでしょうか。
  それでは,部会資料41について,多々有益な御指摘を頂きました。
  今日頂いた御意見を踏まえて,整理を続けるということにいたしま……失礼しました。沖野委員,どうぞ。
○沖野委員 こちらこそ,間際にすみません。
  第4の管理者の点ですけれども,前回疑問に思った点を非常に詳細に明らかにしていただいて,有り難いと思います。ただ,なおもよく分からないところがあります。
  どういうことをやりたいかというのは書いてあって,問題は,何か書いていないところが,どのように埋まっていくのかということではないかと思われますので,書かれている,具体的にどういうことをしたいかという限りでは,このゴシックのとおりだと思うんですけれども,一方で,これが管理者の選任・解任,あるいはその職務の執行ですとか遂行という概念で全部整理をしていくということが,あたかもといいますか,共有をめぐる関係において,一種の地位あるいは機関的なものとして,その管理者というのを立て,その地位にどういう人を就け,あるいは,そこからリムーブするか,どういう職務権限を与えるかという,そういうような構成に,第4は見えます。
  しかしながら,ここでは,飽くまで管理を依頼するというのは,委任契約を別途締結するということが想定されていて,その委任契約に基づいて,いろいろな権利義務というのが管理者の方に発生していく。報酬ですとか,あるいは善管注意義務の規定なども,今回は置かれませんけれども,それは委任の方で,委任契約当事者との関係で負うんだと,そういう整理のように見られます。そうすると,それと管理者の職責に就けるということとの関係がどうなるのかというのは,よく分からないように思います。
  むしろ,第4で説明として書かれているような法律関係を考えるのであれば,むしろ共有者間の管理行為,管理に関する行為について,共有者自身がするときに過半数の決定で行うことができるけれども,具体的に,例えば,賃貸借契約をするというようなときには,それに賛成した人が,あるいは賛成した人との間で契約をするのか,さらには,それをまた更に切り離して,契約は契約ですということになるのかというのも分からないのですが,むしろそれと類似の法律関係ではないのかという気もしまして,だとすると,管理者というような一種機関的な者を選任・解任するというよりは,共有物の管理を第三者に委託するということについての規律の話になってくるんではないかと,そういう整理になるのかなと思ったんですけれども。さらにその前提としては,ここでは,管理者に選任すれば,当然賛成した,あるいは反対しなかった人との間で委任契約ないしは委任関係となるような想定でもあるようですが,例えば,1人の人が提案して,何人かの人は過半数を超えるまで賛成があって,しかし,異議を述べた人もいるというときに,一体委任なり委任契約なり委任関係は誰との間に立つのか,それは,賛成した人は当然,委任関係がそこに立つならば,それは実は法定の委任関係で,誰との間に立つかというのを賛成した,あるいは異議を述べなかった者との間だけに立つという規律にしているように思われますし,それに対して,いや,委任契約をするのですということであれば,実際に契約を締結した人だけということにもなり,例えば,提案した人だけが締結するということかもしれません。そうすると,修補ですとか,各種の権利義務も,その人だけが負うことになりそうで,その辺りが,なおどうもはっきりしないように思うのですけれども,今のような機関的な説明で,本当にいいのかどうかというのは,考え直す機会はないのかもしれませんけれども,やはりちょっと気になるところですので,お伝えしたいと思います。
○山野目部会長 沖野委員から今,第4の部分について御所感を頂いたところを踏まえて,もちろん次回の,次の機会に向けて検討いたします。
  思い起こしますと,部会資料27は,どちらかというと,むしろ沖野委員の発想に近くて,第三者が管理者である場合と共有者のうちの1人が管理者である場合とに場合分けをした上で,それぞれの法律関係がどうなりますかということを,正にこの太字の部分に記して,委員,幹事の意見を問うという形でお出しいたしました。それについての御議論を第13回会議で承ったところ,それらについて様々な御意見が出て,必ずしも意見の方向性が一致しませんでした。取り分け共有者のうちの1人が選任された場合のところについて,意見が分かれたという側面が大きいように感じます。
  そのようなことがあったという経過を踏まえ,かつ,考えてみると,共有者の中から,共有物の管理をする者を設けたときの民法上の契約関係の実体といいますか背景,基盤をどのように考えるかは,解釈に委ねるべき事項であるかもしれないと考えられましたところから,本日は,中身をがらっと変えたものではありませんが,部会資料で提示する太字の内容としては,沖野委員のおっしゃり方でいうと,機関を描くという仕方で提示申し上げると,改めてみました。
  ただいま沖野委員からは,むしろ,どちらかというと,そこまではっきりおっしゃったかどうか分かりませんが,第三者を選任する場合に焦点を置いて,もう少し法律関係を明確にするような,太字に値するような規律を構想してみた方が,分かりやすいではないかというヒントも頂いたところであります。何通りか,この太字にする内容として,どういうふうな打ち出し方をするかということについては,考えられるところでありますから,沖野委員から頂いたヒントをも踏まえて,次の機会に向けて,また表現の仕方,並べ方のメリット,デメリットを比較して,再検討してみようと考えます。
  本日,そのような御案内にとどめさせていただいてよろしいでしょうか。
  ありがとうございます。
  畑幹事,どうぞ。
○畑幹事 畑でございます。
  5ページの手続の辺りに関連して,お尋ねなのか意見なのかよく分かりませんが,ここに書かれておりますように,確かに一般的には裁判の形成力が生じた場合,それをほかの人が勝手に争うことはできないと考えられていると思いますし,多くの場合,それで大過ないのだろうと思います。個人的には,論理必然的にそういうわけでもないだろうとは考えているのですが,それはともかくとして,この種の制度について,反対とかそういうことでは特にないのですが,手続的な面でいえば,これを悪用されることがないかということが,少し気になります。つまり,意見が合わない共有者がいる場合に,本当は所在が分かっているけれども,あの人は所在不明だといって事を進めてしまうというようなことが,当然病理現象だと思いますし,所在不明の認定というのをきっちりすれば,そうそう起こらないということかもしれませんが,その辺りどうするのかということも考えておく必要があるかと思っております。
  特に,5ページの辺りで書かれていることというのは,基本的に管理行為ですので,しようがないかという気もしないでもないのですが,同じ問題は多分,第2の持分の取得とか第3の譲渡についてもあるような気がいたしまして,第2や第3になると,これはもう持分を失ってしまうものですから,かなり深刻な問題かなという気がします。
  訴訟の話でいえば,最近は余りそういうことないのかもしれませんが,例えば,公示送達というものを悪用して確定判決を騙取した事例などというのも,かなり前ですが,存在しますので,そういうことがあり得ないわけではないということで,条文として何か手当を置くとかいうことではないのかもしれないのですが,問題としてはあるかなと考えております。
○山野目部会長 長期の海外における滞在とか長期入院の機会を,何らかの形で知り得た他人が,その期間はコミュニケーションが難しいということを奇貨として,このような制度を悪用するというようなことは,何か推理小説のような話のことを考えると,ありそうな気がしてまいりました。
  更に考えますと,ここに限らず,所有者所在不明,あるいは共有者所在不明を要件とする場面一般について,そのようなことというものは危惧されるところでありますから,ただいまの畑幹事の御注意を,ここ及びその他類似の局面で,注意してまいるということにいたします。ありがとうございます。
○道垣内委員 すみません。分からないまま発言しますので,結論が出るような話ではないんですが,沖野さんのおっしゃった第4に関連します。これは結構,難しいですよね。つまり,管理者として選任された受任者が共有物について賃貸借契約を結ぶと,契約当事者は受任者になるんだけれども,委任をした者は,委任した者というのは共有者ですが,当該賃貸借契約の効力を否定できないというか,当該賃借人の占有権限を否定できないというか,そういう法律関係になるというわけですけれども,委任契約一般の問題として,どういうふうに考えるのかという問題が背後にもちろんあるわけであり,ちょっとそこに自信がありません。だから,私はこの補足説明は,その意味ではすごくレベルが高いと思うんですけれども,今まで委任契約のときの効力について,こんなにクリアに整理できていたのだろうか,という気がするわけでして,本当は委任のところではそれほど明確になっているわけではないのに,この共有者の管理者についてはこうなりますよと,書けるのかな,という心配があります。条文上は,委任一般との関係もありますので,クリアに書けないということになるんでしょうけれども,だから,どういうふうにすべきであるという意見も何もないままに発言をして申し訳ないんですが,何かこの辺りのところを,沖野さんのお話も踏まえて整理をされると,今伺いましたので,あわせて,法律関係についても,何か理解の取っかかりというものが書けるのならば,整理をしていただいた方がいいのではないかと思います。
  私自身は,その後の解説で書いたからといって,何かそれに法的な拘束力があるとは全く考えませんので,一問一答に書けばいいという問題ではないと思います。
○山野目部会長 最近の一問一答は,いささか饒舌ですかね。ですから,何でも一問一答に書けばいいというわけではないということは,おっしゃるとおりでありまして,今後,委員,幹事で御議論を進めていただくに当たっても,何とかのことは一問一答に書いてくださいね,とかということを気楽におっしゃっていただくことも困りますけれども,さはさりながら,ここの第4の論点に関して言うと,補足説明のところで示している法律関係理解は,一定の理解として間違っていないというか,恐らく成立可能な明快な理解の一つを示していると感じます。
  道垣内委員がやや御心配になった部分があるように,本当にこれしか考え方がありませんか,ということは,なお議論の余地がありますし,また裏返して述べると,本当にこれしか考えがなくて,委員,幹事の意見がまとまるものなら,もう少しそれを規律表現として明確に外に出していただけませんかという問題意識が,沖野委員の御指摘にもあったとみます。
  それとともに,第13回会議,部会資料27からの経過を振り返ると,そのうようことを,考えが明快であるとしても,規律で表現していくことの得失といいますか,難しさもありまして,それらがいずれも悩ましいことであって,総合的に勘案して,また考えましょうということが,今日の御議論で明らかになってきたものであろうと受け止めます。
○潮見委員 余り言うつもりもなかったんですけれども,先ほどの沖野委員や道垣内委員の話を聞いていて,やはり言わなければいけないと思ったので,少しだけ発言させてください。
  規定の中に,これ以上にきちんとしたものを組み込むことができるかどうかということは,私自身はかなり悲観的です。沖野委員と道垣内委員が言われたところに尽きるんですけれども,この問題というのが,そう簡単に,理論的にこうだという形で解決することはできないと,私は思っています。
  というのは,普通の委任の場合でしたら,委任者が受任者に対して,例えば,財産管理を委任するということで話がついて,その財産管理権の内容とか,あるいはどのような義務を尽くすべきかは,基本的には,委任契約の内容から出てくるし,さらに,そのことを決めていないならば,準拠枠があるわけですから,その準拠枠にある規範を適用すれば,これで解決はできます。
  ところが,今回の場合には,委任者に当たる人と並んで,ほかにもいろいろな共有者がいて,財産管理権限も持っています。そんなときに,一部の共有者が,ある人に財産管理をさせるということで管理人の選任に関与して,一定の条件といいますか,権限付与というものをした。ところが,他方においては,それに全く関与していない人がいる。ここで、管理人が実際に行うのは,土地あるいは不動産の管理であるということで,管理に着目すれば,共有の中での管理者と共有者の関係という準拠枠がもう一つ出てくるわけですよね。結局,考えうる準拠枠として,委任という準拠枠と,共有における共有者と管理人という準拠枠と,二つがあって,その二つをどう関係付けるのかということが問題となりまして,これについて,いろいろな考え方ができます。その際に,委任契約の中でどこまで決めることができるのか,決めたことが,契約に関与しなかったものの,共有地の財産管理については関与する他の共有者にどういう影響を与えるのかをいろいろ考えていくと,それほど,これ,簡単に,理論的にこうだという形の説明はしづらいというようなところがあろうかと思うんです。
  そうした中で,できる限りのことを書こうとしたら,場合によっては前回の案に出てきたような,管理者が共有者の1人である場合と,そうではない場合とに分けて,管理者選任関係として,共有地に関する管理者と共有者の関係はこうあるべきだというところを,ルールとして示していくという辺りが関の山かなと思います。かえって,それ以上に組み込んでいくと,話がちょっとややこしくなるのかなというふうな感じもします。そういう意味で,先ほど申し上げた管理者選任関係,共有物に関する管理者と共有者の関係というものを,できるだけ明確に条文としては書き切る。合意や,あるいは多数当事者の意思によって変えることができるんであれば,その旨をルールとして書き加えるという辺りが,結果的には分かりやすいのではないかなという感じがしました。
  飽くまでも印象なんで,お前はどうするんだと言われたら,何とも言いようがありませんけれども,ちょっと気になりましたんで発言させてもらいました。
○山野目部会長 潮見委員がおっしゃるような法律関係の描き方についての難しさといいますか,一様に決め付けて議論することができないという側面があるということは,正にそのとおりでありまして,そのことを受け止めますと,前回お諮りした部会資料27,第13回会議のときにお出ししたような,管理者が共有者の1人である場合と,第三者である場合とに分けて,何かを描くという規律の表現が考えられるところであるとともに,それをしようとすると,かえって潮見委員のお嫌いな管理者選任関係の概念の採否や,それをめぐる事柄について,何らか触れざるを得ないような文章になってきてしまう側面もあります。
  そこが困りますから,今回は機関を描くという仕方でお出ししていますけれども,それにはそれとして問題点,課題があるということも,本日分かりましたから,沖野委員,道垣内委員のお話に付け加えて,今,潮見委員から頂いたお話も踏まえ,改めてどういうふうに太字の提案にしていったらいいかを考えるということにいたします。ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。
  よろしいですか。
  それでは,部会資料41についての御議論をお願いしたという扱いにいたします。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立