【資料】民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する意見

土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設について

令和3年1月12日

総 務 省

 法制審議会民法・不動産登記法部会においてご審議いただいている標記について、全国市長会及び全国町村会から、意見書の提出がありましたので、別添のとおり提出します。意見書を踏まえて調査審議いただきますよう、よろしくお願いします。

令和3年1月12日

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する意見

全国市長会
全国町村会

 「土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設(いわゆる土地所有権の放棄)」については、去る 12 月 15 日付文書において市町村事務等に関する懸念について意見表明したところであるが、相続等により取得した農用地や森林の所有者に係る市町村への申出の義務化について、改めて現場の立場から下記の通り意見申し上げる。

1.土地所有権を国庫に帰属させる(放棄する)制度が、所有者不明土地の発生の抑制につながるためには、何よりも、制度を利用する国民が十分に理解し納得しうる仕組みとすべきである。
2.相当程度厳しい放棄要件に加え、農用地や森林の所有者に対し、放棄の意思とは異なる申出を義務付けることは、努力を超えた過重な負担を強いるものであり、制度の利用の断念となれば、その趣旨を没却しかねないと考える。
3.申出を義務付け、手続きが前置化されることにより、本来法務局が窓口となるべき国の事務について、実態上市町村が相談窓口とならざるを得ないことが十分想定される。
4.農用地や森林の利活用については、申出の義務付けでなく、まずは現行の政策の積極的な利用を促すこと等に国や市町村が連携して取り組むべきである。
さらに、法務局からの土地情報に基づき市町村が必要と判断したものがあれば、土地所有者に働きかけることも可能であり、土地利用の適正化や放棄の抑制にも資すると考える。
5.申出の義務付けによって、利活用に資するものかどうか不明なものや、一見して利活用に適さないものまでもが、全て市町村の行政手続きを経ることになれば、不在地主も多いと見込まれる所有者に徒労の負担を課すこととなり、手続きも長期化し、市町村においてもクレーム対応も含めた負担が増大する懸念がある。
6.行政のデジタル化やワンストップ化が進められている中で、制度創設当初から手続きをあえて国と市町村の2段階(農用地や森林が複数の市町村にわたる場合にはさらに煩雑化)にして、各段階での申請者負担や事務負担を生じさせる趣旨は理解できないものである。
7.以上のことから、土地所有権の国庫帰属制度の創設については賛同するものであるが、相続等により取得した農用地や森林の所有者に対し、市町村への申出を前置手続きとして義務付けることについては、反対せざるを得ない。
 本問題は、あくまで法務局を窓口とした新たな制度が創設されることを前提に、土地所有者からの承認申請の件数や内容、市町村の事務への影響など、制度の実施状況を検証することなどを通じて、慎重に検討すべきものと考える。

以上

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立