1 はじめに
株券の電子化に伴い、株券の紛失・盗難等のリスク回避及び株券管理の省力化のため、定款を変更して株券不発行としたいという相談を受けることがあります。
株券不発行会社に移行することにより、今まで発行していた株券は無効となりますが、書面としての株券が無くなるのみで、株主各位の権利義務に何ら影響を与えるものではありません。
従って、従来どおりの権利義務が維持されますので、株主総会での議決権、剰余金の配当等の権利や出資責任を失うことはありません。
一方、書面による株券発行の手続費用等を省略でき、実務における効率化をはかることができます。
しかしながら、株券不発行会社とするには定款変更が必須であるため、株主総会の決議を経て、現在発行中の株券が無効となる旨の公告及び各株主への通知を行う必要があります。
少々手続が煩雑となりますので、皆様に、株券不発行会社とするための一連の流れを大まかでありますが、現に株券を発行している会社を例として説明致します。
2 株主総会における定款変更決議
前述のとおり、株券不発行会社とするには株主総会の特別決議を経て、定款変更する必要があります。
特別決議の議決要件は、原則として、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。
そこで、事前に株主の理解を得るため、株券不発行会社に変更しても、株主各位には、なんらリスクが生じないことの説明をしておくことが望ましいです。
3 株券不発行会社となる旨の公告・通知
株券不発行会社となることを、会社の定款に定められた公告方法によって行う必要があります。
さらに、各株主への個別通知を行うことも必要です。
これらの公告・通知は、株券不発行会社となる効力発生日の2週間前までに行う必要があります。
4 登記申請手続
株券不発行会社とする旨の定めの効力発生日から2週間以内に、登記申請手続きを行う必要があります。
登記申請手続きに必要となる書類は、下記のとおりの3点となります。
1 株主総会議事録
2 公告したことを証する書面
3 委任状
5 終わりに
今回説明させていただいた一連の流れは、現実に株券を発行している会社となります。
株券発行会社であっても、現実に株券を発行していない会社の場合は、若干、流れが異なりますのでご承知おきください。