株主総会議事録、取締役会議事録には誰が記名押印すべきですか

 株主総会に関しては、実務担当者の方々は株主総会議事録や取締役会議事録の作成に苦労されていると思いますが、それぞれの議事録に誰が記名押印をしなければならないのか相談を受けることがあります。そこで、議事録に記名押印すべき方は誰なのかを考えてみたいと思います。

会社法の規定
 まず、会社法の規定を確認してみましょう。会社法318条は、「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と規定しています。そこで、「法務省令で定めるところ」とは会社法施行規則72条のことですが、この規則には議事録に記載すべき事項は定められていますが、記名押印のことは全く規定されていません。つまり、株主総会議事録には記名押印すべき規定は存在しないのです。

 次に、取締役会議事録について調べてみますと、会社法369条3項では、「取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」とされています。

 なお、「書面をもって作成されているときは」としているのは電磁的記録により取締役会議事録が作成されることも想定しているからであり、その場合には、同条4項は「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない」としています。

 そうしますと、結論として、法律上は、株主総会議事録に記名押印する必要はなく、取締役会議事録には出席した取締役及び監査役が、署名又は記名押印しなければならないということになります。

「出席した取締役」とは誰か
 法律上の規定はともかくとして、各社の事例では、株主総会議事録の末尾に「議長及び出席した取締役は記名押印する」等と記載され、それにしたがって出席取締役が記名押印している例が多く見られます。
 さて、ここでの問題は、「出席した取締役」とは誰のことを指すのか、ということです。

3つのケースで考えてみましょう。
①定時役員改選により、株主総会終結の時をもって前任取締役の任期が満了する場合
②株主総会で取締役追加選任が決議され、新任取締役が即時就任した場合
③株主総会終結の時をもって辞任する取締役の後任として新任取締役が前任取締役の辞任の効力発生と同時に就任した場合

 これらの場合、通説では、株主総会開会から閉会までの間に取締役として在任していた取締役を「出席した取締役」として扱っています。したがって、①前任取締役のみが該当する、②現任取締役及び新任取締役が該当する、③新任取締役は該当しない、ということになります。

 なお、議事録に押印する印鑑については会社法そのものには規定はありませんが、商業登記法には詳細な規定があります。説明は割愛させていただきますが、ご不明な点は事務所までお問い合わせください。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立