平成26年改正会社法が平成27年5月1日に施行されましたが、実務的に影響が大きいもののひとつに、会計監査に限定した監査役を置いている会社は、その旨の登記をしなければならない、ということがあります。
そこで、平成27年5月1日より前から存在している株式会社について、現時点で考えられる実務的な対応を検討しておきたいと思います。
対象となる会社
①監査役が置かれている株式会社で、②定款で株式の譲渡について制限を設けており、なおかつ、③監査役の監査の範囲が会計に限定されている会社が対象です。
①の「監査役が置かれている株式会社」かどうかは会社の登記事項証明書を見ていただければわかります。
②の「定款で株式の譲渡について制限を設けている株式会社」とは、会社の登記事項証明書に「株式の譲渡制限に関する規定」という欄があり、その内容として、「当会社の株式の譲渡については取締役会の承認を得なければならない」等と記載されている会社です。もしも、その記載がなければ、本件の改正による影響はありません。
次に、③「監査役の監査の範囲が会計に限定されている会社」かどうかですが、次の3つのケースがありますので注意深く検討する必要があります。
a 平成18年5月1日より前に設立された株式会社で、当時、資本金が1億円以下または負債総額が200億円未満であった会社・・・これに該当する会社は、平成18年5月1日以降は監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがあるものとみなされています(その後、定款を変更して監査役の監査の範囲を限定しないこととした会社は除きます)。
b 平成18年5月1日以降に設立した株式会社で、監査役の監査の範囲を会計に限定する定めのある会社・・・「監査役の監査の範囲を会計に限定する定めのある会社」かどうかは定款に記載されていますので確認してみてください。
c 平成18年5月1日以降に定款変更をして、監査役の監査の範囲を会計に限定することとした会社・・・平成18年5月1日以降の株主総会議事録を確認していただく必要があります。
会計監査限定の定めの登記
前記の対象となる会社は、会計監査限定の定めの登記をすることが義務づけられました。ただし、上記a、bまたはcにより平成27年5月1日より前から監査役の監査の範囲が会計に限定されている会社は、平成27年5月1日以降にはじめて就任または退任する監査役の登記とあわせて行えばよいとされています。また、このように役員の変更登記と併せて登記をする場合には、役員変更分の登録免許税だけを納付すれば足ります。
登記の添付書類
登記の添付書類は、会計監査限定の定めが設定されていることがわかる定款、又は、会計監査限定の定めの設定を決議した株主総会議事録です。
なお、前記aに該当する会社は会計監査限定の定めを設定することを決議していませんので、その決議をした株主総会の議事録を添付することができません。その場合は会計監査限定の定めが設定されていることがわかる定款を添付することになりますが、その定款をも添付できないときは、上記の添付書面を添付することができないことを確認することができる書面を添付しなければならないこととされています。
具体的には,代表者の作成に係る証明書(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第53条の規定により,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるとみなされた株式会社であり、かつ、定款又は株主総会の議事録のいずれも添付することができないことを記載したもの)等がこれに該当するとされています。
しかし、このような場合には、現在の実態に合致するように定款を整備して、その定款を提出するのがよろしいかと思います。