【資料47】共有関係の見直し(通常の共有関係の解消方法)

(通常の共有関係の解消方法)
第1 裁判による共有物分割
裁判による共有物分割に関する規律(民法第258条)を次のように改めることで、どうか。
① 共有物の分割について協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、共有者は、その分割を裁判所に請求することができる。
② 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
ア 共有物の現物を分割する方法
イ 共有者の一人又は数人に、他の共有者の持分の価額に相当する金銭を支払わせて、その持分を取得させる方法
③ 裁判所は、②に掲げる方法により共有物を分割することができない場合、又はその分割によってその価格を著しく減少させるおそれがある場合には、その競売を命ずることができる。
④ 裁判所は、共有物の分割の判決において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。
(補足説明)
本文は、②を除き、部会資料37と基本的に同じである。
部会資料37においては、共有物分割に関するこれまでの判例の考え方を踏襲することを前提に、同様の枠組みをとっている遺産分割に関する規律を参考に、「特別の事情があると認めるとき」(家事事件手続法第195条参照)に賠償分割を認める旨の規律を設けることを提案していた。第16回会議においては、「特別の事情」という要件を設けることによって、賠償分割の検討順序が現物分割に劣後するという疑義が生じ得るという意見や、「特別の事情」の内容を本文から読み取ることができないといった意見があった。
改めて検討すると、検討順序において賠償分割と現物分割とを同順位としつつ、賠償分割については最判平成8年10月31日民集50巻9号2563頁が判示しているような判断要素をすべて明文化しようとしても、明文化すること自体が困難であるのみならず、賠償分割についてのみ判断要素に関する規律を設ける限り、賠償分割の検討順序が現物分割に劣後するかのような疑義が生ずることを回避することができないと考えられる。
そうすると、裁判所が命ずることができる共有物の分割方法として、現物分割(いわゆる部分的価格賠償を含む。)及び賠償分割(いわゆる全面的価格賠償)があることを列挙する規律を設ける一方で、賠償分割における判断要素については規律を設けず、引き続き判例法理に基づく判断に委ねることとすることが適切であるように思われる。
そこで、本文②において、裁判所が命ずることができる共有物の分割方法として、現物分割及び賠償分割があることを列挙した上で、本文③において、これらの分割方法によっては分割することができない場合、又はその価格を著しく減少させるおそれがある場合に、裁判所が競売を命ずることができる旨の規律を設けることを提案している。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立