株式会社の監査役は、原則として、会計に関する監査権限と取締役の業務執行に関する監査権限とを有しています。しかし、非公開会社の場合、定款で、監査役の権限を会計に関する権限に限定することができます。このような監査役を俗に「限定監査役」と呼んでいます。
現在は、監査役の権限が会計に関する監査権限に限定されている場合はその旨を登記することとされていますが、限定監査役であるかを判断する一助として、次の知識を有しておくとよいでしょう。
平成18年の会社法施行時の整備法では、資本金1億円以下の旧小会社の監査役の権限については「旧株式会社がこの法律の施行の際現に旧商法特例法第一条の二第二項に規定する小会社(以下「旧小会社」という。)である場合又は第六十六条第一項後段に規定する株式会社が旧商法特例法の適用があるとするならば旧小会社に該当する場合における新株式会社の定款には、会社法第三百八十九条第一項の規定による定めがあるものとみなす」旨の経過規定が設けられています。
したがって、会社法施行時に資本金1億円以下の会社の監査役は、原則として限定監査役となりました。しかし、会社法389①の規定による定めは公開会社でない株式会社においてのみ置くことのできるものであることから、旧小会社のうち公開会社に相当する会社についてはこの経過規定は適用されず、会社法施行によって通常の権限の監査役を置く会社とみなされました。
ちなみに、公開会社である旧小会社は、法施行と同時に監査役の権限が職務執行監査権限に拡大するため、既存の監査役の任期は会社法の施行と同時に満了することとなり、実際にそのような処理をしました。
もっとも、会社法施行後に定款を変更していることもありますので、まずは定款の規定を確認してみましょう。