可分債権を遺産分割の対象とすることの可否

【可分債権を遺産分割の対象とすることの可否】

 貸金債権のような可分債権の相続においては、当該債権が遺産分割の対象となるかどうかが問題となります。判例では、被相続人が相続開始時に有していた貸金債権は、相続開始とともに当然分割されて各相続人に法定相続分に応じて帰属することになるため、遺産分割の対象とならないとされています(最判昭29.4.8)。

 しかしながら、裁判所の実務では、相続人全員が遺産分割の対象に含めることを合意していれば、債権を分割することが相続人間の具体的衡平の実現を可能ならしめる場合や、遺産分割の対象とすることを認めています。

 この場合、相続人間の合意の法的性質、可分債権が不可分債権に転化するとの説、共同相続人が有する分割債権を集中してその再分配をするとの説がありますが、京都地判平20.4.24では、「本来の分割債権を、相続人の間では、相続開始時に遡って不可分債権とするとともに、これを再分割する方法又は履行を受けた金銭を分配する方法を遺産分割協議に委ねる旨の意思表示である」としています。

 いずれにしても、可分債権は、相続人間の合意により遺産分割の対象とすることは可能です。

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます

  • 「司法書士のための 会社・事業者破産の実務と論点」を出版しました!「司法書士のための 会社・事業者破産の実務と論点」を出版しました! https://youtu.be/gyEbx7oL4kc
  • 【動画】不動産登記は早い者勝ち! オンラインの障害の責任は誰が負う?【動画】不動産登記は早い者勝ち! オンラインの障害の責任は誰が負う? 【動画】不動産登記は早い者勝ち! オンラインの障害の責任は誰が負う? https://youtu.be/AGD0eA0ZWYc
  • 移行後の株式会社が取締役会設置会社である場合移行後の株式会社が取締役会設置会社である場合 特例有限会社から株式会社への移行は、登記が効力要件とされていますが、移行後の株式会社が取締役会設置会社である場合、登記申請前に取締役会を開催し、代表取締役を選定することができるでしょうか。また、この場合に移行を決議した株主総会で代表取締役を選定することができるでしょうか。 登記申請前に取締役会を開催して代表取締役を選定することはできない。移行を決議した株主総会で選定する […]
  • お一人様の老後 どうすれば安心?お一人様の老後 どうすれば安心? お一人様の老後 どうすれば安心? https://youtu.be/cqbSw0ZsfuI
  • 不動産登記規則92条の解釈不動産登記規則92条の解釈 不動産登記規則92条の解釈 不動産登記規則92条とは、次の条文である。 (行政区画の変更等) 第92条  行政区画又はその名称の変更があった場合には、登記記録に記録した行政区画又はその名称について変更の登記があったものとみなす。字又はその名称に変更があったときも、同様とする。 2 […]
  • 遺産分割協議がまとまる前に一部の相続人から預貯金の一部の払戻しができると聞きましたが、払戻の理由(使途)を明らかにする必要はありますか。遺産分割協議がまとまる前に一部の相続人から預貯金の一部の払戻しができると聞きましたが、払戻の理由(使途)を明らかにする必要はありますか。  令和元年7月1日以降は、相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の預貯金の額の3分の1に当該相続人の法定相続分を乗じた額(ただし、金融機関ごとに150万円が限度)を単独で払戻請求することができるようになりました。  これについて、金融機関に対し、払戻の理由(使途)を明らかにする必要はありません。 […]
  • 可分債権を遺産分割の対象とすることの可否可分債権を遺産分割の対象とすることの可否 【可分債権を遺産分割の対象とすることの可否】 貸金債権のような可分債権の相続においては、当該債権が遺産分割の対象となるかどうかが問題となります。判例では、被相続人が相続開始時に有していた貸金債権は、相続開始とともに当然分割されて各相続人に法定相続分に応じて帰属することになるため、遺産分割の対象とならないとされています(最判昭29.4.8)。  しかしながら、裁判所の実務で […]
  • 遺産分割方法の指定と所有権の対抗問題遺産分割方法の指定と所有権の対抗問題 【遺産分割方法の指定と所有権の対抗問題】  父Aが死亡し、相続人は子供の私Xと弟Yの2名です。Aは、「甲土地をXに相続させる」との遺言を残していました。甲土地について、まだAからXへの移転登記はしていませんでした。  ところが、Yには借金があり、債権者であるKが、甲土地につきXとYに代位して、AからXY名義への相続を原因とする所有権移転登記をしたうえで、Yの持分を差押えて […]
  • 【動画】破産申立て前の遺産分割、どのような場合に否認該当行為になる?【動画】破産申立て前の遺産分割、どのような場合に否認該当行為になる? 【動画】破産申立て前の遺産分割、どのような場合に否認該当行為になる? https://youtu.be/Q-TyOzJHNh4
  • ちょっと失礼な話ちょっと失礼な話 今日、東京の知らない司法書士から電話があり、事務員さんが用件を聞いた。個人民事再生で、共済からの借り入れについて、退職金等が実質的な担保となっている件につき、別除権扱いが認められたとのこと。 このこと自体は、僕が「個人民事再生の実務」(民事法研究会)に書いておいたので、きっとそれを見て書類を書き、認められたということだろう。 そして、電話をしてきた趣旨は、その別除権につい […]
  • セミナー「民法改正後の賃貸借契約の注意点」を開催しますセミナー「民法改正後の賃貸借契約の注意点」を開催します セミナー「民法改正後の賃貸借契約の注意点」で講師を務めます。 詳しくは、全日本不動産協会静岡県本部の下記ホームページをご覧ください。 セミナー「民法改正後の賃貸借契約の注意点」を開催します   […]
  • 【動画】コロナウイルス問題でどんな法律問題が起きてくるか? 送別会のキャンセル料は? ローンの返済は? そして、中止された研修会の講師料は?【動画】コロナウイルス問題でどんな法律問題が起きてくるか? 送別会のキャンセル料は? ローンの返済は? そして、中止された研修会の講師料は? コロナウイルス問題でどんな法律問題が起きてくるか? 送別会のキャンセル料は? ローンの返済は? […]
  • 特別寄与料請求の方法特別寄与料請求の方法 【特別寄与料請求の方法】  特別寄与料はどのように請求すればいいのですか。 回答  特別寄与料の請求は、各相続人に対して個別に行う必要があると考えられます。これは、特別寄与料は、各相続人がその相続分に応じて責任を負担するものであるためです。  また、各相続人との間で協議が整わないときや、協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対し、協議に変わる処分を […]
  • 自筆証書遺言を加除・訂正したいのですが、遺言書作成時に押捺した印鑑を紛失してしまいました。加除・訂正は違う印鑑でもいいですか自筆証書遺言を加除・訂正したいのですが、遺言書作成時に押捺した印鑑を紛失してしまいました。加除・訂正は違う印鑑でもいいですか 自筆証書遺言を加除・訂正したいのですが、遺言書作成時に押捺した印鑑を紛失してしまいました。加除・訂正は違う印鑑でもいいですか  自筆証書遺言中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更 […]
  • 雨のち晴れ雨のち晴れ 雨のち晴れ   不自然な歩き方をする彼の足が義足であることがわかったのは、 面談を始めて30分ほど経ってからだった。  彼は現在無職であり、月6万円程の障害年金を受給している。 また、彼の傍らに寄り添っている妻も精神障害を負っており、月6万円程の障害年金を受給しているという。  彼の負債はT社1社のみで約100万円である。 […]
  • 2021民法・不動産登記法改正を研究する 第1回 法制審議会第1回議事録を読んでみる2021民法・不動産登記法改正を研究する 第1回 法制審議会第1回議事録を読んでみる  令和3年2月2日、「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」が閣議決定されました。そこで、それまでの法制審議会の議論、同審議会に提出された資料等を順次検討していきたいと思います。  また、同審議会の議事内容、同審議会に提出された資料等を整理し、本ページ作成者の独断で、色つけ、アンダーライン、注記等の処理をした下記のページを更新中です。まだまだ十分に […]
  • 内納隆治(うちの りゅうじ)です。よろしくお願いします。内納隆治(うちの りゅうじ)です。よろしくお願いします。  内納 隆治(うちの りゅうじ)といいます。平成最後の司法書士試験を合格しまして、令和元年5月27日に司法書士となりました。  私は、福岡出身で、浜松医科大学に就職(就任?)するということで、2012年4月にこちらに引っ越して来ました。といっても、福岡から直接来たわけではありません。福岡から東北大学入学のため宮城県仙台市に移りまして、そのまま大学院に進学し、博士号を取得しま […]
  • 「二段の推定」の典型例「二段の推定」の典型例 「二段の推定」の典型例 所有権保存登記抹消登記手続等請求事件(高知地裁(第一審)平成21年2月10日)   事案  原告は、全財産を相続する旨の遺産分割協議が成立したとして,被告が作成したとする証明書を提出。これに対し,被告は,本件証明書に署名したことはなく,印影も被告の実印とは異なる旨主張し,本件証明書は司法書士が勝手に作成したものであると主張。 事実認定 […]
  • 「民法918条2項にもとづく相続財産管理人の活用(実践編)」が「市民と法」に掲載されました。「民法918条2項にもとづく相続財産管理人の活用(実践編)」が「市民と法」に掲載されました。 「民法918条2項にもとづく相続財産管理人の活用(実践編)」が「市民と法」に掲載されました。  「市民と法」という法律雑誌(民事法研究会)がありますが、このたび、古橋清二の論考「民法918条2項にもとづく相続財産管理人の活用(実践編)」が掲載されました。  おそらく、今後、民法918条2項にもとづく相続財産管理人を活用する場面が増えると思いますので、興味のある方はご一読く […]
  • 募集設立時の代表取締役の選定方法募集設立時の代表取締役の選定方法 募集設立により株式会社を設立する場合には、設立時取締役は創立総会で選任することとされていますが(法88条)、設立時代表取締役の選定方法については規定されていません。この場合、取締役会設置会社でない限り、定款の定めによる設立時取締役の互選によるほか、創立総会における決議事項は限定されないものと考えられますので、法66条の制限もあります。しかしながら、設立時代表取締役の選定は法6 […]

神谷忠勝

最近の一番の趣味はダイビングです。家の近くにダイビングショップがあり、気にはなっていたのですが、知らないショップだという所に少し抵抗があったので、なかなか入れないでいました。 しかし、そのショップのオーナーと、前の会社で一緒だった人が同級生だということがわかった後は、スムーズで、ライセンスを取り、2か月に1~2回海に行くようになりました。 いっしょに海に行きませんか?

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)