令和元年7月1日以降、遺産分割前でも相続預貯金の一部払戻しが可能になりました。
これまでは、平成28年12月28日の最高裁大法廷決定において預貯金債権が遺産分割の対象に含まれると判断されたため、遺産分割までの間は一部の相続人が当面の生活費や葬儀費用に充てるために預貯金の一部を払い戻すことは認められませんでした。
そのため、遺産の預貯金があるにも関わらず相続人の生活費や葬儀費用が払えなくなってしまうおそれがありました。 そこで、2019年7月1日以降、相続が始まってから遺産分割協議がまとまる前であっても、相続人は、単独で、金融機関の窓口において一定の上限の範囲内で預貯金を払戻すことができるようになりました。
具体的には、各相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に当該相続人の法定相続分を乗じた額(金融機関ごとに150万円を限度とする)を単独で払戻し請求をすることができるようになりました。
なお、2019年7月1日より前に開始した相続であっても、7月1日以降であれば払戻しを請求することができます。
これにより、相続預金から葬儀費用や病院代の支払いが可能となります。
ただし、払戻金額には制限があります。ケース別に、払戻可能額を計算してみましょう。
遺産分割前に預貯金を払戻す際に必要な書類は次のとおりです
(金融機関により異なる場合もあります)
①亡くなった方の出生~死亡までの連続した戸籍謄本
②亡くなった方の子供の戸籍謄本
③亡くなった方の直系尊属の戸籍謄本(直系尊属が相続人の場合)
④亡くなった方の父母の出生~死亡までの連続した戸籍謄本(兄弟姉妹が相続人の場合)
⑤亡くなった方の兄弟の戸籍謄本(兄弟姉妹が相続人の場合)
⑥その他、相続関係のわかる戸籍謄本(ケースにより異なります)
⑦法定相続情報証明(法務局で発行されます。必須ではありませんがあると便利です)
⑧払戻を請求する方の印鑑証明書
⑨払戻を請求する方の本人確認書類(運転免許証等)
⑩払戻を請求する方の実印
⑪払戻をする預貯金の通帳、カード
※1 ①~⑥は当事務所で代行取得することも可能です。
※2 ⑦は相続一覧図を作成して法務局に申請する必要があります。当事務所で代行することも可能です。
※3 当事務所において金融機関に対する一部払戻手続きを代行することも可能です。
当事務所で代行した場合の費用は次のとおりです
①戸籍謄本等の取得 1通2,500円(消費税、実費別)
全国から取寄せ可能です。
②法定相続情報証明 5000円(消費税別)
必要な複数枚を取得しても費用は変わりません。
③預貯金の一部払戻し
金融機関1カ所につき20,000円
※受任の際には、今後必要となる相続手続き全般についてご説明させていただきます。
遺産分割前の預貯金一部払戻しに関するよくある質問
金融機関では、預金口座の名義人が死亡したことを知ると、口座を凍結します。これにより、その口座からは原則として入出金ができなくなります。これは、死亡により相続が開始し、故人の遺産は相続人全員の共有財産となるため、相続人全員の協議(遺産分割協議)により誰が相続するかが決まったり、遺言により誰が口座を承継するか決まるなどしない限り、金融機関としては、誰に対して払戻しをすればいいのか判断できないからです。 しかし、お尋ねのように、遺産分割協議の成立等を待たずに葬儀費用の支払いなどのために一部でも払い戻したいという必要性は理解できます。 もっとも、①の方法はかなりハードルが高く、②の方法も様々な要件をクリアする必要があります。そこで、家庭裁判所の関与を必要としない③の方法で払戻請求してはいかがでしょうか。 なお、葬儀費用の支払いについては、金融機関によっては、葬儀社の見積などを確認のうえ出金を認めてくれる場合もあるようですので、金融機関に相談してみたらいかがでしょうか。 家事事件手続法200条2項に定められている仮分割の仮処分制度です。家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、審判又は調停の申立てをした者又は相手方の申立てにより、遺産の分割の審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができます。 これにより共同相続人間の実質的な公平を確保しつつ、個別的な権利行使の必要性に対応できると思われます。 しかし、遺産の分割の審判又は調停の申立てがなされていること、「強制執行を保全し、又は事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要がある」ことが必要です。 したがって、葬儀費用の支払いや一時的な生活費の補填という程度の理由では、仮分割の仮処分が発令される可能性は低いと思われます。 家事事件手続法200条3項に定められている仮処分制度です。 家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を、審判又は調停の申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができます。 このように、この制度を利用するためには、遺産の分割の審判または調停の申立てがあったこと、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を当該申立てをした者または相手方が行使する必要があると認められること、仮処分の申立てがあったことが必要です。 したがって、家事事件手続法200条2項が定める仮分割の仮処分よりも使いやすくはなっていますが、故人の預金から葬儀費用をすぐに払いたいというのであれば、まずは、法定相続人として金融機関に法定限度内で一部払戻請求をするという方法を検討されてはいかがでしょうか。 令和元年7月1日以降は、相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の預貯金の額の3分の1に当該相続人の法定相続分を乗じた額(ただし、金融機関ごとに150万円が限度)を単独で払戻請求することができるようになりました。 「単独」でできるため、他の相続人の同意は不要です。 遺産分割協議がまとまる前に払戻しが認められる預貯金の額は、相続が発生した時点における残高の3分の1に、払戻しを求める相続人の法定相続分を乗じた額です。ただし、金融機関ごとに150万円が限度とされています。 たとえば、相続発生時点預貯金の残高が300万円で、払戻しを求める相続人の法定相続分が2分の1の場合、300万円の3分の1である100万円に法定相続分の2分の1を乗じた50万円を限度に払戻しが認められることになります。 また、相続発生時点預貯金の残高が1200万円で、払戻しを求める相続人の法定相続分が2分の1の場合には、1200万円の3分の1である400万円に法定相続分の2分の1を乗じると200万円となりますが、150万円を超えてしまうため、150万円を限度に払戻しが認められることになります。 払戻の理由(使途)を明らかにする必要はありません。 令和元年7月1日より前に開始した相続であっても、7月1日以降であれば一部の払戻しを請求することができます。 次のシートで簡単に計算できます。 次のシートで簡単に計算することができます。 次のシートで簡単に計算することができます。 法定相続分を明らかにするために次の書類を提示する必要があります。 ①亡くなった方の出生~死亡までの連続した戸籍謄本 ②亡くなった方の子供の戸籍謄本 ③亡くなった方の直系尊属の戸籍謄本(直系尊属が相続人の場合) ④亡くなった方の父母の出生~死亡までの連続した戸籍謄本(兄弟姉妹が相続人の場合) ⑤亡くなった方の兄弟の戸籍謄本(兄弟姉妹が相続人の場合) ⑥その他、相続関係のわかる戸籍謄本(ケースにより異なります) なお、戸籍謄本等そのものを提示するのではなく、法定相続情報証明(法務局に申し出をして発行してもらう)を利用するのが簡便です。いずれにしても司法書士に相談するとスピーディーに用意することができるでしょう。 遺産分割協議がまとまる前に預貯金の一部払戻しをご依頼いただいた場合の費用は次のとおりです。なお、次の①~③は、一括してご依頼いただくこともできますし、必要な部分のみご依頼いただくこともできます。 ①戸籍謄本等の取得 1通2,500円(消費税、実費別) ②法定相続情報証明 5000円(消費税別) ③預貯金の一部払戻し なお、ご依頼いただく際には、今後必要となる相続手続き全般についてご説明させていただいております。 遺産分割協議がまとまる前に払戻しが認められる預貯金の額は、相続が発生した時点における残高の3分の1に、払戻しを求める相続人の法定相続分を乗じた額です。ただし、金融機関ごとに150万円が限度とされています。 そして、ここでいう「預貯金の額」は、預金毎に考えられることになります。たとえば、ある金融機関に故人の普通預金300万円と定期預金1200万円がある場合で、払戻しを求める相続人の法定相続分が2分の1の場合には、普通預金については300万円の3分の1の100万円に法定相続分である2分の1を乗じた50万円が限度額となり、定期預金については1200万円の3分の1の400万円に法定相続分である2分の1を乗じた200万円が限度額となります。 しかし、金融機関ごとに150万円の限度額という制限がありますから、普通預金50万円、定期預金200万円のうちから150万円の範囲内で選択して払戻請求をすることになります。 したがって、150万円の範囲内であるからといって、普通預金について50万円を超えて払戻す(例:普通預金100万円、定期預金50万円)ことは、立案段階では想定されていません。 遺産分割協議がまとまる前に払戻しが認められる預貯金の額は、相続が発生した時点における残高の3分の1に、払戻しを求める相続人の法定相続分を乗じた額です。ただし、金融機関ごとに150万円が限度とされています。 この制限は、金融機関ごとの制限ですので、複数の金融機関に口座がある場合は、その分だけ上限額が増えることになります。 遺産分割協議がまとまる前に、相続人が単独で預貯金の払戻しを求めることができる額は、あくまでも相続が発生した時点における預貯金の額を基準として計算します。したがって、他の相続人が故人の死亡を金融機関に告げずに預貯金を引き出してしまったとしても、預貯金の払戻しを求めることができる額は変わりません。 しかしながら、現実に預貯金の残高がなくなってしまっているのですから、金融機関に対して払戻しを求めることはできません。 遺産分割協議がまとまる前に払戻しを受けた預貯金の額は、払戻しを受けた相続人がこれを一部分割により取得したものとして扱われます。
そこで、①家庭裁判所に仮分割の仮処分を申し立てる、②家庭裁判所に仮払いの仮処分を申し立てる、③法定相続人として金融機関に法定限度内で一部払戻請求をする、という方法が考えられます。
全国から取寄せ可能です。
必要な複数枚を取得しても費用は変わりません。
金融機関1カ所につき20,000円