債権・動産譲渡

債権譲渡登記とは強力な債権回収手段です!

債権譲渡登記とは
 債権譲渡登記制度とは、相手方の有する売掛金のみならず将来発生する売掛金などの金銭債権の譲渡を受ける場合に、簡便に債務者以外の第三者に対する対抗要件を備えるための制度です(「債務者」とは、相手方の有する売掛金の債務者という意味です)。
債権譲渡は、原則として、内容証明郵便など確定日付ある証書によって債務者に対する通知を行うか、債務者の承諾を得なければなりませんが、債権譲渡登記制度は、債権譲渡登記所に登記をすれば第三者にその旨を対抗することができます。

 一方、債権譲渡登記をしただけでは、債務者に対しては、債権譲渡の事実を主張することはできません。債務者に対しては、登記をしたことを証する登記事項証明書の交付を伴う通知をしてはじめて、債権譲渡の事実を主張することができるとされています。

活用方法を事例で考えてみましょう

 洋品メーカーであるX社は、問屋を営むY社に対して2000万円の売掛金を有しているが、Y社の支払いは芳しくなく、複数回にわたってジャンプを要請してきている。Y社には有力な取引先としてA社、B社、C社があり、継続的に商品を納入している。Y社が所有する不動産を調査したところ、既に銀行の抵当権が登記されていて不動産には余力がないことがわかった。

X社は債権譲渡を受けることを条件に分割払いを受諾することを提案
X社は、Y社に対し、A社、B社、C社に対して今後発生する売掛金について債権譲渡をすること、この3社に対する売掛金の回収は従来どおりY社が行えばいいこと、その代わり、2000万円について2年間で分割払いする支払計画を立てて実行して欲しいという条件を提示した。
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Y社は、「A社、B社、C社に迷惑をかけたくない」
 これに対し、Y社は、X社が次回のジャンプに応じてくれるのならX社の言うとおりにして もかまわない。ただし、A社、B社、C社には迷惑は掛けたくないとのことであった。

A社、B社、C社に迷惑はかからない
X社は、債権譲渡登記をしてもA社、B社、C社に通知が行くわけではないのでA社、B 社、C社にはわからないこと、ただし、Y社が分割払いを怠ったり倒産した場合には直接A社、B社、C社から回収することになることを説明した。

債権譲渡登記を実行
X社とY社は、上記の内容について契約書を締結し、債権譲渡登記をした。

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 もしも、Y社が分割払いを怠ったり、不渡りを出すなどして事業継続が不可能となったときには、X社はA社、B社、C社に対して債権譲渡登記の登記事項証明書の交付をすることによって、A社、B社、C社からY社の売掛金を直接受領することがで きることになります。

「債務者不特定の将来債権」の譲渡で包括的に債権回収!
 上記の事例では、A社、B社、C社という特定の取引先の売掛金(将来発生する ものを含む)を対象として債権譲渡を受けていました。しかしながら、債権譲渡登記制度は、「債務者不特定の将来債権」をまるごと譲渡の対象とすることがで きます。
 たとえば、Y社の取引先は、必ずしもA社、B社、C社だけではなく、また、新規取引先も発生しているとします。そうすると、いざ債権回収をする段階に なった際に、A社、B社、C社に売掛残高がほとんどないという状況らにっているかもしれません。そのようなことが予想される場合には、「債務者不特定の将 来債権」を譲渡の対象にしておくことができるわけです。
 このほかにも、たとえば、Y社が賃貸マンションを経営している場合には、将来、賃借人が入れ替わることが予想されるため、債務者を特定できないまま将来 発生する債権の譲渡を受けるような場合などもあります。
 なお、これらの場合には、X社は、常時、Y社の具体的売掛先を把握しておく必要があることを考慮して債権譲渡契約の条項を検討しておく必要があります。