株主総会における新型コロナ感染症対策 ~延会・継続会からみなし決議まで~

株主総会における新型コロナ感染症対策 ~延会・継続会からみなし決議まで~

 このページは、令和2年5月25日に収録した「株主総会における新型コロナ感染症対策 ~延会・継続会からみなし決議まで~」を文字興ししたものです。
 なお、講義の状況はYouTubeでご覧いただくことができます。

はじめに

みなさんこんにちは。司法書士の古橋清二です。

 この時期は、例年ですと、3月決算の会社が株主総会の準備に追われている時期ですが、今年は新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、多くの企業が、業績悪化の問題に加え、株主総会の対応に苦慮しています。みなさんの会社はいかがでしょうか?

 総会までに決算がまとまらないとか、密閉、密集、密接という、いわゆる三密を避けるために株主の出席を制限していいものか、また、いっそのこと、株主総会を開催しない方法はないのか、など、悩みは尽きないと思います。そこで、今日は、「株主総会における新型コロナ感染症対策」と題しまして、この状況の中で、株主総会をどのように開催したらいいのか、ということを考えてみたいと思います。

さて、株主総会に関する問題は、大きく分けて3つあると思います。

 一つ目は、『総会までに決算処理が間に合わない』という問題です。現状、コロナの影響で、決算業務や監査業務に大きな遅延が生じており、特に海外に拠点を持っている企業では大幅に決算が遅れているようです。通常であれば3月決算の会社が5月から6月にかけて株主総会を開催しているところ、通常のスケジュールでは決算を行うことができない、つまり、通常のスケジュールでは、株主総会に決算の報告や議案を提出することができないという問題です。
 2つ目の問題は、『三密を避ける総会運営のあり方』です。株主総会は、密閉、密集、密接という、いわゆる三密状態が生じてしまうという問題です。株主総会は、会社の最高意思決定機関であり、株主が議決権を行使することができる唯一の場です。そのような株主総会と、三密を避けるということをどのように折り合いをつけるのか、という問題です。
 以上のふたつの問題は、どちらかというと大企業や上場企業の抱えている問題です。

 そして、3つ目の問題は、『みなし決議の具体的手法』と書きましたが、いわゆる三密を避けて、いっそのこと、株主総会を開催せずに決算の承認や役員改選決議をできないか、という問題です。これは、どちらかというと、株主数が少ない中小企業が抱えている問題であると考えられます。

 本日は、このうち、ひとつめの問題と3つ目の問題を中心に現時点の考え方を解説していきたいと思いますが、特に、ひとつめの問題につきましては、法務省などから新たな見解が出される可能性もありますので、今後の情報にもご留意いただきたいと思います。

 

総会までに決算処理が間に合わない

 それでは、ひとつめの問題、『総会までに決算処理が間に合わない』という問題から始めたいと思います。

 この『総会までに決算処理が間に合わない』ということがどういう問題になるのかということですが、これは、今更説明する必要もないかもしれませんが、基本的なことであり、なおかつ、後ほど解説する「みなし決議」ところでも、議事録をどのように書くかという点で重要ですので、あえて説明しておきたいと思います。

(1)決算書類の承認・報告

 会社法435条2項では、「株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。」と規定しています。ちなみに、「株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの」とは、会社計算規則で、株主資本等変動計算書と個別注記表と定められています。

 したがって、整理をすると、株式会社は、計算書類と事業報告及びこれらの附属書類を作成する必要があり、そのうち、計算書類とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表を指すということになります。

 

 

 そして、会社は、取締役会設置会社の場合には計算書類と事業報告について取締役会の承認を受け、監査役設置会社の場合には監査役の監査を受け、会計監査人設置会社の場合には会計監査人の監査を受けなければならないことになっています。そのうえで、定時株主総会に計算書類と事業報告を提出し、計算書類については株主総会の承認を受け、事業報告については株主総会で報告をしなければならないことになっています。

 ただし、これには例外があり、取締役会設置会社で、かつ、会計監査人設置会社については、取締役会の承認を受けた計算書類が法令および定款に従い株式会社の財産および損益の状況を正しく表示しているものとして、法務省令で定める要件に該当する場合には、定時株主総会の承認が不要となります。その場合、取締役は、当該計算書類の内容を定時株主総会で報告することが必要となります。

 

 

 整理すると、事業報告については常に報告事項、計算書類については、原則として決議事項ですが、会計監査人が適正意見を述べているような場合には計算書類も報告事項になるということです。

 いずれにしても、計算書類や事業報告については取締役会の承認や監査役等の監査を受けたうえで株主総会に提出する必要があることから、決算処理が遅延して決算がまとまらないと、株主総会に計算書類等を提出することができないということになってしまうわけです。

 

 

(2)株主総会の開催時期

 そこで、新型コロナウイルス感染症が原因で決算がまとまらないために株主総会に計算書類等を提出できないという理由で、通常開催すべき時期に定時株主総会を開催しないという選択が考えられますが、これに関して、令和2年2月28日に法務省から「定時株主総会の開催について」という見解が示されていますので、まず、これを紹介しておきたいと思います。

読んでみます。

1 定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて
 定時株主総会の開催時期に関する定款の定めがある場合でも,通常,天災その他の事由によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで,その時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではないと考えられます。
 したがって,今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えられます。なお,会社法は,株式会社の定時株主総会は,毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと規定していますが(会社法第296条第1項),事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することを求めているわけではありません。

 となっております。

 このように、開催時期について定款の定めがあったとしても、今回の新型コロナウイルス感染症は、「天災その他の事由」にあたるので、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるということ、また、会社法296条1項では、「毎事業年度終了後一定の時期に招集」すべことを規定しているが、「3か月以内」という制限はないことを注意的に公表しています。

また、法務省は、基準日との関係で、次のような見解も示しています。

2 定時株主総会の議決権行使のための基準日に関する定款の定めについて
 会社法上,基準日株主が行使することができる権利は,当該基準日から3か月以内に行使するものに限られます(会社法第124条第2項)。
 したがって,定款で定時株主総会の議決権行使のための基準日が定められている場合において,新型コロナウイルス感染症に関連し,当該基準日から3か月以内に定時株主総会を開催できない状況が生じたときは,会社は,新たに議決権行使のための基準日を定め,当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります(会社法第124条第3項本文)。

 通常は、定款で、事業年度末日を基準日と定めていると思いますから、事業年度末日から3か月以内に株主総会を開催できない場合は、あらためて基準日を定め、基準日より2週間前までに公告をしなければならないということになります。

 ちなみに、配当の基準日についても次のような見解が示されています。

3 剰余金の配当の基準日に関する定款の定めについて
 特定の日を剰余金の配当の基準日とする定款の定めがある場合でも,今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,その特定の日を基準日として剰余金の配当をすることができない状況が生じたときは,定款で定めた剰余金の配当の基準日株主に対する配当はせず,その特定の日と異なる日を剰余金の配当の基準日と定め,当該基準日株主に剰余金の配当をすることもできます。なお,このように,剰余金の配当の基準日を改めて定める場合には,2の場合と同様に,当該基準日の2週間前までに公告する必要があります(会社法第124条第3項本文)。

 以上を整理すると、新型コロナウイルス感染症により定時株主総会を事業年度末日から3か月以内に開催できない場合でも定款上の問題は生じないが、事業年度末日から3か月を超える日に定時株主総会を開催するためにはあらためて基準日を定めて公告をしなければならないということになります。

 これは、大企業にとっては非常に煩わしいことですし、決算以外の議案については通常株主総会が開催されるタイミングで審議してもらいたいと考えていると思います。そこで、事業年度末日から3か月以内に定時株主総会を開催したうえで、計算書類、事業報告の承認や報告については会社法317条に定める延会または続行の決議を行うという方法が考えられるわけです。

(3)株主総会の延会または継続会

条文を読んでみますと、

(延期又は続行の決議)
第317条 株主総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第298条及び第299条の規定は、適用しない。

 となっています。この298条、299条というのは株主総会の招集の決定と招集通知の規定ですが、これらを適用しないということです。

 なお、コンメンタールによりますと、「延会」とは株主総会の成立後議事に入らずに会日を後日に変更すること、「続行」とは議事に入った後に時間の不足その他の事由により審議未了のため後日に再開し継続することをいうとされています。これらの決議にもとづき後日開催される株主総会を継続会と呼ぶとのことです。しかし、継続会は、当初の株主総会と別個の株主総会ではなく、同一の株主総会の一部をなすものであるとのことです。したがって、たとえば、6月の株主総会では取締役の改選等の議案を審議し、7月の継続会で計算書類、事業報告の承認や報告を行うということが考えられるわけです。

 このような解釈を前提として、4月15日に金融庁が、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」と題して次のような解釈を示しました。

 資金調達や経営判断を適時に行うために当初予定した時期に定時株主総会を開催する場合には、例えば、以下のような手続をとることも考えられること。
 当初予定した時期に定時株主総会を開催し、続行(会社法317条)の決議を求める。当初の株主総会においては、取締役の選任等を決議するとともに、計算書類、監査報告等については、継続会において提供する旨の説明を行う。
 企業及び監査法人においては、上記のとおり、安全確保に対する十分な配慮を行ったうえで決算業務、監査業務を遂行し、これらの業務が完了した後直ちに計算書類、監査報告等を株主に提供して株主による検討の機会を確保するとともに、当初の株主総会の後合理的な期間内に継続会を開催する。
 継続会において、計算書類、監査報告等について十分な説明を尽くす。継続会の開催に際しても、必要に応じて開催通知を発送するなどして、株主に十分な周知を図る。

 となっています。
 なお、継続会については、4月28日に、金融庁、法務省、経済産業省の連名で、見解が出されました。その中に書かれていることを少しだけご紹介しておきたいと思います。

1 継続会開催の決定
 当初の定時株主総会の時点で継続会の日時及び場所が確定できない場合、これらの事項について議長に一任する決議も許容される。
 この場合において、継続会の日時・場所が決まり次第、事前に株主に十分な周知を図る。

2  取締役及び監査役の選任
 当初の定時株主総会の時点において改選する必要があるときは、当該時点をもってその効力を生ずる旨を明らかにすることが考えられる。

4 合理的期間
 当初の定時株主総会と継続会の間の期間については、関係者の健康と安全に配慮しながら決算・監査の事務及び継続会の開催の準備をするために必要な期間の経過後に継続会を開催することが許容されると考えられ、許容される期間の範囲について画一的に解する必要は無い。もっとも、その間隔が余りに長期間となることは適切ではなく、現下の状況にかんがみ、3ヶ月を超えないことが一定の目安になるものと考えられる。

 このように、「当初の株主総会においては、取締役の選任等を決議するとともに、計算書類、事業報告等については、継続会において承認・報告する」ことができるという方法が公式に公表されたものですから、今度は、取締役の任期の問題と、登記のタイミングが問題となったわけです。

(4)継続会と役員の任期

 この点につきましては、司法書士の方であれば当然に結論が出せるとは思いますが、法務省から、「商業・法人登記事務に関するQ&A」が出されていますので紹介しておきます。

まず、Q1です。

【Q1】 今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には,改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期はどうなるのでしょうか。

【A】 今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えられます。

 そのような場合には,改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期については,定時株主総会を開催することができない状況が解消された後合理的な期間内に開催された定時株主総会の終結の時までとなるものと考えられます。

 今のQ&Aを図にしてみました。定款で定めた株主総会の開催時期は薄い字で示してありますが、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足り、その場合には、改選期にある役員の任期は、実際に開催された株主総会終結の時までとなるということです。

次にQ2です。

【Q2】今般の新型コロナウイルス感染症の影響により,定款で定めた定時株主総会の時期までに事業年度に係る計算書類等の作成が間に合わないため,当初予定した時期に定時株主総会を開催した上,役員選任の決議を行うとともに,会社法第317条による続行の決議を得て,計算書類の報告及び承認については継続会において実施することとした場合,改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期はどうなるのでしょうか。

【A】 定時株主総会を当初予定した時期に開催し,役員選任の決議を行い,計算書類等の報告及び承認については継続会(会社法第317条)において実施することとした場合において,関係者の健康と安全を配慮しながら決算・監査の事務及び継続会の開催を準備するために必要な期間の経過後に当該継続会が開催されたとき(「継続会(会社法317条)について」参照)は,当初の株主総会と当該継続会とは同一の株主総会であると認められますので,この場合の改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期については,当該継続会の終結時までとなるものと考えられます。これは,継続会が開催されるまでの間に定款で定めた定時株主総会の開催時期が満了する場合であっても,同様と考えられます。

    なお,この場合において,当初の株主総会の時点において改選する必要があるときは,改選期にある役員等が辞任した上,その後任を選任することが考えられます。

こちらも図にしてみました。

ホイントは、当初の株主総会と継続会とは同一の株主総会である、ということです。ですから、役員の任期を定時株主総会の終結の時までと定めている会社では、改選期にある役員の任期は,継続会の終結時までとなるということになります。

次はQ3です。

【Q3】今般の新型コロナウイルス感染症の影響により,定款で定めた定時株主総会の時期までに事業年度に係る計算書類等の作成が間に合わないため,計算書類等の報告・承認を目的とせずに株主総会を開催し,当該株主総会において役員の改選をすることとした場合,その改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期はどうなるのでしょうか。

【A】 定款で特定の期間内に定時株主総会を開催すべき旨が定められており,役員の任期を定時株主総会の終結の時までとしている株式会社が,定時株主総会が通常開催されるべき時期に計算書類等の報告・承認を目的とせずに株主総会を開催し,当該株主総会において役員の改選をすることとした場合には,その改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期は,当該株主総会の終結の時をもって満了するものと考えられます。

 こちらは、先ほどと異なり、定時株主総会は定款で定めた期間内に行うものの、計算書類の承認は行わずに終結したという例です。なお、計算書類については別途臨時株主総会を招集して承認するというものです。この場合には、当然ながら、改選期にある役員の任期は定時株主総会終結の時をもって満了するということになるわけです。

 

 

 

(5)役員選任議案の記載方法

これに関連して、5月12日に東京株式懇話会から、取締役選任議案について具体的な記載例が示されましたので紹介しておきます。

〔前提条件〕は次のとおりです。

・2020年6月30日に定時株主総会を開催する(計算書類の報告及び承認は7月30日に開催される継続会で実施予定)。
・取締役 A、B、C、D、E、F は本総会終結時をもって任期満了となり、取締役 A、B、C、D、E は重任、取締役 F は退任し、その後任として G が取締役に就任する予定。
・当初の株主総会の時点において改選するため、取締役 F は辞任し、その後任に G を選任する。

 そして、〔記載例〕、これは、議案の参考書類の議案の記載例ということですが、次の案が示されています。

第〇号議案 取締役6名選任の件
 取締役A、B、C、D、Eは、本総会終結の時をもって任期満了となり、取締役Fは、本総会において継続会の開催が承認可決されることを条件に、本総会の休会の時(6月30日の審議終了時)をもって辞任いたしますので、取締役6名の選任をお願いいたしたいと存じます。
 取締役候補者は次のとおりであります。
 なお、取締役候補者 G は取締役 F の後任として選任するものであり、その就任の時期は、本総会の休会の時(6月30日の審議終了時)といたします。

そして、念のため、次のとおり〔留意事項〕が示されています。

・取締役 F の辞任、取締役 G の就任の時期は6月30日であるため、登記原因は、それぞれ「令和2年6月30日辞任」、「令和2年6月30日就任」となる。登記の申請は6月30日から2週間以内に行う必要がある(会社法915条1項)。
・当初の定時株主総会(6月30日)において再任された取締役 A、B、C、D、E は、7月30日の継続会終結の時をもって任期満了により退任することから、登記原因はいずれも「令和2年7月30日重任」となる。登記の申請は7月30日から2週間以内に行う必要がある(会社法915条1項)。

 ここで、ひょっとしたら気がついた方もいらっしゃると思うのですが、もしも定款に「後任取締役の任期は他の現任取締役の任期の満了する時までとする」という規定があったとしたら、6月に就任した新任取締役は7月の総会終結の時をもって任期満了になってしまいます。

 しかし、その点の心配は無用です。なぜなら、この解説は東京株懇が出していることから、上場会社を念頭にしたものだからです。上場会社では、配当を取締役会で決定できるように会社法459条により取締役の任期を1年にするのを原則としていますから、後任取締役の任期短縮規定を置く必要性はなく、実際にそのような規定を置いているケースはないことを前提としているからです。

 ま、それはともかくとして、この例のように、6月に総会を開催し、その継続会を7月に行う会社が、例年どおり6月に役員全員の改選登記をしたいと考えるならば、6月の総会の休会の時に全員が辞任することを前提として、その総会で新役員を選任するしかないものと考えられます。

このあたりで、ひとつめの問題である『総会までに決算処理が間に合わない』という問題を終わりにしたいと思います。

三密を避ける総会運営のあり方

2つ目の問題の『三密を避ける総会運営のあり方』につきましては、、今日は解説いたしませんが、ご興味ある方は、経済産業省のホームページに「株主総会運営に係るQ&A」が掲載されていますのでご覧いただきたいと思います。

みなし決議の具体的手法

(1)株主総会の開き方

 それでは、3つ目の問題であります『みなし決議の具体的手法』についてお話を進めていきたいと思いますが、このお話をする前提として、株主総会の開き方には、開かないという方法も含めていくつかの方法がありますので、最初に整理しておきたいと思います。

 ① リアル株主総会

 まず、物理的に存在する会場において、取締役や監査役等と株主が一堂に会する形態で行う株主総会です。今日は、この株主総会をリアル株主総会と呼ばせていただきます。そして、このリアル株主総会も、出席できない株主が議決権行使を代理人に委任する方法もありますし、書面や電磁的方法により直接議決権を行使することができるようにすることもできます。

 ② バーチャル株主総会

 これに対し、株主がインターネットを通じて遠隔地から株主総会に参加する、バーチャル株主総会と呼ばれる方法が最近注目されています。そして、バーチャル株主総会には、バーチャル空間のみで行うバーチャルオンリー型株主総会と、リアル株主総会を開催する一方で、リアル株主総会の場所に存在しない株主についてもインターネット等の手段を用いて遠隔地から参加することができるハイブリッド型バーチャル株主総会のふたつが考えられます。

 ただ、会社法上、株主総会の招集に際しては株主総会の場所を定めなければならないとされていますから、バーチャルオンリー型の株主総会は現行法上難しいのではないとなどと言われています。

 さらに、ハイブリッド型バーチャル株主総会は、ハイブリッド参加型バーチャル株主総会と、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会のふたつが考えられます。ハイブリッド参加型バーチャル株主総会というのは、リアル株主総会の場に在所しない株主が、特設されたウェブ等で配信される中継動画を傍聴するような形で参加するかたちが想定されます。傍聴だけですので、言ってみれば、YouTubeで同時配信を見ているようなイメージです。

 これに対し、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会は、リアル株主総会の場に在所しない株主が、インターネット等の手段を用いて株主総会に出席し、リアル出席株主と共に審議に参加し、株主総会における決議にも加わるようなかたちが考えられます。
 ですから、先ほどのハイブリッド出席型バーチャル株主総会がYouTubeで同時配信を見ているようなイメージであったのに対し、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会は、ZOOMで双方向に意見交換ができるようなかたちで株主総会に参加するようなイメージと考えていただければいいと思います。

 いずれにしても、バーチャル株主総会は、運営方法や法的論点がこれから議論されていくものと思われます。

 ③ みなし決議

 そして、3つ目が、今からお話しする「みなし決議」です。ただ、みなし決議につきましても私は、ふたとおりの考え方があると考えています。そのふたつとは、みなしオンリー型みなし決議とハイブリッド型みなし決議ですが、実は、この2つの呼び方は私が勝手に言っているだけですので、インターネットで検索しても私の事務所のホームページしか出てこないと思います。

(2)みなし決議とは

 それでは、みなし決議の内容に入っていきたいと思いますが、まずは、会社法の規定をご覧いただきたいと思います。会社法319条です。

会社法319条
(株主総会の決議の省略)
 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

 このように、まず、株主総会の目的である事項について提案をし、それに対し、議決権を有する株主の全員が同意の意思表示をするということで、リアルに株主総会を開かなくても決議を省略することができるということになります。このような決議をは「みなし決議」と呼ばれています。みなし決議は、株主全員が同意をしているのだから、リアル株主総会を開催するまでもなく、決議があったものとみなしてよいというのがその趣旨です。このみなし決議は、計算書類の承認や役員選のような普通決議はもちろん、定款変更、合併契約の承認等の特別決議などが必要とされる場合にも適用があります。

 また、株主総会への報告につきましても省略できますので、会社法320条を見ておきたいと思います。

会社法320条
(株主総会への報告の省略)
 取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。

 本日は、319条に規定する決議の省略と320条に規定する報告の省略をあわせて「みなし決議」と言うこととしますが、みなし決議は株主全員から同意をもらえるということが要件となっていますので、その見込みがない場合にはみなし決議を選択できないということになります。ですから、みなし決議をしたいという場合でも、株主さんの意向がわからないときは事前に電話やメール等で意向を確認するというようなことも検討すべきかと思います。

 ① 提案の方法

 さて、それでは、実務的に、株主総会の目的事項を誰が提案するかということですが、会社法では「取締役又は株主」が提案をした場合、と書かれています。しかし、今日は、会社側、つまり取締役が提案をするという前提でお話を進めたいと思います。

 「取締役の提案」ということですが、通常は、代表取締役が提案することになるかと思います。なお、取締役会設置会社の場合は、まず、取締役会において株主総会決議事項を決定することになります。これは、株主総会決議事項の決定は、 会社法362条4項が定める「重要な職務執行の決定」にあたると考えられるからです。そして、その決議を受け、代表取締役が株主に対して議案を提案することになるわけです。

 次に、提案の方法ですが、その具体的な方法については会社法では規定されていません。しかし、株主総会が会社の最高意思決定機関であり、また、提案に対して同意を求めるわけですから、少なくとも、書面又は電磁的記録により提案することが必要であると思います。

 そして、その提案の内容ですが、まず、決算について、冒頭で整理させていただいたようにも、事業報告については常に報告事項、計算書類については、原則として決議事項ですが、会計監査人が適正意見を述べているような場合には計算書類も報告事項になります。

 なお、こうした計算書類等については、同意を求める以上、提案書の附属書類として提案書といっしょに株主に提供する必要があると思われます。そして、その他の議案がありましたら、その具体的な内容も明らかにして提案をする必要があります。

提案書のサンプルを作ってみました。ちょっと読んでみますと、

「当社は、下記の各事項につき株主総会の目的事項として提案します(以下、「本提案」といいます)。また、当期(令和〇年○月○日から令和〇年○月○日まで)に係る事業報告、計算書類及び監査報告を本書面に添付します。本提案について同意をしていただける場合には、同意書に署名又は記名押印のうえ、令和〇年○月○日までに当社宛に返送してくださるようお願い申し上げます。
 なお、本提案について全ての株主の同意が得られた場合、会社法の関連規定に基づき、株主総会の決議及び株主総会への報告があったものとみなされます。株主総会を開催することはいたしませんのでご留意ください。」

 という具合です。

 このように、株主に対して提案書を送付する際には、同意書を返送する期限を設定していただいた方がよろしいかと思います。法律上は「●日以内」などの制限はありませんが、無理のない期限を設定しておいた方がいいと思われます。そして、株主総会の目的事項につきまして、このような記載をしておけばよろしいかと思います。

 

 

 株主総会の目的事項としては、大きく分けて、報告事項と決議事項に分かれます。この例では、事業報告が報告事項、計算書類が決議事項となっています。みなし決議を選択する会社は、株主数も少なく、大半は会計監査人がついていない会社であると思いますので、報告事項は事業報告だけというケースがほとんどであると思います。

 その他の議案については、議案の具体的な内容がわかる程度の記載が必要であると思われます。

 

 

 

 

 

次に同意書ですが、このような形で作成していただいて、提案書に同封して提供していただければと思います。

 

 

 

 

 

 ② 議事録作成方法

 では、みなし決議が成立した場合の議事録の作成についても触れておきたいと思います。なお、みなし決議の場合はリアルな株主総会が開かれていませんので、「議事録」という言い方が適切なのかどうか、疑問もありますが、会社法では、みなし決議の場合も「議事録」という言い方をしていますので、以降、「議事録」という言い方をさせていただきます。

 株主総会議事録の作成方法については会社法施行規則72条で定められていますが、みなし決議があった場合の議事録の作成については4項に規定しています。

条文を読んでみますと、

「次の各号に掲げる場合には、株主総会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。
一 法319条第1項の規定により株主総会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
 イ 株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容
 ロ イの事項の提案をした者の氏名又は名称
 ハ 株主総会の決議があったものとみなされた日
 ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
二 法320条の規定により株主総会への報告があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
 イ 株主総会への報告があったものとみなされた事項の内容
 ロ 株主総会への報告があったものとみなされた日
 ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名」

 とされています。

 まず、1号の「法319条第1項の規定」というのは、決議事項についての規定です。そして、2号の「法320条の規定」というのは報告事項についての規定です。ですから、みなし決議があった場合の株主総会議事録の作成については、この規則をよく見ていただいて作成していただきたいと思います。

 さて、さきほど申し上げましたように、みなし決議は株主全員から同意をもらうということが要件となっていますので、実際に提案をしてみないと株主全員から同意を取り付けることができるのかどうかわかならい、というリスクがあります。これでは、100%子会社でもない限り、怖くて使えないということになってしまいます。

(3)ハイブリッド型みなし決議

 そこで、本日、最後に提案させていただくのは、ハイブリッド型みなし決議です。つまり、リアル株主総会の開催を準備しつつ、総会前に株主全員から同意が集まった場合にはみなし決議が成立するためリアル株主総会は開催しない、万が一株主全員から同意を得られない場合にはリアル株主総会を開催するという方法です。

 したがって、ハイブリッド型みなし決議を行う場合には、みなし決議の提案を行う際に、同時に株主総会の招集通知と委任状も株主に提供し、同意書と委任状を返送していただくことになります。これらの書類を受け取った株主は、総会を開くのか開かないのか判然としませんので、株主さんに理解できるように説明を行う必要があります。また、リアル株主総会より前に株主全員から同意書が返送された場合には、リアル株主総会は開かないわけですから、その旨株主に連絡する必要もあるかと思います。

 このハイブリッド型みなし決議につきましては、私自身もまだノウハウの蓄積が十分ではありませんので、さらに研究を深めていきたいと思っております。

 それでは、「株主総会における新型コロナ感染症対策」のお話を終わりたいと思います。ご静聴、ありがとうございました。