2021民法・不動産登記法改正を研究する

 このページは、民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正案、令和3年2月2日に閣議決定された「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」を基軸として、それまでの法制審議会の議論、同審議会に提出された資料等を差し込むことにより、所有者不明土地関係の改正を理解しようとするものです。
 なお、法制審議会の議事内容、同審議会に提出された資料等は、理解を深めるために、本ページ作成者の独断で、色つけ、アンダーライン、注記等の処理をしています。このページは令和3年2月28日に立ち上げたものですので、まだまだ十分に情報提供できていませんが、長い目で見守っていただけると幸いです。

このページの目次

議論のスタートとなる資料

  • 【動画】第1回 法制審議会第1回議事録を読んでみる

  • 法制審議会民法・不動産登記法部会第1回会議 議事録

     まず事務当局から,この度の諮問の内容,その発出の経緯,今回の検討の対象範囲等について説明を差し上げます。
    ○大谷幹事 御説明いたします。
     先ほどの小野瀬民事局長からの御挨拶にもありましたけれども,所有者不明土地問題の解決は喫緊の課題でございます。

    第1 基本的な視点

    第1 基本的な視点
     近年,土地の所有者が死亡しても相続登記がされないこと等を原因として,不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず,又は判明しても連絡がつかない土地(以下「所有者不明土地」という。)が生じ,その土地の利用等が阻害されるなどの問題が生じている。そのため,政府においては,経済財政運営と改革の基本方針2018等で,相続登記の義務化等を含めて相続等を登記に反映させるための仕組み登記簿と戸籍等の連携等による所有者情報を円滑に把握する仕組み土地を手放すための仕組み等について検討し,2020年までに必要な制度改正の実現を目指すとしている。

     部会資料1の第1の「基本的な視点」にありますとおり,所有者不明土地の発生原因は,土地の所有者が死亡しても相続登記がされないことにあるといわれておりまして,国土交通省の地籍調査における調査では,不動産登記簿では所有者等の所在が確認できない土地の割合は,約20%であったとされております。

    1 所有者不明土地の発生原因
    (1) 相続登記の未登記
     所有者不明土地が発生する主な原因は,土地の所有者が死亡しても相続登記がされないことにあるとの指摘がある。
    平成28年度に地籍調査を実施した1130地区(563市区町村)の62万2608筆の土地について調査したところ,不動産登記簿では所有者等の所在が確認できない土地の割合は20.1%であり,そのうち相続による所有権の移転の登記がされていないものの割合は,66.7%であった(平成30年版土地白書114頁)。
    また,全国10か所の地区で実施した法務省の平成29年の調査(調査対象とした自然人名義に係る所有権の個数は,11万8346個)によれば,最後の登記から相当の年数が経過しているものの割合は,次のとおりであった。

    (2) 住所変更の未登記
     所有者不明土地が発生する他の原因として,土地の所有者が住所を変更しても,その旨の登記がされないことが指摘されている。
    前記の平成28年度地籍調査における調査では,不動産登記簿では土地所有者等の所在が確認できない土地のうち住所変更の登記がされていないものの割合は,32.4%であった(平成30年版土地白書114頁)。

    (3) その他
     売買等により所有権の移転が生じたが,その旨の登記がされないこともあるが,前記の平成28年度地籍調査における調査によれば,不動産登記簿では土地所有者等の所在が確認できない土地のうち売買・交換等による所有権の移転の登記がされていないものの割合は,1.0%であった(平成30年版土地白書114頁)。

     そして,このようにして発生した所有者不明土地を利用しようとすれば,土地の所有者を探索しなければなりませんが,その負担は小さくないと指摘されております。また,所有者不明土地においては,所有者の探索の負担とあいまって,土地の利用や管理にも支障が生じることがあるといわれ,社会問題となっております。

    2 所有者探索の負担
     所有者不明土地を利用し,若しくは取得し,又は所有者に対し権利を主張するためには,土地の所有者を探索しなければならない。探索の結果,土地の所有者が判明することがあるが,その判明に至るまでの負担は小さくないと指摘されている。
     例えば,土地の所有者が死亡し,相続登記がされていない場合には,まず,当該所有者の相続人を確定しなければならないが,そのためには,当該所有者の出生から死亡までの経過の記載が分かる戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)等を取得する必要がある。さらに,この場合に,相続人が既に死亡している場合には,被相続人に加えて,相続人の出生から死亡までの経過の記載が分かる戸籍全部事項証明書等を取得する必要がある。

     

    3 所有者不明土地の利用・管理の支障
    所有者不明土地においては,所有者の探索の負担と相まって,土地の利用や管理に支障が生ずる。例えば,共有者の一部が不明である所有者不明土地では,他の共有者が当該土地を利用しようとしても,不明共有者の同意を得ることができないために,その利用が制限されることがある。また,ライフラインの敷設等のために隣地を利用する必要が生じても,当該隣地が所有者不明土地である場合には,当該所有者の同意を得ることができないために,支障が生ずることがある。
     さらに,所有者不明土地を管理するために,不在者の財産の管理制度等の財産管理制度を利用し,財産管理人を選任することが考えられるが,既存の財産管理制度については管理コストが高く,利用が困難であるとの指摘もある。

     諮問事項を御覧いただければと思います。この「記」以下に,今回の諮問で特に御意見を承りたい事項を書き出しております。

    諮問第百七号
     土地の所有者が死亡しても相続登記がされないこと等を原因として、不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず、又は判明しても連絡がつかない所有者不明土地が生じ、その土地の利用等が阻害されるなどの問題が生じている近年の社会経済情勢に鑑み、相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組みや、所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みを早急に整備する観点から民法、不動産登記法等を改正する必要があると思われるので、左記の方策を始め、その仕組みを整備するために導入が必要となる方策について、御意見を承りたい。
             記
    第一 相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み
     一 相続登記の申請を土地所有者に義務付けることや登記所が他の公的機関から死亡情報等を入手すること等により、不動産登記情報の更新を図る方策
     二 土地所有権の放棄を可能とすることや遺産分割に期間制限を設けて遺産分割を促進すること等により、所有者不明土地の発生を抑制する方策
    第二 所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み
     一 民法の共有制度を見直すなど、共有関係にある所有者不明土地の円滑かつ適正な利用を可能とする方策
     二 民法の不在者財産管理制度及び相続財産管理制度を見直すなど、所有者不明土地の管理を合理化するための方策
     三 民法の相隣関係に関する規定を見直すなど、隣地所有者による所有者不明土地の円滑かつ適正な利用を可能とする方策

     第1として,相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組みの観点から,一つ目,相続登記の申請を土地所有者に義務付けることなどの不動産登記情報の更新を図る方策と,それから,二つ目として,土地所有権の放棄を可能とすることなどの所有者不明土地の発生を抑制する方策が挙げられております。
     また,所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みの観点から,一つ目として,民法の共有制度の見直しなど,共有関係にある所有者不明土地の円滑かつ適正な利用を可能とする方策,二つ目として,民法の不在者財産管理制度等を見直すなど,所有者不明土地の管理を合理化するための方策,それから,民法の相隣関係に関する規定を見直すなど,隣地所有者による所有者不明土地の円滑かつ適正な利用を可能とする方策が挙げられております。
     このように比較的詳細な諮問を行っておりますのは,所有者不明土地問題の解決が喫緊の課題となっていることから,その対策として有効と考えられる方策を幅広く御議論いただきたいと考えているためでございます。
     この部会で取り扱う審議事項といたしましては,基本的には諮問にあるとおり,大きくは二つの観点から,全部で五つの方策の導入を検討課題とすることを念頭に置いておりまして,これだけでもかなり広範囲の分野に及んでいると考えられるところですけれども,この機会に,民法及び不動産登記法に関して,更に検討が必要なテーマがあるとすれば,審議の中でそれを取り上げることを一切排除する趣旨ではございません。主要な検討課題と同じ程度のスピード感を持って,成案を得ることができるテーマであれば,同様に取り上げていくことも可能と考えております。
     なお,諮問をお示しするに当たりまして,参考としましたのが,この部会の設置に先立ちまして,登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会において行われた研究でございます。
     参考資料1は,この研究会が本年2月28日に取りまとめて公表した報告書でございます。この研究会には,私も参加しておりましたし,本日御参加の皆様のうちの何人かの方も参加されておりましたけれども,参考資料1の報告書は,今回の諮問に係る事項について,民法・不動産登記法の見直しが必要ではないかという問題意識を基に論点を整理し,考えられる方向性や課題を取りまとめたものでございます。この部会の今後の審議を進めていく上でも,大いに参考になるものと思いますので,お配りさせていただいた次第です。
     もちろん,その内容は,基本的には論点の整理にとどまるものですので,一定の方向が決まっているというものではございません。飽くまでも参考資料ということで,御参照いただければと思います。  
    ○山野目部会長 ただいま,部会資料1の第1の部分について説明を差し上げました。この部分は,諮問107号が発出された背景を説明するものでございますから,委員,幹事の皆様方の御意見を承るというよりは,お尋ねがありますれば承っておきたいと考えます。
     いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。

    第2 考えられる検討項目

     続きまして,部会資料1の第2の部分,ここから,本日を皮切りとして,委員,幹事の皆様方の御意見を賜りたいと考えている事項でございます。
     本日は総括的に,部会資料1の第2として,やや要約をし,整理をしてお示ししているところでございます。
     この部分について,事務当局の脇村関係官から説明を差し上げます。
    ○脇村関係官 それでは,御説明いたします。

    1 相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み

     部会資料1の第2では,諮問事項にもございます「相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み」と「所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み」につきまして,諮問事項に列挙している項目につき,敷衍して説明をしております。

    (1) 不動産登記情報の更新を図る方策

    (1) 不動産登記情報の更新を図る方策
    ア 相続登記の申請の義務化
     相続が開始して相続による所有権の移転がされても,申請がない限り相続登記はされないが,相続登記の申請をするかどうかは申請人(相続人等)の判断に委ねられているため,土地の所有者が死亡しても相続登記がされない事態が生ずる。
     そこで,相続の発生を適時に登記に反映させるための方策として,相続登記の申請を土地所有者(相続人)に義務付けることが考えられる。もっとも,この検討に際しては,義務化の実効性を確保するための手段として,義務の履行にインセンティブを付与する方法(相続開始後一定期間に限っての相続登記手続における申請人の負担軽減)や,義務違反者に与える制裁の在り方等について検討する必要があるほか,土地の相続以外の不動産所有権の移転の登記等の申請の場面の取扱い等についても検討する必要がある。
    イ 登記所による不動産登記情報の更新を図る方策
     また,相続登記の申請がなくても,登記所が他の公的機関から死亡情報等を取得して,不動産登記情報の更新を図る方策について検討することが考えられる。もっとも,この検討に際しては,現行法上,登記所は,登記名義人が死亡しても,直ちにその死亡情報を把握することができないため,どのような方法で最新の情報を把握するのかについて検討する必要がある。

     まず,1の「相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み」としましては,記載しておりますとおり,不動産登記情報の更新を図る方策を検討することが考えられます。
     具体的には,先ほども説明ありましたが,相続を開始して,相続による所有権移転がされても,申請がない限り相続登記はされず,相続登記の申請をするかどうかが申請人の判断に委ねられ,相続登記がされない事態が生じていることから,相続登記の申請を義務化することについて検討することが考えられます。
     また,相続登記の申請がなくても,登記所が他の公的機関から死亡情報等を取得して,不動産登記情報の更新を図る方策について,検討することが考えられるところでございます。

    (2) 所有者不明土地の発生を抑制する方策

    (2) 所有者不明土地の発生を抑制する方策
    ア 土地所有権の放棄
     土地の所有者が,相続の開始前に,所有権を放棄することを認め,当該土地の所有権を公的な機関等に帰属させることができれば,所有者不明土地の発生を抑制することができる。
    現行民法においては,所有権の放棄に関する規定がなく,土地所有権の放棄の可否について確立した判例もないが,上記の観点から,一定の要件のもとに,土地所有権の放棄を可能とする制度を整備することが考えられる。その整備に当たっては,所有権放棄の要件・効果や放棄された土地の帰属先機関とその財政的負担,土地所有者が将来放棄するつもりで土地の管理をしなくなるモラルハザードの防止方法,建物や動産の所有権放棄との関係等について,検討する必要がある。
    イ 遺産分割の促進
     土地の所有者が死亡し,相続人が複数いる場合には,当該土地は共有(遺産共有)の状態となる。この場合に,遺産分割が行われ,その旨の登記がされれば,所有者不明土地の発生は抑制されるが,現行民法には遺産分割を実施することができる期間について特に定めはないこともあり,遺産分割がされないまま,遺産共有の状態で放置されている土地は少なくないとの指摘がある。
     そこで,遺産分割に期間制限を設けるなどして,遺産分割を促進することが考えられるが,その期間をどの程度に設定するのか,期間を経過した際にどのような効果を付与するのかなどについて検討する必要がある。

     次に,(2)にございます「所有者不明土地の発生を抑制する方策」でございますが,土地の所有者が相続の開始前に所有権を放棄することを認め,当該土地の所有権を公的な機関等に帰属させることができれば,所有者不明土地の発生を抑制することができることから,現行民法には規定がない所有権放棄につきまして,一定の要件の下に,これを可能とする制度を整備することが考えられます。
     また,土地の所有者が死亡し,相続人が複数いる場合には,当該土地は共有地状態になりますが,この場合に,遺産分割が行われ,その旨が登記されれば,所有者不明土地の発生は抑制されるため,遺産分割に期間制限を設けるなどして,遺産分割を促進するといったことが考えられるところでございます。

    2 所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み

    (1) 共有制度の見直し
     所有者不明土地が共有地であることは少なくないが,以下のとおり,共有制度に起因して問題が生じているため,共有制度を見直す必要があると考えられる。なお,共有制度の見直しに当たっては,通常の共有と遺産共有との異同を踏まえて検討する必要がある。
    ア 共有物の管理や共有物の変更・処分の規律の明確化
    現行民法は,共有物の変更・処分は共有者全員の同意を得なければすることができないが(民法第251条参照),変更・処分に至らない共有物の管理は原則として共有者の持分の価格の過半数の同意を得ればすることができる(民法第252条)とする。もっとも,どのような行為が共有者の持分の価格の過半数の同意を得ていればすることができるかが判然としないため,本来であれば持分の価格の過半数の同意を得れば足りる行為であっても,慎重を期して共有者全員の同意を得てすることとなり,共有地の適切な利用が阻害されているとの指摘がある
     そこで,共有物の管理に関して,共有者全員の同意が必要な行為とそうでない行為とを区別することができるようにするため,共有物の管理や共有物の変更・処分の規律の明確化を図ることが考えられる
    イ 共有者の同意取得方法に関する規律の整備
     共有者の中に氏名・所在が判明していない者を始めとして態度を明確にしない者がいると,共有物の管理や変更・処分に当たる行為をすることが困難になる。
    そこで,例えば,一定の要件のもとで氏名等が不明である共有者に公告等をした上で,なおその共有者が態度を明確にしないときは,その余の共有者の同意を得ることによって共有物の利用を可能とするなど,共有者の同意取得方法に関する規律の整備を図ることが考えられる。
    ウ 共有物の管理をする者に関する規律の整備
     現行民法では,共有物を利用したり,取得したりしようとする第三者は,共有者の全員を調査して特定し,全員との間で交渉をしなければならず,負担が大きい。
     そこで,共有物の管理に関する対外的窓口となる共有物の管理をする者の制度を整備することが考えられる。
    エ 共有状態の解消を促進する制度
     共有は,その性質上,単独所有に比べて迅速な意思決定が困難であり,共有者が増えれば増えるほどその困難が増大することになる。
     そこで,共有者の一部の者が,供託を活用して,所在不明の共有者から持分を取得することを含めて,共有の解消を促進する制度を整備することが考えられる

     次に,2にございます「所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み」でございますが,所有者不明土地が,いわゆる共有地であることは,少なくないところでございますが,共有制度に起因して問題が生じているため,共有制度を見直すことが考えられるところでございます。
     具体的には,ア以降で書かせていただいておりますが,例えば,共有者全員の同意が必要な行為とそうでない行為とを区別することができるようにするため,共有物の管理や共有物の変更・処分の規律の明確化を図ることや,共有者の中に氏名・所在が判明していない者を始めとして,態度を明確にしない者がいる場合に対応するため,一定の要件の下で,氏名等が不明である共有者に公告等をした上で,なおその共有者が態度を明確にしないときは,その余の共有者の同意を得ることによって共有物を利用可能とするなど,同意取得に関する規律の整備を図ることが考えられます。
     さらに,現行民法では,共有物を利用したり取得したりしようとする第三者は,共有者全員の調査をして特定し,全員との間で交渉しなければならないことがございますが,その負担が大きいため,共有物の管理に関する対外的窓口となる共有物の管理をする,そういった者の制度を整備することが考えられます。
     そのほか,共有はその性質上,単独所有に比べまして,迅速な意思決定が困難であるため,共有者の一部の者が供託を活用して,所在不明の共有者から持分を取得することを含め,そういった共有の解消を促進する制度を整備することも考えられるところでございます。

    (2) 財産管理制度の見直し
     土地の所有者が所在不明となり,当該土地の管理等をしない場合には,土地の所有者に代わって当該土地の管理等をする者を選任するなどの措置が必要となる。現行民法においては,不在者の財産の管理制度(民法第25条以下)や,相続財産の管理制度(民法第951条以下)を置き,土地の所有者が不在者になっている場合や,死亡して相続人のあることが明らかでない状態になっている場合に対応することができるようにしている。
    もっとも,既存の財産管理制度については,管理コストが高く,利用が困難であるとの指摘があり,財産管理制度を見直す必要があると考えられる。
    ア 特定の財産を管理する制度
    不在者の財産の管理制度及び相続財産の管理制度は,不在者等の財産全般を管理するものであるために事務処理に要する費用が高くなることから,管理コストを低減させる観点から,不在者等の特定の財産のみを管理する制度を整備することが考えられる。
    イ 共通の財産管理人の選任
    不在者の財産の管理制度及び相続財産の管理制度では,土地の共有者のうち複数の者が不在者等である場合には,複数の不在者等について,それぞれ財産管理人が選任されており,事務処理に要する費用が高くなっているとの指摘がある。
    そこで,管理コストを低減させる観点から,複数の不在者等について共通(一人)の財産管理人を選任することができる制度を整備することが考えられるが,利益相反の問題との関係に留意する必要がある。
    ウ その他
    現行民法の相続財産の管理制度においては,相続財産管理人の選任の公告,相続債権者等に対する請求申出を求める公告,相続人捜索の公告の3回の公告を,最低でも10か月間かけて行わなければならないが,この期間を短縮するなどして,財産管理の手続を早期に終了させることを可能とするなど,財産管理制度を合理化することが考えられる。

     次に,(2)でございますが,現行民法には,いわゆる不在者財産管理制度や相続財産管理制度がございまして,土地の所有者が不在者になっている場合などに対応することができるようにはなっておりますが,既存のこういったものについては,管理コストが高く,利用が困難であるとの指摘もあることから,財産管理制度の見直しが考えられるところでございます。
     具体的には,管理コストを低減させる観点から,不在者等の特定の財産のみを管理する制度を整備することや,複数の不在者等について共通する1人の財産管理人を選任することができる制度を整備することが考えられます。
     そのほか,財産管理の手続を早期に終了させることを可能とするなどして,財産管理制度を合理化するといったことも考えられます。

    (3) 相隣関係規定の見直し
    現行民法の相隣関係に関する規定は,明治29年に民法が制定されて以来,実質的な見直しがされておらず,所有者不明土地問題が生じている近年の社会経済情勢に合わせて,規律を見直す必要があると考えられる。
    ア 管理不全状態の除去
    所有者不明土地が荒廃して隣地の所有者等に損害が生じている場合について,現行民法には,明文の規定はない。そこで,このような場合にも対応することができるようにするため,隣地の所有者等が,管理不全の土地の所有者に対して,管理不全状態の除去を請求することができることを明確にするなどの整備をすることが考えられる。
    もっとも,その整備に当たっては,関連する他の請求権(土地所有権に基づく妨害排除請求権や妨害予防請求権生活妨害による不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条),人格権に基づく差止請求権など)との関係等について,検討する必要がある。
    イ 越境した枝の切除
    現行民法では,土地の所有者等は,隣地の竹木の根が越境した場合には,自らその根を切り取ることができるが,竹木の枝が越境した場合には,その竹木の所有者にその枝を切除させることができるに過ぎないとされている(民法第233条)。
     しかし,隣地が所有者不明土地である場合に,竹木の所有者に枝を切除させるのは容易ではないため,越境した枝の切除に関する権利行使方法を見直すことが考えられる
    ウ 隣地使用請求権
    現行民法では,土地の境界標等の調査や土地の測量のための隣地使用に関する規定がなく,また,工事のための隣地使用に関しても,隣地所有者の承諾を得るか,承諾に代わる判決を得る必要があるため,隣地が所有者不明土地である場合に対応が困難となる。
     そこで,隣地使用請求権の範囲の明確化と行使方法の見直しを図ることが考えられる。
    エ ライフラインと導管等設置権
    各種ライフラインは現代社会において必要不可欠であるが,その導管等を設置するために他人の土地を使用することについては,現行民法に規定がなく,隣地が所有者不明土地である場合に対応が困難になる。
     そこで,ライフラインの導管等を設置するために他人の土地を使用することができる制度を整備することが考えられる。

     また,第3でございますが,隣地が所有者不明土地である場合に対応することを見据えまして,いわゆる相隣関係規定の見直しをすることも考えられるところでございます。
     具体的には,そこにも書かせていただいておりますが,隣地の所有者等が管理不全の土地の所有者に対して,管理不全状態の除去を請求することができることを明確にするなどの整備をすることや,隣地が所有者不明土地である場合に,例えば竹木の所有者に枝を切除させるようにするため,越境した枝の切除に関する権利行使方法を見直すことが考えられます。
     また,現行民法には,土地の境界標等の調査や土地の測量のための隣地使用に関する規定がございませんが,隣地使用請求権の範囲の明確化と交渉方法の見直しも考えられるところでございます。
     そのほか,現行民法に規定がない各種ライフラインと導管設置権に関し,ライフラインと導管等を設置するために他人の土地を使用することができるようにするため,その制度を整備することなども考えられます。
    ○山野目部会長 ここまで,部会資料1についての説明を差し上げました。
     委員,幹事の皆様方からの御意見を頂きます前に,もう一つ説明を差し上げておきたい事項がございます。と申しますのは,この部会に託された審議事項につきましては,内容的に,時期的に並行して開催され,調査・審議が進められております,国土交通大臣の諮問機関である国土審議会における土地基本法の見直しを始めとする土地政策の今後の方向性の検討,これが密接な関連を有しています。
     委員,幹事の皆様方に,そのあらましを御承知おきいただくことが望ましいと考えられますことから,国土交通省より,現在の進捗の状況について説明を聴取しておくことが有益であります。
     横山関係官において資料の御用意を頂いておりますから,説明をお願いいたします。

    ○横山関係官 横山でございます。
     少しお時間を頂きまして,お配りいただいております資料,事前にも送付いただいたと聞いておりますけれども,資料について御説明させていただきたいと思います。
     確認していただきますと,1枚の紙が一つありまして,その下に,ページを打ってある3枚の紙があろうかと思います。それから,その下に,少し厚さのある,とりまとめという表紙が付いている,この三つの資料をお配りいただいているかなと思います。
      少し,中身の説明に入る前に,背景の辺りからちょっと,ノンペーパーでございますけれども,まず御説明をおさらい的にさせていただきますと,御案内のとおり,所有者不明土地問題に関しては,直接的には,今回の議論が始まっているのは,国土交通省としては,東日本大震災の被災地で,復興事業をやるに当たって,所有者不明土地が公共事業の推進に,非常に隘路になったということが一つのきっかけとなって,真剣な議論を始めたと。それが政府全体の課題になってきたという流れにあるのかなと思っています。
     そして,直近は,2017年の骨太の方針に,当面できることをやっていけということで,国土交通省と法務省さん,協力させていただきまして,まず,公共的な目的で所有者不明土地をいかに活用するかと,円滑に活用するかという観点から,新法を立案いたしまして,昨年6月に,所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法というものが制定されているということは,皆さん御案内のことかなと思います。
     中身的には,国土交通省で所管しております収用手続に関しての合理化ですとか,収用適格事業という意味からは少しはみ出した公共的な事業という概念を作りまして,地域福利増進事業と申しておりますけれども,地域に必要なポケットパークとか不可欠な購買施設などを念頭に置いておりますけれども,このために,暫定的な利用権ですね,10年間ということで,もちろん延長はできるんですけれども,そういうことが設定できるような制度,それから,それに先立っての,そもそもの所有者不明であるかどうかということの探索が,非常に手間が掛かっていますので,所有者探索の合理化などをするというようなことの措置を中心にした法律を制定していただいているところでございます。
     所有者探索等の部分に関しては,昨年11月に既に施行されていますが,収用手続とか新たな地域福利増進事業といった新たな枠組みについては,今年の6月に全面施行の予定になってございまして,そこに向けて鋭意準備を関係省庁でやらせていただいていると。これがある意味,第1ステージの流れになっています。
     今事務局からお話のあった点と,私が今から御説明するのは,次の段階として,第2ステージとして進められているものだというふうに認識しています。
     どちらかというと,所有者不明土地になってしまったものを,いかに利用を円滑化するかということも大事ですが,そもそも発生を抑制するとか,問題を解消していくとか,利用に関しても,もう少し,まだ十分でないところが,利用の円滑化に関してもあるということが,問題意識の中心になっているかと思います。その中で,国土交通省に課されました命題としては,法務省さんが中心になって御議論いただいている部分と並行して,土地に関する基本制度の見直しと,土地の境界を明確にしていく地籍調査という仕組みがございますけれども,こちらの円滑化・迅速化のための措置について,根本的な議論をしていけということになっています。
     結論としては,それらについては,前者については土地基本法改正に結び付けると,後者は国土調査法,あるいは国土調査促進特別措置法という地籍調査事業の十箇年計画の根拠になっている法律がございますけれども,こちらを改正ないしは延長していくことを念頭に,制度改正に取り組むことになってございまして,この具体的な方向性について,実は国土審議会でとりまとめをして,2月に公表しているところでございます。
     若干前置きが長くなりましたけれども,この2月に公表した土地基本法の改正の方向性についての資料を今日お持ちしているという,こういう背景と中身でございます。
     この土地基本法の改正というのは,今日から本格的に御議論いただく民事基本法制等の見直しと呼吸を合わせて,2020年に政府として,たどり着けというふうな政府の方針になっているということでございます。
     そして,資料の方に目を移していただきたいと思いますけれども,1枚紙を配っている中身でございますけれども,まず土地基本法でございますが,六法全書の公法の部分でも一番に出てくる法律でございますが,名前は立派でございますけれども,実は平成元年に制定して以来,中身の改正というのをきちんとやったことのない法律でございます。
     平成元年というのはバブルの真っ最中でございまして,私,土地政策担当参事官と名乗ってございますけれども,当時の土地政策というのは地価対策と同義でございました。投機的取引の抑制等を背景に,できた法律でございます。
     中身的にも,条文を必要であれば御覧いただければと思いますけれども,土地取引を規制するとか,旺盛な需要とか土地利用の意欲があるということを前提に,それをコントロールする,規制するということが前面に出て,いかに地価を安定させて,土地を有効利用するかというような命題に対して,方向性を示している基本法でございます。
     基本法でございますので,構造としては,実は基本理念とか,極めて抽象度の高い,各主体の責務とか,基本的な政策の骨格みたいなことを示しているだけの法律で,実際には,この基本的政策の方向に沿って,各個別法が制度を打ったり,予算的な措置を別途打ったり,税制を改正したりすることによって,政策が実現されるという仕組みになっている法律でございます。
      そういう法律に関して,今日的な課題の目で見ますと,特段の利用を積極的にしないということが,実は余り想定されていないということが,一つ大きな課題であるかなという議論がされています。その規律が,土地を積極的に利用しない場合の規律が不明確であるということが,この紙の一番最初の行に書いていますが,そこから出発して,議論をしていただいているということでございます。
     そして,土地を積極的に利用しない場合の規律ということでございますけれども,それはむしろ,利用のめどが立たないような土地について,いかに適切に管理していくかとかいうことの方向性から,何が大切かということを考えていかなければいけないという議論をしていただいたということでございます。そこに書いてございますように,基本的理念としては,適切な利用・管理の確保の必要性というのを念頭に置いた法律にしていかなければいけないのではないかと。
     そして,管理に関しては,実際,非常に,土地の管理不全等が課題になってきていますので,それについての責務とか役割分担を明確にする必要があるのではないかと。その責務,役割分担に基づいて,土地政策の基本的な方向性も再構築していくのではないかという方向性のとりまとめをしていただいているということでございます。
     1枚紙の下の固まりを見ていただきまして,右側,責務と役割分担のイメージでごすが,関係主体間で適切な役割分担が必要でございますけれども,まずは大事なのは,左の上でございますけれども,所有者が第一次的な責務を負うことということを明確にしていただいています。そこには,登記とか境界の明確化をしておくということも含んで論じられるべきであるという方向性になっています。
     その上で,下の箱ですが,しかし,それが困難な場合が現実にございますし,想定されますので,困難な場合には,近隣住民や地域コミュニティーがそれを補完するという役割も考えていかなければいけないのではないかという議論をしていただいているということです。
     それから,右側の二つの箱ですが,国,地方公共団体は,これらの責務とか役割の遂行を支援して,必要な場合には自ら対応するということが求められるのではないかと。そして,特に国には,土地に関する情報インフラを整備するとともに,最終的な管理の受け皿機能を確保するというような役割も期待されるのではないかというとりまとめをしていただいています。
     こういう役割分担に沿って,土地の適切な管理という基本理念を実現していくに当たっての基本的施策でございますけれども,かなり粗っぽく整理してございますが,右の箱でございます。
     大きく三つ柱を立てていますが,まずは,冒頭申し上げたように,従来の土地政策,土地基本法が想定していた規制とかコントロールということではなくて,むしろ適切な土地の利用・管理を促す,誘導する措置というのが,施策の中心になってくるのではないかという考え方を打ち出していただいています。
     一つは,所有者自身が管理されようということをいかに促していくか。あるいは,新しい所有者に,管理しよう,利用しようという所有者にうまく移っていくことによって,結果的に新しい所有者にうまく利用・管理していただくという,そういう取引の円滑化促進という観点も含めて,そういうことを促進していかなければいけないのではないかと。
     あるいは,所有者以外の方が,いかに周辺で支援するかと。近隣住民等やまちづくりの団体等も念頭に置いていますが,そういう関係性を作っていくということに関しても,うまくコーディネートしていく施策等が必要なのではないかというような打ち出しをしていただいています。
     それから,そういうような仕組みを一つ一つ,現実に動かしていくに当たって,これが正に,今日から法制審で御議論いただく御議論と裏表になるわけでございますけれども,土地政策の観点から,共有者や隣人,あるいは公共主体も含めてでございますけれども,別の方が所有されている土地に関して,所有権があるわけですけれども,それを絶対視しないで,いかに乗り越えて,地域のため,公共のために,あるいは自らの利益・受益のためという部分も含まれますけれども,合理的な手続あるいは円滑な手続で,土地の利用・管理に関与していけるかということ,そういうことを現行制度よりもかなり円滑にできるようにしていかなければ,うまくいろいろな施策が作動しないのではないかというような方向性を打ち出していただいています。
     さらに,そういうような全体を下支えする仕組みとして,基本的な土地に関する情報基盤を整えていくということが必要なのではないかということで,所有者情報というものを非常に強く意識して,登記の必要性,登記の仕組みの促進ということでありますとか,境界,対象物がはっきりしていないということ自体も問題もございますので,地籍調査をしっかり進めていくというような方向性,こういうようなことを,しっかり基本的な施策として,意識して打ち出していくべきではないかというような御議論を頂いているということでございます。
     ざっくり申し上げますと,こういうことでございます。
     少し補足的に,意識しているところを申し上げますと,所有者の第一次的な責務ということをかなり意識して論じていただいたのは,ある意味,当たり前のことといえば当たり前のことなのでございますけれども,土地基本法でそういうことをうたっておくことによって,所有者自らが責務を果たされることに対して,社会として,いかに下支えするかということに関しての正当化といいますか,正当性を与えていくということが,当然念頭に置いていることでございます。
     もう一つは,逆に,第一次的な責務があるゆえに,その責務を十分に果たせない,あるいは果たされていない,所有者不明みたいな場合も含めてでございますけれども,そういう場合には,所有権が絶対であるということではなくて,周辺が必要と感じるのであれば,所有者の絶対性を乗り越えて,ある程度できることを考えていかなければいけないのではないかということを考えていただく理論的根拠として,所有者の第一次的責務を強調していただいているということでございます。
     あるいは,その中身として,従来は物理的な利用とか管理を念頭に置いている節が強かったわけですけれども,明確に,登記をしておくとか境界を明確にしておくというようなことも,その責務には含まれるというような議論をしていただいておくことによって,本日から御議論いただきます,登記の義務化をどのようにやっていくかというようなことも含めて,そことの整合性というか,理論的根拠を土地基本法の側から与えておくということが必要であるということで,意識的に御議論いただいたということでいます。
     それと,先ほど申し上げたように,共有者や隣人,あるいは公共による利用・管理を円滑化する措置ということが,土地政策の観点から是非必要であるということをかなり強調して,議論を頂いているということでございます。
     この辺りがポイントでございまして,政府の方針でも,民事基本法制の見直しと併せて土地基本法等の見直しをするという明確な記述になってございます。
     これは,土地基本法の側から見れば,民事基本法制をしっかり御議論いただいて,土地の利用・管理が円滑に,あるいは適切になる方向に変えていただくことが,土地基本法は理念しか示せない法律でございますので,ある意味,具体的な担保措置になっていくということを意識して,政府としても,民事基本法制の議論と土地基本法の議論を車の両輪というふうに考えているということでございますので,是非,土地基本法,国土審議会の今まで積み上げてきた議論も念頭に置いていただいて,今後の議論をお願いできればということで御紹介させていただきました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     ここから後は,委員,幹事の皆様方の御意見,御質問も含めた意味での御意見を承ることにいたします。
     部会資料1の方に戻っていただきたいと望みます。
     部会資料1の第2のところを御覧いただきますと,その中が1と2に分かれてございます。この1と2に分かれているところは,先ほど大谷幹事から御説明を差し上げました諮問107号で,この部会に対して調査・審議が求められている大きな二つの柱の一つずつに対応してございます。
     本日これから,委員,幹事の皆様に御議論を頂くに際して,この1と2を分けて,それぞれについて御議論を頂きたいという御案内を差し上げて,御意見を頂くことといたしますけれども,しかしながら,内容の上では関連し合っている事柄もあるのではないかと想像いたします。
     本日は,具体の論点を取り上げるのではなくて,初回の部会の会議において,皆様方の総括的・包括的な御意見を承っておきたいというふうに考えるものでありますから,自由闊達な御議論をお願いできれば有り難いと考えます。
     そのようなことですので,まずは部会資料1の第2の1「相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み」の部分について御意見を承ります。どうぞ御随意に御発言ください。
    ○松尾幹事 今日は第1回目ですので,細かな論点に入る前に,全般的な視野からコメントをさせていただきたいと思います。
     今,横山関係官からも御説明いただきました土地基本法制の見直しの動向と,ここで検討すべき民事基本法制からの対応とをブリッジするという観点から意見を申し述べたいと思います。
     所有者不明土地問題を一つの契機といたしまして,背景にあるより本質的な問題として,土地の所有や管理が私人の手では負担し切れなくなってきているという状況が明らかになってきているように思います。この事態に対して,土地基本法制と民事基本法制の各観点からなし得る制度改革が何かということが,共通課題であると認識しております。
     ある人が土地を所有して,利用して,途中で処分したり,自然人の場合には最終的には死亡して,ほかの人に移っていくわけですけれども,このプロセスの各所で,いわゆるスタックが生じていて,土地の所有者による利用や,担い手の変更や,適切な補助者の関与ということが阻害されている状況が一定のパターンとして生じているようにおもわれます。そういう制度的な障害を取り除いて,土地の所有と利用のシステムを全体として改善していくという大きな目標があるように思います。その一つに,今回の民事基本法制の見直しがあるというふうに理解しております。
     こういう観点から見ました場合に,本日御説明いただきました部会資料1の第2にございます相続登記の義務化から相隣関係規定の見直しまで,諮問事項でいうと五つ,具体的には八つほどの具体的な論点が挙げられているように思いますけれども,これらはいずれも適切な論点ではないかというふうに思います。
     もっとも,議論すべき論点がこれに限られるわけではないということにつきましては,先ほど大谷幹事からも御説明がございましたので,やはり広い視野から,他に議論の対象とすべき論点についても最初に確認しておく余地はあるのではないかというふうに考える次第です。
     今,横山関係官から提供された資料のうちの,最後にとりまとめの資料がございますけれども,その資料の10ページの末尾辺りにも出てまいりますし,先ほど横山関係官からの説明も賜りましたが,土地利用の多様な担い手の一つとして,例えば地域コミュニティーの役割というものが重視されております。
     民事基本法制の観点からは,安定的に存続してきた地域コミュニティーに対して,登記能力の承認等について,可能な支援があるようにも思われます。この点につきましては,既に変則的登記の解消に関して,現在検討されております方策の中でも取り上げられておりますし,本日の参考資料1の末尾にも,この変則的登記の解消に関する章がございます。そこでの扱いは,まだ流動的ではありますが,地方自治法上の地縁団体法人の認可手続との関連性も考慮しつつ,より実体に適合した対応策が何か,検討対象の一つになり得るようにも感じております。
     飽くまで一例ということで,決してそれにこだわるわけではございませんけれども,全般的な観点から,土地所有のシステムを包括的かつ持続可能なものとしていくという目標の中で,重要な意味をもつ論点であると考えます。まずは,この目標に通じる様々な論点を挙げていただいたことにつきましては感謝申し上げたいと思います。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     引き続き,委員,幹事の皆様方の御意見を承ります。
    ○潮見委員 松尾幹事がおっしゃったのは,私はそのとおりであろうと思いますが,今回が最初の会ですので,むしろそれより前の基本的なところについて,少し御意見なり感触というものを,特に横山関係官にお尋ねしたいというふうに思うところです。
     端的に申し上げますと,今回の諮問等も含めて,所有権というものの捉え方自体が従前の,よく言われる近代民法の下での所有権の理解とは違ったパラダイムの下で展開されているのではないかと思うところがございます。
     つまり,国が現在,あるいは将来の社会を見据えて,人為的に作り出そうとする制度の中に,土地の所有権をいかに位置付けるかという観点から,民事法制も含めて,土地の所有権とか,あるいは不動産の登記法制というものを考えていきましょうという方向性,そして,その延長線上で,共同体社会の中での公共的な財としての土地所有権という,公共性あるいは公益性の視点というもののも前面に出して考えていきましょうという方向性が,基本のところで示されているのではないかと思います。
     私,これ自体はいけないというつもりは全くないですし,必要ではないかというところも感じているところですが,その一方で,危惧もあります。先ほどの横山関係官の御発言の中でもおっしゃっておられましたが,所有権あるいは所有の持つ絶対性について,先ほどの部会等々で,一体どういうふうな理解をされてきたのでしょうか。
     もうちょっと砕いて言いますと,従来から言われていた所有権絶対の原則だとか所有権の絶対性というものが残る部分があるのか,ないのか。残すとすれば,それはなぜなのか。残らないとすれば,それはなぜなのか。その辺りについて,部会とか,あるいは関係するところでの協議とか,その辺で何か話が出ていたのかどうか。
     所有権絶対の原則と,先ほど申し上げた文脈で捉えた場合の土地所有権の持つ公共性の優先ということは,基本的な視点として対立するところが出てくると思いますので,もし何か,検討等がされておりましたなら,御教示いただければ有り難いなと思うところです。
    ○山野目部会長 横山関係官へのお尋ねを含んでいる御意見であったと受け止めますから,横山関係官から何かおありでしたら,お願いいたします。
    ○横山関係官 議論に御参加いただいていた委員もいらっしゃいますので,場合によっては訂正していただいても結構かと思いますが,御説明いたします。
     事務局として議論に参加させていただいていた立場として,実は説明上,所有権の絶対性についてという表現を採りましたけれども,私の記憶では,明確に所有権の絶対性そのものの概念について議論がされたという感じにはなっていませんし,我々も,そういう言葉として提示したわけではございませんでした。
     どちらかというと,土地基本法そのものに,従来から土地に関しては,「公共の福祉の優先」という文言が入ってございまして,この言葉を,平成元年の当時はこういうふうに考えていたと。それは,私の個人的理解としては,所有権の絶対性といっても元々,何というか,100%ではないという考え方だと思いますので,絶対性に対しての具体的仕組みとして,公共の福祉優先ということで,何ができるのかということの線みたいなものが,平成元年のとき意識されていたことと,今日的な課題に基づいて,こういうことであれば,絶対性に対して,他者が手続を踏んで,例えば関与できるとか,あるいは簡便な形で関与できるみたいなことですね。ということが,平成元年のときと違うものがあるのではないかというような議論をしていただいたというのが,私の認識でございます。
     ただ,部会での議論では,それは何というか,極めて観念的な議論で,まだとどまってございますので,あるいは土地基本法を改正するという目的からすると,ある意味,観念的な議論でとどまらざるを得ないわけですが,それゆえに,では,具体的にどういう手続で,どういうことができるのかみたいなことに関しては,各個別の法律に基づいて,どういうことができるのかという議論をしなければいけないという出発点を,土地政策分科会の結論として,そういう議論をしなければいけないという出発点を提示していただいたというような議論であったと思っています。
    ○潮見委員 ありがとうございました。よく分かりました。
     土地の所有権,公共の福祉の制約に服するというところから出発をされたというところで,しかも観念的な議論という形で,それを前提にいろいろ検討をされたという理解で私は受け取りました。
     もちろん,最後におっしゃられたように,だからこそ,具体的な,特に民事法制を考える場合には,従来からの所有権の絶対性ということが持っていた意味,所有権を持っている人に所有権に結び付けられた価値をどういうふうに割り当てていくのかとか,所有者がどこまでの権限を持つのか,あるいは負担を負うのかとか,伝統的にいわれていたものと今おっしゃられたものとの調整のありかたを考えながら,個別の制度をここから先,ここで議論していけばいいというようなことでしょうか。
    ○山野目部会長 横山関係官のお話の中に,国土審議会の部会に参画なさっていた方もここにいます,というお話がありました。該当なさる皆さんから,横山関係官のお話に補足がおありの方がいらしたら伺っておきますけれども,特段なければ,よろしゅうございますか。
    ○松尾幹事 潮見委員から御質問いただきました従来の近代的所有権概念の見直し,とりわけ所有権絶対の原則についての見直しがあったのかという点に関しましては,私の個人的な理解では,必ずしもそういうことではなかったものと考えております。
     元々所有権の絶対性といっても,無制約性を意味するものではなくて,一定の公益確保の観点から制約があることは当然含意されているものの,とりわけ土地所有権においては所有者の自由と公共の福祉との境界線といいますか,どこまでどういう理由で制限できるんだというのが必ずしも明確ではないし,その境界線は,地価高騰や人口減少といった社会経済状況の変化によっても変わってくるだろう,それを現在の状況に合わせて,より明確にしようというのが,中心的な問題意識であったように思われます。
     したがって,所有権概念自体が変わってきているというふうには理解しておりませんで,むしろ,その具体的内容を現代に合わせて明確化していくというのが主題ではなかったかというふうに認識しております。
    ○潮見委員 すみません,先ほどの横山関係官がおっしゃられたことで確認はできたのですが,むしろ私が言いたかったのは,国が人為的に作り出す,あるいは,これがいいと思われる制度の中に所有権を位置付けるという捉え方で,この間の議論が進んでいたのかなということです。
     先ほど松尾幹事は,近代的所有権という話もされましたが,所有権の絶対ということがとかれる文脈では,所有権の制度が人為的に国が作り出した制度だから公共性を優先すべきだという観点からのアプローチではないはずなんですよね。
     そういう意味では,見方を変えることによって,それが適切かどうかは別として,民事法制についても新しい視点が出てくるという見方もあるかなということもあって,ちょっと発言をさせてもらった次第です。松尾幹事がおっしゃることもよく分かります。
     ありがとうございます。
    ○中田委員 二つ,関連することを申したいと思います。
     第1は,ただいまの3人の委員,幹事の御議論との関係ですけれども,所有権の絶対性ということを振りかざして,その先一歩も動かないということがあってはならないということは,多分共通していると思います。他方で,所有権の絶対性を乗り越えるという,先ほど表現がございましたけれども,それを所与のスローガンとしてしまうというのは,やや行き過ぎになるおそれがある。むしろ問題ごとに,個別に慎重に考えていくということが必要ではないかと存じます。
     その意味で,お三方の御発言は,それぞれニュアンスや見方に若干の違いがありますけれども,具体的には同じようなところを考えておられるのではないかと理解いたしました。
     第2点ですけれども,頂いた検討項目には2種類のものがあると思います。一つは,所有者不明土地であることを要件として,既存の制度の特例を設けるべきもの,もう一つは,所有者不明土地の発生抑止のための制度の創設や改正というものがあると思います。
     後者は一般原則の改正となって,ただいまの議論とも関係するところでございますけれども,所有者不明土地の問題以外の問題にも広く波及することが考えられますので,調査・審議には相当の時間を要することが予想されます。他方で,与えられた時間が短いことからしますと,二つの種類の問題について,検討の優先順位をよく考えてお進めいただくのがよいのではないかと考えます。
    ○山野目部会長 部会の議事の議題の立て方について,後半で御注意いただいたことについては,事務当局とともに心して進めたいと考えます。ありがとうございます。
    ○道垣内委員 ここまでの議論の関連で申しますと,権利から出発して,その権利の制限を考えるのか,それとも権利概念をいじらないで,目的物の性質というところから議論をするのかというものの二つのアプローチって,あり得るだろうなという気がしておりました。それは感想にすぎませんが。
     もう一つ,急に細かくなるように思われるかもしれませんが,今後の議論のために,知識として確認しておきたいことがあります。つまり,例えば,私が現在,土地を所有しているとしまして,それを山野目さんに譲渡していないのだけれども,譲渡したと述べて,山野目さんへの移転登記を申請し,登記がなされたとします。これには何らかの形で,罰則などがあるのでしょうか。
     例えば,売買契約をしたのだけれども,登記をするのが遅れているという状況は,遅れであるにすぎず,現行法上,特に制約はないことはわかるのですが,そうではなくて,誤った状況を作成していることに対しては,現行法上,何らかの形の制約が掛かっているのだろうかというのが,ちょっとよく分からないのです。細かく言いますと,不動産登記の申請のときの添付書類,登記申請情報における私文書の偽造があるとして,そこが犯罪になるという話なのかもしれませんけれども,全体として,登記を正確にしなければいけないという義務が存在していると仮定して議論が始まるのか,それとも,相続のときだけの話ですよと,死亡のときだけの話ですよというふうな話でいくのかというのが,気になりましたので,教えていただければと思います。
    ○山野目部会長 最初に感想としておっしゃっていただいたことは,お話として承りました。その後でおっしゃった事項のうち,登記についての様々な考えられる強制や促しをする局面が相続に限られるかどうかという主題は,まさにこの部会で,その論点を取り上げるときに議論されるべきことであると存じます。
     その前提として,今,道垣内委員からは,今後どのような法制を作っていくかという問題とは別に,あるいはその検討の前提として,現行の不動産登記制度の下における公法上の制裁,その他関連する事項の規律について,どのようになっているかというお尋ねを頂きました。
     事務当局に答えの用意はありますか。
    ○村松幹事   元々,不動産登記,特に権利の登記に関しては,虚偽だからということでの直接の制裁というのは,基本的にはないのだと理解しています。先ほど道垣内委員がおっしゃいましたように,個々の司法書士の方が関与した際に虚偽の資料を提供するといったこと,あるいは,先ほどおっしゃいましたように,わざと虚偽の文書を作成して虚偽の登記を作出するといったことについての刑罰といったことをちょっと除きまして,より広い視点で,単に虚偽の登記,現実とずれている登記の作出ということになると,それを捉まえるということは,現行法下では難しいというのが,基本的な発想なのかなと思っております。
     その上で,今御指摘いただきましたように,相続の局面だけが問題なのかどうかというのは,先ほど部会長からも御指摘ありましたけれども,大きな課題だと思っております。
     そういう意味では,国土審議会でも,そういう御議論が恐らくあるところだと思いますが,相続が一つの中心的な課題ですけれども,ではそれ以外,一般的に,不動産登記簿から,例えば所有者が分からないということが,社会的に見てどうなのかということそのものが,一つの検討命題になってくるのではないのかという指摘もされているところでございます。正にそういった部分に踏み込んでいくのか,あるいは,ある意味,従来的な発想かもしれませんけれども,相続を除けば,基本的には本人たちに任せておけば,真実の登記がされるインセンティブが,一般的にはあると言えるので,そういったものに委ねておくのも一つではないか。こういった見方との調整といいますか,どうしていくのかというのは,議論いただきたい事項になってくると考えております。
    ○山野目部会長 村松幹事から,ただいま,権利に関する登記に限って,現行法制の状況,概要について御説明を差し上げました。ひきつづき,いかがでしょうか。
    ○増田委員 ありがとうございます。
     今日,第1回目ということなので,法律的な議論より少し前の話をあらかじめ申し上げておきたいと思うんですが,実は私は,一番最初,役所へ入って,国土交通省となる前ですが,建設省で土地行政,当時は土地基本法がまだできる以前でありましたので,国土利用計画法などの運用に携わっていまして,その後,岩手県で知事をやったので,直接的というわけではないんですが,土地を自治体の立場でいじった立場でもあるんですが,申し上げたいのは,土地についての,特に地価の動向に結局は行き着くんですけれども,この間,非常に大きな変化があったのではないか。
     言わずもがなでありますが,国土交通省の方で3,4年前に,国土のグランドデザイン,2050年を出したんですが,あれは国土を1キロメッシュで分析している,非常に精緻な分析なんですが,今現在,人が住んでいるのが大体国土の半分で,その半分のうちの6割以上の地点で,2050年には人口が半分以下になると。それから,全体の2割近くが無居住地域になるということでありまして,恐らくそのとおりの状況が,2050年には出現するであろうと思うんです。要は土地の利用可能性とかいうことが,著しくこれから,国土全体で見ると低くなって,そして,この諮問文の中でも,利用・管理という言葉が随分出てきていますが,もちろん利用というのは,積極的な利用と,そうでない利用と,いろいろあるんでしょうが,利用というよりは,むしろ管理,本当に国土の管理ができるかどうかという,そちらが非常に問われるようになってきて,国土審の議論に私も参加していましたが,中で粗放的管理という話もありましたんですが,とにかくエコロジーのような形で,土地は全部委ねようということまで,大きく変わってくるのではないかと思います。
     国民の意識調査も,これも国土交通省がやった無作為抽出による意識調査を見ても,土地を所有することについて,負担を感じている人が,確か42.3%という数字になっていて,もちろんそれは,固定資産税などの柔軟な見直しが行われていない等々や,その他のいろいろな負担が重過ぎるということもあるんだと思いますが,それだけ土地,不動産についての全体的な価値が低下し,あるいは一方で,負担感の増大だとかいうことが急激に高まってきている。
     やはりこういう大きな変化,少なくとも,そういったことが出来上がってきたのは,バブル崩壊の後ということですから,この20年ぐらいでの急激な変化だと思いますが,そういう背景についての理解があって初めて,この諮問文の中に出ています土地所有権の放棄の議論をなぜしなければいけないのかという必要性が,理解できるのではないかと思います。一方で,相続は間もなく大量相続時代で,今までよりも一段と,各地域で相続があるので,その場合の登記をどうするかという問題もあると思います。
     全体とすると,ほかの資産は別にしても,こと不動産で,土地の資産的な価値が大きく変わってしまって,今のままですと,国全体としての国土の管理自体が非常に危ぶまれるという中で,適切な方法をどうしていったらいいのかということ,それに対して,ここに書いているような事柄に分けて,答えを出していかなければいけないのではないかと,こういうふうに私は理解しております。
     本当に限られた時間の中で,必要なことを議論していくということで,それぞれが非常に重たい課題ですから,全然時間が足りないくらいのことでやっていかなければいけないと思うんですが,更にいいますと,恐らく所有権の放棄などの議論をしていくと,当然この中にも触れていますが,では,その後その土地は一体どこに帰属させるのか。ランドバンクだとか,そういう考え方もあると思いますし,それから最終的には,自治体を超えて,国が出てくるべきではないか。
     そうすると,その前に,自治体にもいろいろ問い合わせするにしても,今の自治体は,普通財産と,それから公共財産と,財産を二つだけに分けているんですが,一体そういう形で,二つだけで,きちんとこういった問題に対応できるかなども,やはり実は気になることは気になるんですが,余り論点を広げてもいけないと思いますので,私は諮問だけでも,大変幅広く諮問されているので,これにきちんとお答えをするということだと思いますが,繰り返しになりますが,法的な制度の,少しバックグラウンドについての理解をきちんとした上で,こうした問題をこれから議論していくべきと,こんなふうに思っております。
     初回ということで,あえてそんなことを申し上げました。
    ○今川委員 司法書士会の今川でございます。
     私は,基本的な姿勢としまして,登記実務をさせていただいておりますので,相続をめぐる様々な課題があるということは,肌感覚で理解しておりますので,この所有者不明土地問題,それから相続未登記問題の解決は,これは急がなければならないと思っています。
     また,一方といいますか,登記実務を担ってきておりますので,登記制度の根底にある価値観とか役割も,一定程度理解をしておるつもりですけれども,その上で,既存の概念にとらわれ過ぎないような議論をさせていただきたいなと思っています。
     それと,所有権放棄の問題ですが,今増田委員が言われたことと,ほぼ同じことになるんですけれども,我々も実務をやっていて,肌感覚として感じるところもあるんですが,相続未登記問題の根底には,やはり土地建物を手放したいという方が一定数おられるというふうに思います。処分できればいいんですけれども,処分できない不動産を管理していくのに物理的・経済的な負担が大きいということが,その要因だと思いますけれども,我々数年前に,空き家について,全国的な電話相談会を開いたんですけれども,その電話相談でも相当数,そのような御相談がありました。
     放棄については,モラルハザードの問題とか,それから,土地所有者が元々持っている責任あるいは義務も前提としながらも,そのような所有者が持っている心情というか状況は把握した上で,検討しなければならないと思います。
     それと,前の在り方研等で,放棄の要件とか受け皿,帰属機関について,かなり細かく検討されていますけれども,民法でどこまでその規定を規律できるのかということは,併せて検討はすべきだというふうに考えております。
     これ今,1までのことですね。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     在り方研とおっしゃったものは,「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会」のことであると受け止めました。
    ○水津幹事 民法・不動産登記法の改正にあたっての検討課題のなかには,もともと民法や不動産登記法に改められるべき点があって,所有者不明土地問題をきっかけとして,そのことが明らかになったというものもありそうです。
     そのような検討課題については,所有者不明土地問題への対処だけでなく,物権法等の現代化という観点から,検討をしたほうがよいと思います。
    ○山野目部会長 中村委員,どうぞ。
    ○中村委員 ありがとうございます。
     ちょっと議論が戻ってしまって,申し訳ございませんけれども,先ほど国土交通省,横山さんから御説明がありました土地基本法の関係で,質問させていただきたいと思います。
     国土審議会土地政策分科会での御議論の内容なんですけれども,土地基本法の公共の福祉の概念について,この審議会で,どの程度の議論があったかということを教えていただければというのが今回の質問です。
     と申しますのは,今回の107号の諮問というのは,所有者不明土地を解消するという公共の福祉という観点からの諮問だというふうに考えますけれども,これまでの憲法上の議論などで,せっかく公共の福祉をそれなりに合理的に制限するというようなことも議論されてきた中で,ただ公共の福祉というものの重要さから,不必要に広がるということがあってはいけないと思いますので,そのような観点から,どのような議論がなされたか。
     この審議会の名簿を拝見しますと,行政法や憲法の先生も入っていらっしゃるようですので,どのような御指摘があったか教えていただけますでしょうか。
    ○横山関係官 すみません,網羅的にお答えできるかわかりませんが,基本的には,その局面,局面で,様々な御発言があったんだとは思うんですけれども,公共の福祉の優先という言葉自体は,これ自体を,例えば,もっと強い表現にするとかということではなくて,今御質問でもあったように,公共の福祉の優先という言葉が土地基本法に平成元年当時規定される前提として,従来の条文ですと,土地は適切かつ計画的に利用されなければならないという考え方に立っているんですけれども,その理念と結び付いて,公共的,公共の福祉優先ということ,その当時,平成元年の当時考えられていた計画的で適切な利用を実現する目的に対して,公共の福祉優先で,所有権が制限され得るというような関係になっていたのではないかと思うんですけれども,今回御議論いただいたのは,その前提になっている,土地の利用の需要が非常に旺盛なことを前提に,利用を計画的かつ適切にやるということだけではなくて,需要がない中で,土地を適切に管理しなければいけないという社会問題が出てきている前提で,土地をいかに適切に管理するかという局面において,公共の福祉優先ということで,どこまで所有権が制限され得るのかというような議論をしなければいけないという問題設定をしていただいたということだと思っています。
     それに基づいて,今よりも地域の役割とか公共団体の役割が期待される部分が,今というか,かつてよりあって,土地の適切な管理に結び付けるに当たって,地域コミュニティや市町村,あるいは国が期待される役割を果たせるようにするような形で,所有者ではない方が関与できるようにしていかなければいけないという,ある意味,観念的な結論までは至っていただいているということだと思っています。
     どういう具体的な手続だったらできるかというのは,正にこの場でも御議論いただかなければいけないし,土地政策分科会でも,例えば,行政がどういう手続だったら,今と違う手続で,例えば,関与できるような仕組みを新たにできるのか,できないのかみたいな議論は,引き続きやらなければいけないと思っていますけれども,まだそこに関しては,具体的な御提言を頂いている段階ではないというようなことでございます。
    ○山野目部会長 中村委員にお尋ねいただいた土地基本法をめぐる観点は重要な事項であって,同時に,御指摘のように,国土審議会土地政策分科会の特別部会において,行政法や憲法の専門家も交えた議論がされたという経緯がございます。
     行政法,憲法などの公法系の研究者から問題提起を頂いた事項が多々ある中に,憲法の文言は,所有権を含む財産権が公共の福祉に適合するとなっているではないか,ということがございました。土地基本法は,公共の福祉が優先するとなっていて,ここのところの思想的整理が必要であると感ずるという問題提起を頂き,それを受け止めての議論がされました。
     それは,必ずしも観点は同じではないにせよ,本日の御議論で,潮見委員,中田委員,そして今,中村委員からお出しいただいた,それぞれの問題提起の背景の一部をなすものではないかというふうに感じます。
     その上で,国土審議会においては,現行の土地基本法が土地という財貨の特性に着目して,適合する,ではなくて優先するという発想を採り,それを法文にしていること自体が根拠のあることであると考えられるとともに,しかし,そのことのゆえに,公共の福祉が十分な内容の充填を伴わずに,みだりに肥大するようなことがあってはいけないという問題意識も,同部会において共有されました。
     その上で,公共の福祉の中身をどのように考えるかということが,引き続き現在,国土審議会において審議されているところでありますけれども,どうも現行の土地基本法が少し,何と申せば宜しいでしょうか,俳句のようなというか,十分な数の規定を置いて土地政策やその理念の中身を語っていない嫌いがあります。公共の福祉を優先といったときに,その中身をもう少し法文の中に,基本施策も含めて表していった方がよいということについても,大筋の了解が得られたのではないかと感じております。
     したがいまして,今,公共の福祉の優先という考え方を注意して使わなければいけないとともに,その内容を可能な限り法文に表すようなことも考えながら,豊かに充填していこうという方向での審議の準備が,横山関係官を中心に,国土交通省においても進められているところであるというふうに承知しております。
     引き続き御発言があれば承ります。
    ○中村委員 ありがとうございました。今御説明いただきましたことでよく分かりました。
     本件では今後,相続登記の義務化ですとか,また,遺産分割協議を推進するために分割協議の期間という制約を設けるなどという,国民の権利とか,今まで自由であったことに制約が掛かるという場面ですので,公共の福祉との整合性というのは,きちんと考えていかなければならないというふうに思いましたので,御質問させていただきました。
     ありがとうございます。
    ○山野目部会長 御注意はよく理解することができ,承りました。ありがとうございます。
     吉原委員,どうぞ。
    ○吉原委員 ありがとうございます。
     ここまでの議論を拝聴しているだけでも,何て難しい議論なんだろうと圧倒されているところです。
     どう難しいかといいますと,明治から戦後,高度成長期,バブル,この右肩上がりの時代において,土地制度,それから所有権の在り方,その根本的なところについて,深く十分に検討してこなかった論点というものがあり,今,喫緊の課題として,所有者不明土地問題に対応するために,法的な立て付けを見直していくという課題に直面したときに,今まで十二分に議論を正面からしてこなかった論点も併せて,原則論から考えなければいけない局面なのかなというふうに感じたところです。
     これからこの部会の議論において,非常に高度な法技術的な議論がある一方で,そもそも所有権は日本ではどう考えるんだ,土地は誰のものなのだというところと,もしかしたら,大きく振れるような幅の広い,難しい場面があるのかなというふうに思った次第です。
     今回御提示いただいている資料の1の論点を拝見いたしまして,短期,中期,長期の三つの点から感想を持ちました。今日は初回ということで,述べたいと思うのですけれども,まず短期的に見ますと,相続登記の申請の義務化,あるいは土地所有権の放棄という論点が,法務省のこうした部会において,正面から議題になるということは,数年前には思いもしないことでした。本当に驚いております。
     特に,ここ最近,震災あるいは地域における空き家対策など,国土や地域の管理といった公共の観点から,不動産登記制度に求められる公的な役割というものに注目が集まっているのだろうと思います。
     したがって,民法の手続法である不動産登記法というものを,公的な土地管理における一つの手段として,どのように考えるのかということが,一つの論点として急浮上しているのではないかと思っているところです。
     そして,短期的には,非常に驚くべき論点が並んでいるという感想を持っていると申し上げましたが,しかしながら,20年,30年という中期的なスパンで見ますと,実は,こうした論点をきちんと議論するということは,地域の関係者の間では,強く求められていたことであり,待ち望まれていたことであろうと思います。
     例えば,農地の集約化,林業の施業,それから固定資産税の課税徴収,あるいは道路用地の取得,地籍調査における境界確定,そうした地域の日常の様々な場面において,多数共有の問題とか所有者不明土地問題というのは,散発的に日常的に発生をしてきたわけです。それが今,ようやく政策課題として,こうした議論の俎上に載っているということで,これは中期的には,待ち望まれていた議論なんだろうと思います。
     そしてさらに,長期の観点で見てみますと,戦後74年,それから,明治維新から約150年というところで,大きく社会は変わってきたわけです。人口動態,それから,地方から都市部への人の移動,家族の在り方,産業構造の変化,それに伴う土地利用の変化,それから,Iターンや外国人材の受入れ拡大など,地域に暮らす人々も多様化をしています。さらには,情報技術も発展をしています。
     そうした中で,やはり,これまでの制度が前提としていたことが大きく変わっているのであれば,社会の実態に合わせて制度を見直すということは自然なことであり,そのように考えますと,今回のこの見直しの議論は,所有者不明土地問題がきっかけの一つになったかもしれませんが,より大きな長期的な時代の流れの中においても求められてきたことなんだろうと思います。
     うちの土地をどうするのか,田舎の土地をどう管理するのか,相続登記をきちんとするのかどうかというのは,ごくごく個人的な話でありますが,その個人の行動の一つ一つの積み重ねがみんなの問題になっていくわけです。そして,どこまでが個人の問題で,どこからがみんなの問題なのかという線引きというのは,非常に難しいところで,そこがこれからの議論においても,しばしば原則論として立ち返らなければいけないところなんだろうなと思います。
     この部会における議論は,恐らく非常に高度で専門的な,難しいものになるのだろうと思われますが,しかし,相続やお隣との境界の確定などは,一人一人の日常に関わる非常に身近な問題です。
     したがいまして,ここでの議論が今後,多くの人々の共感を得て,そして議論の結果が,実際に人々の間に根付く制度になるということが大事であろうと考えております。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。短期,中期,長期に分けて整理をしていただきました。蓑毛幹事,どうぞ。
    ○蓑毛幹事 今回示していただいた『考えられる検討項目』ですが,委員,幹事の先生方からも意見がありましたが,必要十分なものを出していただいたと思います。ここに至るまでの間,在り方研究会等において熱心な議論がされ,これだけ多くの論点について,議論をするための枠組みを適切に設定していただいたことに,感謝しておりますし,敬意を表する次第です。
     ただ1点だけ,大局的な見地というよりも,少し細かな話になりますが,『登記所による不動産登記情報の更新を図る方策』という箇所が気になりました。この箇所は,民法や不動産登記法をどうするというよりも,登記所が,いかなる情報を取得して,それをいかなるシステムで運用・活用していくかということが問題になりますので,この部会では,登記所が,具体的に国民のいかなう情報を取得していいのか,取得すべきでないのか,あるいは適切な情報管理の在り方はいかなるものかを議論すべきだと思います。
     また,在り方研究会の最終報告書も拝見しましたが,登記所による不動産登記情報の更新の仕組みについて,どこにどういう問題があって,何が技術的に難しいのか,何ができて何ができないのかという具体的なところが,少し分かりづらい。部会で審議するに先立って,ここはもう少し詰める必要があろうかというふうに思っております。
     具体的に申し上げますと,在り方研究会の報告書の40ページに,戸籍と不動産登記の連携を図るについて,戸籍には本籍地と氏名の情報しかない。不動産登記には氏名と住所の情報しかない。そこで,不動産登記と戸籍のマッチングは難しいというようなことが書かれています。
     しかし,私どもの実務的な感覚からいくと,戸籍の附票というものがあって,この戸籍の附票はマッチングに使えるのではないかと思っています。
     念のため,簡単に申し上げますと,戸籍の附票というのは,住民基本台帳に基づいて,本籍地の各市区町村において,戸籍の原本とセットで作成・保管している書類で,その戸籍が作成されてから現在に至るまでの戸籍に載っている人の住所が記載されているものです。記載事項は4項目で,戸籍の表示,氏名,住所,住所を定めた年月日と,これが情報として存在します。
     そして,平成6年に戸籍法の一部が改正され,各市区町村では順次,戸籍の電算化が進められていて,現在では大多数の市区町村で,戸籍と戸籍の附票は電子記録化されていると聞いています。だとすると,戸籍の附票の情報を用いれば,戸籍に載っている人の現在の住民票上の住所と,一定の範囲で過去の住所の履歴が検索できるということですので,そしてまた,それが電子記録化されているということですので,不動産登記と戸籍のひも付けに活用できるのではないかと思います。
      た,戸籍の情報については,戸籍副本データ管理システムで電子記録として管理されていますが,現在,戸籍法の改正の作業が進んでいて,今年の2月1日の要綱案では,戸籍の副本情報から戸籍関係情報,これは戸籍と除籍に記録されている者同士の親子関係や婚姻関係等の存否を識別するための情報ですが,これを生成する新たなシステムを構築するとされています。ただし,この新たなシステムは,戸籍の副本情報は基にするけれども,戸籍の附票の情報は取り込む予定はないと聞いております。
     戸籍の附票は,法務省の管理でなく,総務省の管理だと聞いていますが,この部会の審議においては,電子記録化されている戸籍の附票の情報をうまく活用することや,現在進行中の戸籍法の改正における新システムとの連動も含めて,議論すべきだと思います。
     今回の諮問事項にもありますし,登記所によって,戸籍情報と連動した不動産登記情報の更新を図ることができれば,相続登記の義務化や遺産分割の促進等の土台となるインフラになると思いますので,是非そのようなことを検討するべきではないかと思う次第です。
    ○山野目部会長 ただいま,蓑毛幹事から,部会資料1,第2の1(1)のイに関連して,具体的な問題提起を頂戴いたしました。
     事務当局の発言を求めますけれども,それに先立ちまして,二つ御案内申し上げます。
     この部会で調査審議が予定されている事項の中には,しばらく前の中田委員の御発言で明瞭に御指摘を頂いたとおり,所有者不明土地問題への対処ということがかなり直接的に意識される事項と,もう一つ,それには限られず,一般的に不動産登記制度を中心とする制度改革をにらんだ観点から取り上げられることが望ましい事項とがございます。
     ただいま蓑毛幹事から御指摘いただいた事項は,必ずしも間近の所有者不明土地問題のみに向き合っているという性格が,彩りが強いというわけではなくて,もう少し一般性を持つ論点でありまして,そういう意味での重要性があるということは御指摘のとおりであって,部会資料1でもその観点から取り上げました。
     もう1点添えますと,この事項をこれから後の部会の所要の回で具体的に審議する際に,その時点での戸籍法の改正を始めとする戸籍制度の改革に係る内容も資料として御提供申し上げ,委員,幹事の皆様方に共有していただくことがかなう状況で,その際の具体的な審議をお願いしたいと考えております。
     そのようなことではありますが,現時点で事務当局においてお話しできる範囲でお話ししていただくということでしょうか。
    ○村松幹事 民事第一課が戸籍担当でございまして,私ども民事第二課の方で不動産登記の担当をしております。
     今,蓑毛幹事から,非常に具体的に御指摘いただいておりますけれども,不動産登記情報の更新という論点になります。少し論点のご紹介も兼ねて前提から御説明をさせていただきたいと思います。
     まず,所有者不明土地問題は,大きく捉えると,不動産登記簿を見ても今の所有者が分からない,あるいは,所有者がどちらにいらっしゃるのかが分からないと,こういった問題に広く位置付けられますので,そういう目線で見ますと,相続に必ずしも限らない,もうちょっと広い問題が,ここには含まれ得るというところがございます。例えば住所変更も含めまして,そういった場合に,なるべく登記の方に反映させる仕組みというのを考える必要があるのではないか。
     もちろん,一つの解消手法が,相続登記の義務化を含めまして,登記の義務化という対応策であるのは間違いないわけですけれども,他方で電子政府を政府全体で推進しておりますので,そういった中で,バックヤード連携といったような言い方をしますけれども,電子的に情報を共有することによって,ある程度自動的に登記の内容を変えていければ,そういう意味では,国民の負担を余り高めないで,所有者にうまくたどり着ける,不動産登記の高度化という言い方もされるかもしれませんけれども,そういうところにもつながるのではないのかというので,この更新の議論がされているというところです。
     その上で,今御指摘いただいたイの部分ですけれども,登記所の方で不動産登記情報の更新を図るための方策というものについて検討しておりまして,これは,例えば,自然人でいいますと戸籍,あるいは,先ほど出ましたけれども住民票といったものが,考えられる連携先ということになろうかと思います。
     法人になりますと,例えば商業登記とか,そういったもので,本店が移転したらその情報を頂くとか,会社の名前が変わればそれを頂く,こういったようなことが,一般的には,もしかしたらあり得るのではないのかというところで,ここの連携がうまく図られていくといいねというのが,一つのものの考え方になります。
     ただ,研究会の方でも議論しておりましたけれども,そのときに,やはり一番問題になりますのが,新しく申請が出てくる不動産登記については,そのときに,新しい制度の下で対応をお願いすればいいということになるんですけれども,そうしますと,全ての土地に関して不動産登記情報を新しくしていくという仕組みに乗っけるためには,かなりの時間が掛かってしまいます。そうすると,そうではない土地,すぐには権利が動かないから登記の申請も来ないという状況のものに,どういうふうにアプローチするのがいいのでしょうかというのが検討課題になっております。そういった動かない土地についても,ひも付けという言い方が先ほどもちょっと出ておりましたけれども,ひも付けをする。それは,過去の一時点の住所と氏名,あるいは住所とその法人の名前とか,そういったものが分かる,それだけが不動産登記の情報ですけれども,それと,また全然別に整備されていますところの戸籍ですとか住民票,あるいは法人登記,そういったものとの間のひも付け,連携をしていく。連携すれば,その後は,情報をもらえば自動的に改変できる,情報が更新できるということになるわけですけれども,そのひも付けを一体どういうふうにやったらいいのかというのが,なかなか実は大きな問題だというのが議論としてはございます。
     その一つの解消策として,附票情報というのは,そういう意味では,履歴的に残っておりますので,そういった情報を見ることによってひも付けることが,確かにこれは可能かもしれないというふうには,実はこちらでも考えておるんですが,問題は,それを結局人の目で,電子的に持っているけれども,全て目でやらなくてはいけないのか,ある程度機械的にできるのかによって,対応のコスト等々ももちろん変わってまいりますので,そういったところも含めて,ちょっと検討が必要なのかなと,当方としても考えているところです。
     そういった流れに関していいますと,戸籍について今御指摘ございましたけれども,戸籍法についても今般,改正法案を提出しておりますので,新しい改正法案の下でのシステムの中で,どういう取組ができるのかということは,個別具体によく検討していかなくてはならないわけですけれども,今正に方向性が固まったというところですので,そういったところを含めて,どういうふうに連携をするのがいいのか。
     問題は,果たしてできるのかどうかというところに係ってくる部分がございますので,ひも付けの作業が,コスト的に見合うような形でできるのかというところが,一つの大きな課題なのかなと思っておりまして,そういったところに関しましては,もちろん技術的なところの細部までということになるかどうかはございますけれども,審議会の中で,こういうやり方ができそうです,あるいはできなさそうですといった議論,あるいはその先に,ではそれを職権で,登記所の方で本当にやってしまうのか,それともやはり,職権はちょっとどうなのかといった議論があり得るのか。そういったような議論が研究会の方でもされてもおりますけれども,そういったところについても審議をお願いしてまいりたいとは思っております。
    ○山野目部会長 蓑毛幹事におかれましては,本日のところはこのくらいでよろしゅうございましょうか。また当該の回に問題提起を頂ければと思います。
    ○道垣内委員 本日は,一つ一つの論点について意見を言っていると切りがないので,言うべきではないのかもしれませんが,先ほど村松さんの方から,技術的あるいはコスト的な面というのがポイントであるという御説明がありましたので,それは本当なのかという点から,一言申し上げておきたいと思います。
     考えてみますと,今から40年ぐらい前というのは,電話帳に住所が書いてあったんですよね。ということは,例えば,私が採点をして,不可を付けましたとき,怒った学生が,道垣内の家をちょっと襲いに行こうと思ったら,電話帳調べますと私の住所が分かったのですね。しかし,今では,電話帳に電話番号を載せている人も少ないし,住所も多分載っていないと思うのですけれども,例えば,不動産登記における権利者の住所が,オートマチックに現住所に変わっていくということになったときに,不動産の登記は,誰だって見ることができるのだということになりますと,それはある意味,現住所の開示手続になってしまいます。それを技術的やコスト的な問題だけの問題のように説明されるのは,非常に私は危惧致します
      それよりも,もっと理念的に,そんなのを公開していいのですかということをきちんと考えるという視点を,いろいろなところで忘れないようにしていくべきではないかというふうに思いますので,細かな具体的な論点ですが,あえて一言申し上げておきたいと思います。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     登記情報の公開の範囲及び方法については,そのことを議題とする回において,ただいま道垣内委員から御注意いただいた点も含めて,審議を深めなければならないと感じます。
      事務当局においては引き続き,道垣内委員から,本当かという指摘がありましたから,御検討を深めていただければ有り難いと感じます。平川委員,どうぞ。
    ○平川委員 ありがとうございます。
     村松幹事の方から,実務的な話について,かなり踏み込んで御意見いただき,考え方を示されました。やはり登記制度が実務として,しっかりと動いていくという観点が重要なのではないかと思っています。一方で,では今の登記法が,どれぐらい正しいのか。素人の感覚からすると,疑問がありますし,その辺,国民にとって知りたいところではないかと思っています。
     会社の登記簿があるかと思いますが,私は社会保障審議会に出ているものですから,社会保障審議会の年金の関係で出ていますと,社会保険の適用拡大とともに,年金事務所が適用の促進をする場合,当初,法務局の会社の登記簿を見て進められていましたが,登記されている会社名は幽霊企業が多く,あまり役に立たなかったというのが実態であります。
     役に立ったのは,国税庁の税務情報,事業税情報です。それにもとづいて会社が動いているかどうかというのが分かり,それにもとづいて,事業者が年金を払っていない未適用事業所に対し,適用を促進したというのがあります。登記簿という制度そのものが本当に動いているのかどうなのかを,ひとつ国民の皆さんの中で考えてもらわないと駄目ではないかと思います。
     そのうえで,では,その情報をどうやって正確にしていくか,ということでありますけれども,いま言われたように,住民票情報などと,どう連携をとっていくのかというのが重要かと思っています。もちろん,データの内容を公表するかしないかというのは,慎重にしないと駄目ですが,それが重要だと思います。
     ある意味,いま,厚生労働省の方では,健康保険証もマイナンバーカードを使いましょう,マイナンバーカードを健康保険証に代わるものにするんだという動きになっているかと思います。それだけ情報基盤が整備されていく中で,せっかくマイナンバーという情報基盤が大きなものとしてありますので,先ほど言った戸籍との連携というのもありますが,住民票情報,住民票データとの連携も重要かと思います。ただ,住民票データにもとづいてマイナンバーの通知書を送ったら,相当数が戻ってきたという実績もあります。
     とはいうものの多分,住民票データがそれなりに正しい面があるのではないかなと思います。連携の仕方,中身はいろいろありますけれども,どうしていくのかというのを少し考えていかないと,どうも登記制度が本当に正確になっていくかどうかということも含めて,実務として考えていく必要があるのではないかなと思います。
     コストの面から言いますと,私,北海道庁の労働組合出身なんですけれども,例えば公共事業をやるときに,用地買収にコストが掛かります。それは,住民を説得するというだけではなくて,調査に時間が掛かります。公共事業をやるにしても,やはり用地買収に掛かるコストを,どう効率化していくかということもあります。
     そういうことからすると,データの連携に関する費用というのは,しっかりと確保し,ひいては,それが行政全体の効率化につながっていくというふうに思いますので,ある意味,今後の検討に関しては,予算が確保できないからということだけではなくて,しっかりと広い観点で議論していくということが重要かと思っています。
     以上,感想であります。
    ○山野目部会長 平川委員が前の方でおっしゃった,実態のない法人の問題のことは,この部会におきましても,抵当権の登記名義人になっていて困っているという局面が議題に取り上げられる回がございます。また,その折に問題提起を頂きたいと望みます。
     また,個人番号の活用方策についても,引き続き事務当局の方で,視野に置いて検討を進めてくれるものと思います。どうもありがとうございました。
     今,部会資料第2の1のところについて,御意見を承っていますけれども,ちょっとお疲れでしょうか。第1の1のところで,まだ御議論があるところを休憩後に続けてもよろしいというふうに考えますから,ここで少し休憩を入れましょうか。
     休憩前の御議論の中で,最初の松尾幹事の御発言の中において,現在国会に提出している法律という御言及がありました。これは,そのとおり,現在,法務省が責任を担って,所有者不明土地問題への対処の一環をなしている法律案を現在の会期に提出しております。表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案でございます(2019年2月22日閣議決定,同日,第198回国会において衆議院に提出)その関連の事項を議題とする回に,もう少し委員,幹事の皆様方に知っていただくような資料の用意も差し上げた方がよいかもしれません。補足させていただきます。

              (休     憩)

    ○山野目部会長 審議を再開いたします。
     部会資料1の第2の1の部分について,御議論を頂いていたところでございました。もう一度,1の範囲で御意見がないかを伺った上で,それを経て,2の方についての委員,幹事の御意見を伺うということにいたします。
     それでは,1の範囲で,まだ意見として述べることがあったということを仰せください。
    ○藤野委員 ちょっと先ほど,制度のバックグラウンドのお話も出ておりましたので,若干ミクロな話にはなってしまいますが,私が今,鉄道会社におります関係で,所有者不明土地の問題について,これまで20年ほど鉄道会社で働いてきた経験の中で感じていることについて,お話をさせていただければと思っております。
     皆さまの中には,当社,JR東日本を首都圏で御利用になられているお客様が多いと思うのですが,当社の場合,会社全体では7,500キロくらい線路を持っています。そのうち,東京圏って,実は2.6%くらいしかなくて,ほとんどのエリアは,東北であったり上信越であったりというところの,いわゆるローカルなエリアになっております。
     先ほど増田委員からもお話ありましたけれども,やはり所有者不明土地の問題は,地方に行けば行くほど,いろいろと問題に直面することが多いというのが実感としてございます。日常的な話で申し上げますと,例えば冬の時期などには,沿線の土地の樹木に雪が積もって,線路の方に倒れてくるおそれがあるということで,伐採を求めようと思っても,その土地の所有者が分からないので,なかなか手が出せないというようなこともございます。
     あと,直近の話で申し上げますと,東日本大震災というのがございまして,あの後に,津波で被災した線区を復旧させるときに,どうしても今まで走っていたところをそのまま走らせるわけにはいかないということで,線路を内陸側に移設するというようなことをやったわけですが,やはりそのときの用地取得,かなり苦労したということがございます。
     本当に分かりやすい例で申し上げますと,1筆の土地を取得するために,調べてみたら,相続人が70人くらいいらっしゃって,全員の同意をとる必要が生じ,しかも最後の1人の方とのやり取りがなかなか進まないので,800キロくらい離れたところまで,判子をもらうために何度も足を運んだ,というようなケースもございます。
     したがいまして,やはり所有者探索に関する負担とか,そういったところを踏まえて,所有者不明土地に関して何らかの対策というのは必要だというところには異論はないところでございます。
     ただ,一方で,弊社の線路に隣接するいろいろな土地,特に大都市圏の土地で同じようなことが起きているかというと,そこは全く話が異なるという点もございます。
     今回,正に,民法・不動産登記法の改正の議論ということで,ひとたび改正されれば,都会であろうが地方であろうが,同じように適用されるというところがある中で,立法事実のところで一つのところだけ見て,例えば地方の所有者不明土地の対策というところだけ見てしまうと,それが都会の極めて価値の高い土地の対策としてきちんと当てはまるかという問題は出てくるかと思いますし,その逆もまたしかりなのかなと思っておりますので,やはり立法事実として,正に全国各地で今何が起きているかというところをしっかり拾い集めた上で議論していくのが大事なのではないかなというふうに感じておるところです。
     よろしくお願いします。
    ○岡田委員 岡田です。
     私は,土地家屋調査士という資格者でございますけれども,今,全国で約1万6,700人の会員が活動しております。主な業務としては,不動産の物理的な状況を登記情報に反映するという部分で,不動産登記法あるいは民法の部分に関わらせていただいているところでございますけれども,特に感じているところは,やはりお隣の方,隣接地の方が分からない,所在が分からないも含めてですけれども,そういう場面には,たくさんの実態と実例を抱えて持っている資格者団体でございますので,そこら辺りの実務家の視点として,これからこの審議会に参加させていただけたらなということで,本日はお邪魔をさせていただきました。
     具体的には,それぞれの考えられる検討項目に関して,法令遵守の部分,それからインセンティブの部分,そして,あとは良心に訴える部分とか,いろいろあるとは思いますけれども,先ほど吉原委員からもございましたけれども,個人の問題から,やはりこれは社会的な問題にというのは,全く実務をしている者からしても,感じている次第でございますので,是非この辺りは,現場の声をお伝えできたらなということでございます。
     よろしくお願いします。
    ○山野目部会長 部会資料1,第2の1の部分についての御意見を大体承ったというふうに受け止めてよろしゅうございましょうか。
     それでは,同じく第2の2の方についての委員,幹事の御意見を承ります。
     2のところは,御覧いただいているとおり,所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みという問題提起でございます。具体的には,共有制度,不在者の財産の管理,相続財産の管理,それから相隣関係規定の見直し,これらに係る問題提起を差し上げているところでございます。
    ○岡田委員 すみません,続いて申し訳ないです。
     例えば,この共有制度の見直しという項目がございますけれども,正に今現在,売買をしようであるとか,具体的にですね。そういう場面においては,共有者のお一人でも見付からなかったら,これは経済活動としても止まるわけでございます。
     そこら辺りのことをも踏まえた上での議論というふうに理解しておりますが,それでよろしいわけですよね。
    ○大谷幹事 所有者不明土地問題の解決に向けて,大きく二つの観点をお示ししておりますけれども,一つは,所有者が登記を見ても分からないという,そのこと自体の問題,それから,そこから発生すると申しましょうか,それを契機として明らかになってきている問題の一つとして,共有者の一部が所在不明であるときに共有物の処分ができないということが実際にあるという御指摘を踏まえて,共有制度の見直しを項目として挙げております。
     経済的な活動としても,共有物を,あるいは共有の土地を利用するのが,特に共有者の一部が所在不明にあるときに困難になるということは,実際にありますので,そのような観点も含めて,御審議を頂きたいと思っております。
    ○山野目部会長 岡田委員,よろしゅうございますか。
    ○岡田委員 はい,ありがとうございます。
    ○今川委員 私も,今日は第1回ということで,一般的,基本的な考え方ですけれども,共有についてですけれども,遺産共有も含めて,共有状態というのは,管理・処分が,今岡田委員も言われましたけれども,単独所有と比べると動きが重くなる。その中に所在不明の方がいると止まってしまうという状態がありますし,もう一方,放置しておくと,権利が細分化されてしまって,ますます重くなるということがありますので,不在の共有者がいた場合にどうするかということと,なるべく早く共有状態は解消された方がいいのではないのかという観点も必要かなと思います。
     それで,先ほども言いました,在り方研で検討されていました管理権者制度というのが,これ非常に重要になるなと,今のところ感じております。加えて,遺産共有というのは,単に共有ということに加えて,不確定な状態が続いているということですので,これが放置されていくと,権利が細分化して,ますます不確定な状態が長く続くということもありますので,遺産分割協議に期間制限を加えるというのは,ある程度,不確定な状態から一定の確定した状態に持って行くという意味で,意味はあると思います。
     ただ,内部でも,なるべく慎重にやるべきではないかという意見もありますけれども,今のところ,前向きに検討すべきだなというふうには考えております。
    ○山野目部会長 引き続き,2の範囲についての御意見を承ります。いかがでしょうか。
    ○蓑毛幹事 共有についてですが,実務的な問題として,単なる共有と,非常に多数の共有者がいる状況になっているものがあります。法律論としては,どちらも同じ共有なんですけれども,実務的な感覚からしますと,3人の共有者がいる状態と300人の共有者がいる状態では,全く違うということがあります。
     今回の部会の議論の中で,そういう,メガ共有といいますか,非常に多数の共有者がいる状態を,普通の共有とは違うと考えるのか,やはり理屈としては同じと考えるのか。この辺りのところに少し関心があるところです。
     これは後の議論の中で,考え方の視点として申し上げたいと思っておりますが,今日のところは,そういう問題意識を持っているということを申し上げたいと思います。
    ○山野目部会長 共有制度を議論する際に,ただいまの問題意識を温めておいていただいて,さらに,蓑毛幹事始め皆様方から御意見をおっしゃっていただくことが望まれるところでありますけれども,メガ共有という言葉はよいですね。何か多分,今宵は皆さん,その言葉を思い出しながら眠りにつかれるものではないかと想像します。引き続き,この部会の調査審議において,重大な関心を払ってまいりたいと受け止めます。
    ○吉原委員 これは質問なんですけれども,土地所有権の放棄の論点において,相続放棄については含めないという理解でよろしいでしょうか。
     法的には,相続放棄というのは全く別物であるということは理解しているつもりなんですけれども,土地の側から見れば,相続人,つまり権利を主張したり,管理責任を負う人がいなくなる可能性があるということでは同じでありまして,相続放棄は全財産であるので,土地だけとは限らないし,土地が入っていない場合もあるかもしれませんが,今後,少子高齢化で甥っ子,姪っ子もいない,本当に相続人が不存在になるケースも出てくるかもしれない。レアケースかもしれませんが,そうなった場合の土地の権利についてもここで扱うのか,あるいはここからは除外するのか,それはなぜなのかというところを教えていただけたらなと。
     これは間接情報なんですけれども,家庭裁判所で相続放棄の手続をして,その後,第三者が相続財産管理人の選任を申し立てることもなく,そのままになっているケースというのもあって,書類の保存期間が経過してそれが破棄されてしまうと,相続放棄の事実も正確には分かりづらくなるということも仄聞したことがあります。そこで,ここでの議論において,相続放棄によって所有者がいなくなった場合についてはどう考えるのかということを教えていただければと思いました。
    ○大谷幹事 所有権の放棄と,それから相続放棄との関係ということですが,土地所有権の放棄の論点におきましては,やはり相続放棄の場面とは異なりまして,今現に土地所有権を有している人が土地を手放すことができるかという論点だと考えておりますけれども,一方で,相続放棄について,今少しお話がございましたけれども,相続人全員が相続放棄をした場合には,相続人があることが明らかでない相続財産という形で,相続財産管理制度の仕組みの方に回ってまいります。
     その意味で,財産管理制度の見直しということも,一つの論点として挙げておりまして,相続人が相続放棄をしたときに,どのように土地等の財産が管理されるべきであるかについては,論点として,今後お出しするつもりでございますし,その際に御審議をお願いしたいと思っております。
    ○潮見委員 一言で済ませます。
     相続放棄は一緒に扱うのは,それは大いに結構だと思います。ただ,相続放棄で,土地の部分に特化した形の議論ということをやった場合に,ほかの財産とかに関する相続放棄というものがどうなるのかをきちんと理解してやらないと,危険なところは一杯あると思います。
     私も,調停委員とかもやったことがあり,相続放棄も経験したこともございます。ですから,その意味では,相続法制との体系的な整合性とか考え方を踏まえて,ここで審議していただきたいなと思います。
    ○山野目部会長 吉原委員,潮見委員から問題提起を頂いたことは,今日は包括的な論議であるとはいえ,ここで進める調査審議の全体像に関わる重要な観点の御指摘を頂いたというふうに受け止めます。
     放棄という概念がそこここに出てまいりますけれども,もちろん所有権,土地所有権の放棄を中心に,次回以降の部会で,日を定めて御議論をお願いしなければいけませんが,土地の所有権の放棄のみが議論されればよいということではなくて,それを議論していったときには,建物の所有権の放棄,動産の所有権の放棄を併せてどう考えるか。それから,共有持分の放棄をどう考えるか。さらには,局面によっては,似たような作用を持つのではないかという観点から,正に吉原委員に見抜いていただいた相続放棄との関係をどう考えるか,全て問題になります。
     その上で,相続放棄に関しては,恐らく,ここでの調査審議の進め方としては,どちらかというと,相続放棄そのものというよりは,相続財産の管理と関連させて検討するということになるであろうという見通しがあり,大谷幹事からも少し,その方向でのお話を今してもらいましたけれども,しかし,いずれにしても議論しなければいけないことでありますので,御指摘を踏まえて議論を進めてまいりたいと考えます。
     それから,相続放棄に関して,潮見委員から御指摘をいただきました。幾つか今回,調査審議をお願いすることを予定している事項の中には,何といったらよいでしょうか,言い方に困りますが,相続ないし相続法が関わってこさせるをえないところがありまして,そういうところに関しては,相続放棄もそうですし,それから,一つ前に今川委員が問題提起をなさった遺産分割の期限の制限もそうですけれども,どうしても諮問107号を背景に議論を進めていきますと,土地のことだけに頭がいってしまうものの,相続法制のことを考えるときには,相続財産を構成する財産は土地のみではありませんから,それが相続法制全体にどういう影響を与えるか。場合によっては弊害があるかもしれないというような観点に十分留意をして,審議を進めなければならないということも感じております。その観点から大事な指摘を頂きました。
     引き続き,2の部分についての御意見を伺いますが,ただいまの吉原委員の御指摘のように,1で議論していただいたことと関連する事項もございます。うるさく,2の範囲でというふうにはお願いいたしませんから,どうぞ委員,幹事,関係官の皆様,御随意に御発言を頂ければと思います。いかがでしょうか。
     大体,本日の段階で,委員,幹事,関係官の皆様にお気付きいただいたことは受け止めたというふうに考えてよろしゅうございますでしょうか。
     それでは,本日は部会資料1に基づく大変に熱心な御議論を頂きました。次回,第2回の会議から後は,あらかじめ部会資料で個別に御案内申し上げる各論的な検討をお願いしていくことになります。
     その最初の回になる第2回の日程等について,事務当局から案内を差し上げます。
    ○大谷幹事 御案内いたします。
     次回4月23日の火曜日,午後1時から午後6時までという形で進めさせていただきます。場所は,東京高検の第2会議室になります。また御案内申し上げますけれども,テーマについては,現時点におきましては,共有,それから所有権の放棄を取り上げたいと思っております。先に実体法関係を取り上げたいと考えております。
     次回は,各論点について,今部会長からお話がありましたとおり,先に資料をお送りして,各論点について,掘り下げて御議論いただきたいと考えております。
    ○山野目部会長 次回の予定を御案内を申し上げました。よろしくお願い申し上げます。
     本日は,この会議は,午後4時30分までを予定しておりましたけれども,委員の皆様方から熱心な御討議を頂き,審議に御協力を頂きましたことにより,無理に4時半まで進める必要はありませんので,これで本日は了することができます。
     恐らく,次回以降は,午後1時から午後6時までを予定しておりまして,私も進行に努力を傾けることにいたしますが,毎回早目に終わるという予測は成り立ちにくいものであると認識を頂ければ有り難く,次回以降も委員,幹事,関係官の皆様方の御協力をお願いする次第でございます。
     これをもちまして,法制審議会民法・不動産登記法部会の第1回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。

部会資料1 民法・不動産登記法の改正に当たっての検討課題【PDF】

参考資料1 登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究報告書」【PDF】

参考資料2 藤巻梓(国士舘大学法学部教授・法務省民事局調査員)「外国法制調査(ドイツ)報告書」(平成31年4月23日差替え)【PDF】

参考資料3 原恵美(学習院大学法科大学院教授・法務省民事局調査員)「外国法制調査(フランス)報告書」【PDF】

横山関係官(国土交通省)提供資料
「土地の利用・管理に関して必要な措置の方向性(概要)」【PDF】

「国土審議会土地政策分科会特別部会とりまとめ概要」【PDF】

「国土審議会土地政策分科会特別部会とりまとめ」【PDF】

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正案及び同要綱案と議論の経過

中間試案

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明

法案

第1 相隣関係

民法改正案

(隣地の使用請求
第二百九条 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕する次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地の使用を請求するを使用することができる。ただし、隣人住家については、その居住者の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
  一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
  二 境界標の調査又は境界に関する測量
  三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
 前項第一項の場合において、隣人隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

  第二百十三条の次に次の見出し及び二条を加える。

(継続的給付を受けるための設備の設置権等)
第二百十三条の二 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
4 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。
5 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。
6 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
7 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

第二百十三条の三 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

(竹木の枝の切除及び根の切取り)
第二百三十三条 隣地土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
  一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
  二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
  三 急迫の事情があるとき。
 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

  • 要綱案(相隣関係)

    第1 相隣関係

     1 隣地使用権

    民法第209条の規律を次のように改めるものとする。

    ① 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ること
    はできない。
     ア 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
     イ 境界標の調査又は境界に関する測量
     ウ 2③の規律による枝の切取り
    ② ①の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(③及び④において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
    ③ ①の規律により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
    ④ ①の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

     2 竹木の枝の切除等

    民法第233条第1項の規律を次のように改めるものとする。

    ① 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
    ② ①の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
    ③ ①の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
     ア 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
     イ 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
     ウ 急迫の事情があるとき。

     3 継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権

    継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権について、次のような規律を設けるものとする。

    ① 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下①及び⑧において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
    ② ①の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(③において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
    ③ ①の規律により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
    ④ ①の規律による権利を有する者は、①の規律により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、前記1の①ただし書及び②から④までの規律を準用する。
    ⑤ ①の規律により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(④において準用する前記1の④に規律する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができる。
    ⑥ ①の規律により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
    ⑦ ①の規律により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。
    ⑧ 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、⑤の規律は、適用しない。
    ⑨ ⑧の規律は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

  • 法制審議会 民法・不動産登記法部会 第23回会議議事録
    ○山野目部会長 再開いたします。
      部会資料55をお手元に御用意くださるようにお願いいたします。要綱案として作っていくものの第1部,民法の見直しの第1のところで扱う相隣関係の中の1として,隣地使用権を題材としている資料でございます。前回会議でこの隣地使用権について御議論を頂いたところを踏まえ,議事を整理いたしまして,本日改めて部会資料55の1ページに太字で掲げているような規律の構想をお示ししているところでございます。部会資料55のその余の部分は,その補足説明でございます。事前にお目通しを頂いているものと考えます。それでは,この部会資料55の全体につきまして,委員,幹事の御意見を承ることにいたします。いかがでしょうか。
    ○中村委員 ありがとうございます。前回の第22回の部会では,この点につきましていろいろな議論があり,仮に前回御提案の使用権構成で進む場合でも,要件,手続,効果,それぞれの観点から適切な絞りを掛けることができるかどうかを更に探るということになりましたが,今回はそれを受けて,手続要件である本文③のところを更に工夫していただいたものと理解しております。日弁連のワーキンググループでは,今回の提案に賛成する意見があった一方で,前回もお伝えしたのですが,引き続き強い修正意見もありました。
      まず,今回提案に基本的に賛成する意見としましては,この御提案にそのまま賛成する意見と,少し修正を加える提案が付いているものがあります。③の通知の宛先の部分ですけれども,第一次的には現に使用する者に対してとする,そして,隣地使用者を知ることができず,又はその所在を知ることができないときは,土地所有者に対してとするということによって,使用者がいない,又は不明という場合に,所有者は判明しているのに何ら通知をしないで使用できるといった,隣地の円満な利用の調整という観点からは望ましくないような事態を避けることができるとして,若干の修正を求めるという意見がございました。
      それから,強い修正意見としましては,より根本的に見直すことを提案するものなのですけれども,部会資料の本文の定めぶりですと,これを読んだ国民の間には,自力救済は許されるという誤解が生じることを防ぐことは難しいという強い危惧感による意見です。今回の部会資料の提案では,本文だけを読みますと,①から③の要件を満たす限り隣地使用は適法であって,隣地所有者がこれを拒めば違法となると解釈され得るところ,例として,隣地使用権者が大掛かりな商業ビルの建築を予定しているような場合に,隣地所有者がこの時期は困ると申し入れた上で門扉に施錠をしたというような場合に,隣地使用権を侵害されたとしてその損害は巨額になるよというような形で迫られると,やむなく押し切られるという事案などを想定して,このような場合が生じてくるのではないかという懸念も示されていました。
      その上で,この反対意見からの対案といたしまして,前回の部会でもお伝えし,また,前回中田委員から御示唆がありましたように,①の実体要件の中に,次に掲げる目的のために必要であり,かつ,隣地使用の日時・場所及び方法が,隣地の使用状況,隣地が受ける損害の性質と程度,他の代替方法の有無その他の事情に照らして相当と認められるときに,などとして相当性の要件を盛り込むことが1点。そして,もし①の要件をこのように修正すれば,②の要件を①に吸収してしまって,②が吸収された①と,今回の③の手続要件の両方を充足しなければ隣地使用はできないのだということが国民の目に分かりやすくなるのではないか,そうすれば懸念される自力救済をできる限り防止することができるのではないかという対案が示されました。
      さらにもう1点ですが,これも前回お伝えしましたが,③の規律によって通知された日時・場所,方法などが被通知者にとってはどうしても都合が悪いということはあり得るので,変更請求権を設けてはどうかという,前回もお示ししましたが,引き続きこのような案が出されていました。
      隣地使用権については,基本的に以上です。もう1点,前回の部会資料52の4項で扱われました,他の土地等の瑕疵に関する工事,いわゆる管理措置については今回の御提案はありませんけれども,このいわゆる管理措置についても前回多くの論点が指摘されまして,隣地使用権の検討と整合性をとりながら整えていく必要があるという指摘がなされたところでした。あと3回しか部会が予定されていない中で,なかなか難しいとは思いますが,管理措置についても,最終提案の形になる前にもう一度検討の機会を頂きたいという希望が出ておりましたので,申し添えたいと思います。
    ○山野目部会長 弁護士会の意見をお取りまとめいただき,個別の出していただいた意見,それから審議の進め方についての要望を承りました。
      引き続き,いかがでしょうか。
    ○佐保委員 ありがとうございます。先ほど中村委員が発言された隣地使用権の③の通知の相手方の話であります。現に使用している者については特段私も異論ありませんが,同じように,2ページの補足説明では,後段,他方でから始まり,隣地使用者が存在しない場合にはということも書いてあります。私は専門家ではありませんけれども,例えば,隣地使用者が存在しない場合は隣地の所有者に通知しなければならないといった規律を入れておいた方が分かりやすいのではないかと考えております。
    ○山野目部会長 御意見を承りました。
      引き続き承ります。いかがでしょうか。
    ○道垣内委員 ありがとうございます。前回,この相隣関係の隣地使用権につきまして,②の要件に関して,隣地のため損害が最も少ない,というのではなくて,隣地所有者や隣地の使用者に損害が及ばないようにしなければいけない,といった文言にすべきであるという修正案が出されたのに対して,私も含めまして何人かの者が,隣地使用権というのが所有権対所有権の調整の話であるとするならば,そこに隣地所有者や隣地使用者に損害を与えないというふうなことを入れ込むのは,権利の性質を大きく変えることになるのではないかと発言いたしました。
      今回,中村委員から,修正案が出たという具体的な話を伺いました。①について,相当性的な要件を入れる,というわけですが,しかし,そのときに中村委員は非常に慎重な言葉遣いをされまして,隣地所有者,隣地使用者という言葉をお使いになりませんで,「隣地が受ける損害の性質と程度」という言い方をされたのですね。私はその点には全く異存はありませんで,また,①のところに,必要な範囲内でということだけではなくて,そういう相当性の要件というものを入れるということにも特に反対するものではありません。もちろん②の,「隣地のために損害が最も少ないもの」というところで読めるといえば読めるのかもしれませんが,それよりも明確になるという点はあろうかと思います。
      ただ,そういうふうに新しく①,②のところを作り変えるにせよ,あるいは現在のままにするにせよ,そこでは,前回申し上げましたように,①,②が,ある土地とある土地の関係の要件として規律されているところなのだと思います。これに対して,④を見てみますと,これは現在の所有者,現在の使用者というものに対して現実に損害が及ぶかどうかという観点で書かれていることであって,①,②とかなり性質の異なるものだろうという気がいたします。そして,それを前提にして,③の意味を考えてみますと,③は④の関係のものなのだろうと思うのです。これは現に使用している者というのを念頭に置いているわけですね。そうすると,①,②とはかなり性格が違うのであり,つまり,手続要件という話がありましたが,仮に,現使用者に対して通知をしないというままに,相当な方法で用いたというのを考えてみますと,通知をしなかったことによって,①,②で定められた権利の行使が当然に違法になるのかというと,どうも私は違法にならないのではないかという気がするのです。
      そうすると,③の要件は何を意味しているのだろうかというと,恐らく④の話なのではないか。つまり,隣地所有者,隣地使用者が損害を受ける可能性がある,目的,使用方法,日時及び場所を通知されたときに,その日は都合が悪くて,その日にやられてしまうと大きな損害を受けるということであるならば,それをきちんと土地所有者に対して,使用しようとしている人に対して伝えなさいと。伝えないでおいて,自分に損害が,非常に都合の悪いときにやられてしまったなどといって,損害が生じたといって損害賠償を払えというのは,それは駄目でしょう。何日の何時から何時までと言われたときに,そのときなら大きな損害が生じるというのだったら,それはきちんと伝えなさい。伝えないで損害が生じ,ないしは拡大したということを理由にして償金請求はできませんよ。それに対して,伝えられたのにもかかわらず,あえてその日にやってしまったということになるならば,①,②の観点からは,ひょっとして正当な権利行使であるとしても,④における損害は認識して与えている損害であり,回避可能な損害であるという形になって,完全に償金の支払義務というのが認められるということになるのではないかと思うのです。そうなると,④のところのただし書に③というのを入れ込んで,ただし,通知を受けたのに,それをきちんと言わなかったことによって損害が生じ,ないしは損害が拡大した場合には,この限りでないというふうな要件として位置付けるべきではないかと思います。
      なかなかうまく言えませんで,分かりにくかったと思いますが,以上です。
    ○山野目部会長 中田委員,どうぞ。
    ○中田委員 ありがとうございます。私は③について,ただ今の道垣内委員とは違いまして,もう少し積極的な理解をいたしました。今回,③に目的と使用方法を入れることで,規律内容の明確化と紛争防止の両面で非常によくなったのではないかと思いました。と申しますのは,②の規定は,使用方法はこれこれのものを選ばなければならないと書いてあるものですから,そうすると,①が権利の成立要件で,②は成立した権利の行使方法というようにも読めるわけです。しかしながら,③に目的と使用方法も入ったことによって,①と②を満たすことを前提にして③で権利が具体化される,そういう構造になったのかなと理解いたしました。
      ところが,今,道垣内委員からの御指摘で,③というのはそういうものではなくて,もっと軽いものである,③がなくたって①,②で権利は発生しているのだと,それを行使しても適法なのだと,③は④のただし書として位置付けるべきだということを伺いまして,そうかと思ったのですけれども,そうだとすると,やはり権利の発生の時期,あるいはその発生した権利の内容というのが非常に不明確になるのではないかと思います。元々,前回申しましたとおり,立入権というところから出発していて,それが使用請求という形になった,だけれども,請求という構成を採ることによって,権利の内容がだんだん煮詰まっていくだろうと,こういうプロセスが予定されていたと思うのですが,今回,請求ではなくて使用できるということにしたとしますと,やはりその権利が具体化するということを明らかにした方が,規律の内容としても,紛争の防止という観点からも,よろしいのではないかと思っております。
      ということで,むしろ私は③を積極的に位置付けたいなと思っておりました。その上で,①で,相当性の要件を入れる,弁護士会の御提案のような方法というのは,そうなればいいなとは今でも思いますけれども,しかし,なかなかそれも難しいのではないかと,この段階ですので。ただ,この部会資料でも一致していることは,①にいう必要な範囲というのは,決してその土地の所有者の主観的な必要性ではないということだろうと思います。つまり,この資料の1ページの下の2行にありますように,必要性の中には,あるいは①と②を併せて,様々な事情が考慮される,あるいは,2ページの3行目にありますように,正当化される範囲というものに限るのだということであります。そうすると,主観的な必要性ではないのだということを,解釈上当然だとお考えかもしれないのですけれども,条文だけを見た人はなかなかそうは理解しにくいかもしれませんので,何か手掛かりを入れることができたらいいなとは思います。例えば,「社会通念に照らし必要な範囲内で」とするような方法も考えられるかもしれません。もちろんそれは一つの例にすぎませんけれども,主観的な必要性ではなくて,この規律から出てくる制約の範囲内で判断されるべきものなのだということを表せたらいいなと思います。
    ○山野目部会長 御意見を頂きありがとうございます。
      今までお出しいただいている御意見などを参考としながら,引き続き委員,幹事から御意見をおっしゃっていただきたいと望みます。藤野委員,どうぞ。
    ○藤野委員 ありがとうございます。こちらの意見としては,これまで出させていただいていたとおり,なるべくそれほど重たくない手続がよいのではないかということで,そこは変わっていないわけですが,やはり想定している前提が大分,それぞれお立場によって違うのかなというところは感じているところでございまして,一番気になっているところは,正に最初の議論の出発点である,隣地所有者が連絡取れません,現に使っている人も分かりませんという場合に,なるべく,ある程度必要なところはきちんとやっていけるようにしたいというニーズに適切に対応できるものになるのかどうか,ではないかと思っているところでございます。その観点からいたしますと,今回,補足説明の一番最後のところに幾つか場合分けをして,3ページの一番下の方に,(5)のところに書いていただいている整理,おおむねこのような整理の仕方が非常に納得感のあるところかなと思っておりました。
      念のための確認ではございますが,実際に例えば,一番最後の段落のなお書などでも書かれているのですが,現に隣地を使用している者はいないと評価する場合とか,所有者による使用すらないと評価されるような場合,こういう場合というのはもう通知まで不要という考え方でよいのか,あるいは,念のため通知をして,それで応答がなくてもそのまま使っていいという趣旨なのかというところは少し確認させていただければと思っております。
      いずれにしても,通知して何も返ってこない場合には相隣関係を維持するために必要なメンテナンスを一切やってはならない,ということにならないのであれば,今回このような形で規律を改めていただく意義というのはあるのかなと思っておりますので,以上,意見と御質問ということで,よろしくお願いいたします。
    ○大谷幹事 ありがとうございます。隣地の使用の解釈として一連の考え方をお示しいたしましたけれども,これは,今正に御指摘がございましたとおり,所有者が現に居場所が分かっているというときに,これは前回の部会資料でもお書きしておりましたが,後のトラブルを避けるために通常は所有者にはお知らせするだろうと。また,概念としては使用していないと評価できるとしても,念のために所有者に通知をするということが望ましいだろうと思っております。
    ○藤野委員 明らかに使っていない場合は,名義上の所有者に連絡をした方がいいということですか。
    ○大谷幹事 明らかに使っていない場合でも,所有者が分かっているのであれば,後のトラブルを避けるために所有者に通常は通知をするのではないかというところでございます。
    ○藤野委員 判明している場合はですよね。判明しておらず,連絡も取りようがないというときは,逆に言うと,ここの中では通知先がないという要件,解釈でいいのかどうかというところで。
    ○大谷幹事 さようです。今の補足説明の一つ上の段落の,所在が不明だというときには,それは使用していないと評価することが可能ではないかと考えております。
    ○藤野委員 ありがとうございます。基本的にもう隣の所有者が分かっているとか,現に使用している人がいるというときに,そもそも隣地使用権の行使という立て付けを実務的にそれほど使うかといえば,少なくとも事業者というか会社の話であれば,それはないというか,この条文を持ち出すまでもなく,きちんと判明している所有者や使用者と話をして使うだろうというところで,私どもの方で想定しているのは,やはりそういった方々がいない,所在が分からない場合というところが前提になっていますので,一応そこのところも含めて目配りをした形で検討を進めていただければと思っております。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      引き続き御発言を承ります。
      いかがでしょうか。ここまでの御議論で,①,②という基本的な成立要件を案内する規律の部分に加えて,③の通知を掲げ,そして④の償金の規律を置くというフォーメーションを御提示申し上げ,前回の部会資料と比べて,③のところについて変更を加えて御提案を差し上げております。ここまでの御議論で,このような前回の部会資料からの変遷を経た提案の基本的骨格は理解ができるという御意見を頂いたり,そのような基本的な骨格は理解ができるということを踏まえた上で,若干の御提案を頂いたりしているところであります。
      ①につきましては,このままの文言でも理解がきちんと説明されるということで進めるという可能性があり得るほか,相当性,社会通念という言葉などを例示しながら,何らかの形で,隣地使用権の行使の範囲,態様についておのずと制限があるということが規範として伝達がより明瞭になるようにする方がよいという御意見や,あるいは,更にもっと多くの文言をここに充てて,そのことがかっちり伝わるようにすべきであるという御意見が出されたりしているところでございます。
      皆様方の御意見を引き続き承ってまいりますけれども,いかがでしょうか。
      おおむね,ただいま御発言いただいたようなところを踏まえて,改めて①,②,③を中心に整理を深めていくということでよろしゅうございましょうか。何か補足で承っておくことがあったらお伺いいたします。
    ○蓑毛幹事 日弁連のワーキンググループでの意見を先ほど中村委員から申し上げましたが,少し補足して意見を申し上げます。
      中田先生がおっしゃったことと関係しますが,私は,③の要件が④の要件との関係で存在するのではなく,①,②の実体要件を受けて③の手続要件が定められているという位置付けとするのが望ましいと考えております。そのことを考える上で,先ほど,道垣内先生もおっしゃられていて,難しい問題があるところだと理解しておりますが,②の「その使用方法は,隣地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない」を,どのように解釈できるかが大事かなと思っています。つまり,「隣地のために」というのは,隣地所有者や隣地の使用者のためにということを意味するのではないのだよという指摘を頂いています。しかしながら,「隣地のために」というのは,部会資料1頁の下から2行目にもあるとおり,隣地の使用状況であるとか,隣地が受ける損害の性質と程度,他の代替方法の有無などの事情を考慮して判断されることになろうかと思います。そして,③では「その目的,使用方法」に加えて「日時及び場所」を通知するとあるのですが,この「日時及び場所」が「使用方法」との関係でどのような位置付けになるかが重要だと思います。私は,「日時及び場所」は必ずしも隣地所有者や隣地使用者の個人的な事情ではなく,隣地のために損害が最も少ないものでなければならないという「使用方法」の一要素になると考えます。例えば,極端なことを言えば,真夜中に工事をするなんていうのは隣地のために損害が最も少ないとはいえないであろうとか,そういった意味において,③の「日時及び場所」は,②の隣地のために損害が最も少ないということのための判断の要素になるのだと思います。そのようなことも併せ考えて,②と③をうまく整合させ,そして,弁護士会が懸念しているようなトラブルが生じないような適切な仕組みを構築していただければと思っております。
    ○山野目部会長 ②と③の関係について,今,蓑毛幹事に整理していただいたとおりの趣旨で部会資料は御案内していると理解しておりますけれども,事務当局から何か補足がありますか。
    ○大谷幹事 御指摘をありがとうございます。使用方法という言葉,②と③で同じ言葉を使っていて,この関係がどうかということもあるのだと思います。本日の御指摘も踏まえまして,更に何か,この本文を変えるのか,あるいは説明ぶりをもう少し充実させるのかというところも両方あり得るかと思いますけれども,再度検討したいと思います。
    ○道垣内委員 ありがとうございます。私は③の要件を軽くしようという話で申し上げているつもりもありませんで,蓑毛さんが今おっしゃったような,真夜中は駄目ではないかと,それはやはり土地に損害を与えるわけではなくて,土地の使用者,所有者に損害を与えるから駄目なので,それが隣地のために損害が最も少ないとはいえないということになるという,それはそのとおりだと思うのですが,私は逆に,1週間後の何日に工事をやりますと言われたときに,いや,実はその日は友達を招いて庭でバーベキューパーティーをやることになっているのだとか,あるいは,友達を招いていて,その友達には赤ちゃんがいて,大きな音を立てられると困るのだというふうなときだって,そう言われれば,使用はやめるべきだと思うのです。日にちをずらすべきでる。しかし,そういうのは「隣地のために損害が最も少ない」というところには読み込めないだろうと思いまして,そうなると,それに反したときはどうなるのか,2,3日ずらしてくれればそれでいいのだけれども,その日はもうお客さんを呼んでいるから勘弁してほしいというときに,強行したときどうなるのだろうか,あるいは都合を聞かないでやったときどうなるのだろうかとかということになると,4の損害賠償的な話というのが生じるということを明らかにすべきであって,それが私が言うところの,①,②と性格が少し違うのではないかということの意味です。そうなると,償金という言い方も正当性が何となく感じられるので妥当でないかもしれません。
      だから,極端な話,土地どうしの関係ではなく,所有者との関係であるということであっても気にしないのならば,逆に,手続要件の①に書いてしまうべきだと思うのです。こういうふうな通知をして,やらなければいけません,それで,合理的な異議が述べられたときにはもう権利はありませんと書いてしまうのだと,またこれも分かるのです。それに違反したら,それはもう勝手に人のところに入った不法行為であるという話になるわけです。今のままだと,③は何なのという,違反したらどうなるのだろうというのが私にはよく分からないものですから,その位置付けをはっきりさせてほしいということです。軽くしたいということではございませんので,一言申し上げておきたいと思います。
    ○山野目部会長 ③の位置付けについて,軽く位置付けを与えているものではないという道垣内委員の御意見の本旨を理解いたしました。
    ○蓑毛幹事 ありがとうございます。道垣内先生から非常にうれしい言葉を頂いたと思います。①と②の要件を満たしていると思われる土地所有者が,隣地の使用者に対して③の通知をした,しかし,隣地の使用者からすると,小さな子供もいるので日を改めてほしいということであれば,それは日を改めるべきだと,この結論は正に弁護士会が望んでいるもの,そのものでして,とても有り難い言葉だと思います。
      その場合,弁護士会が気にしているのは,そのようなことを言って拒んだ隣地の使用者には不法行為は成立しませんよねと,隣地使用権の行使を故意,過失によって妨げたということによって不法行為は成立しませんよねということの確認をしたいと思っているのです。道垣内先生のお立場ですと,隣地の使用者が,小さな子供がいるから別の日に改めてくれと言って,しかし話合いができないまま,土地の所有権者,隣地使用権があると主張する者の工事ができなくなったとしても,不法行為は成立しないという結論になってしかるべきだと思うのですが,それが不法行為のいずれの要件を欠いて,不法行為の成立が妨げられるのか。隣地使用権が成立して行使要件も満たしているにもかかわらず,自分の都合でそれを拒んだ者について,不法行為は成立しないということになるということでよろしいのかということが,道垣内先生にお尋ねしていいのかどうか分かりませんけれども,そこが気になっているところです。
    ○山野目部会長 今のお話は,しかし,道垣内委員に直ちに発言をお願いして議論のラリーを少ししていただくと,考えが深まるであろうという予感を抱きますから,もしよろしければでいいですが,道垣内委員におかれて,ただいまの局面での不法行為の成否,それから成立,否定の論理構造について,何かお考えがあったらお話しいただければと望みます。
    ○道垣内委員 だから,それは妨げても不法行為にならないというふうにしなければいけないということは分かります。そうであるならば,それはもう①の中に③の話は埋め込まざるを得ないのであって,③のところに書いていたからといって,①,②の権利自体がなくなるという話には,構造上はならないような気がするのです。ですから,今,蓑毛さんがおっしゃったような,バリケードを作ってか何か分かりませんが,使わせないように妨害をするという行為が不法行為にならないということを明らかにしようというのだったら,このままではなくて,①に入れなければいけないし,あるいは,解釈かどうか分かりませんが,中村さんがおっしゃったような,①のところに相当性みたいなものを入れて,その相当性の解釈の中に③における交渉とか,そういうものというのを埋め込めるようにしないといけないのではないかと思うのです。
      もちろん,209条は歴史がある条文であって,いろいろな請求構成とかいろいろあるのは,それは分かりますけれども,やはり全体としてはこれは土地の問題としてやっていて,例えば,最高裁の平成⑤年判決というのは,袋地上の違法建築物に下水排水のための隣地使用権があるか,を扱ったものですが,現在建てられている建物が建築基準法違反のものであることにより隣地使用権自体を否定するのではなく,権利濫用で処理しているわけですね。私は,土地と土地との関係で考えたときには,水を出すという権利自体は否定できないところ,除却対象となるような建物を建てて水を出すというのを妨げようとするならば,権利濫用の話としてせざるを得ないというのが判例の立場なのではないかと理解しております。中村さん,蓑毛さんがおっしゃっていることと,私が申し上げていることとの間で,具体的な事件における,どう在るべきかという結論は恐らく違わないと思うのです。だけれども,それをどういうふうに整理した形の条文にするかということで,今のような③の位置付けだと,そういうふうにはならないのではないかというのが私の思うところです。
    ○山野目部会長 道垣内委員,ありがとうございます。
      佐久間幹事,少しお待ちください。ボールを一回蓑毛幹事にお戻しして,今の道垣内委員のお話を聞いて,御発言があったら,頂きます。
    ○蓑毛幹事 いえ,もう少し頭を整理して,道垣内先生がおっしゃったことについて議事録をよく読み返して,考えてみたいと思います。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
    ○道垣内委員 いや,余りきちんと読み返さないようにしていただいた方がいいかもしれません。
    ○山野目部会長 でも,きっと読み返すと思います。
      佐久間幹事,お願いします。
    ○佐久間幹事 ありがとうございます。余りまとまってはいないのですけれども,先ほど蓑毛幹事がおっしゃった,真夜中に工事するとかという例ですよね。違うか,子供がいて迷惑だからという例でしたか。
    ○山野目部会長 今,二つ例が挙がっていて,真夜中に工事をする話と,庭で友達を呼んでバーベキューパーティーをする話があります。
    ○佐久間幹事 そのどちらでもいいのですけれども,不法行為の成立について,それほど単純に判断することはできないと思います,そもそも,隣地使用権は債権ではなく物権的な権利なのだろうと思いますけれども,それほど保護法益として強いものでないとしたならば,侵害態様とか,その妨害に当たる行為をした者の主観的状態によって,故意又は過失の要件が否定されるとか,あるいは違法性の要件が実はここでは満たされなければいけないところ,その要件が充足されないというふうな考え方で不法行為が否定されることが一つはあり得るだろうと思うのです。
      もう一つは,①の目的のため必要な範囲内でというところで,先ほど中田委員がおっしゃったことに近いことになるのかもしれませんが,まさにその日とかその時期にピンポイントでどうしても,例えば収去又は修繕をせざるを得ないのだというときは,立入りを妨害することが違法になるということはあり得ると思うのですけれども,比較的余裕のある時期というか,一定期間内にやれればいいのだというときには,ピンポイントの日時,特定の期間に立ち入れないことがあったとしても,まさにその日,あるいはその期間に立ち入ることだけが必要な範囲内での隣地使用であるとはいえない,という考え方だってできると思うのです。
      申し上げたいことは,種々いろいろな要件操作がされ,最終的にそんな訳の分からん結論になることは,少なくとも法律家の間では,ないのではないかと思います。そのことが法律の知識のない一般の人たちにどの程度うまく伝えられるかということが焦点であり,その意味では,余り物権法の範囲では見ないのかもしれませんけれども,中田委員がおっしゃった,「社会通念上必要な範囲内で」といった文言を入れることが可能であれば,それは一つの方策ではないかと感じました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      不法行為の成否そのものに関する言わば学理的,学問的な不法行為の要件論上の体系整理としては,ざっくり言えば,佐久間幹事がおっしゃったように,それほど簡単に不法行為が成立するはずがなくて,多くの事案において過失が否定されるでしょうし,しかし,問題の核心は過失の要件に依存するのではなくて,違法性阻却ができるか,あるいは体系のとり方によっては権利侵害の有無の問題として考えたときに,弁護実務のお立場における実際感覚で行くと,学者はそう言うかもしれないけれども,一体この①から③のうちのどこが否定されるから,権利侵害が否定され,又は違法性が阻却されるということになるかはっきりしていただかないと,弁護士会の先生方としては,どちらの依頼者の側に立ってアドバイスをするのでも困る場面が出てくるところから,そこの議論を明瞭にしてくださいという御要請であろうと受け止めます。
      その上で,それに対し,どのようなお答えをしていくかということに関しては,今の①,②,③の並びだとしても,ここまでの御議論で明らかになった点は,②の趣旨,③の趣旨のようなものは,①とばらばらに存在するものではなくて,①の中の,取り分け目的のため必要な範囲内でという規範的概念の理解の中に吸収する仕方で総合的な判断がされるということになって,その判断の過程から得られる結論として,権利侵害が否定され,又は違法性が阻却されるという結論になるものでありましょう。
      佐久間幹事のお言葉で言うと,法律家は普通そういうふうに判断するものであるから,やみくもに不法行為が成立することはありませんよというふうな話で論理が進んでいて,そこまでは弁護士会の先生方にも御理解を頂けると想像しますが,あとは,今のような説明で①,②,③として出している姿を理解しますと説明していくということで進めるか,もう少しそこのところが,法律家でない方々に対しても,より規範の内容が透視性を持つ仕方で文言の改良をしていくかというところに収斂されてくるであろうと感じます。そこのところを先ほど大谷幹事が,引き続き整理してみますとおっしゃいました。その観点から言うと,恐らく②,③を今の建て付けの基本は維持しながら,もう少しそこの言葉の関係を整理する必要があるかもしれません。
      それから,もう一つは,①の柱書き本文のところの,取り分け次に掲げる目的のため必要な範囲内で,の文言について,何かベターな伝達の仕方があるかということは考えてみる余地があるかもしれませんけれども,法制的に難しいという限界がそこにもしかしたらあるかもしれません。それらの工夫をして,①,②,③の建て付けが余り変わらないというときには,大体狙っている結果は弁護士の先生方と民法の先生方がおっしゃったものと齟齬していないものですから,そういうふうに説明して理解してもらいますという進み方になるでしょうし,しかし,最初からそういうふうに決めないで,もう少し文言を工夫してみましょうというお話になっていくかもしれません。
      悩ましい点は,少し場面が離れますけれども,賃貸されているアパートの窓が壊れたりして修繕の必要が生ずるときに,賃貸人が保存行為をしようとすると,契約に関する規定を参照しますならば,賃借人は拒むことができないという文言になっております。拒めば違法であると考えられます。賃借人の方に拒むか拒まないかの随意の恣意的な選択をする余地はないということを,法文は拒むことができないという言葉で伝えていますけれども,しかし,そうはいったって,拒むことができないのだからあなたのアパートに入っていくよと告げ,賃借人,どいていなさいとドカドカ入り,窓ガラスの修繕に賃貸人が業者を連れて入りますというふうになると,それは違法な自力救済以外の何物でもないのでありまして,そのとき正にその賃借人の方が,今,家に友達を招いてホームパーティーをしている最中であるから困ります,窓ガラスが壊れているところは直してほしいですけれども,明日にしてくれませんかというやり取りがされることになって,そのやり取りの全体が,賃貸借の場合には,契約及び取引上の社会通念という概念がいちいち書かなくても常に支配していますよということがバックボーンにあって,その拒んだ,拒まないのやり取りのところの相当性がこの概念を用いて判断されますというお話になっていくものでありましょうけれども,こちらは契約関係にない人同士の間のコミュニケーションの問題になりますから,少なくとも取引上の社会通念という言葉をここに入れようとすると,どんな取引があるのですかというお話になってまいります。そこで,取引上の社会通念そのものではないだけれども,中田委員がヒントをくださったように,社会通念ないし,それと類似の,法制上ここに可能な限り親しむ概念を探して,何か工夫するということはあるものではないでしょうかというお話になってくるかもしれません。
      もう少し,ここの議事の整理を次回以降につなげていくために,委員,幹事がお気付きになっていることのお話を伺いたいと感じますから,何かありますればお話をくださるようにお願いいたします。松尾幹事,どうぞ。
    ○松尾幹事 ありがとうございます。今問題になっている部会資料55,第1の1③の要件は,道垣内委員の問題提起,中田委員のご指摘を踏まえて,私の理解では,同じく①と②では隣地使用の目的のために必要な範囲内で,かつその使用方法は隣地のために損害が最も少ないものを選ばなければならないとして,抽象的に定められていて,要件としては明確だけれども,具体的に何を意味するかということになると,隣地との関係によって多様性があるために,同じく③で隣地使用の目的,使用方法,日時および場所を具体的に示して交渉することを促すことにより,同じく①・②の内容を具体化して,土地所有者と隣地を現に使用する者との間の調整を図ることを可能にするという機能をもつものと思われます。
      そのうえで,③が定める「通知」が法的に何を意味するかですが,これについては,部会資料55の2ページの下から6行目「他方で」から始まる段落で,この「通知」は相手方に相当期間を定めて応答を求める趣旨のものではないとして,その性格を明確にしていただいています。たしかに,隣地使用権である以上はそうであるとしても,やはりできる限りは,これから隣地を使いたいという土地所有者と,隣地を現に使用している者との間の調整を可能にするような「通知」である必要があるものと思われます。したがって,「通知」の方法については,この趣旨に照らして実効性があるものを工夫する余地があるように思います。
      なお,先ほどから問題になっておりました不法行為による損害賠償との関係ですが,④の償金は土地所有者が隣地を使用する際の故意・過失の有無にかかわらず,したがって不法行為とは関わらずに,法定の権利である隣地使用権に基づく使用によって隣地の所有者または使用者に損害が生じたならば,その償金を請求できるものと理解しております。③の要件の具体的な行使の仕方として,やり方が悪かったら,それは不法行為になり得るけれども,その話と④の償金請求は別だと理解しております。例えば,隣地使用権の行使により,隣地の所有者または使用者が当該土地を10日間,20平米使えなかったということであれば,それは当然,損害があるから,償金を払ってくださいねという趣旨だと私は理解していますけれども,それで合っているかどうかということを確認させていただきたいと思います。
    ○山野目部会長 お尋ねの部分について,事務当局からお話をください。
    ○大谷幹事 今の点,償金の考え方はそのとおりだと考えております。
    ○山野目部会長 松尾幹事,お続けください。
    ○松尾幹事 ありがとうございました。
      あともう1点だけ確認をさせていただきたいのですが,前回と同様の確認事項で,少しくどいようで大変恐縮なのですが,部会資料55の3頁,下から4~8行目で,土地所有者の所在が不明であるようなケースでは,隣地を現に使用している者はいないと評価することが可能であるという説明ですが,これは通知をしなくても隣地を使えるという理解でよろしいでしょうか。これについて前回,私は不明所有者にも公示による意思表示等の方法で通知すべきであるという意見を申しました。これに対し,それでもなお,隣地が所有者不明になっている場合には,それは通知なしに使っていいのだということであれば,そういう所有権の制限を受けるということについては,不明所有者の責務として,それは甘んじて受けてもらいましょうという説明をすることになると思いますので,その点だけ最後に確認させていただきます。
    ○山野目部会長 その旨は先ほど藤野委員との間で確認していただいたことの再確認であると感じます。
    ○松尾幹事 正に藤野委員が先ほどおっしゃった点でございます。
    ○大谷幹事 そうですね,所在不明の場合には通知が不要であるということを,ここで解釈として示していることになります。
    ○山野目部会長 松尾幹事,よろしゅうございますか。
    ○松尾幹事 はい,結構です。
    ○山野目部会長 部会資料55でお諮りしている事項について,ほかに御発言はおありでしょうか。よろしゅうございますか。
      それでは,1ページの①,②,③,加えて④の関係について,今日は委員,幹事から活発な多くの有益な御指摘を頂きました。これを踏まえて整理をするということにいたします。深く御礼を申し上げます。
      本日,3点の部会資料,53,54,55についてお諮りをし,実質的な審議をここで了したという扱いになります。
      次回の会議の案内等につきまして,事務当局からお話を差し上げます。
    ○大谷幹事 次回の議事日程ですけれども,来年の1月12日火曜日,午後1時からということで,終了時間は最近のとおり,終了時間未定とさせていただきますが,場所は東京地検の15階になります。隣の建物の15階になります。最初の頃に使っていた所かと思いますけれども,法務省ではなくて検察のエリアの方になります。
      テーマとしては,要綱案について御議論を賜りたいと思っております。
      今年も大変な御協力を頂きまして,何度もおいでいただき,ありがとうございました。一応この部会は年内はここまでということになります。また来年,よろしくお願いいたします。
    ○山野目部会長 次回の会議の案内等は,ただいまお話を差し上げたとおりですが,この際,部会の運営につきまして,委員の皆様からお尋ねや御意見がおありでしょうか。
      よろしゅうございますか。
      本日は3点の部会資料,いずれも難度の高い論点が含まれておりまして,委員,幹事におかれましては長い時間にわたる審議に熱心に御協力を賜りました。深く重ねて御礼を申し上げます。
      これをもちまして,民法・不動産登記法部会の第23回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。
    -了-
  • 法制審議会民法・不動産登記法部会第22回会議議事録

     本日は前回に引き続き,要綱案のたたき台について審議をお願いいたします。部会資料52をお開きいただきますとお分かりのとおり,第1として相隣関係を取り上げておりますけれども,本日はこの相隣関係として二つの題材,隣地使用権及び管理措置の問題を取り上げるということにいたします。二つの事項の性質がやや異なりますから,分けて審議をお願いいたします。
      まず,隣地使用権,民法209条の改正構想の関連につきまして御意見をお伺いすることにいたします。どうぞ御随意に御発言を下さい。
    ○中村委員 ありがとうございます。日弁連のワーキンググループでの議論について御紹介したいと思います。
      部会資料の御提案に賛成する意見がありました一方で,第21回部会でも御紹介いたしましたように,承諾請求構成ではなくて,隣地を使用することができるという構成を採ることについて反対するメンバーからは,現行の209条の下でも,例えば所有者の長期不在ですとか,介護施設に入所中などといった事情のある隣地に無断で立ち入って使用するといった事案が相当数見られるということから,部会資料の提案の構成を採ることになれば,更に問題が頻出することは避けられないのではないか,自力救済を排除することは一層難しくなるだろうという強い懸念が示されました。このように意見の分かれる中で,部会資料の提案をベースに幾らかの手当てをすることで,今申し上げました懸念を少しでも払拭する方策を採ることができないかという議論をいたしましたので,少し長くなりますけれども,御紹介させていただきたいと思います。
      部会資料1ページの1項の①から④に関しまして,少し手当てをするという案といたしまして,まず本文②につきまして,①に掲げる目的によっては,現に使用する者に影響が大きい場合だけではなくて,土地所有者に主に影響する場合も考えられることから,②の「隣地のために」という文言を,隣地の使用者及び所有者のためにとしてはどうかという提案が一つございました。
      それから,本文③について,大きく分けて2点あるのですけれども,一つは通知の内容についてです。前回の部会で中田委員,國吉委員からも御提案がありましたように,③で求める通知の内容をより具体的にする,すなわち③が定める通知の内容を「その旨並びにその日時及び場所を」という現在の定め方から,②に基づいて選択した使用方法と理由なども併せて通知させるというのではどうかという提案が一つございました。
      その理由としましては,②の要件に基づいて,隣地にとって損害が最も少ないものとしてこのような方法を選びましたというようなことを通知の内容として含むことによって,通知を受けた者が,隣地使用権者が何をしようとしているのかということを具体的に知ることができますので,異論がある隣地所有者は返答をせずに放置するというのではなく,それでは困るとか,別の方法にしてくれないかという返答をすることになるなど,円満な隣地使用のためのコミュニケーションの契機ともなし得るものではないのだろうか,そのような理由が背後にございます。
      もう1点は,通知の相手方についてです。①で選択される隣地使用の態様の如何によっては,使用者が負担を受けるケースと,主に所有者が負担を被るケースが考えられますので,現に使用している者だけではなくて隣地所有者をも通知の相手として含める,又は,第一次的には現に使用する者とし,現に使用する者がいない,又は通知することができない事情がある場合には,所有者を相手にするといったことを考えてはどうかという提案がございました。
      さらに,さきにお伝えした懸念を払拭するために,より踏み込んだ修正をしたいとの提案もございました。本文①に,その必要性のみならず相当性の要件を加えてはどうかという提案が一つです。「次に掲げる目的のため必要な場合に,使用方法その他の事情に照らし相当な範囲で」といった文言を加えてはどうかというのが今の提案でございます。
      もう一つは,更に理論的な考察を必要とするのですが,本文③と④の間に次に申し上げる2点を加えるという提案です。一つは,現行の234条2項を参考に,隣地使用者は使用の中止,変更を求めることができるといった規定を置くことはできないかという提案です。もう一つは,③の通知を受けた隣地所有者が日時,場所,使用方法につき異なる定めをするように求めることができる,とすることはできないかという提案でございました。
      いずれにしましても,何とかこの提案をいかしつつも,懸念を払拭する道を探るということで,幾つか御報告させていただきました。長くなりました。
    ○山野目部会長 弁護士会の先生方が熱心に御討議を頂いた成果を御紹介いただき,誠にありがとうございます。
      引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。
    ○蓑毛幹事 今,中村委員から弁護士会の意見を申し上げましたが,それを補足する形で,確認と質問をさせていただきます。
      今回の209条の改正によって,現在の実務と何が変わるのかについて関心があります。1点は,違法な自力救済が増えるのではないかという懸念ですが,これについては先ほど中村委員が申し上げました。もう一つ気になるのは,隣地使用権の行使を拒絶した隣地所有者ないし隣地使用者に不法行為責任が発生するのかという点です。
      今回の改正の内容によると,本文①及び②の要件を満たせば,実体法上,隣地使用権が発生する。そして,③の通知によって行使要件も満たされます。このとき,隣地所有者ないし隣地使用者が,隣地使用権の行使を拒絶した場合には,故意,過失,損害との因果関係などの要件を満たせば,不法行為が成立するのでしょうか。
      現在の実務がどうかについて,必ずしも網羅的に調査はできていないのですが,この点に関する裁判例として,例えば東京地裁平成15年7月31日,判例タイムズ1150号207ページがあります。その判旨を少し読み上げますと,「被告は原告らが民法209条の相隣関係上の義務を履行しないことを理由に損害賠償請求をする,しかし,民法209条は,土地の所有者が建物築造等のために必要な範囲においては,隣地の使用を請求することができることを定めているが,同条による隣地使用権は,その文言より,隣地の使用を請求することができる権利を規定しているにとどまり,土地使用に当たっては隣地所有者の承諾ないしはこれに代わる判決が必要であると解するのが相当である,そうだとすると,原告らが承諾等をしていない本件にあっては,原告らは被告に対し原告土地を使用させる義務を負っているということはできない。」とされ,原告の主張は前提を欠き,理由がないという判断がなされています。これは,現行の209条について請求権説に立ち,隣地所有者の承諾ないし承諾に代わる判決がない限り,隣地使用権の行使を拒絶しても,不法行為は成立しないことを明らかにした裁判例だと理解できます。もちろん,これは下級審判決の一つにすぎませんし,この裁判例の読み方も様々だとは思いますが,今回提案されている改正により,隣地の所有者が隣地使用権の行使を拒絶した場合について不法行為が成立するのかという点について,現在の判例実務が変更されることになるようにも思われますので,確認のための質問を差し上げる次第です。
    ○山野目部会長 お尋ねを頂きました。大谷幹事から事務当局の考えを御案内いたします。
    ○大谷幹事 ありがとうございます。今,蓑毛幹事から御指摘いただいた現行法の下級審判例の読み方,正におっしゃいましたけれども,いろいろな読み方があるのだろうと思っております。確かに承諾又は承諾に代わる判決がないという段階では通行権がないと,したがって不法行為は成立しないというような書き方がされておりますけれども,現行法でも,承諾に代わる判決を得られるということは,相手方に承諾をする義務があるのだろうと思われまして,その義務違反についての判示をしているものとも読めまして,いろいろな読み方があるのだと思っております。
      したがいまして,現行法上,隣地使用の請求を実際に受けたけれども,それを拒んだというときに,それについて不法行為が全く成立しないのかというと,そういうことでもないのではないか。一方で,現在提案しております規律によった場合には,御指摘のとおり,使用権があるということになりますので,それを拒んだ場合には不法行為が成立し得るということになりますけれども,ただ,事前に通知を受けて,その日時,場所,方法等について争うケース,例えば必要性がないので隣地使用すべきでないという形で隣地使用者が争った場合に,それで直ちに過失があるとは限らないのだろうと思っております。要件について疑いがあるから正当に争ったというときに,使用を拒んだから直ちに不法行為になるということではないと考えられます。
    ○山野目部会長 蓑毛幹事,お続けください。
    ○蓑毛幹事 よく分かりました。ありがとうございました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
    ○今川委員 私は御質問なのですけれども,補足説明の(2)で,「隣地使用者が通知を受けても回答をしない場合には,黙示の同意をしたと認められる事情がない限り,隣地使用について同意しなかったものと推認され,土地の所有者としては,隣地使用権の確認や隣地使用の妨害の差止めを求めて裁判手続をとることになると考えられる。」という説明があります。単に回答しない場合や同意がない場合に,勝手にやってしまうと違法になるということで,非常に慎重になると思います。そして,黙示の同意があるかどうかということを判断するのは,かなり難しいと思います。結局,きちんとした回答がない限り使用しない,使用に躊躇するだろうと思います。実務上は,普通は,一定期間内に回答を下さいというような形で通知をするのだろうと思うのですが,例えば,一定期間内に回答がないものは同意したとみなして使用させていただきます,というような通知も実務上あり得るのかどうか,もし見解があれば教えていただければと思います。
    ○大谷幹事 今の点,2ページの補足説明に書いてあるところでございますけれども,これまでの御議論でも明らかなとおり,隣地使用者の利益というものを無理に奪ってしまっていいような権利だとは考えておりませんので,黙示の同意があると認めるためには,ケース・バイ・ケースではありますけれども,慎重に判断される必要があるのだろうと思っております。したがいまして,隣地を使用しますよという通知をして,それに対して答えなかった場合には同意したものとみなしますよと言っても,それは勝手にそういうふうに言っているというだけであって,だから同意したものとみなされるというわけではないのだろう。黙示の承諾があったと簡単に認めるわけにはいかないだろうと思っております。
    ○山野目部会長 今川委員,よろしゅうございますか。
    ○今川委員 はい,ありがとうございます。
    ○道垣内委員 日弁連の方から,第1の1について濫用が懸念されるのではないかということであり,懸念されるということ自体に反対をするつもりはないのですけれども,例えば,それの方策として,1の②のところを,隣地所有者とか隣地使用者という文言を入れますと,この隣地使用権の性格というものがかなり変容するのだと思うのです。つまり,相隣関係というところに第1と書いてありますが,日本民法上の相隣関係というのは所有権と所有権の調整の関係として出来上がっているわけであって,ある土地の現在の所有者と,隣地の現在の所有者,現在の使用者の間の調整規範として存在しているわけではないのだろうと思うのです。そういうふうな土地と土地との関係の話として規定するのではなくて,所有者対所有者の話として考えるのだということならば,そのように性質決定を変容するというのも,それが絶対駄目だというつもりもないのですけれども,少なくとも,かなり大きな変容であるということは認識すべきなのだろうと思います。
      また,現在の所有者,現在の使用者という概念を出しますと,損害が最も少ないとかというふうなものの評価の仕方も実は変わってくるのであって,現在の使用者の使用形態というものを考えながら判断することになりそうです。実際にはそういうふうなことは判断せざるを得ないのでしょうが,建前の問題として,そのような現実の利用形態との関係が判断の基準になるのか,それとも,土地そのものの損害という概念で話をするのかによって,やはり違いは出てき得るのだろうと思います。
      したがって,両方出せば調整がうまくいくという性質のものではないのではないかと思いまして,若干懸念するところがありますので,申し上げる次第であります。
    ○山野目部会長 弁護士会からの御提案の一部について,それを受け止めての御発言を道垣内委員から頂きました。ありがとうございます。
    ○佐久間幹事 今の道垣内委員がおっしゃったことと同じことを一つは申し上げようと思っていました。②のところの弁護士会がおっしゃった,「隣地のために」を,「隣地の使用者及び所有者」か,「又は所有者」のためにといたしますと,性質が変容するということと,考慮要素が変わってきてしまうということは思いました。
      ただ,現実の使用者又は所有者の利益をより考慮しなければいけないのではないかというのは,私もそうかなと思っておりまして,それは③のところで酌むべき事情なのではないかと思いました。つまり,②は今,道垣内委員がおっしゃったとおり,相隣関係の性質上,このように客観的に二つの土地の状態から判断すべきであるところ,しかし,現実に使用するとなると,それはその時点の判断となるということから,③をより工夫する方が私はいいのではないかと思いました。
      その上で,③について2点,意見,あるいは質問がございまして,1点は,「現に使用している者」の概念について,少し分からないところがございます。つまり,例えばですけれども,私は今ここにいるわけでして,土地を例えば京都に持っていたといたしますと,現に今,使用は正にはしていないわけです。宅地であるということだといたしますと,それはまあ宅地なのだから,一旦留守にしている程度だったらともかくということになるかもしれませんが,遊休地を持っているというときだったらどうなのかということが分からないと思いました。あるいは,今の私でしたら短期ですけれども,例えば別荘として使っている人などですと,不定期に行くことはあるけれども,それほど頻度は高くない,あるいは季節ごとにまとまって利用するけれども,そうでない期間の方が長いというふうなことになりますと,一体この「現に使用している者」としてどこまでを含むのかをある程度見通せるようにしておきませんと,なかなか困った問題も起こるのではないかと思いました。それと,弁護士会の方でおっしゃった,隣地の使用によって不利益を受けるのは使用者とは限らない,所有者であることもあるのではないかというのはそのとおりだと思うのです。そうであっても,現に使用している者が所有者でないときは,使用者に了解を取ることによって,それほど大きな問題にはならないような気もしてはおります。しかし,そのような者がいないときには,所有者にやはり連絡を取るということが求められるのではないかと思っています。ですから,現に使用している者は,これは別に文言を変えてくれということではありませんけれども,これだけで足りるのか,場合によっては所有者を,及びなのか又はなのかは分かりませんが,入れることがあっていいのではないかと思いました。
      さらに,使用請求をする側からいたしましても,現に使用している人が,仮に別荘使用のような場合で,どこにいるか分からないときは,なかなか捜しようがないのに対し,所有者でしたら,例えば登記を見るとかいうことをすれば所在もつかみやすいというので,連絡するときに所有者が入っている方が便利な場合もあるのではないかと考えました。
      さらにもう1点,すみません,長くなりまして,「あらかじめ」のところなのですけれども,これを,例えば「一定の期間を設けて,あらかじめ」とできないのかなとも思いました。どのぐらいの期間が適当かは分かりませんけれども,よほどの緊急性を要する場合を除けば,例えば一か月程度は定めて,「あらかじめ」というふうなことにすれば,先ほど弁護士会がおっしゃった,立入りは認めるのだけれどもその日はやめてくれ,こうしてくれというような事実上交渉だってするはずなので,その期間を確保するという意味でも,その方がよいのではないかと思いました。
    ○山野目部会長 前段の方で,現に使用している者の概念について,現段階の事務当局の考えがあれば聴いておきたいという部分がお尋ねでございました。後段の方でおっしゃった,通知をする相手方についても何らか事務当局としての所見があれば,付け加えていただいてもよいかもしれません。
    ○大谷幹事 現に使用する者という中には,恐らく所有者が使用しているものというのも入っていると考えておりまして,どういう場合に現に使用しているというのか,それは正にまたケース・バイ・ケースということになってまいりますけれども,例えば,建物を建てて所有していて,塀に囲われている土地があるとして,そこに常に住んでいるわけではないというようなときに,やはりそれはその建物を,土地を使用していると評価するのではないかと思われますので,そういう場合には所有者の連絡先を調べて,所有者に対して通知するということになるのではないかと思います。季節的に使うときもあれば使わないときもあるというのも,これもやはりケース・バイ・ケースになりますけれども,現に使用していると評価されることも多く考えられるのではないかと思っております。
      それから,「あらかじめ」については,隣地使用の目的の中にいろいろな場合が書かれておりますけれども,例えば工作物の修繕などというときに,急いでやらなければいけないということもあり得るところから,決まった日時,決まった期間を置いて通知をするということを規律するのはなかなか難しいかなと考え,このような形にしているところでございます。
    ○佐久間幹事 後段の方は,そういうこともあるかなと思いました。
    「現に使用している者」について,今の答えは,それはそれでもよろしいのかとも思いますけれども,しかし,そうだとすると,例えば建物を所有していて,それこそほったらかし,何年も放置しているというような場合もここに含むということでしょうか。「現に使用している」ということで。私は,それだったらそれで別にいいと思うのですけれども,案外,今までの議論とか,今回の資料の補足説明で,使用している人の言わば現実の利益を守るのだというふうな形での説明からすると,そういうのは余り入らないのかなと思っていました。ですから,それだったらそれで分かりましたと思いますが,本当にそれでよろしいのですか,というとあれですけれども,もう一度確認させてください。
    ○大谷幹事 今のも,やはりどういう場合を念頭に置くかによっていろいろ変わってくるように思います。ずっと放置をしていて,物は置いてあるけれども実際に使用していないと評価できるような,朽ちた元建物みたいなものがあるだけだとか,そういうようなときに使用していると評価するのかというと,それは評価しないということはあり得るのではないかと思っています。
    ○佐久間幹事 そうだとすると,念のため所有者は入れておいた方がいいのかなと,やはり判断が難しい場合があると思うのです。お隣を使用している人はいなさそうだな,あるいは余りいないなということは分かっても,その人が現に使用しているのか,していないのかというのは調べてみないと分からないところだってあるわけなので,「及び」なのか「又は」なのかは,私はどちらもあるかなと思っているのですけれども,所有者を入れておいた方が,場合によってはいいのではないかと。あるいは,現に使用している者がどういう権限で使用しているかというのも,立ち入りたい方からすると,本当には分からないことがあるのではないかとも思います。強い意見ではありませんけれども,そういうふうに思うということです。
    ○山野目部会長 佐久間幹事の問題提起を理解しました。現に使用している者の概念との関係で,所有者の扱いをどうするかについて,本日の部会においても引き続き,委員,幹事に御意見をおっしゃっていただきたいと望みます。藤野委員,どうぞ。
    ○藤野委員 ありがとうございます。これまでこの第1の1の隣地使用権の③の表現に関しましては,催告という文言が使われるなど,いろいろな変遷を経てきておりましたが,前回の部会資料からは,通知という表現になっておりましたので,これが届くかどうかという問題はあるものの,実際に到達すれば,それで要件を満たすのではないかと思っていたところはございます。
      ただ,先ほど今川委員からも御質問があったとおり,補足説明の2の(2)のところで,通知を受けた隣地使用者が回答するかどうか,要は同意したと認められるかどうかというところがかなり重たい要件として書かれているように見受けられるところもございますので,これを前提に,この場面においての隣地使用者の同意の意義について,今,事務局の方でどのような位置付けでお考えなのかというところを改めて確認させていただければと思っております。
      隣地使用権の内容として挙げられている使用態様は,基本的には類型的に隣地との関係を調整するために必要な最低限のものということで限定列挙されているわけでございますし,例えば,隣地の所有者が鉄条網を張って,絶対に立ち入らないでくださいと言っているようなところに,それを切って乗り越えて入るとかという話になってくれば,それはもう完全に平穏を害するということなので駄目だ,というところは,209条の解釈として,現在でもそういうことになっていたかと思うのですが,そういう平穏を害するような態様ではないというときに,どこまで明示的な同意というものにこだわる必要があるのかという点については,正直,実務的な感覚からすると少し疑問を感じるところでございます。実態としては,お隣さんの関係の中で,お互い黙示の同意が成立しているような場面の方がむしろ多いのではないかというところがございまして,外形上明らかに隣地所有者に拒む意思がないといえるような場合であってもなお,通知に対する明示的な回答,同意というものを求めるのかどうかというところは,少し確認をさせていただきたいというところでございます。
      あと,隣地使用権の規律を改めることで紛争が惹起されるという御意見は,前回から伺っていて,なるほどと思うところもある一方で,逆に,今こういう規定がないことによって,常識的に考えればここは日常的な土地の管理のために何かできることを少しだけやっておきたいというような場面でも立ち入れないとか,あるいは長年の慣習の中で,お互いに隣地を暗黙の同意の中で使っていたのに,ある日突然,隣地の方が態度を変えて,自分の土地の中に踏み込んでいたではないかといって紛争になるとか,そういったような,今提案されているような調整規定がないことによるトラブルというのも現にあるのではないかと思っています。したがいまして,紛争を惹起するかどうかということに関しましては,新たな規律を設けることによって惹起される紛争もあるかもしれませんけれども,逆に,規律がないことによって惹起されている紛争も現にあるわけで,それが,裁判所まで持ち込まれるような話かどうかというのは別といたしまして,私自身もそういう事例を経験したことはございますので,その点については中立的に考える,ということで良いのではないかと思っているところです。
      いずれにいたしましても,この隣地使用権そのものが,通常,土地を管理していく中で,必要最低限のことを,なるべく重たい負担,手続負担なくできるようにすべきではないか,というところから出発している話だと理解しておりますので,そういった考え方に沿った形で条文が作られて,解釈がなされるという形が望ましいのではないかと思っております。
    ○山野目部会長 後段の意見は承りました。前段において,黙示の同意ないしは同意という概念が補足説明で用いられていることとの関連でのお尋ねがありました。
    ○大谷幹事 この隣地使用権の成立につきましては,現在提案しております①と②の要件を満たしておれば隣地使用権自体は発生をし,③の手続的な行使要件を満たせば適法に使用できると考えられるところでありますけれども,これも自力救済との関係について補足説明で書いておりますが,隣地使用者がいるときに,明示の承諾がなく隣地使用権が発生し,行使要件を満たしたので無理やり立ち入ることができるかというと,そういうことではないのだろうと。承諾なく入る場合には違法な自力救済と評価されて,不法行為ということもあり得るところでございまして,そのようなことがないように,使用の平穏を害さないように入っていく必要があるだろう。その意味で承諾をしている,同意をしているというのは,不法行為が成立しないように平穏に入っていくために必要で,法律上必要なものというよりは,自力救済との関係で必要だということと理解をしております。
    ○山野目部会長 今,大谷幹事の言葉の中に,法律的な意味ではなくてという表現がありましたが,正にそのとおりで,ここの同意は法制上の概念としての同意ないし承諾ではなくて,立入りないし隣地使用を阻む意思を有しないということを伝えるという契機をある種,比喩的に述べている側面があり,少し議論を混乱させたかもしれません。藤野委員,よろしゅうございますでしょうか。
    ○藤野委員 はい,今の御説明で非常によく分かりました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
    ○中田委員 ありがとうございます。今回これがテーマになっていますので,少し調べてみました。恐らく皆様よく御存じのことだと思うのですけれども,私は知らなかったものですから,念のため御紹介したいと思います。
      この209条は明治時代から非常に激しい議論があった条文でして,旧民法は,隣地に立ち入ることを求めることができる,と規定していたのですけれども,現在の民法に改める法典調査会で,隣地に立ち入ることができる,という原案が示されました。しかし,激しい議論がありまして,結局旧民法と同じく,隣地に立ち入ることを求めることができるに戻されました。正確に言うと,立入るを求むることを得,ですけれども。この表現が最終段階の整理会で,隣地に立ち入るだけではなくて,足場を設けたりすることもあるからということで,使用を請求することを得,に修正され,これが現在の規定になっているわけです。
      この経緯を振り返りますと,今回の提案は三つほど特徴があると思います。一つは,使用請求を改めて,使用することができるにしたということです。これについての議論は,法典調査会の原案の段階での議論と同じようなものだと思います。
      2番目は,法典調査会の当初の議論は,立ち入ることができるとするのか,それとも,立ち入ることを求めることができるとするのかという,立入りという一時的で定型的な行為についての議論だったわけですが,今回の提案は,その後,立入り請求から使用請求に広がった後の規定を前提として,当然に使用することができるとするものでありまして,より広がっていると思います。
      それから,三つ目に,明治時代の建物の築造工事と現代の建物の築造工事とでは規模や期間も大きく異なっておりますので,隣地所有者の負担が大きくなり得るということがあります。
     そういう目で今回の提案を拝見しますと,今回の提案では,いつどのような権利が発生しているのか,あるいはいないのかが不明確になっていると思います。これは現行の209条の下でも,「必要な範囲内で」という要件に多様な要素を読み込もうという解釈がありますが,多様な要素が入るのだけれども,使用請求というプロセスが入ることで調整されるということが期待できたわけです。
      今回の御提案でも,「次に掲げる目的のため必要な範囲内で」とあるのですけれども,しかし,立入りではなくて使用とし,かつ,請求ではなくて当然にということにしたために,要件の明確化が一層必要になっていると思います。実際,各種の法律に類似の規定があるわけですが,例えば道路法とかですね,かなり要件を絞って,手続も慎重にしています。その対象も,他人の土地の立入りと一時使用とか,こういうように限定しているわけです。それに対して,今回の提案は非常に広いものですから,要件か効果か手続か,どこかで絞った方がいいのではないかと思います。
      例えば要件ですと,先ほど弁護士会の方から相当性という御提案がありましたけれども,例えば,「次に掲げる目的のために必要があるときは,相当の範囲内で」とするとか,あるいは,先ほど大谷幹事からお話のございました,①と②が要件であるということでしたけれども,②が要件なのかどうかというのは少し分かりにくいところがあるので,むしろ②を積極的に要件の形で取り入れるとするとか,あるいは効果ですと一時使用にするとか,あるいは手続ですと,請求構成にした上で隣地所有者に承諾義務を課するとか,いろいろなやり方があると思うのですが,特に,要件が不明確であるために,その権利があるかないか自体がはっきりしないという,それが一番大きな問題ではないかと感じております。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。中田委員におかれては,起草時の事情を御紹介いただき,それを踏まえて具体的な提案,御注意を頂きました。御礼を申し上げます。松尾幹事,どうぞ。
    ○松尾幹事 ありがとうございます。前回の第21回会議でこの点について,隣地が所有者不明だった場合を前提にして質問させていただきましたので,その点との関係で1点確認をさせていただきたいと思います。
      前回の部会資料51の提案と違って,今回の部会資料52の提案は,通知の相手方として,隣地を現に使用する者のみとされ,隣地の所有者が削除されています。これは,所有者不明の場合を前提にすると,誰にも通知することなく使えると読めてしまいますけれども,それでいいかどうかという点の確認です。
      例えば,建物を建築する足場として隣地を20平方メートル,1か月間使いたいが,賃料相当額だと5万円相当だというような場合,隣地を使用している者が見当たらず,所有者も不明という場合において,明らかに財産上の不利益を与えているときも,何ら通知をすることなく使っていいかどうかということについては,既に議論が出ておりますけれども,私も少し引っ掛かりを覚えます。
      前回,通知の相手方が隣地の所有者及び隣地を現に使用する者となっていましたので,所有者不明の場合でも公示による意思表示でいいだろうということで確認をした点ですけれども,今回,その点は,何ら通知をしなくても使えるということに変更されたように見受けられます。もちろん,隣地使用権の制度が所有者不明の場合に使いづらいものになってしまっては,本末転倒です。この点も十分考慮して,実行可能な手続を通じてきちんとやるべきことをやっていれば使えるのだというルールを設けることについては,全く賛成でございます。その手続として,さほど大きな負担を課すものでなければ,通知の相手方に所有者を入れておく方がよいのではないかと思いました。
    ○大谷幹事 ありがとうございます。前回,確かに所有者に対する通知ということを求めて,それを今回,外しておるわけですけれども,前回,実務的にもなかなか所有者を全部捜すというのは大変だという御意見があったことも踏まえて,こういう形にいたしました。また今日,お話を伺っておりますと,所有者に対する通知が必要だという御意見が複数あるようでして,もう少し検討したいと思います。
      中田委員から御指摘がございました起草時のお話,それから,この解釈の在り方,立法の在り方ということですけれども,今回の209条の改正の趣旨としては,元々ずっと御審議をお願いしておりました,隣の土地の所有者が所在不明になっているようなときでも,裁判を使わずに隣の土地が使えるようにするということを一つの眼目として検討をお願いしてまいったわけでございます。現行法の書き方,隣地の使用を請求することができるとしたときに,それは裁判をしないと絶対に駄目なのかどうか,これは恐らく議論の余地があって,先ほども少し御紹介がありましたけれども,実際には裁判をせずに入っている場合もあるのではないかというような御指摘もございました。その辺りをどのように考えるのかが現行法でははっきりしないだろうということで,これをきちんと規律を設けるとすれば,そして,現行法の精神を害さないような形で設けるとすればどうなるかということで,御提案を申し上げているところでございます。
      使用することができるとしたところで,必ず隣地使用者,所有者かもしれませんけれども,一定の事項を通知しなければならないという形で,現行法よりも具体的に通知を行う,通知を受けた相手方としては,それは嫌だと思えば差止めを求めることができますし,拒絶することもできるということだろうと思っております。ですので,必ずしも現行法の規律を緩めるというようなことで考えているのではなくて,より具体的に規律を設けて,隣地の使用者,所有者についても争う道を現行法よりも広げるという方向で考えてはどうかということで御提案を申し上げているところでございます。
     いずれにしましても,中田委員から複数の御提案を頂きましたので,また検討させていただきたいと思います。
    ○山野目部会長 松尾幹事,よろしゅうございますか。
    ○松尾幹事 ありがとうございます。隣地使用権という制度を請求権ではなくて文字どおり使用権と構成した場合には,一種の強制使用権を設定する要素もありますので,その場合は,例えば公共事業の場合でも,所有者に対する一定の手続をとっていることとのバランスも考える必要があると思いました。ただ,大谷幹事がおっしゃった,今回の提案の趣旨ということについては十分理解しているつもりです。
      ちなみに,部会資料52の4の管理措置権のところでは,不明所有者に対する手続的配慮もされていますので,やはりそれとの関係でも少しバランスをとった方がいいのではないかと思って,発言をいたしました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。
      隣地使用権について,ほかに御意見はおありでしょうか。
    ○國吉委員 ありがとうございます。私ども土地家屋調査士の場合ですけれども,隣地を使用させていただくということの目的,第1の1の①に書いてありますけれども,この目的のために使用するということが大前提なわけです。この目的というのは,恐らく相隣関係の基本だと思うのですけれども,当然ながら,こちら側の所有者の利用を考えると同時に,隣地の方のための利用も考えていかなければいけないということだと思います。それは何かというと,当然ですけれども,争いをなくしたいということの大前提だと思っています。
      ですので,いろいろ弁護士会さんの意見などもありますし,私どもも目的とか,特に,最終的な,例えば境界標の調査であれば,所有者さんに境界の確認,承諾,同意を得るという最終的な目的があるわけですので,その辺の最終的な目的のために,紛争を生じさせないとか,そういったものを是非考慮に入れていただいて,今後また議論を進めていただければと思っています。
    ○山野目部会長 御注意を承りました。
      ほかに御意見はおありでしょうか。隣地使用権について,部会資料52でお出ししている範囲について,引き続き御意見を承ります。
    ○藤野委員 すみません,先ほどの発言の機会に申し上げられなかったのですが,通知の相手方を隣地所有者にするか,現に使用している者にするかということにつきまして,前回の部会の際には,所有者だと手続が重すぎるのではないかと申し上げた次第で,今回それが反映されて,このような案が非常によいなと思っておりました。今日は所有者を通知の相手方にする方がいいのではないかという御意見も多いようですが,実務的な,本当に現場レベルの実務の感覚で言うと,やはりここの隣地使用権のところに関しては,所有者ではなくて,現に使用している者を通知の相手方とする,ということでよいのではないか,結局,現に隣地を使っている人の平穏を害さないというところに重点を置くべきではないかと思っていますので,そこを改めて申し上げたかったのと,次で議論されるであろう管理措置請求との比較の観点からも,要は,隣地の所有者に対する制約の程度の違いによって,通知が土地の所有者にまできちんと届くようにするか,あるいは現に使用している者に通知すれば足りるか,ということを使い分ける方が,むしろ制度趣旨が明確になるのではないかと感じているところでございます。以上,意見として申し上げました。
    ○今川委員 所有者への通知というお話が出ています。我々の検討チームの中でも話をしていたのですが,補足説明では,実際に隣地を使用する者がいない場合でも,紛争を防止するために,隣地所有者への通知がされることが多いだろうと説明されています。しかし,規律として所有者への通知が入っていないとすると,実務的な問題としまして,佐久間幹事も少しおっしゃったかもしれませんが,その所有者を捜すという作業ができないのではないか。つまり,念のためにということでは,公的な資料の調査をする権限がないのではないかと。ですから,ここで書いている隣地所有者への通知というのは,単に登記簿上の住所,氏名に宛てて形式的に通知をすることでしかないので,実際に隣地を現に使用する者がいない場合は,そのまま使用することが多くなるのではないかという意見が多かったです。
    ○山野目部会長 司法書士会の御意見を承りました。
      ほかにいかがでしょうか。部会資料52で提示申し上げている隣地使用権については,本日段階でお寄せいただく意見を受け止めたと考えてよろしゅうございますか。
      そうしましたならば,部会資料52の第1の「1 隣地使用権」の項において提示申し上げている,使用権として考えるという法的構成を基本とする提案については,委員,幹事の御議論を受け,それを理解していただいている側面も大きゅうございますけれども,それとともに,繰り返しませんけれども,なお心配を抱く点が種々あるということが分かってまいりました。中田委員に観点を整理していただきましたように,仮にこの使用権構成で進むということになる場合におきましても,その細部を更に点検し,要件,手続,効果のそれぞれの観点から見て適切な絞りを与えることができるかどうかをなお探る必要があると感じます。新しい部会資料を用意した上で,引き続き委員,幹事の皆様に御審議を頂く機会を設けたいと考えます。隣地使用権についての本日段階の審議をここまでといたします。
      続きまして,部会資料3ページから始まっております「4 他の土地等の瑕疵に対する工事(いわゆる管理措置)」についてお諮りをいたします。以前の部会資料におきましては,管理措置請求権というラベルで呼んでまいりました。そちらの方が思い起こしていただきやすいかもしれません。しかしながら,他の土地等の所有者に対して何かの行為を請求するという法的構成ではないものを本日は御提示申し上げておりますところから,管理措置請求という「請求」という言葉を入れて呼ぶことが内容を適切に表現していないと考えられるため,この部会資料において括弧書きで,いわゆる管理措置というふうな仕方の御案内をしているところでございます。これにつきまして,委員,幹事の皆様方の御意見を承ります。いかがでしょうか。
    ○中村委員 日弁連のワーキンググループでは,これについても賛否が分かれました。賛成意見がありましたけれども,これについても,従前お伝えいたしましたことの繰り返しになりますが,瑕疵という用語をもう少し分かりやすくできないかですとか,瑕疵との語の代わりに,例えば,管理が社会通念上不相当であることにより,などとしてはどうか,などの指摘がなされておりました。
      反対意見では,要件,効果が抽象的にすぎ,自力救済を誘発するのではないか,隣地使用権よりも更に懸念が大きいとの指摘がありました。資料49で,甲案,乙案のほかに(注1)として挙げられていた請求権構成に近い形の方がよいのではないかというような意見でした。また,第20回の部会の議論では,資料49の甲案を採る場合,今回,甲案ベースですけれども,その場合には要件,効果をしっかりと絞る必要があることの指摘がかなり出ていたかと思いますが,今回御提案は,例えば急迫,緊急の場合に限定するようにはなっておらず,一般的に働き得る大きな作りになっているわけですが,要件,効果に絞りが掛けられていないように見受けられますので,引き続きここのところの工夫ができないかという意見がございました。
      また,手続に関する②につきましては,これも先ほど議論しました1との対応もありますが,1の②と同じように,日時,場所のほか,工事の内容なども通知したり,土地所有者の変更提案への対応も検討してはどうかなどといった提案もありました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      引き続き承ります。いかがでしょうか。
    ○今川委員 我々司法書士の中でも,先ほど弁護士の方がおっしゃったように,工事の日時及び場所と内容も通知するという規律を置くべきではないかという意見がありました。
      それから,先ほど佐久間幹事がおっしゃったのですが,②であらかじめ通知をするということになっていますが,大きな工事がされる場合もありますので,そのあらかじめの期間について一定程度の規準を示すべきではないかという意見があります。それと,補足説明では,原則として土地の所有者が工事を行うべきと考えられるので,その機会を与える趣旨も含むという説明がされています。であれば,やはりそこで一定の期間というものを置くべきではないか,例えば,一定の期間内に回答してくださいというような通知を実際はすべきではないだろうかと思います。規律では単にあらかじめとしか書いてありませんので,期間も規律した方がいいのではないかという意見がありました。
    ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。
    ○藤野委員 ありがとうございます。こちらのいわゆる管理措置につきましては,前回申し上げた瑕疵の対象の表現の部分を含めて,今回,反映していただき,非常によいものになったのではないかと思っております。
      確かに要件の絞りといった点に関しては,より要件を明確にすべきだという御意見はあるとは思うのですが,実際のところは,やはり土地に損害が及び,又は及ぶおそれがあるときは,という要件が,かなりここでは重たいというか,重要な意味を持つものになると思っていますので,そういう場面である限りは認められるべき,というか,それ以上厳格にすると,かえって予防できるものを予防できなくなるというところも懸念されるのではないかとは思っております。通知先に関しても,基本的にはきちんと土地の所有者に通知するというのが原則となっておりますし,そういった点や,管理措置が適切に採られなかったことによって起きる弊害の大きさも考えますと,これくらいの規定の方が好ましいのではないかと考えているところでございます。
    ○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ。
    ○佐久間幹事 ありがとうございます。前回これと同様の提案が審議されたときに,私は物権的請求や占有の訴えとの関係からすると,前回の甲案,今回のこの案は適当ではないと思うと申し上げました。今回の整理は相隣関係上の規定として専ら考えるということですので,前回そう申し上げましたけれども,私はこれでもいいのかなと思っています。
      ただ,物権的請求や占有の訴えが可能な状況を規定の対象とするということは変わりがないはずだと思うのです。そうだとすると,資料にも書かれていますけれども,占有の訴えは明らかと思いますが,物権的請求の内容が行為請求であるということを例えば前提といたしますと,多分それで一般的にはいいと思うのですが,そうだといたしますと,まずは普通に考えたら,行為請求がされた,物権的請求でされた,けれども相手が応じないというときに,相隣関係上の権利として発動するというか役に立つ,これはそういう規定なのだろうと思います。そうだとすると,②のところが,補足説明にも書かれていますけれども,相手に対応する機会を言わば与える役割を持っているということに私はなると思いますので,この②がその役割をきちんと果たせるようにすべきだと思います。
      「あらかじめ」ということについては,先ほどの1の隣地使用権のところで,期間を明示することは難しいという大谷さんからのお答えがあって,それは分かりましたと申し上げましたが,ここもきっとそうなのだと思うので,期間は明示するのは難しいのかもしれないですけれども,どう言ったらいいのか分かりませんが,好ましいというか,本来そうすべきであるということで言えば,かちっとした期間の定めはないけれども,相手方が対応する十分な期間をもって,という意味で受け取るべきであろうと思っています。相手がそれでも対応しないということになると,①の要件は,繰り返しになりますが,物権的請求なども可能であるという状況なのであるのだから,そのことを前提として,余り詳しく書き込むことは難しいし,適当ではないのではないかと思っています。
    ○山野目部会長 松尾幹事,どうぞ。
    ○松尾幹事 ありがとうございます。この通知の意味に関して,先ほどの隣地使用権の場合と共通する部分かもしれませんけれども,再確認させていただきたいと思います。この通知ということについて,隣地の所有者及び使用者の何らかの回答を求めるべき性質のものなのかどうかということの再確認です。
      回答,あるいは確答を求めるべき催告のような意味を持つのだとすると,やはり何か返事は必要で,通知をしたけれども何ら返事がないのに勝手に使ってしまうのはまずいということであれば,これは確答を求めるということを期待した通知であると思われます。そういうことになると,これも先ほど来,議論されておりますように,相当の期間を定めて催告をして,確答がないときには,反対しないということを擬制するのか,反対すると擬制するのかが問題になります。この場合,管理不全土地についての管理措置権ということであれば,相当期間内に確答がないときは反対をしないものと擬制をするというルール作りもあり得るかなとは思いました。いずれにしろ,この通知の法的な意味がやや曖昧なので,そこはいずれ明らかにせざるを得ないのではないかという気がいたします。
      しかし,いずれにしても重要なのは,これが紛争を回避するためのルールだということです。つまり,隣人との間なのだからなるべく円満に使えるようにしたい,だからなかなかはっきり書けないという事情もあると思うのですけれども,そういう趣旨を活かして,このルールをもう少し明確に書けないかというところが重要なところだと思いますし,現在の議論の焦点なのではないかと思います。
      例えば,この通知において,先ほど来出ていますように,期間とか場所だけではなくて,使用目的とか方法を書くということについて,私は賛成ですが,例えば所有者も使用者も容易に見つからないので,使用目的,方法,場所,期間を書いた看板を現場に設置し,相当期間,例えば1か月経っても何も言ってこない場合は管理措置をしうるというようなやり方では駄目なのか,あるいはそういうやり方もあり得るのかという形で,隣人との紛争を回避しつつ,しかし必要に応じてこの土地を利用していけるような,そういうルール作りができないものかと思いました。その意味で,この通知の法的な意味について少し確認したいという質問でございます。
    ○大谷幹事 通知の法的な意味については,少し補足説明の中で,催告的な意味があるということ,相手方がまずは工事を行うべきであると考えられるから,その機会を与えるということを書いておりますけれども,やはりこの管理措置の工事権というのは①の要件があれば発生するし,②の通知をすればそれが適法に行使できるということになる,この意味では先ほどの隣地使用権と同じような構造かなと思っておりますので,確答を求めるというような趣旨ではないし,嫌だと言われれば,やはり同じように違法な自力救済は許されないという方向になると理解をしています。
      先ほどから,隣地使用権における通知の内容とこちらの通知の内容が違うという御指摘,同じようにすべきではないかという御指摘がございました。こちらの提案の趣旨といたしましては,隣地使用権の際には自分の土地を一定の目的のために使用する際に,隣の土地を使わなければならないという場面でございますので,自分の土地で工事をする際にどの程度相手方の土地に入らなければならないのかとかいうことが自分である程度分かるということに対して,こちらの管理措置の場合には,相手方の土地の中でどこにその瑕疵があるか明確には必ずしも分からないという中で,場所等をきちんと特定して相手方に通知するのが難しいというところもあるだろうということで,そういう趣旨も含めまして,規律の内容を変えて提案をしているというところでございます。
    ○山野目部会長 松尾幹事,お続けください。
    ○松尾幹事 失礼しました,期間とか場所とかというのは,私は先ほどの隣地使用権の方が少しまだ頭の中に残っていて,そちらを前提に話をしてしまったので,この管理措置権に相応しい内容の通知という意味では,必ずしもこの二つの通知の内容は同じでないということについては納得いたしました。その上で,しかし,通知の法的な意味については,やはり共通の問題があるのではないかと考えています。
    ○中村委員 今の②の通知について,1と同じように考えてはどうかと先ほど申し上げましたところ,今,大谷幹事から御説明があったところなのですけれども,大谷幹事の御説明自体は理解できるところなのですが,そうは言いましても,では最初に立ち入るのはいつなのか,そこで事情を把握した上で,どのぐらいの範囲,期間になるのかというようなことを,隣地に通知していくべきだろうと考えて,先ほどは申し上げました。
    ○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ。
    ○佐久間幹事 ありがとうございます。今の,何を通知するのか,隣地使用権と同じようにした方がいいのではないかということに関連するのですけれども,この原案にはありませんけれども,確か弁護士会からの御提案で,1の③については目的も書くということでしたよね,確か立入りの目的みたいなものも記してはどうかということでしたよね。
    ○山野目部会長 使用方法や理由を述べて,と。
    ○佐久間幹事 そうです。それで,使用方法や理由を述べるというのは,隣地使用権の場合は①で権利が発生するわけですから,その権利発生の根拠を示すということに多分なるのだと思うのです。それだけではありませんが,そういう面もあるのだと思うのです。そうだとすると,4の②の通知のところも,①が権利発生の要件で,私はそれでいいと思うのですが,その要件は何かというと,「瑕疵がある」ということが一つで,その瑕疵は,大谷さんがおっしゃったとおり,行ってみないと分からんというのはあると思うのですけれども,「自己の土地に損害が及び,又は及ぶおそれがある」というのが,もう一つ要件であって,これは自分のところで分かっていることだと思うのです。だから,私はこれを明示することにした方がいいのではないかと思っています。そうすることが結局,先ほどの私自身の発言につながってしまうのですけれども,物権的請求や占有の訴えで,本当はこの損害の除去,又は損害発生の防止を自分はしてほしいのだというときに,何をしてほしいかを求めるということをはっきりさせるという意味もあり,かつ,それが相手によって実現されないときは,自分が入っていって瑕疵を調べ,除去しますということにつながるので,そのようなことを盛り込むことは考えられるのではないかと思います。
    ○山野目部会長 引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。
      大体この4の管理措置について,御意見をお出しいただいたと認識してよろしゅうございますか。
      そういたしましたならば,一つ前に御審議を頂きました隣地使用権について所要の見直しをして再度の提案を差し上げるに当たっては,当然のことながら,それと関連させながら整合性をとれるような仕方で,今し方御審議を頂きました4のいわゆる管理措置につきましても,改めて提案を調える必要があると感じられます。次の機会に,またそのようなものを盛り込んだ部会資料をお示しするということにいたします。

  • 法制審議会民法・不動産登記法部会第21回会議議事録

     本日から要綱案のたたき台についての審議をお願いいたします。
     初めに,部会資料51の中の「第1 相隣関係」の部分について御審議をお願いいたします。相隣関係の部分につきまして,本日は「隣地使用権」,「竹木の枝の切除等」,それから「継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権」,これらの事項についてお諮りをすることになります。相隣関係に関する事項として審議すべき事柄としては,このほかに管理措置請求権の問題がございますけれども,これについては次回以降,審議をお願いするということにいたします。
      それでは,御案内申し上げた相隣関係の部分につきまして,委員,幹事の御意見を承ります。どうぞ御自由に御発言ください。
    ○橋本幹事 ありがとうございます。第1の関係について,日弁連の方で検討した状況も踏まえて御報告します。
      まず,1の「隣地使用権」ですが,今回,今までと違って隣地を使用することができるというふうな構成に変わったと思いますけれども,従前は承諾を求めることができるというような,現行の民法209条の請求できるという請求権的な構成で議論が進んできたと理解していたんですが,今回は,仮に形成権的構成と呼びますけれども,ちょっと構成が大きく変わっているということで,日弁連で議論した中では,一部,この形成権的構成でいいんだという意見もありましたが,おおむね反対の意見が強かったです。やはり請求権的な構成で従前の議論を踏まえて進めるべきであろうと。そうじゃないと,こういう法文ができると,それを一般の人が見て,隣地使用していいんだというふうに理解して,どんどん勝手に入っていってやってしまうと,自力救済を誘発することになってしまうのではなかろうかということで,やはり請求権,請求をすることができるというところからスタートするのが穏当ではないかというような意見が大勢でした。
      それから通知の相手方ですけれども,形成権的な立場に立つ意見でも,前回部会資料46のときにも議論になりましたけれども,通知の相手方を所有者及び占有者,両方という方向にすると,現状よりもちょっと使い勝手が悪くなるのではないかという意見もありました。
      それから,2項の竹木切除については大きな反対はありませんで,基本的に賛成です。前回までの資料であった落下した果実の処分については,これは落とすと,落とされたものと理解しますけれども,それも含めて賛成ということです。
      3番目の継続的給付を受けるための設備設置権等ですけれども,この点についても1の「隣地使用権」と同じように,請求権的構成にすべきだという意見もありましたが,ここは賛否が分かれまして,今回の提案で賛成であるというトーンがどっちかというと有力だったように思います。既に下水道法の規律がありますし,判例もありますので,導管設置に関しては形成権的構成でよいのではないかと。ただし,その場合も,3の①「電気,ガス又は水道水の供給その他これらに類する」と,「これらに類する」というのがちょっと広すぎないですかという指摘がありました。もうちょっと限定して,例えば「その他生活又は事業の維持形成にとって不可欠な」というような感じで絞る必要があるのではないかという意見がありました。
    ○山野目部会長 橋本幹事におかれましては,弁護士会の先生方の御意見をお取りまとめいただき,ありがとうございます。
      ただいまのお話を伺っておりますと,取り分け隣地使用権や設備設置権などにつきましては,二つに分けて申し上げれば,前回までの部会資料に基づく議論と実質を変更するものではないかという御理解に立ち,これが一つですが,それを前提に,弁護士会の先生方の御意見を取りまとめたところ,少なからぬ反対があったという点がもう一つでございますけれども,そのような御議論の状況の御紹介がありました。
      これについては,この後のこれらの論点に関する審議を進める上でも,事務当局から説明が一旦あった方がよいと感じますところから,ただいま今川委員もお手をお挙げになっておられ,今川委員の御発言を受けた後で事務当局から,それまでに出された観点についての所見を披瀝してもらうことにいたします。
    ○今川委員 私は「第1 相隣関係」の「隣地使用権」について,一つ確認と,一つ意見を言わせていただきます。
      まず,所有者と隣地使用者の双方に対して通知をしなければならないというふうにここは明記されたのですが,部会資料46で説明されていたとおり,所有者が所在不明の場合は公示送達を利用するということでよろしいですねという確認が1点です。
      それと,③の「ただし,あらかじめ」うんぬんというところですが,この部分は事情によっては事後の通知でもよいという規定なんですけれども,部会資料46では,著しい損害又は急迫の危険を避けるためという表現が使われていましたが,今回,「あらかじめ通知することが困難なとき」というふうに変わっています。今回の部会資料の補足説明では,「あらかじめ通知することが困難なとき」というのは急迫の事情がある場合を念頭に置いているとされているんですけれども,この規律の文言のみを読むと,急迫の事情がない場合であって,所有者の所在が不明の場合は,あらかじめ通知することが困難なときに該当して,そういう場合は事後的に公示送達の手続をしてもよいというふうにも読めます。「あらかじめ」という文言には急迫の事情という意味が含まれているのかもしれませんが,そこは少し分かりやすいように,「急迫の事情」という文言は残していただいた方がよいという意見が我々の中ではありました。
    ○山野目部会長 ここまでで橋本幹事及び今川委員から指摘してもらった点に関して,事務当局から,現在の段階で理解しているところの案内を差し上げます。
    ○大谷幹事 まず,橋本幹事からの御指摘がございました。今回構成を変えているところの検討の経緯を申し上げますと,前回まで承諾を求めることができるという構成で御議論いただいておりまして,前回の段階で,承諾を求めるという形で本当にいいのか,直接の契機としては,このただし書のところでしょうか,承諾がなければ住家に立ち入ることはできないというところで,承諾を求めることができるとかできないってどういう意味なんだろうかということが問題になって,改めて検討したというところでございます。承諾を求めることができる,できないというのが,それは権利があるということなんですか,どうなんですかということが問題になるのだろうと。
     今回やろうとしていたことは,一定の場合には承諾がなくても隣地使用ができるというルールを作るという検討をしていたわけですけれども,承諾がない場合でも隣地に入れる,催告をしても答えがないときでも入れるというのは,それは結局そういう権利があるから入れるということなんだろう。承諾をするかどうかを明確にしていないのを承諾したものとみなすことは恐らく不可能で,通知をして承諾を求めても,何も言わなければ,それは承諾しなかったというだけの話で,やはり承諾請求という形で法文を作ることは法制的に困難であろうというふうに理解をし,改めて考えたというところでございます。
      今回のように「使用することができる」というふうに改めるとして,問題となるのが,明示の拒絶があったらどうなんですかということです。使用権構成という形にすれば拒絶があっても入れるということが考えられるわけですけれども,恐らく弁護士会の中での御議論でも,明示に拒絶をされているというときに入っていってもいいんですかということが問題とされたのではないかと思います。もっとも,よく考えますと,反対をしていない,何も異議を述べなかった。だけれども,現に人が住んで使用している土地に承諾なく入っていくということが本当にできるのか。それは,答えをしてくれないからといって,無理やり押し通るということは,やはり承諾請求という形をとっていても元々難しいのではないだろうか。
      そう考えてみますと,承諾を求めるかどうかという問題ではなくて,現に使用している人がいるときにどういうような規律にすべきかということが問題なのかなと思いますけれども,現に使用している人がいますというときには,やはり承諾を求めて,承諾をとって入るか,訴訟をして法的措置をとった上で入っていくということにならざるを得ないのだろうと思われるところです。
     このあたりのところをどのように法文で表現するかというところが問題になりますけれども,まずは承諾を求めるという形ではなくて,隣地を使用することができるという権利を明らかにした上で,隣地を現に使用している人の権利をきちんと保護できるような手続を組む必要があるだろうということで通知をするという形に改めました。ただ,このあたりのところは,今までの御議論を頂いていたところと私どもとしては実質として変えるつもりではなくて,やはり事前に権利保護の手続をとった上で隣地に入っていくということには変わりがないのだろうと思っておりますけれども,なかなかその構成として承諾請求は難しいので,こういう形になったというところです。
      それから,通知の相手方の問題ですけれども,使用者と所有者,両方に通知をする必要があると,これは前回までの議論を踏まえて,相隣関係の問題なので所有者にも権利保護の機会を与えるべきだろうということで,こういう形にしております。ただ,使用権構成というふうに構成を改めたときに,隣地所有者が,隣地に土地の所有者が入っていけるという,この権利自体は相隣関係上の権利に当然なると思いますので,あとは権利保護の手続の実質をどういうふうにするか,相手方は所有者でなければならないのかどうか,使用者だけでもいいのかというところはまた別の問題として,更に検討をしたいと思っておるところでございます。
      また,この通知の内容についても,何回か前の部会資料では,具体的に日時とか態様とかというのをきちんと通知に表した上で承諾を求めるという形にしておりました。それは変えておるつもりではございませんで,ただ,このような書き方で通知の内容まで読めるのかどうかというのはもう少し考える必要があるだろう,事前の権利保護の機会を与えるに際してどのような形にするかということは,更に検討する必要があるだろうなと思っているところです。
      今川委員から御指摘,御質問のありました,公示送達をすることになるのかということですけれども,通知ですので,公示送達が可能だろうと思っております。緊急の事態などがあって,あらかじめ通知することが困難なときには後に通知をするということになりますけれども,その際に所在が不明だということがあれば,公示送達ということもあり得るというふうに考えておりました。
    ○橋本幹事 今の御説明,それはそれで理解するのですが,ただ,使用できるというふうに条文で言い切ってしまうと,拒絶があったとしてもできるのだということで,隣地の人がもう強引に押し入っていくという事態も少なからず発生する危険性はあると思うんです。その場合に要らぬ混乱が拡大しやしないかということを心配するわけです。我々のところに法律相談に来てくれれば,いや,それは駄目だよと,きちんと承諾を求めて,駄目であれば法的手続をとりなさいとアドバイスしますけれども,みんながみんな,そういった法律専門家の助言を受けながら行動するわけではないと思いますので,ちょっと危惧感を感じているところです。
    ○今川委員 所有者の所在が不明な場合は,それだけであらかじめ通知することが困難なときに該当して,事後的な公示送達を通じた通知でよいというふうに読み取れるのですが,そうではないんですよねという確認と,そうでないならば「急迫の事情」というような文言を残しておいた方が分かりやすいのではないかという意見であります。
    ○山野目部会長 お二人の御意見を理解いたしました。
      引き続き議論をお願いしたいと考えます。
    ○佐久間幹事 今の関連で一つあるんですが,まずそれだけに限った方がよろしいですか。
    ○山野目部会長 差し当たりそこに限ってお願いいたします。
    ○佐久間幹事 弁護士会から出された意見について少し違和感があります。それは,現在の209条は請求することができると確かに書いておりますけれども,これは請求をして,相手方が拒めるという状況は前提としていないと思うんですね。全く一緒だというとちょっと語弊はあるかもしれませんが,例えば借地借家法の建物とか造作とかの買取請求が,請求することができると書いてあるけれども,あれは請求したら,それで形成されるというのと,これは同じはずだと思うんです。それで,一般国民から見た請求することができると書いてある場合と,使用することができると書いてある場合との受け取り方は,印象というのでしょうか,それは違うかもしれないと思うのですけれども,現在も,要するに請求するというか,一種の通知をすれば,必要な範囲内では使えるというのが土地所有者の権利のだと理解することもできると思います。そうすると,今回の御提案では,③の「ただし」以下が入るというところが,恐らく現在の209条とは違うのではないかと思います。もし,このただし書について文言も含めて合意を得られるのであれば,そのただし書を付加することが従来と異なるだけであって,今まで以上に土地所有者の権利を広げるということには実質的にはならないのではないかと私は思っております。
    ○山野目部会長 佐久間幹事のその余の点についての御意見は,また伺いたいと考えます。
      藤野委員,どうぞ。
    ○藤野委員 ありがとうございます。
      まず,第1の1の「隣地使用権」に関しまして,法的構成についてはそれほど今までこだわっていたところではないのですが,今回の提案を拝見いたしますと,条文の作りとしてはこれまでよりも分かりやすくなったのではないかということで,産業界の立場からも支持できるのではないかと思っています。
      元々これは隣地使用権の対象を拡大するということで始まった話でして,例示列挙にして対象を広げるかどうかという話も部会が始まった頃にはあった中で,結果的にはここに列挙されている1のアからウまでに限定するという形になっているわけでございまして,類型的にそれほど土地所有者の権利への制約が少ないものを対象として選んでいるということもございますので,条文の形としてはそれほど硬い書き方にしなくてもよいのではないかなというところは一つございます。
      あと,この通知の点に関してですが,前回の部会までは占有者に対してのみ行うという選択肢もあった中で,今回,所有者も含めて行うということになっておりまして,これに対しては逆に,ここでまた所有者の概念が出てきてしまうということに対してちょっと不安を抱く声が出てきております。実際,先ほども所有者が所在不明のときにどうするのかというお話が出ておりましたけれども,そこでまた何か重たい手続をしなければいけないということになると,類型的にそれほど土地所有者に与える害が少ないがゆえに認められているにもかかわらず,手続のところで重くなるというのはちょっとどうなのかなということで,例えば所有者が特定できなければ登記名義人に通知する,ということでも良いのではないかという意見が出ていたりもします。
      この点につき,従来の209条の解釈では,例えば住家に立ち入ることができないというところに関しても,立入りが平穏を害しなければそもそも住家に当たらないというような解釈が示されていたりするということもございます。そういう観点で言いますと,例えば土地の所有者が所在不明の場合に,そこに仮に立ち入るということがあったとして,少なくとも平穏という点に関して言えば占有者の了解,現に使用している者の了解を得られているのであれば,それでいいのではないかという考え方もここではとれるのかなと思っておりまして,逆にいわゆる所有者への通知というところを徹底的に突き詰めて法的効果を発生させるところまでやるというふうに解釈するよりは,むしろ連絡が取れなければそれで割り切るという考え方もあり得るのではないかというふうに考えております。これは前回まで余り明確に意見を申し上げていなかったところでございますので,この場で申し上げたいと思います。
      あと,第1の3の設備設置権,使用権のところに関しまして,こちらは基本的な規律に関しては全く異論はございませんが,気になるのは償金のところ,⑤以降のところでございまして,この点については,これも部会の前半でそもそも償金の性質が何なのかという議論があったかと思います。そして,土地の損害が発生したときにそれに対する償金を支払う,といった時に,その支払いが常に発生するものなのかどうかというところはケース・バイ・ケースだろうということでこれまで来ていたと思うのですが,今回,囲繞地通行権の212条と同じような表現がここで使われており,囲繞地通行権では,通路を開設したときの償金が基本的に発生するものと理解しておりましたので,今回こういう形でパラレルに書かれると,何かこれは導管の設置,設備の設置をすると,常に償金を払わないといけないということになってしまうのではないか,という懸念も生じるところです。法制上,そろえた方がいいということであればやむを得ないところはあるのかもしれませんが,ちょっとそこは誤解がないようにというか,土地の状況によっては仮にそこに導管等の設備を設置して使用したとしても,それによって当然に,いわゆる使用料的なものが発生するわけではないということは,これもいろいろ御意見が分かれるところかもしれませんが,何らかの形で示しておいていただく方がよいのかなというふうに考えているところです。でないと,実務的なところ,今の実務慣行との整合性とか,そういったところで弊害が出てくることも懸念されるのではないかと思っております。
    ○山野目部会長 藤野委員の御意見を承りました。垣内幹事,どうぞ。
    ○垣内幹事 垣内です。どうもありがとうございます。
      第1の1の③に記載されている通知の位置付けについて確認のための質問をさせていただければと存じます。
      原則として,あらかじめ通知が必要だけれども,場合によってはあらかじめの通知は不要で事後でよいという規律なんですけれども,この通知を怠った場合に何か法的な効果というものは想定されているのでしょうか。損害の賠償と申しますか,補償ということについては,通知の有無に関わらず④の規律で償金を請求することができるということかと思いますので,その点について特に変わりはないようにも思われますけれども,そうだとしますと,通知を怠って勝手に使用したという場合についても特段の効果ということがあるのではなく,これは飽くまで行為規範と申しますか,そういう意味では訓示規定的な規律ということなのか,それとも何か具体的な法的な効果が想定されているのかについてお教えいただければと思いまして質問させていただきました。よろしくお願いいたします。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      ここまで御発言いただいた委員,幹事の御指摘を踏まえて中締めの整理を差し上げますと,①のところについて,使用することができるという,使用権構成とでも呼ぶべきものを提示しておりますところ,それについての意味の理解に関する問題提起ないしお尋ね,あるいは意見を頂いております。それから③のところについて,今川委員からは「通知することが困難なときは」という,この要件文言の内包について問題提起を頂いているほか,ただいま垣内幹事から③の規律の効果をどのように理解しておくことがよいかという観点からの問題提起を頂いたところであります。
      これらの点について,この段階で事務当局の所見を聴きます。
    ○大谷幹事 今川委員から御指摘のございました「あらかじめ通知することが困難なとき」というのは,こ,御指摘のとおり緊急性があるような場合で,通知はしなくて後にすることをもって足りるだろうということで,特に先ほど公示による意思表示をするときにどちらになるのかというようなことがございましたけれども,ここで考えておりましたのは,緊急性があるときには後の通知にするし,そうでなければ事前の通知をするということになるはずだというふうに理解をしておりました。
      それから,垣内幹事の方からの御指摘で,③の通知をしなかったときどうなるのかということですけれども,これは損害賠償という,その行為が成立するときがあり得るとして,その損害賠償の問題がそれはそれであるということですけれども,結局事前の通知を怠ったとしても,それによって何かの効果が発生するということはないのではないかというふうには理解をしておりました。
    ○山野目部会長 お尋ねになった垣内幹事,お続けください。
    ○垣内幹事 どうもありがとうございます。
      特段の効果はないということで理解をいたしましたが,今お答えの冒頭で不法行為のお話をされたようにも思いますけれども,別途不法行為で損害賠償請求をするということが懈怠の場合にあり得て,その場合の損害というのは④の損害とは異なるものを請求できるということでしょうか。
    ○脇村関係官 すみません,ちょっと補足させていただきますと,通知を怠った場合については不適法になるということは前提にしておりますので,不法行為が成立することは当然あり得るということだろうと思います。不適法な場合と適法な場合では,損害の内容も異なってくる可能性は当然あり得ますし,適法ではないことを前提にしたもろもろの法律上の効果は当然発生しますので,そういう意味では通知があるかないかによって適法,不法が変わっていくというふうには理解しておりました。
    ○山野目部会長 脇村関係官に更問いを差し上げますけれども,④で損害を受けたときの償金請求ができるならば,③のところで通知をしてもしなくても話の展開は同じではないですかというふうに,ざっくばらんに言うと垣内幹事の御発言の背景にそういうふうな御疑問が横たわっているように感じますけれども,何かそれについてお話がありますか。
    ○脇村関係官 恐らく④で想定している損害は,そういう不法行為とかに基づく拡大損害ですとか,そういったものまで想定は余りしていないのかなと。もちろんそれは解釈論として,④の損害がそういう幅広くもいけるのだという理解はあり得るのかもしれませんけれども,ここで言うのは適法にされた場合に,それによって生じた限度の損害というふうに考えますと,不法行為のケースについてはまた別途議論の余地があるのではないかなということで,全く一致するということまでは言えないのかなというふうには理解したというところでございます。
    ○山野目部会長 適法行為によって生じる損害といいますか,損失を償うことを規律内容とする④と,違法性が阻却されない事態に至る③の規律に背いて行われた行為によって生じた損害の範囲は必ずしも一致しない可能性があり,その点で,③の規律に行為規範を超える意義が生ずる場面があるかもしれないということを事務当局から説明を差し上げたようであります。
      垣内幹事,お続けになることがおありでしょうか。
    ○垣内幹事 どうもありがとうございました。了解いたしました。
    ○山野目部会長 どうもありがとうございます。
      中田委員,お願いします。
    ○中田委員 ありがとうございます。
      ただいまの大谷幹事のお話と脇村関係官のお話と,ちょっと私には違って聞こえたような気がしました。つまり通知が権利発生要件なのか,それとも権利は当然に発生していて,単なる手続要件にすぎないのかというのが少しニュアンスが違うのかなというふうな印象を受けました。それから,先ほど佐久間幹事がおっしゃった,請求と書いてあったって形成権のことがあるのだということは,それはおっしゃるとおりだと思いますが,弁護士会が御心配になっていることは,これは佐久間幹事もおっしゃったことですけれども,この規定を置くことによって紛争が生じやすくなるのではないかということだと思います。そこは表現などを十分配慮する必要があると思います。
      それに関連いたしまして,これも大谷幹事がちょっとおっしゃったことですが,通知の内容についてです。前回の資料46の(注1)では,使用目的,場所,方法及び時期の特定した催告をするということになっておりましたが,今回はその旨を通知するということで,その旨に委ねているんだと思います。これは法制的にはそれでいいのかもしれないのですが,先ほど申しましたように,この規律が紛争を招くおそれがあることを考えますと,できればその通知の内容を何らかの形で具体化する方がよろしいのではないかなと思います。
      第1の3についても意見がありますが,これは後ほど申し上げたいと思います。
    ○山野目部会長 中田委員,ありがとうございました。
      中田委員がおっしゃった通知が権利の発生要件であるか,手続的な手順を明らかにしたものであるかということについて,あとで事務当局の考えを伺います。
      松尾幹事,御発言ください。
    ○松尾幹事 ありがとうございます。
      部会資料51の第1の1「隣地使用権」のご提案については,適切にまとめていただいていると思い,私は賛成です。
      その上での確認ですけれども,今問題になっている所有者不明の場合が,この第1,1の③の本文に位置付けられるのか,ただし書に位置付けられるのかという点です。ちなみに,第の2「竹木の枝の切除等」については,③イに所有者の特定不能および所在不明の場合には切除権を認める旨の明示的規定があります。隣地使用権の場合には,所有者の特定不能の場合も所在不明の場合も,民法98条の公示による意思表示を予めするということを原則にしつつ,その手続を予めとることが困難なときは事後の通知でよいという趣旨であると理解してよいでしょうか。
      私は前回,隣地使用権の通知の相手方についても,やはり所有者は入れた方がよいという意見を申し上げましたけれども,所有者不明の場合には,この公示による意思表示で対応するということであれば,手続的にもさほど重くならないのではないかというふうに理解しました。その上で,所有者不明の場合で,かつ緊急性が高い場合等,予め通知することが困難な事情があれば,それは事後でも構わないということで振り分けることによって,現実的にもこの隣地使用権の制度が使いやすくなっているのではないかというふうに理解しました。もっとも,この理解が違っているかもしれませんので,その場合にはご教示いただければと思います。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      第1の「1 隣地使用権」の中身が①から④まで小分けにして規律の提案を差し上げている中で,取り分け①と③のところについて,今,多様な御指摘を頂いたところであります。
      ひとまず③の方でありますけれども,三つほどのことが話題になっているように感じます。
      一つは,ここに登場してくる通知が,隣地使用権が既に存在していることを前提として,その行使の手順を定めているものであるか,それとも,この通知をすることによって初めて隣地使用権が発生するかという御議論がありました。恐らく,ただいまこれから事務当局の所見を尋ねてみますけれども,①の規律で隣地を使用することができるという使用権構成で出発するということを明らかにして,その後のお話が進んでいくということを考えますと,③のところに出てくる通知で初めて隣地使用権が発生するという理解ないし法的構成を与えることは困難ではないかというふうに感じられます。
      それから,そのことと関連しますけれども,通知がそのような意味で効力発生要件でないとすれば,本文,ただし書を通じて③の規律の効果がどのような意味を持つかという垣内幹事から御指摘があった観点が,よりクローズアップされてまいります。③の通知というものは,既に発生している隣地使用権とはいえ,その隣地使用権を適法に行使するための手順を定めたものでありますから,この手順を踏まないで隣地使用権を行使することは,特段の事情がない限り隣地使用権行使を違法ならしめる。裏返して言うと,違法性を阻却するという論理が否定されるということになってくるものでありましょう。そうしますと,脇村関係官からお話がありましたとおり,民事上は不法行為法に基づき④とは異なる種類の損害賠償責任を基礎付けるということになりますし,民事法以外の観点も見わたして考えますと,恐らく住家に入らないとしても,人の看守する邸宅であるというふうに認められるときに,そこに正当な理由がなく入ったという評価に発展していくという,その評価を見極める際の一つの契機にもなるかもしれません。
      それから,3点目といたしまして,今川委員から御提議を頂いた「あらかじめ通知することが困難なときは」という要件を洗練ないし明確化する必要があるのではないかという御指摘は誠にごもっともな側面がありますとともに,ここに急迫なといったような例示ないし要件としての文言を追加しますと,逆に急迫という言葉の意味を探究しなければならなくなり,またいずれにしても急迫の場合に限定されるというような解釈を求められるというおそれがあるかもしれません。通知することが困難なときというこの概念の評価は,いずれにしても規範的な側面を持っていますから,事前の通知をすることが難しい程度に困難であるときというふうに,その要求される通知の在り様との相関関係で決まっていくという側面があるであろうと思います。そうしますと,所有者が分かっているけれども,所在が分からないというときに,今川委員が御心配なさったように公示送達で問題を処理すべき場合があるかもしれませんけれども,急迫の度合いが極めて高いときにはそれすらもいとまがないということがありますから,その与えられた個別の状況を見ながら相関的に判断していくということがいずれにしても避けられないものでありまして,そういったことを考えますと,御指摘の中身が誠にごもっともであるとして受け止めるとともに,この文言は,このようなものにしておいても,ただいまのような理解をしてまいりましょうという仕方での運用を期待してよいし,期待していかなければならないものであるかもしれません。③のところに限っても,今,話題にいたしましたような三つの観点が,既に委員,幹事から御議論として出されておりました。
      このあたりを中心にして,この段階で事務当局から所見があればお願いいたします。
    ○大谷幹事 部会長に大変きれいに整理をしていただきまして,ありがとうございました。
      私が申し上げたことはやや不適当なところがございまして,中田先生からも御指摘ございましたけれども,やはり隣地使用権の発生自体は①で発生をするということになるわけですけれども,その行使の要件として③のような手続が必要なんだろうと,このような手続を踏んで初めて行使が適法になるということになるだろうと思います。
      その通知が難しい場合には,ここでいうあらかじめ通知することが困難なときという要件を満たしていれば,またそれも権利の行使を適法にするということになるのだろうというふうに理解をいたしております。
      通知することが困難なときの解釈については,今,部会長にまとめていただきましたようなことで我々も考えておったところでございます。
    ○山野目部会長 引き続き④についても御議論がおありだと思いますが,③の範囲を中心に,今,事務当局が述べたことなどにつきまして委員,幹事からの御意見を承ってまいりたいと考えますが,いかがでしょうか。
      國吉委員,どうぞ。
    ○國吉委員 ありがとうございます。
      第1の「1 隣地使用権」については,基本的に隣地を使用する権利があるというスタートになっております。これは当初の隣地使用承諾の議論の中でも行ってきたもので,当初の方に戻ってきたのかなという印象です。これについて,私ども土地家屋調査士会は賛成でございます。今,議論のありました3番の通知についてなんですけれども,私どもから,いわゆる隣地を使用する目的を達成するためには,所有者プラス実際に使用している者,占有者というのでしょうか,そういった方にやはり包括的に,基本的には承諾を得るというのがスタンスなのだろうと思います。そのときに,この通知の内容について,もうちょっと細かな点といってはおかしいのですけれども,②の隣地のために損害が最も少ない方法というか,そういったものについてもやはり通知の中に入れ込むというような形をとっていただいた方が,いろいろ議論があります紛争をむしろ発生させる要因になるのではないかということがあると思いますので,この通知の分についてはやはりきっちりとした何か規定みたいな形で作っていただけたらと思っております。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      ほかにいかがでしょうか。①,③に限りませんけれども,①,③でたくさん御議論が出ているところなどを踏まえて,いかがでしょうか。
      水津幹事,お願いいたします。
    ○水津幹事 隣地使用権や継続的給付を受けるための設備設置権・設備使用権について,今回の提案では,使用権構成がとられています。この提案によると,隣地使用権や継続的給付を受けるための設備設置権・設備使用権の法的構成は,210条の通行権や220条の通水権の法的構成と,同じものとなります。
      他方,隣地使用権や継続的給付を受けるための設備設置権・設備使用権については,事前の通知が求められています。そうすると,今度は,210条の通行権や220条の通水権について,事前の通知が求められていないことが気になります。隣地使用権や継続的給付を受けるための設備設置権・設備使用権と,210条の通行権や220条の通水権とを比較して,土地にとっての必要性や他の土地が受ける負担の相違等から,後者については,前者とは異なり,事前の通知が求められていないことを正当化することができるかどうかについて,検討をする必要がある気がしました。
    ○山野目部会長 水津幹事,どうもありがとうございました。
      ほかにいかがでしょうか。
      委員,幹事から引き続き御議論を承ってまいりたいと考えますけれども,弁護士会の先生方の御意見をお取りまとめいただき,橋本幹事からは第1の1で言いますと,取り分け①のところを中心にして,この「使用することができる」という仕方で構成を提示していることについてのお話を頂いたものであります。橋本幹事からお出しいただいたお話を,お話を聞いて改めて整理をすれば,いずれも同じ方向を向いていることではありますけれども,実際的観点と理論的観点とに分けて整理して受け止めることができるのではないかと感じます。実際的な観点として,「使用することができる」という民法の文言をこのまま掲げたときには,現実生活において紛争が起こるものではないかというふうな御心配があって,それはごもっともなことだろうというふうに感じます。
      もう一つは,従前の部会資料で承諾という言葉が出てきていて,あのような概念を中心に議論が積み重ねられてきたこととの関係がどのようになるのですかという御疑問を頂いたものでありまして,こちらはどちらかというと理論的な観点のお話になるのではないかと受け止めました。前者の実際上の観点につきましては,もちろん現実生活において隣人間における摩擦が生ずるようなことは好ましくないものでありまして,そのような配慮は当然あってしかるべきであるということは,中田委員からも御注意を頂いたところであります。そのことは,この209条が新しくできる姿についての理解を一般に説明していくに際しては,もちろん忘れてはならない観点であるというふうに感じられますとともに,今ここで規律の内容としてそこを改めて考え,例えば承諾を求めることができるといったような規律にするときには,水津幹事が別の方向からおっしゃったことですけれども,隣地通行権であるとか,隣地への通水権などについても類似の問題があるわけでありまして,従来の法制を踏まえた上で,今後の209条についての適切な在り方を考えようとすると,ここで御提示申し上げていることが使用することができるという構成になっているということは,それとして宜なるかなという側面もあるだろうというふうに感じます。
      それから,理論的,体系的な観点の方に目を移しますと,承諾という概念を使って従前の会議での議論をお願いしてきたところでありますけれども,しかし,その承諾を求めることができるということが一体何を意味するのかということが必ずしも明晰ではない,あるいは疑問の余地が大きい概念,法的構成であるということは既に前回,この論点を御議論いただいた部会の審議において委員,幹事から,その観点についての多様なお話を頂いたところでありまして,それを踏まえて本日の部会資料をお出ししてるという経過がございます。翻って考えてみますと,承諾を求めることができるというふうに法文に記したときのその私法的な理論的,体系的な意味は何でしょうか。弁護士会の先生方に対して釈迦に説法でありますけれども,民法に承諾を求めるというふうに書くと,それは何か現実の日常生活でちょっと入ってもいいですよね,ええ,結構ですよと言っている,そういう事実としてのやり取りとは別の意味を帯びてくるものでありまして,承諾というふうに記せば,普通は承諾の意思表示を求めることができるというお話になってまいります。
      ここでは,しかし,隣人間で何か契約の成立を擬制するというようなことを考えているものではありません。承諾を求めるというふうに法文が謳えば,承諾の給付を求める訴えを提起しなければいけないというふうに話が進んでいくのが,むしろ法律家の普通の理解,受け止めの仕方になってくるものでありまして,そのような側面もにらみながら,反対に承諾を求めることができるという文言にしたときの疑問といいますか,不安定さといいますか,そちらの方もゆるがせにできないものがあるだろうというふうにも感じます。
      引き続き橋本幹事や,そのほかの委員,幹事,また事務当局からもお話を頂いて,①,それに関連して③などについての御議論を深めていただきたいと望みます。
      次に御発言なさる方はどなたでいらっしゃいますでしょうか。
    ○小田関係官 関係官の小田でございます。
      先ほど水津幹事から御意見を頂いたところに関して若干の補足をさせていただければと思います。
      囲繞地通行権であったり通水のところに関しては,囲繞地と袋地,あるいは高地,低地というところで,土地の関係が外部からある程度はっきりしているというところでございます。この場合には袋地の方が通行を受忍することになりますし,低地の方が排水を受忍するということになろうかと思いますが,隣地使用だったり設備設置の方に関しては,新たに例えば住居だったり建築物を建てるとか,そういった事後的な事情で権利が発生するというところで,周りの土地の方が権利の発生を知らないまま進むということもございまして,この提案に関しては事前の手続が必要ではないかというところで,事前の通知の規律を設けております。
    ○山野目部会長 ただいま小田関係官が差し上げた説明について,水津幹事におかれて何かおありでしたらお話をください。
    ○水津幹事 そのような説明によって,規律の違いを正当化することができるかどうかについては,なお検討の必要があるかもしれません。いずれにせよ,体系的な整合性が保たれるように,規律の違いを正当化するか,それが難しいのであれば,規律を揃える方向で検討をしていただければと思います。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      引き続き第1の1を中心にお話を伺ってまいりますが,この段階で多様な御議論も頂いているところでございますから,必ずしも1に限定しないで,2や3についてもお話を頂いてもよろしいのではないかと考えます。
      先ほど佐久間幹事がもう少しお話があるというお話をされていましたから,まず佐久間幹事からお願いいたします。
    ○佐久間幹事 ありがとうございます。3点あります。
     一つ目は,1の①についてなんですが,今まで出たのとは別の点です。
      ただし書に「居住者」とあるんですね。これは非常に素朴なことで,聞くのは恥ずかしいんですけれども,居住者がないときはどうすればいいのかなというのがよく分かりませんでした。つまり空き家になっていると。でも,かつてはというか,少し前までは人が住んでいましたと。このときには,私は所有者が分かっているんだったら所有者に承諾を求めることが適当ではないかと思うんですね。「居住者」というのは,現行法の「隣人」という文言が今一つ分からないからということで,何とかしましょうということから出てきたと記憶しています。確かに「隣人」も多分中心になっているのは現に居住している者であったと思うので,居住者と変えることが,法文上問題ないのであればいいのかなと思うんですけれども,先ほど申し上げたような場合については考えておく方がいいのではないかと。例えば居住者がないときは所有者に,というような形で考える方がいいのではないかなと思います。これが1点目です。
      2点目は,これは説明の問題なので今日どうでもいいのかなと思いますけれども,一応,そのうち外に説明として出るのであれば,2ページの「また」から始まる段落の3行目か4行目,これは「隣地使用者は,土地所有者による隣地の使用状況を把握しておくべきである。」というところは,「隣地使用者が土地所有者による隣地の使用状況を把握することができるようにしておくべきである」といった意味ではないのかなと思いました。ちょっとどうでもいいことなんですけれども,検討していただければと思います。
      3点目は,3についてです。変更の規律はやめておきますというふうに今回なったと思うんですけれども,この継続的給付を受けるための権利については,隣地通行権とここが違いますよねということが最初から意識されていた点として,固定性があるというのでしょうか,設備が地下も含めて通りますので,その場所を隣地所有者が使いたいとなったときに,それを妨げることはできるのか,という話が当初確かあったと思うんですね。それで,例えば,今のところは土地の端っこの方に導管を通しているつもりなんだけれども,そこに建物をやはり建てたいんですと隣地所有者がなったときに,設備をおよそどこにも通させませんということは駄目なんだろうと思いますけれども,場所を変えてくれということは権利として保障しておくべきなのではないか,という話があったと思うんです。
      今回の補足説明を拝見して,今申し上げたような場合が事情の変更に当たるのであれば,現在の御提案でよろしいと思うのですけれども,これは事情の変更というよりは主観的な考えの変更という感じがします。事情の変更って何となく客観的なものを想像するのですけれども,そういった主観的な事情の変更も含まれる,被害の最小性というのは,隣地所有者の所有権行使の在り方,あるいはその希望によっても変わり得るのだというのであればいいのかなと思いますけれども,そうでなかったならば,今申し上げた点ですね,事後的に土地の使い方を隣地所有者は変えたい,変えるということはあり得るのではないか。そこについて,対応しないことにしたというのであれば,それは一つの考え方であると思うのですけれども,対応しないことにしたのかどうなのかということを,まずは伺えればと。そして,もし対応しないことにしたとまではなっていないのであれば,隣地通行権とやはり性質が違うので,対応を考えるほうがよいのではないかと思いますということを申し上げたいです。
    ○山野目部会長 佐久間幹事から3点頂いたうちの最後の設備使用権に関わる変更の規律の存廃についての部会資料の変化についての説明を事務当局において用意をしておいてください。
      佐久間幹事がおっしゃった2点目は補足説明の文章の問題として受け止め,これは前後の文章も含めて事務当局において推敲いたしますから,そのように扱わせていただきます。
      1番目におっしゃったことについては,後で私が少しコミカルなコメントを差し上げようと考えております。
      ですから,3点目のお答えの御用意を事務当局において御用意おきいただきながら,中田委員のお話も伺った上で,まとめて事務当局からお話をお願いしようと考えます。
    ○中田委員 ありがとうございます。第1の1について少しだけ補足をし,その後,第1の3について申し上げます。
      補足と申しますのは,承諾構成の場合に,その承諾とは何かが分からないということだったわけですが,幾つか可能性があると思います。まず,実体法上,承諾義務が発生しているという構成があります。この場合,その承諾義務に基づいて承諾せよという裁判を起こして,その裁判の中で,承諾義務を発生させる実体法の要件が満たされているかどうかを審理するというのが一つだと思います。また,承諾に代わる許可という,借地借家法にあるような制度もありえます。承諾構成といっても幾つか種類があるのかなと思いました。
      3の方でございますけれども,こちらは今回の御提案で「導管」という言葉と「下水道の利用」という言葉が消えまして,「継続的給付を受けるための設備」という概念になったことについて,3点お聞きしたいと思います。つまり,結果として対象となる事象が広がったように思いますし,また210条以下のいわゆる囲繞地通行権との違いも拡大しているように思われるということについてです。
      1点目は,先ほど佐久間幹事がおっしゃったことと同じでございまして,囲繞地通行権にも,その変更に関する規定がないではないかということが理由となっているわけですけれども,しかし,これも佐久間幹事がおっしゃいましたとおり,囲繞地通行権の場合と,設備設置権等の場合とでは違っているだろうということです。物権的請求権で排除することも考えられますけれども,設備の所有者が分からなくなっているという場合もあるかもしれません。それから,償金を支払わない場合の効果もはっきりしません。ということで,最終的には民事調停になるのかもしれませんが,この権利の変更や終了について何らかの手掛かりを残せたらいいのではないかと思います。例えば変更請求とか,消滅請求とか,そんな規定をイメージしています。
      それから,2点目は複数の候補地がある場合の選択についてですが,これは御検討いただきまして,その結果を4ページに記載していただきました。この点につきましても,通行権の場合に比べますと選択の対象が多くなるという問題があると,今でもそう考えておりますけれども,ただ御検討の結果,本文②の解釈で賄おうということですので,それはそれで理解いたしました。
      それから,3点目ですけれども,今回のゴシックの部分を改めて読んでみてちょっと気になったことなんですが,設備の設置権や設備の使用権というのは地下だけではなくて地表や空中も含むのかどうかということでございます。例えば他人の土地の上に電線を通すとか,他人の畑に電柱を設置するというようなものも排除されるのかどうかがよく分かりませんで,しかし,それはもしそこまで含めて考えるのだとしますと,生活に及ぼす影響が非常に大きいので,改めて慎重に検討する必要があるのではないかと思いました。これはひょっとしたら私の誤解かもしれません。以上,3点です。
    ○山野目部会長 中田委員,ありがとうございます。中田委員が二つに大きく分けておっしゃったうちの1の「隣地使用権」の承諾の概念をめぐるお話は承りましたから,今後の検討において参考といたします。
      もう一つ,3の設備設置権,設備使用権について,三つに区分けしてお尋ねがあったところについて,事務当局から説明を求めることにいたします。したがいまして,いずれも3の部分につきまして,佐久間幹事から問題提起があった1点,それから中田委員からお尋ねの仕方で問題提起があった3点について,事務当局からお話をお願いいたします。
    ○大谷幹事 ありがとうございます。
      佐久間先生から御指摘のございました変更についての規律は要らないのかという,これは中田先生からもございましたけれども,土地の使用状況が変わっていくというのは,恐らく隣地通行権,囲繞地通行権の場合でも同じことがあり得るところで,既に通路があって,その後に土地の使用状況が変わって,一番損害の少ない通路というのが別の場所になるということはあり得るのだろうと思われますので,ここの設備の設置権等におきましても同じような考え方で,土地の使用状況が変わるということであれば,それに合わせて最小の損害のところに場所が変わっていくということはあり得る。だから,変更という形の規律を置く必要はないのではないかというふうに考えておりました。
      それから,中田先生から御指摘のございました,下水道の関係がなくなっているというのも,これも当然この電気,ガス,水道の供給,その他これらに類する継続的給付というふうに書けば,下水道ということも入ってくるのかなというふうに理解をいたしまして,これは除いている趣旨ではございません。それから,一番最後に御指摘がございました電線の設置についても入っているのかということがございましたけれども,これはかなり前の方の部会資料でも少し書いていたような記憶ですけれども,電気の電線を引くということについても,この規律の対象になっているというふうに理解をして,その中で一番最小の損害の場所を選んで置いていくということになるのは,ほかの地中に埋めるものと同じことになるのではないかと考えておりました。
      あと何でしたっけ。
    ○山野目部会長 中田委員が三つおっしゃったうちの1番目は,下水道を除くことになるものですかということもあるかもしれませんけれども,下水道という文言が消えたことによって,さらに一般的な,あるいは抽象度の高い言葉に今回変わったことによって,この権利が機能する範囲が広くなるので少し心配だという観点のお話であったものではないかと聞きました。
      それから,2点目として,どこに設置するかという土地の選択の問題についても,部会資料で説明を工夫したのは分かるけれども,なお引き続き関心を持って行きたいというお話がありました。
      何か,それらについて事務当局から補足はありませんか。それを伺った上で,また中田委員の話をお尋ねしようと思いますけれども。
    ○大谷幹事 特にございません。
    ○山野目部会長 ありませんか。
      それでは,お尋ねを頂いた佐久間幹事の方から引き続きの話を伺います。変更の規律を置くことの要否について,事務当局からひとまずの説明を差し上げましたけれども,いかがでしょうか。
    ○佐久間幹事 御説明それ自体は,そういう考え方はもちろんあるなとは思うのですが,一応,隣地通行権の場合,通路を開設することはできるんですけれども,当然開設することが予定されているわけでもないし,基本的にはよほどのことがないというふうなことだと思うんですね。事実上通行しています,というのが原則的形態だと思うんです。それに対して,この継続的給付の場合は,問題の深刻度が違うのかなというふうには思っております。しかし,問題の深刻度は違うんだけれども,変更の規律を,例えば隣地所有者が望めば変更できますよなんていうのもちょっとおかしな話なので,およそ一回接続を認めたら,もうそれで終わりなんですよ,未来永劫,相手の権利として尊重しなければいけないんですというようなことではないということがはっきりとしていれば,御説明のとおりでもいいのかなというふうにも思っています。
      それが1点と,もう1点,中田先生がおっしゃったことで下水道のことなんですけれども,下水道が消えたのは,下水道法があるからかなと思ったんですね。下水道法は確か隣地通行権と同じような規定を置いていましたよね。そうすると,あっちは削除するんですねということを確認させてください。というのは,下水道法の規定が残って,民法に今御提案の3に従った規定ができるとなると,下水道にはその規定の適用がないということになってしまうのではないかという気がするので,そこの調整が必要なのではないかなと思いました。
    ○山野目部会長 佐久間幹事が再度御発言になった設備の設置,使用に関する変更に関する規律の要否の問題は,今,佐久間幹事からひとまず理解するというお話を頂いたとともに,御所感を頂戴したところでありますから,次回までにもう少し佐久間幹事に説明を差し上げることがないか,事務当局の方で検討することにいたします。
      それから,下水道法を今回の民法の規定整備を踏まえてどうするかということは,改めて関係法律整備において検討することになりますから,その際に,ただいまの佐久間幹事の御指摘を踏まえるということにいたします。どうもありがとうございました。
      中田委員,お話をお続けください。
    ○中田委員 私の問題関心は先ほど申し上げたことに尽きておりますけれども,部会長が御指摘くださいましたように,下水道そのものというよりも,下水道の利用という言葉がなくなり,かつ導管という言葉もなくなったことによって,かなりイメージが広がったということに主な関心がございます。先ほど空中の電線も入るのだというお話でございましたけれども,そうなると,ますます変更や消滅の規律が必要になってくるのではないかと思います。あるいは,現在は地上権,空間地上権によって対応していることが,当然の権利として認められるということになると,それも影響が相当大きいのではないかなと思いました。前の部会資料に出ていたということを私失念していまして,それは大変失礼いたしました。
    ○山野目部会長 中田委員からも,ただいま事務当局から差し上げた説明について理解をお示しいただくとともに,なお御所感を添えていただいたところでございます。
      確かに改めて考えますと,一般的に設備設置権,設備使用権についての規律文言が特定の事象に囚われた,狭きにすぎたものにならないように,今般の部会資料においては多少なりとも抽象度を高めた概念の使用に変更しておりますけれども,そのことから得られるメリットもあるとともに,制度の機能する範囲が広がりすぎるのではないかという御懸念も生じてくるところであります。具体的に中田委員から御指摘もあったとおり,280条が定める地役権や269条の2の規定が定める区分地上権などによって,一言で申せば,約定の当事者間において成立する法律行為を原因として成立する土地の使用権によって従来賄われてきた事象が,全部まとめて今後はこの法定の使用権に受け止めてもらって,有無を言わさず,法律上,当然に成立しますという仕方での解決に移行していくということまで部会資料が提案するつもりはありませんけれども,そのように受け止められて,新しい規律が運用されることになることが困るという御心配はごもっともでありますから,中田委員が示唆された点についても,事務当局において次の機会に必要な整理をかなう範囲でお示しするということにいたします。
      考えてみますれば,導管とかという言葉を使っているうちは,何かお隣のうちから電線を引っ張ってくるとか,目の前の道路から電線を引っ張ってくるとかという程度の話にとどまるものでありますけれども,規律文言の抽象的,一般的な理解としては,高圧電線を張っているような高い鉄塔のようなものを設置するという場面で,使ってはいけないという文言にはなっておりませんから,そのような局面についての機能の在り方はどうですかということについては,先々一般に対しても適切な説明をしていく必要があります。事務当局の方で所要の用意をしてもらえるというふうに期待いたしますから,またその折に御議論をお願いできればと考えます。ありがとうございました。
      佐久間幹事からは,第1の1の①ただし書,「居住者の承諾がなければ,その住家に立ち入ることはできない。」という文言についての御疑問といいますか,問題提起を頂いたところでございます。
      そこについて,私から一言申し添えますと,ここのただし書の文言を法文に仕上げていく際に,どのようにしたらよいかということについて,正直悩ましいところがあります。論理的にどういうことを伝えようとしてこれを書いているかということを申し上げれば,居住者がいるものが住家であるという理解で文言の組立てをしようとしているところであります。居住者がいないものは住家ではないと,住家の概念をそういうふうに受け止めて考えることによって,それでここのルールを設けようというふうに考えておりますから,その内容のとおりに受け止められるのであるとすれば,佐久間幹事がおっしゃった居住者がいないときには所有者の承諾になるでしょうかという問題自体がなくなるわけですが,ただし問題は,このただし書の日本語が,居住者の概念の方が先に出てきているのですね。居住者の概念を先に出しておきながら,その後に出てくる住家とは居住者がいないものであるというふうに理解してくださいということは,そう理解してくださいというふうにどこかで解説で書いてしまえば,そういうものなのですと,その理解を押し付けるという仕方でいけば,そうなるかもしれませんけれども,少なくともここだけで自己完結的に文意を伝える言葉にはなっていないですね。さはさりながら,現行法の文言を改定するという観点で新しい法文を作っていこうとすると,その文体を維持する限り,今お示ししているこの文章のほかになかなか代案が考えにくいものですから,居住者の概念と住家の概念がぐるぐる回っている,論理的には循環してしまっている状態になっているという嫌いがかなり濃いですけれども,困ったなと感じながら部会資料にお出ししているものでありまして,そこのところを言わば佐久間幹事には目ざとく見付けていただいたということになります。その慧眼は尊敬申し上げますけれども,さあ,どうしたらいいかということは悩ましいという,多少愚痴のようなことを申し上げます。
      佐久間幹事,どうぞ。
    ○佐久間幹事 実はそれは僕だって考えたんだと後出しでいうのではなくて,本当に考えたんですよ,居住者がいるものを住家というふうに読むのかなって。ただ,そのときに,今日発言するときにそのことを除いて発言いたしましたのは,この現行法の209条で住家に承諾なく立ち入ることはできないというのは,今の言葉で言うとプライバシーの保護というのが重視されているからだと思うんですね。そうすると,人が現に今は住んでいなくても,ここで言う住家というのはプライバシーの保護の必要があるものをもって住家という概念で表すというふうに,恐らく解釈されてきたと思いますし,今もそれでいいのではないかと思うんですね。納屋とか,そんなものだったらいいのだろうというのは明らかなのですけれども,そういたしますと,そのプライバシーを守られるべき人のことを居住者として表現するんだと言えばいいのかもしれませんが,私は面倒くさくなればいつもそうなんですけれども,そうだったら,いま「隣人」とあるのだから,もう「隣人」でいいではないかと思わないでは,実はありません。居住者と書いたらよりよくなるのかと言われると,どうもそうとも思えないので,それでもいいのではないかなと思っているということだけ申し上げておきます。
    ○山野目部会長 この部会に限らず,民法の改正をやっていると,時々こういう経験をすることがありますが,やはり明治の先輩たちの書いたものって,すばらしいのですよね。何かちょっとおかしいなと思って直そうとすると,あのあたりの上のほうから,梅謙次郎先生あたりが眺めていて,おい,後輩たち,できるものならやってみよというふうにおっしゃって,いろいろやろうとするけれども,やはりうまくいかなくてまいりましたというふうに言ってしまおうかなと思う局面というものは時折経験いたします。何かここの209条のただし書のところもそうであるかもしれないというふうに感じます。
      沖野委員,お手をお挙げになっておられて,こういうときに何かアイデアをくださる方ですから期待しましょう。
    ○沖野委員 ありがとうございます。
      御期待にこたえられるかどうか分からないんですけれども,住家にしても,居住者にしても,それぞれの趣旨から適切な絞込みなり,概念定義がされるということだと思います。それを前提としてですが,例えばですけれども,「ただし,住家についてはその居住者の承諾がなければ立ち入ることはできない」というような形で,順序を変更するということはあり得るのかなと思いました。
      取りあえず1の①についてはそのような表現もあり得るのかなということで,それで,もう一つ,3について,これもまた細部をお伺いしたいのですけれども,よろしいでしょうか。
    ○山野目部会長 お願いいたします。
    ○沖野委員 償金のことで,念のためということなんですけれども,分割によってこの状況が生じたときに,⑧においては⑤の規律は適用しないということなので,償金は支払わなくてよいという考え方だと思われます。そうしたときに,設置のために工事をするなどして,土地使用が可能性としては出てくるかと思います。すなわち⑤の括弧書きで抜かれている④で,1の④が準用されることによって生じる償金の点なんですけれども,これも掛からないという規律でいいようにも思うのですけれども,一時金はやはり払うということなのでしょうか。
    ○山野目部会長 沖野委員が二つに分けておっしゃったうちの前段,209条のただし書のこの文言表現に関しましては,御提案を受け止めて検討を続けることにいたします。沖野委員がおっしゃったとおり,やはり住家の言葉を前に出した方が,総体的に誤解のない法文にすることができるのではないかということは,なるほどというふうに感じるものでありますから,御提案を踏まえて検討することにいたします。
      後段,3の導管,設備設置,設備使用権の償金の関係について,一時に損害を償うものとして支払うべき償金の関係でお尋ねがございましたから,これについては事務当局からの説明を求めます。
    ○小田関係官 関係官の小田でございます。
      償金の部分に関して,⑧の提案においては,一時的な損害については償金を支払うということを想定しております。ただ,価値判断としてどちらがいいのかというところは御意見がいろいろあろうかと思いますが,現時点ではそのような理解で書いておるところでございます。
    ○山野目部会長 沖野委員,お続けになることがおありでしょうか。
    ○沖野委員 結構です。確かにどちらでもあり得るかと思います。両方払わないという選択も十分あり得るかと思ったものですから,立場が明確になれば結構です。
    ○山野目部会長 どうもありがとうございます。
      松尾幹事,どうぞ。
    ○松尾幹事 ありがとうございます。
      部会資料51の第1の3「継続的給付を受けるための設備設置権及び使用権」についてですけれども,この権利を行使するときに,その対象となる土地の所有者が特定不能または所在不明の場合はどう対応すべきかということについて確認したいと思います。また,その前提問題として,継続的給付を受けるべく設備を設置または使用するためには,第1の3の③の「通知」をしなければならないということですが,第1の1「隣地使用権」を行使する場合の通知の場合には,予め通知することが困難なときには事後通知でよいというただし書が付いていますが,第1の3「設備設置権及び使用権」の通知の方は特にそういうただし書が付いておりませんので,その通知の持つ意味が同じなのか,違うのかということも確認したいと思います。所有者が所在不明の場合には公示送達ということも考えられるかもしれませんけれども,そもそも所有者特定不能の場合には,所有者不明土地管理人を選任して,その者に対して通知するということを求めるという趣旨でしょうか。
      ちなみに,第1の2の竹木の枝の切除権については,2の③のイで「竹木の所有者を知ることができず,又はその所在を知ることができないとき。」ということについての明示のルールがございます。この場合には,所有者の特定不能および所在不明の場合には切除権を与えるというルールになっております。しかしながら,先ほどの隣地使用権にしても,継続的給付のための設備設置権・使用権にしても,所有者不明の場合についての明示的規定はございません。それについてどういうルールを想定しているのかということは,やはり明確にした方がよいと考えます。先ほど隣地使用権については今川委員の方から確認がございましたけれども,隣地使用権と継続的給付を受けるための設備設置権・使用権とを比べると,やはりこの設備設置権・使用権の方が対象地となる土地や設備を一時的にというよりは継続的に使用するという点で土地や設備の所有権に対する負担は重たいのではないかと思います。それでも所有者不明の場合は,公示による意思表示で通知すればよいのか,あるいは土地管理人を選任して,その者に所有者に代わる手続をとってもらう必要があるようにも思います。その点について,提案が前提とするルールを確認させていただきたいと思います。
    ○大谷幹事 今の点につきましては,先ほど隣地使用権の方では緊急の場合のような,あらかじめ通知することが困難な場合には事後的でもよいとしておりますけれども,こちらの継続的給付を受けるための設備設置権等におきましては,そういう緊急性のある場合というのが想定し難いだろうということで,事前に必ず通知するということが必要だろうと考えたところです。
      この通知につきましては,その相手方を知ることができない,所有者が誰か分からないというときでも,公示による意思表示で通知することが可能で,必ずしも所有者不明土地管理人を選任しなくても,この権利の行使が可能だと理解をしております。
    ○山野目部会長 松尾幹事,いかがでしょうか。
    ○松尾幹事 提案の前提にあるルールを承りました。それを前提に,所有者不明の場合は公示による意思表示でよいか,土地や設備の所有権に継続的負担を与える点に鑑みてより慎重な手続が必要か,何れにしても明示的規定が必要か,考えてみたいと思います。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      ほかにいかがでしょうか。隣地使用権,竹木の切除,設備の設置使用という相隣関係の部分についていかがでしょうか。
      よろしゅうございましょうか。
      それでは,部会資料51の中の相隣関係の部分については,多岐にわたる御指摘を頂きました。かなり実質的に検討しなければならない事項も含まれておりますから,委員,幹事の皆さんに再び御検討いただく機会を設けることにしたいと考えます。本日の御指摘を踏まえて,事務当局において議事を整理いたします。

  • 法制審議会民法・不動産登記法部会第18回会議 議事録

     そうしましたらならば,部会資料46をお取り上げくださるようにお願いいたします。
      相隣関係規定等の見直しについて,御相談を差し上げます。
      部会資料46の1ページは,第1といたしまして,隣地使用権の見直しについてお諮りをしています。そこに御提示しているもの全般について見ていただきたいと考えます。
      基本的な趣旨は,第14回会議でお諮りした部会資料32と同じであります。ただし,本日やや念入りに御議論いただきたいと考えます事項は,隣地に立ち入るに際して,コミュニケーションを取らなければならない相手が,隣地の所有者であるか占有者であるか,あるいは,はたまたその両方であるかということについては,第15回会議における問題提起を踏まえて議論の材料を用意しておりますから,ここについて御意見を承りたいと考えます。
      おめくりいただきまして,5ページにまいりますと,越境した枝の切除等について,これも,部会資料32と基本趣旨を同じくする提案を差し上げております。ただし,竹木の枝の切除,根の切取りの費用とか越境した枝から落下した果実の扱いなどにつきましては,6ページで御案内しているとおり,規律を置かないという方向での提案を差し上げているところであります。
      それから,おめくりいただきまして,8ページのところは,導管等設置権及び導管等使用権につきまして,部会資料32でお示ししているものと同様のものを御提示申し上げております。
      部会資料46の全体について御意見を承ります。いかがでしょうか。
    ○橋本幹事 まず,第1関係ですが,請求の相手方をどうするかという点については,日弁連のワーキングの意見では,占有者でよろしいのではないかと,占有者説が多数でありました。その場合,占有者の権限については問わないということについても,賛成するという方向です。
      ①のただし書なんですけれども,この点について,補足説明で,現行法の規律と実質的に変えるつもりはないんだという説明をされているんですが,承諾を求めることができないという,仮にこのままの条文になっちゃうと,現行法よりも狭くなっちゃうふうに読めちゃうので,ここは,補足説明の趣旨が通るような表現でお願いしたいということです。
      第2関係ですが,第2関係全体として,方向性としては大きな異論はありません。賛成方向です。その上で,竹木が共有の場合について,共有者の1人の承諾で可とするという提案になっているんですが,これは,部会資料32のときには,これは変更行為か管理行為かという議論はされていたんですが,今回はそういうことはもう問題にせずに,1人でいいんだという決め打ちをするという趣旨の提案という理解でよろしいんでしょうかという,確認のための質問です。
      それから,②のcですね。著しい損害又は急迫の危険を避けるため,急迫の危険という話が入ってきましたけれども,要件をもうちょっと具体化できないだろうかという要望がありました。
      それから,落下した果実の扱いについて,大きな反対ではないんですが,従前の部会資料32の当時の,処分権限を認めるというものを付けた方がいいんではないかという意見がありましたということを,紹介させていただきます。
      それから,第3関係ですが,②の点についていろいろ意見が出されまして,これについては,やはり竹木の枝の切除と同じように,共有の場合ですね,導管設置についての承諾について,変更行為なのか管理行為なのかという問題があろうかと思うんですが,やはりそこは度外視して,過半数でいいんだという割り切りの御提案という趣旨なんでしょうかと。というのは,導管,埋めちゃえば表面からは見えないけれども,やはり性質としては変更行為なのではないかと。なので,過半数というのは筋としておかしいのではないかという意見がありましたので,その部分についての確認をさせていただきたいということです。
      それから,提案には書かれていないんですけれども,導管が設置されているということについて,何らかの公示方法が必要なのではないかという意見がありました。これは,公示方法なくても,対抗力は何人にでも対抗できるという意味での提案なんでしょうかという質問を含むと思うんですが,例えば,導管を設置した方の土地が,将来売却などされて,買受人がそこに埋まっているのを知らないという場合が想定されるんですけれども,そういった場合の調整についてはどうするのかと,公示方法がなくても,隣地の導管を使用している側の権利が,常に優先するという考え方に立っておられるのかということを聞きたいという点です。
      おおむね以上です。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      橋本幹事におかれて,弁護士会の御意見を取りまとめいただき,御意見をおっしゃっていただいた点も多々ありました。それから,確認のためのお尋ねというおっしゃり方でしたけれども,大体3点だったでしょうか,共有されている竹木の扱いについての疑義,それから,関係する土地が共有である場合の導管設置権の規律の在り方についての疑問,それから,同じく導管設置権,導管等使用権についての,第三者対抗可能性と呼んでもいいようなお話の関連の確認のお尋ねでした。
      これら3点を中心にして,事務当局からお話しください。
    ○小田関係官 関係官の小田でございます。
      まず,1点目の竹木の枝の議論でございますけれども,こちらは,従前,変更行為だったり管理行為の議論させていただいておりましたが,今回は,その議論とは関係なく,共有者の1人の者に対して枝を切り取らせるという規律を設けるということを提案しております。ですので,変更行為か管理行為かという話は,ここでは直接的には関係ないということになろうかと思います。
      導管の方の共有についてでございますけれども,こちらは,承諾をする側が,本来変更行為に当たる行為であっても,この特殊性といいますか,導管設置の必要性であったり,他の土地等を使わせる義務を負っているという特殊性から,一律に過半数で足りるというような整理ができないかというところで,提案させていただいております。
      今までの従来の議論であれば,変更行為に当たり得る行為であっても,一律に過半数で足りるというところを提案させていただいております。従来の議論からは変更行為の枠に入ってくるものも,ここでは過半数でできるというところを提案させていただいておりますので,そのような理解で御議論していただければと思っております。
      最後に,導管の公示について御意見を賜りました。どのように公示するのかというところが難しいところかと思うんですけれども,我々の考えとしては,相隣関係の権利として,発生したものに関しては,次の所有者についても引き継がれるというところで考えております。ここについては,そういう権利があるものとして,その土地を買う方が調べていただく,あるいはその周りの土地を買う方が調べていただくということになるのではないかと思っております。
    ○山野目部会長 橋本幹事におかれて,ただいま小田関係官から案内を差し上げた内容を,弁護士会の先生方にお伝えいただければよろしいと考えます。
      最後に話題になった点につきましては,改めて考えてみますと,小田関係官も今述べたように,従来の他の相隣関係上の権利,典型的なものは,公道に至るための通行権でありますけれども,あれは登記の対象になっておらず,小田関係官が述べたように,登記されていなくても,特定承継人に対して追及するといいますか,拘束が及ぶという前提で,あとは,例えば,売買当事者間では権利の不適合があったものとして,民法565条が定める,売主の契約不適合責任の問題として処理してもらうという発想で運用してきたものでありましょう。
      今,導管について何かそこについて特別の規律を講じますと,通行権の方についても何かしなければならないという話になってきそうでもあります。いろいろ波及する問題も含めて考えていかなければいけないというような状況を,お伝えいただければ有り難いと感じます。
      何か補足しておっしゃられることはおありでしょうか。
    ○橋本幹事 今の説明,そういう説明だろうと予想しておりました。それを含めて,方向性としては,大きな反対論はありませんでしたということです。
    ○山野目部会長 どうもありがとうございました。
    ○潮見委員 先ほど弁護士会の発言がございましたから,1ページ目の点について,やはりどうしても言っておきたいと思いまして,発言をさせていただこうと思った次第です。
      弁護士会の御意見,1ページ目の点で,占有者がよいということで御発言になりました。当面する問題の処理として,それが最適であるということであるならば,私はそれに,あえて反対するつもりはありません。
      ただ,理屈っぽい話ですけれども,相隣関係というルールという制度は,基本的に所有権同士が衝突する中で,一方の所有権が他方の所有権のために制約を受けると。他方の所有権を一方の所有権のために拡張するという枠組みで制度が作り上げられてきたというように理解をしておりますし,その基本は,今でも私は変わっていないと思っております。
      そういう意味では,ここの1ページ目で提案されている内容での隣地使用権についても,相隣関係という制度の枠の中で考えるということからすれば,隣地の使用によって所有権が制約を受けるという観点から,所有権の制約が必要か否かとか,その要件はどうなるのか,また他方,その隣地を使用する側の所有権の拡張という必要があるのか,あるいは,その要件は何かという観点から比較考慮をするべきであって,この問題を占有レベルでの調整という形で考えるべきではないし,理論からいったら,そうならざるを得ないというように思います。
      先ほど申し上げましたように,当面する問題の処理として,占有者ということを相手にして承諾を求めればよいということであるのならば,こだわりません。新しい制度をここで作るんだと割り切るしかないとは思いますけれども,従前の伝統的な相隣関係という枠から考えますと,基本はやはり,相手方は所有権者であり,さらに,少し進めて所有者から土地の占有権限を与えられた者というように捉えていくというのが,理論としては筋ではないかと思います。さらに,それを崩して占有者まで広げるのが適切かという観点から,考えていくべきではないのかと思いました。
      そういうこともありまして,弁護士会がおっしゃった考え方には賛成できないということを,最後にお話ししたいと思います。
    ○今川委員 まず,第1の①のただし書については,橋本幹事がおっしゃった弁護士さんの考えと同じ意見で,逆の効果が発生するので,単に削除するだけでいいのではないかという意見があります。
      それから,これも,橋本幹事が質問されて,当局の方で回答いただいた件ですが,越境した枝の切除について,その共有者,数人の共有に属する場合ですけれども,14回会議では,部会資料32では,変更行為に該当するから全員の同意を要するという意見もあったという記載があって,また,部会の席上で,保存行為と位置付けてもいいのではないかという意見もありました。今回,そこは全く考えずというか,関係なく,1人に対して請求できるという規律ですという回答を頂いたのですが,共有物について,単独でできるのか,過半数でやらなければいけないのか,全員の同意が要るのかということは,できる限り明確にしていこうという要請があるので,今回もこのような規律を設けるのであれば,枝の切除は保存行為として捉えているということを,やはり積極的にというか,あえてはっきりとさせておいた方がいいのではないかという意見が,我々の中にありました。
    ○山野目部会長 司法書士会の御意見を承りました。ありがとうございます。
      松尾幹事,どうぞ。
    ○松尾幹事 ありがとうございます。
      まず,部会資料46の1ページ,第1,隣地使用のための①承諾請求および②催告の相手方につきましては,先ほどの潮見委員の意見に賛成です。この隣地使用のために承諾請求や催告をするということが,一つの権原の取得という意味を持つのであれば,その相手方はやはり既存の権原を持っている者であることが,土地所有権の効力を調整する相隣関係法理の趣旨に相応しいと思います。確かに,占有者に対する承諾請求や催告で足りると法律で定めればよいといえないことはないですが,承諾請求や催告の意味は,部会資料46の2ページ,下から2段落目で言及されている,占有訴権を発動させないための要件とは異なるもので,占有訴権レベルの問題ではなく,権原付与の問題であるということは,明確にしておく必要があるのではないかと考えます。
      それから,もう1点,部会資料46の1ページ,第1の③では,承諾請求や催告をしなくても,①の目的の範囲内で隣地の利用ができる要件として,著しい損害又は急迫の危険を避けるためという新たな要件が設けられました。前回14回会議の部会資料32では,所有者の特定不能又は所在不明というのが要件として挙がっていて,隣地使用権の場合には公告をして,枝の切除の場合には公告を要することなく,隣地の使用や越境した枝の切除を認めるという構成になっていました。その要件に代えて,著しい損害又は急迫の危険,急迫の危険は既にありましたけれども,これらの要件が,所有者不明の要件の代わりに入っているという特徴があるように思います。
      この変更の経緯について,御説明を伺いたいと思います。
    ○山野目部会長 二つおしゃっていただいたうちの後ろは,お尋ねでした。隣地所有者が不明であるようなケースについて,前回部会資料用32までと,その点に関して見ると,異なる規律の提案がされている経緯を教えてほしいというお話でした。
      経緯のお尋ねですから,事務当局の方から差し上げます。
    ○小田関係官 御質問ありがとうございます。
      所在不明又は所有者不明の場合の特則といいますか,規律を今回提案から落とす形になっておりますけれども,当初,その規律を置いていた趣旨といいますか,困っている場面というのをよく考えてみると,平時の場面と緊急時とに分けて考えることができるのではないかなと考えておりまして,平時の方は,②の規律で公示による意思表示を使うことで,裁判所の手続も介すということで,適切にやっていくということができるのではないかと,緊急時の方は,従前急迫の特則を提案しておりましたけれども,そちらの規律で対応できるのではないかというところで,所有者不明の特則を落としたという経緯でございます。
      この③の著しい損害というところなんですけれども,必ずしも所有者不明の特則を落とすことのバーターとして入れたという趣旨ではございませんで,民事保全法の要件と同程度の要件がなければ,隣地使用をしてはいけないのではないかという価値判断で入れたものでございます。結果として,著しい損害というところが,所有者不明と絡むところとして補足説明で書かせていただいておりますけれども,経緯はそのようなものでございます。
    ○山野目部会長 松尾幹事におかれては,いかがでしょうか。
    ○松尾幹事 はい,分かりました。
      ということであると,従来の所有者不明の場合に対応するというのは,むしろ②の方で,催告して確答がない場合というところで,むしろ対応するということになるでしょうか。
    ○小田関係官 そのような理解でおります。
    ○山野目部会長 よろしゅうございますか。
    ○松尾幹事 はい,分かりました。
    ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。
    ○藤野委員 ありがとうございます。
      まず第1なんですが,理論上の観点からのお話をいろいろ頂いている中では,非常に発言しづらいところではあるんですが,やはりここは,実務的な観点で申し上げますと,承諾を求める対象は隣地の占有者のみにしていただかないと,なかなかちょっと厳しいかなというところはございます。この隣地使用権で認められる使用類型の所有権に対する制約というのが限られたものに過ぎない,であるとか,ちょっとそういった理屈付けで何とか実務上のニーズに即したものにしていただけないものかというところで,引き続き占有者のみを対象とするという案を支持したいというところでございます。
      あと,先ほど御指摘のあった第1の③につきましても,この要件を満たした場合に承諾なく隣地使用ができる場合というのを一定の範囲で用意しておいていただくということが,やはりいざというときには必要なのではないかというところがございますので,こちらについても賛成の意見を述べさせていただければと思います。
      越境した枝の切除に関しては,先ほどから御指摘が出ておりますとおり,共有者の1人に枝を切除させることができるという点に関しては賛成でございまして,他の点についても,特段異論ございません。あと,導管等設置権に関しましても,今,本文に書いていただいている内容に関しては,基本的に賛成できるということを申し上げたいと思います。
    ○山野目部会長 少しここのところで議事の整理を差し上げます。
      隣地使用権の行使に当たって,コミュニケーションの相手方として選ぶ者が,所有者であるか,占有者であるかという議論につきましては,潮見委員及び松尾幹事から,相隣関係の規律の本質に照らすと,所有権相互の調整であるから,所有者であるべきだろうという御意見を頂きました。藤野委員からは,実務上の観点から,占有者であってほしいという御意見を頂きました。
      恐らく,その占有者であるという選択にする際は,相隣関係に関する規律の209条の趣旨としては,客観的要件を満たせば,所有者は隣地に立ち入ってよいものでありますということになるでしょう。ただし,その手順として,そこに現に使用している者がある場合において,その人とのコミュニケーションは,言わば政策的に求められることになりますという説明になるものであろうと考えられます。理論的にはそういうお話になりますが,そのような施策の採用がよいかどうかは,ただいま御発言いただいたようなもろもろの観点を踏まえて,議論が続けられなければなりません。
      なお,関連して申し上げますと,所有者か占有者かといいますが,これ,所有者が自ら賃貸借契約の賃貸人になって,賃借人に使わせているときには,所有者は間接占有を有していますから,占有者の承諾を得ればよいと言ってみても,間接占有者が含まれるならば,結局は所有者である人の承諾も得なければならないことになってしまうものであり,何かこの部会資料が所有者ですか,占有者ですか,どちらですかと,畳みかけるように尋ねますが,その問い自体をひょっとしたら問い直さなければならないものであるかもしれません。
      引き続き,國吉委員からの御発言を承ります。
    ○國吉委員 第1の隣地使用権のところで,ちょっと意見を述べさせていただきます。
      まず,先ほども幾つかの幹事,委員からありましたけれども,第1①のただし書の部分です。住家への立入りについては,私どもの経験値から,境界標の探索のために,どうしても隣家ですね,住宅に入らせていただくという場面があるということを,御紹介して協議を頂いたところですけれども,ただ,このプライバシーですとか強要的なものが含まれてしまうのでということで,現行法上でも,当然ながら通常の隣人同士の間柄であれば,おのずと承諾を得られるということですので,現行法を基本に維持するということであるんであれば,このただし書の部分については,できれば削除を頂きたいというのが意見でございます。
      それから,隣地使用権の相手方ですけれども,ここに書いてありますa,b,cの目的を達成するためには,どうしても最終的には隣地の所有者の承諾なり確認なりが必要ということになります。そのときに,占有者だけにその目的を説明するかというと,通常であれば,当たり前のように所有者自身に隣地を使用する目的を説明するというのが,現実的というか,実務上もそうだと思います。そのときに,実際にこういった境界標の近くに構築物を造ったり,測量のために入るというには,やはり占有者,実際にそこに,その土地なり建物を利用している方に,やはり承諾を得るというのが通常の業務だと思います。となると,やはり,ここであります隣地の占有者という方に,隣地使用を求めるというのが一番というか,合理的なのではないかなと思います。
      ただ,その使用する目的については,あらかじめ所有者には説明をしておくというのが,実務の取扱いになると思いますので,その辺の所有者なのか占有者なのかってありましたけれども,先ほど部会長の方からもありましたけれども,実質的には占有者という表現でいいのではないかと思っております。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      國吉委員が前段でおっしゃった①のただし書のことでございますけれども,國吉委員のみではなくて,先ほどから伺っていると,このただし書の部会資料が提示している文言は,非常に評判が悪うございます。
      確認ですが,私の理解するところでは,委員,幹事の間で,この住家への立入りの関係でのルールの実質的内容についての意見の対立は恐らくないものであろうと感じます。これを規律として表現していくときに,その波及効果であるとか,誤解を出来するおそれであるとかの御心配の観点から,いろいろ御指摘を頂いたと理解しております。もし誤っていれば,御指摘を頂きたいと望みますが,もしルールの実質についての御意見のコンセンサスが見られるのであれば,あとは,法制上,誤解のないような,無理のないような法文に整えていくという作業を,今日頂いた御意見を踏まえて,また整理をして,次の機会に御相談を差し上げるということにいたします。ありがとうございました。
      道垣内委員,大変お待たせをいたしました。どうぞ,御発言ください。
    ○道垣内委員 申し上げたいことは二つあって,その前者として申し上げたいことは,実は,山野目さんがおっしゃってしまったので,あんまり申し上げなくていいのですけれども,どういうことかと申しますと,第1の①の所有者プラス占有者か,占有者かという問題について,所有権の調整の問題であるから所有者も入るよねという話に関して,それでも占有者だけにするという論理はあり得ないのかというと,僕はどちらがいいというのではなくて,あり得ないのかというと,あり得るのだと思います。山野目さんがおっしゃるように,実態的な要件が満たされれば,片方の所有権はへこむというか,制約されるのだが,しかしながら,それを自力救済で勝手にやるというのはいけなくて,平穏が乱される人に対して承諾を得るという手続が必要なのであって,所有権の調整の問題自体は,既に実態的な要件の具備によって,ある種結論が出ていると説明するのかなと思います。実質論として,所有者のオーケーを取った方がいいのではないかという気は,私はするのですが,理屈上立たないかというと,立つのかなという気がします。
     もっとも,同じく山野目さんがちょっとおっしゃったことが,本当かという気がしたものですから,ちょっと一言申し上げます。
      非常に今日の話の中心でないところで恐縮なのですけれども,山野目さんは,公道に至る通行権の話をされまして,それが発生していると,次の人にも受け継がれるとおっしゃったんですが,それって,やはり要件が満たされていれば,公道に至る通行権というのは当然に発生するから,本来的には,継承といいますか,そういう問題ではないのではないかと思うのです。つまり,新所有者が出てきたときに新たに判断しても,同じ結論が出て,同じような通行権が認められるはずだということなのではないかなという気がするわけであって,そうしますと,山野目さんがおっしゃったことで何が気になったかというと,担保責任を売主は負い得ると,そういう通行権があるというようなことであったならば,その土地の通行権が存在している,存在というのは,通行権の負担のある土地の売主の場合に,そういう担保責任を負うことがあるとおっしゃったのですが,そうなのかなと。通行権が仮にその時点でないというか,通行されていなくたって,客観的にはそれ,発生し得る,発生というか,存在しているものなのだから,別に担保責任の問題は生じないのではないかなという気がしたというのが,非常に細かい点なのですが,1点目です。
      2点目は,竹木の共有の話ですが,これも,共有物であろうが,その所有者である限りにおいて,その人に対して,どかせと多分言えるんだろうと思うんですね。それは,共有の石が上から落ちてきたとしても,共有の自転車が放置されているとしても,共有者の1人に対してそういう請求はできるのだろうと思います。そして,請求をして,その上で,相手方にはそういう義務があるわけですが,それを一定の要件が満たされれば,自力救済で切ってもよいという,それだけの話であって,保存行為とか処分行為だとかという問題とは,直接には結びつかない問題なのではないかなという気が,私はいたします。これも,私が是非共有者の1人でいいとすべきであると主張しているというわけではなくて,保存か処分かという話ではないよねという感じがするという,そういう話でございます。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      道垣内委員から,細かく見ると,三つの話題をおっしゃっていただきました。
      1点目,隣地立入権のコミュニケーションの相手方として,所有者とするか,占有者とするかという問題につきまして,相隣関係の本質との関係の議論を整理していただきました。一つ前に,私が何かぼそぼそと申し上げたことと同じ内容のことを極めて明快に整理を頂くことができました。
      2点目でありますけれども,公道に至るための通行権の目的になっている土地について,特定承継が起きた場合の扱いについても,明快な整理をしていただきました。先ほど私が565条の規定による売主の契約不適合責任の問題でしょうというお話を申し上げたことについても,御注意を頂きました。なるほど,本当か,というお叱りを受けると,そのとおりですね。不調法をいたしました。御注意を踏まえて,改めて申し上げれば,通行権なんてないよということが,当該個別の契約において,565条が参照する562条にいう契約の内容になっていれば,契約不適合責任が発生することがあるかもしれないという程度の話でありまして,先ほどの申し上げようは不正確でございました。
      それから,3点目は,共有竹木について,1人の人とコミュニケーションを取れば足りるという規律の提案そのものについて,本日の部会の中で意見の険しいそごがあるとは見えませんけれども,今川委員から保存行為であるという性格付けを明らかにしてほしいというお話を頂いたのに対して,道垣内委員から,いやいや,必ずしもそういう議論にならないのではないかというお話を頂きました。
      いずれの発想もごもっともなものでありまして,今川委員も恐らく,これを保存行為とすると法文に書けという趣旨ではないだろうと考えますから,道垣内委員に御注意を頂いたように,保存行為そのものであるというよりは,1人とコミュニケーションをすれば,話を進めることができるという趣旨の解決を採っていこうという方向を確認した上で,どのくらいの丁寧さで事に当たらなければいけないかは,レベルは保存行為と同じだよねということであり,ただし,それを保存行為と言ってしまうということについては理論上問題がありますという,道垣内委員のお話は,そのとおりではないかと感じます。
      都合3点,ありがとうございました。
      引き続き御意見を承ります。
      畑幹事,どうぞ。
    ○畑幹事 ありがとうございます。
      今の竹木の共有なのですが,結論的には,ここに書いてあるようなことでいいのかもしれないとは思うのですが,理論的な説明というのは,やはりなかなか考える必要があるのかなと思います。②の自力救済的なところは,実体法的な規律としてこういうこともありうるのかなと思いますし,①の方もこういう規律はありうるのかなとは思うのですが,6ページの説明のところですと,共有者の1人に対して,竹木のために訴訟は実際にはしないかもしれませんが,債務名義を取得して,それによって強制執行もできる,ほかの共有者は邪魔できないということになっているのですが,一般的にはそういうことはあまりないのではないか,共有物について,共有者の1人を被告として訴えて,それで,ほかの人が何を言おうが強制執行できるという事態は,一般的には余りないのではないかと思われますので,ある種政策論としてこういう規律が望ましいということであれば,何か理論的な説明というのは,大分考える必要があるのではないか。
      皆さん御存じのように,共有が絡む場合の訴訟というのは難問の一つで,私も確たることを申し上げられないのですが,理論的にはちょっと難しい問題を残すのではないかと思われます。実際には,自力救済の方で処理されるのではないかとは思いますが,理論的にはちょっと問題が残るかなという感じはいたしました。
    ○山野目部会長 畑幹事の共有関係訴訟の処理の難しさに関わる御指摘は理解いたしました。事務当局において,更に検討いたします。ありがとうございます。
    ○中田委員 3点ございます。順番は,今の畑幹事の御指摘のところから始めます。
      ここでの問題は,所有者が,竹木の共有者に対して何が請求できるかということと,それから,竹木の共有者の1人が何ができるかという問題とが混在していて,その整理が必要ではないかと思います。所有者が竹木共有者の1人に請求できるというのは,多分,最終的には代替執行になるだろうから,問題ないのではないかというようなイメージがあるのではないかと思うのですけれども,そのことと,所有者が請求すれば,共有者のうちの1人が切除できるという権能を取得するということは,別の問題だろうと。そこが交じっているので,分かりにくくなっているのではないかと思いました。
      それから,2点目は,①のただし書,住家の立入りについての承諾を求めることはできないという書き方について,様々な御指摘があったわけですが,その御指摘は理解できるんですけれども,恐らくこれは,現在の209条1項本文,使用請求というのを承諾請求にした上で,第1の②,③という例外を設けていくという立て付けにして,その上で,現在の209条1項ただし書をどのように表現するかということと絡んでいるのだろうと思います。ですから,全体として,209条の規律をどのように設けるかということを併せて考えると,表現の問題なのかなと感じました。それは恐らく,最初の頃に藤野委員がおっしゃったこととも関係しているのだと思います。
      それから3点目は,導管の点なんですけれども,前回の御提案のときから,他の土地に囲まれているということは要件としないということになりました。そこで,甲という土地が,継続的給付を受けるために導管を設置する必要があるというときに,それが乙という土地を使っても,丙という土地を使っても,どちらでも可能であるというときに,かつ,乙と丙の所有者が違う場合に,どちらになるのかという問題があると思います。
      民法211条と同じような規律が,7ページにあります第3の1の④にあるわけですけれども,民法211条の場合には,囲んでいる土地の通行権があるということを前提にして,その中での通行の場所や方法の制限になると思うんですけれども,導管等については,囲んでいるという要件がないものですから,どの土地になるのかという,その前の問題がより多く出てくると思うんですね。その点が,7ページの第3の1の④で十分に表されているのかどうかということは,なお検討する必要があるのではないかと思います。
      前回も211条との関係の発言をして,今申し上げた趣旨のつもりだったんですけれども,少し言葉が足りませんでしたので,改めて申し上げたいと思います。
    ○山野目部会長 中田委員から,御自身で整理いただいたとおり,3点についての御案内を頂きまして,いずれも誠にありがとうございます。
      1点目の共有竹木の関係は,御指摘のとおりでありまして,1人の人とコミュニケーションを取れば,隣地所有者が何かをすることができるというルールといいますか,理解でいくからといって,たまたまコミュニケーションの相手方となったその1人が,それについて何でもできるという権能を生ずるというふうなことを始めとして,論理が飛躍していくことは困るから,よく論理を整理してくださいという御要望でありました。
      2点目は,隣地立入権の際の話題となっているただし書を含む文言の整理について,部会の中における意見の実質を見ながら,さらに,表現の問題と中田委員はおっしゃっいましたけれども,整えてくださいという御要望も承りました。
      3点目といたしまして,導管の設置,使用との関係で,211条並びの文言の提案を,現在は差し上げております。しかし,公道に至るための通行権と事情が異なる点は,取り分け第12回会議で全国宅地建物取引業協会連合会から出された意見などで代表されるように,実際の現場を考えますと,他の土地に囲まれている土地ということを要件とすると,いろいろ実情に適しない問題が出てくるという指摘があったところを踏まえて,導管に関しては,そのような要件を課していません。そのことから,中田委員が御指摘のとおり,単に211条並びの考慮要素を挙げることでは足りず,一言で言えば,土地の選択に関わる問題があるということを分かる規律表現にしていかなければならないということでありまして,それは,前回審議をした際の中田委員の御指摘を,私及び事務当局において正当に漏れなく承っていなかった憾みがあるかもしれません。
      ただいまの御指摘を踏まえて,更に検討してまいりたいと考えます。どうもありがとうございました。
      垣内幹事,お願いいたします。
    ○垣内幹事 ありがとうございます。
      直前に,畑幹事,中田委員が発言された点と重なる部分がありますけれども,5ページから6ページにかけての枝の切除に関する点ですけれども,先ほど来御発言がありますように,共有者の1人に対して枝の切除を求めることができる,させることができるという,ですから,1人を,例えば,被告として訴えを提起したときに,請求が認容されるということと,強制執行について,他の共有者の同意なくすることができるかどうかということとは,一応別の問題なのかなという感じがいたしますので,それぞれについて求めることができるということが第1段階としてあり,さらに,6ページのところの説明のように,同意が不要であるという規律まで引けるというためには,もう一段階何か説明をしていく必要と申しますか,その根拠を考える必要があるのかなという感想を持ちました。
    ○山野目部会長 どうもありがとうございました。
      先ほどの畑幹事の御指摘と併せて,取り分け垣内幹事が強調されたように,強制執行段階の手順のことも描いてみて,検討を更に皆さんにお願いしてまいりたいと考えます。
      佐保委員,どうぞ。
    ○佐保委員 ありがとうございます。
      隣地使用権の見直しの考え方については,特に異論ありませんけれども,その一方で,隣地所有者の権利保護については,一定程度の配慮が必要ではないかと考えます。隣地の所有者に対する説明といった一定の配慮があるべきと考えております。
    ○山野目部会長 どうもありがとうございます。
      所有者とか占有者とか言いますけれども,國吉委員もお話になったように,現場をまろやかに進めるためには,思い付く人みんなのコンセンサスを得た方がよいというアドバイスは,もとよりごもっともであると承ります。
      中村委員,どうぞ。
    ○中村委員 ありがとうございます。
      1ページ目の第1の③,それから第2の②のcの要件を,従前の急迫の事情から,著しい損害又は急迫の危険に変えての御提案の趣旨は理解できました。
     また,従来ですと,民事保全法に基づく仮処分命令を取ってしなければならなかったことを,1ページ目の①のa,b,cの目的が限定された場面において,著しい損害又は急迫の危険がある場合には,承諾なくできるということにするということについての必要性なども理解できました。その上で①のa,b,cを見てみますと,cですと,資格のある測量士さんが必要最小限のことをされるのでしょうから,それほど大きな侵襲があるとは思わないのですけれども,bですと,規模によっては,枝を運び出すためのトラックが入ったりとか,aですと,もしかしたら重機が入ったりとかというようなことも想定されるかと思います。
      そこで,この隣地使用権で承諾を得ることなく入るような場合に,7ページの導管等設置権の④の3行目にあるような,隣地のために「損害が最も少ないものを選ばなければならない。」というような定めを入れてもいいかもしれないという気がいたしました。
    ○山野目部会長 中村委員にお尋ねですが,目的のために必要な範囲内で,では,心もとないというお話ですかね。
    ○中村委員 目的のために必要な範囲内というのは,行為者の側から見た要件ですが,踏み込まれる側のといいますか,隣地の人からするとということですね。
    ○山野目部会長 踏み込まれる側の要素になっていない,なるほど。御意見の趣旨はよく分かりました。検討いたします。
      ほかにいかがでしょうか。
      大体部会資料46の相隣関係規定について,御意見を承ったと受け止めてよろしゅうございましょうか。
      それでは,引き続き部会資料47についての審議をお願いいたします。
      部会資料47をお取り上げください。
      共有関係の見直し,その中でも,通常の共有関係の解消方法について,御相談を差し上げます。
      「第1 裁判による共有物分割」,これのみをお諮りするものであります。
      部会資料37を第16回会議にお示ししておりましたが,その方向を基本的に維持して御案内を差し上げているものであります。見かけが異なっている点は,部会資料47,1ページ目の第1②のイの,いわゆる全面的価格賠償に関わる事柄についての表現についての調整,見直しをした上でお諮りをしておりますけれども,部会資料37で御案内した内容,基本趣旨の本質を変更するものではございません。
      それでは,この部会資料47について,御意見を承ります。中村委員,どうぞ。
    ○中村委員 ありがとうございます。
      今回の御提案については,日弁連のワーキンググループは賛成が多数でございました。
      その上で,よりよくするためにというようなことで意見が出ておりましたので,御紹介したいと思います。
      まず,前回,第16回の議論の際に,平成8年の最高裁判例の判断要素を明文化できないかという意見があるということをお伝えしたのですけれども,今回の資料では,それを御検討いただいた上で明文化は難しいという記載になっております。
      これに対して,日弁連の方では,最高裁が示している判断要素は,実務上重要な意味があって,当事者の主張の指針になるものなので,全て盛り込むのは難しくても,例示でもよいから示すことはできないか,また,部会資料の2ページの2行目後半から示されている懸念というのは,記載の仕方の工夫によっては払拭できるのではないかという意見が上がっておりましたので,まず1点目として御紹介いたします。
      それから2点目ですけれども,本文の②のアとイの記載ですが,これは,最高裁の昭和62年4月22日判決の分類に基づくものと承知しておりますけれども,法律知識のない人にとっては,部分的な価格賠償がアに含まれると読み取ることは難しいかもしれないと思います。法文上,選択肢が明記されるように工夫ができないかという指摘がありましたので,御紹介いたします。
    ○山野目部会長 弁護士会の意見をお取りまとめになり,御紹介いただきまして,ありがとうございます。
      藤野委員,どうぞ。
    ○藤野委員 ありがとうございます。
      今回出していただいている提案なんですが,やはり先ほど御指摘あったとおり,②のア,イのところの表現ですね,こちらの方は,非常にフラットな形で表現されていまして,本来の趣旨がより伝わるのではないかと思っております。
      内容的には,もうこれでいいかなと思わないこともないのですが,やはりいろいろ,事業者の実務的な見地からの意見を聞いてまいりますと,要件の明確化といいますか,予測可能性,要は,共有物分割請求をかけたときに,確実に賠償分割という結論を得たい場合にそれが得られるような要件化ができないのか,こういうときに賠償分割を請求すれば認められるというような要件,あるいは指針のようなものを何か書き込むことはできないのかという意見は出ております。
      もちろん難しいのは重々承知しておりますが,最高裁判例の要件の中でも,共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当である,と認められる場合というのがどういうときなのかというところが,実務者としてはすごく気になっているところではございますので,先ほど中村委員がおっしゃったような,例示で要件を明記していただくという案もございますし,あるいは,もっと何か違う形で,できることはあるのではないかと思っています。今までは純粋に,まず現物分割ありき,特段の事情があれば賠償分割ということで進められていたことが多かったと思うのですが,今後,土地の細分化により管理が困難になることを防ぐという観点からも,賠償分割をより積極的に活用していくという考え方もあるのかなと思いますので,ちょっとその辺を,より当事者予測可能性が立つような形で何か作っていただけると,これ,条文に入れてくださいというお願いなのか,それ以外のところの話になるのかというところはあると思うんですけれども,一応要望としては,そのようなところでございます。
    ○山野目部会長 藤野委員におかれては,経済界の様々な御意見をお届けいただきましてありがとうございました。
      中村委員と藤野委員から共通に,やはりこの②のイを中心とする部分につきまして,平成8年10月31日の最高裁判所判例が示す要件に関わって,簡単に言うと,簡単過ぎる書き方になっているから,もう少し規律文言の詳細性を高めることができないかという方向からお話を頂いたものであって,それぞれごもっともであると感ずるとともに,お話を承っているところの直感で言うと,もっとここ,文言を豊かにして明確化してほしいとおっしゃっているお二人の,しかし,考えていることの中身は異なるというか,ひょっとすると正反対だったりするかもしれません。弁護士実務の観点から明確にしてほしいと述べられる姿と,経済界が明確にしてほしいお考えになっている姿は,一致しないかもしれませんね。また,それが,ここの文言を豊かにしていこうとすることの努力にとっては,かなり困難な事情の一つなのかもしれません。
      しかし,今のお二人の御意見を承って,更に検討してまいります。沖野委員,どうぞ。
    ○沖野委員 ありがとうございます。
      2点申し上げたいと思います。
      まず,基本的にこの形でお願いできればと思います。特に②の書き方については,前の資料からこのような形に変更していただいたのは,よいことではないかと思っております。その上でですけれども,一点目として,今も言及のありました考慮要素について,2ページの冒頭のところに二つの問題点が書かれています。一つは,明文化するにしても,適切に,それなりに網羅的に判断要素を挙げることができるのかということ,2つ目として,賠償分割についてのみ判断要素を挙げることによって,これがあたかも劣後的な方法であるというようなインプリケーションを意に反して与えないかという,二つの問題が挙げられております。
      ただ,判断要素を明文化するということについては,ある程度具体的なものを挙げた上で,一切の事情というような形で受けるということは,あり得るのではないかと思っております。
      それから,二つの方法の間の優先劣後のインプリケーションにならないかという点については,一つのアイデアですけれども,両者を包含するような形で,適切な方法を選び取るための判断要素を挙げることができないかと考えております。このことは,実は1つ目の点目にも関わります。
      2点目は,③についてです。②をこのような形で,かつ,判断要素を全く挙げないで③を書いたときに,現在の258条2項というのは,現物分割を想定して,それができない場合,又は価格を著しく減少させるおそれがある場合という限界を付けて,競売を命ずるという形になっておりますけれども,価格賠償の方法による分割というのを入れた場合に,現在,258条2項に挙げられているこの二つの場合というのが,うまく当てはまるのかということです。②に掲げる方法ということですから,②のイも含んでいると思われますけれども,支払資力面で問題があり相当でない場合などが②のイによるのではできないといえるのか,恐らく不相当であるという場合もできないに含むということなのかと思いますけれども,単独の所有にする,あるいは一部の人の所有にしてしまって,あとは金銭的な解決によるというやり方の場合の限界付けが,果たして③の二つの場合で受けられるんだろうかということが気になりました。
      そこで,二つお話なのですけれども,一つは,もし判断要素などを挙げるということが可能であるとしますと,現物分割の③に挙げられているようなものも含めて,裁判所による選択の一つの考慮の在り方なりガイドラインを示すというのが,一つは考えられるように思います。例えばですけれども,②で方法を二つ示し,「その場合において,裁判所は共有物の現物の分割の可否,共有物の現物の分割による共有物の価額の棄損のおそれ,共有物の利用の経緯及び状況,各共有者が共有物を必要とする事情,価格償還債務を負担することとなる共有者の支払資力,その他共有物,あるいは及び共有者に関する一切の事情を考慮して,共有者間の公平の確保の観点から,相当な方法を選択することができる」と,例えば,そういった形で判断要素なり,その特に重要なものを挙げることができないかというのが,一つ目です。
      二つ目としましては,それがやはり難しいという場合,③の限界の場合というか,そこに,取り分けイの方法によるときの限界なりを入れなくていいだろうか,したがって,現物,現物とは書いていないのですが,分割ができない場合,それから価格を著しく減少させる恐れがある場合と並んで,例えば,共有者間の公平を害する場合とか害するおそれが高い場合とか,そういったようなものを挙げるということも考えられるように思いました。
      ちょっと長くなって恐縮ですが,以上です。
    ○山野目部会長 沖野委員から,種々の観点にわたる御意見を頂きました。
      前の方でおっしゃっていただいた②のイの規律の表現を,もう少し豊かな言葉を盛り込んで考えることができないかというお話につきまして,中村委員,藤野委員から御指摘,御提案があったことと併せて検討してまいらなければなりません。
      それから,沖野委員から新しく御指摘を頂いた新しい問題提起といたしまして,③の問題があります。これは,問題提起を頂いて大変有り難く感じます。なるほど,この258条の現行の文言を,そのままコピー・アンド・ペーストしてここに持ってくると,このたびは②のアのみならず,イも受けた上で,③のところにお話がいきますから,現在お示ししている③の文言のままでは具合が悪いと感じられます。
      沖野委員もおっしゃいましたけれども,例えば,②のイでいったときに,償金の支払の債務を負う者の資力に不安があって,イの方法が採れないといったような事例を③で受け止めることができる文言にはなっておりません。そういったことを踏まえて,解決の在り方を正確に伝達ができるような文言の改良を施さなければならないと感じました。
      いずれにしても,今,沖野委員におっしゃっていただいたようなことをヒントにして,検討を続けるということにいたします。どうもありがとうございます。
      ほかにいかがでしょうか。
      よろしゅうございますか。
      部会資料47につきましては,やはり②のア,イともですが,取り分けイについて,それから,関連して③の規律の表現について,やはりそれぞれ引き続き考えなければいけない問題があることがよく分かりましたから,事務当局において,よく議事を整理いたします。
      ほかに,特段部会資料47について御発言がおありではないでしょうか。
      よろしゅうございますか。
      それでは,共有物分割方法についての本日段階での審議はここまでにいたします。
      本日は,部会資料の数として,合わせて5点をお示しして審議をお願いし,委員,幹事の皆様には大変盛りだくさんの難しい審議をお願いさせていただきました。熱心な御審議の御協力のおかげをもちまして,五つの部会資料の全てについて,内容にわたる審議を了しました。
      次回会議につきまして,事務当局から案内を差し上げます。
    ○大谷幹事 本日もありがとうございました。
      次回の議事日程でございますけれども,3週間後,10月6日の火曜日になります。
      午後1時からスタートということを考えておりまして,場所はこちらの大会議室です。テーマは今のところ,いわゆる所有権の放棄を取り上げることを考えておりますが,そのほかの点について,どこまでできるかというところがございます。また少しこちらの方で検討いたしまして,終了時間については,改めて御連絡をするという形にしたいと思います。いつものように6時までということには限らず,もう少し早く終わるということもあり得ると思っております。
      次回の部会についても,ウェブで部会に出席していただくことも可能という形で開催をさせていただきます。
    ○山野目部会長 次回の第19回会議は,もしかしたらそれなりに早く終われるかもしれませんという御案内を差し上げようかとも一瞬考えたものでありますけれども,しかし,現実には,扱う議題の量とか質は重くなってくる可能性がありますから,早とちりなことは申し上げない方がいいとも感じ,ただいま大谷幹事から御案内を差し上げたようなことで,第19回会議を考えております。
      この際,委員,幹事から,第19回以降の部会の運営につきまして,お尋ねや御意見がありますれば承ります。いかがでしょうか。
      よろしゅうございましょうか。
      それでは,本日もお疲れさまでした。
      これをもちまして,民法・不動産登記法部会第18回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。
    -了-

  • 【資料62-2】民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案(案) についての補足説明

    第1部 民法等の見直し
    第1 相隣関係
    他の土地等の瑕疵に対する工事に関する新たな規律は、設けないこととする。
    (補足説明)
     現行法の解釈論においても、土地の所有者は、その所有権が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合には、自力救済は当然には認められないものの、物権的請求権を行使し、相手方に侵害を除去させることができ、あるいは自ら侵害を除去することができるのであり、そのこと自体には、この部会においても異論はなかったところである。
     要綱案(案)において、他の土地等の瑕疵に対する工事に関する規律の創設を見送ることとした理由は、部会資料59でも記載したとおり、これまで解釈論上認められてきた物権的請求権の範囲が不当に狭まることがないようにするなど物権的請求権の解釈や運用に悪影響を与えないようにしながら、その要件を適切に設定することが困難であったことなどにあるのであり、上記の現行法の物権的請求権の解釈論を否定する趣旨ではない。
     この部会で検討をしてきたような問題が生じているケースについては、引き続き、事案に応じた内容の物権的請求権を行使して対応することが可能であることを前提に、管理不全土地管理制度等が新設されることによって更に対応の選択肢が増えることとなるものと解される。

  • 【資料52】民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案のたたき台 (2)

    第1部 民法の見直し
    第1 相隣関係
    1 隣地使用権
    民法第209条の規律を次のように改めるものとする。
    ① 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、居住者の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
    ア 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
    イ 境界標の調査又は境界に関する測量
    ウ 後記2③の規律による枝の切取り
    ② ①の場合には、その使用方法は、隣地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
    ③ ①の規律により隣地を使用する者は、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を隣地を現に使用している者(④において「隣地使用者」という。)に通知しなければならない。
    ④ ①の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
    (補足説明)
    1 本文①に関する問題の所在
    第21回会議では、本文①のような規律を設けることについて種々の意見があったが、検討すべき問題としては、一定の要件を充たせば、承諾がなくとも権利があると認めるかどうかという問題と、権利がある場合にそれを実現する方法の問題の二つがあると思われる。なお、本文①ただし書の表現ぶりについても様々な意見があったが、法制上どのように整理できるかを引き続き検討する。
    2 検討
    (1) これまでの検討では、隣地使用権の原則的規律について「土地所有者は、隣地の使用の承諾を求めることができる」という表現をとってはいたものの、一定の目的のため必要な範囲内の使用であるという要件があり、隣地を使用する者等に一定の連絡をすれば、その者の承諾や承諾に代わる判決がなくとも、土地の所有者は隣地を使用することができることを認めること自体には、基本的に異論がなかったものと思われる。
    また、上記の連絡を受けた者は、上記の要件が充たされている場合には、土地の所有者による隣地の使用を拒むことができないこと自体も、基本的に異論がなかったものと思われる。
    このような、一定の要件が充たされる場合には、承諾がなくとも隣地を使用することができ、連絡を受けた者は土地の所有者による隣地の使用を拒むことができないことを素直に構成すれば、結局、一定の要件があれば、土地の所有者は、隣地を使用する権利を有していることになると思われる。
    (2) もっとも、隣地を使用する権利があると構成したとしても、上記のとおり、その実現方法をどのように考えるのかは別の問題である。
    一般的に、権利がある場合であっても、自力救済は原則として禁止されているが、ここで問題になっている隣地の使用の場面に即していえば、当該隣地を実際に使用している者がいる場合に、その者の同意なく、これを使用することは、その者の平穏な使用を害するため、違法な自力救済に該当することになるのではないかと思われる。
    例えば、土地の所有者が、住居として現に使用されている隣地について、隣地使用権を有しているからといって、隣地使用者の同意なく門扉を開けたり、塀を乗り越えたりして隣地に入っていくことまではできないと思われる(現行法の解釈として論じられているいわゆる請求権説・形成権説のいずれの立場に立っても、この点についての結論に変わりはないと考えられる。)。
    なお、この考え方は、権利の存在とその行使方法に関する一般的な理解と同様であって、本文①のような規律を設けたとしても、隣地使用権に限って、違法な自力救済を誘発するおそれがあるとは考えにくいように思われるし、本文③のとおりあらかじめ一定の内容の通知をする規律を設けることで、隣地使用権が濫用的に行使されることを防止することができるように思われる。
    また、隣地使用者が通知を受けても回答をしない場合には、黙示の同意をしたと認められる事情がない限り、隣地使用について同意しなかったものと推認され、土地の所有者としては、隣地使用権の確認や隣地使用の妨害の差止めを求めて裁判手続をとることになると考えられる。
    3 通知の相手方及び通知内容について
    事前の通知は、隣地使用権の行使要件として求められるものであり、通知なくして行われた隣地使用は違法になると考えられるが、第21回会議においては、通知の相手方について、隣地使用者だけでなく隣地所有者を対象とすると、現行法における実務よりも手続が加重されることになり妥当でない旨の意見があった。
    改めて検討すると、本文①のとおり、隣地使用権は、土地の所有者が一定の要件の下で隣地を使用することができるという内容のものであり、隣地所有者の隣地の使用収益権につき一定の制約を加える相隣関係上の権利であると位置付けられるが、そのことは、これまでの部会でも示唆があったとおり、土地の所有者を通知の相手方とすることと直結するものではないと解される。
    すなわち、隣地の所有者の権利を制約することができるかどうかは、基本的には一定の要件を充たすかどうかによって定まることとした上で、ここでいう通知は、土地の所有者との権利関係の調整のために求められるものではなく、隣地を使用している者の平穏な使用を保護する観点から要求されるものと理解し、その相手方は、隣地を現に使用する者のみとすることが考えられる。現行民法第209条の請求の相手方に関する議論において、土地の賃借人等を相手方とすべきとする有力な見解も同様の観点に立つものではないかと思われる。
    また、部会資料51(第1の1③ただし書)では、事前通知が困難である場合の例外の規律を提案していたが、通知の相手方を隣地を現に使用する者に限定した場合には、隣地を現に使用する者に事前に通知することは基本的に容易であるし、上記のとおりその者に無断で隣地を使用することは許されないと考えられるため、本文③では、そのような例外の規律は設けないこととした(隣地の使用者の所在等が不明なケースも問題となり得るように思われるが、そのようなケースはそもそも隣地を現に使用する者がいないと評価されるように思われる。)。なお、通知先を隣地を現に使用する者に限定すると、その者がない場合には、論理的には通知をする必要はないこととなるが、そのような場合でも、実際に使用者がいないかどうかを確認するためや、後日の紛争の防止の観点から、事実上、隣地所有者への通知がされることが多いと考えられる。
    さらに、第21回会議において、隣地を現に使用する者に対する通知の内容を明らかにすべきであるという意見があったことや、隣地を現に使用する者に立会いの機会を与え、無断で隣地が使用されることを防止する観点から、本文③において、本文①の規律に基づいて隣地を使用する旨に加えて、その日時及び場所を通知しなければならないこととしている。
    4 他の土地等の瑕疵に対する工事(いわゆる管理措置)
    他の土地等の瑕疵に対する工事に関して、次のような規律を設けるものとする。
    ① 土地の所有者は、他の土地又は他の土地の工作物若しくは竹木(②において「他の土地等」という。)に瑕疵がある場合において、その瑕疵により自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがあるときは、当該他の土地に立ち入り、損害の発生を防止するため必要な工事をすることができる。
    ② ①の規律により他の土地に立ち入り、損害の発生を防止するために必要な工事をしようとする者は、あらかじめ、その旨を他の土地等の所有者及び他の土地等を現に使用している者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ他の土地等の所有者に通知することが困難なときは、立入り又は工事を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
    (補足説明)
    第20回会議においては、部会資料49の甲案につき、現行法の物権的請求権や占有訴権における管理不全状態にある土地所有者の義務との関係で懸念を述べる意見もあったが、物権的請求権等とは別の相隣関係上の規律として、現行法上はその可否が明らかでない危険の生じた土地への立入りや工事を可能とする規律を設けること自体については賛成する意見が多数であったことから、本文①において、甲案と同様の規律を設けることとしている。
    第20回会議において、部会資料49の甲案の要件を限定すべきとの意見があったが、改めて検討すると、本文①は、現行法における土地所有権に基づく妨害排除請求権又は妨害予防請求権の要件と同程度の所有権侵害が必要であることを前提としているところ、更に要件を限定してしまうと、物権的請求権の行使の要件を満たす場合であっても、管理措置を行うことができない事態が生じてしまい、損害を被っている土地所有者にとって酷な結果になるだけでなく、他の制度との関係でも無用な混乱をもたらすおそれが生じるため、妥当でないと考えられる。
    他方で、要件の限定の議論は、他の土地等の所有者の権利保障の在り方の問題であると考えられるところ、手続保障の観点を踏まえ、本文②において、管理措置に際して、他の土地等の所有者及び他の土地等を現に使用している者に事前に通知する規律を設けることとしている。
    この事前通知も、管理措置権の行使のための要件であり、事前通知を要する場合にこれをせずにした管理措置は違法になると考えられるが、事前通知を求めるのは、土地への立入りや工事に伴う不利益を生じさせるに当たって手続的な保障を与える趣旨と、管理措置権の発生要件を満たす場合であっても、まずは、他の土地等の所有者が工事を行うべきであると考えられるから、その機会を与える趣旨とを含むものである。
    また、他の土地等の所有者が不明であるなど、他の土地等の所有者に対する事前の通知をすることができない場合については、事後的に通知をすれば足りるとしている。さらに、他の土地等を現に使用する者の平穏な使用を保護する観点から、その者への事前通知は常に必要としている。なお、部会資料49の甲案と同様に、本文①の規律を前提としても、土地所有者による立入りを妨害する者がいる場合には、その者に対して、妨害排除請求訴訟等により具体的な妨害行為の禁止を求める必要があると考えられる。

  • 【資料51】民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案のたたき台 (1)

    第1部 民法の見直し
    第1 相隣関係
    1 隣地使用権
    民法第209条の規律を次のように改めるものとする。
    ① 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、居住者の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
    ア 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
    イ 境界標の調査又は境界に関する測量
    ウ 後記2③の規律による枝の切取り
    ② ①の場合には、その使用方法は、隣地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
    ③ ①の規律により隣地を使用する者は、あらかじめ、その旨を隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(④において「隣地使用者」という。)に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
    ④ ①の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
    (補足説明)
    本文は、部会資料46の第1と基本的に同じ考え方によりつつ、第18回会議の意見を踏まえ、法的構成を改めている。
    すなわち、第18回会議においては、隣地使用権に関する規律は、隣地を使用しようとする土地の所有者と隣地の所有者の権利関係を調整するものであることを前提として再構成すべきであるという意見や、承諾を求めること自体は当然に可能であり、「承諾を求めることができる」という規律の意味が明確ではなく、適切ではない等の指摘があった。
    部会資料46においては、第1の②で、隣地所有者等の明示的な承諾がなくとも隣地を使用することができることを前提としつつ、他方で、いずれにしても、事前に連絡をすることは隣地所有者の利益保護の観点から必要であることから、そのことを第1の①において「承諾を求めることができる」という表現で表していた。そこで、この内容を実質的に維持しつつ、前記の議論を踏まえ、本文①において、端的に、土地の所有者は、一定の目的のために隣地を使用することができるとする構成とし、本文③において、原則として、あらかじめ隣地の所有者及び隣地を現に使用している者に対して通知しなければならないこととした。
    なお、このような構成をとったとしても、隣地所有者等が隣地使用に対する妨害行為等を行い、これを排除しなければ権利を実現することができないケースでは、裁判所の判決を得ることなく私的に実力を行使して排除することは認められないと解される(このようなケースでは、妨害行為の差止めの判決を得て権利を実現することになる。)。
    部会資料46第1③では、急迫の事情等がある場合には、隣地所有者等に対する承諾を得ることなく隣地を使用できるとすることを提案していたが、上記のように法的構成を改めたことに伴い、表現を改めている。
    また、部会資料46第1③では、事後の通知について記載をしていなかった。改めて検討すると、隣地所有者及び隣地使用者に対する事前の通知をすることができないような急迫の事情がある場合に、土地の所有者による隣地使用を認めるとしても、隣地所有者及び隣地使用者は、土地所有者による隣地の使用状況を把握しておくべきであると考えられる。
    そこで、本文③において、急迫の事情がある場合を念頭に、土地の所有者が、あらかじめ通知することが困難なときは、隣地使用を開始した後、遅滞なく、隣地所有者及び隣地使用者に通知しなければならないこととした。
    また、第9回会議及び第18回会議において、隣地の使用方法の相当性に関する規律を設けるべきであるという意見があったことを踏まえ、本文②において、隣地の使用方法は、隣地のために損害が最も少ないものを選ばなければならないこととした。
    加えて、本文①から③までの規律を前提として、隣地使用に伴って隣地の所有者又は隣地使用者に損害が生じた場合には償金を支払う必要があると考えられることから、本文④において、現行民法第209条第2項の償金の規律を改めることとした。
    なお、第18回会議における議論を踏まえ、本文①ただし書において、住家への立入りに関する表現ぶりを改め、居住者の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできないこととした。
    2 竹木の枝の切除等
    民法第233条第1項の規律を次のように改めるものとする。
    ① 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
    ② ①の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
    ③ ①の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
    ア 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
    イ 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
    ウ 急迫の事情があるとき。
    (補足説明)
    本文は、部会資料46の第2と基本的に同じである。
    第18回会議における議論を踏まえ、竹木が数人の共有に属する場合の規律については、端的に、竹木の共有者の権限の規律として整理し、本文②において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、越境した枝を切り取ることができることとした。
    なお、部会資料46の第2の1(1)③cにおいて、「著しい損害」を避けるため必要があるときにも、越境した枝を土地所有者自ら切り取ることができるとすることを提案していたが、急迫の事情がない場合には、竹木の所有者に対して催告をしなければならないとすることが相当と考えられるため、本文③ウにおいては、急迫の事情がある場合に、越境した枝を自ら切り取ることができることとした。
    3 継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権
    継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権について、次のような規律を設けるものとする。
    ① 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下①及び⑧において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
    ② ①の場合には、設備の設置又は使用の方法は、他の土地又は他人が所有する設備(③において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
    ③ ①の規律により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その旨を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
    ④ ①の規律による権利を有する者は、①の規律により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、前記1の①ただし書及び②から④までの規律を準用する。
    ⑤ ①の規律により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(④において準用する前記1の④に規律する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができる。
    ⑥ ①の規律により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
    ⑦ ①の規律により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。
    ⑧ 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、⑤の規律は、適用しない。
    ⑨ ⑧の規律は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
    (補足説明)
    1 継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権の構成について
    本文は、部会資料46の第3の1及び3と基本的に同じ考え方によりつつ、第18回会議における議論を踏まえ、その構成を改めている。
    すなわち、継続的給付を受けるための設備設置権等は、基本的には、近隣の土地等の所有者間の権利関係を調整するものであり、他の土地又は他人が所有する設備(以下「他の土地等」という。)の所有者は設備の設置等を受忍すべき義務を負うことになることや、前記1の隣地使用権における議論と同じく、部会資料46の第3の1の「承諾を求めることができる」の意味が明確ではなく、適切ではないと考えられることに鑑みると、端的に、土地の所有者は、他の土地等に設備等を設置・使用することができるとした上で、利害関係者である他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に対する事前通知義務を負うと構成することが適切であると考えられる。
    そこで、本文①において、土地の所有者は、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができることとし、本文③において、あらかじめ他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に対して通知しなければならないこととした。なお、このような構成をとったとしても、他の土地の所有者等が設備設置等に対する妨害行為等を行い、これを排除しなければ権利を実現することができないケースでは、裁判所の判決を得ることなく私的に実力を行使して排除することは認められないと解される(このようなケースでは、妨害行為の差止めの判決を得て権利を実現することになる。)。
    第18回会議においては、土地の所有者が、継続的給付を受けるためには複数の土地のいずれかに設備を設置することが考えられる場合に、いずれの土地に設備を設置すべきかを特定することができないのではないかとの指摘があったが、本文②により、設備を設置すべき土地については、個別の事案ごとに、継続的給付を受ける必要性と他の土地に生じる損害を踏まえて、損害が最も少ないと考えられる土地を特定することになると解される一方で、より具体的で画一的な基準を設けることは困難であると考えられる。
    公道に至るための通行権の規律においても、周りを取り囲んでいる土地のうちどの土地を通行するかや、既存通路が複数存在する場合にどの通路を通行するか等が問題となるが、通行の場所及び方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならないとされ、通行すべき土地に関して画一的な基準は設けられていない(民法第211条第1項)。
    以上を踏まえ、本文②においては、部会資料46の第3の1④の規律を基本的に維持することとした。
    2 設備の設置・使用のために他の土地を使用する場合の規律について
    部会資料46の第3の1(注1)において、設備を設置し又は設備を使用する工事のために隣地を使用する場合の規律を設けることを提案していたが、設備を設置する土地や使用する設備がある土地が対象土地の隣地ではない場合も考えられるため、前記1の隣地使用権の規律とは別の規律を設ける必要がある。
    そこで、本文④において、本文①の規定による権利を有する者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができることとし、この場合においては、隣地使用権の規律(前記1の①ただし書及び②から④まで)を準用することとした。
    3 償金等の規律について
    本文⑤では、償金に関する部会資料46の第3の3の内容を改めて整理している。
    (1) 土地の所有者が、他の土地に設備を設置する場合に支払うべき償金には、2種類のものがあると考えられる。
    第1は、本文④の規律に基づいて他の土地を使用する場合に当該土地の所有者や当該土地の使用者に一時的に生じる損害に対する償金であるが、これは一時金として支払われるべきであると考えられる。
    第2は、設備の設置によって土地が継続的に使用することができなくなることによって生じる損害に対する償金であるが、これは公道に至るための通行権の規律(民法第212条ただし書)と同様に、1年ごとの定期払の方法を認めることが適切であると考えられる。
    そこで、本文⑤において、これらの償金を区別し、前者については隣地使用権の償金の規律(前記1の④)と同様の規律に服させることとし、後者については、1年ごとにその償金を支払うことができることとした。
    (2) 土地の所有者が、他人が所有する設備を使用する場合に支払うべき償金も、大別して2種類のものがあると考えられる。
    第1は、本文④の規律に基づいて設備のある土地を使用する場合に当該土地の所有者や当該土地の使用者に一時的に生じる損害金や当該設備の所有者に一時的に生じる損害に対する償金であるが、これらは一時金として支払われるべきであると考えられる。
    第2は、土地の所有者が継続的に使用する設備の設置、改築、修繕及び維持に要する費用であるが、土地の所有者はその利益を受ける割合に応じてその費用を負担することとするのが合理的であると考えられる。そこで、本文④(隣地使用権の償金の規律(前記1の④)の準用)、本文⑥及び⑦において、これらの償金及び費用負担に関する規律を設けることとした。
    4 土地の分割又は一部の譲渡によって継続的給付を受けることができない土地が生じた場合の規律について本文⑧及び⑨は、部会資料46の第3の3③と基本的に同じであるが、土地の分割又は一部の譲渡がされたとしても、既設の設備の所有者が直ちに変更されるわけではないため、土地の分割等によって他人が所有する設備を使用しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じることは想定されないことから、本文⑧及び⑨においては、この部分の規律を除いている。なお、土地の分割等とともに、当該土地上の既設の設備についても譲渡がされることによって、設備を使用しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じるケースは想定し得るが、この場合には、当該土地の所有者は、当該設備がその分割等がされた他方の土地上にある限りにおいて、基本的には、本文②により、当該設備を使用することが損害の最も少ない方法として特定され、当該設備を使用しなければならないことになると考えられる。
    5 導管等の設置場所又は使用方法の変更に関する規律について
    部会資料46の第3の2においては、導管等の設置場所又は使用方法の変更に関する規律を設けることを提案していた。
    しかし、本文①において、設備の設置権は、他の土地等の所有者の承諾の有無にかかわらず発生する法定の権利であると構成を改めたことから、事情の変更によって、要件を満たさなくなった場合には当該権利は消滅し、又は本文②により損害が最も少ない設備の設置若しくは使用方法が変更されることになると考えられ、設備の設置場所又は使用方法の変更に関する特別の規律を設ける必要性は高くないと考えられる。公道に至るための通行権においても、通行の場所又は方法の変更に関する規律は置かれていない。
    以上を踏まえ、導管等の設置場所又は使用方法の変更に関する特別の規律を設けないこととした。

  • 【資料46】相隣関係規定等の見直し

    第1 隣地使用権の見直し
    民法第209条第1項の規律を次のように改めることで、どうか。
    ① 土地の所有者は、次に掲げる目的のために必要な範囲内で、【隣地の所有者及び隣地の占有者】【隣地の占有者】に対して、隣地の使用の承諾を求めることができる。ただし、隣地上の住家への立入りについての承諾を求めることはできない。
    a 境界又はその付近における障壁又は建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
    b 後記第2の規律に基づいてする越境した枝の切除
    c 境界標の調査又は境界を確定するための測量
    ② 土地の所有者は、【隣地の所有者及び隣地の占有者】【隣地の占有者】に対し、①の各号に掲げる目的のため必要な範囲内で隣地を使用させるよう催告をした場合において、【隣地の所有者及び隣地の占有者】【隣地の占有者】が、相当の期間内に土地の所有者に対して確答をしないときは、【隣地の所有者及び隣地の占有者】【隣地の占有者】の承諾を得ることなく、隣地を使用することができる。
    ③ 土地の所有者は、著しい損害又は急迫の危険を避けるため必要があるときは、①の各号に掲げる目的のために必要な範囲内で【隣地の所有者及び隣地の占有者】【隣地の占有者】の承諾を得ることなく、隣地を使用することができる。
    (注1)本文②の催告について、隣地の使用目的、場所、方法及び時期が特定されていなければ、有効に催告することはできないことを前提としている。
    (注2)隣地が共有地である場合等における隣地使用の在り方に関しては、本文①における請求の相手方の在り方と併せて、引き続き検討する。
    (補足説明)
    1 請求の相手方について
    第14回会議においては、隣地の占有者と隣地の所有者が別であるケースを念頭に、隣地を使用するためには、隣地の占有者と隣地の所有者の承諾も得なければならず、承諾を求めることができる相手方には、隣地の占有者だけでなく、隣地の所有者も加えるべきではないかとの指摘があった。
    第14回会議での議論を踏まえた上で改めて検討をすると、隣地の占有者(ここでは直接隣地を使用している者を指し、賃借人等を通じて間接的に占有する者を含まない。)と隣地の所有者が別であるケースに関する対応方法としては、次の二つの考え方があり得ると思われる。
    ① 隣地の使用は、隣地の占有者と所有者の権利の両方を侵害するものである(権原のない者が隣地を占有しているケースでは、占有者は占有保持の訴えを提起することができ、占有をしていない所有者も、所有権に基づく妨害排除請求をすることができる。)から、隣地使用権に基づく隣地の使用に当たっては、隣地の占有者と所有者の両方の承諾を得なければならず、承諾を求めるべき相手方もその両者とすべきであるとの見解
    ② 隣地の使用は、隣地の占有者と所有者の権利の両方を侵害するものであるが、占有をしていない所有者が受ける不利益はそれほど大きくなく、相隣関係にある所有者として一定の範囲による不利益は当然に甘受すべきであるから、隣地使用権に基づく隣地の使用に当たっては、隣地の占有者の承諾を得れば足り、承諾を求めるべき相手方は占有者のみであるとの見解
    現行民法第209条の解釈に関し、学説では、請求の相手方は、現に土地を使用している者(土地所有者、地上権者、賃借人など)であるとするのが一般的であると思われるが、この考え方は、前記②の見解に近いと考えられる。
    また、以上のケースとは別に、所有者が存在するものの、当該土地を実際に支配する者がおらず、占有者がいないケースに、上記の見解をどのように当てはめるのかも問題になり得ると思われる(いずれの見解からも、観念的には所有者が占有しているものとして所有者に承諾を求めるべきことになるとも考えられる。)。
    加えて、占有者を承諾の相手方とした場合に、その占有が適法なものであることを求めるべきかが問題となるが、占有の訴え自体は占有権原の有無に関係なく認められることや、権原の有無は実際上判断が困難であるケースもあることからすると、占有権原の有無にかかわらず、一律に占有者の承諾を得る必要があるとすることも考えられる。
    以上を踏まえ、隣地使用についての承諾を求めることができる相手方について、隣地の所有者及び隣地の占有者とする案と、隣地の占有者のみとする案を提示している。なお、隣地の占有者は、ここでは直接隣地を使用している者を指し、賃借人等を通じて間接的に占有する者を含まないことを前提としており、これを端的に示すためには、請求の相手方については「隣地の使用者」とすることも考えられる。

    2 住家への立入りについて
    部会資料32(第1の1①)では、住家に立ち入ることを内容とする隣地使用は、境界標の調査を念頭に、土地所有者による隣地の使用のために特に必要があると認めるときに限り承諾を求めることができる規律を設けることを取り上げていた。第14回会議においては、これに賛成する意見があった一方で、限定的な場面とはいえ住家へ立ち入ることの承諾を求めることができるとする規律を設けることで、例えば、交渉の場面において隣地所有者に対して不当に住家への立入りを要求する事態を生じさせるおそれがあるなど、規律を設けることによって生ずる影響を踏まえてその是非について再検討すべきである旨の意見があった。
    そこで改めて検討すると、現行民法第209条第1項ただし書の解釈として、隣人の平穏な生活やプライバシーの保護の観点から、隣人の住家に立ち入るためには、必ずその隣人の承諾が必要であり、隣人はこれを自由に拒否することができ、判決をもってこの承諾に代えることはできないと解する見解が多数説であり、この立場を前提に、建物の屋上部分や非常階段などについては「住家」に当たらないとして、その立入りの承諾請求を認めた裁判例があるなど、「住家」の範囲は限定的に解釈されている。このような現行法の解釈運用を前提とすると、境界標の調査等が困難な場合であっても、隣地上の建物の屋上や非常階段等、隣人の生活の平穏を害さない部分の使用によって、その目的を達することができるケースも多いと思われる。
    そうすると、本文①aからcまでの目的のために住家に立ち入る必要があるケースは極めて例外的であり、このような例外的場面を想定して規律を設けることによって、不当に住家の使用の承諾を求められる事態が生ずるなど、現実の生活において混乱を生じさせるおそれがあることに鑑みれば、新たな規律を設けることは相当でないとも考えられる。
    そこで、本資料では、現行法の規律を基本的に維持することを提案している。

    3 本文②について
    部会資料32(第1の1②)では、隣地所有者等が隣地使用について異議を述べない等の一定の要件のもとで、隣地所有者等の承諾等が得られなくても土地所有者の隣地使用を認める規律を設けることを提案しており、このような規律を設けることについては、懸念を示す意見もあったものの、賛成する意見もあった。そこで、本文②で基本的に同様の規律を設けることを提案している。
    4 「著しい損害又は急迫の危険を避けるため必要があるとき」(本文③)について部会資料32(第1の1②c)では、土地所有者が、急迫の事情があるときには、所定の目的のために必要な範囲内で、隣地所有者等の承諾を得ることなく、隣地を使用することができる規律を設けることを提案していた。
    改めて検討すると、このような場合には、現行法上、隣地使用の承諾を命じる仮処分又は立入妨害禁止の仮処分(民事保全法第23条第2項)を得ることにより対処することになると考えられるのであり、単に急迫の事情があるというだけで【隣地の所有者及び隣地の占有者】【隣地の占有者】の承諾を得ることなく隣地使用を許すのは相当でないと考えられる。
    そこで、本文③においては、著しい損害又は急迫の危険を避けるため必要があるときは、本文①の各号に掲げる目的のために必要な範囲内で、【隣地の所有者及び隣地の占有者】【隣地の占有者】の承諾を得ることなく、隣地を使用することができるとする規律を設けることを提案している。
    5 隣地の所有者等を知ることができず、又はその所在を知ることができない場合について
    部会資料32(第1の1②)では、土地所有者が、隣地所有者等を知ることができず、又はその所在を知ることができない場合において、一定の事項を公告したにもかかわらず、相当の期間内に異議がないときに、隣地を使用することができる規律を設けることを提案していたが、いずれにしても、著しい損害又は急迫の危険を避けるため必要があるときは、①の各号に掲げる目的のために必要な範囲内で、【隣地の所有者及び隣地の占有者】【隣地の占有者】の承諾を得ることなく、隣地を使用することができることとしており、所有者等が不明なケースで急を要する際には、これで対応することが考えられるため、これと別には取り上げていない。
    なお、民法第98条第1項は、「意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。」と定めているところ、法文上は、「意思表示」とあるが、これに限らず、準法律行為(意思通知、観念の通知等)についても類推適用されるものと考えられているから、これを利用して、本文②の催告をすることは否定されない。
    6 本文②の催告に係る隣地使用態様の特定について(注1)
    部会資料32(第1の1②)では、土地所有者は、隣地所有者等に対して、隣地の使用目的、場所、方法及び時期を通知したにもかかわらず、相当の期間内に異議がないときに、隣地を使用することができる旨の規律を設けることを提案していたが、本文②の規律の表現を改めた上で、(注1)において、隣地の使用目的、場所、方法及び時期が特定されていなければ、有効に催告することはできないことを前提としている旨を注記している。
    7 隣地が共有地である場合等における隣地使用について(注2)
    (1) (注2)について
    部会資料32(第1の2)では、隣地所有者等の隣地の占有権原が数人の共有又は準共有に属する場合において、その共有持分又は準共有持分の価格に従い、その過半数の承諾を得たときに、隣地を使用することができる規律を設けることを提案していた。
    隣地が共有地である場合等における隣地使用に関して、誰に対して承諾を求めるべきかは、本文①と併せて検討する必要があるため、(注2)において、引き続き検討する旨を注記している。
    (2) 区分所有建物の敷地の使用について
    第14回会議においては、隣地が区分所有建物の敷地である場合における隣地使用請求の在り方について、どのように考えるべきかという指摘があったが、土地所有者は、基本的には、区分所有者の集会における区分所有者及び議決権の各過半数による決議(建物の区分所有等に関する法律第21条、第18条第1項、第39条第1項)を得たり、区分所有建物の管理規約において敷地の管理については管理者が決定する旨の定めがある場合には、その管理者の承諾を得たりして、敷地を使用することになると考えられる(同法第21条、第18条第2項、第26条第1項)。
    第2 越境した枝の切除等
    1 越境した枝の切除の規律について
    (1) 越境した枝の切除に関する規律(民法第233条第1項)を次のように改めることで、どうか。
    ① 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、土地所有者は、その竹木の所有者(竹木が数人の共有に属する場合にあっては、共有者の一人。②aにおいて同じ。)に、その枝を切除させることができる。
    ② 隣地の竹木の枝が境界線を越える場合において、土地所有者は、次に掲げるときは、自らその枝を切り取ることができる。
    a 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除されないとき。
    b 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
    c 著しい損害又は急迫の危険を避けるため必要があるとき。
    (補足説明)
    1 基本的な考え方は、以下で述べる点を除き、部会資料32(第2の1(1))と同様である。なお、本文②aにおいても、隣地使用権における催告(前記第1の③)と同様に、公示に関する手続(公示による意思表示。民法第98条)を利用して催告をすることは否定されないが、竹木の所有者又はその所在が不明である場合には、公示に関する手続を経ずに、本文②bに基づいて枝の切取りが可能である点で隣地使用権とは異なる。土地所有者が、竹木所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない場合には、通常は竹木所有者による枝の切除を期待することができないこと、また、竹木の枝は、その性質上、いずれまた伸びることが予想されることに鑑みれば、土地所有者による直接の切除を認める必要性があると考えられることから、本文②bの規律を特に設けることとしている。
    2 竹木が数人の共有に属する場合について
    部会資料32(第2の1(1)②d)では、土地所有者は、竹木が共有されている場合において、その持分の価格の過半数を有する者から承諾を得たときには、自らその枝を切り取ることができる規律を設けることを提案していたが、第14回会議において、竹木が共有である場合には、共有者の一人に切除させることができる旨の規律を設けるべきである旨の意見があった。
    改めて検討すると、竹木が共有である場合には、土地所有者に、竹木共有者を探索した上で、竹木共有者に対する枝の切除請求訴訟を提起して、請求認容判決を得た上で、これを債務名義として強制執行を申し立てなくてはならないとすると、土地所有者は越境した竹木の枝の切除という事柄の性質に見合わない時間や労力を費やすこととなり、土地の利用を阻害する要因となり得ることに問題があった。

    そこで、端的に、竹木が数人の共有に属する場合にあっては、共有者の一人にその枝を切除させることができる(すなわち、強制執行手続の実施について他の共有者の同意が不要である)とする規律を設けることが適切であると考えられることから、このような規律を設けることを提案している。
    3 「著しい損害又は急迫の危険を避けるため必要があるとき」(②c)について
    本文第1の補足説明4と同様の理由から、部会資料32(第2の1(1)②c)から表現を改めた。
    (2) 竹木の枝の切除及び根の切取りの費用について
    竹木の枝の切除及び根の切取りの費用についての特別の規律は、設けないものとすることで、どうか。
    (補足説明)
    部会資料32(第2の1(2))では、竹木の枝の切除及び根の切取りの費用の規律を設けることについて取り上げていたが、第14回会議において、このような費用については新たな規律を設けるべきでないという意見や、現行法のもとで、枝や根の越境について通常は不法行為が成立し、損害賠償請求権が発生することなどを踏まえると、特に規律を設けなくても、切除費用は通常竹木所有者の負担となると考えられるため、あえて規律を設けないという考え方もあるとの意見があった。これらの議論を踏まえて、本資料では、この論点について特別の規律を設けないこととしている。
    2 越境した枝から落下した果実
    越境した枝から落下した果実についての特別の規律は、設けないものとすることで、どうか。
    (補足説明)
    部会資料32(第2の2)では、土地の所有者が、越境した枝から自己の土地に落下した果実を処分することができるとする規律を設けることを取り上げていたが、第14回会議において、越境した果実について、その処分権をその土地の所有者に与える規律を正当化することは難しいとの意見があった。これらの議論を踏まえて、本資料では、この論点について特別の規律を設けないこととしている。
    第3 導管等設置権及び導管等使用権
    1 導管等設置権及び導管等使用権の内容
    相隣関係上の権利として、次のような導管等設置権及び導管等使用権の規律を設けることで、どうか。
    ① 他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ、電気、ガス若しくは水道水の供給又は下水道の利用その他これらに類する継続的給付(以下「継続的給付」という。)を受けることができない土地の所有者は、継続的給付を受けるために、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することについて、他の土地又はその設備(以下「他の土地等」という。)の所有者に対して、承諾を求めることができる。
    ② 継続的給付を受けることができない土地の所有者は、他の土地等が数人の共有に属する場合には、各共有者の持分の価格に従い、その過半数を有する共有者から承諾を得れば、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
    ③ 継続的給付を受けることができない土地の所有者は、他の土地等の所有者に対し、継続的給付を受けるために、相当の期間を定めて、他の土地に自己の設備を設置させ、又は設備を使用させるよう催告をした場合において、他の土地等の所有者が、相当の期間内に継続的給付を受けることができない土地の所有者に対して確答しないときは、他の土地等の所有者の承諾を得ないで、他の土地に設備を設置し、又は設備を使用することができる。
    ④ ①から③までの規定に基づいて、他の土地に設備を設置し、又は設備を使用する場合には、その設備の設置場所又は使用方法は、継続的給付を受けるために必要であり、かつ、他の土地等のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
    (注1)導管等設置権及び導管等使用権が認められる場合に、設備を設置又は使用する工事のために隣地を使用する必要があるときは、その使用も認められることを前提としているが、その手続については、本文第1で提案している隣地使用権の要件を参考に引き続き検討する。
    (注2)他の土地等の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない場合における本文③の催告については、民法第98条(公示による意思表示)が類推適用されることを前提としている。
    (注3)本文③の催告について、他の土地における設備の設置場所又は他人が所有する設備の使用方法が特定されていなければ、有効に催告することはできないことを前提としている。
    (補足説明)
    1 部会資料32(第3の1)と、以下に述べる点を除き、基本的に同じである。第14回会議では、特段の反対意見はなかった。
    2 隣地の使用について(注1)
    部会資料32(第3の1(注))では、導管等設置権等と隣地使用権の規律との関係について注記していたが、導管等設置権等と隣地使用権とでは問題となる利益状況が異なることも考えられ、その隣地使用権を認める際に、誰に対して承諾等を求めることになるのかについては、本文第1の規律の検討を踏まえて引き続き検討する必要がある。
    3 他の土地等の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない場合における本文③の催告について(注2)
    部会資料32(第3の1②)では、土地所有者が、他の土地等の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない場合において、所定の公告をしたにもかかわらず、相当の期間内に異議がないときに、他の土地等を使用することができる規律を設けることを提案していた。
    もっとも、民法第98条(公示による意思表示)は、準法律行為(意思通知、観念の通知等)についても類推適用されることを踏まえると、部会資料32(第3の1②b)のような規律を設ける必要性は高くないと考えられることから、本文③の催告について、民法第98条が類推適用されることを前提として(注2)、このような規律を設けることは提案していない。
    4 本文③の催告に係る設備の設置場所等の特定について(注3)
    本文③において、部会資料32(第3の1②)の規律の表現を改めた上で、(注3)において、本文③の催告について、他の土地における設備の設置場所又は他人が所有する設備の使用方法が特定されていなければ、有効に催告することはできないことを前提としている旨を注記している。
    2 導管等の設置場所又は使用方法の変更
    導管等の設置場所又は使用方法の変更に関し、次のような規律を設けることで、どうか。
    継続的給付を受けることができない土地の所有者又は他の土地等の所有者は、土地の使用用途の変更、付近の土地の使用状況の変化その他の事情の変更により、継続的給付を受けるために他の土地に設置された設備の設置場所又は他人が所有する設備の使用方法を変更する必要があるときは、他方に対して、設備の設置場所又は設備の使用方法を変更することを求めることができる。
    (注1)本文2の規律に基づく設備の設置場所又は設備の使用方法の変更について、本文1③と同様の規律は設けないことを前提としている。
    (注2)本文2の規律に基づく変更後の設備の設置場所又は使用方法については、本文1④の規律を準用することを前提としている。
    (補足説明)
    1 部会資料32(第3の2及び(注))と、基本的に同じである。第14回会議では、特段の反対意見はなかった。
    2 変更後の導管等の設置場所又は使用方法の特定について(注2)
    本文2のような規律を設ける場合に、変更後の設備の設置場所又は使用方法を特定する必要があると考えられるところ、その設置場所又は設置方法についても、本文1④と同様に、継続的給付を受けるために必要であり、かつ、他の土地等のために損害が最も少ないものとすることが妥当であると考えられることから、その旨を(注2)に注記している。
    3 償金
    償金に関し、次のような規律を設けることで、どうか。
    ① 本文1の規律に基づいて、他の土地に設備を設置し又は他人が所有する設備を使用する者は、他の土地等の損害に対して償金を支払わなければならない。
    ② 本文2の規律に基づいて、継続的給付を受けることができない土地の所有者又は他の土地等の所有者が、設備の設置場所又は設備の使用方法を変更する際に相手方に生じた損害についても、①と同様とする。
    ③ 土地の分割又は一部譲渡によって、他の土地に設備を設置し又は他人が所有する設備を使用しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じた場合には、その土地の所有者は、分割者又は譲渡者の所有地のみに設備を設置し、又は使用することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
    (補足説明)
    部会資料32(第3の3)と、基本的に同じである。第14回会議では、特段の反対意見はなかった。

第2 共有等

民法改正案
 
(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。
(共有持分の割合の推定)
第二百五十条 各共有者の持分は、相等しいものと推定する。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
  一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
  二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
 3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
 4 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。
  一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年
  二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年
  三 建物の賃借権等 三年
  四 動産の賃借権等 六箇月
 5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
 (共有物の管理者)
 第二百五十二条の二 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
3 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
4 前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
(共有物に関する負担)
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
(共有物についての債権)
第二百五十四条 共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。
第二百五十七条 前条の規定は、第二百二十九条に規定する共有物については、適用しない。
(裁判による共有物の分割)(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
  一 共有物の現物を分割する方法
  二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
 前項の場合において、に規定する方法により共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。
第二百五十八条の二 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。
2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。
3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第一項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から二箇月以内に当該裁判所にしなければならない。
(共有に関する債権の弁済)
第二百五十九条 共有者の一人が他の共有者に対して共有に関する債権を有するときは、分割に際し、債務者に帰属すべき共有物の部分をもって、その弁済に充てることができる。
2 債権者は、前項の弁済を受けるため債務者に帰属すべき共有物の部分を売却する必要があるときは、その売却を請求することができる。
(共有物の分割への参加)
第二百六十条 共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。
2 前項の規定による参加の請求があったにもかかわらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をした者に対抗することができない。
(分割における共有者の担保責任)
第二百六十一条 各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。
(共有物に関する証書)
第二百六十二条 分割が完了したときは、各分割者は、その取得した物に関する証書を保存しなければならない。
2 共有者の全員又はそのうちの数人に分割した物に関する証書は、その物の最大の部分を取得した者が保存しなければならない。
3 前項の場合において、最大の部分を取得した者がないときは、分割者間の協議で証書の保存者を定める。協議が調わないときは、裁判所が、これを指定する。
4 証書の保存者は、他の分割者の請求に応じて、その証書を使用させなければならない。
(所在等不明共有者の持分の取得)
第二百六十二条の二 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。
2 前項の請求があった持分に係る不動産について第二百五十八条第一項の規定による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が前項の請求を受けた裁判所に同項の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、同項の裁判をすることができない。
3 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、第一項の裁判をすることができない。
4 第一項の規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。
5 前各項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。
(所在等不明共有者の持分の譲渡)
第二百六十二条の三 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。
2 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、前項の裁判をすることができない。
3 第一項の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、当該譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。
4 前三項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。
(共有の性質を有する入会権)
第二百六十三条 共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する。
(準共有)
第二百六十四条 この節(第二百六十二条の二及び第二百六十二条の三を除く。)の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。

 

不動産登記法改正案
 
(権利に関する登記の登記事項)
第五十九条 権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。

一 登記の目的
二 申請の受付の年月日及び受付番号
三 登記原因及びその日付
四 登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分
五 登記の目的である権利の消滅に関する定めがあるときは、その定め
六 共有物分割禁止の定め(共有物若しくは所有権以外の財産権について民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百五十六条第一項ただし書(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)若しくは第九百八条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合若しくは同法第九百八条同条第一項の規定により被相続人が遺言で共有物若しくは所有権以外の財産権について分割を禁止した場合における共有物若しくは所有権以外の財産権の分割を禁止する定め又は同法第九百七条第三項同条第四項の規定により家庭裁判所が遺産である共有物若しくは所有権以外の財産権についてした分割を禁止する審判をいう。第六十五条において同じ。)があるときは、その定め
七 民法第四百二十三条その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請した者(以下「代位者」という。)があるときは、当該代位者の氏名又は名称及び住所並びに代位原因
八 第二号に掲げるもののほか、権利の順位を明らかにするために必要な事項として法務省令で定めるもの

 

非訟事件手続法改正案

    第一章 共有に関する事件

(共有物の管理に係る決定) 第八十五条 次に掲げる裁判に係る事件は、当該裁判に係る共有物又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百六十四条に規定する数人で所有権以外の財産権を有する場合における当該財産権(以下この条において単に「共有物」という。)の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
  一 民法第二百五十一条第二項、第二百五十二条第二項第一号及び第二百五十二条の二第二項(これらの規定を同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)の規定による裁判
  二 民法第二百五十二条第二項第二号(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。第三項において同じ。)の規定による裁判
2 前項第一号の裁判については、裁判所が次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、することができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。
  一 当該共有物について前項第一号の裁判の申立てがあったこと。
  二 裁判所が前項第一号の裁判をすることについて異議があるときは、当該他の共有者等(民法第二百五十一条第二項(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する当該他の共有者、同法第二百五十二条第二項第一号(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する他の共有者又は同法第二百五十二条の二第二項(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)に規定する当該共有者をいう。第六項において同じ。)は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。
  三 前号の届出がないときは、前項第一号の裁判がされること。
3 第一項第二号の裁判については、裁判所が次に掲げる事項を当該他の共有者(民法第二百五十二条第二項第二号に規定する当該他の共有者をいう。以下この項及び次項において同じ。)に通知し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、することができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。
  一 当該共有物について第一項第二号の裁判の申立てがあったこと。
  二 当該他の共有者は裁判所に対し一定の期間内に共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべきこと。
  三 前号の期間内に当該他の共有者が裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにしないときは、第一項第二号の裁判がされること。
4 前項第二号の期間内に裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにした当該他の共有者があるときは、裁判所は、その者に係る第一項第二号の裁判をすることができない。
5 第一項各号の裁判は、確定しなければその効力を生じない。
6 第一項第一号の裁判は、当該他の共有者等に告知することを要しない。
 (共有物分割の証書の保存者の指定)
第八十六条 民法第二百六十二条第三項の規定による証書の保存者の指定の事件は、共有物の分割がされた地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
2 裁判所は、前項の指定の裁判をするには、分割者(申立人を除く。)の陳述を聴かなければならない。
3 裁判所が前項の裁判をする場合における手続費用は、分割者の全員が等しい割合で負担する。
4 第二項の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
(所在等不明共有者の持分の取得)
第八十七条 所在等不明共有者の持分の取得の裁判(民法第二百六十二条の二第一項(同条第五項において準用する場合を含む。次項第一号において同じ。)の規定による所在等不明共有者の持分の取得の裁判をいう。以下この条において同じ。)に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
2 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号、第三号及び第五号の期間が経過した後でなければ、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることができない。この場合において、第二号、第三号及び第五号の期間は、いずれも三箇月を下ってはならない。
  一 所在等不明共有者(民法第二百六十二条の二第一項に規定する所在等不明共有者をいう。以下この条において同じ。)の持分について所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあったこと。
  二 裁判所が所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることについて異議があるときは、所在等不明共有者は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。
  三 民法第二百六十二条の二第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)の異議の届出は、一定の期間内にすべきこと。
  四 前二号の届出がないときは、所在等不明共有者の持分の取得の裁判がされること。
  五 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをするときは一定の期間内にその申立てをすべきこと。
 3 裁判所は、前項の規定による公告をしたときは、遅滞なく、登記簿上その氏名又は名称が判明している共有者に対し、同項各号(第二号を除く。)の規定により公告した事項を通知しなければならない。この通知は、通知を受ける者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りる。
 4 裁判所は、第二項第三号の異議の届出が同号の期間を経過した後にされたときは、当該届出を却下しなければならない。
 5 裁判所は、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするには、申立人に対して、一定の期間内に、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託し、かつ、その旨を届け出るべきことを命じなければならない。
 6 裁判所は、前項の規定による決定をした後所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするまでの間に、事情の変更により同項の規定による決定で定めた額を不当と認めるに至ったときは、同項の規定により供託すべき金銭の額を変更しなければならない。
 7 前二項の規定による裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
 8 裁判所は、申立人が第五項の規定による決定に従わないときは、その申立人の申立てを却下しなければならない。
 9 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、確定しなければその効力を生じない。
 10 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、所在等不明共有者に告知することを要しない。
 11 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを受けた裁判所が第二項の規定による公告をした場合において、その申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が同項第五号の期間が経過した後に所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをしたときは、裁判所は、当該申立人以外の共有者による所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを却下しなければならない。
(所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与)
第八十八条 所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判(民法第二百六十二条の三第一項(同条第四項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)の規定による所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判をいう。第三項において同じ。)に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
2 前条第二項第一号、第二号及び第四号並びに第五項から第十項までの規定は、前項の事件について準用する。
3 所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判の効力が生じた後二箇月以内にその裁判により付与された権限に基づく所在等不明共有者(民法第二百六十二条の三第一項に規定する所在等不明共有者をいう。)の持分の譲渡の効力が生じないときは、その裁判は、その効力を失う。ただし、この期間は、裁判所において伸長することができる。
(検察官の不関与)
第八十九条 第四十条の規定は、この章の規定による非訟事件の手続には、適用しない。
(所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令)
第九十条 民法第二編第三章第四節の規定による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
2 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号の期間が経過した後でなければ、所有者不明土地管理命令(民法第二百六十四条の二第一項に規定する所有者不明土地管理命令をいう。以下この条において同じ。)をすることができない。この場合において、同号の期間は、一箇月を下ってはならない。
  一 所有者不明土地管理命令の申立てがその対象となるべき土地又は共有持分についてあったこと。
  二 所有者不明土地管理命令をすることについて異議があるときは、所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地又は共有持分を有する者は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。
  三 前号の届出がないときは、所有者不明土地管理命令がされること。
3 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の申立てをする場合には、その許可を求める理由を疎明しなければならない。
4 裁判所は、民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の裁判又は同法第二百六十四条の七第一項の規定による費用若しくは報酬の額を定める裁判をする場合には、所有者不明土地管理人(同法第二百六十四条の二第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下この条において同じ。)の陳述を聴かなければならない。
5 次に掲げる裁判には、理由を付さなければならない。
  一 所有者不明土地管理命令の申立てを却下する裁判
  二 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の申立てを却下する裁判
  三 民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の申立てについての裁判
6 所有者不明土地管理命令があった場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分について、所有者不明土地管理命令の登記を嘱託しなければならない。
7 所有者不明土地管理命令を取り消す裁判があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有者不明土地管理命令の登記の抹消を嘱託しなければならない。
8 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その土地の所有者又はその共有持分を有する者のために、当該金銭を所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。
9 裁判所は、所有者不明土地管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
10 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、所有者不明土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。
11 所有者不明土地等(民法第二百六十四条の三第一項に規定する所有者不明土地等をいう。以下この条において同じ。)の所有者(その共有持分を有する者を含む。以下この条において同じ。)が所有者不明土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属することを証明したときは、裁判所は、当該所有者の申立てにより、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。この場合において、所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者に対し、その事務の経過及び結果を報告し、当該所有者に帰属することが証明された財産を引き渡さなければならない。
12 所有者不明土地管理命令及びその変更の裁判は、所有者不明土地等の所有者に告知することを要しない。
13 所有者不明土地管理命令の取消しの裁判は、事件の記録上所有者不明土地等の所有者及びその所在が判明している場合に限り、その所有者に告知すれば足りる。
14 次の各号に掲げる裁判に対しては、当該各号に定める者に限り、即時抗告をすることができる。
  一 所有者不明土地管理命令 利害関係人
  二 民法第二百六十四条の六第一項の規定による解任の裁判 利害関係人
  三 民法第二百六十四条の七第一項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判 所有者不明土地管理人
  四 第九項から第十一項までの規定による変更又は取消しの裁判 利害関係人
15 次に掲げる裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
  一 民法第二百六十四条の二第四項の規定による所有者不明土地管理人の選任の裁判
  二 民法第二百六十四条の三第二項又は第二百六十四条の六第二項の許可の裁判
16 第二項から前項までの規定は、民法第二百六十四条の八第一項に規定する所有者不明建物管理命令及び同条第四項に規定する所有者不明建物管理人について準用する。
(管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令)
第九十一条 民法第二編第三章第五節の規定による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
2 民法第二百六十四条の十第二項又は第二百六十四条の十二第二項の許可の申立てをする場合には、その許可を求める理由を疎明しなければならない。
3 裁判所は、次の各号に掲げる裁判をする場合には、当該各号に定める者の陳述を聴かなければならない。ただし、第一号に掲げる裁判をする場合において、その陳述を聴く手続を経ることにより当該裁判の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
  一 管理不全土地管理命令(民法第二百六十四条の九第一項に規定する管理不全土地管理命令をいう。以下この条において同じ。) 管理不全土地管理命令の対象となるべき土地の所有者
  二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の裁判 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者
  三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の裁判 管理不全土地管理人(同法第二百六十四条の九第三項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下この条において同じ。)
  四 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による費用の額を定める裁判 管理不全土地管理人
  五 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による報酬の額を定める裁判 管理不全土地管理人及び管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者
4 次に掲げる裁判には、理由を付さなければならない。
  一 管理不全土地管理命令の申立てについての裁判
  二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の申立てについての裁判
  三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の申立てについての裁判
  四 民法第二百六十四条の十二第二項の許可の申立てを却下する裁判
5 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その土地の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。
6 裁判所は、管理不全土地管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
7 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、管理不全土地管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、管理不全土地管理命令を取り消さなければならない。
8 次の各号に掲げる裁判に対しては、当該各号に定める者に限り、即時抗告をすることができる。
  一 管理不全土地管理命令 利害関係人
  二 民法第二百六十四条の十第二項の許可の裁判 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者
  三 民法第二百六十四条の十二第一項の規定による解任の裁判 利害関係人
  四 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による費用の額を定める裁判 管理不全土地管理人
  五 民法第二百六十四条の十三第一項の規定による報酬の額を定める裁判 管理不全土地管理人及び管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者
  六 前二項の規定による変更又は取消しの裁判 利害関係人
9 次に掲げる裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
  一 民法第二百六十四条の九第三項の規定による管理不全土地管理人の選任の裁判
  二 民法第二百六十四条の十二第二項の許可の裁判
10 第二項から前項までの規定は、民法第二百六十四条の十四第一項に規定する管理不全建物管理命令及び同条第三項に規定する管理不全建物管理人について準用する。

  • 【動画】2021民法・不動産登記法改正を研究する 第3回 ~民法改正案904条の3(期間経過後の遺産の分割における相続分)を考える~

  • 要綱案(共有関係)

    第2 共有等

     1 共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等

     共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等について、次のような規律を設けるものとする。
    ① 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
    ② 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

     2 共有物の変更行為

     民法第251条の規律を次のように改めるものとする。

    ① 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。②において同じ。)を加えることができない。
    ② 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

     3 共有物の管理

     民法第252条の規律を次のように改めるものとする。

    ① 共有物の管理に関する事項(共有物に2①に規律する変更を加えるものを除く。②において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
    ② 裁判所は、次に掲げるときは、ア又はイに規律する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
     ア 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
     イ 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
    ③ ①及び②の規律による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
    ④ 共有者は、①から③までの規律により、共有物に、次のアからエまでに掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(次のアからエまでにおいて「賃借権等」という。)であって、次のアからエまでに定める期間を超えないものを設定することができる。
     ア 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年
     イ 前号の賃借権等以外の土地の賃借権等 5年
     ウ 建物の賃借権等 3年
     エ 動産の賃借権等 6箇月
    ⑤ 各共有者は、①から④までの規律にかかわらず、保存行為をすることができる。

     4 共有物の管理者

     共有物の管理者について、次のような規律を設けるものとする。

    ① 共有者は、3の規律により、共有物を管理する者(②から⑤までにおいて「共有物の管理者」という。)を選任し、又は解任することができる。
    ② 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。③において同じ。)を加えることができない。
    ③ 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
    ④ 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
    ⑤ ④の規律に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

     5 変更・管理の決定の裁判の手続

     変更・管理の決定の裁判の手続について、次のような規律を設けるものとする。

    ① 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イの期間が経過しなければ、2②、3②ア及び4③の規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。
     ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。
     イ 裁判所がこの裁判をすることについて異議があるときは、当該他の共有者等(2②の当該他の共有者、3②アの他の共有者又は4③の当該共有者をいう。)は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。
     ウ イの届出がないときは、裁判所がこの裁判をすること。
    ② 裁判所は、次に掲げる事項を3②イの他の共有者に通知し、かつ、イの期間が経過しなければ、3②イの規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。
     ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。
     イ 3②イの他の共有者は裁判所に対し一定の期間までに共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべきこと。
     ウ イの期間内に3②イの他の共有者が共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにしないときは、裁判所がこの裁判をすること。
    ③ ②イの期間内に裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにした他の共有者があるときは、裁判所は、その者に係る3②イの規律による裁判をすることができない。
    (注)これらの裁判に係る事件は当該裁判に係る財産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

     6 裁判による共有物分割

     民法第258条の規律を次のように改めるものとする。

    ① 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
    ② 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
     ア 共有物の現物を分割する方法
     イ 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
    ③ ②に規律する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
    ④ 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

     7 相続財産に属する共有物の分割の特則

     相続財産に属する共有物の分割の特則について、次のような規律を設けるものとする。

    ① 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について6の規律による分割をすることができない。
    ② 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、①の規律にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について6の規律による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について6の規律による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。
    ③ 相続人が②ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が6①の規律による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

     8 所在等不明共有者の持分の取得

     所在等不明共有者の持分の取得について、次のような規律を設けるものとする。

    (1) 要件等
    ① 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が2人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。
    ② ①の請求があった持分に係る不動産について6①の規律による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が①の請求を受けた裁判所に①の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。
    ③ 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。
    ④ 共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。
    ⑤ ①から④までの規律は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

    (2) 手続等
    ① 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イ、ウ及びオの期間が経過しなければ、(1)①の裁判をすることができない。この場合において、イ、ウ及びオの期間は、3箇月を下ってはならない。
     ア 所在等不明共有者の持分について(1)①の裁判の申立てがあったこと。
     イ 裁判所が(1)①の裁判をすることについて異議があるときは、所在等不明共有者は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。
     ウ (1)②の異議の届出は、一定の期間までにすべきこと。
     エ イ及びウの届出がないときは、裁判所が(1)①の裁判をすること。
     オ (1)①の裁判の申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が(1)①の裁判の申立てをするときは一定の期間内にその申立てをすべきこと。
    ② 裁判所は、①の公告をしたときは、遅滞なく、登記簿上その氏名又は名称が判明している共有者に対し、①(イを除く。)の規律により公告すべき事項を通知しなければならない。この通知は、通知を受ける者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りる。
    ③ 裁判所は、①ウの異議の届出が①ウの期間を経過した後にされたときは、当該届出を却下しなければならない。
    ④ 裁判所は、(1)①の裁判をするには、申立人に対して、一定の期間内に、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託し、かつ、その旨を届け出るべきことを命じなければならない。この裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
    ⑤ 裁判所は、申立人が④の規律による決定に従わないときは、その申立人の申立てを却下しなければならない。
    ⑥ (1)①の裁判の申立てを受けた裁判所が①の公告をした場合において、その申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が①オの期間が経過した後に(1)①の裁判の申立てをしたときは、裁判所は、申立人以外の共有者による(1)①の裁判のその申立てを却下しなければならない。
    (注)(1)①の裁判に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

     8 所在等不明共有者の持分の譲渡

     所在等不明共有者の持分の譲渡について、次のような規律を設けるものとする。

    (1) 要件等
    ① 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。
    ② 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、①の裁判をすることができない。
    ③ ①の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。
    ④ ①から③までの規律は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。

    (2) 手続等
    ① 8(2)①ア、イ及びエ、④及び⑤の規律は、(1)①の裁判に係る事件について準用する。
    ② 所在等不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判の効力が生じた後2箇月以内にその裁判により権限に基づく所在等不明共有者の持分の譲渡の効力が生じないときは、その裁判は、その効力を失う。ただし、この期間は、裁判所において伸長することができる。
    (注)(1)①の裁判に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

  • 法制審議会民法・不動産登記法部会第22回会議議事録

      先に進みます。部会資料52の4ページでございますけれども,共有持分の放棄につきましては,現行法の規律を維持するという方向を御提示申し上げております。これについての御意見を承ります。中村委員,どうぞ。
    ○中村委員 ありがとうございます。日弁連のワーキンググループでは,今回の現行法を維持するという御提案について,特段の反対はありませんでした。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      ほかにいかがでしょうか。
      ここは特段,そのほかに御意見がなくていらっしゃると受け止めてよろしゅうございますか。

  • 法制審議会民法・不動産登記法部会第21回会議議事録

     引き続き部会資料51の共有の部分についての審議をお願いいたします。
      休憩のタイミングを考えまして,第2の共有の部分の「7 裁判による共有物分割」,10ページのところですね,補足説明まで入れますと11ページまでの部分ですけれども,この範囲について審議をお願いするということにいたします。
      どうぞ,委員,幹事から御自由に御発言ください。
      蓑毛幹事,お願いいたします。
    ○蓑毛幹事 ありがとうございます。日弁連のワーキンググループでの議論を御紹介します。
      第2の「共有等」については,少数の反対意見はありましたが,賛成意見が多数でした。ただし,表現ぶりや,趣旨をもう少し明確にした方がよいという事項がありましたので,意見を申し上げます。
      まず,1の「共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等」についてですが,ここには要件として①と②が記載してあって,補足説明では部会資料40の4と基本的内容は同じであると書かれています。しかし,部会資料40の4では,「その使用によって使用が妨げられた他の共有者に対し,共有持分の価格の割合に応じて,その使用の対価を償還する義務を負う」となっていたのが,今回の提案では,「他の共有者に対し,その使用の対価を償還する義務を負う」となっていて,内容的に同じなのか疑問です。使用が妨げられていないにもかかわらず,自らの意思で,共有物を使用しない共有者に対して,使用した共有者が対価を償還する義務を負う必要はありませんので,元の文案の方がよいと思います。
      2の「共有物の変更行為」については特段意見がありません。
      3の「共有物の管理」についても特に意見はないのですが,1点質問があります。この規律では過半数で決することができる賃貸借の期間が③の範囲内となっていて,補足説明の7ページの下から四,五行辺りで,③の期間を超える賃貸借契約を締結した場合には基本的に無効だが,「持分の過半数によって決することが不相当とはいえない特別の事情がある場合には,変更行為に当たらない」とあります。この特段の事情がある場合というのは具体的にどのようなケース,事案を想定しているのか,お考えがあれば御説明いただければと思います。
      4と5について意見はありません。前回まで弁護士会では,4の催告についても裁判所の関与を必要とすべきではないかという意見を申し上げていましたが,今回のような整理,つまり5の所在不明等の認定については慎重な判断が必要なので,裁判所が関与・判断するけれども,4の催告手続には裁判所が関与する必要はないというのが多数意見となっています。
      6の「共有物の管理者」についても特段意見はありません。
      7の「裁判による共有物分割」についてですが,基本的にはこのような規律でよいというのが多数意見ですが,判例の特段の事情の明文化,これは前回も議論になっていて,確か沖野先生が発言されたと記憶していますが,そのような内容の規律を置いた方がよいという意見もありました。一方で,そのような規定を置くと,優先関係を示すようなイメージを持たれてしまうので,今の案でよいという意見もありました。以上です。
    ○山野目部会長 意見の取りまとめを頂きましてありがとうございました。
      今川委員,ちょっとお待ちください。
      お尋ねが含まれておりました。事務当局からお話を差し上げます。
    ○大谷幹事 第2の1のところの表現ぶりですけれども,結局,共有物を使用する共有者がいるというときには,他の共有者は使用を妨げられてしまうということになりますので,その使用の対価を償還する義務は負うことになるだろう。ただ,別段の合意がある場合は除くということで,そういう別段の合意をしているのであれば,償還する義務は負わないという形になるのではないかということで,実質としては変えたつもりはございません。
      それから,共有物の管理の短期賃貸借の補足説明の部分のお話がございました。これは特別の事情があるような場合というのは,イメージしておりますのは平成14年の東京地裁の裁判例でございまして,これは建物の賃貸借に関するものですが,元々賃貸用の物件として造られた共有建物について賃借人が替わる,ほかの人を入れるということについて,それが管理行為なのかどうかということが問題になった事案です。これについては借地借家法の適用があるので短期賃借権とは言えない部分がございますけれども,そのようなものでも,その事案の内容に応じて管理行為だと認定されて過半数で賃貸できるとされていますので,そういう処理を妨げるものではない,この期間を超えるものであっても,場合によっては管理行為と認定されるものもあり得るということかと思っておりました。
    ○山野目部会長 蓑毛幹事におかれては,どうぞお続けください。
    ○蓑毛幹事 ありがとうございます。
      1の点だけ。居宅などの不動産を共有者の1人が占有している場合は,他の共有者は使用を妨げられますが,例えば,自動車を共有していて,使用する必要がある人が使用するという場合は,共有物を使用する共有者がいても,他の共有者の使用を妨げるという状況にはないと思って申し上げました。
    ○大谷幹事 そのような場合で,別段の合意があるというふうに見るのかもしれませんけれども,みんなが使える状態にあって順番に使っているというか,その時々で違う人が使うようなことをイメージされているんですかね。そのような場合に,1人が使ってたので別の人がその機会に使えなかったというのを,どちらかというと,それは何というかお互いさまという感じがしますので,そこのところまで,完全にほかの人が使用を妨げられている状態ではないときに,このルールが対価の償還をする義務を負うという形になるかというと,今お聞きしている限りだとちょっと違うのかなという感じもいたしましたけれども。
    ○蓑毛幹事 ごめんなさい。私の言い方が下手で,うまく伝わっていないようです。今申し上げたケースのように,共有者の1人が共有物を使用するときでも,対価を償還する義務を負うべきでないケースが多々あると思われるところ,今回の提案は,別段の合意がない限り,常に使用の対価を償還しなければならないように読め,うまく機能しないのではないかと思ったのですけれども。
    ○山野目部会長 今の①の文言で仮にいったとした場合において,恐らく現実に導き出そうとする解決は,蓑毛幹事と大谷幹事との間で異なっていなくて常識的に当たり前の結果になるということであろうと考えますが,そこに導く論理構成は,一つは別段の合意がある場合を除き,に着目するものですが,別段の合意というものは,別に別段合意していなくても別段の合意があるということはあり得るであろうと考えられますから,明示の合意がされていなくても共有者間の暗黙の了解で,お互い自動車を使っていいのではないか,特段お金は要らないよというふうな扱いになっているときには,そういうロジックで対価を支払わないでしょうというお話もありましょうし,もう一つは対価の概念の観点もあるでしょうか,対価を払わなければならない使用に対して対価が生ずるということを考えると,みんなが毎日必ず時間の隙間なく使いたいと思っている自動車であれば格別,誰も使っていない自動車をちょっと使わせてもらいますよというのは,対価を支払うに値するような使用,ここの規律が想定している使用とか対価の概念からは離れますというお話になっていくということもあるかもしれません。
      この規律の文言でいくときに,そうした理解を添えて進めていくということにするか,おっしゃったように,しばらく前に議論したような細密度の高い規律に戻して考えていくかということをなお検討していくということになりましょうけれども,言葉数の多いものにしたときに,あちらの方はあちらの方で,またそれぞれの文言についての疑問であるとか,その解釈の上での概念の外延を決めなければいけないとかという問題が生じてまいりますから,どちらでいくことがよいかということをまた考え込んでいくというお話になるものだろうというふうに感じます。ここのところは,ひとまずはそのようなことで更に検討するということでよろしいでしょうか。
    ○蓑毛幹事 よく分かりました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      今川委員,お待たせしました。
    ○今川委員 私は5の「所在等不明共有者がいる場合の特則」について,意見が一つと質問が二つあります。
      まず意見の方ですが,(1)の要件の①で,共有物に変更を加えることができる旨の裁判の,ここで言う変更には,補足説明にあるように,譲渡や抵当権設定などの持分を喪失させる行為を除くということは理解しています。ただ,その前の2の「共有物の変更行為」でも,同じように「共有物に変更」という文言が出てくるんですが,ここは多分譲渡等の処分行為も含むという理解かと思っているのですが,そこは違っているのでしょうか。そのように理解をしていたのですけれども,そうであるとすると,その違いを明確にするために条文の文言について工夫が要るのではないかというのが意見です。
      質問の方ですが,(1)の要件等の②なんですが,これはちょっと読み方がまずいのかもしれないのですが,アの決定をもらっておいて,イの決定も必要になるのか。アの決定だけをもらえば,4の規定に従い自らが催告をして行うということが可能なのではないかと思ったのですけれども,これは読み方がおかしいのでしょうか,そこを教えてください。
      それと,(2)の手続の②の共有者等で,ここに「等」が入っているのですが,ここで想定される異議は,所在不明である当該他の共有者のみであると思われるのですが,ここに等が入ると,何か他の共有者も異議が述べられるというふうに読み違えをしそうなので,この「等」の意味が不明なので教えてください。
    ○山野目部会長 第1点もお尋ねの趣旨があったかもしれませんから,3点について事務当局からお願いいたします。
    ○脇村関係官 今の最初のお話にあったのは変更と処分の関係でございますが,教科書などでは,部会でも議論がありましたとおり,そこの変更に含んで処分行為を読むという方と,いや,処分というのは変更とは違うんだと,別の概念だという両説があったと思います。今回はそういう意味ではなかなかそこの解釈自体に踏み込むのは難しいと思っておりますので,表現上はですね。そういう意味では,そこはフラットにせざるを得ないのかな,つまり何もいじらないということで考えておりました。
      そういう意味では,解釈論としては251条の変更で読むという方もいれば,いや,変更とは別の概念,処分というのは他人ができないものなのだということで読む概念,両説があるということを前提にしつつも,ここの持分取得についてはほかの条文と見合いで,当然含まれないという趣旨で書かせていただいたというところです。委員がおっしゃったとおり,本当はきれいに書くというのは一つなんですけれども,学説上の概念,あるいは更に言いますと,今の民法の文言ですと,変更行為は一応管理行為の一環,251条は前条の場合を除き管理に関する事項と書いていますので,恐らく変更は管理の中に入っているんだろうと思いますけれども,そういう意味で,文字面だけでいくと,多分処分行為は入らないというのが普通の読み方かなという気もしたりとかして,なかなかいじりづらいというのが正直ありましたので,こういった説明にしています。裁判所が絡むことですので,恐らく変なことは起きないだろうと思っていますが,我々としても,成案を得た際にはそういった説明についてきちんとして,ここには入らないということをきちんと周知していきたいと思っているところでございます。
      また,5の(2)の②のイのことなんですが,おっしゃるとおり,従前私の方も,もう①で読めないかなと思っていたところなんですけれども,いざ字にしてみますと,なかなか①があるから,その催告のケースはいいんですというふうに,逆に読みづらいのかなと思いまして,念のために書かせていただきました。運用としては,あらかじめどっちにするか分からないケースについては両方の裁判をとっておくというのも一つでしょうし,もう残りの人で合意ができていて,もうイなんか絶対しないんだということであれば,アだけとるというのもあるのかなというところで,そこは状況次第,催告することを目指しているのだったらイをとった上で,アも分からないのでとっておくというのも一つ方法としてはあるかなと思っています。
      最後の「等」は,ちょっと右往左往していて残ってしまったので改めて出す際には削ります。すいませんでした。
    ○山野目部会長 今川委員,お続けになることはおありでしょうか。
    ○今川委員 いえ,結構です。
    ○山野目部会長 よろしいですか。
      引き続き承ります。藤野委員,どうぞ。
    ○藤野委員 ありがとうございます。
      第2のところで,2点ほど質問させていただければと思っております。
      まず,第2の2の「共有物の変更行為」につきまして,ここで「変更」から除く行為の書き方については,これまでの部会の中でかなり議論されて,このような書き方に今回落ち着いたということだと理解しておりまして,従来のように改良を目的とし,と書くと,改良ではないものが入らないとか,そういったところは非常によく理解できるのですが,今回,形状又は効用の著しい変更を伴わない,という書き方に集約されたことによって,例えば元々全く効用を発揮していなかったような土地を暫定的に通路にするだとか,物置場にするとか,そういった改良のようなことを行って,それが見かけ上は著しい変更に当たっているように見えるかもしれないのですが,実態としては費用もそれほど掛かっていないし,元々使われていなかった土地なので,実際にはその効用を害しているものではないというときに,それも変更に当たらないと読めるという前提で書かれているのかどうかというところを差し支えなければ教えていただければと思っております。
      あともう一つは,第2の7の「裁判による共有物分割」のところでございまして,こちらについても要件を具体的に書き込むのが難しいということは,これまでの議論で重々承知しておりまして,それでこのような形で②のア,イを併記していただいたものというふうに理解しておるんですが,法律で書けることというよりは,今後実務がどうなるのかなという関心の下で質問させていただきたいのが,従来は分割方法が条文にそれほど明確に書かれていなかったために,それを裁判所が自由裁量で決められるという解釈がなされていたと思うのですが,今回,アの現物分割と,イということで,いわゆる賠償分割が明記されることで,これによって,何かその辺の考え方が変わる可能性というのがあるのかどうかというところですね。特に当事者が,例えば現物ではなくて賠償分割でいきたいというような主張をしたときに,今回,新しく条文を創設することによって,そのような主張がどう機能するのかなというところを現時点で考えておられるところがあれば教えていただければと思っております。
      以上,2点でございます。
    ○脇村関係官 
      1点目につきましては,恐らく効用を発揮していないというケースについてもいろいろなパターンがあるのだろうなと,あえてそういうふうにしているケースもあれば,本当にほったらかしているケースもあると思いますので,ケース・バイ・ケースによって,特にそれで問題ないというケースについてまで,それが著しい変更に当たらないことは言わないのかなというふうには思っています。恐らくその状況次第で変わってくるのだろうなというふうには思います。
      最後の共有物分割につきましては,この部会の趣旨として,恐らく従前の判例議論を何か変えようということで明文化したというよりは,当事者に分かりやすくしようという観点から方法を示したということに尽きるのだろうなというふうに理解はしております。ただ,もちろん今回明文化されたことによって,より当事者がそういった言い分といいますか,主張を実際にはするケースが増えることもありますので,そういった主張を踏まえながら裁判所の従前の判例で示したような枠組みの中で考えていただきたいということなのかなというふうに認識していたところでございます。
    ○山野目部会長 藤野委員,いかがでしょうか。
    ○藤野委員 ありがとうございます。
      1点目に関しては,例としてお示ししたような場合が変更に当たらない,と解釈されうるのであれば,実務上懸念が出ていたところもクリアできる可能性が出てくるのかなというふうに思っておりまして,後ろの方の第2の4とか5のところで,管理に関する事項については催告でいけるけれども,そうではない場合は基本的には裁判をかませるということになっていることとの関係でも,やはりここのところはすごく重要かなと思っておりましたので,ケース・バイ・ケースとはいえ,変更に当たらないという考え方でいける場合があるということであれば,よい方向なのかなというふうには思っております。
      2点目に関しては,ありがとうございました。実務サイドとしては,共有物分割を請求した場合の結論の予測可能性が少しでも高まれば,という思いは依然としてございますが,今の時点でそこまで明確にするというのは難しいというのは重々承知しておりますので,いただいたご説明を参考にさせていただければと思います。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      引き続き共有の部分の1から7までの御意見を伺います。いかがでしょうか。
    ○佐久間幹事 細かいことを申し上げるのですけれども,ちょっと文言で何点か気になるところがあります。
     まず3の「共有物の管理」のところなんですが,「251条の場合を除き」というのは,今の条文だと251条でいいと思うのですけれども,その前の2の「著しい変更を伴わない場合を除く」というふうになっていると,この括弧書きはここに入らないということをきちんと示しておく必要があるのではないかと思います。
      同じようなことなんですけれども,4と5に「共有物の管理に関する事項」という言葉が出てくるんですが,先ほど脇村さんが,変更だって,今は共有物の管理の一つと位置付けられているのではないかというふうにおっしゃって,そのとおりだと思うのですが,そうだとすると,この共有物の管理に関する事項のところの4と5においては,その変更を含まないということを明確に,文章を読めば分かるのはそのとおりなんですけれども,明確にしておいた方がいいのではないか。要するに,3,①,③に限るというふうなことを添えておくことが,読む人にとって親切ではないかなと思いました。
      それと,5の(2)の②が「異議を述べなかったときは」とあるんですけれども,後の方で出てくるのに合わせると,これは①のイの異議の届出をしなかったときは,しないときはとかというふうになる方が,ほかとの平仄が合うのではないかと思いました。全部ここは文言だけです。
      それで,1点気になるのが,7の「裁判による共有分割」で,これも合意ができていたのかもしれないし,別に強く主張するつもりはないのですけれども,②のイで,共有者に債務を負担させて取得させるということについてです。補足説明では,前回のような金銭を支払わせてとなると,金銭の支払が持分取得の条件というか,金銭の支払があって初めて持分を取得することができるということになってしまいますよね,ということなのですけれども,それはそうなのですけれども,仮に債務が履行されなかった場合,裁判分割をして,相手に債務の履行は命じられたけれども,履行してもらえませんでした,持分は失っていますって,それはいいのかなというふうに素朴に思いました。条件というか,対価の支払によって初めて持分が取得されるというところまではしないのであれば,しなくてもいいと思うのですけれども,何か優先的な救済を考えておく必要はないのだろうかと。そういった事態は極めてまれなのだろうとは思いますが,これまではそもそも全面的価格賠償自体がそれほどとられていなかったのだろうと思うのですね。だから問題は顕在化しなかったのではないかなと感じる面もあります。これからこういうフラットに②,ア,イ,特にイで,持分全部を債務の負担という形で取得させますよということがどんどん行われるということになると,債務不履行事例も出てくるのではないかと。その場合に,「まあ,そんなものです」というようなことでいいのかどうか,ちょっと疑問に思いました。
    ○山野目部会長 最後におっしゃった点を除き,佐久間幹事が前の方でおっしゃった諸点は,今後法文の立案を準備するに際して参考にするということにいたします。
      最後に御指摘があった点について,事務当局の説明を求めます。
    ○脇村関係官 ありがとうございます。
      正に先生がおっしゃったとおり,その点や,その履行をどうするのかという,従前この部会でも議論させていただいたところでございます。今回の部会資料につきましては,その点につきましては引換給付,あるいは停止条件とすることについて,裁判所に適切な判断をしていただけるのだろうという前提で組んでおりました。なかなか裁判所の判断事由について全て書き込むのは難しいということから,給付条項だけは書きましたけれども,そういったことを絡めて裁判所の方で従前どおり,あるいは従前よりも更にかもしれませんけれども,そういった問題に対応するために,お金を払うときに移すのか,あるいは引換給付にして登記移転するのか,そういったあたりを判断していただけるのだろうと期待して作らせていただいたというところでございます。
    ○山野目部会長 ④のところで引換給付判決などをする可能性があり得るということ,及び,しかし,それをしてくれということを裁判所が個別の裁判を言い渡すに当たってする,その内容を法文で事細かく示唆することが適当でないというふうに考えられるという2点に分けて,事務当局から説明がありました。
      佐久間幹事におかれて,いかがでしょうか。
    ○佐久間幹事 引換給付があり得るとして,あり得るというか,それはあるのでしょうけれども,正直,そのようにしないことが一体どういう場合にあるのかなというのが,よくのみ込めないところです。引換給付があり得るのだったら,ほぼ全て引換給付になるのではないかなというふうに素朴に思っただけです。
    ○山野目部会長 今までの家事事件手続法でも,恐らく②のイと④の規律が置かれていますから,そこについての運用と大きく変わるということはないであろうというふうに想像されます。そこでの運用を踏まえて,また適切な解決がされていくということでありましょう。
      7のところについて,今,佐久間幹事から御指摘いただいたことに留意をするということにいたします。ありがとうございます。
      ほかにいかがでしょうか。
      よろしゅうございますか。
      それでは,7まで審議をお願いしたという扱いにいたします。
      休憩といたします。

              (休     憩)

    ○山野目部会長 再開いたします。
      部会資料51の第2の「共有等」の部分について御審議を頂いているところであります。
      休憩前に,第2の共有の7の「裁判による共有物分割」のところまでが済んでございます。第2の「共有等」の残りの部分,8の「相続財産に属する共有物の分割の特則」から始め,第2が終わるところまで,部会資料51で申し上げますと,17ページの上半分のところで補足説明が終わっているところまで,この範囲で御意見を承ります。どうぞ御自由に御意見を仰せください。
    ○蓑毛幹事 部会資料11ページの「8 相続財産に属する共有物の分割の特則」ですが,これは従来,「通常の共有と遺産共有が併存している場合の特則」というタイトルで書かれていたものだと理解しています。このような制度を設けることには異論がないのですが,8の①,②の書き方で,これまで議論されてきた趣旨だと読めるのか,疑問が残りました。
      また,③の3行目括弧書きにある「当該相続人が同項の規定による請求をした場合にあっては,当該請求をした日」との規定を置く趣旨がよく分からないという意見がありました。当該相続人というのは,②ただし書の申出をした相続人と読むと思うのですが,共有物分割請求をした者自身が,それに対して異議の申出をするというのは考え難いので,そうでない読み方をするのでしょうか。ちょっとここは分かりにくいと思います。
      それから,9(1)④の持分の時価相当額というところについて,前回の部会資料では,これをどのように計算するのか更に検討が必要だと書かれていましたが,今回,特に説明がありません。条文としてはこのような「持分の時価相当額」という表現に落ち着くものと思いますが,その算定方法について更なる検討と,説明が必要だと思います。このままぽんと出されると,実務が混乱するとの意見がありました。
      それから10の「所在等不明共有者の持分の譲渡」についても,賛成意見が多数です。ただし,少し議論になった点として,15ページの(1)の③で所在等不明共有者が取得する権利について,不動産の時価相当額を持分の割合に応じて按分した金額の支払請求権を取得するのはよいのですが,この金額を裁判所が算定し,それに応じた金額が供託されたとして,その後の実際の売買で,時価と判断された金額を上回る金額で売れた場合に,その上回った金額を不明共有者に渡さずに,それ以外の共有者が取得してよいのか,それは不公平ではないかという意見が出されました。この点を解決するために,実際の売買代金に見合った金額を追加して供託させることが考えられますが,条文の定め方が今よりも複雑になるでしょうし,今の仕組みでは,売却に先立って,裁判所の決定と供託がされるものですから,その後に金額が上がったことをどう確認し,追加分をどのように追加して供託させるのかなど,手続きがかなり複雑になりそうです。
      あるいは,裁判所が時価相当額を計算するに当たり,通常はその時点で売買契約の交渉等がある程度進んでいるでしょうから,裁判所が時価を判断する資料として,当事者に売買契約書などの情報を出させるような仕組みにすることも考えられると思います。
      「11 相続財産についての共有に関する規定の適用関係」については特に意見はありません。
    ○山野目部会長 お尋ねも頂きましたし,御所感という仕方でお伝えいただいたこともありますけれども,それらを通じて,事務当局で考えていることがあったらお話しください。
    ○脇村関係官 ありがとうございます。
      まず,この11ページの特則の書き方については,できるだけ私たちも頑張りたいというふうには思っておりますが,現時点で,今の時点としてはこれが限度だというところでございます。
      その上で,この括弧書きについては確かに分かりにくいと思いますので書き直そうと思っています。趣旨としましては,恐らく通常共有,遺産共有が併存しているケースに共有物分割訴訟を起こされるパターンとしては2パターンあると思っていまして,一つは正に通常共有を第三者が申立てをするバターンと,相続人の1人が申し立てるパターンの2パターンがあるのかなと思っています。正に前者についてはもう残りの相続人の異議がなければいいのではないかということで,元々想定していた議論をさせていただいています。
      一方で,相続人がやるケースについては,相続人の中には遺産共有の分割後の遺産共有でやりたい,だからここでやってほしくないというパターンと,いや,全部やりましょうよ,10年たっているしというパターンの2パターンあるのかなと思っておりまして,書きたかったのは,訴える際にどっちかはっきりさせてくださいよと,その訴える人はですね。ということを何とか書けないかなと思ったのですが,それを異議の書き方にしたので多分分かりにくくなったというところだと思います。次回までに何とか工夫をしたいと思っているところでございます。
      また費用につきましては,もう少し私も考えてきたいと思っていますが,従前から議論ありますとおり,不特定のパターンには非常に難しい問題があり,所在不明のケースについては専門家を使うべきかどうかという議論,いろいろあったと思います。不特定のケースについては,少なくとも人数が分かっているのだったら平等基準でやるべきではないかとか,あるいはもう最低分からないときについては高めで納めさせるべきではないかという議論がありまして,裁判所の判断に委ねるということとしたこととの関係で,どこまでこの部会資料に書くべきなのかという議論はあるとは考えていますが,少しその辺,どういう審議を経てこういった条文になったかが分かるような形で,次回,何らかの形で部会資料で少し説明できるように考えていきたいと思っているところでございます。
      最後の結局金額どうこうの議論なんですが,確か前回ここの議論をした際に今川委員からも同じような御趣旨の御指摘あったと思いまして,当時私はずれていても仕方ないのではないですかみたいなことを口走ってお叱りを受けたところだと思っているところです。その後,改めて考えたのですが,例えば不当利得の返還請求などの最高裁の判例では,利得・損害額を判断する際に,実際売れた金額をベースに利得を考えるべきではないかという最高裁の判例はあったと思います。そういった考えは,多分ここでも一つ参考になるのかなと思っておりまして,その時価を考えるに当たっては,どういった金額で売却されることが見込まれるかということも資料の一つとして考えることはできるのではないかなと思われるところです。もちろん裁判所の判断事項にしたこととの関係で,必ず確認しろといっていいのかどうかというのは,証拠の採否に関するところでなかなか難しみはあるかもしれませんが,恐らく適切な金額を判断する上では,どういった金額で売ろうということを聞くとか,あるいは確認するという作業が一つ考えられるのではないかというところで,恐らく安いときには多分自分たちで言ってくると思いますけれども,高いときについても裁判所の方で適時適切に対応していただくというのが一つあるのかなというふうには考えているところでございます。
    ○山野目部会長 蓑毛幹事におかれては,お続けになることがおありでしたら,どうぞ。
    ○蓑毛幹事 今の説明でよく分かりました。
      10についてもう一つ意見が出ていたのを言い忘れていましたので申し上げます。
      時価相当額の概念で処理できるのかもしれませんが,供託する金額について,仲介手数料,固定資産税の精算,印紙代など,売買によって生ずる費用を時価から差し引いて計算する方がよいという意見がありました。
    ○山野目部会長 蓑毛幹事の今追加しておっしゃっていただいたことは理解いたしましたから,次回以降に向けて引き続き検討いたしますが,多分,法文には仲介手数料とかは書かないものでしょうね。それこそ正に仲介手数料,それから固定資産税の課税の基準になる日がありますね。あの日の前後で細かく計算分けてしていただくとかという事項は,もうこれは弁護士や司法書士の先生方はそのためにいるものであって,それは民法の法文が何かしてあげるという世界ではありませんから,従前も民事法制の規律において時価をもって売渡しや買取りを請求するといった場面で,常に大なり小なりその種類のことはありますけれども,法文がそのことを細密に手取り足取り表現してルールを明らかにしてきたわけではございませんから,今,蓑毛幹事におっしゃっていただいたことを今後いろいろ説明していくに当たって忘れないように念頭にとどめますけれども,恐らく法文の扱いとしてそれをどうするかという話にしにくい部分があるものではないかとも感じます。ありがとうございます。
      引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。
    ○松尾幹事 3点ございまして,第1点は,誠に申し訳ないのですけれども,休み時間に入る前の部会資料51の第2の7「裁判による共有物分割」について,ちょっと躊躇して言いそびれた点がございまして,発言をお許しいただければと思います。
      部会資料51の10ページの第2の7の②のイ「共有者に債務を負担させて,他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」で,先ほど佐久間幹事がご指摘された点ですけれども,賠償分割の場合の共有者の対価支払と他の共有者の持分取得の引換給付を実現できないかどうかということで,私も同じ問題意識を持っておりました。それで,第2の7の②のイの共有者に債務を負担させてという場合の債務は持分の対価の支払債務と理解してよいかと思うのですけれども,その対価の支払と引き換えに,他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法というような表現を用いることに差し障りがあるかどうかということについてご教示いただきたいと思いました。もしかすると,この対価支払について期限を許与すべき場合があるかもしれませんし,そういう考慮があってこういう表現になっているかもしれませんけれども,従来から問題点として指摘されてきた点でもございますので,問題提起をさせていただく次第です。考慮が足りない点があるかもしれませんがお許しください。
      それから第2点は,部会資料51の13頁,第2の9「所在等不明共有者の持分の取得」(1)の④で所在等不明共有者の持分の取得をするときに,この所在等不明共有者には持分の時価相当額の支払請求権があることを定めています。これはすっきり理解できるところであります。他方,次の(2)の④では,裁判所は持分取得の裁判をするときに,この所在等不明共有者のために裁判所が定める額の金銭を供託することを命じなければならないとしています。(1)の④では時価相当額という表現で,(2)の④では裁判所が定める額の金銭という表現になっているわけですけれども,その理解として,例えば持分取得を希望する共有者が既に共有物の管理について負担した費用の償還を求める場合には,そのことも考慮して裁判所は,その費用を差し引いた残額について供託すればよいということを認める趣旨でしょうか。私は,そういうことができるならばその旨を規定すべきではないかと思います。といいますのも,所在等不明共有者の持分の取得は,所有者不明状態を解消する手段としては,今回の改正提案の中では切り札と言ってもよいものかと思いますので,できるだけこれを使いやすいものにし,共有者間の公平を実現できるようなものにすべきではないかと考えるからです。この点の確認と意見が第2点です。
      それから,第3点として,部会資料51の15ページ,第2の10「所在等不明共有者の持分の譲渡」で,これは所在等不明共有者の持分を他の共有者の持分と併せて第三者に譲渡するということを前提にして,その要件と手続を定めるルールですけれども,この持分の譲渡のほかに,所在等不明共有者を含む共有者全ての持分について抵当権を設定するというようなことも可能であると想定しているでしょうか。所在等不明共有者の持分も含めて,この共有物について抵当権を設定するということも,この持分の譲渡と類比して可能なのかどうかという点の確認です。
      もし抵当権の設定ができるということになった場合には,部会資料51の15ページの(1)③で所在等不明共有者の持分の譲渡に対する時価相当額の支払請求権ことを考えたときに,譲渡ではないから,持分の対価に対する支払請求権のような対価の支払請求権はないということでよいのか,あるいはそもそもそこに問題があるから抵当権設定のようなことはできないというふうに考えるのか,この点について,ルールを明確にしておいた方がよいと考え,確認させていただきたいと思った次第です。
    ○山野目部会長 3点にわたって,お尋ねないし問題提起を頂きました。
      事務当局からお願いします。
    ○脇村関係官 ありがとうございます。
      まず,引換給付につきましては,先ほど山野目部会長からもお話があった点に絡むのですけれども,似たような制度として家事事件手続法というもので債務負担という表現を使っていることとの関係もあって,こちらの引換給付を必ずしないといけない,絶対だということまではなかなか難しいのではないか,さすがに裁判所の裁量を完全に封じてしまうことまでは難しいのではないかということで,技術的な面から書けないと思っています。ただ,もちろん先生,あるいは佐久間先生がおっしゃっていたとおり,普通はやるのでしょうと言われると,そうでしょうねとは思っているのですが,そこは技術的な限界があるのかなと思っています。
      次に,控除をした金額でいいのではないかというお話があったのですが,やはりなかなか現実的には難しいのかなと思っていまして,結局,控除すべき金額を考慮して供託金を定めると,時価から控除した,これは引いていいですよということをこの裁判の中でやるのは多分不可能なのだろうと思います。結局,客観的な時価であれば,それは裁判所が専門家の知見を借りて判断をできますが,そうではない,実際どういった費用を払ったかなどの認定をするには,恐らく管理人などを使った上で,その管理人の調査を経た上でやらないといけないということだろうと思います。ですから,先生おっしゃったようなケース,実際には控除した金額で買い取るということが認められてしかるべき事案もあろうかと思いますが,そういったケースにつきましては,この簡易なものではなくて,次回以降取り上げます所在等不明土地管理制度ですか,管理人を付けて裁判所の監督の下で管理人が適宜土地,共有持分も含めた管理をするという制度を考えておりますので,その管理人を選んだ上で,その管理人との協議の上で共有持分を集約するという制度を使うしかないのかなというふうには,今のところは思っています。ここの中で,この裁判所の手続を非常に重くするということは避けるべきではないかと思っています。
      最後の抵当権の件なんですが,正に先生おっしゃったように非常に難しくて,恐らくこの抵当権の設定をそういった形でやるというのは多分不可能なのだろうと思います。そういう意味では,この資料としては想定していません。では,抵当権を付けたいときにどうするのだという話が当然あろうかと思いますが,一つは,そういったもろもろのことをしたいのであれば,将来的にいろいろ担保保存義務を負わないといけませんので,持分を集約していただいて,このレジュメでいきますと12にあります共有持分の取得をまずしていただいて自分のものにした上で,抵当権を設定していただくのがいいのかなと思っています。そういう意味では,元々この持分取得だけでいいではないかという御議論もあったぐらいで,そういう意味で譲渡に特化した作りにしていますが,抵当権,あるいは更に言うと長期の,例えば賃貸借部分も好きにやりたいとかいろいろなことがあるのだったら,持分取得をしてきちんとやるというのが一つの方向性かなと思っているところです。
    ○山野目部会長 松尾幹事,よろしゅうございますか。
    ○松尾幹事 ありがとうございました。1点目と3点目については了解しました。
      2点目につきましては,所有者不明状態を解消する手段として,共有者の一部の者による時効取得についてのルールは設けられないことになったわけですが,時効取得の場合には特に対価の支払ということはなくても,他の共有者の共有持分権を取得できることとの関係で,所有者不明状態の解消手段として期待される所在等不明共有者の持分取得については,できる限り実用的なものにする必要があるのではないかという観点から,問題提起させていただいた次第です。確かに,所在等不明共有者のために所有者不明土地管理人を選任して手続をとることは一番真っ当な方法かと思うわけですが,ちょっとその手続的負担は重たいかなというふうに感じたものですから,確認とコメントをさせていただきました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      休憩前に引き続き,従来は全面的価格賠償と呼ばれてきたものを今般は明文の規律を置いて,それが可能であることを明らかにしようとする提案につきましては,多くの委員,幹事から,本日の部会会議に至るまでの御議論で賛成を頂いてきたところでありますとともに,本日は引換給付の問題を中心に若干の御議論があったところでありますから,この際,一言申し上げます。
      恐らく,いわゆる全面的価格賠償というものが現時点においては法文上,明らかになっていないにもかかわらず,あり得るということを裁判所がはっきり体系的に述べた最初の判例である平成8年の最高裁判所の判決は,それは可能であるけれども,大きく分けて2種類のハードル,2種類の要件を満たしてもらわなければ困るということを述べていました。
      一つは,その現物を特定の1人又は数人の共有者に取得させるということが,客観的に見てもっともであるという土地の利用その他の関係における事情が存在するということがなければいけないということであり,もう一つは持分を失うことになる者に対して債務を負う者がしかるべき資力を持っているという見通しが成り立ち,必ず対価となるお金を得させるようにしてあげなければならないという観点でありました。これらの要件の要請は,いずれももっともなものでありまして,新しい規律ができた後に,平成8年の判例の意義をどう考えるかは,もちろん今後において研究者がその点についての検討を重ねていくなどするところを待たなければなりませんけれども,恐らくはこの部会においてまとめようとしている案の趣旨としては,平成8年の判決の意義を全くなからしめるようなことは考えていないという理解でよろしいであろうと感じます。
      そうであるといたしますと,判例が要求する二つの要件を関連させて述べますと,その物を1人の者に取得させて使用させることがもっともだという事情がある場合に限られますから,状況によってはそれが切迫しているということもあります。地域のまちづくりであるとか,被災地の復興のような観点から,いち早く占有と登記は得たいというような要請がある事例もあるであろうと想像します。そのようなときに,常に引換給付であるというふうにしておきますと,登記や占有の取得が遅れることもあり得ると,そのような心配が出てくるであろうと案じられます。差し当たって,担保を提供しますから,お金は直ちにお支払いするということになりませんけれども,引換給付にしないで占有や登記を得させてほしいというふうな要請があったときに,それをもっともであるというふうに考えて,諸事情を勘案して引換給付等はせずに担保を立てさせ,又は極めて僅少な額であるために担保を立てさせないで,無条件で占有や登記の移転を命ずることとするかという事項は,申し上げたような一切の事情を斟酌して処理運用をしなければならない事項になりますから,そこのところについては類似局面の規律を設けている従前の家事事件手続法の運用等を踏まえながら,個別の事案に向き合った裁判所に任せようという在り方がそこのところの規律の提案における④のお話であったものでありまして,そういうふうなことを思い起こしますと,確かに佐久間幹事がおっしゃられたように,大抵の場合は引換給付になるでしょうということはもっともなお話ですが,裏返して言いますと,限られた場面かもしれないですけれども,そうでない取扱いが妥当とされる場面もあるものでありますから,余りそこを規律の文言として書き切ってしまうということは慎んだ方がよいのではないかということで,本日このような提案を差し上げているところであります。それをめぐって,委員,幹事の間で有益な御議論も交わしていただいたところでありますから,それを踏まえて今後の検討を更に深めてまいるということにいたします。
      お諮りしている共有の部分について,引き続き御意見を承ります。
    ○佐久間幹事 3点ございまして,1点はまた文言というか表現の話で恐縮なんですけれども,12ページから13ページまでにあります(2)の③のところで,「裁判所は,①ウの異議の届出が①ウの期間を経過した後にされたときは,当該届出を却下しなければならない。」とあるのですけれども,①のイについては同じような定めは要らないのでしょうか。私が見落としているだけだったらおわびいたしますけれども,何かないように思えて,ないとしたら,必要なのではないかなと思いますので,ちょっとお教えいただければと思います。それから⑥にある②オというのは,①オの多分誤植だと思います。これは多分間違いないと思います。これが1点目です。
      2点目は,8についてなんですけれども,8の②におきまして,共有物の持分が遺産に属するときに,共有物の分割は,その遺産の分割の手続でするのだという異議があったら,できませんということが定められているわけですけれども,その前提として,例えば相続人でない共有者が1人いまして,あと遺産共有の部分が持分であるというときに,7のルールの例えばイで,当該相続人でない共有者に全部所有権を取得させて,今で言う価格賠償にして,その金銭が遺産に属して共有だという扱いは排除されていないのか,この②のルールがあることによってそれも排除されるのか,私は排除されないということの方がいいのではないかと思っているのですけれども,そこを確認させていただきたく存じます。この②は飽くまで遺産共有の部分についての扱いであり,従来からそうだと思いますが,遺産共有に属しない持分を有している人は,共有物分割を請求できるはずだと思うのですね。それができるということは,今後も変わらないということでいいですかということと,そのときの共有物分割の内容としては7のとおりであり,この8の②のルールによってそこに制約がかかることはないということでよろしいですか。よろしくないのだったら,それはどういうことですかということを伺いたく存じます。
      3点目は,これはちょっとここの提案の直接話ではないのですけれども,9の不明共有者の持分の取得と,10の持分の譲渡の許可の場合に,その取得とか持分の譲渡が実現したら登記することになりますよね。その登記の申請は,結論としては当該持分を取得した人が1人でできる,共有物全体を譲渡した場合は,その持分の譲渡の許可を得た人が代わりにと言っていいのかどうか分からないですけれども,不明者についての手続も多分やれるということになると思うのですが,そのことについては民法ではないと思うのですけれども,不動産登記法かもしれませんが,何か定めが要らないのでしょうか。要るか要らないか,あるいはもし要るとしたらどういうふうなことをお考えでしょうかということを3点目にお伺いします。ひょっとしたら実務上の扱いで処理しますということなのかもしれませんが。以上です。よろしくお願いします。
    ○脇村関係官 ちょっと前後して8から先に順番でさせていただきますと,ちょっとすみません,先生の問題意識を私が的確に理解していない可能性があるのですけれども,おっしゃった点は,恐らくイエスなのだろう,変わらないということでいいのだろうと思っています。ただ,すみません,私は先生の問題意識がはっきり分からずに答えている可能性もなきにしもあらずなのですが,やりたかったことは,遺産共有持分のものについてはこうなりますということだけですので,それ以外のことについては特段触れていないですので,そういった意味で変わらないということだろうと思います。
      あと9の上の方で,異議がなかった場合,却下しなければならないと書かなかった点なんですけれども,従前からあちらの方は,正に催告がなかった場合にどうするのだということをメインに議論をしていましたので,明確的に書かせていただいたというところです。一方で,持分取得なり譲渡についてはいろいろな手続が複雑に入り混じっておりまして,公告した後,供託してということで,いちいち全てについてちょっと書くのが難しかったというのが正直なところです。ただ,内容については,もちろん異議が出た場合には当然その要件として所有者不明ではないということになりますので,当然できないということになりますので,そこは書かなくてもいいのかなと。逆に言うと,元々のあちらの方を書かない方がいいという結論なのかもしれませんが,あちらは一応明確にした方がいいかなということで書いてあるだけですが,そういう意味ではちょっと若干技術的な話かなと思っています。
      あと,6の2のオの話ですか,ちょっと確認した上で,また次回適切に答えさせてください。先生,9の(2)の⑥でよろしかったですか,御指摘いただいたのは。
    ○佐久間幹事 そうです。②オってあるんですかね。
    ○脇村関係官 そういう意味では,すみません,①なんですけれども,①オでして,すみません,ここは次回までにきちんときれいにさせていただきたいと思います。
      最後,登記ですね,すみません。結論としては,もう先生がおっしゃったとおりでして,もう単独,あるいは共同申請するにしても,所在等不明共有者抜きでできるということを考えておりました。不動産登記法の手当てについて,この決定書き,裁判書きで明確に権限があることは証明されているので,特段手当てしなくていいのではないか,もちろん改正された場合に手当てしなかったとしても,その点についてはもろもろの方法によって周知しないといけないと思っていますけれども,手当てしないという方法もあるのではないかと。一方で,本当に手当てしなくていいのかということも考えないといけませんので,もう方向としてはそちらの方向ですが,手当てしないことも含めて現在検討中です。いずれにしても,そこは遺漏なく適切に対処していきたいと思っています。
    ○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ,お続けください。
    ○佐久間幹事 ありがとうございます。
      8の②の共有物分割の話は,こうすべきだという意見があるわけではなくて--。いや,あるか。通常の共有者の共有物分割の請求が妨げられることは,それはあってはならないと思っていて,今お答えをそう頂いたのですけれども,かつ裁判所がどう分割するかというのは,遺産共有の方の側で,いや,これは共有持分として残してほしいという希望が例えばあり,それが理由があるというふうになると,7の②のイなんていう判決が出る裁判がされるということは,普通ないのだろうと思うのですけれども,そういう希望が仮になかったとしたら,どうなるのでしょうか。実際上は何を考えているかといいますと,遺産共有の状態で訳の分からないことになっているものについては,誰か1人にぽんと所有権を取得させることが,当該土地がそれ以降,きちんと利用されることになる道を開くことになると思っています。そうすると,7②イの方法も,差し支えのないときは排除されていないのですよねということを確認していただけるならば,今日じゃなくてもいいのですけれども,ちょっと整理されて,そうしていただくのがいいかなと思ったので発言をさせていただきました。そのときは金銭が共有,遺産共有のままですという,それでいいのかどうかもよく分かりませんけれども,なるのかなということで発言させていただきました。
    ○山野目部会長 ありがとうございました。
      脇村関係官からお答えを差し上げたように,ひとまず今日考えているところをお話ししましたけれども,佐久間幹事の御意見を踏まえて,なお整理をすることにいたします。
      ほかにいかがでしょうか。
    ○沖野委員 ありがとうございます。
      今の佐久間先生と脇村さんの間でやり取りされたことに関して確認させていただきたいのですけれども,12ページから13ページの9の項目の(2)の③で,ウの場合に,期間徒過の場合の手当てが書かれていて,イについては書かれていないという点について御説明は,その場合には所在等不明共有者ということにならず,①の要件を欠くので,いずれにせよ(1)の①の裁判がされないというものと伺いました。
      ただ,そうしますと,(2)の①のイで,一定の期間までにその旨の届出を,その所在等不明共有者がすることということですから,実は私だとか,実は私はここにいますというような場合には,しかし,一定の期間までという限定が掛かっておりますので,期間を超えた場合どうなるかという問題はあり,かつ(1)の④で,持分を取得したときは所在等不明共有者が請求することができるということですから,後に判明して請求するという事態もあり得るということで,一定の期間内に出てこなくても,後に登場したときは,この金銭調整でいくという考え方がとられているように思うのですけれども,そういう理解ではないのでしょうか。それで,(2)の③のウの方は,(1)の②で届出をしたときはできないということになっていて,届出はされたけれども,期間の要件を満たしていないので,そのときは届出がない形にするために書かれているのだと思いますので,したがって,①のイとは少し扱いが違うというのは分かるのですけれども,扱いが違うという内容が果たしてそういうことなのかということを改めて確認させてください。さらにはその関係で,(2)の②については登記簿上,氏名,名称が判明している共有者に対しては,登記簿上の住所又は事務所に宛てて通知を発するということになっているのですけれども,対象事項として,①のイは除くとなっています。ただ,所在等不明共有者の中には,およそ誰か分からないという場合のほか,誰かというのは名前は分かっているけれども,所在が分からないという場合があって,その場合には登記簿上から氏名や名称は分かります。そこに住所が,その登記簿上は明らかになっているときには,その通知をするとなっているときに,この所在だけが分からないという人に対しては通知しないということでいいのかどうか,一定期間経過後は駄目だということになるときには,①のイを除かないのではないかという気がしまして,一方でまた更に細かいことを言うと,②で①(イを除く。)ならば,対象者も限定しなければいけないのではないかということで,少し平仄を合わせる必要があるのかなと思っております。
      それで,もうついでに申し上げてしまいますと,改めて平仄を合わせるように表現をお考えになるということですので,15ページの10の(2)の①について,ここでア,イ,エということで,ウとオが除かれているのですが,これはウを除く趣旨だというのは分かるのですけれども,オを除くと,次の④から⑥までの,⑥はオについての記述ではないかと思われるので,⑥も除くのかなと思います。全く誤解しているかもしれません。平仄は合っているのか,いや,このままでいいのか,考え直した方がいいのかということは改めて検討していただければと思うのですけれども,一定期間経過後にイの異議が出たときの扱いだけは,内実が違ってくるかと思いますので確認させていただければと思います。
    ○脇村関係官 大変すみません,誤記の点はあると思いますので,もう一回そこは確認させていただきたいと思います。その上で,最後の点は恐らく中身のお話だと思うのですが,私としましては部会資料を作った趣旨としては,裁判で入れてきたケースについては,もうそれは実体法上の要件がないと言わざるを得ないのかなと思っていますし,一定期間,届出がなかったからといって,後で判明したのに,もうやはり持分移転するのだというのはさすがに難しいのかなと思っておりまして,そういったことを考えておりました。
      もちろん,では,期間を区切るのは何でなのだという御指摘なのだろうと思いますが,やはりそこは早く届け出てくださいよというメッセージを出した方がいいのではないかと思っていまして,例えば失踪宣告なども,一定期間までに生存届出すべきことということで公告することになっています。ただ,失踪宣告も,恐らく届出期間を過ぎても,私,実はここにいますということが出てくれば,それは失踪宣告しないのだろうと思いますので,その期間を定めることと,実体要件との絡みは,そういった整理もあるのかなというふうに考えていたところです。
      あと,登記簿上のものについて,そういった意味で,通知しなくていいかという点につきましては,いずれにしても,実体法上の要件の関係で,登記簿上の住所に住んでいないということは確実に調査をしないといけないと思っていますので,それは通知とか,そういった対象で記述しなくても,実体法上の要件として当然調査することになるだろうと思っていました。ただ,そうだとすると,この通知の共有者から所在等不明共有者を抜いた方がいいのではないかという御趣旨だと思いますので,ちょっと書き方は少し考えさせていただきたいと思います。
      部会資料の趣旨としては,以上でございます。
    ○山野目部会長 沖野委員,お続けになることがあればお話しください。
    ○沖野委員 結構です。今のご説明で趣旨は分かりました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      ほかにいかがでしょうか。
    ○佐久間幹事 今のことに反対ではないんですけれども,ちょっと戻って恐縮ですが,9ページの5の(2)の②も,私は先ほど,「イの異議の届出をしないときに」と書いた方がいいのではないかというふうに申し上げました。しかし,今の脇村さんの話ですと,イの一定の期間までにというのは,ここも実は意味がなくてというか,がちっとは定まった要件ではなくて,とにかく裁判が行われている間に異議というか,ここにいますとかといったことが出てきたら,もうこの裁判はしないということになるということでしょうか。平仄を合わせるとそうなると思う。それだったら,それでいいのですけれども,確認だけお願いします。
    ○脇村関係官 先生おっしゃったのは,今,5ですかね。
    ○佐久間幹事 5です。
    ○脇村関係官 5の(2)のイだと思うのですけれども,ここについて,確かにどうしようかという問題はありまして,先ほど言いました,持分取得のケースとは若干意味合いが違ってくるのではないかという意識もありまして,持分の管理行為の特則については,期間までで,それはセットされるべきではないかという意見が,多分今までの議論からするとあるのかもと思っていましたので,私としてはそういう,すみません,明確に意識したのは今なのですけれども,ここについてまで,後で期間過ぎてまで言ってきていいんですというのはどうなのかということは思いました。ただ,それが表現できているのかという問題はあるんですけれども,ちょっと工夫できるかどうかは考えてみたいと思います。ただ,なかなか字で書けなさそうな気もするので,頭の整理としてやるのか,その意味でちょっと改めて整理はしていきたいと思います。
    ○佐久間幹事 分かりました。ありがとうございます。
    ○山野目部会長 木村幹事,どうぞ。
    ○木村(匡)幹事 ありがとうございます。
      8の「相続財産に属する共有物の分割の特則」の規律の関係で,実務的な観点から3点ほどお伺いしたいと思います。
      まず1点目ですが,共有物の帰すうについて,地裁の共有物分割と家裁の遺産分割の各判断に齟齬が生じてしまった場合の処理に関してどのように考えるかについて,教えていただければと思います。2点目として,相続開始から10年が経過したものの遺産分割手続において具体的相続分の主張が可能な場合で,共有物分割手続と遺産分割手続が併存している場合というのはどのような処理になっていくのかについて,教えていただけますでしょうか。
      3点目として,そのようなケースで遺産共有部分を共有物分割訴訟の中で分割したが,当事者の一部が民法906条の2の同意をしなかった場合,共有物分割訴訟の結果が残余の遺産分割にどのような影響を与えるのかについてどのように考えるかにつきまして,教えていただければと思います。
    ○脇村関係官 脇村でございます。ありがとうございます。
      確か,この論点を取り上げた際にも御質問いただいていたところだと思いますので,ちょっとかいつまんで,今考えているところを説明させていただきますと,共有物分割の帰すうが,結論について齟齬が生じたケースがあると思います。
      そういったケースについて,パターンとしては共有物分割が先にされて,例えば共有物分割で共有物の全部を相続人1人が全部取ってしまいますよみたいな判決をした後に,遺産分割で相続人の1人が,別の相続人が遺産持分を取ってしまいましたというような,そういった帰属先がずれてしまうケースはあると思います。恐らく実体法的な整理だと思うのですが,共有物分割で完全に持分が処理されて,それはもう遺産でなくなってしまったということですと,後者の審判はその限度で空振り,遺産分割はされない,遺産分割がないものについて遺産分割されたというのと同じ処理をされるのかなと思います。恐らく現行法でも,第三者が全部取ってしまって,遺産分割はそれを無視してやってしまったケースは同じようなことが起きるんだと思いますが,それと同じ処理かなと思います。
      逆に遺産分割が先行したパターンですと,遺産分割で特定の人が全部取得したケースについて,かつ登記もされますと,本当はその人だけを相手を共有物分割すればよかったのを無視してやってしまったということで,そういった適格を間違ったケースはどうするんだとか,あるいはそもそも持分割合をずれてやってしまったので,恐らく審判自体がどうこうというよりは,その後の判決の適否が問題になってくるのかなと思います。すみません,先ほどのケースでいっても共有物先行でも判決の効果は影響ないと思います。その上で,登記がされていないケース,先に遺産分割されて登記されなかったケースは,恐らく共有物分割は一応登記基準でやるという判例がございますので,無視してやったのが有効に成立をして,ただ,あとは持分の帰すう自体は登記の先後で普通に決まるのかなと。ただ,事後処理は,遺産分割内部は,事後処理をきちんと不当利得等で処理してくださいということになるのかなと思います。
      そういった意味で,前回も少し議論ありましたが,そういった齟齬を生じないようにしていくのは重要なことかなと思いますので,我々としても今後改正する際には,今までも同じような問題はあったので,情報共有は大事だったのですけれども,当事者にはきちんと適宜適切に裁判所に伝えてフィードバックできるようにしてほしいなと,当事者には思うということを周知していくのかなと思っています。
      また10年経過して,具体的相続分の主張が可能なケースがございます。結局,きちんと異議を出してくれるのが一番大事なのですけれども,そういう意味で,異議を適切に出してやってくださいと。ただ,異議を無視してやってしまったケースは先ほどと同じ処理になりますので,いずれにしても異議を,具体的に主張したいのであれば,それは遺産分割しているので,これでやめてくださいということを当事者にきちんと言って,変なことが起きないように相応にやってくださいということかなと思います。
      ただ,いずれにしても結果的にやってしまって,共有物分割をやって,その後,具体的相続分の算定するときどうするのだという問題は理論的にはあるのかなと思いますが,共有物分割は持分の交換の場合は一種の持分譲渡に近い発想ですので,そうしますと,結局何が起こっているかといいますと,相続人の1人が自己の持分を処分した場合と同様の状況が起きている。それについて,先般の相続法改正ですと906条の2で,いろいろな解釈がありますけれども,いずれにしても,全員の同意があれば組み込めるけれども,全員の同意がなければ駄目ですよという話が出てきます。そうすると,結果的に具体的相続分で取りはぐれるケースがあるということが言えますので,そういう意味で,今回そういったことも込み込みで,この異議の申出を入れておりますので,本当に具体的相続分がある,したいというときについては,できるだけ異議申出をしてくださいと。していないと,後で問題が起きますよということは伝えていきたいなと思っています。
      そういう意味で,今回のスキーム全体について言いますと,やはりそもそも共有物分割をやるというときに遺産分割が併存しているケースがどれだけあるのかというのは若干ありますけれども,併存しているケースについて,別々にやるべきケースについてはきちんと異議を申出すべきですし,逆に申出しないケースについては,当該共有物についてはそちらで処理するという前提で組んでもらえばいいのではないかなと思います。そういった従前から起きていた問題とほぼ同じですけれども,この改正がされた際には,いずれにしてもそういった問題があるということは注意喚起していかないといけないなとは,改正の趣旨を説明する際には注意喚起していかないといけないなというふうには思っているところです。
    ○山野目部会長 木村幹事,お続けください。
    ○木村(匡)幹事 ありがとうございました。確認できましたので結構です。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
    ○今川委員 今の木村幹事の三つ目の御質問についての関連なんですが,8の共有物分割の特則だけではなくて,9の不明共有者の持分取得,それから10の不明共有者の持分譲渡の制度について,後で出てくる第4相続の3の遺産分割に関する見直しで,10年経過しても具体的相続分を主張することができる場合というのがあって,前の部会では,その場合には,共有物分割の特則とか持分取得,持分譲渡の制度を何とかストップさせなければならないということも議論されたと思いますが,ただ,今回,8・9・10のそれぞれの規定の中には単に10年の経過としか書かれていないので,遺産分割の見直しとの関係がちょっと読み取りにくいので,もう少し読み取りやすいような規定ができないのかということであります。
      それと,今,脇村関係官が異議について述べられましたが,今回,共有物の分割の特則と,持分取得について,他の共有者が異議を申し出ることができるという制度が明確に入りました。持分譲渡については,異議の制度がなくても,相続人全員が持分譲渡することが停止条件となっていますので,10年経過しても具体的相続分による遺産分割協議を行うことができる事由を有する共有者は,自分が持分譲渡しなければ,持分譲渡の裁判の効果がなくなるので,それはそれでいいと思います。しかし,共有物分割の特則と持分取得について異議を申し立てるためには,遺産分割の請求をした上で異議を申し立てるというのが前提になっていると思います。そうすると,遺産分割の請求することができない事由のある相続人に対して,遺産分割を請求してから異議を申し立てろということになりますが,それをどのように理解していいのかというのが分かりにくかったので,御説明いただければと思います。
    ○脇村関係官 ありがとうございます。
      そもそもやむを得ない事由で一番想定していましたのは,死んだことも知らないとか,そういった客観的状況を介してできないケースを考えています。そういった意味で,通知まで来た上でできないケースが本当にあるのかと言われると,多分ないのだろうと思います。そういった意味で,やむを得ない事情があるケースについて,確かに結局気づいてしまって,やらなければということはあると思いますので,この共有物分割の特則なり,この9ページの持分の取得,今回の今川委員との議論を踏まえて,遺産分割請求をして異議で止められるという制度を同じように入れさせていただきましたので,9の②でですね。そういう意味で,共有物分割の特則,あるいは持分の取得については異議によって止められる制度を入れていますので,具体的相続分をやりたいというケースについては,これである程度カバーできるのだろうと思います。もちろん残部がありますので,そっちでやればいいやということでしないというのも,ほかの遺産が残っているので,いいやということもあるとは思いますけれども,手続としては,確かに10年にしていますけれども,そういった事情があるケースについて,通知をした上で異議申出することによってカバーできるのではないかなというふうには理解しています。
    ○山野目部会長 今川委員,よろしいですか。
    ○今川委員 はい。
    ○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。
      そうしましたならば,部会資料51の「第2 共有等」でお諮りしている諸事項については,本日,委員,幹事からお出しいただいた指摘を踏まえて議事の整理をすることにいたします。
      本日は多くの委員,幹事から考え方の整理や字句の推敲について有益な御指摘を頂きました。字句の推敲の関係でもう一つ付け加えておきますと,持分に応じて按分となっているところと,持分の割合で按分してとなっているところがあったりいたしますから,そういった点も含めてもう一度見直しをするということにいたします。どうもありがとうございました。

  • 法制審議会民法・不動産登記法部会第17回会議 議事録

    ○山野目部会長 再開いたします。
      部会資料40をお取り上げくださるようにお願いします。
      部会資料40は,「共有制度の見直し(通常の共有における共有物の管理)」についてお諮りするものであります。
      1ページの「1 共有物の変更行為」のところについては,部会資料27をお示しして,前回この話題をお諮りしたときと同じものの提案を差し上げております。前回の第13回会議で御指摘いただいた点については,補足説明でこのように考えたらどうかという御案内を差し上げているところであります。
      2ページから3ページにまたがっての共有物の管理行為についての(1)民法252条についての改正方向をお示ししているところは,①,②,③とも前回部会資料27でお示ししたのと同じものをお示ししています。④も何となく同じものをお示ししているように映りますが,実は,a,b,c,dで並べて示している期間を超えて約束がされた場合についてはどうするかということについて,それを明記する規律を添えておりましたところが,それを削ってございます。削った方が,借地借家法の適用関係についてより明快な解決を示すことができるものではないかという考えに基づくものでありまして,そのことを補足説明で御案内しているところであります。
      5ページのところの,まず(2)は,共有者全員の合意とその承継についてという論点につきまして,規律を設けることに困難があるものではないかという複数の御指摘を第13回会議で受け,それらがもっともであると考えられるところから,規律を設けないとする方向の提案を差し上げております。
      5ページの一番下,「共有物の管理に関する手続」について,持分の価格に従って過半数で決する際の共有者相互のコミュニケーションの在り方については,これも規律の創設を見送るという提案を差し上げているところでございます。
      6ページの4にまいりまして,「共有物を使用する共有者と他の共有者の関係等」につきましては,①,②とも,基本は部会資料27でお示ししたのと同じものをお示ししております。損害賠償の規律等について,誤解を招かないように整理をしている部分がございますけれども,基本は第13回会議にお諮りしたものと同じでございます。
      部会資料40の全体について御意見を承るということにいたします。
      委員,幹事の皆様方から,どうぞ御随意に御発言をください。
    ○橋本幹事 弁護士会で議論した内容を御紹介したいと思います。
      まず,1の共有物の変更行為についてですが,方向性については大きな異論はありません。
      ただ,この著しく多額の費用の点ですが,補足説明にいろいろ説明書かれているんですが,ちょっとやはり不明確だよねという意見が多くて,費用という切り口でやると,どうしても補助金とか,あるいは求償しないということについて疑義が出てしまうのかなと思って,意見としては,もうちょっと何とか目安的なものを示せないのかというような意見もあったんですが,むしろこの補足説明で書いてあるように,結局のところ,物理的に大幅な変更を伴うかどうかというところがキーポイントになっているように思うので,金額が多い,少ないよりも,物理的に大きな変更を伴うかどうかという方にした方が,すっきりするのではないのかなと思いました。意見です。
      それから,2についてですが,(1)の②なんですが,これについては,中間試案のパブリック・コメントのときも,日弁連としては反対の意見を述べていたんですが,これについても,現時点でもまだ賛成できないという意見が強かったです。
      後ほど検討される部会資料42の第3によると,遺産共有の場合も全て適用されるという前提だという立てつけのようですので,遺産共有の場合だとすると,ちょっと弊害が予想されるのではなかろうかということで,やはりこの部分について,反対という方向は今のところ維持するという方向です。
      それから,④の点ですが,cに関して,借地借家法の適用がある建物賃貸借の場合には,全部無効だという説明が補足説明に書いてあるんですが,ちょっと硬直的ではなかろうかと,部会資料27の当時のもののがよかったんではないかという意見がありました。
      それから,(2)の共有者全員の合意とその承継について,設けないということなんですが,何とか設ける方向でもうちょっと粘れないでしょうかという意見がありました。
      3と4については大きな異論はありませんでした。
    ○山野目部会長 弁護士会の意見をおまとめいただきまして,ありがとうございます。
      引き続き承ります。
    ○沖野委員 2点お伺いしたいことがございまして,1点目は,3ページ目の④について,今御指摘のありました点ですけれども,むしろ意見としては逆になりますが,4ページの補足説明のところでは,部会資料27の後段で書かれていたものを削除しているのは,混乱が生ずることになるからだと書かれておりますけれども,この混乱自体は,借地借家法で30年のものを5年の一般の建物所有目的の土地賃貸借契約を締結することはできない,その強行規定があるにも関わらず,こちらの方が優先して5年になってしまうと読めてしまうことによる混乱ではないのかと理解したのですが,そうだとしますと,特に借地借家法などの他の強行規定がある場合に,こちらが優先するということではないという話であり,その限りでのことになります。
      しかし,他方で,④の話というのは,結局共有物の管理として,どこまでできるのかということであって,そうだとすると,契約締結が処分に実質的に該当するような長期の契約というのは,そもそもこの過半数決定ではできないとする。したとしても,共有との関係では効力を持たない,過半数決定ではできないことだと整理してしまうというのも,一つの案ではないかと思いまして,それに対して,現在の④は,それはできるんだけれども,超えて存続することができないんだと書かれておりまして,部会資料27の後段の規律は,ただ,強行規定との関係で混乱が生じるから削除したということですから,この内容は維持されていると見られるんですけれども,本当にそれでいいんだろうかというのが,むしろ気になったところです。この期に及んでという感じはするんですけれども,どうだろうかということです。むしろ,これは管理行為には当たらないので,こういうものはできないと整理するという方が,あるいは,この期間内の契約しかできないと,もちろん,更に強行規定を排除するのはできないという整理の方が,むしろ適切ではないかと,この記述を見て思ったところですので,どうだろうというのが一つ目です。むしろ意見だと思いますけれども,あるいは,部会資料27からの変更の趣旨は何かということかもしれません。
      もう一つは,4ページの補足説明の(2),4ページの下から3行目のところですが,一部の共有者の同意なく借地権を設定した場合の法律関係についてということで,土地賃貸借の例を考え,その説明をしていただいています。この法律関係を明確にすべきだという指摘がこの趣旨だったのかどうかというのは,ちょっと私には分からないのですけれども,この例の場合について,そもそも建物所有で借地借家法の適用があって,しかも,土地であれば30年となるような契約について,Cが異議を述べた場合には,借地権の設定自体ができないと。他方で,賃貸借は有効に成立しているということで,一種他人の権利の部分を処分してしまうという,そういう関係かと思うのですが,これは,本来そもそも過半数決定でできない場合であるのに,それをしたらどうなるかという話ではないかと思われるのですが,ここの説明は。そうではないのでしょうか。
      問題になりますのは,過半数決定でできるけれども,しかし,異議を述べた者との関係ではどうなるのかとか,そのときに,契約は誰と誰との間ですることになるのかとか,そういうことの整理が,やがて出てくる管理者の選任等々との関係でも必要になってくるのではないかと考えられまして,そのような問題として整理し直すべきではなかろうかと思われるのですけれども,そうした場合に,ここで過半数決定をするということが,仮に共有者が集まって,こういう形でこのような契約の賃貸借をするかどうかということについて,過半数でしようということになった場合に,契約はどうなり,賃貸人たる地位はどうなるのかについて,以前の御指摘では,それでも異議を,自分は反対であると述べた人は,およそ賃貸人になるということもないし,契約は飽くまで賛成した人,場合によっては賛成した人ではなくて,そのうちの1人でもいいのかもしれません。1人だけが契約をするということで,あとは内部関係として処理していく,反対者は,妨害はしないという話になるのかもしれないんですが,そういう権利関係なのかどうかということの整理が必要でないかと思われましたので,問題の設定と,それから,もしそういう問題だと考えるならば,どういうふうに理解したらいいのかということを,御説明いただければと思います。
      長くなってすみません。
    ○山野目部会長 沖野委員がおっしゃった2点について,今,事務当局との間で意見交換をしてもらおうと考えます。
      前段でおっしゃった3ページの④のところは,これからの御議論にもよりますが,沖野委員のお話をヒントとして,削った部分を復活させるということになれば,理由,経過は全く異なりますけれども,橋本幹事の復活させてくれという弁護士会の意見と,奇しくも結果だけは一致することになり,幸せな結果に至りますが,本当にそう進むことがいいかどうかは,引き続き考えなければなりません。
      沖野委員の後段の4ページから5ページのところ,これ,例の挙げ方が悪いですね。2年とかの建物の賃貸借をしたときに,しかし,反対した人の置かれる法律的な状況がどうなるかという例を挙げれば,今のような御疑念の指摘を受けなくて済むであろうと考えますから,何かこれ,筆が滑ったとも感じますけれども,事務当局からどうぞ。
    ○大谷幹事 1点目に御指摘いただいた短期の賃貸借でないもの,長期間の賃貸借を過半数ですることはできないとするのではないかというような御指摘,確かにここのように変えてみて,例えば,建物の使用権3年を超えるもの,土地の使用権5年を超えるものを,契約としてやったときに,それ自体もう無効だと考えることもあるのかなと思い直し始めていたところです。ですので,ちょっとここは,今の御指摘も踏まえまして,④の書き方,後段の部分を削ったということだけではなくて,もう少し,共有関係で,過半数だけで賃貸借をするというときにはどうなるのかというのを,改めて整理をしてお示しをしたいと思います。
      また,過半数の者との間で賃貸借契約をした場合の法律関係ですけれども,これも,ほかのところで出てまいりましたけれども,A,B,Cの3名のうちのA,Bのみで賃貸借をしたときに,賃貸人は誰かといえば,契約関係はどうなるかといえば,AとBだけが契約当事者になるということで,反対をしているCについてはならないと。ただ,CはAとBが結んだ賃貸借契約を否定することができないという関係になるのではないかと考えているところでございます。
    ○山野目部会長 大谷幹事のお話の後段はそのとおりで,そのこと自体は,沖野委員もそのように理解しておられるけれども,挙げている例が,借地権の設定は元々できないことから,もっと適切な例を挙げてくださいという御要望であると受け止めますから,次回は丁寧にここを書き改めてお出しすることにいたしましょう。
      沖野委員,よろしゅうございますか。
    ○沖野委員 ありがとうございました。
      私自身は,実は別の考え方もあると思っておりまして,大谷幹事は私自身の考えを受け止めてくださったのですが,整理としては,最終的に部会長がおっしゃったような整理でいくということで,まとまっていくということには,全く異存ありません。
    ○山野目部会長 どうもありがとうございます。佐久間幹事,どうぞ。
    ○佐久間幹事 ありがとうございます。
      今の4ページの(2)のところなんですが,多分,前回私が申し上げたことについて対応していただいたんだと思うんです。どういうことだったかといいますと,無効だとするのか,期間を超えることができないのだとするのかはともかくといたしまして,借地借家法の適用のある賃貸借を過半数決定でしてしまった。ところが,借主の方は,そうとは思わず,無過失まで含めるのかもしれませんが,善意無過失で借地借家法の適用があると考える状況であった,その場合に借主を保護はしなくていいのかと,私が申し上げたのに対して,これはお答えいただいたんだと思います。ですから,これが,前回からの議論の続きで,不適切な記述というわけではなくてというか,事務局のために私が言う必要があるのかどうか分かりませんが,これはこれとして,前回の私が申し上げたことに対してお答えを頂いていて,それに加えて,今日,沖野先生から御発言があったという整理が適当かと思います。これが1点です。
      もう1点は,これ,ずっと出ているところで,今更なんですけれども,1ページの1のところで,括弧書きで,共有物の改良を目的とし,かつ,著しく多額の費用を要しないものを除くとあります。これがこのままでいいのか,先ほど橋本幹事から,軽微変更みたいなのに変えた方がいいのではないかということがございましたが,それは御検討いただくとして,もしこのままでいくというときに,軽微変更でも一緒かな,改良という言葉でいいのかなというのが,少し分からないなと思ったところがございました。改良というのは,多分価値を増すということが含まれていると思うのですけれども,これからの時代,ダウンサイジングとか,価値の面でいうと,例えば,今まで居住に適していたもので,それ自体としては価値が高かったものを,もう利用者がいないので,納屋に変えるとか,簡易化するという方向で目的物に変更を加えるということもあり得るのではないかと。これは,主観的には使用価値を高めるということになりうるとは思うのですけれども,客観的に言うと,価値が高まるとは言えないのかなと思います。そういったことから,この改良を目的とするということでは駄目だというわけではないのですけれども,これからの時代,これで尽きるということでいいのかどうか,考える必要があるのではないかと思いました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      前段のお話を伺っていて,佐久間幹事は優しい方だなということを実感いたしました。
      確かに4ページから5ページは,前回の佐久間幹事のお話を引き継いだものでありますから,本日沖野委員から頂いた御注意を踏まえ,将来に向けては適切な例を選択して,補足説明の文章を草していくことにいたします。
      後段で御指摘いただいたことは,今後の日本の社会を考えたときに,なるほどと,うなずかざるを得ない御指摘を頂いたとともに,悩ましくて,従来の法制の用語例からいくと,ここはやはり改良になると思うのですね。今後の日本社会を考えたときに,改良でない哲学を表現する言葉を探し,よりふさわしいものにしてくださいという課題は,誠にしごく当然のお話であると同時に,良い言葉を見つけて,法制的にもそれを採用可能なものに育てられるかどうかは,少しまた事務当局において検討してもらおうと考えます。
      ここの括弧書のところは,橋本幹事からも多額の費用のところについての文言の再検討を求める御意見を頂いております。括弧書は,事務当局においても,何とか考え直して,いろいろなことを考えましたが,やはりここに落ち着くのではないかと考えざるを得なくて,同じ文言のものをお出ししていますけれども,本日両幹事から頂いた御意見を踏まえて,更に検討していかなければならないことであると考えます。
      引き続きいかがでしょうか。
      委員,幹事から御意見はおありでしょうか。
      それでは,どなたからか御意見をおっしゃっていただくまでに,いささか橋本幹事にお尋ねですが,5ページの太文字の(2)のところを,提案を見送らないで設けてほしいという御意見が弁護士会にあるというお話であると,先ほど聞こえましたけれども,その理解で間違いないですか。
    ○橋本幹事 はい,(2)ですね,合意の承継について。
    ○山野目部会長 ここについて,規律創設の需要があるということが理解できますとともに,第13回会議において,いろいろ異質なものがここの規律の適用対象として想定されるところを,誤解がないような仕方で,過不足なく規律の表現にまとめるのは難しいという御意見も頂いていたところでありまして,なかなか難しいと感ずるところでありまして,弁護士会の御意見は御意見として承って,もう少し考えみようと思いますから,すこし弁護士会の先生方も引き続きお付合いいただいて,お知恵を頂きたく思います。
      ほかにいかがでしょうか。
      そうしましたらならば,第13回会議でお出しした部会資料27の確認をお願いするような内容も多うございますから,強いて御発言がないと受け止めてよいのかもしれません。
      御発言がないようでしたならば,部会資料40についての審議をここまでとして,更にこれを整理していくということにいたしますけれども,よろしゅうございますか。
      それでは,引き続きまして,部会資料41をお取り上げくださるようにお願いいたします。
      引き続き共有制度の見直しでありますが,部会資料41のタイトルに括弧書でありますように,共有物の管理に関する行為を定める際の特則等について,お諮りをしているところでございます。
      第1の1は,これは,共有者の中に共有物の管理等について,無関心や積極的な関心,意欲的な関心を抱いてくれない者がいる場合に,問合せをして異議を述べない,意見がないということを確認した上で,更に共有物の管理を進めるということを認めてよいかということについて,前回と同様の提案を差し上げております。
      (注1)から(注3)までのところで,本文の案とは別に,こういうことも考えられるということをお示ししていますけれども,(注1)から(注3)までに御提示申し上げている事項は,そこに本案とは別な案を示して,これも大いに考えていこうという趣旨で御提示申し上げているものではなくて,ここで強く(注1)ないし(注3)の可能性も,引き続き考えてほしいという御意見があるかどうかを確かめるために,お出ししているものでございます。
      引き続きまして,3ページにまいりまして,太文字の2のところ,「所在等不明共有者がいる場合の特則」は,今度は共有者の所在が分かっているのではなくて,そもそも所在が分からない場合について,こちらは裁判所の関与を得て,それに代わるコミュニケーションを取って,先に話を進めていくということが許されるかというお話の問題提起をしています。(注1)から(注3)まで,本文の案とは別な案が考えられるかという可能性もお尋ねしていますから,併せて御意見をおっしゃっていただきたいと望みます。
      (注1)から(注3)まではそういうことですけれども,(注4)は性格が異なっていて,これは別にお尋ねするものではなくて,太文字の案の本文の前提を補足しているものであります。
      小さな誤植がありまして,(注4)のところ,本当は改行しなくてはいけないはずですが,そのまま続けてしまっているところは,改行があるものと訂正を差し上げて,その前提でお考えくださるようにお願いいたします。
      6ページのところにまいりまして,第2のところで,「不動産の所在等不明等共有者の持分の取得」について,裁判所が持分を取得させる旨の裁判をするということを基本とした上で,裁判所が定める時価相当額の支払請求の制度などについての関連する提案を差し上げております。
      9ページにまいりますと,第3のところで,所在等不明共有者がいる場合において,知れている共有者の全員の同意があるときには,これを譲渡するという可能性を認める制度の提案をしております。
      11ページにまいりまして,第4のところは,共有者が選任する管理者の法律的な地位,それをめぐる法律関係につきまして,第13回会議でお諮りしたものの骨格を維持し,それを整理したものをお示ししているところでございます。
      部会資料41は,このような論点を盛り込んでお示ししているものでありまして,これらの全体について,委員,幹事の御意見を承るということにいたします。いかがでしょうか。
    ○蓑毛幹事 第1「共用物の管理に関する行為を定める際の特則」について,日弁連のワーキンググループでの意見の分布について申し上げます。
      第1の1については,本文のとおりでよいという意見もありますが,(注2)に賛成,すなわち,裁判所の決定があって初めて効力が生ずることとすべきいう意見の方が多数でした。2については,本文のとおりでよいという意見が多数でしたが,(注2)に賛成,すなわち,対象となる行為を持分の価格の過半数で決する行為に限定すべきだという意見も有力でした。
      6ページの「第2 不動産の所在等不明共有者の持分の取得」については賛成します。9ページ,第3の「所在等不明共有者がいる場合の不動産の譲渡」についても賛成します。いずれも,前回申し上げた,日弁連の意見を取り入れていただいたものと理解しています。ありがとうございました。
      第4の「共有者が選任する管理者」について,本文で書かれている「1 選任・解任」,「2 管理者の権限等」について,本文で書かれていること自体については賛成ですが,補足説明で,部会資料12ページに書かれている「委任契約(委任関係)とは別の法律関係(管理者選任関係)」の概念がよく分からないという意見が多く寄せられました。では,本文に書かれている選任・解任の要件を満たしつつ,それを,どのように理論的に説明するのかについて,日弁連のワーキンググループの中で何かよい案を提示できるのかと言うと,できません。大変申し訳ないのですが,そのような意見があったということだけ申し上げます。
    ○山野目部会長 弁護士会の意見をお取りまとめいただきまして,ありがとうございます。
      ただいま弁護士会からお出しいただいた問題提起をめぐる御意見でも結構ですから,お出しください。
    ○今川委員 まず,第1の1についてですけれども,14回の会議を受けて,催告をしたが異議を述べない共有者がいる場合と,所在不明共有者がいる場合とに区別して,提案されています。そして,前者の場合は,当事者の行為のみで効果が発生するとされて,後者の場合は,裁判所の決定があって,初めて効果が発生すると整理されています。
      我々が出していた意見については,第1の1の補足説明2の(2)で取り上げていただき,それに対する考え方も説明されています。
     催告をしたが異議を述べない共有者がいる場合において,共有者全員の同意を要する変更行為を除く場合であっても,場合によっては第三者が絡む場合があるし,登記をしなければならない場合もある。また,逆に,所在不明共有者がいる場合であっても、共有者間で単に使用方法を定めるようなものもあり,言い方は適切かどうか分かりませんが,重いものから軽いものまで幅広くありますので,我々の意見としては,一律に裁判所やその他の公的機関を関与させないと効果が発生しないというのではなくて,共有者が望めば,任意に要件を満たしていることを証明できるような制度を置いてはどうかという意見でありました。
      それについて回答も頂いており,一定の理解はしておりますが,ただ,短期賃借権の登記をするという事例は,かなりレアケースだとは思いますけれども,そういう場合に,この要件を充足している,そして登記原因が発生しているといことを,司法書士あるいは登記官等がどのような形で確認していくのかという課題があると考えます。したがって、手続上の手当ては,引き続き検討していただきたいという意見があります。
      それから,第3の所在等不明共有者がいる場合の不動産の譲渡について,(注3)の裁判の効力について,その終期を定めるということですが,現行制度で不在者財産管理人が裁判所の許可を得て管理している不動産を売却するような場合等でも,許可の効力に終期が設けられるということは普通はないので,新しい考え方だろうと思います。
      裁判の効力について終期を定めること自体は,反対するものではありません。ただ,実際は,所在不明共有者以外の判明している他の共有者の同意があるかどうか,それから買受人が実際いるのかどうか,その金額も決まっているのかどうか,売買契約書の中身はどのようなものかというのも,事前に提示した上で許可の申立てをする。実務の運用を考えると,実際にはそうなるのかとは思います。
      裁判の効力について終期を定めることについて,一定の理解はしますけれども,登記の期限も定めることについても触れられておりますが,実体上の終期を定めておけば,あとは対抗要件ということですので,登記の終期までも定める必要はないという意見です。
      あとは,特に意見はありません。
    ○山野目部会長 司法書士会の意見を取りまとめていただきまして,ありがとうございます。
      今川委員が後段でおっしゃった第3のところの権限付与の時期的なタイムリミット,終期を定める件について御注意いただいたことは受け止めましたから,検討することにいたします。
      前段の方でおっしゃった第1の1の,催告をしたが異議,意見が出ない場合に,過半数の同意を得たのと同視される状況を確保して話を進めるときに,登記の手続を進めようとすると暗礁に乗り上げる場面が生ずるのではないかというお話は,司法書士会からそのことの問題指摘を頂いたのは,今回が初めてではなくて前にも,司法書士会って短期賃借権がどういうわけか好きなんだなと思わざるを得ませんが,前にも頂いていて,再々お話を頂いているところでございます。
      少し私が理解に苦しむ点は,第1の1でお出ししていただく,そういうサイズの話でお出しいただくよりは,第1の2のところの,部会資料の3ページですね,所在等不明共有者がいる場合の特則のところの方が話が深刻で,こちらは,登記名義人として共有者の氏名が載っているけれども所在がつかめなくて,したがって共同申請に関与させることが絶望的であるという状態で,この2のところの規律にのっとって,その同意関与に代わるような裁判所とのコミュニケーションを経た上での,こちらは本当に管理にとどまるのではなくて,処分までするということを射程に置いていて,(注2)に関わる弁護士会の御意見はありますが,仮に処分ができるとすると,かなり長い期間の借地権の設定のような処分が,この規律にのっとって行われる場合があるものでありまして,こちらの方が実体的にそういう権利変動があったのに,登記が円滑にいかなくて,所在不明共有者の共同申請の関与が絶望的だと登記手続が暗礁に乗り上げてしまうという困難が深刻であると感じます。
      今川委員御自身がおっしゃったように,短期賃借権はめったに登記されませんが,とおっしゃるような1番の話ではなくて,サイズが大きな2番の話で,え,どうなんだと言っていただいた上で,関連して,類似の問題は1についてもありますとおっしゃっていただければ,これは本気で考えなければならない話になるであろうと感じますけれども,何か話の順番が,何で1の方の小さい話からいくのかという点は,いささか解せないという気分で前にも伺ったし,今も伺いましたけれども,何かお話があったらどうぞ。
    ○今川委員 第2は,裁判所の許可が要件になりますので,そこで手続上,要件充足とか登記原因の発生等は確認できるのではないかと思っておりまして,必ず全て裁判所の決定というのはちょっと重いなとは思いつつも,強く反対するものではないです。ただ,1の場合は,当事者だけの行為で効力が発生することになりますので,そこをどう確認していくのか,ということです。
    ○山野目部会長 6ページの第2もそうですし,3ページの第1の2のところも,同じような構図の問題があって,こちらが多分問題としての深刻さが大きくて,そこについては,確かに今川委員がおっしゃるように,裁判所が関与しているから登記原因は確かめられますというお話があるかもしれませんが,登記原因が確かめられたとしても,直ちにそれが共同申請の例外になるとは限りませんから,裁判所の給付文言がついていれば,63条1項でいけるかもしれませんけれども,そこのところも,規律創設を明示に要求していただくというようなお話とともに,第1の1のところも問題であると話が進んでいくものであろうと感じます。
      いずれにしても,しかし,司法書士会が御意見としておっしゃろうとしていることの骨子は理解することができるものでありますから,第1の1,第1の2,それから第2の三つの局面について,ここで提示されているような実体的規律の変更や創設が,仮にこの方向で実現した場合の登記手続との関係で,裁判所の裁判に給付文言を入れてもらうような規律にするかとか,共同申請についての例外を考えることの適否であるとか,登記原因証明情報の在り方等について,総合的に検討する必要があるということを,大枠しておっしゃろうとするものであると理解しますから,事務当局の方でそれを検討していただくようにお願いします。
      今までここのところ,規律の創設方向がここまで育ってきておりませんでしたから,登記のことまで余り意識が向かなかったですけれども,ただいまの司法書士会の御注意で,そろそろそういうことを考えなければいけないという段階に来ているということが分かりましたから,事務当局の方で努め,また司法書士会とも御相談をさせていただくということにいたします。どうもありがとうございます。
    ○今川委員 整理していただきまして,ありがとうございます。
    ○山野目部会長 いえ,ありがとうございます。道垣内委員,どうぞ。
    ○道垣内委員 申し上げたいのは第3についてなのですが,それとの比較をするために,第1の1の話からしたいと思います。
      弁護士会で,第1の1の(注2)に関連して,裁判所が関与するということにするという話だったんですが,それは(注2)のところにも,催告は裁判所が行うとなっており,裁判所の役割をここでは催告と書いてありますし,さらには,補足説明のところでは,2ページですね,裁判所が何をやるのかということについて,いろいろな考え方があり得るという話が書いてあります。いろいろな考え方について検討するということ自体には何の異存もありませんが,ただ,その大前提として,これはこういうふうに管理すべきである,こういった管理をするということはいいことだと,裁判所が判断するのはやめるべきであり,裁判所には,手続が満たされているなら満たされているということを明らかにさせましょうというのが,せいぜいだろうと思うんですね。
      それとの関係で申し上げたいのは,第3の,さきほど今川さんからお話があったところなんですけれども,第3の①のところで,処分をする権限,譲渡をする権限を付与する旨の裁判をするに当たっては,恐らく契約の内容とかそういうものをきちんと示して,裁判所の許可を得るのだろうと,そういう実務的な対応になるだろうとおっしゃったんですが,それって,本当なんだろうかという気がするんですね。そうなりますと,裁判所としては,その譲渡価格が妥当か否かとか,相手方が妥当か否かとか,そういう実体的な判断をするということが,そこでは予定されそうなんですが,原案といいますか,この資料で出てきているというのは,第三者に譲渡するという必要があるかもしれないよねということが抽象的に認められたら,権限付与というのがあり得るという,そういう前提であって,個別具体的な譲渡契約のよしあしについて判断するという構造ではないと思うんですね。したがって,実務はこうなると思います,運用はこうなると思いますと,さらっとおっしゃったんですが,それって全然違う制度として構想することになるんだと思います。
      個人的な意見としては,第3の①のままでよくて,それは抽象的な譲渡権限を与えるべきか,このシチュエーションにおいて,その範囲内だけで裁判所は判断するということでいいのではないかと思います。いちいちここで売るべきかどうかというふうなことを,裁判所に判断させるというのは,私はどうもおかしいのではないかと考えます。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
      道垣内委員がおっしゃった2点について,脇村関係官が話したいという表情をしていますから,本当は蓑毛幹事に指名しようと考えましたけれども,脇村関係官,先にどうぞ。
    ○脇村関係官 すみません。
      事務局の御説明させていただきますと,道垣内先生おっしゃっていたとおり考えておりまして,抽象的にも,一番考えないといけないのは所在不明ですとか,供託する金額幾らとか,その辺を考えていまして,誰に売るかとかは,基本的には,後の共有者の方で考えてくださいと理解していました。
      一方で,今川委員がおっしゃっていたのは,申立人にといいますか,登記申請する立場でおっしゃっていたのかなと,思っていまして,実際には裁判所に申請というか,そういう手続をとるときには,事前にきちんと確認をして,そろってからやるんだということかと理解しておりまして,裁判所の方で事務局の案を考えていたのは,ある意味,無味乾燥,金額はそういう意味で,譲渡する金額は考えないということを考えていました。すみません。
    ○山野目部会長 道垣内委員が問題提起をなさった事柄のうち,後段の部会資料の9ページ,第3との関係で言いますと,ここで裁判所が譲渡をする権限を付与する裁判をするということの意味は,道垣内委員が御理解なさったとおり,また,今,脇村関係官が説明したとおり,これは抽象的な,譲渡をしたら処分の効果が生じますという法律関係を作り出すための形成裁判を裁判所が行うことができるということを定めているにとどまるものでありまして,それを超えるものではないであろうと感じられます。
      裁判所は,不動産屋ではありません。幾らの金額で,いついつこういうふうに履行しろというようなことを,裁判所が指図するというか,命令をするというような法律関係ではなくて,譲渡をすればその法的効果が認められますという,法律関係の形成を是認しますという裁判をするという意味を述べている場所が①の本文のところでありまして,それとは別に,確かに(注2)のところで,供託をする金額は裁判所が指定することになっていますから,そこでは,別な文脈で金額が出てきますけれども,太字本文の①のところ自体は,そういうことであろうと考えられます。
      部会資料が御提示申し上げていることはそのような内容であり,蓑毛幹事がおっしゃったような,それとは若干異なるイメージで弁護士会の先生方に受け止めた方がおられるとすれば,また弁護士会の方で御議論いただいたりして,コミュニケーションを重ねるということであろうと考えます。
    ○蓑毛幹事 部会資料について,弁護士会のメンバーの理解が違っている訳ではないと思います。第1の部分について,これは,裁判所が内容の審査をするか否かではなく,手続に関与するか否かの問題であるという理解を弁護士会もしています。
      そのうえで、第1の1の規律,本文の提案は,そういった手続的な関与も裁判所は一切しないという提案だと理解し,そうではなくて,裁判所は手続には関与すべきだということで,(注2)に賛成するという意見が多数であったということを申し上げました。
      第3の部分についても,部会資料本文と補足説明に書いてあるとおりだと理解しており,これに賛成しています。
    ○山野目部会長 蓑毛幹事,ありがとうございます。
      そのうえで,今も話題にしていただいたですが,今度は道垣内委員が御発言なさったことの前段の方でありまして,1ページの第1の1のところで,催告をして,異議,意見を問い合わせるという手順に,裁判所を関わらせるという,この(注2)の可能性について,弁護士会では,積極の御意見が有力であったという意見分布を蓑毛幹事から御紹介いただき,道垣内委員からは,しかし,それに対しては,疑問を感ずるという趣旨の御発言を頂いたところでありまして,いずれのお話も根拠があるものと感じられますけれども,少し法制的に考えていったときに,ここに裁判所を関与させるということは,いろいろ難しい部分があるということは,実感として思うところがあるものでありまして,第1の1の扱っている局面というものは,問合せの相手方が行方不明ではなく,現にいるものですね。
      現にいる人との間のコミュニケーションについて,裁判所,1回関わってくださいと言われても,裁判所の関わり方というものは,道垣内委員がいろいろ可能性を考えて悩んでおられたところから明らかなように,別に内容的に良い悪いをかなり裁判所が入ってきて述べるという局面ではありませんから,裁判所の目の前を通っていって,見ました,どうぞしてくださいということを,公正な機関である裁判所が見ているから安心ですよということを超えて,何かが得られるかというと,あまりそのようなことは感じられないということがあるとともに,従来の法制の,これと似たような場面ですね,例えば,建物の区分所有等に関する法律で,建替えの決議をするときに,建替えに賛成しますか,反対しますか,お答えがないから困りますねという問合せをするときだって,別に裁判所を通していなくて,当事者同士で,念のため内容証明,配達証明でするでしょうけれども,当事者同士でするものであって,ああいう従来のところで裁判所が関わっていないのに,ここは裁判所に関わらせるということになると,いろいろ説明が難しいことになってくるであろうとも危惧されます。
      悩ましいですけれども,弁護士会の先生方の中にそういう御意見をおっしゃる方がいるという経過は,御紹介として受け止め,また意見交換を重ねていただけると有り難いものですが,蓑毛幹事,お願いしてよろしいですか。
    ○蓑毛幹事 部会長がおっしゃられたことについて,今,私の方から反論等があるものではありません。部会長がおっしゃることは,個人的には最もだと思いますので,持ち帰った上で,ワーキンググループ内でコミュニケートを取りたいと思います。
    ○山野目部会長 ありがとうございます,御面倒をお願いいたします。
      引き続き御意見を承ります。
    ○佐久間幹事 細かいことで恐縮でなんですが,2点ございます。
      いずれも同意に関することなんですけれども,一つは,3ページの2の直前にある(2)のところでして,この仕組みを用いる場合に,誰に対して催告するかということに関しまして,絶対的過半数を得ている場合は別だけれども,相対的過半数しかない場合は,基本的に全員に催告せよとなっておりますよね。
      例えば,ですけれども,共有者が4人いて,2人は賛成していると。残り2人から意見を徴そうというときに,まず1人に対して意見を聞こうとしたところ,意見が出てこなかった。この場合,もう一人に催告しなければいけないということなんでしょうか。仮にそうだとしたら,どうしてなのかなというのが,私は疑問に思いました。分母が3に下がって,2の多数があるということが確定しているのに,どうしてもう一人にも意見を聞かなければいけないのかというのが,私が多分気づいていないのだろうと思うんですけれども,実質的に何かそれによって保障されるべき利益があるのであれば,お教えいただければと存じます。それが1点です。
      もう一つは,11ページでございまして,これ,前からの提案のようで,今更ということになるかもしれませんが,第4の2の①で,共有物の管理者は管理行為をすることができると。ただし,他の共有者の同意を得なければすることができない行為については,共有者全員の同意を得なければならないとされております。これに関しまして,たとえば,共有物の管理行為にかかる意思決定について,本日の部会資料40の2ページから,実際には3ページの③に,要するに,過半数決定で管理に関する行為をしてきた場合,その管理に関する事項をひっくり返す決定は過半数ですることができるのだけれども,特別に影響が及ぶ共有者があるときには,その人の承諾を必要とする,という規律の提案があります。この規律に関して,元に戻りまして,共有者が管理者を選びまして,その管理者が,前の管理に関する事項を変更するという場合に,特別に影響を受ける人がいるときに,全員の同意がいるという現状の案では,その影響を受ける共有者以外の同意も得なければいけないということになると思います。これもちょっと,なぜそうなるのか,私には理解ができませんでしたので,申し訳ありませんけれども,御説明いただければと存じます。
    ○脇村関係官 最初の1点目の承知の件ですけれども,一般的に252条の議論として,それは要らないのではないかと,あるいは部会の議論として,やはり意見陳述の機会を与えるべきではないかということで,両論あったと思うんですけれども,意見を陳述する機会があれば,それを聞いて他の方が意見変わるかもしれませんし,何といいますか,絶対的に完全に過半数超えて賛成している場合よりは,そういう陳述機会をより保障すべきという議論があるのかなと思っていましたのと,実際の運用としても,最初の1人だけまず連絡して,その後に次やろうというのが,集団的意思決定をしようとする局面で,本当にいいのかなというのが,書かせていただいた趣旨でございます。
      管理者の方につきましては,確かにその関係,すみません,もう一回整理したいと思いますけれども,もう一回,すみません,確認したいと思います。
    ○山野目部会長 佐久間幹事,お続けください。
    ○佐久間幹事 いえ。ありがとうございます,特にございません。
    ○山野目部会長 今後とも検討いたします。ありがとうございます。
      藤野委員,どうぞ。
    ○藤野委員 ありがとうございます。
      第1のところで,前回の部会のときに,所在等不明共有者の場合はちょっと区別して考えていただけませんかということでお願いをして,今回このような形で分けていただいていると。特に,対象となる行為のところと,裁判所が関与するかどうかというところで,場合分けをしていただいているというのは,非常によい方向性なのではないかと思っています。催告をしたが異議を述べない共有者がいる,という場合では裁判所が関与しない手続になるという点と,所在等不明共有者がいる場合に,対象となる行為を限定しないという点については,強く賛成をしたいと思っています。
      1点申し上げるとすると,第1の1の(注1)のところで,本文では,対象行為として「共有者全員の同意を要する変更行為を除く」と書かれているんですが,前回申し上げたとおり,やはり催告して,返答する機会を与えているというにもかかわらず,同意も反対もないと,異議が述べられていないということなので,このような共有者にどこまで保障を与えないといけないのかというところは,もう少し検討していただければ,というところでございます。というのも,所在等不明共有者だと認定された場合は,ここでいうと2の方のラインに乗っかっていって,裁判所が関与するということになるわけですが,所在等不明という要件を充たすかどうかは,今回の部会資料では,土地の現況等を踏まえて判断することになるという書き方をしていただいておりますが,やはり最終的にどうなるか分からないというところもあります。そのような中で,催告したけれども何も返ってこないと,所在等不明と言いたいんだけれども,そこが微妙なところですねというような共有者の方が仮にいらっしゃったとして,それでも,催告して何も異議がないというだけでは次に全く進められない,ということになってしまうと,困ることが多々あるのではないかと思いますので,ここのところは,例えば,催告の手続のところを,かすめ取るようなというか,詐術を用いて返事なんてしなくてもいいですよといって返事させなかった,それで,残りの人だけで決めてしまったと,そういうような場合は,基本的には駄目だという話でいいと思うのですが,逆に正当な手続を経てやっているときに,これが,共有者全員の同意を要する変更行為なので,催告で何も返ってこなかったというだけでは駄目ですというのだとちょっと厳しい場合があるのかなというところで,第1の1に関しては,(注1)の案が採用される余地がないのかというところは,再度,意見として申し上げたいと思います。
    ○山野目部会長 藤野委員の御意見を承りました。受け止めた上で,引き続き検討することにいたしますとともに,今の段階で御案内しておくとすると,少なくとも民法が定めている共有というか,今まで理解されてきた共有というものは,共有者一人一人に不機嫌を許す制度なのですね。ある共有者が,今,自分はいささか不機嫌で誰とも口をききたくないと述べ,あなたがたと一緒にこんなものを共有しているかもしれないけれども,一緒に共有していたからって,別に仲よくしなければいけないとかコミュニケーションを取らなければいけないという立場にはありません,言っておきますけれども。私は不機嫌ですから,誰から手紙が来ても,誰からメールが来ても,何も答えたくありませんっていう態度をとる人がいたときに,それを絶対いけないとは,必ずしも言わないという前提で作っている制度であり,変更に係る事項について,問合せに知らんぷりして何も答えないときに,答えないなら,こちらでしてしまいますよという制度まで突き進むと,従来の共有観を少し変えていく部分がありますから,おっしゃることはごもっともであるとともに,いささかそのような大きな話が背景にあるということには注意をしなければいけないということが1点と,もう1点は,(注1)のところを動かすと,場合によっては,論理必然性はないかもしれませんけれども,(注3)が連動して動く可能性があって,コミュニケーションを省略していいなら,最低限(注3)の最低数というか,定足数は確保してくださいという議論に,一見弾みがつく可能性もあります。いろいろなところが関係しますから,御意見を受け止めた上で,また考えてまいりましょう。
    ○道垣内委員 すみません。私,先ほど今川さんの御意見について,反論を述べたんですが,自分で反論を述べておいて,それからもう少し考えていると,わけ分からなくなってきたので,ちょっと教えていただければと思います。ひょっとすると,今川さんの言うとおりだと,最終的に意見を変えるかもしれません。
      と申しますのは,第3の①をまずどう読むのかなのですが,その3行目のところで,「裁判所は,共有者の請求により,請求をした共有者に対し所在等不明など全員の同意を得て不動産の所有権を第三者に譲渡ができる権限」とありますが,この文において,「同意を得て」というのは「譲渡できる」にかかるんですよね。同意を得たら,申立てをすることができるようになるわけではなく,同意を得て譲渡することができるということですよね。
      そうしたときに,②のところですが,これはすでに議論されているかもしれませんので,大変恐縮なのですが,私は,すぐ全部忘れてしまうものですから申しますと,②の,「①の裁判が効力を生じたとき」というのは,同意を得れば,第三者に譲渡していいよという権限が与えられたという段階ですよね。にもかかわらず,同意を得たら譲渡できるということになったら,もし所在等不明共有者というのが出てきたら,時価相当額を払わなければいけないのでしょうか。自分は,同意を得て譲渡しようと思っていて,しかし,時価よりも高く売れないかもしれないけれども,それは請求する自分のリスクだろうなと思ってやったら,ほかの人が同意してくれなかったから売れなかった。にもかかわらず,請求したのだから時価相当額を,持分に応じた額を払えと言われたら,それはびっくりです。自分は頑張ったんだけれども,ほかの人が同意してくれないから売れないのに,なぜ払わなければいけないのか。ちょっとよく分からなくて,何か大きな勘違いを僕はしているんだろうかと思ってしまうんですね。
      第2のところでの②は分かるのです。これ,実際に申立共有者というのが取得をすることになりますので,その部分の時価相当額を払いなさいというのは分かるのですけれども,第3のところで,どうして②のようになるのかというのがちょっと分からなくなってきて,そこで,今川さんの話に戻るんですが,今川さんがおっしゃったように,契約書も額も全部,相手方も決まった段階で①の申立てをして裁判があるというのが,全体として前提になっているのだろうかという気がしてまいりまして,結論として今川さんがおっしゃったことは正しいのであり,私の反論が妥当でなかったのだろうかというのが,気になっている次第でありまして,お教えいただければと思います。
    ○今川委員 私は,道垣内先生ほど深くは考えていたわけではないのですが,同意取得の場合は,裁判所は、共有者のうち,ある共有者の持分を除外するという決定をすれば,あとは他の共有者に変更行為の中身は任せるというのでいいと思うんですが,この第3の不動産の譲渡については,相当な価格の供託をさせるというのがありますので,裁判所が相当な供託金額は幾らだと定めなければならない。そして理屈上は、裁判所が相当であると判断した金額と全然違う金額で共有者が売却するということもあり得るとは思いますが,第3の②のように,所在不明共有者がもし出てきた場合に,時価相当額を請求するということになっていますので,裁判所とすると,信用力ということも考えると,実務上は裁判所が相当な額として認めたものと,実際の価格が全然違いましたということは,できる限りないようにするのではないかということもあって,この時価というのを判断するのって非常に難しいので,実際幾らで売却するということが,もし予定として決まっているのなら,その額は,非常に大きなファクターになると思ったので,申し上げました。
      誰に売るのか,買受人は誰かということの相当性についてまで,裁判所が判断するということを,申し上げたわけではありません。
    ○脇村関係官 まず,道垣内先生から御指摘いただいた点,ありがとうございます。
      ちょっとここは,私も書いていて,ぐるぐる回っていたところで,すみません,実質論においては,譲渡した後に当然請求できると,あるいは譲渡した場合に請求できるということでいいんだろうなということを考えていましたし,従前の部会もそういう議論をしていたんだろうと思います。
      あと,それを譲渡した場合と書くのか,ここでこういうふうに書きましたのは,終期を入れるんであれば,実質的には終期を越せば当然無効になりますんで請求できないということを加味すれば,こういった表現でもいいのかなというのは少し考えていたところだったのですが,実質は道垣内先生の考えていらっしゃる譲渡して,全くしていないケースについてまで請求といいますか,お金を取れるということは考えていませんでしたので,ちょっと表現ぶり,法制的なことも含めて考えていきたいと思っています。
      また,今川委員おっしゃっていたとおり,元々この部会で,中間試案の方ですかね,議論していたときに,時価と実際に譲渡する金額がずれてもいいんですよねって議論は,理論的にはさせていただいていたと思います。その上で,今川委員おっしゃったとおり,ただ,実際認定する際に,実際の売買価格を見ずに,鑑定といいますか判断できるのかというのは,おっしゃるとおりかも,ちょっとそこら辺,私も若干,不動産鑑定に疎いところがありますので,そういった御指摘はそうなんだなと思って伺っていました。それも含めて理論的には変わらないんですが,実質論を含めて,考え方についてはまた考えていきたいと思います。
    ○山野目部会長 道垣内委員,今のようなことで少し,考え方そのものを整理した上で,さらにそれをルールの表現としてどういうふうに言葉を整理するかということの課題が残っているということが分かりましたが,それを前提にお話をお続けいただくことがあれば,お願いいたします。
    ○道垣内委員 1点だけ申し上げますと,仮に時価が1億であっても,うまい具合に2億で売れたら,その所在等不明共有者は,2億を基準とした額がもらえると思うのですね。決して時価相当額で1億を基準とした額になるわけではないと思います。そうすると,時価相当額が,処分時の時価相当額といえば,それはそれでもいいのかもしれませんが,裁判が効力を生じたときというふうなのを基準値にすると,どうなのかなという気がしますので,引き続き御検討いただければと思います。
    ○山野目部会長 よく分かりました。
      この第3のところについては,実際に時間の順番を追って,何の次にこれをするということを,1回時系列的に整理をし,その上で整理された事柄のどこまでを,どのような言葉で規律文言として表現していくかを検討するという仕事があるということが,今日の御議論で分かりましたから,事務当局にその作業を続けてもらうことにいたします。
      これは,不動産取引の現場で行われている決済の手順のいろいろ複雑な様相を帯びている事柄,事象に更に輪をかけて,局面が,所在不明者がいたり,裁判所が関与したりして複雑になってくる事態をうまくさばかなければいけないという話になりますから,事務当局において検討し,司法書士会のお知恵も頂いた上で,検討が深められるとよろしいと感じます。
      従前の不動産に抵当権の負担があったりすると,更にその抵当権の処理のために厄介な問題処理をしなければいけなくて,何かこれは,いささか試験問題を思わせる複雑な話になりますから,皆さんで知恵を集めて進めていくということにいたしましょう。ありがとうございました。
      松尾幹事,どうぞ。
    ○松尾幹事 ありがとうございます。
      この部会資料41の第2の所在等不明共有者の不動産の共有持分の取得について,この制度をどうやって活用していくかということは,所有者不明土地の解消に向けた方策の切り札の一つとして,重要なポイントになるのではないかと思っています。
      この後,部会資料42でも出てまいりますように,この仕組みを,共同相続人の一部が所在不明の場合,あるいは特定できない場合にも使っていくということですので,しかも,これも部会資料42の最後で,共同相続人による時効取得については規律を設けないという提案ですので,そのことにも鑑みますと,この第2の所在等不明共有者の持分の取得の制度がどういうふうに運用されるか,実際にうまく使えるかということが非常に重要になってくるのではないかと思われます。
      そのことを前提にしまして,例えば,共有者のほとんどが特定できない,所在も分からないまま,共有者の1人が管理を継続しているという状況の中で,例えば,その1人の持分が10分の1であるというときに,ほかの10分の9の持分を,この不明共有者の持分取得の制度を使って取得するということを考えたときに,裁判所に申し立てて公告し,時価相当額を供託するということで,例えば,時価4,000万円の土地だったとすると,3,600万円を供託しなければいけないことになります。しかし,その際に,例えば,この共有者が10年も20年も1人でこの土地の公租公課を負担し,その管理費用も支払ってきた場合に,その費用償還部分を,253条の管理費用として,共有持分を取得するために供託すべき時価から差し引いて供託すればよいということが認められるでしょうか。私は認めてよいのではないかと考えますが,確認させていただきたいと思います。
      それがどういうふうに扱われるかによって,この制度の実際の使われ方や機能が違ってくるのではないかと思います。もしかすると,そういうことは想定していないかもしれませんが,ちょっと筋違いの質問だったら申し訳ないんですけれども,疑問になったものですから,お伺いできればと思いました。
    ○山野目部会長 今のお話は,事務当局はどう考えていますかと誰か関係官に発言希望があれば伺いますけれども,考えているかというよりも,松尾幹事から,今のお話でいうと,差し引き計算が可能になるような解決を想定し,所要の規律整備をしてほしいという,御意見を承ったと受け止めてよろしいものではないかと思いましたけれども。
    ○松尾幹事 はい,そのとおりです。もし費用の控除が可能であれば,この共有持分取得の制度は所有者不明土地の解消手段として,実際に使われるものになるのではないかと思います。ちなみに,今回規律しないことが提案されていますが,共有者の1人による時効取得が認められるときは,持分取得の対価の供託ということなしに他の共有者の持分が取得されることになります。ただ,強制取得を可能にするものですので,そこはちょっと慎重に考えなければいけない部分もあって,本当にそれでいいのかなということを,確認させていただきたいと思った次第です。
    ○山野目部会長 それでは,松尾幹事がおっしゃったことについて,事務当局も含めて,何か御意見があったら,今承っておいて,次の検討の機会に,更に深めた資料をお出ししようと考えますけれども,何かただいまの論点について御発言がおありでしょうか。
    ○脇村関係官 ありがとうございます。
      確か松尾先生から,以前も同じような話を頂いたような気がしているんですけれども,今回の制度につきましては,時価相当額について簡易にやろうという発想でおりますので,もろもろの費用,それまでの費用などをきちんと清算したいという制度として組むんであれば,相当制度の根幹が変わるんだろうなと思います。
      ですので,従前払ってきた費用ですとか,そういったものを含めて清算したいということであれば,私としては,この制度ではなくて,所有者不明土地管理制度などを活用し,管理人との間できちんと協議をして,幾らの費用がこれまで掛かったということを確定した上で,売却をし,そこから差し引くということしかないのかなと思っております。
      この制度にしようとすると,当事者がいないのに,裁判所が管理費用を認定しないといけないとか,従前払った費用の確認ということになりますので,ちょっと,手続が大分変わってくるのではないかなというのが,正直思っているところでございます。
    ○山野目部会長 松尾幹事が提起した問題は,別の制度で受け止めてはどうかという意見を今,もらいました。
      ほかに,この点についておありでしょうか。
      よろしいですか。
      では,これは引き続き検討するということにいたします。中田委員,どうぞ。
    ○中田委員  先ほどの第3の方に戻るのですけれども,第3について更に御検討いただくということでお願いしたいと思います。
      その際に,一つお願いなんですが,譲渡をする際,相手方である買主,買い受ける人に,法律関係を明確にしてあげることによって,譲渡がスムーズにいくようにするのが望ましいのではないかと思っています。
      今回の法律構成は,非常に明快になっており,法定の処分授権みたいなものをスタートにしたものだと理解しています。つまり,所在等不明共有者以外の共有者たちが不動産全体の売主になる,したがって,担保責任もその売主である共有者たちが負うし,代金債権もその人たちが持っていて,所在等不明共有者は関係ないんだということだろうと思います。ただこれは,その不動産を買おうとしている人から見ると,とても難しい制度だと思いますので,それを条文の上で,もし可能であれば,できるだけ疑義のないようにしていただくというのがよろしいですし,少なくとも解説などでは明らかにする必要があると思います。ただ,今はまだ条文化の作業の前,条文に至るための検討の作業の段階ですから,買主が安心して取得できるような制度にするということも,御検討の際に考えていただければと思います。
    ○山野目部会長 御注意をよく理解し,承りました。踏まえさせていただきます。どうもありがとうございます。
      ほかにいかがでしょうか。
      よろしいでしょうか。
      それでは,部会資料41について,多々有益な御指摘を頂きました。
      今日頂いた御意見を踏まえて,整理を続けるということにいたしま……失礼しました。沖野委員,どうぞ。
    ○沖野委員 こちらこそ,間際にすみません。
      第4の管理者の点ですけれども,前回疑問に思った点を非常に詳細に明らかにしていただいて,有り難いと思います。ただ,なおもよく分からないところがあります。
      どういうことをやりたいかというのは書いてあって,問題は,何か書いていないところが,どのように埋まっていくのかということではないかと思われますので,書かれている,具体的にどういうことをしたいかという限りでは,このゴシックのとおりだと思うんですけれども,一方で,これが管理者の選任・解任,あるいはその職務の執行ですとか遂行という概念で全部整理をしていくということが,あたかもといいますか,共有をめぐる関係において,一種の地位あるいは機関的なものとして,その管理者というのを立て,その地位にどういう人を就け,あるいは,そこからリムーブするか,どういう職務権限を与えるかという,そういうような構成に,第4は見えます。
      しかしながら,ここでは,飽くまで管理を依頼するというのは,委任契約を別途締結するということが想定されていて,その委任契約に基づいて,いろいろな権利義務というのが管理者の方に発生していく。報酬ですとか,あるいは善管注意義務の規定なども,今回は置かれませんけれども,それは委任の方で,委任契約当事者との関係で負うんだと,そういう整理のように見られます。そうすると,それと管理者の職責に就けるということとの関係がどうなるのかというのは,よく分からないように思います。
      むしろ,第4で説明として書かれているような法律関係を考えるのであれば,むしろ共有者間の管理行為,管理に関する行為について,共有者自身がするときに過半数の決定で行うことができるけれども,具体的に,例えば,賃貸借契約をするというようなときには,それに賛成した人が,あるいは賛成した人との間で契約をするのか,さらには,それをまた更に切り離して,契約は契約ですということになるのかというのも分からないのですが,むしろそれと類似の法律関係ではないのかという気もしまして,だとすると,管理者というような一種機関的な者を選任・解任するというよりは,共有物の管理を第三者に委託するということについての規律の話になってくるんではないかと,そういう整理になるのかなと思ったんですけれども。さらにその前提としては,ここでは,管理者に選任すれば,当然賛成した,あるいは反対しなかった人との間で委任契約ないしは委任関係となるような想定でもあるようですが,例えば,1人の人が提案して,何人かの人は過半数を超えるまで賛成があって,しかし,異議を述べた人もいるというときに,一体委任なり委任契約なり委任関係は誰との間に立つのか,それは,賛成した人は当然,委任関係がそこに立つならば,それは実は法定の委任関係で,誰との間に立つかというのを賛成した,あるいは異議を述べなかった者との間だけに立つという規律にしているように思われますし,それに対して,いや,委任契約をするのですということであれば,実際に契約を締結した人だけということにもなり,例えば,提案した人だけが締結するということかもしれません。そうすると,修補ですとか,各種の権利義務も,その人だけが負うことになりそうで,その辺りが,なおどうもはっきりしないように思うのですけれども,今のような機関的な説明で,本当にいいのかどうかというのは,考え直す機会はないのかもしれませんけれども,やはりちょっと気になるところですので,お伝えしたいと思います。
    ○山野目部会長 沖野委員から今,第4の部分について御所感を頂いたところを踏まえて,もちろん次回の,次の機会に向けて検討いたします。
      思い起こしますと,部会資料27は,どちらかというと,むしろ沖野委員の発想に近くて,第三者が管理者である場合と共有者のうちの1人が管理者である場合とに場合分けをした上で,それぞれの法律関係がどうなりますかということを,正にこの太字の部分に記して,委員,幹事の意見を問うという形でお出しいたしました。それについての御議論を第13回会議で承ったところ,それらについて様々な御意見が出て,必ずしも意見の方向性が一致しませんでした。取り分け共有者のうちの1人が選任された場合のところについて,意見が分かれたという側面が大きいように感じます。
      そのようなことがあったという経過を踏まえ,かつ,考えてみると,共有者の中から,共有物の管理をする者を設けたときの民法上の契約関係の実体といいますか背景,基盤をどのように考えるかは,解釈に委ねるべき事項であるかもしれないと考えられましたところから,本日は,中身をがらっと変えたものではありませんが,部会資料で提示する太字の内容としては,沖野委員のおっしゃり方でいうと,機関を描くという仕方で提示申し上げると,改めてみました。
      ただいま沖野委員からは,むしろ,どちらかというと,そこまではっきりおっしゃったかどうか分かりませんが,第三者を選任する場合に焦点を置いて,もう少し法律関係を明確にするような,太字に値するような規律を構想してみた方が,分かりやすいではないかというヒントも頂いたところであります。何通りか,この太字にする内容として,どういうふうな打ち出し方をするかということについては,考えられるところでありますから,沖野委員から頂いたヒントをも踏まえて,次の機会に向けて,また表現の仕方,並べ方のメリット,デメリットを比較して,再検討してみようと考えます。
      本日,そのような御案内にとどめさせていただいてよろしいでしょうか。
      ありがとうございます。
      畑幹事,どうぞ。
    ○畑幹事 畑でございます。
      5ページの手続の辺りに関連して,お尋ねなのか意見なのかよく分かりませんが,ここに書かれておりますように,確かに一般的には裁判の形成力が生じた場合,それをほかの人が勝手に争うことはできないと考えられていると思いますし,多くの場合,それで大過ないのだろうと思います。個人的には,論理必然的にそういうわけでもないだろうとは考えているのですが,それはともかくとして,この種の制度について,反対とかそういうことでは特にないのですが,手続的な面でいえば,これを悪用されることがないかということが,少し気になります。つまり,意見が合わない共有者がいる場合に,本当は所在が分かっているけれども,あの人は所在不明だといって事を進めてしまうというようなことが,当然病理現象だと思いますし,所在不明の認定というのをきっちりすれば,そうそう起こらないということかもしれませんが,その辺りどうするのかということも考えておく必要があるかと思っております。
      特に,5ページの辺りで書かれていることというのは,基本的に管理行為ですので,しようがないかという気もしないでもないのですが,同じ問題は多分,第2の持分の取得とか第3の譲渡についてもあるような気がいたしまして,第2や第3になると,これはもう持分を失ってしまうものですから,かなり深刻な問題かなという気がします。
      訴訟の話でいえば,最近は余りそういうことないのかもしれませんが,例えば,公示送達というものを悪用して確定判決を騙取した事例などというのも,かなり前ですが,存在しますので,そういうことがあり得ないわけではないということで,条文として何か手当を置くとかいうことではないのかもしれないのですが,問題としてはあるかなと考えております。
    ○山野目部会長 長期の海外における滞在とか長期入院の機会を,何らかの形で知り得た他人が,その期間はコミュニケーションが難しいということを奇貨として,このような制度を悪用するというようなことは,何か推理小説のような話のことを考えると,ありそうな気がしてまいりました。
      更に考えますと,ここに限らず,所有者所在不明,あるいは共有者所在不明を要件とする場面一般について,そのようなことというものは危惧されるところでありますから,ただいまの畑幹事の御注意を,ここ及びその他類似の局面で,注意してまいるということにいたします。ありがとうございます。
    ○道垣内委員 すみません。分からないまま発言しますので,結論が出るような話ではないんですが,沖野さんのおっしゃった第4に関連します。これは結構,難しいですよね。つまり,管理者として選任された受任者が共有物について賃貸借契約を結ぶと,契約当事者は受任者になるんだけれども,委任をした者は,委任した者というのは共有者ですが,当該賃貸借契約の効力を否定できないというか,当該賃借人の占有権限を否定できないというか,そういう法律関係になるというわけですけれども,委任契約一般の問題として,どういうふうに考えるのかという問題が背後にもちろんあるわけであり,ちょっとそこに自信がありません。だから,私はこの補足説明は,その意味ではすごくレベルが高いと思うんですけれども,今まで委任契約のときの効力について,こんなにクリアに整理できていたのだろうか,という気がするわけでして,本当は委任のところではそれほど明確になっているわけではないのに,この共有者の管理者についてはこうなりますよと,書けるのかな,という心配があります。条文上は,委任一般との関係もありますので,クリアに書けないということになるんでしょうけれども,だから,どういうふうにすべきであるという意見も何もないままに発言をして申し訳ないんですが,何かこの辺りのところを,沖野さんのお話も踏まえて整理をされると,今伺いましたので,あわせて,法律関係についても,何か理解の取っかかりというものが書けるのならば,整理をしていただいた方がいいのではないかと思います。
      私自身は,その後の解説で書いたからといって,何かそれに法的な拘束力があるとは全く考えませんので,一問一答に書けばいいという問題ではないと思います。
    ○山野目部会長 最近の一問一答は,いささか饒舌ですかね。ですから,何でも一問一答に書けばいいというわけではないということは,おっしゃるとおりでありまして,今後,委員,幹事で御議論を進めていただくに当たっても,何とかのことは一問一答に書いてくださいね,とかということを気楽におっしゃっていただくことも困りますけれども,さはさりながら,ここの第4の論点に関して言うと,補足説明のところで示している法律関係理解は,一定の理解として間違っていないというか,恐らく成立可能な明快な理解の一つを示していると感じます。
      道垣内委員がやや御心配になった部分があるように,本当にこれしか考え方がありませんか,ということは,なお議論の余地がありますし,また裏返して述べると,本当にこれしか考えがなくて,委員,幹事の意見がまとまるものなら,もう少しそれを規律表現として明確に外に出していただけませんかという問題意識が,沖野委員の御指摘にもあったとみます。
      それとともに,第13回会議,部会資料27からの経過を振り返ると,そのうようことを,考えが明快であるとしても,規律で表現していくことの得失といいますか,難しさもありまして,それらがいずれも悩ましいことであって,総合的に勘案して,また考えましょうということが,今日の御議論で明らかになってきたものであろうと受け止めます。
    ○潮見委員 余り言うつもりもなかったんですけれども,先ほどの沖野委員や道垣内委員の話を聞いていて,やはり言わなければいけないと思ったので,少しだけ発言させてください。
      規定の中に,これ以上にきちんとしたものを組み込むことができるかどうかということは,私自身はかなり悲観的です。沖野委員と道垣内委員が言われたところに尽きるんですけれども,この問題というのが,そう簡単に,理論的にこうだという形で解決することはできないと,私は思っています。
      というのは,普通の委任の場合でしたら,委任者が受任者に対して,例えば,財産管理を委任するということで話がついて,その財産管理権の内容とか,あるいはどのような義務を尽くすべきかは,基本的には,委任契約の内容から出てくるし,さらに,そのことを決めていないならば,準拠枠があるわけですから,その準拠枠にある規範を適用すれば,これで解決はできます。
      ところが,今回の場合には,委任者に当たる人と並んで,ほかにもいろいろな共有者がいて,財産管理権限も持っています。そんなときに,一部の共有者が,ある人に財産管理をさせるということで管理人の選任に関与して,一定の条件といいますか,権限付与というものをした。ところが,他方においては,それに全く関与していない人がいる。ここで、管理人が実際に行うのは,土地あるいは不動産の管理であるということで,管理に着目すれば,共有の中での管理者と共有者の関係という準拠枠がもう一つ出てくるわけですよね。結局,考えうる準拠枠として,委任という準拠枠と,共有における共有者と管理人という準拠枠と,二つがあって,その二つをどう関係付けるのかということが問題となりまして,これについて,いろいろな考え方ができます。その際に,委任契約の中でどこまで決めることができるのか,決めたことが,契約に関与しなかったものの,共有地の財産管理については関与する他の共有者にどういう影響を与えるのかをいろいろ考えていくと,それほど,これ,簡単に,理論的にこうだという形の説明はしづらいというようなところがあろうかと思うんです。
      そうした中で,できる限りのことを書こうとしたら,場合によっては前回の案に出てきたような,管理者が共有者の1人である場合と,そうではない場合とに分けて,管理者選任関係として,共有地に関する管理者と共有者の関係はこうあるべきだというところを,ルールとして示していくという辺りが関の山かなと思います。かえって,それ以上に組み込んでいくと,話がちょっとややこしくなるのかなというふうな感じもします。そういう意味で,先ほど申し上げた管理者選任関係,共有物に関する管理者と共有者の関係というものを,できるだけ明確に条文としては書き切る。合意や,あるいは多数当事者の意思によって変えることができるんであれば,その旨をルールとして書き加えるという辺りが,結果的には分かりやすいのではないかなという感じがしました。
      飽くまでも印象なんで,お前はどうするんだと言われたら,何とも言いようがありませんけれども,ちょっと気になりましたんで発言させてもらいました。
    ○山野目部会長 潮見委員がおっしゃるような法律関係の描き方についての難しさといいますか,一様に決め付けて議論することができないという側面があるということは,正にそのとおりでありまして,そのことを受け止めますと,前回お諮りした部会資料27,第13回会議のときにお出ししたような,管理者が共有者の1人である場合と,第三者である場合とに分けて,何かを描くという規律の表現が考えられるところであるとともに,それをしようとすると,かえって潮見委員のお嫌いな管理者選任関係の概念の採否や,それをめぐる事柄について,何らか触れざるを得ないような文章になってきてしまう側面もあります。
      そこが困りますから,今回は機関を描くという仕方でお出ししていますけれども,それにはそれとして問題点,課題があるということも,本日分かりましたから,沖野委員,道垣内委員のお話に付け加えて,今,潮見委員から頂いたお話も踏まえ,改めてどういうふうに太字の提案にしていったらいいかを考えるということにいたします。ありがとうございます。
      ほかにいかがでしょうか。
      よろしいですか。
      それでは,部会資料41についての御議論をお願いしたという扱いにいたします。

  • 法制審議会民法・不動産登記法部会第16回会議 議事録

     それでは,続きまして,共有物分割の方法を審議事項といたします。
      部会資料の37をお取り上げください。部会資料37の1ページに第1として示しているものが唯一この資料で御提示申し上げている内容でございます。
      1ページで太字で示している内容のとおりでございますけれども,現行の258条の規律に手直しをするという構想をお示ししております。
      ①のところは,現行法の法文とあまり変わりませんけれども,「又は協議をすることができないとき」という従来も解釈上認められてきた内容を明文化しようとしております。
      ②は,いわゆる全面的価格賠償又は部分的価格賠償の可能性があり得ることを法文に明示する際の一つのサンプルを御案内しています。
      ③は,現行258条の法文を手直しする中で,競売分割の順序,位置付けについて,新しい①②の規律を念頭に置きながら整理を試みて,規律表現を提示しているところでございます。
      ④は,現在の258条に存在しないものを提示しています。しかし,実務上も従来これに当たることが行われてきているところでございまして,なおかつ共有物分割の訴えが形式的形成訴訟であるということに鑑みますと,原告となる当事者など,当事者に対して細かく予備的請求を添えるというような対応を求めることは適当であるとは考えられませんから,それらのことを考えた上で,④の規律を置き,このような主文における措置を採ることができること,それわ裁判所が採ることができるということを明示しようとするものでございます。
      第1でお示ししている事項について,委員・幹事から御随意に御意見をおっしゃっていただきたいと望みます。いかがでしょうか。
    ○中村委員 日弁連のワーキンググループでの議論を御紹介したいと思いますが,今回のこの本文の部分は,法律専門家にとってもやや読みにくいものになっているのではないかという意見が多数出ておりました。いろいろな御配慮があってのことだと推察はいたしますけれども,やはり国民にとって読みやすく分かりやすいものをということから,少し書きぶりを工夫した方がよろしいのではないかという意見が多数です。中間試案のときの案の方が分かりやすいという意見はかなり出ておりました。
      本文の②と③及び補足説明の4項に関して申し上げますと,中間試案では現物分割と価格賠償とに検討順序の先後関係はつけないということと,競売分割は補充的な分割方法とするということが書かれていて,今回も趣旨としては同じにされていると思うのですけれども,しかし,本文②だけを読みますと,特別の事情があると認めるときに賠償分割が可能であるというように読めてしまいはしないかというような指摘も上がっておりました。補足説明の4ページに書かれていますように,判例に述べられている一定の事情が必要であることを表すために家事事件手続法や95条を参考にこの文言を使っておられるということですので,この補足説明を読めば分かるわけですけれども,本文だけで分かるだろうかというところが気になっております。
      さらに,補足説明の4ページの中ほどに,平成8年最判が判示しているような判断要素を全て明示し,法文化することは困難というふうに記載されているのですけれども,これにつきましては,例えば借地借家法の更新拒絶の正当事由の条文のように,判例によって考慮されてきた要素というのが法文上に書き込まれている例がありますが,4ページの冒頭に挙げられております最判の平成8年の判断要素を条文に記載すると,かなり長くはなろうかと思いますが,こういうことが考慮されるのだということが条文上明示されて,国民にとっては分かりやすいということになりはしないだろうかというような提案も挙がっておりました。
      ④と補足説明の5ページ5項以下の説明に関しましては特段の意見はございませんでした。
    ○山野目部会長 中村委員から弁護士会の御意見を取りまとめておっしゃっていただきました。御意見を受け止めて今後の審議を進めてまいるということにいたします。
      あまり意味のない感想を1点申し上げますけれども,中村委員のおっしゃるとおりで,中間試案の方が読みやすいと感じます。私も感じます。併せて,参考までに御案内申し上げますけれども,いつもそうです。この部会に限らず,中間試案の文章というものは読みやすくて,その後,要綱案に向かっていくにしたがって,よく言えば法制的な洗練を重ねていくことによって,しかし,そのことは裏返して言うと国民の視線からはやや遠くなっていくという,その法文立案上の作業における宿命がございます。
      しかし,申し上げていることは,宿命だからいいではないかと居直って申し上げているものではなくて,中村委員が御注意いただいたように,そうはいっても法制的に正確であると同時に,国民から見て理解され,親しまれる法文にしていかなければいけないということは,もとより当然のことでございますから,御注意を承ります。道垣内委員,どうぞ。
    ○道垣内委員 お願いしますと言われても本当は困るのは,山野目さんと同じことを言おうと思ったんですね。
    ○山野目部会長 恐れ入ります。
    ○道垣内委員 中間試案の方が読みやすいという中村さんの御意見に全面的に賛成ですというのが僕の話の中心になります。共有物分割について判例で進展してきたところのものというのは,民法の現在の条文だけ見ますと,現物分割をするのか,それとも競売をして価格で分割するのか,その二者択一のように読めてしまうところ,複数の不動産があるときに共有者に1個ずつ例えば帰属させて,そのでこぼこを金銭で調整しようというふうにしてみたり,あるいは,ある人に完全に帰属させてあとは金銭だけで調整しようとか,場合によっては一部を共有に残そうとか,様々な方法を認めてきたということなのだと思うのですね。
     そして,それは,実は遺産分割のときに認められてきたものが,共有物分割の方でも認められてくるという形がとられてきたわけですけれども,以前は,共有物分割ではリジッドな方法しか用い得ないと考えられていたものですから,柔軟な方法が採れる遺産分割手続を利用すべきであり,共有物分割の方に流してはいけないといった話が,たとえば,特定の財産についての相続持分の第三者に対する譲渡などの場合について学説上説かれたりした時期というのもあるわけです。それが,だんだんと柔軟になってきて,共有物分割であっても柔軟にできるからいいじゃないということになったわけです。
      ただ,遺産分割については,そもそものところで民法906条に,いろいろな事情を考慮してできますよという実体法の規定があって,その後にそれを受ける手続的な規定があるという形になっているんですね。それに対して,通常共有に関しましては,906条のような規定がないということになりますと,この分割の手続みたいなことが書いてある条文の中に,いろいろな事情が考慮できるというのをきちんと書き込んで,分かるような形にしなければいけない。ここに,遺産分割の場合の条文の作り方との違いというのが出てくるのではないかという気がいたします。
      さて,そうなったときに,いろいろな事情があるだろう,特別な事情というのは全部書き込むのは難しいだろうというのはいろいろ分かるんですけれども,2,3ですね,つまり現物分割とか競売とか,価格弁償による調整とか,そういうものを組み合わせることができるんだよというルールがどこかに明文で欲しいんですね。本日配られている案だけ見ますと,それこそ特別な事情があるという,非常に特別なときに,金銭の支払いだけでやるんですみたいに読めてしまう条文になっているわけでして,そうではなくて,一部は現物で分割するのだけれども価格賠償などを使って調整する。そういうのがきちんと出るようにする必要があるんだろうと思います。
      中間試案の方が分かりやすいというのは,中間試案のときには裁判所は次に掲げる方法により共有物の分割を命ずることができると書いてあって,現物分割と価格賠償と競売による換価というのが三つ書いてあって,組み合わせていいというふうにはクリアに書いていなかったように思いますけれども,それでも三つあるんだよということが明示され,その組み合わせがありうるというのが,比較的読みやすい形になっていた。
      今回,何か読みにくくて,三つの選択,特別な事情があるときだけ特別な方法が選択できるというだけであるかのような感じで,長い判例法理の共有物分割についての進展というものを生かし切れていないような気が,申し訳ないながらするわけでありまして,中村さんとかがおっしゃったことと基本的には同じだろうと思います。
    ○山野目部会長 道垣内委員から,中村委員からお出しいただいた意見を更に深く掘り下げる観点の整理の御提示を頂きました。ありがとうございます。
      引き続き委員・幹事の御意見を承ります。
      松尾幹事お願いします。
    ○松尾幹事 ありがとうございます。
      私も今問題になっております部会資料37の第1の②の特別の事情ということについては,現物分割も賠償分割も特に順位はないということであれば,ここは特別の事情があれば認めるというよりは,「相当と認めるときは」という表現ぶりもあると思います。
      ただ,実際問題としてこの賠償分割がうまく機能するためには共有者間の公平を害しないという制度的な保障があるということが大前提になるように思います。
      そのときに一番問題になるのは,賠償分割するときに,共有物を取得する共有者から持分権を譲渡する共有者に対して,きちんとお金が払われるということをどうやって保障するかという点です。その点に関して,第1の④で,共有物分割を命ずる場合に,当事者に対して金銭の支払い,登記義務の履行等の給付を命ずることができるとあります。これが意味することの確認ですが,賠償分割を認めるときに,例えばABCが土地を共有していて,Aが全部取得することを認めてお金をBCに払うというときに,BCに対しては持分権をAに譲渡して登記をしなさい,AはBCに対してその評価額を払いなさいということを引換給付とすることが,この④を使って可能と理解してよいでしょうか。もしそれができるとすると,賠償分割の使いやすさが出てきて,相当と認めるならばそれを活用していきましょうということもあるのかなと感じた次第です。ちょっと誤解があれば,また正していただきたいと思います。
    ○山野目部会長 ④の規律は,現行の家事事件手続法の下においてほぼ同じ文言があるものをここにも規律として明示して表現しようとしているものでありますから,家事事件手続法の運用がどうなっているかというようなことを参考として見ておく必要もあります。
      事務当局において,そうした点を見据えながら何か御紹介いただける情報があったらお教えください。
    ○大谷幹事 ②では,債務を負担させるという形で,部分的価格賠償の場合,全面的価格賠償の場合,両方があり得るということで書いておりますが,それは債務を負担させるということにとどまっており,それに更に④の方で債務名義とすることができるということで,これに基づいて強制執行が可能になるということを表現しているつもりでございます。
      引換給付に関しましては,裁判所が相当であると認めた場合には引換給付を命ずるということもあるのではないかなと思っております。
    ○山野目部会長 引換給付の判決は書くことができるという趣旨の御案内を致しました。
      松尾幹事,お続けください。
    ○松尾幹事 ありがとうございます。
      引換給付を命じることは賠償分割を使う上では,共有者間の公平を担保するという意味で重要な機能ではないかと思います。
      特に賠償分割を認めるということは,この後出てくる代金分割との関係では,実質的に共有者に優先取得権を認めることになりますので,そういう制度を使いやすくするということについては,私は理由があるのではないかなと思います。
      今の点を確認していただいて,実務上も運用できるのであれば,非常によいのではないかと思った次第です。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
    ○潮見委員 すみません。1点だけ意見を申し上げます。
      というか,これ第1の②のところの下線を引いた部分なのですが,この表現です。家事事件手続法の規定の文言表現を参考にしてこのような形にしたのだと思いますけれども,先ほど中村委員がおっしゃったこととは違う意味で,中間試案の方では,ここは持分の価格の賠償というところが表現に出ていたんですよね。ところが,今回お示しになられているこの下線部分では,「共有者の一人又は数人に他の共有者に対する金銭債務を負担させる方法による分割を命ずることができる」ということで,持分の価格の賠償なのだということが消えているんです。もちろんこの金銭債務を負担させるというところで,これは持分の価格ということを基準にして考えるのであると理解するのであれば,これはこれで構わないのかもしれませんけれども,突然と読めば,では金銭債務を負担させるときに,いろいろなファクターを考慮に入れて裁判所が適切と思われる額というものを,あるいは適切と思われる金額を負担させるということができるんだとも読めないわけではない。むしろ,誤解のないように,持分の価格の賠償ということがはっきりと出るようにした方がいいのではないかという感じがいたしました。
      家事事件手続法の場合は,これは遺産の分割審判ですから,なかなか持分価格の賠償というのを文言表現として使うのは難しいというところがあって,この種のルール化がされているんだと思いますが,こちらの方はそのような制約がないものですから,むしろはっきりと書かれた方がいいというのが私の個人的な意見です。
    ○山野目部会長 ただいまの点は御意見としておっしゃっていただきましたが,事務当局に趣旨の確認のみはしておいた方が,この後の委員・幹事に御議論をお進めいただくことが容易になると感じますから発言を求めますが,金銭債務を負担させると書いてある個所は,特段の事情がない限り持分の価格を賠償させるという運用を念頭に置いてのことであると理解してよろしいですね。
    ○大谷幹事 そのとおりでございます。部分的価格賠償,いわゆる2分の1,2分の1で共有している土地を7対3で現物分割をしたとき,20%分をお金で払うというのを,それは持分の価格を賠償させる方法というふうに呼ぶのかどうかというところも問題があるかなということで,今のような形にはなっております。
    ○山野目部会長 こういうところがこの②について読みにくいと言われるゆえんであろうとは感じます。その点でも結構ですし,ほかの点でもよろしいですが,委員・幹事の御意見を引き続き承ります。いかがでしょうか。
      藤野委員,どうぞ。
    ○藤野委員 ありがとうございます。
      先ほどから先生方がおっしゃっている本文の書きぶりの問題の話に正になってくるかとは思うのですが,やはり私も最初に拝見したときに,①と②がフラットに並んでいるというふうにあまり読めなかったというところがございます。
      従前から合理的に,共有者が土地の細分化を防いで全面的価格賠償で整理したいというような場面でも,現行法の条文を前提とすると果たして価格賠償になるのか,もしかしたら現物分割の方に持って行かれてしまうのではないかという不安があって,なかなか制度を使いづらいという声が事業者から出ていた中で,①と②が基本的に並列に位置づけられるということは,非常にいいことだなと思うのですが,今回の部会資料で拝見した本文の書きぶり,特別の事情という表現は少しひっかかります。③と比較すれば,②は①とフラットといえばフラットで,一定の要件を満たせばいずれも選択できるということになっているんだなというのは分かるんですが,やはり法律専門家の先生方ですらなかなか読みづらいというふうにおっしゃるということは,一般の企業実務家にしてみれば,よりそういうところはあるのかなと思いますので,ここは①と②が対等になっているというところがより明確に出るような形でやっていただけるとよいのではないかと思っております。
    ○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ。
    ○佐久間幹事 ありがとうございます。
      私も今回の案は,実は何回も読んでいて分からないのは自分だけなのかなと思ったんですけれども,皆さん分かりにくいというふうにおっしゃいまして,安心しました。
      その上で,潮見委員から,中間試案では持分の価格の賠償というのがはっきり出ていたけれども,今回の②ではそれが出ていないのでうんぬんというお話がございました。そのとおりだと思うんですが,もし仮に今後中間試案に近い形で検討していただくことがあるとしたらということなのですが,その検討にならなかったら意味のない発言になるんですけれども,価格賠償という,そこに言う賠償というのが,私は今普通に使われている賠償とやや違う意味になっていると思うのですね。別段不法行為をしたわけでもないし,債務不履行があったわけでもなく,正規の手続に従って取得をした所有権について,ただ保障をしなければいけないというのか,償金を払わなければいけないというのか分かりませんが,賠償では多分,今の普通の使い方でいうとないのではないかと思うのです。もし御検討いただくのであれば,私の勘違いかもしれませんけれども,その点を考慮しながら検討いただければなと思います。
    ○山野目部会長 佐久間幹事の御意見の全体を承りました。
      私の個人的趣味を申し上げる場所ではありませんが,私は,共有物分割のときに使う賠償という言葉が大嫌いでありまして,本当は用いたくありません,もう実務上定着している言葉であって,これを用いないと言語的な伝達がしにくいものですから,せめてもの抵抗として冒頭に②を御紹介するときにいわゆる全面的価格賠償又は部分的価格賠償を許容しようとする規定であるというふうに御案内して,ささやかな抵抗を致しました。
      佐久間幹事からは,更に法文にするときに注意をしなさいというふうな御指摘もいただいたところであります。ありがとうございます。
      引き続きいかがでしょうか。
      今のところ,②のほかについても御指摘があったところですけれども,一番御議論が多い点は②でありまして,なおかつ②の中を更に小分けしてまいりますと,二つの点が検討しなければならない点として浮かび上がってきております。一つは,特別の事情があると認めるときは,という,この文言を置いていることをめぐって,このままでは座りが悪いということが多くの委員・幹事から共通してお出しいただいているところでありますけれども,しかし,更にどうしていったらよいかということについては,幾つか悩ましい点がございます。松尾幹事からは,この文体の骨格を維持しながら「特別の」という表現がよろしくないから例えば「相当と認めるときは」といったような御提案を頂いています。
      確かに,「特別」と書くときには,特別に先立ってその前の方に標準が何であるかが示されて,それに対する特別でありますから,道垣内委員のお言葉で言うと,遺産分割の場合の906条に相当するようなものがあって,それを踏まえた「特別」になりますので,そういうものがないならば,もっと簡素な表現の方向にするという引き方があるという示唆があったところであります。
      半面において,中村委員からは,弁護士会の御意見の御紹介という形で「特別の事情があるときは」というところをもう少し言語的表現を更に豊かにする方向を考えるべきであるというお話があり,借地借家法28条の書きぶりのようなものを参考として,考慮要素を列記するアイデアが考えられないかという御提案も弁護士会においてあったというヒントを頂いたところであります。
      いずれにしても,現在のこの言葉の置き方が座りがよくないということが委員・幹事から指摘を頂いたところであります。
      ②に関してもう1点は,「金銭債務を負担させる」という表現をもって,いわゆるつきの賠償でありますけれども,全面的価格賠償や部分的価格賠償の実務を進めていくことのガイドとして適切かという問題提起もございました。読み方によっては,これは保証金か何かを積ませるみたいな軽い話みたいに読めなくもないような規律表現になっている側面がございますから,ここは何か工夫ができないかというような観点からの御指摘もありました。これらの点についてでもよろしいですし,ほかの点についてでもそうですが,引き続き部会資料37について御意見を承ります。いかがでしょうか。
      ただいま差し上げた整理のようなことを踏まえて,事務当局が議事の整理に当たるということで進めてよろしゅうございますか。
      それでは,この②のところを中心に,本日は重要な御意見,御指摘を幾つか賜ったところでございますから,これらを踏まえて議事の整理を進めるということにいたします。ありがとうございました。
      部会資料37をめぐる審議はここまでとし,休憩といたします。

  • 法制審議会民法・不動産登記法部会第2回会議 議事録

     土地所有権の放棄については,ここまでといたしまして,続きまして,部会資料3で審議事項を用意しております共有制度の見直し(1)に進むということにいたします。
     部会資料3のは,分量がすごく盛りだくさんでございます。部会資料3の中の,ひとまず第1の1から第1の4までの範囲について,事務当局から説明を差し上げます。
    ○脇村関係官 事前にお送りさせていただいておりますので,項目について簡単に御説明させていただきたいと思います。

    第1 通常の共有における共有物の管理

    要綱案

     民法第252条の規律を次のように改めるものとする。

    ① 共有物の管理に関する事項(共有物に2①に規律する変更を加えるものを除く。②において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
    ② 裁判所は、次に掲げるときは、ア又はイに規律する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
     ア 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
     イ 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
    ③ ①及び②の規律による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
    ④ 共有者は、①から③までの規律により、共有物に、次のアからエまでに掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(次のアからエまでにおいて「賃借権等」という。)であって、次のアからエまでに定める期間を超えないものを設定することができる。
     ア 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年
     イ 前号の賃借権等以外の土地の賃借権等 5年
     ウ 建物の賃借権等 3年
     エ 動産の賃借権等 6箇月
    ⑤ 各共有者は、①から④までの規律にかかわらず、保存行為をすることができる。

     4 共有物の管理者
     共有物の管理者について、次のような規律を設けるものとする。

    ① 共有者は、3の規律により、共有物を管理する者(②から⑤までにおいて「共有物の管理者」という。)を選任し、又は解任することができる。
    ② 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。③において同じ。)を加えることができない。
    ③ 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
    ④ 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
    ⑤ ④の規律に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

     5 変更・管理の決定の裁判の手続
     変更・管理の決定の裁判の手続について、次のような規律を設けるものとする。

    ① 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、イの期間が経過しなければ、2②、3②ア及び4③の規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。
     ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。
     イ 裁判所がこの裁判をすることについて異議があるときは、当該他の共有者等(2②の当該他の共有者、3②アの他の共有者又は4③の当該共有者をいう。)は一定の期間までにその旨の届出をすべきこと。
     ウ イの届出がないときは、裁判所がこの裁判をすること。
    ② 裁判所は、次に掲げる事項を3②イの他の共有者に通知し、かつ、イの期間が経過しなければ、3②イの規律による裁判をすることができない。この場合において、イの期間は、1箇月を下ってはならない。
     ア 当該財産についてこの裁判の申立てがあったこと。
     イ 3②イの他の共有者は裁判所に対し一定の期間までに共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべきこと。
     ウ イの期間内に3②イの他の共有者が共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにしないときは、裁判所がこの裁判をすること。
    ③ ②イの期間内に裁判所に対し共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにした他の共有者があるときは、裁判所は、その者に係る3②イの規律による裁判をすることができない。
    (注)これらの裁判に係る事件は当該裁判に係る財産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属するものとするなど、裁判所の手続に関しては所要の規定を整備する。

     6 裁判による共有物分割
     民法第258条の規律を次のように改めるものとする。

    ① 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
    ② 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
     ア 共有物の現物を分割する方法
     イ 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
    ③ ②に規律する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
    ④ 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

    1 共有者の同意と共有物の管理に関する行為

     まず,第1では,通常の共有における共有物の管理を取り上げており,1では,共有者の同意と共有物の管理に関する行為について御検討をお願いしているところです。
     補足説明にもございますとおり,民法では,共有物を変更・処分するには全員の同意が必要である,あるいは保存行為については単独ですることができる,変更及び保存行為を除く管理に関する事項は過半数で決することができるといったことが規律としてありますが,ここの資料では,この大きな枠組みについては基本的に維持しつつも,不必要に共有者全員の同意を要求することで,問題となっている行為をすることができないといったことを回避するなどの観点から,問題となり得る個々の行為について,解釈の明確化等を含め,検討することを提案しております。

    例えば,下記の①から③までの行為については,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決することができるようにすることについて,どのように考えるか。
    ① 各共有者の持分の価格に従ってその過半数で決することができる事項についてその規律に従って一定の定めがされた場合に,この定めを変更すること。
    ② 特段の定めなく共有物を利用(占有)する者がある場合に,共有物を利用(占有)する者を変更すること。
    ③ 共有物につき第三者に対して賃借権その他の使用を目的とする権利を設定すること。ただし,存続期間が民法第602条各号の定める期間を超えることはできないものとする。

     例えばということで,本文では①から③ということで,各共有者の持分の価格に従って,過半数で決する事項について,一定の定めがされた場合に,それを変更することですとか,特段の定めなく共有物を利用する者がある場合に,共有物を利用する者を変更すること,あるいは共有物について,第三者に対して賃借権その他の使用を目的とする権利を設定すること,こういったことを取り上げておりますが,御検討いただければ幸いです。

    2 共有物の利用方法の定めの手続

     8ページにいきまして,2では,共有物の利用方法の定めの手続を取り上げております。
     先ほど御説明させていただきましたが,民法では,管理に関する事項については,基本的には持分の過半数で決することができるというふうに定められているところですが,この過半数で決するということの意味につきまして,学説等の中には,共有者全員での協議,話合いを経なければならないという意見もあるところでございますが,この意見によりますと,例えば共有者の中に所在等不明の者がいる場合には,協議をすることはできませんので,なかなか利用方法を定めることができないということになり,そうしますと,やはり問題があるのではないかということで,ここでは,過半数を有する者の意思に合致すれば足りるとすることについて,そのことを明確化することについて,御検討いただきたいということを御提案させていただいております。

    3 共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法

     次に,同じページの3でございますが,ここでは,共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法を取り上げております。
     共有物の管理に無関心な人,無関心な共有者が賛否を明らかにしない場合や所在が不明である,そういったことから共有者に賛否を問うことができない場合には,そういった不明共有者の同意を得ることができませんので,なかなか共有物の管理に関する事項,変更・処分を含めた管理に関する事項を定めることができないということになってしまいます。
     そこで,この資料では,催告をしても共有者が賛否を明らかにしない場合や,所在が不明であるため共有者に賛否を問うことができない場合に,共有物の利用が阻害されることを防止する観点から,共有者の手続保障を図りながらも,変更・処分や管理行為,こういったことをできる仕組みについて設けることができないかを検討することを御提案させていただいているところでございます。
     また,この補足説明にも書かせていただいていますが,この問題を検討する際には,先ほど言いました所在不明というのはどういったものですとか,そういった探索,所在者,共有者の探索の在り方についても御検討いただく必要があると思いますので,併せて御検討いただければと思います。
     また,(注)にも書かせていただいておりますが,公的機関による事前審査,こういったことについても御検討いただければ幸いでございます。

    4 共有物の管理に関する行為と損害の発生

     次に,12ページにいきまして,4では,共有物の管理に関する行為と損害の発生を取り上げております。共有物の管理に関する行為がされることによって,同意をしていない共有者に損害が生ずることがございますが,それに対応するため,本文のような案について御検討いただければ幸いでございます。
     簡単ですが,説明としては以上です。
    ○山野目部会長 部会資料3の第1の1から4の説明を差し上げました。
     御意見を頂くに当たりましては,これ全部というのは分量が多過ぎますから,初めに第1の1,通常の共有における共有物の管理の部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。

    1 基本的な枠組みと個別の行為
    ⑴ 民法は,共有者間の利害等を調整しながら,共有物の有効な利用・管理を実現するために,次の規律を設けている。
    ① 共有物の「変更」をするには,共有者全員の同意を要する(民法第251条)。
    ② 「保存行為」は,各共有者が単独ですることができる(民法第252条ただし書)。
    ③ 「変更」及び「保存行為」を除く「管理に関する事項」は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する(民法第252条本文)。
     なお,ここでいう「変更」は,田畑を宅地とするものとし,又は建物を改築するなど目的物を物理的に変更することを意味するが,裁判実務・学説では,共有物全体について売却その他の法律上の処分をする場合についても,同様に共有者全員の同意を要するものと解されている。その説明としては,法律上の処分も民法第251条の「変更」に含まれるとするものと,「変更」には含まれないが,共有物全体を処分することは共有者全員の持分権を処分することであり,当然に共有者全員の同意が必要になるとするものがある(以下では,法律上の処分も含む際には,便宜上,「変更・処分」と記載している。)。

    ⑵ 上記のような民法上のルールは,基本的には,妥当なものであると解される。もっとも,そのルールを適用する場面をみると,問題となる行為が変更・処分に該当するのかについて実務上議論が分かれているため,実際の事案を処理するにあたっては,慎重を期して共有者全員の同意をとらざるを得ず,共有者の一部に反対する者がおり,又は共有者の一部に所在等が不明な者がいて全員の同意を得ることができない場合には,当該行為を実施することを断念せざるを得ないといった事態が生じている。また,現在の解釈では,一般的に変更・処分に該当すると解されているものであっても,その中には,本当に共有者全員の同意を得なければすることができないのか,持分の過半数で定めることとすべきではないのかについて再点検すべきものもあると考えられる。
     そこで,上記の民法上のルールを基本的に維持しながらも,不必要に共有者全員の同意を要求することで,問題となっている行為をすることができないことを回避するなどの観点から,共有者全員の同意が必要であるのかについて解釈が分かれている行為について,その解釈を明確にすることや,共有者全員の同意が必要と解されている行為について,その解釈を見直すことについて,検討する必要がある。特に,本文①から③までの行為については,検討する必要性が高い(詳細は,後記(補足説明)2参照)。

    「1 共有者の同意と共有物の管理に関する行為」に対する意見

    蓑毛幹事 今回のこの第1の1を議論する意義というか,どの範囲で議論するかということのお考えを,もう少し説明していただければと思います。
     勝手に推測するに,この後議論する新たな制度,共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法であるとか,あるいは,共有物の管理者の制度を設けるに当たって,それがうまくワークするために,何か管理行為なのか,何が変更・処分行為なのかということを明らかにしておくことに意義があるのかなと思いました。一方で,では,それをどこまで,どんな範囲で,議論するのか。特に,部会資料3の5ページに書かれていることは昭和41年最判の解釈を変えるという意味なのか,共有不動産に共有者の1人が住んでいて,その人に明渡しを求めることが出来るのか出来ないのかということは,実務的にも非常に大きな問題になるものですから,どこまで掘り下げて議論されるつもりなのかということが気になりましたので,その点を御質問したいと思います。
    ○山野目部会長 事務当局から,資料作成の意図の御説明を補足ください。
    ○脇村関係官 資料の作成の意図としましては,まず,この後に出てくる同意,明確に同意がないケースについても一定の行為をできるようにするということを議論することにしておりますが,そもそも,どの行為が過半数でできるのかについては,ある程度明確にすべき問題であるんだろうなと思っています。
     特に,今先生がおっしゃった,どういったときに利用できるのか,明け渡しも含めてですね。こういったものについて,当局としましては,やはり,後で変更できるかどうかによって,いろいろとその定め方の仕方も変わってくると思いますので,そういった意味では,きちんと議論をしていきたいと思っております。
     今先生のおっしゃっていた中で,先ほど最判の話があったと思うんですが,この①,②というのは,そういう意味で,似たような話であるわけでございますが,既存の,現在のところ住んでいらっしゃる方についての変更をどうするのかについても,ここの資料自体は,ある意味,結果的にはというか,変更できるということをについて検討することも指摘しているところです。
     ②についての,部会資料3の5ページの最判との関係についてですが,これは異論があるかもしれませんが,最判の読み方は,人によって多少温度差があるような気がしていまして,私自身,この部会資料を作る際には,あの最判は,共有の利用方法の定めがないケースの判例ではないかと思っており,そうすると,利用方法の定めをどういった場合にできるかとは,本当はリンクしないのではないかという気もしているんですけれども,他方で,あの最判は,過半数を持っている人でも追い出すことはできないという結論でございますので,ここで検討をお願いしている提案は,過半数で誰が利用するか決められる,その意味で,利用者を変更できるということまで含めて議論させていただいているところですので,結論が変わってくるのかなという気は若干していますが,そこも含めて,本当にそれでいいのかということは,是非御検討いただきたいというふうに思います。
    ○山野目部会長 蓑毛幹事,どうぞお続けください。
    ○蓑毛幹事 今脇村さんがおっしゃったことがよく理解できていないのですが,共有者の過半数でもって利用方法を改めて定めれば,昭和41年最判の結論とは違って,明け渡しを求めることができるということですか。
    ○脇村関係官 まず前提として,あの最判の読み方だと思うんですけれども,ここで議論をしようとしている事後に定めをする場合のな議論ではなくて,まず事前に,例えば,この人が利用できますよと定めた後に,それを無視して違う人が住んでいたケースについて,その定めに基づいて明渡しを求めることができるかというのが問題になると思うんですけれども,恐らくあの最判自体は,そこについて,特定の考えを示したというよりは,そのケースは想定していない,定めていないケースだと思いますし,そうすると事後に定めをする場合も同じではないかと。
     ただ,その読み方として,本当にそうなのかというのは,多分議論のあるところですので,部会資料としては,先ほども言いましたとおり,あの最判は約束をしていないケースですので,今回の議論は,約束し直すことをできますかねということを提案しているので,矛盾しないのではないかと記載をしているのですが,是非民法の先生方の御議論を伺わせていただきたいというふうに思っております。
    ○山野目部会長 民法の先生方や,あるいは……では,蓑毛幹事,どうぞ。
    ○蓑毛幹事 いやいや,民法の先生方でなく,私が発言するのも何ですが。昭和41年最判は,「少数持分権者は,自己の持分によって,共有物を使用収益する権原を有し,これに基づいて共有物を占有するものと認められる」と判示しています。だから,共有者の過半数で利用方法を定めても,明渡しを求めることはできないのではないでしょうか。ただし,その人は他の共有持分者の利用権限を害しているので,損害賠償等には応じなければならない。もしこれを抜本的に解決したいのであれば,共有物の分割請求を行うしかない。恐らく実務も,共有者の過半数で決めさえすれば明け渡しを求めることができるという前提で動いていないように思うものですから,申し上げた次第です。
    ○佐久間幹事 実務的にはそういうふうに動いているんだろうなと思いながら,私はこの原案に賛成の立場から,ちょっと申し上げたいと思います。
     ただ,その前に,この同意あるいは共有物の管理に関する行為について,例えば①から③までの三つが挙がっているのですが,これだけを解決することでいいのか,あるいは,少なくともこの三つだけは規定を置くのがいいのかはよく分からないということを申し上げた上で,私はこの方向がいいのではないかと思うということを,申し上げたいと思います。
     今,御意見にございましたとおり,例えばですけれども,現在少数持分権者が占有をしている場合に,多数持分権者は過半数決定によって立退きを求めることができるかというと,恐らく一般的には,できない,あるいは少なくとも容易にはできない,正当な理由がないとできない,と考えられているのではないかと思うんです。
     ただ,私が常々疑問に思っておりますのは,自分の持分に関しましては,確かに共有物全部の使用収益をすることはできるわけですけれども,他の共有者の持分に関しましては,これは適法な決定がなく行われているとすると,一種の不法占有なのではないかと思います。また,これは①,②に関わるんですけれども,一旦決定を得て適法に占有をしている場合も,例えば無償で使用しているときには,確かに適法に無償で使用しているわけですが,単独所有者が所有する物件について,無償で使用している人よりも厚い保護に値するという理由が,私には実は分かりません。
     また,適正な対価を支払って使用しているという場合も,単独所有の物件でありますと,言わば賃貸借に当たる場合なのではないかと思うんですが,その場合に,賃借人に与えられる保護よりも更に一段厚い保護が与えられるということも,少数持分権者には自分の持分があるということによってどうして正当化されるのかというのが,私にはよく分からないんです。
     そこで,その分からないということを前提とした私なりの整理によりますと,誰が占有使用するかに関する定めの変更自体は,全くパラレルに考えられるのかどうか分かりませんが,例えば単独所有者が占有者に明渡しを求める場合に,言わば,明渡しを求めようと決めることに当たるのではないかと思うんですね。
     ただ,明渡しを求めることを決めて,権利を行使したとしても,相手方にその権利行使を妨げる正当な理由というか権原があれば,それは通らない。例えば,賃借人の保護の規定があるのであれば,それは通らないというのと同じことが,ここで問題になるのではないかと思うんです。
     不法占有者であれば,占有を続けることのできる権原はないので,明け渡さなければならない。使用貸借の場合も,例えば使用貸借の目的が達せられているというようなことであると,解除の意思表示をされた場合には,明け渡さざるを得ないわけですから,それと同じ状態になるのではないか。これに対して,例えば建物賃貸借では,賃貸人は,正当な理由がないと,そもそも解除はできませんし,期間満了の場合も,正当な理由がないと更新を拒絶することができず,結局明渡しの請求はできないというようなことが借地借家法に定められています。共有の場合の少数持分権者の占有についても,こういった場合と同様の保護を与えればいいのではないかと,私は考えております。
     その意味で,この①,②,③は,そもそも共有者が合理的に共有物を管理していくということだとすると,各共有者はどういう権利を持っているのか,どういう行動をその権利に基づいてとることができるのかということを整理する,その材料になるのではないかと思っております。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     今の関連の御意見,御発言は,この時点で頂いておいた方がよいと感じますから,この関連で御意見がおありの方は,どうぞおっしゃってください。
    ○中田委員 今の関連といいますか,全体の大きな話という趣旨で申し上げたいことがございます。現在の共有に関する規定は,分割して終了する共有を想定しているのだけれども,現実には存続するタイプの共有が多く存在している,それに関する規律を考えることが必要である,これは1980年代から,山田委員を始めとして指摘されてきたことです。今回の提案も,そういった方向のものかなというふうに考えております。それは存続型であり,その中では団体的な規律というものが重視されるようになってくる。佐久間幹事のイメージしておられるのも,そちらの方向なのかなと感じました。その方向で,今回のように検討していくことには異論がございませんですけれども,検討課題もやはり意識しておく必要があるだろうと思います。
     3点申したいと思います。
     一つは,従来の分割終了タイプの共有に関する規律をどうするのか。取り分け,共有物分割請求制度の改善を検討する必要はなかろうかということです。
     それから,2番目に,存続タイプの共有,あるいは団体的規律が強く及ぶ共有を考えるときに,その対象をどうするのか。不動産だけなのか,動産にも及ぶのか,それとも準共有の規定を通じて,他の財産権にも及ぶのかということです。
     それから,三つ目は,共有以外の制度との関係,あるいは他の制度に及ぼす影響をどう考えるのか。組合あるいは権利能力なき社団,入会財産などとの関係があります。
     つまり,ここで問題となっているのは,所有者不明土地の問題への対応を超えて,共有制度全体をどのように理解するのかということが根本にあるんだと思います。ただいま,蓑毛幹事と佐久間幹事との間で若干の考え方の違いが浮かび上がってきたのは,多分このような根底的な問題を反映しているのかなと感じました。
    ○山野目部会長 どうもありがとうございます。全休的な検討の取組に当たっての心構えを整理していただきました。
     藤野委員,どうぞ。
    ○藤野委員 ありがとうございます。
     第1の1のところに関しまして,実務の中で,実際にどうしているかというと,何が管理に関する事項に該当するか分からないので,とりあえず安全策で共有者全員の同意をもらっておこう,という場合も結構多くて,そういう観点からいいますと,全員の同意が必要でない場合について,特に検討していただける,というところは,非常に有り難いと思っております。
     ただ,ここで挙げられている①から③の中の,特に③に関しまして,「共有物につき第三者に対して賃借権その他の使用を目的とする権利を設定すること」を過半数で決することができる,と明記していただけるのは,非常によいのかなと思う一方で,ただし書のところが気になります。これは,飽くまで短期賃貸借の期間の中でということで,下級審判例等も参照されて,こう書かれていると思うのですが,ここについては,共有物の機能に変更を生じさせないような使用であれば,期間にかかわらず,管理に関する事項と考えることもできるのではないかという意見が,既に幾つかの会社から出ております。
     特に,昨年出された「所有者不明私道への対応ガイドライン」の中などでも,例えば電柱の設置であるとか,ガス管の敷設ですとかといった場合で,管理に関する事項として整理されているケースはございます。ここは書き方の問題でもあるとは思うのですが,民法第602条各号の定める期間の範囲内でやるべきというものもある一方で,そうでないものもあると思いますので,飽くまで共有物の機能に与える影響というところに着目して整理していただき,もし具体的に書かれるのであれば,そういった方向で検討していただくのがよろしいのかなと思っております。
    ○山田委員 ちょっと複数のことを申し上げたいと思いますが,性格が異なるように思います。申し訳ありません。
     まず,この第1の1に書かれていることの性格なんですが,第1パラグラフの最後の3行を見ますと,解釈を明確にすることや解釈を見直すことでどうかというふうに終わっているんですね。これは,法文には手を付けないで,解釈で対応しようということをここで,共同作業しようとおっしゃっているのか,それとも,解釈を明確にするために法文を新たに書きおろすと,解釈を見直す,見直した後のことを法文で新たに書き起こそうということも含んでいるのか。
     見直すべきでない,明確にする必要がないならば,する必要ないんですが,明確にしたり見直したりしようとしたときには,法文で書くということも含まれているのかというのが,これはすみません,質問です。
     付随して意見を言うと,やはりそれがないと,ここで議論しても仕方がないかなと思います。各界の主要な方々が集まっているところで,解釈をこれでいきましょうというふうにすれば,それなりに意味があるのかもしれませんが,余り多くの時間を掛けるものでもないし,本当にそうなるかどうかも分からないわけですので,そういうふうに思います。
     質問がありまして,後半意見です。
     それから,二つ目は,第1の1,あるいは,ここに限らないのかもしれませんが,民法の第2編物権,第3章所有権,第3節共有に置かれるものなのかどうか。これは別に,特別法で外出ししても構わないんですが,要するに,適用対象が共有全部なのか,それとも不動産なのか,土地なのかということで,どうもここは,共有全部で作られているなと思いました。
     そうすると,混和とか,動産が混和して共有になったときにも使われる規定になるので,少し丁寧に考えないといけないなというふうに考えました。ですから,これは,事務当局が今これを作っているところでは,どういうふうにお考えなのかということです。
     それから,最後は,ちょっと今までの質問とは違うのですが,例えば,第1の1の①,②,③のようなのを書き込んでいきますと,かなり詳細な規定を置いて規律しようという姿勢になってくると思うんです。そのときは,共有者全員があらかじめ合意をして定めを置くことで,これと異なる規律を,我々共有者ではこれでいこうというふうにしたときに,認められるのかどうかということについては,最後それは,書くかどうかというのは,またちょっと出口のところの問題があると思うのですが,しかし,どちらで考えるのかということです。
     物権法ですから,強行法なので,当事者の合意は認めないという考え方は,現実にはないのかもしれませんが,非常に単純に考えると,その道が出てきてしまうんだと思うんですね。しかし,そうではなくて,当事者全員が合意をすれば,当事者間でルールを変えられるという考え方はあるように思います。そうすると,どの範囲で変えられるかということも問題になってくるかなと思います。
     そのときに参考になるのが,建物区分所有法には規約で定められることというのがあって,建物区分所有法で書かれているルールを,一方向だったり双方向だったりするんだと思うんですが,あるいは項目によってですが,当事者ですよね,区分所有者が規約で定めることによって,変えることができるというのがありますので,現在の民法には,その点については何ら語られていないんですけれども,詳細な規定を今の時点で置くならば,置くほど,そこについてのさばきをどうするのかということは,やはり考えないといけないのではないかなというふうに思います。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     事務当局に補足説明をお願いしようと考えますが,山田委員から種々御心配を頂きました。
     法制審議会は法律の解釈を確定する場所ではないということは,もとより御注意いただいたとおりでございまして,解釈を見直すことでどうかという記述は,解釈を統一しようということではなく,もしかしたら規定を設ける必要があるかもしれないという御議論をお願いするつもりでおりました。また後で事務当局からもおっしゃっていただきます。
     それから,全般について,共有物という言葉を用いて今のところ,問題提起を差し上げていますけれども,議論の進み具合によっては,共有地の議論になるかもしれない,あるいは共有不動産の議論になるかもしれないという含みは常に持っております。補足説明で常にそのことをお断りしていなかった,若干不手際があるかもしれませんけれども,最終的に,ここでの御意見を集約して,規律上どう表現していくかということを究めていくということになるであろうと考えます。
     それからあと,民法に規定を置くかどうか,249条以下に規定を置くかどうかという問題に関連して,置かれた規定の強行規定性という問題は,補足説明で欠けておりまして,御注意いただき,ありがとうございました。今後考えていかなければいけないであろうと考えますし,それは,ヒントを頂いた建物区分所有の状況との比較とか,中田委員の御発言にあった組合法理や組合の規定の適用関係などと交錯するところをどう考え込むかといったような御指摘とも関係してくるものと思います。
     事務当局から補足説明をお願いいたします。
    ○脇村関係官 繰り返しかもしれませんが,解釈自体,それは条文化も含めて,検討していただきたいという趣旨でございます。
     また,対象につきましても,中には,不動産に限定しますかどうですかということを明確に書いているものもございますが,当局としては,現時点では,まずは不動産に限定しないことも含めて広目に提案をしておるところですが,当然今後の議論においては,内容によって絞り込んでいくということも想定しているところでございます。
     最後の,先生おっしゃった強行規定どうするかという議論は,共有者間の特約の取扱いをどうするかという問題の一つではないかという気もしておりまして,また先生から,いろいろ教えていただきたいというふうに思っていますが,ここで部会資料,この資料を作る際に,一つだけ考えていましたのは,過半数で決めたことについて,過半数で変えるということは,規律としてあるとして,例えば,過半数で決められることも含めて,全員で決めたときに,正に全員で決めたときに,それを変更するのをどうするのか,あるいは,それをどう引き継ぐのかというのは,別途問題になるのかなとは思っていましたが,ちょっと特約の扱いをどうするかも含めて,また私どもで勉強したいと思います。
    ○山野目部会長 山田委員,よろしゅうございましょうか。
    ○山田委員 はい,結構です。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     ほかにいかがでしょうか。
    ○松尾幹事 今,部会資料3の第1の1「共有者の同意と共有物の管理に関する行為」の議論をしているわけですが,この後に出てくる第1の3「共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法」の方では,共有者の一部が不明であるとか,意思決定をしないというときに,不明共有者とか意思決定しない共有者がいても,管理に関する意思決定できるように,要件を緩和していく案が準備されていて,私は今問題になっている所有者不明とか,共有者の一部不明の問題に対する対応策としては,非常に重要な部分であると思っています。
     他方,そちらの方で要件を緩和するということとのバランス上,第1の1の通常の共有のところで,さらに要件を緩和する必要がどこにあるかということは,しっかり見極めて,要件緩和の主たる対象を明確にしておく必要があるのではないかと思いました。
     今議論に出ておりました,本来ならば多数決でできることについて,全員で合意したんだけれども,再び多数決でやろうというのは,これはやはり共有者間の合意の問題ですから,最初は全員合意の解釈として考えていくということで対応できると思います。
     それから,ちょっと気になりますのは,部会資料3の2ページ(3)の「なお」から始まる段落の4行目で,現行法上全共有者の同意が必要とされている行為類型についても,持分の4分の3あるいは3分の2でできる類型も設ける余地がある旨の部分です。ここはちょっと問題なのではないかと思っておりまして,これが必要な場面はどういうことかということについて,ちょっと具体的な問題類型を念頭に置いて,検討してみた方がいいかなと思います。
     この後論じることになる共有者の不明,あるいは意思決定しない共有者の問題について,どのように要件を緩和して所有者不明土地問題に対応するかについては,かなり突っ込んだ提案を頂いていると思いますので,そちらの方との関係について,確認しておく必要があるかなと思いました。
     その際,通常の共有ルールについての見直しに関しては,部会資料3では管理,変更,保存を挙げていただいておりますけれども,そもそも共有の最初にある249条の使用について,重要な問題が残されたままになっているように思います。つまり共有者間でまだ何の合意もできていないときに共有者の1人が使い始め,私は持分権に基づいて,共有物全部について使用できるでしょうといったときに,その共有者に対し,他の共有者が,いったん元に戻して,どう使うかを決めてから使用しましょうねということを,いえるのかいえないのかということについて,曖昧な状態であります。しかし,この問題は,共有物の利用をめぐる共有者間の合意の意味に関する根本問題として,変更・管理・保存行為の場合とも関わってきます。それは引き続き,解釈に任せるということでいいのか,それとも通常の共有のルールにについても踏み込んで再検討するとすると,一番曖昧になっている部分についても何か提案すべきではないかということについて,ちょっと気になりましたので,発言させていただきました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     一番最後におっしゃった問題は,例えば,昭和31年最高裁判所判決の理解ないし,その機能範囲の問題についての検討を深めた上で,規律として表現するものを設けるか設けないかという議論に発展していくものであろうと考えます。その前に御指摘を頂いたことを含め,引き続き事務当局の方で受け止めさせていただきます。
     ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

    「2 共有物の利用方法の定めの手続」に対する意見

     そうしましたら,第1の1に続きまして,第2(1?)の2でございますけれども,8ページで問題提起を差し上げている問題でありまして,現在の249条以下の法文には,協議という場面が出てまいりません。取り分け251条で,全ての共有者の同意を取り付ける,あるいは252条で,過半数で意思形成をするという場面への言及がございますけれども,それは何か,集会とか会議とかいうようなものを契機として用意するのか,そういうものを要求しなくてよいのかということについて,必ずしも明確でないという現状理解を踏まえ,問題提起を差し上げているところでございます。
     この2の部分についての御意見を承ります。いかがでしょうか。
    ○佐久間幹事 協議を経ることを要しないことを明確にするということは賛成なんですが,協議を経ることを要しないということに対応するのが,過半数を有する者の意思に合致しているということなのかどうかが,ちょっとよく分かりません。つまり,意思の合致をそれ自体として,この案は提示しているのか,意思が合致しているということが表されているということを要求しているのか,私は何らかの形で表されていないといけないんだろうと思います。それが一つと,もう一つは,共有者全員について,自己の法律関係を全く自ら知ることのできない状況で決定されているということが,望ましいのかどうかということはあると思うんですね。
     そうだとすると,協議あるいは話合いを経ることを求めるだけの利益ないし権利はない。だけれども,どのような決定がされるのか,あるいはされたのかでもいいかもしれませんが,それを知る利益ないし地位は保障すべきなのではないかと思います。
    ○山野目部会長 全員が当事者になっている協議を法律行為としてするという契機を絶対的に要求するものではないという方向性を示しているところまでは,文意は明らかであると思いますが,過半数の人たちの複数の意思表示が,ただ同時に並んで存在していればいいのか,過半数の人たちの間の意思を結合させる何らかの容態,法律要件が存在するかという問題についての御疑問の提示,それから,それとは別な問題として,いずれにしても,過半数の人たちが決めたことを共有者全体に情報として行き渡らせる必要があるのではないかという問題提起も頂きました。
     引き続き検討していく事項ですけれども,何か事務当局から補足説明がありますか。
    ○脇村関係官 前半の方については,ちょっと法的な構成はあれなんですけれども,イメージしていたのは,過半数の人で集まって話をして書類を作るとか,何かの表示行為をイメージはしておりましたが,それをどう表現していいのかというのは難しい問題なんですが,そこはそういう意味で考えていました。
     また,先生がおっしゃった最後の,次の問題として,教えてあげた方がいいのではないかという問題だと思うんですけれども,そこは議論としてあるんだろうと思っておりまして,ただここで書きたかったのは,まず,必ず協議が要るということまで言ってしまうと,正に,本当に動かなくなってきますので,そこは外した上で,なお,知る機会をどうするのかについては,効力とは直接関係ない方向で手当てするということも一つあるのかなとは思っていましたが,是非皆さんの御意見を頂ければというふうに思っております。
    ○山野目部会長 佐久間幹事は,今のところ,よろしゅうございますか。
    ○佐久間幹事 はい。
    ○沖野委員 この点は,今のご提案のイメージとしては,過半数を1人で独占はしていないという想定で,何人か寄らないと意思決定ができないというようなイメージだと思うんですけれども,この規律だと,過半数を有する人が1人いれば,あとは100人いようが何人いようが,その人たちのことは何も気にする必要はないという形になるように思われます。それがいいのかという問題があるように思われます。協議や話合いというのは,同意を取ることまでは要らないけれども,意見表明をする機会であるとか,情報提供を受ける機会だとか,そういう意義があるわけで,そういうものが全くなくして決めるということでいいのかと。
     確かに,所在不明の場合には同意は取れないではないかということであれば,それは所在不明の場合の特則を考えればいいのではないかと思われます。ただそこでも,協議というのが何を指しているのかということによるんですけれども,過半数さえ握っていれば,もうその人が考えることだけで全てを決めていける,この対象となる範囲,つまり過半数でいける分については,ですが。そういう規律を明確化すべきだということだとすると,他の人,過半数を握るに至らない人は分割請求でいくということで,分割でどんどん解消していくのが望ましいやり方なんだということになります。本当にそういうものを想定しているということであれば,それでいいようにも思われます。けれども,果たしてそう言っていいのかと,共有の一般の規律として,それでいいのかというのは,やはりためらわれると思っております。
    ○山野目部会長 今,沖野委員から明快な問題提起,問題整理を頂いたと感じます。
     これを受けて,御意見がおありの方は,今このタイミングでおっしゃってください。それ以外の点でも結構です。いかがでしょうか。
     お話をかなり明快にしていただいたと感じますけれども,御意見がないのは,しかし難しい問いであるということでしょうか。
    ○中田委員 思い付きなんですけれども,民法では,組合について,過半数決定と過半数同意とが区別された規律になっております。業務執行については670条で過半数決定で,組合代理については670条の2で過半数同意です。ただ,ここで過半数というのは,組合員の頭数の過半数であって,本日御提案いただいているのは,持分の価格に従った過半数ということですので,そこに組合とのずれが出ていると思います。
     果たして,共有について,頭数ということではなくて,価格の過半数ということで,決定ではなくて同意でいい,協議なしでいいのかどうか。このようなことが,今の沖野委員の御提示された問題であるのかな,頭数ではなくて価格の過半数という点にも,検討すべき点があるのではないかと思いました。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     組合の規律と共有の規律は,頭数でいくか,割合的な一種の投票を考えるかという差異があって,そのことに留意する必要があるけれども,人々が討議し合うという契機,議事が行われるという契機も,それとして重要であるというふうに考えて,共有者間で議事と議決が行われるべきだという発想でいくか,持分の大きさによっては議事は要らなくて,議決が行われればそれで足りると考えるかという問題が,なるほど難しい問題でありまして,1回の会議で皆さんが同じ意見になるということではないかもしれませんけれども,今後の事務当局の整理に反映してまいりますから,この段階でお考えがあったら承っておきたいと思いますが,いかがでしょうか。
    ○山田委員 これに限らず,一般的な話になってしまうのですが,集団的に利益が帰属する,あるいは法的な効果,負担も帰属するという場合に,多数決で決められることは,いろいろなところに幾つもあります。しかし,そのときには,少数の反対者が意に沿わない結果になってしまうということは仕方がないとして,多数決でやってよいというルールが各所にあるんだと思います。
     しかし,そのときには,全部探せばいろいろなのがあるかもしれませんが,最近そういう議論をするときには,やはり少数の反対者に対しては,ちょっといい言葉があるかどうか分かりませんが,コミュニケーションを取りましょうということが話題になります。それは多分,事前事後だと思うんですね。あるいは一方でもいいのかもしれませんが。それが別の文脈で語られると,手続保障という話になるのかなと思います。
     したがって,どうもこの8ページの2の3行,共有者全員での協議(話合い)を経ることを要しないことを明確にすることについて,どう考えるか。いいか悪いかと,何か二者択一を迫られているような感じがするんですが,どうもやはり,イエス・オア・ノーでは答えられないのではないんでしょうか。やはり方向としては,この補足説明の中にある,他の共有者の中に所在不明等が不明である者がいれば決められない。この隘路(あいろ)は,やはり今回,時間を掛けて検討するわけですから,そこは乗り越えるべきなんだと思うんですね。
     だけれども,乗り越える方策として,協議,話合いを経ることを要しないとし,それを明確にするというのではないんだろうなと思います。何かもう少し,ちょっと事務当局には,頭で汗をかいてもらわないといけないのではないかなと思います。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     よい言葉かどうか分かりませんが,とおっしゃっていただきましたが,やはりコミュニケーションという言葉が良い言葉であろうと感じます。手続保障は,ちょっと堅いですよね。
     事前及び事後のコミュニケーションか,あるいは事前又は事後のコミュニケーションか,しかし,いずれにしてもそれらについて軽々しく扱うという感覚で議論をすることはできないという観点の御提示を山田委員から頂きましたし,それから沖野委員の御発言で,仮にそこのところを引き続き重く考えていくということであったとしても,所有者不明土地問題などとの関係における政策的な課題の克服は,次の3の問題のところについて,しっかりした規律を仕込めば,それとして克服していくという余地もあるものであるから,そこにも留意する必要があるという御指摘を頂いたところであります。
     2のところについては,今日はこの辺りまでの御議論を頂いておいて,整理をさせていただくことでよろしゅうございましょうか。ありがとうございます。
     それでは,ここで,少しお疲れかもしれませんから,休憩といたします。

              (休     憩)

    「3 共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法」に対する意見

    ○山野目部会長 再開します。
     部会資料3「共有制度の見直し(1)」の第1の3のところについての御意見を承ります。
    ○蓑毛幹事 第1の3のような同意取得の方法の制度を設けることについて,強く賛成します。
     前回,メガ共有などというような言葉を申し上げましたが,所有者不明土地問題の本質は,所有者が分からないというだけではなくて,その後,調べた結果,非常に多数の共有者が存在することが判明する点にあります。このことは,実務的にも非常に問題になっております。
     共有者が多数になっているために,共有物について関心がなく,管理方法について同意を求めようとしても,なかなか反応してくれない人が多いというケースもありますし,共有者の一部が所在不明,所有者不明の状況になっているものもあります。そういうことを踏まえますと,このような規律を設けることが適切だと思います。
     ただし,1点,更に検討すべきだと思うことがあります。8ページの(注)に,「催告や公告についての公的機関の事前関与の要否につき」ということが書かれています。ここでいう公的機関の事前関与というのは,補足説明等を読む限り,催告や公告が適切になされているのか,また,そのことについて確答がされたのか,されていないかということを,公的機関で確認するという趣旨だと理解しました。
     それを超えて,催告や公告の内容,どのような管理をするかという内容について,ある程度,裁判所等で審査をした方がいいのではないかという意見が日弁連内で出ています。
     つまり,催告や公告をして,確答しない人については,権利保護というか手続保障はしているのだから,それでいいではないかという考え方がある一方で,特に変更又は処分について,潜在的には反対とか,変更又は処分によって不利益を被る人もいるということを考えると,催告や公告の内容に関し,必要性や相当性について裁判所で審査する,非訟手続になると思いますが,そのような手続を経た方がいいのではないかということについて,私自身はまだ今,確定的に見解を持っておりませんが,検討した方がいいのではないかと思っております。
     管理行為については,そのような手続は要らないのではないかという考え方もありますが,管理行為についても,例えば,その管理の方法によっては,共有者に対して,一定額の管理費用を負担せよということになる,それが場合によると,金額が大きくなるということもありますので,管理行為についても,その必要性や相当性について,裁判所の許可を得るということを,今の時点でそうすべきだと申し上げるものではありませんが,検討した方がいいのではないかと思っています。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     3で提案していることについて,全般的な賛成を頂いたのと併せて,注記のところについて,更に考えてほしいという御意見,加えて,更にそれを発展させる形で,管理のことをおっしゃいました。
     管理とおっしゃったのは,一般の言葉使いでいう共有物の管理のことだというふうに受け止めていいですよね。
    ○蓑毛幹事 この3の提案ですが,③は共有物の変更又は処分についての定めであり,④が,共有物の管理についての定めと理解しました。特に③については,必要性や相当性について,裁判所の許可を得ることを検討してはいかがと思っております。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     おっしゃっていただいたことは,今のようなことですから,ここの3にも関係があります。取り分け注記との関係で,関連があるというふうに感じます。
     それとともに,ただいま12ページの4まで説明を差し上げたところですが,実は13ページから後で,管理権者を裁判所が選解任し,あるいは共有物について,その管理に係る必要な処分を命ずることができるという規律の提案も差し上げているところでありまして,これらの審議とも関連させながら御議論いただくべき事項について,今,問題提起を頂いたと感じます。
    ○今川委員 私も,先ほど蓑毛幹事がおっしゃったのと同意見です。同意取得の方法については賛成ですし,公的機関の関与は,やはり必要になってくると思います。
     今,新しく規律を設けるわけですから,事後的に裁判所が最終的に判断する,紛争解決するというのではなくて,あらかじめ紛争を防止する仕組みが必要だと思いますし,管理の中にも一定の処分も入ってきますので,そういう場合には,やはり取引の安全の観点も必要だと思いますし,今,山野目先生がおっしゃったように,管理者の選任ということも絡んできますので,公的機関の関与は必要だと思っております。
     それから,所在不明であるということの問題ですけれども,どういう作業をして所在不明とするのかというルールは,一定程度,はっきりさせておく必要があると思います。
     我々実務家からしますと,特殊な場合は別として,所在を捜すというのは,そんなに苦痛ではないわけでして,例外はもちろんあるんですけれども,要はルールがきちんとしているかというところだろうと思います。
     それから,催告,公告の方法ですけれども,登記簿上の名義人に対して,あるいは登記簿上の住所地に通知をするという選択肢も提示されておりますが,登記の重要性,それから登記情報を最新の情報に更新することの重要性を認識するという意味では,一つの方法だろうというふうには思います。
     それから,将来において,戸籍情報や住民情報,住所情報と登記情報との連携が図られて,もしも職権で変更登記が入るというようになれば,それは当然にそうなるんであろうと思います。
     ただ,一方で,今回,デジタル手続法案において,住民基本台帳法の一部改正の一環として,政令改正になると思うんですけれども,住民票の除票の保存期間を現行の5年から150年に延ばすということで,所有者の所在の探索に,かなり利便性が向上すると,こういう環境も整うわけですので,登記簿上の名義人でよしとするか,一定のルールを定めて,所在を探索するかどうかというところは,これから検討はしていくべきだと思っております。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     ただいま衆議院の内閣委員会で審議されている途上の住民票の除票の扱いに関わる制度改革をにらんだ御指摘も頂きました。
     蓑毛幹事から問題提起を頂いた8ページの3の注記のところでございますけれども,ここに注記を添えて問題提起を差し上げている趣旨は,ひとまず最小限は,この催告や公告などの手順が,何といったらいいでしょうか,最小限形式的な手順で,きちんと行われたかという事実の確認が必要だけれども,それですらあっても,単に私人が動いてやりましたというだけではなく,公的機関が関与した方がよいのではないかという意味合いを,少なくとも込めて差し上げています。
     蓑毛幹事からは,更に発展させ,その催告や公告をその状況,あるいは時宜においてすることの適切性というような実質的判断も,場合によっては,してもらった方がよいという仕組み方もあるではないかというお話も頂いたところで,そちらの後ろの方のお話は,御案内差し上げたように,この後に,まだ説明を差し上げていない部分と関連させて議論していただく必要があります。
     単なる事実の形式的確認であるならば,必ず裁判所にしてもらわなければいけないということでもないであろうと感じます。一種の公証事務であるということになりますから。その辺のところについては,この部会資料として,何か特段の方向を前提としてお願いしているものではなくて,皆様方に御議論いただきたいと望みます。議論をオープンにしておきたいという気持ちから,3のところの注記は差し当たり,裁判所ではなく,公的機関というふうに記しております。
     13ページから後の話も関係ありますよ,というふうに,私,先ほど申し上げてしまいましたけれども,もう少し精密に言うと,その辺のところを見極めながら,御議論なさっていただく必要もあるであろうと感じます。
    ○道垣内委員 後ろに関係するので,今発言すべきかどうか分からないんですが,公的機関の関与について,一言だけ申し上げます。
     結論的に,どういうふうな法制度がいいというふうな,何か強い意見があるわけではないのですけれども,信託法を比較して少しお話ししたいと思います。大正時代にできました信託法におきましては,受託者が悩む場面においては,裁判所にいろいろ相談できる,指示を仰ぐことができる,というシステムになっていたわけです。それは,英米の信託法がそうなっているから,そうなっていたわけですが,それでも英米信託法と比較しますと,ごくわずかであり,平成19年に新信託法を作るというときに,裁判所にどんどん相談をしていく,これは権限ないかどうかというのをあらかじめ聞けるようにしようとか,いろいろ意見は出ました。しかし,裁判所から大反対が起きまして,どういったことを受託者がやれば,より適切に受益者が保護できるかなんていうことが,裁判所に,その都度その都度判断できるわけないではないかと主張されたのですね。私は,もっともな反論だと思っておりますが,そういった反対もあり,現行の信託法は,裁判所があらかじめ,事前の段階でいろいろなチェックを入れて,こうやったらいいのではないのというふうなことに対して,お墨付きを与えるという制度は原則的には存在しないこととなりました。
     これについて,もちろん,それは不適切な立法だったという評価も十分あろうと思います。しかし,日本の法制度において,一つのコンシステンシーが必要であると考えたときに,信託法においては,個々具体的に何をすべきであるというふうな判断というのが,裁判所に委ねることはおよそ不可能であるという判断がなされ,他方で,共有のときには,裁判所にやってもらうといいのではないというふうに言って,みんな,そうだそうだというふうに言うのは,私は若干,どこかにおかしいところがあるのではないかという気がいたします。それでもそれを乗り越えてやろうというならば,もちろんそれで結構なのでして,したがって,私は結論として,何かを主張するわけではないというふうに申しましたが,日本法の中での,そういう一貫性,統一性というものも考慮に入れて,御議論いただければと,いただいた方がいいのではないかというふうに思います。
    ○山野目部会長 よく分かりました。松尾幹事,どうぞ。
    ○松尾幹事 ありがとうございます。
     この部会資料3の第1の3「共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法」につきましては,既に蓑毛幹事,それから岡田委員の方から御発言ございましたが,私も全面的に賛成したいと思います。
     その上で,細かな点を3点ほど確認したいんですが,一つは,今回,意思表明をしない共有者とか,所在が不明な共有者の意見を考慮に入れなくてよい理由です。それを正当化する理由として,部会資料3の9ページの(2),(3)に書いていただいていることは,きちんと整理していただきたいというふうに思っております。つまりそういうふうに,共有持分権の効力を制限してよい理由が,(2)の方には,意思表明をしなかったり,不明な共有者の合理的意思に反するとは言えないのではないかということが書かれていて,(3)の方では,さらに,これらの者の権利を制約しないと共有物の利用が阻害されることから,それを防止する観点であることが記されています。
     特に(3)は,やはり非常に重要な点なので,こういう形で共有持分権の効力を制約する根拠は何かということについては,きちんとその理由を整理して確認しておくことが肝要であろうと思いました。
     その上で,細かな要件に関しての確認なんですが,部会資料3の8ページの3の②の中で,「他の共有者の所在が不明であること」という部分があるんですけれども,この中には,所在不明のほかに,そもそも共有者が誰か分からないという場面,例えば,共有者の1人について相続等が生じていて,共有者が分からないという場面も含まれるのかどうかということについて,要件を確認させていただきたいと思います。
     後ほど,共有物自体が相続の対象財産だと,遺産共有ということは出てきますけれども,共有者の1人について,相続等が生じていて現在誰が共有者であるのか不明な場合は,ここに含めていいのかどうかということであります。
     それから,もう1点は,先ほど岡田委員から発言がございましたけれども,確認の手続で,登記簿上の住所に催告等の書面を送付すればよいということですけれども,共有者の全部又は一部が不明の場合に,所有権あるいは共有持分権の効力を制約する類似の例として,土地収用法の場合の不明採決の場合がございます。この場合には,過失なくして知ることができないという要件があります。また,昨年成立しました所有者不明土地利用円滑化法の中では,特定所有者不明土地ということを判断するときに,相当な努力をしても分からないという規定を法律に置き,その意味については,非常に詳細な政省令,ガイドラインが出ておりますので,そういう場合とのバランスをも考慮した上で,この手続上の緩和ということが問題ないかということを確認したいと思いました。
     不明所有者の探索のために過大な負担を課すと,やはり本末転倒になってしまいますので,そこはバランスを確認した上で,客観的に明確な,ここまで確認しておけばいいですよというルールにすべきではないかと思いました。
    ○山野目部会長 ありがとうございました。
     松尾幹事から多岐にわたる御意見を頂きましたから,それらを踏まえ今後の整理を進めたいと考えます。
     最後の方でおっしゃった,このゴシックで示してある文章の共有者の所在が不明であるということの意味は,御指摘等も踏まえて,これから更に深めていこうと考えます。恐らく,もちろん御指摘があった土地収用法の不明採決の局面であるとか,昨年成立した所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法などの,この局面を扱う規律の先輩に当たるところがありますけれども,どちらかというと,あの系統の法制を参考にしたというよりは,これは民事法上設けようとしている規律でございますから,不動産登記法の70条が,現在既に,登記義務者の所在が明らかでないという概念を用いており,あれと同じ発想で,ここに規律表現のサンプルをお出ししているものであろうと理解します。
     そうであるとすると,所在が分からない場合のみではなく,一種のもちろん解釈から,所有者そのものが分からない場合も含まれると考えられますし,70条の運用の中で積み上げられてきたところを参考にしながら,過失なくして,というふうに正面から書くということにするかどうかを考え込みつつ立案をすることになりますが,仮に書き込まなかったとしても,もちろんその辺のところは運用の中で考慮されていくということになると想像されます。
     今,松尾幹事から御指摘いただいたようなことに注意をしながら,今後,この種類の制度を採用するときの規律表現を考え込んでまいりたいと考えます。ありがとうございます。
    ○佐久間幹事 今話題になっていることとちょっとずれるんですけれども,3の特に①に関しまして,先ほどの2と組み合わせるようなことは考えられないのかということを,ちょっと伺いたいところがございます。
     それは,今3で話題になっているというか,焦点が当たっているのは,過半数を得たい,あるいは全員同意を得たいときに,不明の方がいる,あるいは答えない人がいるということで,その人たちを除いて過半数に,あるいは全員同意にするための手続ですよね。
     ただ,例えば,2の場合,先ほど沖野委員が言われたことが気になっておりまして,共有者の1人が持分の上では過半数を握っていると。ただ,その場合も,1人では決定できないのではないかというふうなお話がありましたよね。私はできていいのではないかと思っておるんですけれども,ただ,そのときに,私自身が先に申し上げましたことでいうと,他の共有者について,自分の権利が知らないうちに動いてしまっているということはいいんだろうかと,先ほど申し上げたつもりなんですね。
     これを前提といたしますと,例えば過半数を持っている人,あるいは,何人か合わせて過半数を超えている人たちが,過半数でもって決することができる事柄について決定したいというときに,何をもって決定することができ,その決定はどの時点から効力を生ずるのかということを考えた場合,まず,過半数で内部的には決めました,あるいは一人でどうするか決心したとします。そこで決められたことについては,他の人たちが幾ら反対したって,少数なのですから,どうしようもない。ただ,そのようなときであっても,過半数で決めることについては,①の相当な期間を定めて,他の共有者に,管理に関する行為について承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることは必要である。催告をして,承諾を得られたならいいんですが,承諾しないというのであっても,結局それでもって,過半数の決定というのはプロセスとして終わりました,その返事をもって効力を生じました。返事が来なければ,相当の期間を経過することによって,同じく決定,法的に効力を生ずる決定となりました。3の提案は,こういうふうにも使えるのではないかと思いました。
     3そのものについては,全体としては賛成ですが,それと違う用い方をすることは,排除されているのかどうかということをちょっと伺いたいということです。同意を調達するために,要件を満たすためにしかこれは使えないのか,ほかの使い方もあるのかということです。
    ○山野目部会長 お尋ねの仕方で,今御発言を頂きましたけれども,2と3の関係に関し,御指摘を頂いた2の問題を解決するために3の発想を,言わば移入して問題解決をしていくということは考えられているかということについて,法務省事務当局において,特段の前提とか,何か御案内したいという強いものを持っているものではなく,むしろ今,佐久間幹事に御提案いただいた発想をヒントとして受け止め,今後の議事の整理をしていくということになるものであろうと考えます。
     あわせて,佐久間幹事に御礼を申し上げるとすれば,つまり,先ほどの2のところは,確かに山田委員に明快に整理していただいたように,コミュニケーションは要るか要らないかというふうに,大上段に短兵急に聞かれれば,なかなか要らないと,そんなものは蹴飛ばしてしまえとは,なかなか言いにくいですが,反面,実務なり事業の現場で,様々な悩みを抱えている方々から見れば,コミュニケーションは必ず要る,なおかつ,そのコミュニケーションは必ず重いものですというふうにされたのでは,この2のところの論点が重くなり過ぎて,お話が非常に進みにくいという問題にぶつかります。
     理論的にこう考えられるという側面と,政策的な実効性の確保という面の両方を見て,非常に悩ましい状況になりますけれども,その隘路を打開していく際の一つの,唯一の方途ではないかもしれませんけれども,ありうるアイデアとして,2で考えられているコミュニケーションというものは,それとして重要であるが,しかし,そのコミュニケーションを確保するための様々な工夫として,3で御提示申し上げているようなものも今後組み込んでいくというようなことは考えられてよいという,佐久間幹事から今頂いたヒントは貴重なものでありますから,それも踏まえ,今後,事務当局において議事を整理することにさせていただきます。
     佐久間幹事,ひとまずそのようなことでよろしゅうございましょうか。ありがとうございます。
     引き続き,いかがでしょうか。
    ○岡田委員 実務の観点からということで申し上げさせていただきますと,本日の前段の前半の議論にありました土地の所有権の放棄の要件のところで,隣接地との境界が特定されという要件が一つ,案として挙がっておりますけれども,このような場面におきましても,実際,隣接地の方と境界がはっきり決まらなくて,処分を諦めるというような場面もたくさんございます。実際にございます。そのような意味からも,このような方策が準備されることは,とても必要な措置だろうというふうには感じております。
     境界の安定は,私どもにとってみれば,安心の根本というふうに考えて,日々業務をしておりますし,そのような観点からも,隣接地の,隣接の方の境界を確認するという行為が,このような形で,今現在は全員の同意をもらってきなさいというような場面もあったりもするので,是非こういう措置は必要ではないかなというふうにも感じております。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     ここでの議論に,もちろん関係することでありますが,改めて相隣関係を議論するときに,今の岡田委員がおっしゃっていただいた観点を再度強調して,御指摘いただければ有り難いです。
     引き続き,3のところについて,いかがでしょうか。
     ひとまずよろしいですか。
    ○山田委員 質問です。どこかに書いてあるかもしれませんが,申し訳ありません,見付かりませんでした。
     この3のところで,公告が出てきます。公告の方法としては,どんなことを具体的に考えていらっしゃるのか。今の段階で結構ですので,事務局のお持ちのものを御説明いただけませんでしょうか。
    ○脇村関係官 今のところは,幅広く考えてはいまして,新聞なりインターネット,いろいろ考えているところなんですけれども,恐らく,公的機関が入るかどうかによっても変わってくるのかなという気がしておりますので,もし公的機関は入らずに,民間でやるんでしたら,新聞とかそういう普通の,会社とかでされているケースになると思いますが,ちょっとそこは併せて検討したいと思っていますが,どうしたらいい,先生,何か御意見いただければ。
    ○山田委員 いわゆる官報,日刊新聞,電子公告という,それですか。
    ○脇村関係官 そうですね,はい。ただ,公的機関を関与させるかかどうかで大分変わってくると思いますので,それも含めて検討させていただきたいというふうに思っております。
    ○山田委員 分かりました。
    ○山野目部会長 よろしいですか。
     したがいまして,公的機関を関与させることにするかどうかという注記のところが,小さな文字で書いてありますけれども,この制度のイメージを作っていく上では重要な論点であって,引き続き検討しなければならないと感じます。
     この3のところ,大変難しい議論ですが,今日の段階で御意見を承っておくことを頂いた上で,検討を続けようと考えますから,更なる御発言を頂きます。いかがでしょうか。
     よろしいでしょうか。今まで御指摘いただいたところを踏まえて,では検討させていただきます。
     続きまして,12ページの4のところ,共有物の管理に関する行為と損害の発生のところについて,御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。
    ○脇村関係官 少し,資料作成の意図を少しだけ説明させていただきたいと思っていますが,先ほど蓑毛先生から,3の催告,公告の内容について,審査した方がいいのではないかという御意見を頂いたのとも関連するんですけれども,この4について,あえてこういった損害の填補に関する提案させていただいたかといいますと,公告を使ったケースについて,内容それ自体に,事前事後,特に事前に介入するのは難しいかもしれないけれども,他方で,それによってむちゃくちゃなことをされたケースについては,きちんと損害を填補するということが重要ではないかというふうに思っておりまして,この4につきましては,今でもある問題ですが,特にこの3についてのような,催告なり公告の手続を入れる場合には,重要な規律になってくるのではないかというふうに考えているところでございます。
    ○蓑毛幹事 今,脇村さんからありましたので,私自身の意見を申し上げると,強く裁判所の許可の制度を作ってくれと申し上げているつもりはありませんので,ちょっとその点だけ補足しておきます。
     そういうことも含めて,その先にある共有物の管理者のところもそうですし,例えば,その後の最後のところの売渡し請求のところの金額の妥当性のところであるとか,様々なところでいろいろな問題が出てきますので,そういったところについて,これは要るのではないか,要らないのではないかということをもう少し問題提起をした上で,皆で議論した上でということですので,現時点で私が,先ほどの3のところについて,全てのケースについて,裁判所の許可を求めるべきだと申し上げているつもりは全くありませんので,ちょっとその点を少し補足で申し上げておきます。
    ○山野目部会長 蓑毛幹事の御意見は,大変よく理解することができました。ありがとうございます。

    「4 共有物の管理に関する行為と損害の発生」に対する意見

     ほかにいかがでしょうか。4のところでございます。
    ○道垣内委員 よく分からないのですが,これ,誰が損害を填補するのですか。決定者ですか。決定に問題があったという場合にでしょうか。また,決定と因果関係がある場合なのでしょうか。私はシチュエーションがよく分からないままなのですが。
    ○脇村関係官 すみません,そこがなかなかあれなんですけれども,先生がおっしゃっているとおり,当該行為をした共有者と同意をしている共有者が,ずれるケースがあろうかと思います。そういった意味で,どちらにもなのか,あるいは行為をした人だけなのかというのがあれなんですが,一応合意をしている以上は,責任を負うのかなという気もするんですが,すみません,是非御意見いただければというふうに思っています。
    ○道垣内委員 いや,何というか,それは,例えば共有物の管理のときの善管注意義務違反なのでしょうか。つまり,例えば,1人だけ行方不明の人がいるから,その人については催告で同意を調達したとして,だけれども,そのときのその判断においては,善良な管理者の注意に反することはないとしても,責任を負うのでしょうか。行方不明のその人を抜きにしてやったということが根拠になってでしょうか。
     何に基づいて責任を負っているのか,私にはよく分からないままなんですが。
    ○山野目部会長 恐らくこの部会資料作成の意図は,先ほどの別な議題のときに出ましたように,法制審議会は別に法律の解釈について意見を述べる場所ではありませんから,放っておいても民法709条の要件が全て主張立証がかなうときに,立証した被害者が当該要件を充足した加害者に対して損害賠償請求をすることができることは当然でありまして,そのことをわざわざ規律表現として設けるとか,ここで御審議をお願いするとかいう必要はありません。
     709条ではカバーできないような局面があり,それが,この前の1から3までの規律を設けたことによって生ずるとすれば,そのことについての付随的な法制上の措置として,必ずしも民法709条の要件を充足していなくても,金銭による補償といったらいいか賠償といっていいか悩む部分があるものですから,補填という言葉を用いていますけれども,そのようなことができるということを,もちろん解釈の提案ではなく,法制上の規律として,こういうものがあり得るのではないかということで,問題提起を差し上げています。
     御案内はそこまでであって,そこから先のものを,何か事務当局として深く考え込んでお出ししているものではありませんから,委員,幹事におかれまして,そのようなきっかけでの議論ならば,こういう面でのこういうことは考える必要があるというような御示唆を多く頂くことがかなえば,これをまた事務当局で受け止め,整理してまいるということになりますから,何とぞお知恵を頂きたいというふうにお願いする次第でございます。
    ○道垣内委員 それでは,質問しないで意見を述べますが,帰責根拠が不明であり,置くことに反対します。
    ○大谷幹事 すみません,こちら,ここの部分が,やや分かりにくいところがあったかと思いますけれども,この部会に先立つ研究会の議論では,こういう形で催告をしたけれども答えなかったという人は,例えば不法行為的なことをされることについてまで同意をしたということになりませんかねという議論が元々あって,不法行為責任を問うことができないわけではありませんよということを確認した方がいいのではないかという議論が確かあったように思います。
     道垣内委員の御意見を頂ければと思うんですが,不法行為責任を,これは問わないという意味ではありませんということ,それは当然だということでは,規律を置く必要はないということになるんでしょうし,そこのところがはっきりしないのであれば,明確にするということもあり得るということなのか,いかがでしょうかね。
    ○道垣内委員 すみません,よろしいですか。
     そうすると,書き方として,いろいろあり得るわけでありまして,つまり,1又は3の検討中の規律に従って,同意をするということは,当該行為の責任の免責の意思を含まないという書き方をするというのが一つであるのかなあ,いやおかしいな,やはり,提案者は,提案による責任なのですかね。いや,行為による責任なのですかね。
     いずれにせよ,大谷さんがおっしゃったことは分かるんですが,4のような書き方にはならないのではないかなという気がいたします。申し訳ございません。
    ○中田委員 今の大谷幹事の御説明で分からなくなってしまったんですけれども,3の③の規律は,催告又は公告をした共有者は,確答していない共有者以外の共有者全員の同意を得てとなっていますよね。確答しなかった人は,同意したとみなされるのか,それとも全体の中から排除されるのかというのは,私は,むしろ全体から排除されるのかなというふうに理解していたんですが,そういう理解ではないんですか。
    ○大谷幹事 その御理解自体は,そのとおりでございます。排除されるということでございます。
    ○中田委員 それはそれでいいんですね。
    ○大谷幹事 はい。
    ○中田委員 そうすると,明示的な同意をした人と,全体から排除された人と2段階あるわけですね。そのうち,明示的に同意をした人が責任を負うことになるとすると,その根拠は何かということが余りはっきりしないというのが道垣内委員の御指摘で,会社法において,決議に賛成した役員の責任というのもあるわけですが,それと同じようなものなのか違うのかとか,やはり誰が誰に対して,なぜ請求できるのかということを整理していただくとよろしいのではないかと思います。
    ○脇村関係官 元々の議論というか,想定していましたのは,この共有者はそれぞれ,持分に応じて利用する権利を有しておりますので,その定め方によって,ある1人が,全く使えないですとか,そういったときに,何らかのそういう権利侵害的なものが発生したときについては,何らかのそういう責任を追及できてもいいのではないかということを考えておりました。
     それはある意味,共有者間での権利侵害してはいけないという義務的な発想,共有者の持分をきちんと尊重しないといけないというか,そういったことの裏返しなのかもしれないなと思っていますが,それとの関係で,権利侵害について,何からの手当てをしないといけないかというのが,最初思っていたところです。
     先ほど,その続きの話として,では権利侵害をしたとき,あるいは権利を尊重しないといけないということを尊重しなかったことについて,誰が責任を負うのかというのは,2通りあるのではないかと思っていまして,積極的に同意をして,そういった,ある意味権利侵害するような定めをして利用させたこと自体に求めるのか,やはり利用したこと,実際に利用していたとか,そういったことに求めるのか。その辺りはまだ,どうしていいのかがよく分からないところもあり,それは恐らく,そもそもそういう権利を侵害されたケースについて,どういった理由で責任を負うのかが,検討が不十分だったせいなんだろうと思いますので,また改めて検討していきたいと思っているところでございます。
    ○道垣内委員 もう1点だけ言わせてください。
     その大前提として,現存してというか,何といいますか,アクチュアルにというか,現実に同意をした人というのは,その結果として,自分が不利益を被っても,損害賠償請求権を有しないのではないかということがあるような気がするのですが,そこも本当にそうなのかという疑問も生じるのですね。
     よく企業などで契約に基づいて一定の行為義務を負うというときについて,こんなことやっては駄目なのではないかと指摘しますと,いや,顧客の同意を取っていますから大丈夫なのです,と答えてくださいます。しかし,消費者,顧客が,そのような変更ないしは行為によって,どのような不利益を被るのかということが十分に理解できていないときに,いくら同意があるからといって,そのような不利益が生じることにつき悪意または有過失の大企業の方が,そういった変更ないし行為を提案して,それで同意を取りましたから責任ありませんと言われますと,そうはならないでしょうと,私はよく思うのです。
     そうすると,共有の場面においても,提案をして,同意があったら,同意をした人は必ず責任は問えなくなるのかというと,それはそうではないわけであって,そこのところも考えないと,このようなみなし同意か,中田さんの話では,排除であるという話だったんですが,そういう人について,その人は責任を追及できますよというふうな規律を置くことの意味が変わってまいります。その点も気になるということを申し上げておきたいと思います。
    ○蓑毛幹事 何か具体的な事例を想定しておっしゃっていただいた方が,分かりやすいのかなと思いました。
     例えば,非常に価値のある土地があって,それが5人の共有になっています。そして,それを貸せば,年間1,000万円の賃料が得られる土地でした。ところが,共有者の1人が自分の近しい人に,ただ同然の金額で,この制度を使って貸してしまった。後になってから,所在不明だった人が現れて,本来は年間1,000万円取れるのだから,その5分の1の200万円分,自分が損害を被ったと主張した。例えばこういったようなケースですかね。
     このケースで,そもそも所在不明だった人に200万円の損害があったと言えるのか,それを誰に請求できるのか,そのような管理をやろうと言った人が悪いのか,貸してもいいよと言って,明示で同意した人も責任を負うのか,そういった議論でしょうか。
     例えば会社の取締役であれば,取締役の善管注意義務があるので,株主に対して責任を負うことはありますが,共有者にはどのような義務があるのでしょうか。共有者が管理方法について明示の同意をしたら,損害賠償請求を負うのか。なかなか難しい問題があると思います。あるいは,主体的に自分の近しい人に貸すということを言い出した人には責任があるのか,しかし言い出したということの法的な意味は何なのか。
     この辺り,一体,何が損害なのか,何に基づいて共有者が責任を負うのかということは,もう少し具体的な事例を,ちょっと今思い付きで事例を申し上げましたけれども,そういったことを整理して議論した方がいいと思いました。感想だけですけれども。
    ○山野目部会長 ありがとうございます。
     いえ,感想に尽きる話ではなく,正に民法の先生方から御指摘を頂きましたし,蓑毛幹事からは,具体的な局面として検討すべきものの一つの例を挙げていただきました。
     御指摘よく分かりましたから,4のところは事務当局において,直ちに没にするという話にはならないかもしれませんけれども,皆様方に具体的に議論いただける局面を,次の議論の機会に部会資料において提示をさしあげ,それで御議論を引き続きお願いしたいと考えます。
     4のところ,このようなことでよろしゅうございましょうか,今日のところは。
    ○山田委員 もう一度検討してくるとおっしゃったので,それで結構です。楽しみにしています。
    ○山野目部会長 分かりました。
     今おっしゃっていただいた感触も,事務当局の方で受け止めてもらうことにいたします。ありがとうございました。

     それでは次に,部会資料の13ページから後ろに即して,第1の残余の部分についての資料説明を差し上げます。
    ○脇村関係官 では,御説明させていただきます。
     5から7までは,共有者の,共有物の管理者について取り上げております。

    5 共有物の管理者の選任等

    5 共有物の管理者の選任等

    (1) 管理者の選任義務等
     共有物を管理する者(以下「管理者」という。)の選任義務等に関する次の各案について,どのように考えるか。
    【甲案】
    ① 共有者は,共有物の管理者を選任しなければならない。
    ② 共有物に管理者がないときは,裁判所は,申立てにより,共有物の管理者を選任することができる。
    【乙案】
    ① 不動産の共有者は,不動産の管理者を選任しなければならない。
    ② 不動産が共有物である場合において,不動産に管理者がないときは,裁判所は,申立てにより,不動産の管理者を選任することができる。
    ③ 共有者(不動産の共有者は除く。)は,共有物の管理者を選任することができる。
    【丙案】
    ① 共有者は,共有物の管理者を選任することができる。

    (2) 共有者による管理者の選任の要件
     共有者による管理者の選任の要件に関し,次の規律を設けることで,どうか。
    ① 共有者による管理者の選任は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する。
    ② ①の選任については,共有物の管理に関する行為(変更又は処分以外の管理に関する事項)についての同意取得の方法(第1の3参照)と同様の制度を置くものとする。

    (3) 裁判所による選任の要件等
    ア 第三者の申立てによる選任
     前記(1)の論点(管理者の選任義務等)につき【甲案】又は【乙案】を採用する場合に,第三者の申立てによる選任に関する次の各案について,どのように考えるか。
    【甲案】管理者が選任されていなければ,裁判所は,利害関係を有する第三者の申立てにより,管理者を選任することができるものとする。
    【乙案】管理者が選任されていないことのほかに,例えば,次の各事情があれば,裁判所は,利害関係を有する第三者の申立てにより,管理者を選任することができるものとする。
    ① 共有者の数が多数にのぼること
    ② 共有者の中に所在等が不明な者があること
    ③ 共有物が管理されておらず,害悪等が発生していること
    (注1)利害関係については,共有者に対し共有物に関する権利を有するなど法律上の利害関係を有する場合に限らず,当該共有物の購入を希望しているなどの事実上の利害関係を有する場合にも認めるのかについても,併せて検討する。
    (注2)管理者の選任をする際には,共有者に管理者選任の催告をするなどして,管理者を選任する機会を付与するかどうかについても,併せて検討する。
    イ 共有者の申立てによる選任
     前記(1)の論点(管理者の選任義務等)につき【甲案】又は【乙案】を採用する場合に,裁判所による管理者の選任の申立権を共有者に認めることについて,どのように考えるか。
    (注)共有者の申立てによる選任の要件についても検討する。

     5では,選任について取り上げており,(1)では,共有物を適切に管理したり,第三者に対する便宜を図る観点から,管理者の選任を義務とすることや裁判所による選任について取り上げております。
     (2)では,共有者による管理者の選任の要件を取り上げております。
     (3)では,裁判所による選任の要件等を取り上げており,特に,この裁判所の介入をどのような場合に認めるか,御検討いただければ幸いです。
     (4)では,共有者による申立てによる選任を取り上げておりますが,その要件と併せて御検討いただければと思います。

    6 共有物の管理者の権限等

    6 共有物の管理者の権限等

    (1) 管理者の権限
     管理者の権限に関し,次の規律を設けることで,どうか。
    ① 管理者は,総共有者のために,共有物に関する行為をすることができるものとする。ただし,共有物の変更又は処分をするには,共有者全員の同意を得なければならないものとする。
    ② 前記①ただし書の同意(共有者が共有持分を喪失する行為についての同意を除く。)については,共有物に関する行為についての同意取得の方法(第1の3参照)と同様の制度を置くものとする。
    ③ 共有者の持分の価格の過半数の決定で,管理者の権限を制限することができるものとする。
    (注1)裁判所が,共有者全員の同意に代わる許可の裁判をした場合には,管理者は,共有物の変更又は処分をすることができるものとすることについては,引き続き検討する。
    (注2)共有持分を喪失する行為についての同意取得の方法に関しては,後記第3の1(通常の共有における不明共有者の持分の売渡請求権等)において別途検討している。
    (注3)裁判所が選任した管理者に関し,裁判所が管理者の権限を制限することができるものとすることについては,裁判所による選任を認めることと併せて引き続き検討する。

    (2) 管理者の義務
    管理者は,善良な管理者の注意をもって,事務を処理する義務を負うものとする。

    (3) 報酬
    ① 共有者に選任された共有物の管理者は,特約がなければ,共有者に対して報酬を請求することができないものとする。
    ② 裁判所に選任された共有物の管理者については,裁判所は,共有者に対し,管理者に対する相当な報酬の支払を命ずることができるものとする。

     6では,管理者の権限や義務,報酬について取り上げており,権限については,(注)にもありますが,裁判所が共有者全員の同意に代わる許可の裁判をすることや,共有持分喪失行為についての同意取得の方法など,併せて御検討いただければというふうに存じます。

    7 管理者につき他に検討すべき事項

    7 管理者につき他に検討すべき事項
     共有物の管理者につき,他に検討すべき事項について,どのように考えるか。

     7では,他に検討すべきということで,いろいろ書かせていただいておりますが,共有者以外の第三者を選任することができるのかといった管理者の資格や管理者の任期,管理者を置くことができる共有物を不動産に限定することや,辞任・解任,不動産に関して管理者を選任したことを不動産登記における登記事項とするのかや,管理者の法的性格などについて検討することが考えられるところでございます。

    8 裁判所による必要な処分

    8 裁判所による必要な処分
     裁判所が,共有物の管理に関し,必要な処分を命ずることができるものとすることについて,どのように考えるか。

     8につきましては,裁判所に必要な処分について取り上げております。今後検討がされる予定である不在者財産管理又は相続財産管理人が問題となる場面では,財産管理人の選任のほかに,裁判所が他の必要な処分を命ずることができるのかについて検討することを予定しており,共有物の管理においても同様に検討すると考えられますので,御意見いただければというふうに思います。

    「5 共有物の管理者の選任等」に関する意見

    ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた中で,第1の5,共有物の管理者の選任等の部分について,まず御意見を承ります。
    ○蓑毛幹事 共有物につきまして,以前から申し上げているとおり,極めて多数の共有者がいたり,所在不明の者がいたりする場合があります。このようなことを踏まえますと,共有物の管理者を選任して,適切に管理する仕組みを作ることは有益だと思いますので,この制度の創設に賛成します。
     ただし,その先の議論,部会資料でもこの後にいろいろと書かれていますが,共有物の管理者がどのような権限を有し,どのような義務を負うかということについては,非常に難しい問題がありますので,共有物の管理者の制度を設けることを前提として,更に議論を深めるべきだと思います。
     この5の提案について意見を述べますと,まず,共有者の管理者をどのようなときに選任することができるか,あるいは選任しなければならないかということについて,甲案は,全ての共有物について共有者は管理者を選任する義務を負う,乙案は,共有不動産について共有者は管理者を選任する義務を負うとなっている。丙案は,共有者は共有物の管理者を選任することができるとなっていて,義務ではないと,こういう立て付けになっていると理解しました。
     この点に関しては,不動産に限るとしても,共有者は常に管理者を選任しなければならないとするのは無理があると思います。そこで,丙案に賛成します。
     (3)の第三者の申立てによる選任ですが,これは,私ども弁護士が持っている問題意識を酌んでいただいたと思うのですが,例えば乙案のように,一定の要件を満たしたとき,すなわち共有者の数が多数に上る,共有者の中に所在等が不明な者がある,共有物が管理されておらず,害悪等が発生しているというときに,このような状況で,所在不明の者も含めて全ての共有者を相手にするのは非常に大変です。今回の配布資料にはありませんが,訴訟も含めて,そのような者を相手にするときには,実務的な観点からは,共有物に管理者を置いた上で,その管理者を相手に交渉したり訴訟を起こしたりできるようにすることは,非常に有益だと思います。そういう意味で,少なくとも一定の要件を満たしたときには,第三者の申立てにより,管理者を選任するということがよろしいのではないかと思います。
     一方,今回の事務局の提案は,今私が申し上げたことと整合しないものになっていまして,甲案か乙案を前提とした場合に,第三者は裁判所に選任の申立てができるとなっています。ここを何とか解決できないかと思っております。
     恐らく事務局で作成された意図としては,共有者が管理者を選任する義務があるからこそ,第三者は,管理者選任の申立てができるのであって,共有者に義務がない場合にまで,第三者が管理者の選任を申し立てることはできないという前提に立たれているのではないかと理解しました。そこを,何とかなりませんかねというところです。
     具体的には,5の(1)で,丙案,つまり共有者は共有物の管理者の選任をすることができるということをベースとしつつ,(3)のアの乙案のように,一定の要件を満たす場合には,共有者は管理者を選任する義務があるという立て付けにした上で,そのような場合には,第三者も裁判所に選任の申立てができるというふうにしてはいかがというふうに思っております。
    ○山野目部会長 純粋な丙案は,多分今でも解釈上できますね。しかし今,蓑毛幹事から,純粋な丙案に加え,更に内容を豊かなものにして,それと第三者申立てとの関係についても,発展的に議論してほしいという御提案がありました。ありがとうございます。
    ○道垣内委員 また,日本法全休の話とのバランスの話なのですが,(1)の甲案,乙案というのは,突出しているのではないかと思います。また,(3)の裁判所への選任を求め得るというのも,日本法上,突出しているのではないかという気がします。
     私は覚えていることが少ないので,覚えている範囲で信託法の話をしますと,信託において複数の受益者がいるという場合には,受益者の同意を得たりするのが面倒なんですね。また,複数の受益者みんなが信託の管理に関心を持っているわけではありません。そこで,信託法は,信託を設定する際に,受益者の保護のために受益者代理人を定めることができるという話になっています。しかし,定めなければならないということにはなっていません。
     そして,定めなければならないという発想というのは,実は,相手にする人に有利に,あるいは,便利になるようにしようという発想なのですが,少なくとも,信託法では,建前上,そういう発想は採られていない。しかしながら,それに対して,信託行為,つまり信託契約を作るのは,みんな信託銀行であり,受託者としては,1人を相手にすると簡単だから,受益者代理人を信託行為で,自らが受託者になる信託行為で定めてしまおうとする。だから結局,信託法の建前としては,複数受益者の利益のための代理人だと書いてあるけれども,これは実は受託者の便宜のための制度になってしまっていて,建前の説明とずれているという批判もあります。強く批判されているのは佐久間さんですので,後で御意見を伺えればと思いますけれども,そして,その佐久間さんのおっしゃっていることの方が,実は本音だというふうにいうと,本件は非常に日本法上,一貫性を持った提案になっているんですね。でもそれは,言ってはいけない本音のはずです。受益者の便宜のためにこそ,受益者代理人がいるわけであって,だからこそ受益者代理人を置かなければならないのではなく,置けるという話になっているのではないかと思います。
     関連しないかもしれませんが,若干続けて言いますと,複数の人がいるときに,全員一致が建前のときには代表を定めなければならないということには日本法上の原則としてはなっていません。例えば複数後見人,複